説明

遠心分離機

【課題】遠心動作終了時から次の遠心開始までの停止時間を短縮して分離前後の試料の交換作業を効率良くうことができる遠心分離機を提供すること。
【解決手段】試料を収容するロータ2と、該ロータ2を回転駆動するモータ3と、少なくとも遠心運転条件を設定可能な入力部と表示器を備えた操作パネル4と、前記モータ3の回転制御を実行するとともに予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを記憶している制御装置5と、前記操作パネル4より選択された音を発する報知手段6を備えた遠心分離機において、所定時間が経過した後、遠心動作終了前に所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブザーやメロディ等の音を発する報知手段を備えた遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台の遠心分離機を隣接して使用する際、どの遠心分離機が停止したのかを判別する手段として、遠心動作が終了した後に発するメロディ音によって遠心分離機の停止をオペレータに認知させるものがある。これは、遠心動作の終了音として予め記憶された数種類のメロディを選択できるようにしており、各々の遠心分離機に別々のメロディを設定しておくことにより、どの遠心分離機が停止したのかをオペレータが判別できるようにしたものであり、この技術の詳細は例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平5−104030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された技術では、報知手段によって終了音が遠心動作終了時のみに発せられる。遠心分離機を複数台隣接して使用する環境においては、遠心分離すべき試料が沢山あるため、早いサイクルで運転を行いたいという要求がある。そのためには、分離後の試料を取り出した後、分離前の試料をセットする作業を効率良く行うことが必要となるが、分離前の試料は冷蔵庫等に保管されているために準備に時間が掛かってしまい、遠心動作終了時に発せられた終了音を聞いてから試料の準備・交換作業を行うと、サイクルタイムが掛かってしまう。
【0004】
又、遠心動作時に異常を検出した場合に発するアラーム音は、アラームの内容に関わらず同一であって、表示器に示されたアラームコードを確認し、そのコードから取扱説明書に記載されているアラーム内容を調べて初めてその異常の内容を把握することができる。この調査には時間が掛かってしまうが、オペレータのミス等でよく発生するアラーム等は、そのコードからアラーム内容及び対処方法まで記憶している熟練オペレータもいる。
【0005】
しかし、視覚障害を患うオペレータにとっては、アラームコードが指すアラーム内容を理解していても、上記のようにアラームコードを視認しなければならないため、即座に異常内容を把握して対処することは困難である。
【0006】
従って、発明の第1の目的は、遠心動作終了時から次の遠心開始までの停止時間を短縮して分離前後の試料の交換作業を効率良くうことができる遠心分離機を提供することにある。
【0007】
又、本発明の第2の目的は、目の不自由なオペレータにとっても使い勝手の良い遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、試料を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、少なくとも遠心運転条件を設定可能な入力部と表示器を備えた操作パネルと、前記モータの回転制御を実行するとともに予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを記憶している制御装置と、前記操作パネルより選択された音を発する報知手段を備えた遠心分離機において、所定時間が経過した後、遠心動作終了前に所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発するタイミングは、遠心分離動作が終了してから次の遠心動作が開始するまでの実際の停止時間に基づいて算出されることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、試料を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、少なくとも遠心運転条件を設定可能な入力部と表示器を備えた操作パネルと、前記モータの回転制御を実行するとともに予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを記憶している制御装置と、前記操作パネルより選択された音を発する報知手段を備えた遠心分離機において、予め複数のアラームコードに対応して複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを割り付け、アラーム発生時は割り付けられた間欠ブザー音若しくはメロディを報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遠心動作が終了する前に、所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発してオペレータに報知するようにしたため、遠心動作が終了するまでにオペレータが分離前の試料の準備を行うことができ、分離前後の試料の交換作業を効率良く行うことができる。
【0012】
又、本発明によれば、予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを複数のアラームコードに対応して割り付けたため、アラーム発生時に発せられる音から即座にアラーム内容を判断することができ、その対処も早急に行うことができる。更に、音で認識することができるため、目の不自由なオペレータにとっても使い勝手の良い遠心分離機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る遠心分離機の基本構成を示すブロック図、図2(a)は従来の遠心分離機の運転サイクルを示す図、図2(b)は本発明に係る遠心分離機の運転サイクルを示す図、図3は本発明に係る遠心分離機の斜視図である。
【0015】
図3に示す遠心分離機1は、図1に示すように、遠心分離すべき試料を収容するロータ2と、該ロータ2を回転駆動するモータ3と、遠心運転条件等を設定可能な入力部と表示器を備えた操作パネル4と、モータ3の回転制御及び遠心分離機全体の制御を実行する制御装置5を備えている。ここで、制御装置5は、予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを記憶しており、遠心分離機1は、好みの間欠ブザー音若しくはメロディを操作パネル4から選択することができ、その選択された音を発するブザー・スピーカ等の報知手段6を備えている。
【0016】
図2(a)に示す従来の遠心分離機の運転サイクルでは、遠心動作終了時に発せられた終了音を聞いてから、分離すべき試料の準備と分離後の試料との交換作業を行っていた。そのとき、遠心分離機は停止しており、その作業時間は(T2−T1)であった。
【0017】
図2(b)に示す本発明に係る遠心分離機1の運転サイクルでは、遠心動作終了前の所定時間T3が経過した後に、所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発するようにしている。この間欠ブザー音若しくはメロディ音は、予め設定した音を制御装置5に記憶させても良く、操作パネル4から選択できるようにしても良い。この音を聞いたオペレータは、分離すべき試料の準備を始めることができる。そして、遠心分離機1の動作が終了して停止すると、オペレータは分離後の試料を取り出し、分離すべき試料と交換する。尚、遠心分離機1は遠心動作が終了して停止したときにも終了音を発しても良い。所定の時間T3は試料の準備・交換作業時間を見越してオペレータが操作パネル4より入力設定しておけば良い。
【0018】
又、所定時間T3は制御装置5にて自動的に演算することができる。即ち、試料の交換に要する作業時間を予め設定しておき、前回の停止時間と設定した作業時間がほぼ一致するように所定時間T3を決定すれば良い。
【0019】
図2(b)に示す停止時間(T5−T4)が設定した作業時間より、例えば2分長かったとすると、遠心分離機1が停止してもオペレータが試料の準備をしていたために停止時間が長かったと判断し、所定時間T3は2分短い値に変更する。すると、次の運転サイクルでは音を発するタイミングが2分早くなり、オペレータは2分早く作業に取り掛かることができる。例えば、停止時間(T5−T4)が設定した作業時間より1分以内であれば所定の時間T3は更新しない。又、停止時間(T5−T4)が非常に長い場合は所定時間T3は更新しない。所定時間T3は過去の停止時間(T5−T4)を収集して平均化する等して決定しても良い。
【0020】
以上のように、本実施の形態によれば、遠心途中から試料の準備を行うことができるため、遠心分離機1の停止時間(T5−T4)が短くなり、運転サイクルを早くすることができる。
【0021】
ところで、制御装置5には、表1に示すように複数のアラームコードに対応して複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを予め割り付け、それぞれメロディ音と間欠ブザー音を記憶している。アラーム検出時に発する音としては、操作パネル4から間欠ブザー音かメロディ音かを選択することができる。
【0022】
【表1】

遠心分離機1が発するアラームとしては、例えばインバランスアラーム等がある。これは、試料の重量バランスが取れていないときに発するアラームであって、その殆どがオペレータの試料セットミスに起因するものである。遠心分離機1は、遠心動作時にこの異常を検出すると、操作パネル4の表示器にアラームコードを表示するとともに、アラームコードに対応して割り付けられた間欠ブザー音若しくはメロディを発する。或る程度経験を積んだオペレータは、アラームコードを視認しなくてもその音色からアラーム内容を判断することができるため、異常内容を即座に把握して対処することができる。従って、遠心分離機1は、目の不自由なオペレータにとっても使い勝手の良いものとなる。
【0023】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る遠心分離機の基本構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は従来の遠心分離機の運転サイクルを示す図、(b)は本発明に係る遠心分離機の運転サイクルを示す図である。
【図3】本発明に係る遠心分離機の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 遠心分離機
2 ロータ
3 モータ
4 操作パネル
5 制御装置
6 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、少なくとも遠心運転条件を設定可能な入力部と表示器を備えた操作パネルと、前記モータの回転制御を実行するとともに予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを記憶している制御装置と、前記操作パネルより選択された音を発する報知手段を備えた遠心分離機において、
所定時間が経過した後、遠心動作終了前に所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
所定の間欠ブザー音若しくは所定のメロディ音を発するタイミングは、遠心分離動作が終了してから次の遠心動作が開始するまでの実際の停止時間に基づいて算出されることを特徴とする請求項1記載の遠心分離機。
【請求項3】
試料を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、少なくとも遠心運転条件を設定可能な入力部と表示器を備えた操作パネルと、前記モータの回転制御を実行するとともに予め複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを記憶している制御装置と、前記操作パネルより選択された音を発する報知手段を備えた遠心分離機において、
予め複数のアラームコードに対応して複数の間欠ブザー音若しくは複数のメロディを割り付け、アラーム発生時は割り付けられた間欠ブザー音若しくはメロディを報知することを特徴とする遠心分離機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−259979(P2008−259979A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105470(P2007−105470)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】