説明

遠心分離用沈殿管および生体細胞採取用チューブ

遠心分離用沈殿管1は、有底管2と、有底管2内に挿入可能であり、先端および後端が開口したチューブ体31とチューブ体31の先端部外面に設けられたリング状弾性部材32とからなる内筒3と、内筒3の後端開口を封止可能な封止部材4と、内筒3を有底管2に離脱可能に固定する固定部材5とを備える。内筒3は、有底管2内に挿入された状態において、内筒3の先端は、有底管2の先端より所定距離離間するものであり、リング状弾性部材32は、少なくとも遠心分離時において、有底管2内面とチューブ体31の先端部外面間を液密に保持可能なものである。沈殿管1は、リング状弾性部材32の先端面と有底管2の先端部内面と内筒3の先端部外面間により形成される採取部6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、2つもしくはそれ以上の液相に分離可能である混合液を、遠心力を利用して比重の差により分離する場合に使用される遠心分離用沈殿管に関するものである。
【背景技術】
HIV感染症は、現在においても依然増加しており、その治療は進歩したとはいえ、根治可能なものではない。感染の根絶のためには、夫HIV陽性、妻HIV陰性の場合には、妻への感染および垂直感染を防止するためには、コンドームの使用が必要となり、その結果子供を持つことができない。しかし、そのような夫婦においても、子供を望むものも多く、精子を洗浄して、HIVウイルスを除去した洗浄精子を用いた体外受精、人工授精により、妻及び児にHIVを感染させることなく挙児させるこころみが行われており、成功している。
そこで、本発明者等は、HIVウイルスを含有する精液より、HIVウイルスを除去し、実質的にHIVウイルスを含有しない精子含有液を採取するために、の遠心分離用沈殿管を検討した。
例えば、遠心分離用沈殿管として、特開平9−285740号公報(特許文献1)、特開2001−46915号公報(特許文献2)に示すものがある。
特許文献1には、その図4に縦断面図で示されているように、上面が開口した有底の筒状をなす容器本体1の上面開口を液密に閉塞するキャップ2を、密栓部3と内筒4と閉塞栓5とから構成した遠心分離用沈殿管が開示されている。この遠心分離用沈殿管の密栓部3は、容器本体1の上端部に差し込まれて外周面が密嵌し、中央部に貫通孔6が形成されている。内筒4は、容器本体1の内径寸法より小さい外径寸法を有し下部が次第に細径に形成された筒状をなしており、その上端部が密栓部3の貫通孔6の内周部に固着されて密栓部3と一体化されている。また、内筒4は、容器本体1の上端部に密栓部3を密嵌させたときに下端が容器本体1の内底面付近に位置する程度の長さに形成されている。閉塞栓5は、内筒4の下端口に上向きに差し込まれて内筒4の下端口を液密に閉塞する。この閉塞栓5は、下向きの押圧力、すなわち分注ノズルやピペッタの下端によって下向きに押し付けられる力により容易に脱落するようになっている。また、特許文献2もほぼ同様の構成となっている。
また、HIVウイルスを含有する精液より、HIVウイルスを除去し、実質的にHIVウイルスを含有しない精子含有液を採取した後などにより高いレベルでのHIVウイルスの除去を行うことが望ましいものと本発明者等は考えた。
しかし、上記の遠心分離用沈殿管では、下層の液体を採取するためには、分注ノズル、ピペッタを上層を通過させて挿入することが必要となり、この挿入作業において、上層が含有する物質、例えば、HIVウイルスを下層に混入させる危険性がある。
そこで、本発明の目的は、遠心分離により形成された上層に含有されている物質を下層に混入させることなく、下層の液体を採取することができる遠心分離用沈殿管を提供するものである。
また、本発明の目的は、生体細胞を含有するとともにウイルスもしくは細菌を混入している可能性がある液体より、より確実にウイルスおよび細菌を混入しない生体細胞を採取するための生体細胞採取用チューブを提供するものである。
【発明の開示】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
先端が閉塞し後端が開口した有底管と、該有底管内に挿入可能であり、先端および後端が開口したチューブ体と該チューブ体の先端部外面に設けられたリング状弾性部材とからなる内筒と、該内筒の後端開口を封止可能な封止部材と、前記内筒を前記有底管に離脱可能に固定する固定部材とを備える遠心分離用沈殿管であって、前記内筒は、前記有底管内に挿入された状態において、前記内筒の先端は、前記有底管の先端より所定距離離間するものであり、前記リング状弾性部材は、少なくとも遠心分離時において、前記有底管内面と前記チューブ体の先端部外面間を液密に保持可能なものであり、該リング状弾性部材先端面と前記有底管先端部内面と前記内筒先端部外面間により形成される採取部を有する遠心分離用沈殿管。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去し、生体細胞を採取するための生体細胞採取用チューブであって、一端から他端まで貫通した通路を備えるチューブと、該チューブ内に収納され、水分と接触することにより実質的に液密状態を形成可能なシール用部材層と、該シール用部材層より前記チューブの一端側でありかつ所定距離離間した位置に充填された第1の水性液体層と、該第1の水性液体層と前記シール部材層間に設けられた第1の空気層と、前記第1の水性液体層と所定距離離間した位置に充填された第2の水性液体層と、該第2の水性液体層と前記第1の水性液体層間に設けられた第2の空気層と、前記第2の水性液体層と接触するように設けられるとともに、前記チューブの一端部に位置するウイルスもしくは細菌捕捉用の粘性物質含有液体層を備える生体細胞採取用チューブ。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の遠心分離用沈殿管の一実施例の正面図である。
図2は、図1に示した遠心分離用沈殿管の断面図である。
図3は、図1に示した遠心分離用沈殿管に用いられている有底管の正面図である。
図4は、図1に示した遠心分離用沈殿管に用いられている内筒の正面図である。
図5は、図1に示した遠心分離用沈殿管に用いられている固定部材の断面図である。
図6は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管を説明するための説明図である。
図7は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管を説明するための説明図である。
図8は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管を説明するための説明図である。
図9は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管を説明するための説明図である。
図10は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管を説明するための説明図である。
図11は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管を説明するための説明図である。
図12は、本発明の遠心分離用沈殿管の使用方法を説明するための説明図である。
図13は、本発明の遠心分離用沈殿管の他の使用方法を説明するための説明図である。
図14は、吸引器具を装着した状態の本発明の生体細胞採取用チューブの外観図である。
図15は、本発明の一実施例の生体細胞採取用チューブの断面図である。
図16は、本発明の他の実施例の生体細胞採取用チューブの断面図である。
図17は、本発明の他の実施例の生体細胞採取用チューブの断面図である。
図18は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管の後端部の拡大断面図である。
図19は、本発明の他の実施例の遠心分離用沈殿管の後端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
そこで、本発明の遠心分離用沈殿管を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の遠心分離用沈殿管1は、先端が閉塞し後端が開口した有底管2と、有底管2内に挿入可能であり、先端および後端が開口したチューブ体31とチューブ体31の先端部外面に設けられたリング状弾性部材32とからなる内筒3と、内筒3の後端開口を封止可能な封止部材4と、内筒3を有底管2に離脱可能に固定する固定部材5とを備える。内筒3は、有底管2内に挿入された状態において、内筒3の先端は、有底管2の先端より所定距離離間するものであり、リング状弾性部材32は、少なくとも遠心分離時において、有底管2内面とチューブ体31の先端部外面間を液密に保持可能なものである。沈殿管1は、リング状弾性部材32の先端面と有底管2の先端部内面と内筒3の先端部外面間により形成される採取部6を有する。
この実施例の遠心分離用沈殿管1は、有底管2と、チューブ体31とチューブ体31の先端部外面に設けられたリング状弾性部材32とからなる内筒3と、封止部材4と、固定部材5とを備える。
有底管2は、先端が閉塞し後端が開口した筒状体であり、先端部21は、図1、図2および図3に示すように、先端に向かって縮径している。特に、図示するように、テーパー状縮径することが好ましい。
有底管2の材質としては、硬質樹脂もしくは半硬質樹脂が好適であり、特に、内部を視認可能な透明性を備えることが望ましい。具体的には、有底管2の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン,SBSなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)等を用いることが好ましい。
内筒3を有底管2に離脱可能に固定する固定部材5は、図1、図2および図5に示すような、短い筒状部材であり、封止部材4の侵入を許容する開口51を備えている。
また、有底管2および固定部材5は、離脱可能な係合部を備えていることが好ましい。図1ないし図5に示すものでは、有底管2の開口端の外面には、固定部材5との係合部を備えている。特に、図1ないし図5に示すものでは、有底管2の後端部は、第1の螺合部22を備え、固定部材5は、第1の螺合部22と螺合可能な第2の螺合部52を備えている。なお、有底管2と固定部材5の係合形態は、上記のような螺合によるものに限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、固定部材5aは、第2の係合部である突起52aを備え、有底管2aの後端部には、第2の係合部である突起52aを係合可能な係合部である凹部22aを備えるものであってもよい。この係合部22aは、突起52aを誘導する誘導溝23aと、突起52aの離脱を防止する係合溝23bを備えている。なお、この係合形態において、突起を有底管側に、溝を固定部材側に設けてもよい。
固定部材5の材質としては、半硬質樹脂もしくは軟質樹脂が好適である。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンもしくはポリオレフィンエラストマー、ポリスチレン,SBSなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂もしくはポリエステルエラストマー等を用いることができる。
内筒3は、有底管2内に挿入可能であり、先端および後端が開口したチューブ体31とチューブ体31の先端部外面に設けられたリング状弾性部材32とからなる。
チューブ体31は、筒状体であり、先端部は、図1、図2および図4に示すように、先端に向かって縮径している。特に、図示するように、テーパー状に縮径することが好ましい。また、本体部もテーパー状に縮径している。また、チューブ体31の後端は、有底管の後端部の内径より大きい拡径部となっており、内筒が有底管内に完全に収納されることを規制している。また、チューブ体31は、有底管に挿入可能部の長さが、有底管の先端内面に到達しない長さに設定されている。
チューブ体31の材質としては、硬質樹脂もしくは半硬質樹脂が好適であり、特に、内部を視認可能な透明性を備えることが望ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン,SBSなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)等を用いることが好ましい。
リング状弾性部材32は、チューブ体31の先端部外面に固定されており、有底管2の先端部内面と密着可能なものである。リング状弾性部材32は、少なくとも遠心分離時において、有底管2内面とチューブ体31の先端部外面間を液密に保持可能なものである。このため、リング状弾性部材32は、弾性材料により形成されている。また、内筒3の有底管2内への挿入を容易にするために、また、リング状弾性部材32の先端面と有底管2の先端部内面と内筒3の先端部外面間により形成される採取部6を小さいものとするために、リング状弾性部材32は、テーパー状に縮径するチューブ体31の先端部に装着されるとともに、リング状弾性部材32の最大外径は、有底管2の本体部(同一径部分)の内径より小さいものとなっている。さらに、このリング状弾性部材を確実に有底管の先端部のテーパー状内面に密着させるために、外径がテーパー状に縮径するものとなっている、なお、弾性部材32のテーパー角度は、有底管のテーパー角度より小さいものとなっている。このため、弾性部材32はその先端部において、有底管の内面に確実に密着する。また、内筒(弾性部材)は、遠心分離時において、有底管の先端側に押されるため、弾性部材32は、有底管2の内面により確実に密着し、弾性部材32より後端側の有底管2内の空間に遠心分離対象液体が侵入することを防止する。リング状弾性部材32は、チューブ体31に、接着剤などにより固定されている。また、リング状弾性部材32の形態は、上述したようなものに限定されるものではなく、図10に示す実施例の弾性部材32bのように、側面に環状溝34を有するものであてもよく、また、図11に示す実施例のように、複数の円盤状の弾性部材32a、32bからなるものとしてもよい。
リング状弾性部材32の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどの合成ゴムまたは合成樹脂エラストマー、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどが好適に使用できる。また、弾性部材32は、チューブ体31と別部材により形成したものに限られず、チューブ体31に、弾性材料を二色成形することにより一体に形成したもの、もしくは、あらかじめ形成した弾性部材を金型に挿入してチューブ体31を形成するいわゆるインサート成形により一体に作成したものであってもよい。上記二色成形およびインサート成形を用いて内筒を形成する場合には、チューブ体の形成材料と弾性部材の形成材料とが接着性を有することが好ましい。
さらに、内筒3は、図1、図2および図4に示すように、内筒3の後端部と有底管の後端部2間を気密状態とするためのOリング33を備えていることが好ましい。この実施例の沈殿管1では、チューブ体31の後端拡径部34の先端側に0リング33が設けられており、この0リング33は、固定部材5により、チューブ体の拡径部34と有底管2の後端開口間に位置するとともに、その両者により挟まれる。0リングの形成材料としては、上述したリング状弾性部材32において述べたものが好適に使用される。
そして、沈殿管1は、リング状弾性部材32の先端面と有底管2の先端部内面と内筒3の先端部外面間により形成される採取部6を有する。そして、内筒3は、有底管2内に挿入され、リング状弾性部材32が有底管2の先端部内面に接触した状態において、内筒3の後端部は、有底管2の後端に当接していない。つまり、内筒3の後端部と有底管2の後端間にはクリアランスが設けられている。このため、遠心分離時による遠心力により、内筒3が若干有底管2の先端側に移動することを許容する。このため、遠心分離時には、その遠心力を利用して、リング状弾性部材32と有底管2の密着をより確実なものとしている。
封止部材4は、内筒3の後端開口を着脱可能に封止するためのものである。この実施例の遠心分離用沈殿管1では、弾性部材により形成されたテーパー状に縮径する栓体である。そして、先端部は、固定部材5の開口部51の内径およびチューブ体31の後端開口部の内径より小さい外径となっている。このため、封止部材4の先端部が、固定部材より挿入し、内筒の後端を封止可能なものとなっている。また、図7に示す実施例のように、封止部材4aおよび内筒(チューブ体31a)の後端部は、内筒後端部(チューブ体31aの後端部)からの封止部材4aの離脱を抑制する係合手段を備えていてもよい。図7に示す実施例では、内筒(チューブ体31a)の後端部内面に係合用突起35を備えるとともに、封止部材4aの先端部外面には、この係合用突起35と係合可能な溝41を備えている。なお、この係合形態において、突起を封止部材側に、溝を内管(チューブ体)側に設けてもよい。封止部材の形成材料としては、上述したリング状弾性部材32において述べたものが好適に使用される。
また、図8および図9に示す実施例のように、固定部材5は、固定部材5の有底管2からの取り外し時に、内筒3と係合する係合部を備え、固定部材5の有底管からの離脱とともに内筒3を有底管2から取り出し可能となっているものであってもよい。このようにすることにより、有底管2より内筒3を取り出す作業が容易なものとなる。図8および図9に示す実施例の沈殿管では、固定部材5は、内筒3に取付られており、固定部材5を有底管2より取り外すことにより、内筒3が有底管2より取り出し可能となっている。この実施例の沈殿管では、内筒(チューブ体31)の後端は、固定部材5の後端開口より外方に突出するとともに、チューブ体31bのこの固定部材5より突出する部分に、固定部材5の開口部の周縁外面と当接する係合部35が設けられている。係合部35としては、環状リブ、フランジが好適であるが、1つもしくは2以上の側面側に突出するリブであってもよい。そして、固定部材5を有底管2に装着した状態において、チューブ体31bの係合部35と固定部材5の後端外面間は、若干離間しており(クリアランスが設けられており)、内筒3の後端部は、有底管2の後端に当接していない。このため、遠心分離時による遠心力により、内筒3が若干有底管2の先端側に移動することを許容する。このため、遠心分離時には、その遠心力を利用して、リング状弾性部材32と有底管2の密着をより確実なものとしている。さらに、この実施例の沈殿管では、チューブ体31bの固定部材5の内側となる部分に、固定部材5の開口部の内面の周縁と当接する係合部36が設けられている。係合部36としては、環状リブ、フランジが好適であるが、1つもしくは2以上の側面側に突出するリブであってもよい。固定部材5は、係合部35と係合部36間の筒状部分37に取り付けられた状態となっている。また、筒状部分37の外径は、固定部材5の開口部の内径より若干大きいものであるため、固定部材5の有底管2への装着作業を阻害しないとともに、装着作業時に内筒を回転させることなく、有底管に固定部材を装着可能である。
また、図18に示すように、固定部材5は、閉塞面を備え、封止部材4は、この閉塞面の内面に固定されたものであってもよい。封止部材4の固定部材5への固定は、例えば、接着剤により行うことができる。さらに、図19に示すように、固定部材5と封止部材4は、一体に形成してもよい。この場合、固定部材5と封止部材4を同じ材料により一体に形成してもよく、また、異なる材料を用いて、二色成形により一体に形成してもよい。
そして、この遠心分離用沈殿管1は、生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去するためのものであることが好ましい。具体的には、遠心分離用沈殿管は、生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去するためのものであり、遠心分離することにより、ウイルスもしくは細菌を有底管の採取部6内に流入させることなく内筒3内に保留させ、かつ、生体細胞を有底管2の採取部6内に採取することが可能なものである。
生体細胞は、例えば、精子または卵子であり、ウイルスまたは細菌は、例えば、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、肝炎ウイルス、ヒト後天性免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、クラミジア、クラミジア・トラコマチィス、リン菌、トレポネーマ・パリーダ、軟性下疳菌、カンジタのいずれか一種もしくは2種以上のものである。
さらに、遠心分離用沈殿管1は、有底管2の先端部および内筒の先端部には、遠心分離用液体が充填されているものであってもよい。この液体としては、例えば、パーコール液、食塩水などを用いることができる。また、液体は、媒質を含有するとともに、媒質濃度が有底管の先端側が高く、内筒側が低いものであることが好ましい。このように濃度を相違させる場合には、図12に示すように、先端側を高濃度層とし後端側を低濃度層とすること、また、図13に示すように、先端側より後端側に向かって段階的もしくは連続的に濃度が低くなるようにすることのいずれであってもよい。
次に、図12を用いて、本発明の遠心分離用沈殿管の使用方法を説明する。
この説明では、HIV陽性者から採取した精液より、HIV除去精子含有液体を採取する場合を用いる。
採取した精液を液体培地、例えば、HTF液体培地、10%SSS(Serum Substitute Supplement)含有HTF液体培地により希釈した精液希釈液を準備する。そして、遠心分離用沈殿管1を準備し、封止部材を取り外し、有底管の先端側より、パーコール液(修飾シリカゲル含有液)を注入する。これにより、有底管の先端部に形成された採取部および内筒の少なくとも先端部(このましくは、中間部)まで液体が充填された状態となる。なお、パーコール液は、濃度90%層61、濃度60%層62、濃度30%層63となるように順次注入する。そして、濃度30%層63の上に、上記にて準備した精子希釈液68を注入し、封止部材にて、内筒を封止する。なお、パーコール液は、図13に示すように、先端側に濃度90%層61を形成し、それ以降は、濃度30%となるまで段階的もしくは連続的に濃度が変化するように連続濃度勾配層65としてもよい。このような濃度勾配は、連続勾配作成装置を用いることにより行うことができる。このように準備した沈殿管を遠心分離器に投入し、遠心分離する。遠心分離は、例えば、3000rpm程度、25分程度行うことが好ましい。そして、遠心分離終了後、固定部材を有底管から取り外し、内筒を有底管より抜去する。これにより有底管には、実質的にHIVウイルスを含有しない精子含有液が得られる。
次に、本発明の生体細胞採取用チューブを実施例を用いて説明する。
図14は、吸引器具を装着した状態の本発明の生体細胞採取用チューブの外観図である。図15は、本発明の一実施例の生体細胞採取用チューブの断面図である。図16は、本発明の他の実施例の生体細胞採取用チューブの断面図である。図17は、本発明の他の実施例の生体細胞採取用チューブの断面図である。
本発明の生体細胞採取用チューブ70は、生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去し、生体細胞を採取するためのチューブである。生体細胞採取用チューブ70は、一端から他端まで貫通した通路を備えるチューブ70aと、チューブ70a内に収納され、水分と接触することにより実質的に液密状態を形成可能なシール用部材層71と、シール用部材層71よりチューブ70aの一端側でありかつシール用部材層71と所定距離離間した位置に充填された第1の水性液体層73と、第1の水性液体層73とシール用部材層71間に設けられた第1の空気層72と、第1の水性液体層73と所定距離離間した位置に充填された第2の水性液体層75と、第2の水性液体層75と第1の水性液体層73間に設けられた第2の空気層74と、第2の水性液体層75と接触するように設けられるとともに、チューブの一端部に位置するウイルスもしくは細菌捕捉用の粘性物質含有液体層76を備えている。
そして、この生体細胞採取用チューブは、他端に液体吸引器具接続用コネクター82を備えていることが好ましい。また、体細胞採取用チューブは、他端側が液体吸引器具接続可能部となっているものであってもよい。また、生体細胞採取用チューブは、他端に直接もしくはコネクター82を介して接続された液体吸引器具81を備えていることが好ましい。
本発明の生体細胞採取用チューブ70による採取対象となる生体細胞は、例えば、精子、卵子である。また、粘性物質含有液体層76による捕捉対象となるウイルスまたは細菌は、例えば、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、肝炎ウイルス、ヒト後天性免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、クラミジア、クラミジア・トラコマチィス、リン菌、トレポネーマ・パリーダ、軟性下疳菌、カンジタのいずれか一種もしくは2種以上のものである。
チューブ70aとしては、一端から他端まで貫通した通路を備えるものであればどのようなものでもよく、好ましくは、ほぼ同一内径にて所定長延びる筒状部分を備えるものが好ましい。また、チューブの内径としては、1mm〜5mm程度が好適であり、長さは、50〜200mm程度が好適である。
また、チューブ70aは、内部を視認可能な透明性を備えかつヒートシール可能な材料により形成されていることが好ましい。チューブ70aの形成材料としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、メタクリレート−スチレン共重合体、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)、ポリアミド(例えば、6ナイロン,66ナイロン)等の熱可塑性樹脂が使用される。また、チューブ70aは、多層樹脂チューブであってもよい。チューブにおける内層としては、ヒートシール性の高い樹脂が好ましい。例えば、低分子量ポリエチレン、特に、無延伸かつ低分子量ポリエチレンが好ましい。なお、上述した内層は、このヒートシールされる部分にのみ設けてもよい。また、チューブにおける外層としては、上述した熱可塑性樹脂、さらには、フッ素系樹脂、ポリイミドなどの難ヒートシール性樹脂を用いてもよい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、塩化三フッ化エチレン樹脂などが使用できる。ポリイミドとしては、芳香族ポリイミドが好ましい。また、外層は、一軸もしくは二軸延伸物であってもよい。
シール用部材層71は、水分と接触することにより実質的に液密状態を形成可能な層である。このシール用部材層は、例えば、水膨潤性物質を含有する通気性部材により形成することができる。通気性部材としては、いわゆる綿糸、絹糸、細片紙などの繊維状物、フィルター材料などを用いることができる、水膨潤性物質としては、従来公知の各種のものが用いられる。シール用部材層は、含有する水膨潤性物質が乾燥状態にある時は、空気透過性を有し、水膨潤性物質が膨潤状態にある時は、チューブ内の通路をほぼ閉塞させ気密性を発揮する。水膨潤性物質としては、例えば、カラヤガム、アラビアガム、トラガカントガム等の天然性高分子物質、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸の金属塩、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体の塩及び酸等の合成又は半合成高分子、でんぷん−アクリルニトリル、でんぷん−アクリル酸、でんぷん−アクリルアミド、でんぷん−ナトリウムアクリレート等の加水分解物を含むアクリレート系のでんぷんクラフト化物、部分的にけん化したポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩系やアクリル酸−ビニルアルコール系重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロース系重合体などが使用できる。また、シール用部材層71における水膨潤性物質の含有量は、組成物中、5〜60%、特には15〜50%が好ましい。
第1の水性液体層73は、シール用部材層71よりチューブ70aの一端側でありかつシール用部材層71と所定距離離間した位置に形成されている。第1の水性液体層73としては、純水、精製水、食塩水、液体培地など水分を含有するものであればどのようなものでもよい。好ましくは、第2の水性液体層75において用いる水性液体と同じものもしくは近似したものが好ましい。これは、このチューブ70に採取対象生体細胞含有液を吸引すると、第1の水性液体層は、順次、シール用部材層側に移動する。このため、第2の水性液体層75は、第1の水性液体層が位置していた部位を通過するので、第1の水性液体が第2の水性液体と同じものもしくは近似したものであれば、第2の水性液体層を構成する水性液体の性状を変化させることが極めて少ないものとなる。また、第1の水性液体層は、女性ホルモンを含有しているものであってもよい。女性ホルモンとしては、プレグナンジオール、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、エステトロール(E4)、プロゲステロンの群から選ばれる少なくとも1つのものを用いることが好ましい。
シール用部材層71と第1の水性液体層73間には、第1の空気層72が形成されている。この第1の空気層72内には、無菌空気が充填されている。また、第1の空気層72の容量は、このチューブ70に吸引される採取対象生体細胞含有液の量とほぼ同じもしくは若干大きいものとなっている。
第2の水性液体層75は、採取対象生体細胞を採取するための部位であり、細胞活性保持のための液体が充填されている。このような液体としては、例えば、採取目的とする細胞に適した液体、例えば、液体培地、生理食塩水などが用いられる。例えば、精子を採取する場合には、HTF液体培地、SSS(Serum Substitute Supplement)含有HTF液体培地などが好適である。SSSを含有する場合には、その濃度は、5〜15%が好ましい。SSS含有HTF液体培地としては、例えば、商品名Complete HTF Medium(株式会社アイエス ジャパン製。10%SSS含有)がある。また、第2の水性液体層75の容量、言い換えれば第2の水性液体の充填量は、このチューブ70に吸引される採取対象生体細胞含有液の量とほぼ同じもしくは若干大きいものとなっている。
第2の空気層74は、第2の水性液体層75と第1の水性液体層73間に設けられている。この第2の空気層74内には、無菌空気が充填されている。また、第2の空気層74の容量は、第2の水性液体層75と第1の水性液体層73を離間できればよく、その容量は小さいものでよい。
粘性物質含有液体層76は、第2の水性液体層75と接触するように設けられるとともに、チューブの一端部に位置している。この液体層75が含有する粘性物質は、例えば、水溶性粘質高分子化合物である。粘性物質は、水溶性粘質多糖類であることが好ましい。特に、粘性物質は、クリコサミノグリカン、グリクロナン、メチルセルロース、デキストラン、ペクチン、デンプン、アラビアガム、グアーガムからなる群より選択された少なくとも一種のものであることが好ましい。そして、グリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ケラトポリ硫酸またはそれらの塩もしくはそれらの誘導体からなる群より選択された少なくとも一種のものであることが好ましい。液体層76における粘性物質の含有量は、使用する粘性物質によっても相違するが1〜20mg/ml程度が好適と考える。また、液体層を構成する溶媒は、純水、精製水などの無菌水が用いられるが、これに限定されるものではなく、上記の第2の水性液体層にて説明したものを用いてもよい。
さらに、図16に示す生体細胞採取用チューブ80のように、第1の水性液体層73と第1の空気層74との間に設けられた女性ホルモン含有層77を備えているものであってもよい。女性ホルモンとしては、プレグナンジオール、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、エステトロール(E4)、プロゲステロンの群から選ばれる少なくとも1つのものを用いることが好ましい。
そして、生体細胞採取用チューブ70、80では、他端に液体吸引器具接続用コネクター82を備えており、このコネクター82を介して液体吸引器具81が接続されている。コネクター82は、一端側にチューブ接続用端部を、他端側に吸引器具接続用端部を備えている。具体的には、コネクター82は、弾性材料により形成されており、一端側の内径は、チューブ70,80一端の外径より若干小さく、他端側の内径は、吸引器具の接続部の外径より若干小さいものとなっている。コネクター82の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどの合成ゴムまたは合成樹脂エラストマー、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどが好適に使用できる。また、吸引器具81としては、シリンジが好適に使用できる。
また、図17に示す生体細胞採取用チューブ90のように、チューブの他端部は、液体吸引器具との接続のための接続可能部となっているものであってもよい。このチューブ90では、他端部は、拡径するとともに、その内径は、吸引器具の接続部の外径より若干小さいものとなっている。
次に、本発明の生体細胞採取用チューブの使用方法を説明する。
この説明では、HIV陽性者から採取した精液より、HIV除去精子含有液体を採取する場合を用いる。
採取した精液を液体培地、例えば、HTF液体培地、10%SSS(Serum Substitute Supplement)含有HTF液体培地により希釈した精液希釈液を準備する。もしくは、上述した遠心分離用沈殿管を用いて採取した精子含有液を準備する。精液希釈液の場合には、有底管に注入し、遠心分離(例えば、1200rpm、10分)を行い、上清を破棄し、沈殿物に液体培地を添加し、精子含有液を得る。
そして、生体細胞採取用チューブ70の他端側にコネクタ82および吸引器具81を取り付けたものを準備する。そして、吸引器具を操作して、上記のように準備された精子含有液をチューブ70の一端側より吸引する。所定量の精子含有液を吸引した状態で吸引作業を終了する。この時点において、第1の水性液体73がシール用部材層71に到達していない場合には、所定量の空気を吸引し、水性液体をシール部材層に到達させてシール用部材層を封止する。
続いて、コネクターおよびシリンジを取り外した後、試験管にチューブを入れ、所定角度(例えば、約10度)に傾斜させた状態にてスイムアップを行うとともに、37℃、45分間程度培養する。この状態において、精子は上昇するため、粘性物質含有液体層76を通過し、その際に、自らに付着するウイルス、細菌は、この層にて捕捉される。そして、精子は、第2の水性液体層75内到達する。そして、粘性物質含有液体層76より若干基端側の位置にて、ヒートシールし、ヒートシール部分にて、チューブを切断する。これにより、ウイルス、細菌が除去された生体細胞含有液を得ることができる。また、第1の水性液体層が女性ホルモンを含有することもしくは、第1の水性液体層と第1の空気層間に女性ホルモン含有層を有するものであれば、精子の上昇がより活発なものとなり、精子の採取が確実なものとなる。
【産業上の利用可能性】
本発明の遠心分離沈殿管は、先端が閉塞し後端が開口した有底管と、該有底管内に挿入可能であり、先端および後端が開口したチューブ体と該チューブ体の先端部外面に設けられたリング状弾性部材とからなる内筒と、該内筒の後端開口を封止可能な封止部材と、前記内筒を前記有底管に離脱可能に固定する固定部材とを備える遠心分離用沈殿管であって、前記内筒は、前記有底管内に挿入された状態において、前記内筒の先端は、前記有底管の先端より所定距離離間するものであり、前記リング状弾性部材は、少なくとも遠心分離時において、前記有底管内面と前記チューブ体の先端部外面間を液密に保持可能なものであり、該リング状弾性部材先端面と前記有底管先端部内面と前記内筒先端部外面間により形成される採取部を有する。
このため、遠心分離後、固定部材を有底管より離脱させ、有底管より内筒を抜去することにより、有底管の採取部に採取されている遠心分離により分離された高比重物質を、内筒に採取されている物質が混入することなく容易に採取することができる。
本発明の生体細胞採取用チューブは、生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去し、生体細胞を採取するための生体細胞採取用チューブであって、一端から他端まで貫通した通路を備えるチューブと、該チューブ内に収納され、水分と接触することにより実質的に液密状態を形成可能なシール用部材層と、該シール用部材層より前記チューブの一端側でありかつ所定距離離間した位置に充填された第1の水性液体層と、該第1の水性液体層と前記シール部材層間に設けられた第1の空気層と、前記第1の水性液体層と所定距離離間した位置に充填された第2の水性液体層と、該第2の水性液体層と前記第1の水性液体層間に設けられた第2の空気層と、前記第2の水性液体層と接触するように設けられるとともに、前記チューブの一端部に位置するウイルスもしくは細菌捕捉用の粘性物質含有液体層を備えている。
この生体細胞採取用チューブの一端側より吸引し、他端側(粘性物質含有液体層)よりチューブ内に採取された生体細胞含有液体中の生体細胞は、粘性物質含有液体層を移動する際に、自らに付着したウイルスもしくは細菌が存在する場合にはそれらがこの層において除去された後、第2の水性液体層に移動する。このため、ウイルスおよび細菌の混入が極めて少ない生体細胞含有液を採取することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉塞し後端が開口した有底管と、該有底管内に挿入可能であり、先端および後端が開口したチューブ体と該チューブ体の先端部外面に設けられたリング状弾性部材とからなる内筒と、該内筒の後端開口を封止可能な封止部材と、前記内筒を前記有底管に離脱可能に固定する固定部材とを備える遠心分離用沈殿管であって、前記内筒は、前記有底管内に挿入された状態において、前記内筒の先端は、前記有底管の先端より所定距離離間するものであり、前記リング状弾性部材は、少なくとも遠心分離時において、前記有底管内面と前記チューブ体の先端部外面間を液密に保持可能なものであり、該リング状弾性部材先端面と前記有底管先端部内面と前記内筒先端部外面間により形成される採取部を有することを特徴とする遠心分離用沈殿管。
【請求項2】
前記有底管の先端部は、先端に向かって縮径している請求項1に記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項3】
前記リング状弾性体は、前記有底管の先端に向かって縮径している先端部内面に密着可能なものである請求項2に記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項4】
前記チューブ体の先端部は、先端に向かって縮径している請求項1ないし3のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項5】
前記リング状弾性体は、先端に向かって縮径している請求項1ないし4のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項6】
前記固定部材は、該固定部材の前記有底管からの取り外し時に、前記内筒と係合する係合部を備え、前記固定部材の前記有底管からの離脱とともに前記内筒を前記有底管から取り出し可能となっているものである請求項1ないし5のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項7】
前記有底管の後端部は、第1の螺合部を備え、前記固定部材は、前記第1の螺合部と螺合可能な第2の螺合部を備えている請求項1ないし6のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項8】
前記有底管の後端部は、第1の係合部を備え、前記固定部材は、前記第1の係合部と係合可能な第2の係合部を備えている請求項1ないし6のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項9】
前記封止部材および前記内筒の後端部は、該内筒後端部からの前記封止部材の離脱を抑制する係合手段を備えている請求項1ないし8のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項10】
前記遠心分離用沈殿管は、生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去するためのものである請求項1ないし9のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項11】
前記遠心分離用沈殿管は、生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去するためのものであり、遠心分離することにより、前記ウイルスもしくは前記細菌を前記有底管の前記採取部内に流入させることなく前記内筒内に保留させ、かつ、前記生体細胞を前記有底管の前記採取部内に採取する可能なものである請求項1ないし10のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項12】
前記有底管の先端部および前記内筒の先端部には、液体が充填されている請求項1ないし11のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項13】
前記液体は、媒質を含有するとともに、媒質濃度が前記有底管の先端側が高く、前記内筒側が低いものである請求項1ないし12のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項14】
前記生体細胞は、精子または卵子である請求項1ないし13のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項15】
前記ウイルスまたは細菌は、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、肝炎ウイルス、ヒト後天性免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、クラミジア、クラミジア・トラコマチィス、リン菌、トレポネーマ・パリーダ、軟性下疳菌、カンジタのいずれか一種もしくは2種以上のものである請求項1ないし14のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項16】
前記封止部材は前記固定部材に固定されているもしくは前記封止部材は前記固定部材と一体に形成されている請求項1ないし15のいずれかに記載の遠心分離用沈殿管。
【請求項17】
生体細胞を含有する液体より、ウイルスもしくは細菌を除去し、生体細胞を採取するための生体細胞採取用チューブであって、一端から他端まで貫通した通路を備えるチューブと、該チューブ内に収納され、水分と接触することにより実質的に液密状態を形成可能なシール用部材層と、該シール用部材層より前記チューブの一端側でありかつ所定距離離間した位置に充填された第1の水性液体層と、該第1の水性液体層と前記シール部材層間に設けられた第1の空気層と、前記第1の水性液体層と所定距離離間した位置に充填された第2の水性液体層と、該第2の水性液体層と前記第1の水性液体層間に設けられた第2の空気層と、前記第2の水性液体層と接触するように設けられるとともに、前記チューブの一端部に位置するウイルスもしくは細菌捕捉用の粘性物質含有液体層を備えることを特徴とする生体細胞採取用チューブ。
【請求項18】
前記生体細胞採取用チューブは、他端に液体吸引器具接続用コネクターを備えている請求項17に記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項19】
前記生体細胞採取用チューブは、他端側が液体吸引器具接続可能部となっている請求項17に記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項20】
前記生体細胞採取用チューブは、他端に直接もしくはコネクターを介して接続された液体吸引器具を備えている請求項17に記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項21】
前記水分と接触することにより実質的に液密状態を形成可能なシール用部材層は、水膨潤性物質を含有する通気性部材により形成されている請求項17ないし20のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項22】
前記粘性物質含有液体層が含有する粘性物質は、水溶性粘質高分子化合物である請求項17ないし21のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項23】
前記粘性物質含有液体層が含有する粘性物質は、水溶性粘質多糖類である請求項17ないし21のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項24】
前記粘性物質含有液体層が含有する粘性物質は、グリコサミノグリカン、グリクロナン、メチルセルロース、デキストラン、ペクチン、デンプン、アラビアガム、グアーガムからなる群より選択された少なくとも一種のものである請求項17ないし21のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項25】
前記グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ケラトポリ硫酸またはそれらの塩もしくはそれらの誘導体からなる群より選択された少なくとも一種のものである請求項24に記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項26】
前記生体細胞は、精子または卵子である請求項17ないし25のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項27】
前記ウイルスまたは細菌は、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、肝炎ウイルス、ヒト後天性免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、クラミジア、クラミジア・トラコマチィス、リン菌、トレポネーマ・パリーダ、軟性下疳菌、カンジタのいずれか一種もしくは2種以上のものである請求項17ないし26のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項28】
前記第1の水性液体層は、女性ホルモンを含有している請求項17ないし27のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。
【請求項29】
生体細胞採取用チューブは、前記第1の水性液体層と前記第1の空気層との間に設けられた女性ホルモン含有層を備えている請求項17ないし27のいずれかに記載の生体細胞採取用チューブ。

【国際公開番号】WO2005/030399
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514322(P2005−514322)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014707
【国際出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(593037553)株式会社北里サプライ (5)
【Fターム(参考)】