説明

遠心力付与装置及び検体液分析装置

【課題】マイクロチップの回転角度位置を自動で変更することが可能な遠心力付与装置及び検体液分析装置を提供する。
【解決手段】検体液分析装置100を構成する遠心力付与装置2を、回転アーム20と、その回転軸であるアーム回転軸21と、アーム回転軸21に回転駆動力を付与するアーム回転機構22と、回転アーム20の両端に設けられた、回転台回転軸24と、その上端部に接合されたチップ回転台23と、その上部に設けられたチップ保持部26と、回転台回転軸24に回転駆動力を付与する回転台回転機構25と、回転台回転機構25に回転駆動力を生じさせるための動力を伝達する回転台駆動力伝達機構27とを含んだ構成とし、回転台駆動力伝達機構27を他の構成部とは独立に設け、回転台駆動力伝達機構27のプッシャ27gによって、回転台回転機構25の伝達部25cを突き上げることによって、回転台回転軸24にその回転駆動力を伝達する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップに遠心力を付与する装置に係り、特に、マイクロチップの回転角度位置を自動で変更できる遠心力付与装置及び検体液分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体液として、例えば血液を採取し、該採取した血液を遠心分離して、血液中の赤血球、白血球、リンパ球、血小板、血液凝固因子などを分離し、該分離によって得られた血清などの成分のpH値、酸素あるいは二酸化炭素などの濃度を測定する分析方法がある。
測定方法としては、例えば、血清などの被検査液に試薬を加えることによって得られた吸光成分を含有する測定対象液に対して光源から放射された光を照射し、これにより測定対象液を透過した光を受光部に受光させることによって得られる吸光度から被検査液中の検出対象成分の濃度を算出する。
【0003】
また、近年、μ−TAS(Total Analysis System)やLab.on.Chip(マイクロ全分析システムやチップ上研究室)と称されるマイクロチップを使用した分析方法が注目されている。
例えば、数cm角のチップ上にマイクロキャピラリと呼ばれる微細な溝状構造物を形成し、これに蓋をして流路を構成したマイクロチップを使用する。例えば、DNAなどを中性ゲル中にいれ、DNAは電荷を有するので電気泳動によりマイクロキャピラリ流路中を移動させ、分子量の相違による総電荷相違により分離する。また、マイクロキャピラリ中を移動する物質に途中から他の試薬を入れ、先述した吸光度の分析など、試薬による反応を検出する研究も盛んに行われている。
【0004】
また、検体液の分析に用いるマイクロチップとしては、例えば、特許文献1に記載の検査チップなどがある。
特許文献1の検査チップは、試料中の対象成分を定量する少なくとも1つの定量部を有し、定量部は、検査チップを所定の回転軸を中心として回転させることにより、試料から対象成分を遠心分離する遠心分離管と、遠心分離管の一方の端部に接続され、回転軸を中心とした回転により対象成分を秤量するための秤量管と、秤量管に接続され、対象成分を前記遠心分離管から秤量管に移送する移送手段と、試薬が貯蔵される少なくとも1つの試薬溜と、試薬溜及び秤量管に接続されており、回転軸を中心とした再度の回転により秤量管から導入される対象成分が、対象成分が前記回転軸を中心とした回転により試薬溜から導入された試薬と混合される混合部と混合部に接続され、試薬及び対象成分が混合された混合物質を通過させる光検出路と、光検出路に接続され、光検出路に光を導入するための光導入口と、光検出路に接続され、光検出路内を通過後の光を取り出すための光導出口とを有している。
【0005】
また、上記特許文献1の検査チップを遠心分離する装置として、例えば、特許文献2に記載のマイクロチップ用遠心分離機などがある。
特許文献2のマイクロチップ用遠心分離機は、分離部、秤量部、混合部を有するマイクロチップを、所定の回転角度に保持して分離を行うマイクロチップ用遠心分離装置において、遠心分離装置は、モータによって回転される第1の回転体と、マイクロチップを保持し、第1の回転体の回転軸を中心に回転自在に設けられた1個又は複数個の第2の回転体とを備え、所定の回転角度の状態で、モータが回転される時、第1、第2の回転体、及びマイクロチップが一体に回転されて遠心分離が行なわれる第1の態様と、モータの回転を停止している状態で、第2の回転体を回転させ、マイクロチップを他の所定の回転角度に保持する第2の態様とを有する。
【特許文献1】特開2005−114438号公報
【特許文献2】特開2006−110491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の従来技術では、マイクロチップに直接手を触れることなく、その回転角度位置を変更することはできるが、マイクロチップの回転角度位置の変更にはやはり人手が必要であり、例えば、多数のマイクロチップを連続して分析する必要がある場合には、非常に煩わしい作業を伴うこととなる。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであり、マイクロチップの回転角度位置を自動で変更することが可能な遠心力付与装置及び検体液分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の遠心力付与装置は、
所定方向への遠心力の付与に応じて、少なくとも、検体液を遠心分離し該遠心分離後の検体液の分離成分をチップの所定位置に案内可能な検体液分析用のマイクロチップを、前記所定方向に対応する姿勢を保持した状態で回転して、前記マイクロチップに対して前記所定方向に遠心力を付与する遠心力付与装置であって、
基台と、該基台に対して垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第1回転体と、回転駆動力を発生する第1アクチュエータを含み、該第1アクチュエータの回転駆動力を前記第1回転体に伝達して該第1回転体を回転駆動する第1駆動機構と、前記第1回転体に、該第1回転体の回転中心位置から所定距離を離した位置を回転中心位置として垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第2回転体と、前記第2回転体に対して該第2回転体と共に回転可能に設けられた、前記マイクロチップを保持するチップ保持部と、第2アクチュエータを含み、該第2アクチュエータの動力を前記第2回転体にその回転駆動力として伝達して前記第2回転体を回転駆動する第2駆動機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、例えば、チップ保持部に所定方向の遠心力が付与される姿勢でマイクロチップを装着し、第1アクチュエータを回転駆動すると、例えば第1回転体がその中心位置において基台に軸支されている場合は、回転駆動力が、第1回転体の回転軸である第1回転軸に伝達され、第1回転体がその中心位置を回転中心として垂直方向の軸周りに回転駆動する。第1回転体が回転駆動すると、チップ保持部に保持されたマイクロチップが、その姿勢を保持した状態で回転する。この回転によって、マイクロチップに対して所定方向の遠心力が付与される。
【0009】
一方、第2アクチュエータが駆動すると、その動力は、第2駆動機構によって回転駆動力として、例えば第2回転体が第1回転体に軸支されている場合は、第2回転体の回転軸である第2回転軸へと伝達され、第2回転体がチップ保持部と共に回転駆動する。これにより、チップ保持部に保持されたマイクロチップの回転角度位置が変更される。つまり、マイクロチップの姿勢が変更される。
【0010】
ここで、上記所定方向は、マイクロチップの構造に応じて複数種類の方向が対応する。例えば、マイクロチップが、上記構造に加え、分離成分を、測定に必要な量だけ秤量する秤量部を有する構造の場合は、検体液を遠心分離するための方向と分離成分を測定部へと案内するための方向とに加え、分離成分を秤量するための方向が対応することになる。また、遠心分離するための方向と測定部へと案内するための方向とが同じ方向になるなど、遠心力を付与する方向が重複する場合もある。
【0011】
〔発明2〕 更に、発明2の遠心力付与装置は、発明1に記載の遠心力付与装置において、
前記第2駆動機構を、前記第2アクチュエータを含み該該第2アクチュエータの駆動力を第2伝達機構に伝達する第1伝達機構と、該第1伝達機構から伝達された駆動力を前記第2回転体の回転駆動力として該第2回転体に伝達する第2伝達機構とから構成し、
前記第1伝達機構を他の構成部とは独立に前記基台に設け、前記第2伝達機構を前記第1回転体に設けたことを特徴とする。
【0012】
このような構成であれば、他の構成部とは独立に設けられた第1伝達機構によって、第2アクチュエータの動力が、第2回転体を含む構成部に設けられた2伝達機構に伝達され、この伝達された動力が回転駆動力として第2回転体に伝達される。これにより、第2回転体が回転して、チップ保持部に保持されたマイクロチップの回転角度位置が変更される。
【0013】
〔発明3〕 更に、発明3の遠心力付与装置は、発明2の遠心力付与装置において、
前記第1伝達機構を、第1伝達部材を有し、前記第2アクチュエータの動力によって第1伝達部材を移動させて該第1伝達部材を前記第2伝達機構の第2伝達部材と係合させることで前記第2アクチュエータの動力を前記第2伝達機構に伝達する構成とし、
前記第2伝達機構を、前記第1伝達部材と係合する前記第2伝達部材を有し、該第2伝達部材を介して伝達された前記第2アクチュエータの動力を前記第2回転体の回転駆動力として前記第2回転体に伝達する構成としたことを特徴とする。
【0014】
このような構成であれば、第1伝達機構において第2アクチュエータの動力によって第1伝達部材が移動すると、該移動した第1伝達部材が、第2伝達機構の第2伝達部材と係合し、該係合によって、第2アクチュエータの動力が第2伝達部材を介して第2伝達機構の第2回転体に回転駆動力を伝達する機構部に伝達される。これにより、第2回転体が回転して、チップ保持部に保持されたマイクロチップの回転角度位置が変更される。
【0015】
ここで、第1伝達部材と第2伝達部材とを係合させて動力を伝達するとは、第2アクチュエータがロータリアクチュエータであれば、回転駆動力を伝達することになるので、例えば、第1伝達部材及び第2伝達部材を回転自在に設け、第1伝達部材の凹部又は凸部を、第2伝達部材の凸部又は凹部に接触させて動力を伝達するなどが該当する。また、第2アクチュエータがリニアアクチュエータであれば、直進駆動力を伝達することになるので、例えば、第1伝達部材を第2伝達部材に衝突させて動力を伝達する、第1伝達部材で第2伝達部材を押して動力を伝達するなどが該当する。以下、発明6の検体液分析装置において同じである。
【0016】
また、第2伝達機構は、第2伝達部材を介して直進駆動力が伝達された場合は、この直進駆動力を第2回転体の回転駆動力へと変換して第2回転体に伝達する。また、第2伝達部材を介して回転駆動力が伝達された場合は、その回転駆動力を第2回転体に、例えば回転軸を介して伝達したり、回転軸及び減速機を介して伝達したりする。以下、発明6の検体液分析装置において同じである。
【0017】
〔発明4〕 一方、上記目的を達成するために、発明4の検体液分析装置は、
遠心分離後の検体液の分離成分に対して光学的な測定処理を行う領域を含んでなる測定部を有し、所定方向への遠心力の付与に応じて、少なくとも、前記検体液を遠心分離し、遠心分離後の検体液の分離成分と試薬とを混合し、試薬を混合後の分離成分を前記測定部に案内可能な検体液分析用のマイクロチップを、前記所定方向に対応する姿勢を保持した状態で回転して、前記マイクロチップに対して前記所定方向に遠心力を付与し、該遠心力の付与によって前記測定部に案内された前記試薬を混合後の分離成分に対して前記測定処理を行う検体液分析装置であって、
基台と、該基台に対して垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第1回転体と、回転駆動力を発生する第1アクチュエータを含み、該第1アクチュエータの回転駆動力を前記第1回転体に伝達して該第1回転体を回転駆動する第1駆動機構と、前記第1回転体に、該第1回転体の回転中心位置から所定距離を離した位置を回転中心位置として垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第2回転体と、前記第2回転体に対して該第2回転体と共に回転可能に設けられた、前記マイクロチップを保持するチップ保持部と、第2アクチュエータを含み、該第2アクチュエータの動力を前記第2回転体にその回転駆動力として伝達して前記第2回転体を回転駆動する第2駆動機構と、前記第1回転体が所定の回転角度位置で停止しているときに、前記チップ保持部に保持されたマイクロチップの前記測定部に対して光を照射可能な光照射部と、該測定部を透過した光を受光する受光部と、該受光部で受光した光量の情報を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成であれば、上記発明1に記載の遠心力付与装置の作用に加え、例えば、第1の方向に対して遠心力が付与される姿勢でマイクロチップをチップ保持部に保持した状態で、第1アクチュエータを制御して第1回転体を回転させると、チップ保持部に保持されたマイクロチップに対して第1の方向に遠心力が付与され、例えば、マイクロチップ内の検体液溜めに溜まった検体液が遠心分離される。引き続き、第2アクチュエータを制御して第2回転体を回転し、マイクロチップの回転角度位置を、例えば所定回転方向に90°変更して、マイクロチップに対して第2の方向に遠心力が付与される姿勢を保持した状態で再び第1回転体を回転させて、マイクロチップに対して第2の方向に遠心力を付与すると、例えば、マイクロチップ内の試薬保持部に保持された試薬と検体液の分離成分とが混合し、更に該混合後の分離成分が測定部に案内される。
【0019】
更に、第1回転体が所定の回転角度位置に停止しているときに、チップ保持部に保持されたマイクロチップの測定部に対して、光照射部によって例えばレーザ光(近赤外光)などの光を照射し、受光部によって照射光が測定部(及びそこにある分離成分)を透過後の光を受光し、出力部によって受光部の受光により得られた光量の情報(例えば、吸光度情報など)を、内部の分析器や、外部機器等に出力することができる。
【0020】
ここで、上記所定方向は、マイクロチップの構造に応じて複数種類の方向が対応する。例えば、マイクロチップが、上記構造に加え、分離成分を、測定に必要な量だけ秤量する秤量部を有する構造の場合は、検体液を遠心分離するための方向と分離成分を試薬と混合し測定部へと案内するための方向とに加え、分離成分を秤量するための方向が対応することになる。また、遠心分離するための方向と、試薬と混合し測定部へと案内するための方向とが同じ方向になるなど、方向が重複する場合もある。
【0021】
〔発明5〕 更に、発明5の検体液分析装置は、発明4の検体液分析装置において、
前記第2駆動機構を、前記第2アクチュエータを含み該該第2アクチュエータの駆動力を第2伝達機構に伝達する第1伝達機構と、該第1伝達機構から伝達された駆動力を前記第2回転体の回転駆動力として該第2回転体に伝達する第2伝達機構とから構成し、
前記第1伝達機構を他の構成部とは独立に前記基台に設け、前記第2伝達機構を前記第1回転体に設けたことを特徴とする。
【0022】
このような構成であれば、他の構成部とは独立に設けられた第1伝達機構によって、第2アクチュエータの動力が、第2回転体を含む構成部に設けられた2伝達機構に伝達され、この伝達された動力が回転駆動力として第2回転体に伝達される。これにより、第2回転体が回転して、チップ保持部に保持されたマイクロチップの回転角度位置が変更される。
【0023】
〔発明6〕 更に、発明6の検体液分析装置は、発明5の検体液分析装置において、
前記第1伝達機構を、第1伝達部材を有し、前記第2アクチュエータの動力によって第1伝達部材を移動させて該第1伝達部材を前記第2伝達機構の第2伝達部材と係合させることで前記第2アクチュエータの動力を前記第2伝達機構に伝達する構成とし、
前記第2伝達機構を、前記第1伝達部材と係合する前記第2伝達部材を有し、該第2伝達部材を介して伝達された前記第2アクチュエータの動力を前記第2回転体の回転駆動力として前記第2回転体に伝達する構成としたことを特徴とする。
【0024】
このような構成であれば、第1伝達機構において第2アクチュエータの動力によって第1伝達部材が移動すると、該移動した第1伝達部材が、第2伝達機構の第2伝達部材と係合し、該係合によって、第2アクチュエータの動力が第2伝達部材を介して第2伝達機構の第2回転体に回転駆動力を伝達する機構部に伝達される。これにより、第2回転体が回転して、チップ保持部に保持されたマイクロチップの回転角度位置が変更される。
【0025】
〔発明7〕 更に、発明7の遠心力付与装置は、発明7の遠心力付与装置において、前記第2駆動機構は、回転駆動力を発生する前記第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの回転駆動により回転するカムと、前記カムに従動して直線方向に変位可能なシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられたプッシャとを有し、前記第2駆動機構は、前記プッシャの直進移動を回転運動に変換することにより前記第2回転体を回転させる。
【0026】
このような構成であれば、第2アクチュエータが駆動すると、第2アクチュエータの駆動力によりカムが回転し、カムに従動してシャフトが直進移動する。これに伴って、プッシャが直進移動し、第2回転手段により、プッシャの直進移動が回転運動に変換されて第2回転体が回転する。
【0027】
〔発明8〕 更に、発明8の検体液分析装置は、発明4の検体液分析装置において、前記第2駆動機構は、回転駆動力を発生する前記第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの回転駆動により回転するカムと、前記カムに従動して直線方向に変位可能なシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられたプッシャとを有し、前記第2駆動機構は、前記プッシャの直進移動を回転運動に変換することにより前記第2回転体を回転させる。
【0028】
このような構成であれば、第2アクチュエータが駆動すると、第2アクチュエータの駆動力によりカムが回転し、カムに従動してシャフトが直進移動する。これに伴って、プッシャが直進移動し、第2回転手段により、プッシャの直進移動が回転運動に変換されて第2回転体が回転する。
【0029】
〔発明9〕 更に、発明9の検体液分析装置は、発明4乃至6並びに8のいずれか1の検体液分析装置において、前記チップ保持部の回転軌跡外の位置から前記測定処理を行うための前記第1回転体の回転角度位置である測定回転角度位置まで少なくとも前記光照射部及び前記受光部を含んで構成される光情報測定部を移動させる移動手段を備え、前記移動手段は、回転駆動手段と、前記回転駆動手段の回転駆動により回転する円盤と、前記円盤の盤面上に一端が固定されたコネクティングロッドと、前記コネクティングロッドの他端に連結し前記光情報測定部の移動方向に変位可能なシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられた伝達部材とを有し、前記伝達部材の直進移動により前記光情報測定部を移動させる。
【0030】
このような構成であれば、回転駆動手段が駆動すると、回転駆動手段の駆動力により円盤が回転し、円盤に従動してコネクティングロッドの一端が回転する。これに伴って、シャフトおよび伝達部材が一体に光情報測定部の移動方向に直進移動し、伝達部材の直進移動により、チップ保持部の回転軌跡外の位置から測定回転角度位置まで光情報測定部が移動する。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、発明1の遠心力付与装置によれば、所定の回転角度位置で姿勢の保持されたマイクロチップに対して所定方向に遠心力を付与することができると共に、人手をかけずに、マイクロチップの回転角度位置を所定の回転角度位置に変更することができるので、マイクロチップを用いた検体液の測定処理を効率よく行うことができるという効果が得られる。
【0032】
また、発明2及び3の遠心力付与装置によれば、第2アクチュエータを含む第1伝達機構を他の構成部(第1回転部、第1駆動機構、第2回転体、第2伝達機構など)と独立に設けたので、第1回転体及び第2回転体を回転時に、第1伝達機構(特に第2アクチュエータ)の重量分の負荷を削減することができるという効果が得られる。また、第1回転体を回転させたときに複数の第2伝達機構が共通に通過する位置に合わせて1つの第1伝達機構を設けることで、複数の第2伝達機構に1つの第1伝達機構で動力を伝達することができ、これにより、コストを低減することができるという効果も得られる。
【0033】
また、発明4乃至6の検体液分析装置によれば、発明1乃至3の前記効果に加え、マイクロチップの姿勢の変更及び所定方向に対応する姿勢を保持しながらの遠心力の付与(これにより、検体液の遠心分離、試薬との混合、測定部への移動などが行われる)、試薬の混合された分離成分の特性の測定、測定結果の出力までの一連の処理を人手をかけずに行うことができるので、検体液の分析処理にかかる負担を軽減することができるという効果が得られる。
【0034】
更に、発明7の遠心力付与装置によれば、プッシャの直進速度の調整が可能となり、チップの回転時の衝撃を低減することができるという効果が得られる。
また、発明8の検体液分析装置によれば、プッシャの直進速度の調整が可能となり、チップの回転時の衝撃を低減することができるという効果が得られる。
更に、発明9の検体液分析装置によれば、少なくとも光照射部及び受光部からなる測定処理部の移動時にのみ回転駆動手段を駆動すればよいので、発熱を抑えることができ、装置内温度管理を精密に行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図21は、本発明に係る遠心力付与装置及び検体液分析装置の第1の実施の形態を示す図である。
本実施の形態では、本発明に係る検体液分析装置100を、検体液溜め、試薬溜め、秤量部、試薬混合部、測定部200a、遠心分離用及び検体液の案内用のマイクロキャピラリ流路などが形成された複数の基板を積層した構造のマイクロチップ200に適用する。
【0036】
また、本実施の形態において、マイクロチップ200は、レーザ光を透過させる特性を有した材料を用いて形成されている。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などの公知の樹脂で形成されている。
【0037】
まず、図1及び図2に基づき、本発明に係る検体液分析装置の概略構成を説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明に係る検体液分析装置100の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、本発明に係る検体液分析装置100の概略構成を示す平面図である。
検体液分析装置100は、図1(a)及び(b)に示すように、中空構造の基台1と、該基台1に配設された、マイクロチップ200に遠心力を付与する遠心力付与装置2と、基台1に配設された、マイクロチップ200の測定部200aに対してレーザ光を照射し且つ測定部200aを透過したレーザ光(以下、透過光と称す)を受光する光学式測定装置3と、基台1の垂直方向の下部に基台1と内部空間を共有して装着された、装置内の温度を一定となるように調整する温度調整装置4と、基台1の上面部を覆う、該上面部に対して外界からの光を遮断する上面カバー5とを含んで構成される。
【0038】
また、図2に示すように、基台1の上面部を形成するプレート(以下、上部プレートと称す)には、その長尺方向を左右方向とし、短尺方向を前後方向とすると、左寄りに遠心力付与装置2が配設され、その右隣に光学式測定装置3が配設されている。更に、上部プレートの前方側の辺に沿って温度調整用の通風口10(矩形)、16(円形)がそれぞれ設けられ、上部プレートの後方側の辺に沿って温度調整用の通風口11(矩形)、17(矩形)がそれぞれ設けられている。
【0039】
また、基台1の内部に面した上部プレートの下面における通風口10の近傍には、該通風口10を覆う矩形のプレートが開閉自在に取り付けられた構成の開閉シャッタ15が設けられており、プレートを開閉させることで、通風口10の開口部の面積を変化させて、基台1の上面部へと流入する空気の通風量を調整することが可能となっている。
更に、上部プレートには、図2に示すように、遠心力付与装置2の後方側に、センサ設置用のプレート12が立設されており、該プレート12には、フォトリフレクタなどの反射型の光学式のセンサ13、14が、その検出方向を遠心力付与装置2側に向けて取り付けられている。
【0040】
次に、図3に基づき、遠心力付与装置2の構成を説明する。
ここで、図3は、遠心力付与装置2の概略構成を示す正面図である。
遠心力付与装置2は、図3に示すように、板面矩形の板状部材から構成される回転アーム20と、回転アーム20の回転軸であるアーム回転軸21と、アーム回転軸21に回転駆動力を付与するアーム回転機構22とを含んで構成されている。
【0041】
アーム回転軸21は、基台1の上部プレートに設けられた軸穴に軸受(例えば、転がり軸受)を介して挿通され、上部プレートに対して、垂直方向の軸周りに回転自在に支持されている。また、アーム回転軸21の上端には、その軸心位置と回転アーム20の中心位置とを一致させて該回転アーム20が接合され、アーム回転軸21の下端には、アーム回転機構22を構成する回転駆動源の出力軸が連結されている。
【0042】
ここで、図4は、アーム回転機構22の詳細な構成を示すブロック図である。
アーム回転機構22は、図4に示すように、アーム回転軸21の回転駆動源であるステッピングモータ22aと、該ステッピングモータ22aを駆動する駆動回路22bとを含んで構成される。
本実施の形態において、ステッピングモータ22aは、HB型(Hybrid Type)の2相励磁方式のモータであり、駆動回路22bから供給される相電流によって各極を構成する2つのコイルを順次励磁し、モータ出力軸(回転子)を回転駆動する。
【0043】
更に、ステッピングモータ22aは、マイクロチップ200の姿勢変更時や光学式測定装置3による測定処理時などにおいて、所定回転角度位置で停止した状態を保持する保持トルクを発生させるために、保持電流を流す機能を有している。
駆動回路22bは、スイッチング回路から構成され、基台1の内部に配設された不図示のモータ電源から電力を得ると共に、基台1の内部に配設された不図示の制御基板から供給される制御パルス信号に応じて回路をON/OFFし、ONの時に、ステッピングモータ22aの極を構成する2つのコイルに対して回転アーム20の回転に必要な相電流を供給する。
【0044】
また、本実施の形態においては、図4に示すように、モータ出力軸(モータ外部に減速機構を有する場合は減速後の出力軸)とアーム回転軸21とはカップリング等により直結されており、モータ出力軸の回転力はアーム回転軸21にダイレクトに伝達される。
以上の構成により、遠心力付与装置2は、ステッピングモータ22aがモータ出力軸を回転駆動して、該モータ出力軸の回転力がアーム回転軸21に伝達されると、アーム回転軸21が回転し、この回転に連動して、回転アーム20がその中心位置を回転中心として垂直方向の軸周りに回転する。
【0045】
なお、本実施の形態において、遠心力付与装置2は、回転アーム20を、時計回り方向に回転して、マイクロチップ200に遠心力を付与するように制御される。
図3に戻って、遠心力付与装置2は、更に、回転アーム20の長尺方向の一端及び他端に貫通して設けられた垂直方向の軸穴に、それぞれ、チップ回転台23の回転軸である回転台回転軸24が、不図示の軸受を介して垂直方向の軸周りに回転自在に且つ上下方向に移動不能に貫装されている。更に、回転台回転軸24の上端部に、チップ回転台23が、その中心位置と回転台回転軸24の軸心位置とを一致させて接合されている。また、回転台回転軸24の下端側の一部は、該回転台回転軸24を回転駆動する回転台回転機構25のケース内に挿入されている。
【0046】
更に、チップ回転台23上には、マイクロチップ200を保持するチップ保持部26がチップ回転台23と共に回転可能に設けられている。以下、図5に基づき、チップ保持部26の詳細な構成を説明する。ここで、図5(a)は、マイクロチップ200の形状例を示す図であり、同図(b)及び(c)はチップ保持部26の構造例を示す図であり、同図(d)は、マイクロチップ200の装着例を示す図であり、同図(e)及び(f)は、マイクロチップ200の装着されたチップ保持部26の側面図及び平面図である。
【0047】
ここで、図5(a)に示すように、マイクロチップ200は、平面視すると正方形状となっており、光学式測定装置3において試薬と混合された分離成分に対して測定処理を行うための3つの測定ポイントを有する測定部200aが右辺に沿って設けられている。
一方、チップ保持部26は、図5(b)及び(c)に示すように、マイクロチップ200を内嵌可能な枠部26aを有し、該枠部26aの辺上(図5(b)及び(c)においては左辺上)に、チップ押さえ部26bが設けられた構成となっている。
【0048】
ここで、チップ押さえ部26bは、図5(c)に示すように、押さえ部材26b1に矩形の板ばね26b2の長尺方向の一端を支持(例えば、ネジ止め)し、板ばね26b2の長尺方向の他端がチップ回転台23に支持された構造となっている。そして、マイクロチップ200の装着時に、押さえ部材26b1の下端部が、マイクロチップ200の上面の一部を上から押さえつけるようになっている。
【0049】
更に、チップ保持部26には、枠部26aの辺上(図5(b)及び(c)においては、後方側の辺上及び右辺上)に、先述した基台1の上部プレートに設けられたセンサ13、14の検出対象である角状の被検出部26c及び26dが立設されている。これら被検出部26c、26dは、回転アーム20が、その長尺方向と上部プレートの長尺方向とが直交する回転角度位置(以下、姿勢変更位置と称す)に停止しているときに、センサ13、14によって検出され、内部の制御基板において、その検出結果に基づき、回転アーム20の回転角度位置やマイクロチップ200の姿勢(回転角度位置)が判断され、回転アーム20の位置決めやマイクロチップ200の姿勢変更などの各種制御が行われる。
【0050】
従って、センサ設置用のプレート12は、少なくとも、被検出部26c及び26dの停止位置よりも高く構成され、センサ13、14は、プレート12における被検出部26c及び26dを検出可能な高さ位置に設けられている。
更に、回転アーム20が姿勢変更位置に停止しているときに、センサ13、14は、その検出部が、被検出部26c及び26dの正面にくるように配設されている。そして、センサ13、14は、被検出部26c及び26dに対して、反射光が受光できるように所定の入射角度をつけて光を照射し、その反射光を受光するように構成されている。なお、反射光が受光されない場合は、そのセンサの正面に被検出部が停止していないことになる。
【0051】
この構成によって、センサ13、14の検出状態から、マイクロチップ200の姿勢を判断することができる。本実施の形態においては、被検出部26c及び26dが両方とも検出された場合、両方とも検出されなかった場合、センサ13で被検出部26dのみが検出された場合、センサ14で被検出部26cのみが検出された場合の4通りのパターンからマイクロチップ200の4種類の姿勢(0[°]、90[°]、180[°]、270[°])を判断する。
【0052】
また、チップ保持部26にマイクロチップ200を装着するときは、図5(d)に示すように、板ばね26b2を弾性変形させて外側によけ、マイクロチップ200を枠部26aと平行に該枠部26aの上部に持っていき、図5(e)に示すように、全体を枠部26aの枠内へと垂直に押し込み、しかる後に、板ばね26b2の弾性変形を解除する。これにより、板ばね26b2の復元力によって押さえ部材26b1が元の位置に復帰し、図5(f)に示すように、マイクロチップ200の外周を枠部26aがハチマキ状に囲んだ状態で、更にチップ押さえ部26bの下端部がマイクロチップ200の一端部を上方から押さえつける状態となる。
【0053】
つまり、チップ保持部26は、マイクロチップ200の外周を枠部26aが囲んで保持するので、マイクロチップ200がどのような回転角度位置にあっても、遠心力の付与中に遠心方向の力に対してマイクロチップ200が外れるのを阻止でき、且つ、振動などによって浮上方向に力が発生しても、押さえ部材26bによって、マイクロチップ200を浮上し難くできる。
【0054】
また、遠心力付与装置2は、図6(a)に示すように、回転アーム20の長尺方向の両端における、該回転アーム20の中心位置に対して対称の位置に、同じ重量の、チップ回転台23、回転台回転軸24、回転台回転機構25及びチップ保持部26を含むマイクロチップ200の回転角度位置(姿勢)を変更する機構部(以下、チップ回転機構部と称す)がそれぞれ設けられた構成となっている。ここで、図6(a)〜(c)は、遠心力付与装置2の遠心力付与時の回転バランスを均衡させる構成を示す図である。
【0055】
この構成により、遠心力付与装置2は、図6(b)及び(c)に示すように、回転アーム20の両端にあるチップ保持部26にマイクロチップ200をそれぞれ装着することで、両端にかかる重量を略同一にすることができ、重量的なバランスを平衡に保つことができる。従って、回転アーム20をバランスの安定した状態で高速に回転させることができる。
【0056】
また、2つのマイクロチップ200に対して同時に遠心力を付与することができるので、大量のマイクロチップ200に対して効率よく遠心力の付与処理を行うことができる。
なお、2つ同時に遠心力を付与する構成にする必要が無いときは、例えば、一方のチップ回転機構部を、他方の分析を行う側のチップ回転機構部と重量を合わせるだけで簡易な構成としても良い。この場合は、例えば、様々な種類の(例えば、形状は同じで重量は異なる)マイクロチップに適用することを想定するならば、一方のチップ回転機構部には、チップ保持部26だけは設け、該チップ保持部26に対して、マイクロチップ200と同じ重量のダミーチップを装着させることで、他方のチップ回転機構部と重量バランスをとる構成とする。また、一定重量のマイクロチップ専用とする場合は、マイクロチップの重さも含んだ重量で一方のチップ回転機構部を構成しても良い。これにより、より簡易な構成とすることができる。
【0057】
これらの構成により、重量バランスを平衡に保つことができると共に、マイクロチップに対して遠心力の付与を行わない側のチップ回転機構部にかかるコストを低減することができる。
図3に戻って、遠心力付与装置2は、更に、回転台回転機構25に回転台回転軸24の回転力を発生させるための動力を伝達する回転台駆動力伝達機構27を含んで構成される。
【0058】
回転台駆動力伝達機構27は、ソレノイドの駆動力によって、プッシャ27gを上方へと直進移動させて、基台1の上部プレートにおける姿勢変更位置に停止している回転台回転機構25の伝達部25cを突き上げることで、回転台回転機構25に上方向の直進運動力を伝達する構成を有している。
【0059】
次に、図7に基づき、回転台回転機構25の詳細な構成を説明する。
ここで、図7は、回転台回転機構25の詳細な構成を示す側面図である。
回転台回転機構25は、図7に示すように、チップ回転台23の下方、回転アーム20の下面に固定支持されており、内周が円筒形状のケース内に、回転台回転軸24の一部が上方から挿入された構成となっている。ケースの上面は回転アーム20の下面部で蓋をした構成となっており、ケースの下面部には開口部が設けられている。
【0060】
回転台回転機構25は、更に、ケース内に、円筒形状のカム25aが、その内側に回転台回転軸24の一部を挿通して、回転台回転軸24に沿って摺動自在に設けられている。更に、回転台回転軸24及びカム25aを挟んだケース内の壁に、垂直方向に延びる2つのガイド部25bが水平方向に互いに対向する位置に形成されている。
ここで、図8(a)は、カム25aの正面図であり、(b)は、カム25aの底面図である。
【0061】
カム25aは、図8(a)に示すように、その円筒形状の上端面に、円周方向に沿って連続して形成された8つの傾斜面25mと、各傾斜面25mの背面を形成する8つの壁25nとから成る上端カム面25jが形成されている。傾斜面25mは、壁25nの上端を傾斜の頂上とし、この頂上から上端面の時計回り方向に向かって下っていく傾斜を有している。
【0062】
カム25aは、更に、図8(a)及び(b)に示すように、円筒形状の下端面に、円周方向に沿って連続して形成された8つの傾斜面25pと、後述する下側カム用ピン25eを嵌合する8つのピン嵌合溝25qと、各傾斜面25pの背面を形成する8つの壁25rとから成る下端カム面25oが形成されている。傾斜面25pは、図8(b)に示すように、底面側から見て、図中の「山」の部分が傾斜の頂上となり、そこからピン嵌合溝25qの傾斜側の下端位置を傾斜の終わりとして時計回り方向に変位する傾斜を有している。つまり、下端カム面25oは、上下逆さまに見ると、上端カム面25jの傾斜面25mの向きとは逆の傾斜方向の傾斜面25pが形成されている。なお、図8(a)の視点で見ると、図8(b)に示す「山」の部分は、下端カム面25oの最も下方に位置することになる。
【0063】
ピン嵌合溝25qは、各傾斜面25pとその隣の傾斜面25pの背面となる壁25rとの間に、該壁25rの壁面に沿って真っ直ぐ上に向かって形成されたストレートの窪みである。
また、上端カム面25jの各傾斜面25mの傾斜角度と、下端カム面25oの各傾斜面25pの傾斜角度とは、上端カム面25jの方が下端カム面25oよりも大きい角度(傾斜が急になる角度)に形成されている。そのため、上端カム面25jの壁25nの高さは、下端カム面25oの壁25rの高さよりも高くなっている。
【0064】
更に、カム25aは、各傾斜面25mの頂上となる壁25nの頂上の位置と、各傾斜面25pの頂上となる壁25rの頂上の位置とを、それぞれ所定円周角度(例えば、22.5[°])ずつ周方向にずらして配設している。
更に、図8(a)及び(b)に示すように、カム25aの下端部にはその外周に沿って、円環形状の伝達部25cがカム25aと一体に形成されている。伝達部25cは、その径方向に互いに対向する位置に、ケースの内壁に設けられたガイド部25bと係合する2つの係合溝25tが形成されている。また、伝達部25cの径の長さは、ケース内周の径の長さよりもわずかに短い長さ(略同じ長さ)となっている。
【0065】
そして、図7に示すように、カム25aと一体形成された伝達部25cは、ケースの内壁に設けられた2つのガイド部25bを、伝達部25cの2つの係合溝25tにそれぞれ係合して、カム25a及び伝達部25cがガイド部25b及び回転台回転軸24に沿って上下方向に摺動自在にケース内に配設されている。つまり、ガイド部25bによって、カム25a及び伝達部25cを、これらが回転台回転軸24の軸周りに回転するのを阻止しながら上下動させることができる。
【0066】
一方、ケース内に挿入された回転台回転軸24の挿入部分の外周面には、カム25aの上端カム面25jの上方向の移動範囲内の高さ位置に、2本の上側カム用ピン25dが、回転台回転軸24の円周方向に沿って等間隔に且つ同じ高さ位置に設けられている。更に、ケース内に挿入された回転台回転軸24の挿入部分の外周面には、カム25aの下端カム面25oの下方向の移動範囲内の高さ位置に、4本の下側カム用ピン25eが、円周方向にそれぞれ等間隔に且つ同じ高さ位置に設けられている。
【0067】
また、上側カム用ピン25dは、カム25aが最下端の位置にあるときに、少なくともその上端カム面25jの各傾斜面25mと上側カム用ピン25dとが当接しない高さ位置に設けられている。また、下側カム用ピン25eは、カム25aが最上端の位置に移動したときに、少なくともその下端カム面25oの各傾斜面25pと下側カム用ピン25eとが当接しない高さ位置に設けられ、且つカム25aが最下端の位置に移動したときに、下側カム用ピン25eが、下端カム面25oのピン嵌合溝25qに嵌合する高さ位置に設けられている。つまり、カム25aが最下端の位置にあるときは、図8(b)に示すように、4本の下側カム用ピン25eが、ピン嵌合溝25qに嵌合した状態となる。
【0068】
図7に戻って、回転台回転機構25は、更に、ケース内に、コイルばね25fと、該コイルばね25fの伸縮時の回転による両端部の摺動抵抗を小さくするためのリング状の低摺動部材25g(例えば、フッ素樹脂等の樹脂材料によって作製されたリング形状のスペーサなど)とが配設されている。
コイルばね25fは、カム25aおよび伝達部25cをケース内に配設する際に、回転台回転軸24の下端側の一部とカム25aとを内側に挿通して、その上端部を回転アーム20の下面に、下端部を伝達部25cの上面に向けた状態でケース内に配設される。
【0069】
また、コイルばね25fは、該コイルばね25fの縮み時の捩れ力による回転方向と該ばね25fの巻き方向とが同じで、且つ該ばね25fの縮んだ状態から復元時の回転方向と該ばね25fの前記巻き方向とは逆の方向とが同じ方向となる構造を有している。これにより、コイルばね25fの両端部の摺動抵抗を低減することができ、滑らかな伸縮動作を行うことができる。
【0070】
低摺動部材25gは、コイルばね25fを設ける際に、回転台回転軸24を内側に挿通して、コイルばね25fの上端部と回転アーム20の下面との間と、コイルばね25fの下端部と伝達部25cの上面との間にそれぞれ介装される部材である。低摺動部材25gを介装することにより、上記したコイルばね25fの巻き方向による摺動抵抗の低減に加え、更にコイルばね25fの両端部の摺動抵抗を低減することができ、より滑らかな伸縮動作を行うことができるようになる。
【0071】
また、本実施の形態においては、カム25a、上側カム用ピン25d、下側カム用ピン25e及び回転台回転軸24を形成する部材を、かじりの発生し難くなる材質の組み合わせで構成している。
本実施の形態においては、カム25a、上側カム用ピン25d、下側カム用ピン25e、回転台回転軸24を形成する部品の材質の組み合わせとして、以下の(A)〜(D)に示す4通りのいずれかを用いる。
【0072】
(A)ナイロンで形成したカム25aと、例えば焼き入れしたS45Cなどの炭素鋼で形成した上側及び下側カム用ピン25d及び25eと、鉄で形成した回転台回転軸24との組み合わせ。
(B)例えばSUS304などのステンレスで形成したカム25aと、例えば焼き入れしたS45Cなどの炭素鋼で形成した上側及び下側カム用ピン25d及び25eと、鉄で形成した回転台回転軸24との組み合わせ。
(C)例えばSUS304などのステンレスで形成したカム25aと、例えば焼き入れしたS45Cなどの炭素鋼で形成した上側及び下側カム用ピン25d及び25eと、黄銅(真鍮)で形成した回転台回転軸24との組み合わせ。
(D)例えば、FC200などの鋳鉄で形成したカム25aと、例えば焼き入れしたS45Cなどの炭素鋼で形成した上側及び下側カム用ピン25d及び25eと、鉄で形成した回転台回転軸24との組み合わせ。
【0073】
つまり、同じ材質の金属同士を摺動させると、両者の親和性が高くなり「かじり(焼付)」が発生しやすくなるので、カム25a、上側カム用ピン25d、下側カム用ピン25e及び回転台回転軸24の材質を、上記(A)〜(D)のいずれかの組み合わせとすることで、摺動する部品同士による「かじり」の発生を起こし難くすることができる。
【0074】
次に、図9に基づき、回転台駆動力伝達機構27の詳細な構成を説明する。
ここで、図9は、回転台駆動力伝達機構27の詳細な構成を示す図である。
回転台駆動力伝達機構27は、図9に示すように、ソレノイド本体27aと、ソレノイドシャフト27bと、ショックアブソーバ27cと、該ショックアブソーバ27cを基台1に対して固定支持する支持ブラケット27dと、ソレノイドシャフト27bの下端部と結合された衝撃吸収ブラケット27eと、ソレノイドシャフト27bの先端部に取り付けられた緩衝部材27f(例えば、ゴムスポンジなど)と、ソレノイドシャフト27bの先端部に連結されたプッシャ27gとを含んで構成される。
【0075】
ソレノイド本体27aは、非磁性材料で形成されたハウジング内に、コイルと、該コイル内に挿入された固定鉄心と、該固定鉄心と磁気的に接続されていて前記コイルを囲む磁性材製の磁気フレームと、ハウジング内に固定鉄心に対して接近、離間移動可能に設けられた可動鉄心とを含んで構成される。本実施の形態において、ソレノイドシャフト27bは、ソレノイド本体27aの可動鉄心に設けられた貫通孔に挿通して該可動鉄心に対して軸方向に相対移動不能に取り付けられた構成となっている。従って、コイルに通電して磁束を発生させると、この磁束が可動鉄心を磁化して、該可動鉄心を固定鉄心側に引き寄せ、該可動鉄心に取り付けられたソレノイドシャフト27bが可動鉄心と共に引き寄せられる。つまり、ソレノイド本体27aの磁気吸引力により、ソレノイドシャフト27bを直進運動させる。
【0076】
本実施の形態では、回転台駆動力伝達機構27は、基台1の内部に、ソレノイドシャフト27bの先端が、基台1の上部プレートに対して直交する方向に上方向を向けて配設されており、ソレノイド本体27aによる磁気吸引力によってソレノイドシャフト27bを上方向に直進運動させ、その先端部に連結されたプッシャ27gによって、この直進運動力を回転台回転機構25の伝達部25cに伝達する。
【0077】
ソレノイドシャフト27bは、力の伝達体であり、その上端側にプッシャ27gが、その下端側に衝撃吸収ブラケット27eが結合されており、ソレノイド本体27aの駆動により、ソレノイドシャフト27bが上方向に直進移動すると、これと共にプッシャ27g及び衝撃吸収ブラケット27eも上方向に直進移動する。
ショックアブソーバ27cは、シリンダと、該シリンダに設けられたロッド穴に挿通されたピストンロッドと、該ピストンロッドの後端部が固着され、シリンダ内に往復動自在に設けられたピストン部と、該ピストン部の後端部に一端が支持され、他端がシリンダ内後端部に支持された戻り用のコイルばねとを含んで構成される。
【0078】
更に、ショックアブソーバ27cは、支持ブラケット27dを介して、ピストンロッドの先端を衝撃吸収ブラケット27eに向けた状態で基台1に固定支持されている。
ピストン部は、その周囲をOリング等のリング状のシール部材でシールされており、シリンダ内を移動時に自己の周囲とシリンダ内壁との間を液体が通り抜けるのを阻止している。なお、ロッド穴についても外部に液体が漏れないようにOリング等のシール部材でシールしている。
【0079】
また、ピストン部にはその往復動の方向に常時開通される貫通穴と、ピストン部の移動方向に応じて開通される弁付貫通穴とが設けられている。
弁付貫通穴は、ピストン部がシリンダ内部方向に移動するときに弁を開いて貫通穴内を液体が通り抜けられる状態にし、シリンダ内部方向とは逆方向に移動するときに弁を閉じて液体が通り抜けられない状態にする構造となっている。
【0080】
これにより、ピストン部がシリンダ内部方向に移動するときは、常時開通している貫通穴と弁付貫通穴とを、シリンダ内に封入された液体を通り抜けさせながら移動し、液体が両貫通穴を通り抜けるときの抵抗力によってピストンロッドに加えられた衝撃を吸収する。
また、ピストンロッドのシリンダ内部方向への移動によってピストン部がシリンダ内を移動すると、その力を受けて戻り用のコイルばねが縮む。そして、ピストンロッドに加わる力が無くなると、コイルばねの復元力によって、ピストン部が逆方向へと押され、これにより弁付貫通穴の弁が閉じるので、ピストン部は、常時開通している貫通穴のみに液体を通り抜けさせながらシリンダ内を移動し、ピストンロッド及びピストン部を初期位置へと復帰させる。
【0081】
衝撃吸収ブラケット27eは、ソレノイドシャフト27bの上方向への直進移動と共に、基台1側に固定支持されたショックアブソーバ27cのピストンロッドの先端に向かって直進移動し、且つピストンロッドの先端に衝突するように構成されている。
また、ソレノイドシャフト27bの先端部には、緩衝部材27fが取り付けられており、プッシャ27gが伝達部25cに衝突したときに、その衝突による衝撃を吸収する。
【0082】
プッシャ27gは、その先端部に円筒形状の凸部が形成されており、突き上げ動作時には、円筒形状の凸部における円環状の上端面が伝達部25cの円環状の下面と当接して該伝達部25cを突き上げる。これにより、伝達部25cと一体形成されたカム25aに上方向の直進移動力を伝達する。また、プッシャ27gは、その先端部の外径が伝達部25cの径と同じ又は略同じ大きさで構成され、内径が少なくとも回転台回転軸24の径より大きく構成されている。
【0083】
以上の構成により、ソレノイドシャフト27bが直進移動すると、衝撃吸収ブラケット27eがピストンロッドの先端部に衝突し、この衝突力によってピストン部が貫通穴に液体を通しながらシリンダ内を移動する。このときの抵抗力によって、衝突による衝撃が吸収され、ソレノイドシャフト27bは、衝撃の吸収された状態で、ソレノイドシャフト27bを上方向に直進移動させて、その先端のプッシャ27gを、回転台回転機構25の伝達部25cに衝突させる。このとき、緩衝部材27fによって衝突時の衝撃が緩和される。また、プッシャ27gの先端部における凸部の内側に形成される窪みによって、突き上げ動作時に、窪み内に回転台回転軸24の下端部を逃がすことができ、プッシャ27gと回転台回転軸24の下端部とを接触させずに、伝達部25cに力を伝達することができる。
【0084】
また、姿勢変更位置で回転アーム20を停止させたときの、上部プレートにおける、回転アーム20の後端側の回転台回転機構25のケース下面に形成された開口部の真下の位置には、プッシャ27gが往復動可能な径の貫通穴が設けられている。この貫通穴は、回転台回転軸24の軸心を円の中心とした円筒形状を有している。そして、回転台駆動力伝達機構27は、プッシャ27gの中心と貫通穴の中心とを一致させた状態で該プッシャ27gを貫通穴に挿通して、上部プレートにおける姿勢変更位置の下面側に配設されている。なお、ソレノイドシャフト27b及びプッシャ27gは、ソレノイド本体27aの停止時の初期位置において、プッシャ27gの全体が、姿勢変更位置に設けられた貫通穴内に収まるように配設されている。
【0085】
ここで、図10(a)〜(c)は、プッシャ27gで突き上げ時の回転台回転機構25の動作を示す図である。また、図11(a)〜(c)は、プッシャ27gで突き上げ後の回転台回転機構25の動作を示す図である。
上記構成によって、回転アーム20が姿勢変更位置で停止した状態において、基台1内部の不図示の制御基板からの制御信号が入力されると、回転台駆動力伝達機構27は、制御信号に応じてソレノイド本体27aを駆動する。これにより、ソレノイドシャフト27bが上方向に直進移動し、その上端部に連結されたプッシャ27gを上方向に移動させる。このとき、ショックアブソーバ27cのピストンロッドに衝撃吸収ブラケット27eが衝突し、ソレノイドシャフト27bの直進移動時の衝撃が一部吸収される。ソレノイドシャフト27bは、ショックアブソーバ27cにおいて衝撃が吸収された状態で、基台1の上部プレートに設けられた貫通穴を通り、回転台回転機構25のケース下面の開口部を通って、伝達部25cの下面部へと到達する。
【0086】
一方、回転台回転機構25は、図10(a)に示すように、4本の下側カム用ピン25eがカム25aの下端カム面25oのピン嵌合溝25qにそれぞれ嵌合した状態となっている。即ち、カム25aは伝達部25cと共に最下端に位置した状態となっている。
この状態において、ソレノイドシャフト27bの直進移動により、プッシャ27gの円環状の凸部端面が、伝達部25cの円環状の下面に上方向に向かって衝突すると、その突き上げ力が伝達部25cと一体形成されたカム25aに伝達され、図10(b)に示すように、ガイド部25bに沿って、該伝達部25cと共にカム25aを、回転させることなく回転台回転軸24に沿って上方向へと直進移動させる。この直進移動によって、2本の上側カム用ピン25dが、カム25aの上端カム面25jに形成された8つの傾斜面25mのうち対応する2つの傾斜面25mにそれぞれ当接する。一方、プッシャ27gが伝達部25cに衝突したときの衝撃は、ソレノイドシャフト27bの先端部に取り付けられた緩衝部材27fによって緩和される。
【0087】
また、図10(b)に示すように、カム25aの上方向への直進移動によって、回転アーム20と伝達部25cとの間に介装されたコイルばね25fがその力を受けて縮む。
引き続き、図10(b)に示す状態から、カム25aが上方向に移動すると、図10(c)に示すように、カム25aから上側カム用ピン25dへと伝達された上方向の力によって、上側カム用ピン25dが、カム25aの上端カム面25jに形成された傾斜面25mに沿ってその当接位置から傾斜の麓方向に向かって摺動する。つまり、カム25aの上方向への直進移動力は、上端カム面25jの傾斜面25mによって、上側カム用ピン25dの回転駆動力、即ち回転台回転軸24の回転駆動力へと変換される。これにより、回転台回転軸24は、時計回り方向に回転する。
【0088】
回転台回転軸24は、図11(a)に示すように、傾斜面25mに沿って移動する上側カム用ピン25dが、隣の傾斜面25mの背面を形成する壁25nにぶつかるまで回転し、壁25nにぶつかって移動を停止するとそこで回転を停止する。つまり、カム25aの突き上げ動作時においては、上側カム用ピン25dが傾斜面25mに当接してから摺動して壁25nにぶつかって停止するまでの移動距離に応じた回転角度だけ回転台回転軸24が時計回り方向に回転する。これによりチップ回転台23及びその上部に形成されたチップ保持部26が時計回り方向に回転する。
【0089】
なお、本実施の形態において、回転台回転軸24の外周面に、上側カム用ピン25dの代わりにカムフォロアを用いたり、上側カム用ピン25dにベアリングを設けたりすることで、摺動時の抵抗を低くし、より回転しやすくすることも可能である。
一方、図11(a)に示すように、上側カム用ピン25dが壁25nにぶつかっている状態のとき(傾斜の付け根部分に位置するとき)に、回転台駆動力伝達機構27において、ソレノイド本体27aの駆動を停止すると、回転台回転機構25においては、プッシャ27gの突き上げ力が除去されるため、カム25aの上方向の移動によって縮んでいたコイルばね25fの復元力によって、カム25aが伝達部25cと共に、図11(b)に示すように、ガイド部25bに沿って、回転することなく下方向へと直進移動する。
【0090】
このとき、回転台回転軸24は、突き上げ時の回転によって、初期状態ではピン嵌合溝25qに嵌合していた4本の下側カム用ピン25eも時計回り方向に位置がずれているため、カム25aの下方向への直進移動によって、4本の下側カム用ピン25eが、カム25aの下端カム面25oに形成された8つの傾斜面25pのうちの対応する4つにそれぞれ当接する。
【0091】
また、ソレノイドシャフト27bは、プッシャ27gが、コイルばね25fの復元力で下方向に移動する伝達部25cに押されるため、この力と自重とによって下方向に移動する。
引き続き、コイルばね25fの復元力によって、図11(b)に示す状態から、更にカム25aが下方向に移動すると、図11(c)に示すように、カム25aから下側カム用ピン25eへと伝達された下方向の力によって、下側カム用ピン25eが、下端カム面25oを構成する傾斜面25pに沿ってその当接位置から傾斜の麓方向(ピン嵌合溝25qに向かって登る方向)に向かって移動する。つまり、カム25aの下方向への直進移動力は、傾斜面25pによって、下側カム用ピン25eの回転駆動力、即ち回転台回転軸24の回転駆動力へと変換され、回転台回転軸24を時計回り方向に回転させる。これにより、チップ回転台23及びその上部に形成されたチップ保持部26が時計回りに回転し、チップ保持部26に保持されたマイクロチップの回転角度位置を更に変更する。
【0092】
そして、図11(c)に示すように、下側カム用ピン25eは、ピン嵌合溝25qを形成する壁にぶつかるまで回転し、壁にぶつかるとそこで回転を停止する。カム25aは、壁にぶつかった後も下方向に移動し、下側カム用ピン25eは、壁に沿って移動してピン嵌合溝25qに嵌合する。下側カム用ピン25eがピン嵌合溝25qに嵌合することによってカム25aの下方向の移動も停止する。これにより、回転台回転軸24は、下側カム用ピン25eが傾斜面25pに接触してからピン嵌合溝25qの壁にぶつかるまでの移動距離に応じた回転角度だけ時計回り方向に回転することになる。
【0093】
なお、本実施の形態において、回転台回転軸24の外周面に、下側カム用ピン25eの代わりにカムフォロアを設けたり、下側カム用ピン25eにベアリングを設けたりすることで、摺動時の抵抗を低くし、より回転しやすくすることも可能である。
このようにして、遠心力付与装置2は、回転台駆動力伝達機構27の突き上げ動作によって、回転台回転軸24を時計回り方向に回転させることでチップ保持部26に保持されたマイクロチップ200の回転角度位置(姿勢)を変更することができる。
【0094】
また、下端カム面25oを構成する傾斜面25pの傾斜方向を回転台回転軸24を時計回りに回転させる方向(右下から左上に延びる傾斜)とし、更に、遠心力の付与時における回転アーム20の回転方向を時計回り方向としたので、回転アーム20を時計回り方向に高速回転させたときに、下側カム用ピン25eには、カム25aのピン嵌合溝25qを形成する壁に向かって押しつけられる方向に力がかかる。これにより、回転アーム20を回転させて遠心力を付与した時に、該遠心力によって回転台回転軸24が回転してしまうのを阻止することができるので、マイクロチップ200の姿勢がずれて不適切な方向に遠心力がかかるのを防ぐことができる。
【0095】
また、カム25aを、上端カム面25jの傾斜面25mの傾斜角度が、下端カム面25oの傾斜面25pの傾斜角度よりも急角度となるように両者を構成したので、上側カム用ピン25dを傾斜面25mに沿って摺動させるときに必要な力を、下側カム用ピン25eを傾斜面25pに沿って摺動させるときに必要な力よりも小さくできる。
本実施の形態においては、ショックアブソーバ27cによる制動によって、突き上げ時にカム25aにかかる力よりも、コイルばね25fの復元力によってカム25aにかかる力の方が大きくなるため、傾斜面25mの傾斜角度を傾斜面25pよりも急角度にすることで上側カム用ピン25dの摺動に必要な力を小さくしている。
【0096】
一方、カム25aが下方向に移動時は、突き上げ時よりも大きな力がかかることから、傾斜面25mほどの傾斜角度がなくても、下側カム用ピン25eを傾斜面25pに沿って摺動させることができるので、傾斜面25pの傾斜角度を傾斜面25mの傾斜角度よりも小さくして、その分、背面を形成する壁の高さを壁25nよりも低く構成している。
つまり、壁の高さ(傾斜の頂点位置)を低くできることから、カム25aの高さをその分だけ低く構成することができる。更に、壁の高さを低くした分だけ、ソレノイドシャフト27bのストローク距離を短くすることができるので、傾斜面25mの背面を形成する壁25nの高さと、傾斜面25pの背面を形成する壁25rの高さとを同じにした場合と比較して、回転台駆動力伝達機構27を小型化することができる。
【0097】
また、カム25aを、その円筒形状の上端に上端カム面25jを、下端に下端カム面25oを設けた構成としたので、いずれか一方だけにカム面を設けた構成のものよりも、ソレノイドシャフト27bのストローク距離を短くすることができる。例えば、上端だけにカム面を設けた構成では、傾斜面の傾斜の長さが倍になると、ソレノイドシャフト27bのストローク距離が倍になり、ソレノイドシャフト27bを長くするなどの装置の大型化につながる措置が必要となる。
【0098】
また、回転台回転機構25と回転台駆動力伝達機構27とを別体とし、回転台回転軸24に沿ったカム25aの上下動によって、回転台駆動力伝達機構27の突き上げ力を回転台回転軸24の回転力へと変換する構成としたので、回転台回転軸24を回転させるのに、該回転台回転軸24を上下動させる必要がないため、チップ回転台23及びチップ保持部26を上下動させずにその場で回転させることができる。これにより、チップ回転台23、回転台回転軸24及びチップ保持部26を上下動させる構造にしなくても済む(固定支持できる)ので、例えば、アーム回転軸21の回転がアンバランスとなって、これらの構成部に上方向の力が加わっても、該構成部が浮上することを防ぐことができる。
【0099】
次に、図12〜図13に基づき、光学式測定装置3の詳細な構成を説明する。
ここで、図12(a)は、光学式測定装置3の平面図であり、(b)、(c)は、光学式測定装置3の側面図である。また、図13(a)及び(b)は、光情報測定部30のスライド移動動作の一例を示す図である。
光学式測定装置3は、図12(a)〜(c)に示すように、光情報測定部30と、第1スライドレール32と、第2スライドレール33と、第1スライダ34と、第2スライダ35と、スライド補助部材36とを含んで構成される。
【0100】
第1、第2スライドレール32、33は、直線形状のスライドレールであり、回転アーム20が、姿勢変更位置に対して時計回り方向に90°回転した位置(以下、測定位置と称す)で停止しているときに、遠心力付与装置2のチップ回転機構部の停止位置に対して、チップ回転機構部の右隣に、前後方向に所定距離を空けて両者が平行に基台1に固定支持されている。
【0101】
更に、第1、第2スライドレール32、33には、そのレール部に沿って摺動自在に第1、第2スライダ34、35が装着されている。また、第1、第2スライダ34、35は、第1、第2スライドレール32、33の上方に光情報測定部30が配されるように、高さ方向に伸びた取付部分を有している。この取付部分を介して、第1、第2スライダ34、35が、光情報測定部30に固着されている。そして、第1、第2スライダ34、35をレール部に沿って往復動させることで、光情報測定部30を、遠心力付与装置2のチップ回転機構部に対して接近及び離間する方向に直進移動させる。なお、第1、第2スライドレール32、33は、光情報測定部30をチップ回転機構部に最も接近させたときに、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200に対して測定処理が行える位置に設けられている。
【0102】
スライド補助部材36は、本実施の形態において、2本の角柱部材36a、36bの一端同士を結合(例えば、ネジ止め)したL字形状を有しており、L字を上下逆さまにした下方側(ここでは、角柱部材36b)の他端部が、角柱部材36aが第1、第2スライドレール32、33の間を通ってこれらと平行に且つ角柱部材36aが基台1の上部プレートよりも高い位置に配されるように該基台1に固定支持されている。これにより、角柱部材36aは、その他端部を光情報測定部30を接近させる方向に真っ直ぐに向けた状態で基台1に固定支持される。
【0103】
光情報測定部30は、自己に固着された第1、第2スライダ34、35を第1、第2スライドレール32、33に対してそれぞれレール部に沿って摺動可能に装着すると共に、自己に設けられた嵌合口に角柱部材36aを、該角柱部材36aに沿って自己を摺動可能に嵌合させることで基台1の上部プレート上に配されている。
従って、第1、第2スライダ34、35がレール部に沿ってスライドすると、光情報測定部30もスライド部及び角柱部材36aに沿って、第1、第2スライダ34、35と同じ移動方向にスライドする。
【0104】
なお、上記第1、第2スライドレール32、33によるスライド移動機構及びスライド補助部材36によって、光情報測定部30の接近及び離間移動時の上下動を抑えることができ、光情報測定部30を基台1の上面と平行に保ちながらチップ回転機構部に対して接近及び離間する方向に確実に直進移動させることができる。これにより、測定処理時の光情報測定部30とチップ保持部26に保持されたマイクロチップ200との位置決めを精度良く行うことができ、正確な処理位置への移動に対する再現性を確保することができる。
【0105】
光学式測定装置3は、更に、心棒37と、戻り用ばね部38と、ソレノイド39と、ソレノイドシャフト40と、伝達部材41とを含んで構成される。
心棒37は、戻り用ばね部38のコイルばね38a及び38bの心棒であり、先端部にばねのストッパを有し、上方側角柱部材36aの下方に、上方側角柱部材36aの長尺方向の直線と心棒37の長尺方向の直線とが平行となるように、後端部が下方側角柱部材36bに固定支持されている。
【0106】
戻り用ばね部38は、コイルばね38a及び38bと、リング形状の連結部材38cとを含んで構成されている。2本のコイルばね38a、38bは、連結部材38cを介して連結され、この連結された2本のばねの内側に、下方側角柱部材36bに固定支持された心棒37が挿通されている。また、心棒37の先端にはストッパが設けられており、このストッパによってばねの抜けを防止している。更に、連結部材38cは、心棒37に沿って摺動可能に設けられており、外力を受けると、コイルばね38a及び38bを伸縮させながら心棒37に沿って移動する。
【0107】
ソレノイド39は、上記回転台駆動力伝達機構27のソレノイド本体27aと同様の構成となっており、内部のコイルを通電することで磁束を発生して可動鉄心を磁化し、この磁力によって該可動鉄心を固定鉄心側に引き寄せることで、可動鉄心を光情報測定部30のスライド方向と同じ方向に直進移動させる(直進運動力を発生させる)。
ソレノイドシャフト40は、ソレノイド39の可動鉄心に設けられた貫通孔に挿通して可動鉄心に対して軸方向に相対移動不能に取り付けられ、ソレノイド39のコイルの通電により発生した磁気吸引力によって可動鉄心と共に直進移動する。
【0108】
伝達部材41は、ソレノイドシャフト40の先端部、連結部材38c、光情報測定部30の結合部(不図示)とそれぞれ同じ直線上で結合され、ソレノイドシャフト40の直進移動力を、戻り用ばね部38及び光情報測定部30に略同時に伝達する。
上記構成により、光学式測定装置3は、図13(a)に示すように、ソレノイド39が駆動して、ソレノイドシャフト40を直進移動させると、この直進移動力は、伝達部材41及び連結部材38cを介してコイルばね38a及び38bに伝達されると共に、光情報測定部30の結合部を介して光情報測定部30に伝達される。これにより、図13(b)に示すように、連結部材38cを介して伝達された直進移動力によって、コイルばね38aが縮むと共にコイルばね38bが伸びる。一方、光情報測定部30の結合部を介して伝達された直進移動力によって、第1、第2スライダ34、35が光情報測定部30と共に、第1、第2スライドレール32、33のレール部に沿ってチップ回転機構部に接近する方向に直進移動する。
【0109】
また、図13(b)に示す状態で、ソレノイド39の駆動を停止して、光情報測定部30の結合部及び連結部材38cから接近方向への直進移動力を除去すると、コイルばね38a及びコイルばね38bの復元力によって、光情報測定部30がチップ回転機構部から離間する方向に直進移動力が発生し、光情報測定部30を第1、第2スライドレール32、33のレール部に沿って離間方向へと直進移動させる。これにより、光情報測定部30は、コイルばね38a、38bが伸縮した状態から元の長さに戻るまでの距離を離間方向に移動する。
【0110】
次に、図14に基づき、光情報測定部30の詳細な構成を説明する。
ここで、図14(a)及び(b)は、測定処理位置に移動時の光情報測定部30の平面図であり、(c)は、レーザ光受光部30fの平面図であり、(d)及び(e)は、測定処理位置に移動時の光情報測定部30の側面図である。
光情報測定部30は、図14(a)及び(b)に示すように、ナイロンなどの樹脂部材(絶縁部材)から形成された、略ユ字形状のレーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fを含み、両者を互いの形状が重なる位置で垂直方向に対向させて、レーザ光照射部30aをレーザ光受光部30fの上方に配設した構成となっている。
【0111】
図14(a)及び(b)に示すように、レーザ光照射部30aには、その略ユ字形状の窪み挟んで前後に位置する部位のうち、後方側の部位の左端に3つのレーザヘッドが縦方向に一直線状に配列された構成の第1レーザヘッド部30b(図中の丸で囲った部分(上側))が設けられている。
更に、レーザ光照射部30aには、その略ユ字形状の窪み挟んで前後に位置する部位のうち、前方側の部位の左寄りに、第1レーザヘッド部30bの配列方向と直交する方向に3つのレーザヘッドが一直線上に配列された構成の第2レーザヘッド部30c(図中の丸で囲った部分(下側))が設けられている。
【0112】
第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cの各レーザヘッドは、一端にレーザ光の入力口を、他端にレーザ光の照射口を有し、レーザヘッドごとに、レーザ光照射部30aに垂直方向に形成された貫通穴の内部に配設されている。また、レーザ光の入力口は貫通穴の上側の穴と対向し、レーザ光の照射口は貫通穴の下側の穴と対向して配設されている。
【0113】
つまり、第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cは、入力口及び照射口の形成された両端を除く各レーザヘッドの周囲が絶縁部材で囲まれた構成となっている。
本実施の形態では、更に、レーザ光の入力口側にレーザ光の伝達路である光ファイバ(不図示)が接続されている。そして、第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cは、基台1の内部に配設されたレーザ光源(例えば、半導体レーザ)からのレーザ光が、光ファイバを介して第1及び第2レーザヘッド部30b及び30cの入力口から入力されると、該入力されたレーザ光を照射口から照射する。
【0114】
なお、本実施の形態においては、第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cの照射するレーザ光の波長をそれぞれ異なるように構成している(または、調整できる構成としている)。
また、レーザ光の波長は、例えば、検体液が血液であれば、700〜1200[nm]の範囲(近赤外光の範囲)で設定する。これにより、例えば、遠心分離され且つ吸光度成分を有する試薬と混合された血漿成分に対して、波長の異なるレーザ光を照射した場合に、その透過光又は反射光から、血中における、酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量、総ヘモグロビン量、酸素化ミオグロビン量、脱酸素化ミオグロビン量、総ミオグロビン量などを測定することができる。
【0115】
また、第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cを構成する各3つのレーザヘッドは、図14(a)及び(b)において、その照射口の中心が、マイクロチップ200の測定部200aの3つの測定ポイントの中心と同じ間隔で配設されており、光情報測定部30が測定処理位置にあり、且つ測定部200aがマイクロチップ200の右辺に沿って後方寄りの位置にあるときは、その測定ポイントと、第1レーザヘッド部30bのレーザヘッドとは垂直方向に対向する位置関係となるように配設されている。また、光情報測定部30が測定位置にあり、且つ測定部200aがマイクロチップ200の前方側の辺に沿って右寄りの位置にあるときは、その測定ポイントと、第2レーザヘッド部30cのレーザヘッドとは垂直方向に対向する位置関係となるように配設されている。
【0116】
つまり、遠心力付与装置2の回転アーム20が測定位置にあり、光学式測定装置3の光情報測定部30が測定処理位置にあるときに、マイクロチップ200の姿勢が図14(a)に示す状態のときは、第1レーザヘッド部30bの3つの照射口が測定部200aの3つの測定ポイントとそれぞれ垂直方向に対向し、一方、マイクロチップ200の姿勢が図14(b)に示す状態のときは、第2レーザヘッド部30cの3つの照射口が測定部200aの3つの測定ポイントとそれぞれ垂直方向に対向する。
【0117】
一方、図14(c)において、同図に示すように、レーザ光受光部30fには、その略ユ字形状の窪み挟んで前後に位置する部位のうち、後方側の部位の左端に、3つの受光ヘッドが縦方向(Y軸方向と一致)に一直線状に配列された構成の第1受光ヘッド部30g(図中の丸で囲った部分(上側))が設けられている。
更に、レーザ光受光部30fには、その略ユ字形状の窪み挟んで前後に位置する部位のうち、前方側の部位の左寄りに、第1受光ヘッド部30gの配列方向と直交する方向に3つの受光ヘッドが一直線上に配列された構成の第2受光ヘッド部30h(図中の丸で囲った部分(下側))が設けられている。
【0118】
具体的には、第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cの各レーザヘッドと垂直方向に対向する位置に、各受光ヘッドが設けられている。
第1受光ヘッド部30g及び第2受光ヘッド部30hの各受光ヘッドは、フォトダイオードなどの受光素子から構成されており、一端に透過光の受光部を、他端に受光した光の光量に応じた電気信号の出力部を有し、受光ヘッドごとに、レーザ光受光部30fに垂直方向に形成された貫通穴の内部に配設されている。また、受光部は貫通穴の上面側の穴と対向し、出力部は貫通穴の下面側の穴と対向して配設されている。
【0119】
つまり、第1受光ヘッド部30g及び第2受光ヘッド部30hは、受光部及び出力部の形成された両端を除く各受光ヘッドの周囲が絶縁部材で囲まれた構成となっている。
更に、出力部には電気信号の伝達路となる電気ケーブル(不図示)が接続されている。そして、第1受光ヘッド部30g及び第2受光ヘッド部30hは、受光した光の電気信号を電気ケーブルを介して、基台1の内部に配設された受光情報処理部(不図示)に伝達する。
【0120】
更に、光情報測定部30は、図14(a)及び(b)に示すように、測定処理位置に移動したときに、水平方向に対向するチップ保持部26の外周部における右辺後方側の角部に該角部の傾斜に合わせた傾斜面を接触してマイクロチップ200の位置と光情報測定部30との位置を固定する第1支持部材30dと、同じく水平方向に対向するチップ保持部26の外周部における右辺前方側の角部に該角部の傾斜に合わせた傾斜面を接触して第1支持部材30dと共にマイクロチップ200の位置と光情報測定部30との位置を固定する第2支持部材30eとを有している。
【0121】
レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fは、図14(d)及び(e)に示すように、両者を互いに同じ形状位置で隙間を空けて垂直方向に対向させ、図14(a)及び(b)に示すように、後端側において第1支持部材30dが、前端側において第2支持部材30eが、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fを挟持することで、隙間を保持した状態で両者を固定支持する構成となっている。
【0122】
ここで、上記隙間は、測定処理時において、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200における測定部200aの上側にレーザヘッドを、下側に受光ヘッドを位置させるために設けられたものであり、測定処理時には、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200をチップ保持部26ごと挟みこむようになっている。そのため、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fとの間には、少なくとも、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200と、チップ保持部26と、チップ回転台23とが形成する垂直方向の厚み以上の隙間が形成されている。
【0123】
また、第1支持部材30d及び第2支持部材30eは、測定位置に停止したチップ保持部26の光情報測定部30と水平方向に対向する一辺の後方側の角部の位置に合わせて第1支持部材30dが、前方側の角部の位置に合わせて第2支持部材30eが取り付けられており、光情報測定部30をチップ回転機構部に接近移動させたときに、各傾斜面が各角部を押さえつけ、これによりチップ保持部26を正確な測定処理位置に固定する。
【0124】
また、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fに形成された略ユ字形状の窪みの部分は、図14(a)及び(b)に示すように、光情報測定部30を測定処理位置に移動時に、チップ保持部26に形成された被検出部26c及び26dと光情報測定部30との接触を回避させる役割を果たす。つまり、光情報測定部30をチップ回転機構部に接近移動させたときに、被検出部26c又は26dが光情報測定部30に接触することなく窪み内に進入し、測定処理位置に到達時において該窪み内において停止する。
【0125】
上記構成により、測定位置に回転アーム20が停止しているときに、光情報測定部30を、チップ回転機構部に接近する方向に測定処理位置まで移動させると、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fとの間に形成された隙間に、マイクロチップ200の装着されたチップ保持部26及びチップ回転台23の一部が挟み込まれると共に、第1支持部材30d及び第2支持部材30eの各傾斜面がチップ保持部26の枠部26aにおける対向する辺の角部と接触する。つまり、第1支持部材30d及び第2支持部材30eが、ソレノイド39から伝達された力によって角部を押さえつける。これにより、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fと、測定部200aとは、測定位置において、その位置が固定保持される。つまり、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fの位置とチップ保持部26の位置とが正確な測定処理位置で固定保持される。
【0126】
また、本実施の形態においては、基台1内部の制御基板による制御によって、マイクロチップ200の姿勢が図14(a)に示す状態のときに、第1レーザヘッド部30bによって測定部200aにレーザ光を照射し、一方、マイクロチップ200の姿勢が図14(b)に示す状態のときに、第2レーザヘッド部30cによって、測定部200aにレーザ光を照射するように構成されている。
【0127】
従って、第1レーザヘッド部30bの3つの照射口から照射されたレーザ光は、測定部200aの3つの測定ポイントを透過して、第1受光ヘッド部30gの3つの受光部で受光され、第2レーザヘッド部30cの3つの照射口から照射されたレーザ光は、測定部200aの3つの測定ポイントを透過して、第2受光ヘッド部30hの3つの受光部で受光される。
【0128】
このような構成であれば、遠心力付与装置2において、マイクロチップ200の姿勢を90°変更するだけで、測定位置に停止したマイクロチップ200に対して、波長の異なる2種類のレーザ光による測定処理を行うことができる。
また、マイクロチップ200に、第1及び第2レーザヘッド部30b及び30cの位置に合わせて2箇所に測定部を設けることで、同時に2箇所に対して測定処理を行う構成とすることも可能である。
【0129】
ここで、図15(a)〜(c)は、黒色の絶縁部材を用いて形成された光情報測定部30の一例を示す図である。
本実施の形態において、光情報測定部30は、更に、図15(a)〜(c)に示すように、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fの略ユ字形状のボディを形成する部材にレーザ光を吸収する機能を有する光吸収部材を用いている。
【0130】
光吸収部材は、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fのボディを形成する部材に、近赤外領域(波長:780〜3000nm)に波長をもつ光を吸収する性質の機能性色素を添加することで生成することができる。
例えば、樹脂材料中に、以下の顔料、あるいは色素を添加することにより、レーザ光を吸収することが可能である。例えば、セラミックブラック、酸化鉄(無機顔料)、カーボンブラック、ボーンブラック(有機顔料)等の黒色顔料、クロムエロー、セラミックエロー、ジンククロメートエロー(無機顔料)、ニッケルアゾグリーンエロー(有機顔料)等の黄色顔料、ハイドロクロムオキサイドグリーン、クロムグリーン(無機顔料)、クロミウムオキサイドダルグリーン、フタロシアニングリーン(有機顔料)等の緑色顔料、色素としては黒色顔料、シアニン系色素、フタロシアニン系、チオールニッケル錯体系、インドフェノール金属錯体系、ナフトキノン系、アゾ系、トリアゾールメタン系、分子間型CT色素等の色素を使用することができる。
【0131】
本実施の形態においては、具体的に、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fのボディを形成するナイロン等の絶縁体の樹脂材料に、セラミックブラックなどの黒色顔料を添加して、光吸収機能を付加している。この光吸収機能によって、レーザ光照射部30aの各レーザヘッドから照射されたレーザ光の散乱光は、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fのボディ表面で殆ど反射されずに吸収されるため、反射光による誤動作の発生などを低減することができる。
【0132】
なお、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fだけではなく、第1支持部材30d及び第2支持部材30eについても、これらの材料に光吸収機能を付加することが可能である。これにより、これら支持部材からの反射光も低減することができるので、レーザ光の散乱光による誤作動の発生などをより低減することができる。
また、先述したように、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fとは、絶縁体で形成されているので、レーザ光照射部30aに設けられた複数のレーザヘッド同士の電気的な干渉を低減することができる。これにより、電気的干渉によるレーザ光への不具合(波長の変化など)の発生を低減することができる。
【0133】
更に、レーザ光受光部30fに設けられた複数の受光ヘッドを形成する金属部材にノイズが乗るのを防ぐ又はノイズが乗る量を低減することもできる。これにより、ノイズによる測定結果の誤差の発生を防ぐ又は誤差量を低減することができる。
【0134】
次に、図16〜図18に基づき、温度調整装置4の構成を説明する。
ここで、図16は、温度調整装置4の内部構成を示す図である。また、図17は、検体液分析装置100の内部における空気の流れの一例を示す図である。また、図18は、基台1の上面部における空気の流れの一例を示す図である。
【0135】
温度調整装置4は、図16に示すように、筐体54と、該筐体54の側部に設けられた調温部50と、筐体54の内部に設けられた、筐体54内部の温度を測定する温度測定用プローブ51と、ファン52と、電気エネルギを熱に変換する発熱体53と、基台1の上部プレートにおける、光学式測定装置3のレーザ光受光部30fの近傍に配設された温度測定用プローブ55とを含んで構成される。
【0136】
調温部50は、温度測定用プローブ51、55から入力された電圧値に基づき筐体54の内部の温度及びレーザ光受光部30fの近傍の温度をそれぞれ測定する温度測定部と、該温度測定部の測定温度に応じて発熱体53の発熱量を制御する発熱量制御部とを含んで構成される。本実施の形態においては、通常は、安定した受光情報を得るために、温度測定用プローブ55からの入力に基づきレーザ光受光部30fの近傍の温度を一定に保つように発熱量を制御する。一方、温度測定用プローブ51からの入力によって、筐体54の内部の温度が著しく上昇したと判断されたときなどに、発熱体53への電気エネルギの供給を停止するなどの特別な制御を行う。
【0137】
温度測定用プローブ51、55は、熱電対から構成されており、それぞれ配設位置近傍の温度差に応じた電圧信号を調温部50に出力する。
ファン52は、モータによって駆動する送風用のファンであり、発熱体53の近傍に、該発熱体53に向かって風を吹きつける方向に向けて配設されている。なお、調温部50において、発熱体53の発熱量だけでなく、ファン52の回転数なども制御して、温度制御を行う構成とすることも可能である。
【0138】
発熱体53は、抵抗発熱体などの電気エネルギを熱に変換する部材から構成されており、調温部50から供給される電気エネルギを熱に変換し、この熱によって筐体54の内部の空気を暖める。
上記構成の温度調整装置4によって、調温部50が電気エネルギを発熱体53に供給すると、該発熱体53において電気エネルギが熱に変換され、この熱によって筐体54の内部の空気が暖められる。一方、ファン52は常に一定の回転速度で回転しており、発熱体53の発熱によって暖められた空気は、ファン52の発生する風によって、図17に示すように、基台1の内部を通って基台1の上部プレートへと向かって上方に移動する。
【0139】
そして、図18に示すように、基台1の上部プレートの下面に到達した空気は、上部プレートに設けられた通風口10を通って、基台1上面部と上面カバー5とから形成される空間内へと流入する。また、該空間内に流入した空気は、遠心力付与装置2及び光学式測定装置3の周辺の空気を暖めると共に、通風口11を通って基台1内部へと移動し、基台1内部を通って筐体54の内部へと戻ることで検体液分析装置100の内部を循環する。
【0140】
このようにして、温度調整装置4で発生した暖かい空気を適宜循環させることで、基台1の上面部と上面カバー5とから形成される空間内の温度を暖めると共に、該空間内の温度を一定に保つことができるので、マイクロチップ200内の検体液溜めに注入された検体液や試薬の温度を一定に保つことができる。更に、レーザ光受光部30fにおける、受光素子の温度変化に対する特性変化が原因で発生する誤差を無くす又は低減することができる。
【0141】
また、図18に示すように、通風口10に対して開閉シャッタ15が設けられており、この開閉シャッタ15の開閉プレートの開閉量を調整することで通風口10の開口部の大きさを調整し、基台1の上面部と上面カバー5とから形成される空間内への暖められた空気の流入量を調整することができる。
【0142】
次に、図19〜図21に基づき、本実施の形態の動作を説明する。
ここで、図19(a)は、遠心力付与時の動作例を示す図であり、(b)及び(c)は、マイクロチップ200の姿勢変更時の動作例を示す図である。また、図20(a)〜(c)は、各工程におけるマイクロチップ200の姿勢を示す図である。また、図21(a)〜(c)は、光学式測定装置3の測定処理時の動作を示す図である。
以下、測定対象の検体液を血液とし、血液分析用のマイクロチップ200を用いて、血液の吸光度測定を行う場合の本実施の形態の検体液分析装置100の実際の動作を説明する。
【0143】
血液分析用のマイクロチップ200には、少なくとも、測定対象者から採血した血液を溜める血液溜め、試薬を溜める3つの試薬溜め、第1の方向への遠心力の付与に応じて血液溜めの血液を血球成分と血漿成分とに遠心分離する構造を有したマイクロキャピラリ流路(例えば、U字状のマイクロキャピラリ流路)から形成される遠心分離部、第2の方向への遠心力の付与に応じて血漿成分を秤量する秤量部、第3の方向への遠心力の付与に応じて秤量された血漿成分と試薬溜めの試薬とを混合する混合部、及び試薬の混合された血漿成分に対して吸光度測定を行う3つの測定ポイントを有する測定部200aが形成されている。また、秤量部は、血漿成分を秤量して3つの測定対象成分を得られるように構成されており、混合部は、この3つの測定対象成分と試薬とを混合する。なお、混合する試薬は、通常、測定対象や測定内容に応じて異なり、3つの測定対象成分に対して同じ種類の試薬を混合する場合や、異なる試薬を混合する場合がある。ここでは、吸光度測定を行うので、測定対象に吸光機能を付加する試薬を3つの試薬溜めに溜めておく。
【0144】
また、本実施の形態の検体液分析装置100は、基台1の内部に、制御プログラムを実行するためのCPU、制御プログラムの記憶されたROM、プログラムを実行するためのRAM、これらの間のデータの授受を行うバス、各構成部とのデータの授受を行うIF回路などが形成された不図示の制御基板を有している。そして、CPUによって制御プログラムを実行することで、各制御対象への制御信号を生成し、該生成した制御信号によって各構成要素を制御して、(1)血液(全血)の遠心分離、(2)遠心分離後の分離成分(血漿)の秤量、(3)分離成分と試薬との混合及び試薬の混合された分離成分の測定部への移動、(4)測定部へと移動した分離成分に対する第1の波長のレーザ光の照射及び各透過光の受光、(5)第1の波長に対する受光情報の外部コンピュータ装置への出力、(6)測定部へと移動した分離成分に対する第2の波長のレーザ光の照射及び各透過光の受光、(7)第2の波長に対する受光情報の外部コンピュータ装置への出力、の7つの工程を自動的に行うようになっている。
【0145】
検体液分析装置100の電源を投入すると、まず、温度調整装置4が駆動し、調温部50からの電気エネルギの供給によって、発熱体53が発熱して周囲の空気を暖めると共に、ファン52が駆動して、暖められた空気を基台1の内部へと送り込む。基台1の内部へと送り込まれた空気は、通風口10を通って、基台1の上面部と上面カバー5とから形成される空間内へと流れ込み、該空間内の温度を上昇させる。
【0146】
また、調温部50は、光情報測定部30の近傍に配設された温度測定用プローブ55からの入力電圧によって、空間内におけるレーザ光受光部30fの近傍の温度を測定し、該測定温度が設定温度に近づくように且つ一定に保たれるように、発熱体53への供給電力量を調整する。
一方、マイクロチップ200に形成された血液溜めには、無痛針を介して測定対象者の血液(例えば、20[μl])が注入される。血液溜めに血液の注入されたマイクロチップ200は、第1の方向に遠心力が付与される姿勢で、回転アーム20の一端に形成されたチップ回転台23のチップ保持部26に装着される。なお、ここでは、1回の測定処理における測定対象のマイクロチップ200を1つとし、回転アーム20の他端に形成されたチップ保持部26には、未使用のマイクロチップ200(又はダミーチップ)を装着し、両端の重量バランスを均衡させることとする。
【0147】
マイクロチップ200がチップ保持部26に装着され、不図示の開始ボタンが押されると、まず、上記工程(1)が開始され、基台1内部の制御基板において、アーム回転機構22の駆動回路22bに供給するパルス信号が生成され、該生成されたパルス信号が駆動回路22bに供給される。駆動回路22bは、供給されたパルス信号に基づき、スイッチング回路のON/OFFを切り換え、ステッピングモータ22aに相電流を供給する。この相電流の供給によって、ステッピングモータ22aが回転駆動し、この回転駆動力は、アーム回転軸21へと伝達され、アーム回転軸21を回転させる。アーム回転軸21が回転すると、該アーム回転軸21が結合された回転アーム20が、図19(a)に示すように、時計回りに回転する。ここでは、注入された血液(全血)を血球成分と血漿成分とに分離するのに十分な回転数(例えば、3000[回/1分])及び回転時間(例えば、15分間)で回転アーム20を高速回転させる。この回転によって、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200には、その第1の方向に対して遠心力が付与される。この遠心力によって、マイクロチップ200の血液溜めに注入された全血は、血球成分と血漿成分とに遠心分離される。
【0148】
回転アーム20を必要な時間分回転させることで、上記工程(1)が終了し、引き続き、上記工程(2)が開始される。
工程(2)が開始されると、制御基板からの制御信号に応じて、まずアーム回転機構22が駆動し、測定対象のマイクロチップ200が保持されたチップ保持部26に対応する回転台回転機構25が、図19(b)に示すように、基台1上面の姿勢変更位置で停止するように、回転アーム20を前記姿勢変更位置に対応する回転角度位置まで回転させ、その位置で停止させる。
【0149】
本実施の形態において、回転アーム20の回転角度位置の検出は、チップ保持部26の枠部26a上に設けられた被検出部26c及び26dを、基台1の上面に立設されたプレート12に設けられたセンサ13及び14によって検出することで行う。そして、被検出部26c及び26dが検出される回転角度位置のうち、測定対象のチップ保持部26が停止する回転アーム20の回転角度位置を姿勢変更位置とする。
【0150】
工程(2)においては、マイクロチップ200の第2の方向に遠心力を付与する必要があるため、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200の姿勢(回転台回転軸24の回転角度位置)を変更する。ここでは、第1の方向におけるマイクロチップ200の回転角度位置を0[°]とし、時計回り方向を正方向として、第2の方向における回転角度位置を90[°]、第3の方向における回転角度位置を270[°]とする。
【0151】
制御基板は、まず、マイクロチップ200の姿勢を変更するために、回転台駆動力伝達機構27に制御信号を出力し、ソレノイド本体27aを駆動させて、ソレノイドシャフト27bをショックアブソーバ27cで衝撃を緩和させながら上方向に直進移動させ、回転台回転機構25におけるプッシャ27gと垂直方向に対向する伝達部25cをプッシャ27gによって突き上げる。これにより、伝達部25cと一体形成されたカム25aが回転台回転軸24に沿って突き上げられる。
【0152】
カム25aが突き上げられると、該カム25aの上端カム面25jと、回転台回転軸24の上側カム用ピン25dとによって、突き上げ力が回転台回転軸24の回転力へと変換され、回転台回転軸24が時計回りに回転する。その後、ソレノイド本体27aの駆動を停止すると、回転台回転機構25では、コイルばね25fの復元力によって、カム25aが回転台回転軸24に沿って下方向に直進移動し、カム25aの下端カム面25oと、回転台回転軸24の下側カム用ピン25eとによって、カム25aの下方向の移動力が回転台回転軸24の回転力へと変換され、回転台回転軸24が更に時計回りに回転する。
【0153】
ここでは、カム25aの1回の上下方向の移動によって、回転台回転軸24を、時計回りに45[°]回転させるように、上端カム面25jの傾斜面25m及び下端カム面25oの傾斜面25pが適宜の傾斜角度及び数で構成され、上側カム用ピン25d及び下側カム用ピン25eが適宜の数で構成されている。
従って、図19(c)に示すように、上記1回の突き上げ動作(カム25aの上下動)による回転台回転軸24の回転によって、チップ回転台23及びチップ保持部26を時計回りに45[°]回転する。即ち、マイクロチップ200の姿勢を時計回りに45[°]回転させた姿勢へと変更する。
【0154】
第2の方向は90[°]となるので、上記の突き上げ動作を同じ手順でもう1回行って、マイクロチップ200の姿勢を更に時計回りに45[°]回転させた姿勢へと変更する。
これにより、マイクロチップ200は、図20(a)に示すように、第1の方向に対応する図19(b)に示す姿勢に対して、時計回りに90[°]回転した姿勢となる。
【0155】
また、マイクロチップ200の姿勢の検出は、回転アーム20の回転角度位置の検出と同様に、チップ保持部26の被検出部26c及び26dを、基台1の上面部に立設されたプレート12に設けられたセンサ13及び14によって検出することで行う。具体的に、センサ13によって被検出部26cが検出され、センサ14によって被検出部26dが検出されたときは、0[°]、センサ13では何も検出されず、センサ14で被検出部26dが検出されたときは90[°]、両方のセンサにおいて何も検出されなかったときは270[°]といったように検出される内容に応じて各姿勢を判別する。
【0156】
マイクロチップ200の姿勢が、図20(a)に示す姿勢になると、制御基板はアーム回転機構22に制御信号(パルス信号)を出力して、アーム回転機構22を駆動し、回転アーム20を、遠心分離後の血漿成分を秤量するのに十分な回転速度及び回転時間で回転駆動し、マイクロチップ200の第2の方向に対して遠心力を付与する。これにより、工程(2)が完了し、血漿成分が秤量され3つの測定対象の血漿成分が得られる(3つの秤量部に溜まる)。
【0157】
血漿成分の秤量(工程(2))が完了すると、次に、秤量された血漿成分と試薬溜めに溜められた試薬とを混合すると共に、混合後の血漿成分を測定ポイントへと移動する上記工程(3)を開始する。制御基板は、まず、上記第2の方向への変更と同様に、回転台駆動力伝達機構27を駆動して、突き上げ動作を4回行い、回転台回転機構25のカム25aを4回上下動させて、回転台回転軸24を、時計回りに180[°]回転させる。これにより、チップ回転台23及びチップ保持部26も180[°]回転し、図20(b)に示すように、マイクロチップ200の回転角度位置を270[°]の位置に変更する。
【0158】
マイクロチップ200の姿勢が、図20(b)に示す姿勢になると、制御基板はアーム回転機構22に制御信号(パルス信号)を出力して、アーム回転機構22を駆動し、回転アーム20を、秤量された血漿成分と試薬とが混合され且つ混合後の血漿成分が測定部200aの各測定ポイントに移動するのに十分な回転速度及び回転時間で回転駆動し、マイクロチップ200の第3の方向に対して遠心力を付与する。これにより、工程(3)が完了し、秤量された3箇所の血漿成分と3箇所の試薬溜めの試薬とがそれぞれ混合し、混合後の各血漿成分が測定部200aの3つの測定ポイントにおけるそれぞれ対応したポイントへと移動する。
【0159】
マイクロチップ200の第3の方向に対する遠心力の付与が終了すると、次に、上記工程(4)を開始する。まず、基台1内部の制御基板は、光学式測定装置3によって、マイクロチップ200の測定部200aに対してレーザ光の照射及び透過光の受光を行うために、上記同様に遠心力付与装置2の回転台駆動力伝達機構27を駆動して、突き上げ動作を2回行い、図20(c)に示すように、マイクロチップ200の姿勢を、270[°]の状態から更に時計回りに90[°]回転させた姿勢に変更する。
【0160】
マイクロチップ200を図20(c)に示す姿勢に変更すると、更に、測定部200aが光学式測定装置3の光情報測定部30と対向する位置(測定位置)にくるように、遠心力付与装置2のアーム回転機構22を駆動して、回転アーム20を、図21(a)に示すように、図20(c)に示す停止位置から時計回りに90[°]回転させた位置へと回転させ、その位置に停止させる。
【0161】
回転アーム20が、図21(a)に示す回転角度位置に停止すると、基台1内部の制御基板は、光学式測定装置3のソレノイド39に対して該ソレノイド39を駆動する駆動信号を出力する。これにより、ソレノイド39が駆動して、ソレノイドシャフト40が直進移動し、自己に結合された伝達部材41を直進移動させる。伝達部材41は、ソレノイドシャフト40の直進運動力を、連結部材38cを介して、戻り用ばね部38及び光情報測定部30に略同時に伝達する。これにより、光情報測定部30の結合部を介して伝達された直進運動力によって、第1、第2スライダ34、35の固着された光情報測定部30が、図21(b)に示すように、角柱部材36a及び第1、第2スライドレール32、33のレール部に沿ってマイクロチップ200の保持されたチップ保持部26のある方向(真上から見て左方向)に直進移動する。光情報測定部30は、第1支持部材30d及び第2支持部材30eが、水平方向に対向するチップ保持部26の角部にそれぞれぶつかるまで直進移動する。そして、該第1支持部材30d及び第2支持部材30eによって角部を押さえつけることで、光情報測定部30のレーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fとマイクロチップ200の測定部200aとの位置を測定処理を行うのに適切な位置に位置決めし且つその位置を固定支持する。
【0162】
光情報測定部30が図21(b)に示す位置に移動すると、基台1内部の制御基板は、光学式測定装置3に対して制御信号を出力して、第1レーザヘッド部30bを駆動し、第1の波長のレーザ光を3つのレーザヘッドから、これらと垂直方向に対向する測定部200aの3つの測定ポイントに向けて照射する。照射された第1の波長のレーザ光は、3つの測定ポイントにそれぞれ存在する試薬混合後の血漿成分を透過し、該透過光が第1受光ヘッド部30gの3つの受光ヘッドで受光される。そして、この受光された透過光の光量に応じた電圧信号が電気ケーブルを介して基台1内部の受光情報処理部へと出力する。更に、制御基板の制御によってソレノイド39がオフにされ、工程(4)が完了する。
【0163】
ソレノイド39がオフにされると、コイルばね38a及びコイルばね38bの復元力によって、光情報測定部30がチップ回転機構部から離間する方向に直進移動し、初期位置へと復帰する。
工程(4)が完了すると、基台1内部の受光情報処理部は、受光ヘッドからの電圧信号に基づき、第1の波長に対する透過光の情報を、不図示のI/Fを介して、外部コンピュータへと出力(送信)して、上記工程(5)を完了する。例えば、受光ヘッドからの電圧信号(アナログ信号)をA/D変換したデジタルデータを出力する。
【0164】
工程(5)が完了すると、基台1内部の制御基板は、引き続き上記工程(6)を開始し、遠心力付与装置2のアーム回転機構22を駆動して、回転アーム20を、図20(c)に示すように、図21(a)に示す停止位置から反時計回りに90[°]回転させた位置へと回転させ、その位置に停止させる。
更に、制御基板は、遠心力付与装置2の回転台駆動力伝達機構27を駆動して、突き上げ動作を2回行い、マイクロチップ200の姿勢を、現在の0[°]の状態から時計回りに90[°]回転させた姿勢に変更する。
【0165】
次に、制御基板は、遠心力付与装置2のアーム回転機構22を駆動して、回転アーム20を、図21(c)に示すように、現在の停止位置から時計回りに90[°]回転させた位置(測定位置に該当)へと回転させ、その位置に停止させる。
回転アーム20が、図21(c)に示す回転角度位置に停止すると、基台1内部の制御基板は、上記工程(4)と同様に、光学式測定装置3の光情報測定部30を移動して、第1支持部材30d及び第2支持部材30eによって、光情報測定部30のレーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fとマイクロチップ200の測定部200aとの位置を測定処理を行うのに適切な位置に位置決めし且つその位置を固定支持する。
【0166】
光情報測定部30が図21(c)に示す位置に移動すると、基台1内部の制御基板は、光学式測定装置3に対して制御信号を出力して、第2レーザヘッド部30cを駆動し、第1の波長とは異なる第2の波長のレーザ光を3つのレーザヘッドから、これらと垂直方向に対向する測定部200aの3つの測定ポイントに向けて照射する。照射された第2の波長のレーザ光は、3つの測定ポイントにそれぞれ存在する試薬混合後の血漿成分を透過し、該透過光が第2受光ヘッド部30hの3つの受光ヘッドで受光され、該受光された透過光の光量に応じた電圧信号が電気ケーブルを介して基台1内部の受光情報処理部へと出力される。これにより、工程(6)が完了する。
【0167】
工程(6)が完了すると、基台1内部の受光情報処理部は、受光ヘッドからの電圧信号に基づき、第2の波長に対する透過光の情報を、不図示のI/Fを介して、外部コンピュータへと出力(送信)して、上記工程(7)を完了する。
本実施の形態においては、外部コンピュータにおいて、受光情報処理部からの透過光の受光情報(測定結果)に基づき、血漿中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量、総ヘモグロビン量などを分析する。
【0168】
上記したように、本実施の形態の検体液分析装置100は、遠心力付与装置2において、アーム回転機構22によって、回転アーム20を回転駆動することができると共に、ステッピングモータ22aの駆動回路22bに供給するパルス信号を制御することで、回転アーム20を所望の回転角度位置に停止することができる。
また、遠心力付与装置2において、回転台駆動力伝達機構27を駆動して、回転台回転機構25のカム25aを上下動させることで、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200の姿勢(回転角度位置)を変更することができる。
【0169】
また、遠心力付与装置2において、回転アーム20の両端部に、その中心位置に対して長尺方向の対称位置にチップ回転機構部を設けたので、回転アーム20の両端の重量バランスを平衡に保つことができ、回転アーム20を安定したバランスで高速回転させることができる。
また、遠心力付与装置2において、回転台駆動力伝達機構27を、基台1側にショックアブソーバ27cを固定支持し、ソレノイド本体27aの駆動で直進運動するソレノイドシャフト27bの後端部に衝撃吸収ブラケット27eを結合し、ソレノイドシャフト27bが直進運動時に衝撃吸収ブラケット27eがピストンロッドの先端に衝突する構成としたので、突き上げ動作におけるソレノイドシャフト27bの直進移動時の衝撃を吸収することができる。
【0170】
また、遠心力付与装置2において、回転台駆動力伝達機構27を構成するソレノイドシャフト27bの先端部に、緩衝部材27fを介してプッシャ27gを連結したので、プッシャ27gが回転台回転機構25の伝達部25cに衝突したときの衝撃を吸収することができる。
また、遠心力付与装置2において、コイルばね25fを、該コイルばね25fの縮み時の捩れ力による回転方向と該ばね25fの巻き方向とが同じで、且つ該ばね25fの縮んだ状態から復元時の回転方向と該ばね25fの前記巻き方向とは逆の方向とが同じ方向となる構造としたので、コイルばね25fの伸縮時における両端部の摺動抵抗を低減することができる。これによって、コイルばね25fの伸縮動作を滑らかにすることができるので、回転台回転軸24を滑らかに回転させることができる。
【0171】
また、遠心力付与装置2において、回転台回転機構25を構成するコイルばね25fの上端部と回転アーム20との間と、コイルばね25fの下端部と伝達部25cとの間とに、リング形状の低摺動部材25gを設けたので、コイルばね25fの両端部の摺動抵抗を、更に低減することができる。これによって、コイルばね25fの伸縮動作をより滑らかにすることができるので、回転台回転軸24をより滑らかに回転させることができる。
【0172】
また、遠心力付与装置2において、回転台回転機構25を構成するカム25a、上側カム用ピン25d、下側カム用ピン25e、回転台回転軸24を形成する部品の材質の組み合わせを上記(A)〜(D)のいずれかの組み合わせで構成したので、これらの部品の間でのかじりによって回転台回転軸24の回転が妨げられる状態が発生するのを防ぐ又は低減することができる。
【0173】
また、遠心力付与装置2において、回転台回転機構25のカム25aの上端カム面25jの傾斜面25mを、垂直方向に右上から左下に向かう傾斜面とし、下端カム面25oの傾斜面25pを、垂直方向に右下から左上に向かう傾斜面とし、更に回転アーム20の回転方向を時計回り方向としたので、回転アーム20を時計回りに高速回転させて遠心力を付与したときに、下側カム用ピン25eには、下端カム面25oを構成するピン嵌合溝25qの壁に向かって押しつけられる方向に力がかかる。これにより、遠心力付与時に、回転台回転軸24が回転するのを阻止することができるので、遠心力の付与時に、マイクロチップ200が第2回転軸まわりに回転してしまうのを防ぐことができる。
【0174】
また、遠心力付与装置2において、チップ保持部26を、マイクロチップ200の外周全体を枠部26aで囲んで保持し、且つ押さえ部材26bによって、マイクロチップ200の一部を上から押さえる構成としたので、マイクロチップ200がどのような回転角度位置にあっても、遠心力の付与中に遠心方向の力に対してマイクロチップ200が外れるのを阻止でき、且つ、振動などによって上方向への力が発生しても、マイクロチップ200を浮上し難くできる。
【0175】
また、遠心力付与装置2において、回転台回転機構25と回転台駆動力伝達機構27とを別体とし、回転台回転軸24に沿ったカム25aの垂直方向の上下動によって、回転台駆動力伝達機構27の突き上げ力を回転台回転軸24の回転力へと変換する構成としたので、回転台回転軸24を回転させるのに、該回転台回転軸24を垂直方向に上下動させる必要がないため、チップ回転台23及びチップ保持部26を上下動させずにその場で回転させることができる。これにより、チップ回転台23、回転台回転軸24及びチップ保持部26を垂直方向に上下動させる構造にしなくても済む(上下動不能に固定できる)ので、例えば、アーム回転軸21の回転がアンバランスとなって、これらの構成部に上方向の力が加わっても、該構成部が浮上するのを確実に阻止することができる。
【0176】
また、光学式測定装置3において、光情報測定部30を、角柱部材36a及び第1及び第2スライドレール32、33に沿ってチップ回転機構部に対して接近及び離間移動する構成としたので、光情報測定部30の接近及び離間方向への移動時の前後方向及び上下方向の動きを抑えることができ、光情報測定部30を基台1の上面と平行に保ちながら接近及び離間方向に確実に直進移動させることができる。これにより、測定処理時の光情報測定部30の位置決めを精度良く行うことができ、正確な測定処理位置への移動に対する再現性を確保することができる。
【0177】
また、光学式測定装置3において、光情報測定部30における、レーザ光の照射部を、第1レーザヘッド部30b及び第2レーザヘッド部30cの2つ設けると共に、2つの照射部の各3つのレーザヘッドをL字を左右逆にしたような配列としたので、マイクロチップ200の姿勢を90[°]変更することで、同じ測定位置で、波長の異なる2種類の測定を行うことができる。
【0178】
また、光学式測定装置3において、レーザ光照射部30aとレーザ光受光部30fとを形成する部材を黒色の絶縁部材としたので、レーザ光照射部30aの各レーザヘッドから照射されたレーザ光がレーザ光受光部30fの表面で反射する反射量を大幅に低減することができる。これにより、反射光による誤動作の発生などを低減することができる。
更に、絶縁部材の性質によって、レーザ光照射部30aに設けられた複数のレーザヘッド同士が電気的に干渉しあうのを低減することができる。これにより、電気的干渉によるレーザ光への不具合(波長の変化など)の発生を低減することができる。
【0179】
更に、レーザ光受光部30fに設けられた複数の受光ヘッドを形成する金属部材にノイズが乗るのを防ぐ又はノイズの乗る量を低減することもできる。これにより、ノイズによる測定結果の誤差の発生を防ぐ又は誤差量を低減することができる。
また、光学式測定装置3において、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fを真上から見てその上端及び下端に第1支持部材30d及び第2支持部材30eを設け、光情報測定部30を遠心力付与装置2側に移動させたときに、第1支持部材30d及び第2支持部材30eの傾斜面がチップ保持部26の角部と接触する構成としたので、これにより、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fと、チップ保持部26の位置とを正確な測定処理位置に位置決めし且つその位置を固定支持することができる。
【0180】
上記第1の実施の形態において、遠心力付与装置2は、発明1乃至3のいずれか1に記載の遠心力付与装置に対応し、基台1は、発明1、2、4及び5のいずれか1に記載の基台に対応し、回転アーム20は、発明1、2、4及び5のいずれか1に記載の第1回転体に対応し、アーム回転機構22は、発明1、2、4及び5のいずれか1に記載の第1駆動機構に対応する。
【0181】
また、上記第1の実施の形態において、チップ回転台23は、発明1、2、4及び5のいずれか1に記載の第2回転体に対応し、回転台回転機構25及び回転台駆動力伝達機構27は、発明1又は4に記載の第2駆動機構に対応し、回転台駆動力伝達機構27は、発明2、3、5及び6のいずれか1に記載の第1伝達機構に対応し、回転台回転機構25は、発明2、3、5及び6のいずれか1に記載の第2伝達機構に対応し、ソレノイドシャフト27b及びプッシャ27gは、発明3又は6に記載の第1伝達部材に対応し、伝達部25c、カム25a、上側カム用ピン25d及び下側カム用ピン25eは、発明3又は6に記載の第2伝達部材に対応する。
また、上記第1の実施の形態において、光学式測定装置3は、発明4に記載の光照射部及び受光部に対応し、受光情報処理部は、発明4に記載の出力部に対応する。
【0182】
〔第1の実施の形態の変形例1〕
次に、図22に基づき、上記第1の実施の形態の変形例1を説明する。
本変形例は、上記第1の実施の形態における遠心力付与装置2に対して、回転アーム20を高速回転して、チップ回転台23上に形成されたチップ保持部26に保持されたマイクロチップ200に遠心力を付与するときに、これらの重心位置を、その回転中心位置から遠心力の付与方向にずらすと共に、該ずらした後の位置を保持する機構と、ずらした後の位置をずらす前の位置に復帰させる機構とを加えたものである。従って、重心位置をずらし、且つその位置を保持する機構と、ずらした後の位置をずらす前の位置に復帰させる機構とが追加された以外は、上記第1の実施の形態の遠心力付与装置2と同様の構成となる。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0183】
ここで、図22(a)〜(e)は、遠心力の付与時における重心位置の変更動作の一例を示す図である。
本変形例の遠心力付与装置2は、上記第1の実施の形態のチップ回転台23及びチップ保持部26に対して、不図示のソレノイド等のアクチュエータを含み、該アクチュエータの駆動により、チップ回転台23及びチップ保持部26を遠心力の付与方向にスライドさせると共に、スライド後にその位置を保持する偏心機構が付加された構成を有している。
【0184】
更に、偏心機構は、前記アクチュエータの動力によって、チップ回転台23及びチップ保持部26の位置を、ずらした後の位置からずらす前の位置へと復帰させる復帰機構も備えている。
そして、本変形例では、回転アーム20を回転させて、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200に遠心力を付与するときに、図22(a)に示すように、チップ回転台23及びチップ保持部26の回転中心位置と回転台回転軸24の軸心位置とが一致又は略一致している状態から、前記偏心機構のアクチュエータを制御して、その動力によって、図22(b)に示すように、チップ回転台23及びチップ保持部26を遠心力が付与される方向にスライドさせて、チップ保持部26に保持されたマイクロチップ200の重心位置を、回転台回転軸24の回転中心位置(図中の○印)に対して、遠心力の付与方向に向かってずらす(図中の×印)。また、ずらした後に、アクチュエータに電流を流し続けることで保持トルクをかけ、ずらした後の位置を保持する。
【0185】
また、本変形例の遠心力付与装置2は、遠心力の付与後に、マイクロチップ200の姿勢を変更するときは、先に、偏心機構のアクチュエータを制御して、その動力によって、図22(c)に示すように、チップ回転台23、チップ保持部26及びマイクロチップ200を遠心力の付与方向とは反対の方向にスライドさせて、これらの重心位置と、回転台回転軸24の回転中心位置とが一致又は略一致する状態(偏心機構でずらす前の状態)に復帰させる。しかる後に、上記第1の実施の形態と同様に、これら各構成部を回転させる。ここで、ずらした後の位置からずらす前の位置に復帰させるときに、アクチュエータの動力ではなく、コイルばねなどの弾性体の復元力を利用する構成としても良い。
【0186】
上記構成により、チップ回転台23及びチップ保持部26の重心位置(図中の×印)が、回転台回転軸24の回転中心位置(図中の○印)から遠心力の加圧方向に向かってずれた状態で遠心力を付与することができるので、遠心力の付与中に、チップ回転台23、チップ保持部26及びマイクロチップ200の重心にかかる遠心力によって、これらが回転台回転軸24の軸周りに回転してしまうことを防ぐことができる。
【0187】
〔第1の実施の形態の変形例2〕
次に、図23に基づき、第1の実施の形態の変形例2を説明する。
上記第1の実施の形態における光学式測定装置3は、光情報測定部30をチップ回転機構部に対して接近又は離間する方向に移動させたときに、第1支持部材30d及び第2支持部材30eによって、光情報測定部30のレーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fと、マイクロチップ200の測定部200aとの位置を正確な位置に位置決めすると共に固定保持する構成を有しているのに対し、本変形例の光学式測定装置3は、第1支持部材30d及び第2支持部材30eの代わりに、光情報測定部30の垂直方向の下部に固定用のピンを有し、該ピンを、回転台回転機構25側に設けられたピン穴に嵌合することによって、レーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fと、マイクロチップ200の測定部200aとの位置を正確な位置に固定保持する点が上記第1の実施の形態と異なる。従って、上記第1の実施の形態における光情報測定部30の第1支持部材30d及び第2支持部材30eの代わりに位置固定用のピンが追加され、遠心力付与装置2の回転台回転機構25に前記ピンを嵌合するピン穴が追加された以外は、上記第1の実施の形態の遠心力付与装置2及び光学式測定装置3と同様の構成となる。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0188】
ここで、図23(a)及び(b)は、本変形例における、測定処理時の光情報測定部30とマイクロチップ200との位置を位置固定用のピン及びピン穴によって固定支持する場合の構成例を示す図である。
図23(a)に示すように、本変形例の遠心力付与装置2は、回転アーム20が測定処理時の回転角度位置に停止時において、回転台回転機構25における光情報測定部30と対向する部分に、位置固定用のピン穴25uが形成された構成を有している。
【0189】
更に、本変形例の光学式測定装置3は、図23(a)に示すように、光情報測定部30の下部に、位置固定用のピン42が、回転アーム20が測定処理時の回転角度位置に停止時において、ピン42のピン先が回転台回転機構25に形成されたピン穴25uに対向する位置に支持部材43を介して固定支持されている。
上記構成により、ソレノイド39を駆動して、ソレノイドシャフト40を直進移動し、光情報測定部30を角柱部材36aに沿って、測定処理時の回転角度位置で停止している回転台回転機構25に向けて直進移動させると、図23(b)に示すように、光情報測定部30と共に、その下部に固定支持されたピン42が直進移動し、回転台回転機構25のピン穴25uに嵌合する。この嵌合によって、光情報測定部30のレーザ光照射部30a及びレーザ光受光部30fと、マイクロチップ200の測定部200aとの位置を、測定処理を行うのに適切な位置に位置決めし且つその位置を固定支持することができる。
【0190】
〔第1の実施の形態の変形例3〕
次に、図24に基づき、第1の実施の形態の変形例3を説明する。
上記第1の実施の形態における遠心力付与装置2は、回転台駆動力伝達機構27において、ソレノイド本体27a及びソレノイドシャフト27bと、ショックアブソーバ27cとが別体となった構成となっているが、これに対して、本変形例では、ソレノイド本体27a及びソレノイドシャフト27bと、ショックアブソーバ27cとが一体となったショックアブソーバ付ソレノイドを用いている点が上記第1の実施の形態と異なる。従って、ショックアブソーバ付ソレノイドを用いている以外は、上記第1の実施の形態の遠心力付与装置2と同様の構成となる。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0191】
ここで、図24は、ショックアブソーバ付ソレノイド28の構成を示す図である。
ショックアブソーバ付ソレノイド28は、図24に示すように、ソレノイド部28aと、ショックアブソーバ部28bと、ソレノイド部28aのソレノイドシャフトと、ショックアブソーバ部28bのピストンロッドとの役割を兼ね備えたシャフト28eとを含んだ構成を有している。
【0192】
更に、シャフト28eの先端部には、上記第1の実施の形態における緩衝部材27fと同様に、緩衝部材28fが設けられている。更に、緩衝部材28fの設けられた先端部は、プッシャ27gの後端側に開口して設けられた嵌合穴に嵌合されている。この緩衝部材28fの役割は、緩衝部材27fと同様で、プッシャ27gの突き上げ時の衝撃を吸収する。
【0193】
ソレノイド部28aは、シャフト28eが可動鉄心に取り付けられている点を除けば、その他の構成は、上記第1の実施の形態のソレノイド本体27aと同様となる。
従って、ソレノイド部28aは、コイルに通電することで磁気吸引力が発生し、シャフト28eを固定鉄心側に引き寄せ、該シャフト28eを直進移動させることができる。
一方、ショックアブソーバ部28bは、シリンダに軸穴(第1の実施の形態におけるロッド穴と同等)が設けられており、シャフト28eの後端側の一部が軸穴に挿通されている。
【0194】
また、ショックアブソーバ部28bは、一端にシャフト28eの後端部が固着されたピストン部28cと、ピストン部28cの他端に一端が支持され、シリンダ内端部に他端が支持された戻り用のコイルばね28dとを含んだ構成となっている。また、シリンダ内部には粘性を持った液体(例えば、オイルなど)が封入されている。
ピストン部28cは、本体の外周をOリング等のリング状のシール部材によってシールされており、シリンダ内に封入された液体が外周部とシリンダ内壁との間を通り抜けるのを防ぐ構成となっている。なお、軸穴に関しても、外部に液体が漏れないようにOリング等のリング状のシール部材によってシールしている。
【0195】
更に、ピストン部28cには、その往復動方向に常時開通されている複数の貫通穴と、ピストン部28cの移動方向に応じて開通される複数の弁付貫通穴とが設けられている。弁付貫通穴は、ピストン部28cのシャフト28eが固着された側に設けられた1つの開口部に対して、その他端側には複数の開口部が設けられた構成となっている。更に、弁付貫通穴の内部には、シャフト28eが固着された側の1つの開口部を塞ぐ鋼球と該鋼球に一端が支持され他端が複数の開口部側に支持されたコイルばね(以下、弁用ばね)とから構成される開閉弁が設けられている。この開閉弁は、ピストン部28cがコイルばね28dを伸ばす方向(以下、伸長方向と称す)に移動したときに、鋼球がシリンダ内の液体に押されて弁用ばねを縮ませるため開状態となり、コイルばね28dを縮める方向(以下、圧縮方向と称す)にピストン部28cが移動したときに、シリンダ内の液体が1つの開口部を塞ぐ方向に鋼球を押すことになるため閉状態となる。
【0196】
つまり、ピストン部28cがコイルばね28dの伸長方向にシリンダ内を移動時には、貫通穴及び弁付貫通穴の両方を液体が通過し、この通過時に発生する制動力(移動方向とは逆向きの抵抗力)によって、シャフト28eが回転台回転機構25の伝達部25cに向かって直進移動時の衝撃を吸収する。
また、コイルばね28dは、ピストン部28cが伸長方向の移動によって伸び、ソレノイド部28aが停止し、シャフト28eからその駆動力が除去されたときに、コイルばね28dの復元力によって、ピストン部28cを初期位置(コイルばね28dに力がかかっていない状態の位置)へと引き戻す力を発生する。このとき、ピストン部28cは、常時開通されている貫通穴のみに液体を通して移動するため、シャフト28eが上方向に移動するときよりも大きな制動力が発生することになる。
【0197】
上記構成によって、ショックアブソーバ付ソレノイド28は、ソレノイド部28aを駆動し、シャフト28eを上方向に直進移動させると、これと連動してシリンダ内部のピストン部28cがコイルばね28dの伸長方向に直進移動する。このピストン部28cの直進移動時の貫通穴及び弁付貫通穴を通る液体による制動力によって、シャフト28eの直進移動時の衝撃が緩和される。
【0198】
また、プッシャ27gが伝達部25cに衝突して伝達部25cを突き上げると、その突き上げ力がカム25aに伝達される。このとき、シャフト28eの先端部に取り付けられた緩衝部材28fによって、プッシャ27gが伝達部25cに衝突したときの衝撃が緩和される。
一方、ソレノイド部28aのコイルの通電をオフにし、シャフト28eから駆動力を除去すると、該シャフト28eは、自重に加え、回転台回転機構25におけるコイルばね25fの復元によるカム25aの下方向の力及びピストン部28cに支持されたコイルばね28dの復元力を受けて下方向に移動する。このとき、ショックアブソーバ部28bの弁付貫通穴の開閉弁が閉じた状態となるので、ピストン部28cは、シリンダ内の液体を常時開通されている貫通穴にのみ通り抜けさせながら下方向に移動する。つまり、ショックアブソーバ部28bにおいて、上方向の移動のときよりも大きな制動力が発生し、この制動力を受けながら、シャフト28eは、カム25aが最下端に到達するまで該カム25aと共に移動し、最下端に到達するとカム25aから離間して下方向に移動し、最終的に初期位置へと復帰する。
【0199】
これによって、ショックアブソーバ付ソレノイド28は、シャフト28eの上方向への移動時の衝撃に加え、下方向に移動時の衝撃も吸収することができる。更に、シャフト28eの下方向への移動においては、先述したように、シャフト28eの自重に加え、回転台回転機構25におけるコイルばね25fの復元によるカム25aの下方向の力及びピストン部28cに支持されたコイルばね28dの復元力を受けるため、シャフト28eを上方向に移動するときよりも大きな力が下方向にかかることになる。そのため、本変形例においては、シャフト28eの下方向に移動時の制動力を、上方向に移動時の制動力よりも大きくしている。
【0200】
また、本変形例のショックアブソーバ付ソレノイド28を、上記第1の実施の形態の光学式測定装置3におけるソレノイド39及びソレノイドシャフト40の代わりに用いることも可能である。この場合は、ソレノイドの動作をシャフト28eを突き出す方向ではなく、引き込む方向に直進運動させる構成とする。これにより、ソレノイド部28aが動作して、シャフト28eがシリンダの外側に引き出される方向に直進運動すると、ピストン部28cはコイルばね28dが伸びる方向に直進移動する。このピストン部28cの直進運動時の貫通穴を通る液体によって発生する制動力によって、光情報測定部30への直進運動力の伝達時の衝撃が緩和される。また、ショックアブソーバ部28bのピストン部28cの弁付貫通穴を設ける方向を逆にしてもよい。
【0201】
なお、上記変形例3においては、ショックアブソーバ部28bを、ピストン部28cの一端部に1つの開口部及び他端部に複数の開口部を有し、ピストン部28cの内部に1つの開口部を塞ぐ鋼球と該鋼球に一端が支持され他端が複数の開口部側に支持されたコイルばねとによって構成される弁付貫通穴を設け、戻り用コイルばね28dによって、ピストン部28cを初期位置に戻す構成としたが、これに限らず、シャフト28eのように、ソレノイドシャフトとピストンロッドとを共通化する構成であれば、公知のショックアブソーバの構成など他の構成とすることも可能である。
【0202】
例えば、シリンダ内にガスを封入し、ガスの上から液体を封入することで液室とガス室を構成し、シャフト28eに衝撃が加えられたときには、ガスを圧縮して液室の体積を増やすことで、シリンダ内への進入方向にピストン部28cを移動させて衝撃を吸収し、衝撃吸収後はガス圧によってピストン部28cを元の位置に復帰させる構成とすることも可能である。
【0203】
また、コイルばね28dをシリンダ内ではなく、例えば、シャフト28eに設けられた該シャフト28eの移動範囲を制限するストッパ部と、ソレノイド部28aとの間に設けるなど、シャフト28eにその位置を戻す力を適切に伝えることができる構成であれば、シリンダ外に設ける構成としても良い。
また、上記変形例3においては、ショックアブソーバ部28bの構成を、単筒構成としているが、これに限らず、内筒と外筒とを備え、内筒内の液体を外筒に押し出す複筒構成としても良い。この場合は、単筒構成よりも、シャフト28eを短く形成することができる。
【0204】
また、上記変形例3においては、衝撃を吸収する手段として、ショックアブソーバを用いているが、これに限らず、単筒式のショックアブソーバと構造が似ているが、シリンダ内をピストンで区分して構成される各室にガスを充填し、このガスの圧力によって衝撃を吸収する構成のガス・スプリングを用いても良い。この場合も、ピストンに一端が固着され他端側がシリンダ外に延びるピストンロッドと、ソレノイドのソレノイドシャフトとを一体形成することで、ガス・スプリングを別体で設けるのと比較して、省スペースで、ソレノイドに衝撃吸収の機能を付加することができる。
【0205】
〔第1の実施の形態の変形例4〕
次に、図25に基づき、第1の実施の形態の変形例4を説明する。
上記第1の実施の形態における遠心力付与装置2は、回転台回転機構25において、カム25aの回転台回転軸24に沿った下方向の移動に、コイルばね25fの復元力を利用する構成としたが、これに対して、本変形例では、磁石の同極同士の反発力を利用する点が上記第1の実施の形態と異なる。従って、コイルばね25fの代わりに2つのリング形状の永久磁石を用いる点以外は、上記第1の実施の形態の遠心力付与装置2と同様の構成となる。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0206】
ここで、図25は、本変形例の回転台回転機構25の構成を示す図である。
本変形例の回転台回転機構25は、図25に示すように、円筒形状のカム25aと、ガイド部25bと、伝達部25cとを含んだ構成となっている。なお、これらの詳細な構成は、上記第1の実施の形態と同様となるので説明を省略する。
更に、回転台回転機構25は、リング形状の永久磁石から構成される磁石25h及び25iを含んで構成される。
【0207】
本変形例の回転台回転機構25は、回転台回転軸24の下端側の一部とカム25aとを磁石25h及び25iの内側に挿通して、磁石25hを上側の回転アーム20に固定支持し、磁石25iを下側の伝達部25cに固定支持した構成となっている。また、磁石25h及び25iは、同極同士が対向するように配設されており、両者が接近時に、その反発力によって伝達部25cに下方向の力を加圧するようになっている。
【0208】
更に、回転台回転機構25は、上側カム用ピン25dと、下側カム用ピン25eとを含んだ構成となっている。なお、これらの詳細な構成は、上記第1の実施の形態と同様となるので記載を省略する。
上記構成によって、回転台回転機構25は、回転台駆動力伝達機構27によってカム25aを突き上げ後において、傾斜面に沿って移動した上側カム用ピン25dが壁25nにぶつかって停止している状態のときに、プッシャ27gの突き上げ力が除去されると、カム25aの上方向の移動によって接近していた磁石25h及び25iの反発力によって、カム25aが、伝達部25cに設けられた磁石25iと共にガイド部25bに沿って、回転することなく下方向へと直進移動する。
なお、磁石25h及び25iが永久磁石で構成された例を説明したが、これに限らず、電磁石など他の磁石で構成してもよい。
【0209】
〔第1の実施の形態の変形例5〕
次に、図26に基づき、第1の実施の形態の変形例5を説明する。
上記第1の実施の形態の検体液分析装置100においては、遠心力付与装置2のチップ保持部26の構成を、マイクロチップ200の周囲を枠部26aで囲み且つ押さえ部材26bを用いてマイクロチップ200の一部を上から押さえる構成のものを例に挙げたが、本変形例では、チップ保持部26の別の構成について説明する。
【0210】
また、本変形例の検体液分析装置100は、遠心力付与装置2におけるチップ保持部26及びマイクロチップ200のうち少なくとも一方の構成が異なる以外は、上記第1の実施の形態の検体液分析装置100と同様の構成となる。従って、以下、上記第1の実施の形態と異なる部分のみを詳細に説明する。
ここで、図26(a)〜(d)は、チップ保持部及びマイクロチップの構成例を示す図である。
【0211】
まず、図26(a)に示す、チップ保持部26A及びマイクロチップ200Aの構成を説明する。
チップ保持部26Aは、図26(a)に示すように、真上から見て正方形状の保持台を有し、その対角位置(図の例では対角の2箇所)に円柱形状の突起部を設けた構成となっている。
【0212】
一方、マイクロチップ200Aは、図26(a)に示すように、正方形状のチップの対角位置(保持台と同じ位置(図では対角の2箇所))に、保持台の突起部と同じ位置関係で該突起部を嵌合する嵌合穴が形成された構成となっている。
そして、チップ保持部26Aの保持台の対角位置の突起部を、マイクロチップ200Aの対応する対角位置の嵌合穴に嵌合させてマイクロチップ200Aを保持台に載置することで、該マイクロチップ200Aを位置決めすると共に固定保持する。
【0213】
なお、図26(a)に示す例では、突起部及び嵌合穴を対角位置に2つ設ける構成としたが、これに限らず、対角位置に2つの突起部及び嵌合穴が設けられていれば、いくつ設けても構わない。
次に、図26(b)に示す、チップ保持部26Bの構成を説明する。
チップ保持部26Bは、図26(b)に示すように、上記第1の実施の形態におけるチップ保持部26を構成する、押さえ部材26b1のマイクロチップ200との接触位置に傾斜面を形成して、押さえ部材26b’1とし、更に、被検出部26c及び26dの形状を、マイクロチップ200の外縁部の一部を斜め上から押さえる傾斜面を備えた構成として、これらを26c’及び26d’とした。
【0214】
そして、チップ保持部26Bにマイクロチップ200を装着するときは、図26(b)に示すように、板ばね26b’2を外側に弾性変形させ、押さえ部材26b’1、被検出部26c’及び26d’のある各辺の外縁部が、それぞれの傾斜面の下にくるようにマイクロチップ200を潜り込ませて、全体を枠部26aの枠内へと押し込む。
これにより、マイクロチップ200の外周を枠部26aがハチマキ状に囲んだ状態となり、更に、板ばね26b’2の弾性力によって、チップ押さえ部26b’1の傾斜面、被検出部26c’及び26d’の傾斜面が、マイクロチップ200の外縁部を斜め上方から押さえつける状態となる。
【0215】
次に、図26(c)に示す、チップ保持部26C及びマイクロチップ200Cの構成を説明する。
チップ保持部26Cは、図26(c)に示すように、正方形状の枠部26Caを含んで構成される。枠部26Caには、その内側の周方向に沿って延びる突起部(リブ)が形成されている。
【0216】
一方、マイクロチップ200Cの外周部には、周方向に沿って突起部を嵌合可能な溝状の切り欠きが設けられている。
そして、チップ保持部26Cの枠部26Caの内周に設けられた突起部を、マイクロチップ200Cの切り欠きに嵌め込むことで、マイクロチップ200Cを保持する。
なお、突起部は全周に亘って設けても良いし、相対する2辺の内面のみに設けても良い。同様に切り欠きも全周に亘って設けても良いし、相対する2辺の側面のみに設けても良い。
【0217】
次に、図26(d)に示す、チップ保持部26D及びマイクロチップ200Dの構成を説明する。
チップ保持部26Dは、図26(d)に示すように、正方形状の枠部26Daと、該枠部26Daの4辺の内壁に形成された枠の内側に開口する横穴内にそれぞれ埋め込まれた押さえ部材26Dbとを含んで構成される。
【0218】
押さえ部材26Dbは、先端部に球状の部材を有し、該球状部材にコイルばねの一端が固着され、他端が枠部26Daの四辺の各横穴内の端部に支持された構成となっている。コイルばねの長さは、該コイルばねを圧縮して(縮ませて)いない状態で、横穴から球状部材の一部又は全部が飛び出す程度の長さとなっており、コイルばねが縮んだときには球状部材の全体が窪みの内部に収まる構成となっている。
【0219】
マイクロチップ200Dは、その4辺の各外周面の枠部26Daの横穴と対応する位置に、上記球状部材を嵌入する窪み(図26(d)の穴部)がそれぞれ設けられている。
そして、マイクロチップ200Dを押さえ部材26Dbのコイルばねを縮めながら、球状部材と窪みとの位置を合わせて枠部26Da内に押し込むことで、マイクロチップ200Dの4辺外周の各窪みに球状部材が嵌め込まれ、この状態でマイクロチップ200Dの全体が枠内に収まる。これにより、マイクロチップ200Dが位置決めされると共に固定保持される。
【0220】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図27は、本発明に係る遠心力付与装置及び検体液分析装置の第2の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1の実施の形態の検体液分析装置100における遠心力付与装置2が、図27に示す遠心力付与装置6になったのみで、それ以外は、上記第1の実施の形態と同様となる。
まず、図27に基づき、本発明に係る遠心力付与装置の概略構成を説明する。
ここで、図27は、本実施の形態の遠心力付与装置6の概略構成を示す図である。
【0221】
遠心力付与装置6は、図27に示すように、矩形の板状部材から構成される回転アーム60(回転アーム20と同等)と、回転アーム60の回転軸であるアーム回転軸61(アーム回転軸21と同等)と、アーム回転軸61に回転駆動力を付与するモータ62及び動力伝達機構63と、チップ回転台65(チップ回転台23と同等)の回転軸である回転台回転軸64(回転台回転軸24と同等)と、チップ回転台65と、回転台回転軸64を回転駆動する回転台駆動機構66と、該回転台駆動機構66に電力を供給する電源ライン67と、制御信号を供給するための信号ライン(不図示)と、電源ライン67に電力を、信号ラインに制御信号をそれぞれ供給するスリップリング68とを含んで構成される。
【0222】
回転アーム60は、内部に、電源ライン67及び信号ラインが通る通路が形成されている。
アーム回転軸61は、基台1の上部プレートに対して、不図示の支持部材及び軸受(例えば、転がり軸受など)を介して垂直方向の軸周りに回転自在に支持されている。更に、その内部には、回転アーム60と同様に、電源ライン67及び信号ラインが通る通路が形成されている。
【0223】
また、アーム回転軸61の上端は、その軸心位置と回転アーム60の中心位置とを一致させて該回転アーム60に接合され、アーム回転軸61の下端はスリップリング68と連結されている。
モータ62は、上記第1の実施の形態のステッピングモータ22aと同等のものであり、基台1内部の制御基板からの制御信号(パルス信号)に応じて回転駆動力を発生する。
【0224】
動力伝達機構63は、ベルト及びプーリとの組み合わせ又は歯車などから構成されており、モータ62の回転駆動力を、アーム回転軸61の回転駆動力へと変換して、該アーム回転軸61へと伝達する機構を有している。
遠心力付与装置6は、更に、回転アーム60の長尺方向の一端及び他端に、それぞれ、該一端及び他端に設けられた軸穴に挿通して回転台回転軸64が、不図示の軸受を介して垂直方向の軸周りに回転自在に設けられている。更に、回転台回転軸64の上端部に、チップ回転台65が、その中心と回転台回転軸64の軸心とを一致させて両者が接合されている。また、回転台回転軸64の下端側の一部は、該回転台回転軸64に回転駆動力を伝達する回転台駆動機構66の出力軸に接続されている。なお、チップ回転台65上には、上記第1の実施の形態と同様に、マイクロチップ200を保持するチップ保持部26(不図示)が設けられる。
【0225】
回転台駆動機構66は、回転台回転軸64に回転駆動力を付与するロータリーソレノイド又はモータ(例えば、ステッピングモータ)などの回転駆動源と、該回転駆動源を駆動する駆動回路(モータの種類によってはエンコーダも含む)とを含み、電源ライン67から供給された電力によって駆動回路及び回転駆動源を駆動し、回転台回転軸64に回転駆動力を付与する。また、本実施の形態においては、不図示の信号ラインからの制御信号に基づき、回転台回転軸64の回転角度位置の位置決め制御が行われる。また、回転駆動源は、チップ回転台65を回転後にその回転角度位置(停止位置)を保持する保持機能を有する。
【0226】
以上の構成により、チップ回転台65を所望の回転角度位置へと回転し且つその回転角度位置に停止保持することで、チップ保持部に装着されたマイクロチップ200の姿勢を変更し且つその姿勢を保持することができる。
電源ライン67及び信号ラインは、その一端が、アーム回転軸61の内部及び回転アーム60の内部に形成された通路を通って、回転台駆動機構66の回転駆動源及び駆動回路の有する端子にそれぞれ接続され、他端は、スリップリング68の回転軸内部においてその外部に嵌められたリング(集電環)と通電可能に接続されている。
【0227】
スリップリング68は、固定子と、一端がアーム回転軸61の下端に連結され他端側が固定子に設けられた軸穴に回転自在に挿通された回転軸と、該回転軸の外周に沿って嵌められたリングと、固定子の軸穴内壁にリングと接触して設けられた金属片(ブラシ)と、固定子の外部に金属片と通電可能に設けられた電源用入力端子(不図示)と信号用入力端子(不図示)とを含んで構成され、該電源用入力端子には、基台1内部に設けられた不図示の電源部の電源ラインが接続され、信号用入力端子には、基台1内部に設けられた不図示の制御基板の信号ラインが接続された構成となっている。
【0228】
上記構成によって、遠心力付与装置6は、チップ保持部に装着されたマイクロチップ200に遠心力を付与する場合は、基台1内部の制御基板からの制御信号に応じて、モータ62が回転駆動すると、該回転駆動力が動力伝達機構63を介してアーム回転軸61に伝達され、該アーム回転軸61を回転させる。この回転力は、回転アーム60を回転させ、マイクロチップ200に遠心力を付与する。このとき、電源ライン67及び信号ラインは、アーム回転軸61の内部及び回転アーム60の内部に形成された通路を通して配線され、その一端が、アーム回転軸61と共に回転する回転台駆動機構66に接続され、他端が、アーム回転軸61の下端側に設けられたスリップリング68の回転軸に接続されているので、アーム回転軸61が回転すると、スリップリング68の回転軸も一緒に回転するので、この回転軸の内部に端部が接続された電源ライン67及び信号ラインが捩れたり、絡まりあったりしない。
【0229】
一方、チップ保持部に保持されたマイクロチップ200の姿勢を変更する場合は、遠心力付与装置6は、まず、基台1の内部にある電源部からの電源及び制御基板からの制御信号を、スリップリング68の固定子に設けられた電源用入力端子及び信号用入力端子を介して、それぞれ対応する金属片に電力及び制御信号を供給する。各金属片は、リングと通電可能に接触しているので、各リングを介して、電源ライン67に電力が供給され、信号ラインに制御信号が供給される。該供給された電力及び制御信号は、電源ライン67及び信号ラインを通って回転台駆動機構66に供給される。回転台駆動機構66は、電力及び制御信号が供給されると、駆動回路において制御信号に基づき回転駆動源(モータ、ロータリーソレノイドなど)を制御し、回転駆動源を制御信号に応じた回転方向に、制御信号に応じた回転角度だけ回転駆動する。
【0230】
また、回転駆動源が回転駆動すると、回転台回転軸64が回転し、それと共にチップ回転台65及びチップ保持部が回転する。これにより、チップ保持部に装着されたマイクロチップ200の姿勢が制御信号に応じた回転角度だけ変更される。
具体的には、制御基板からの制御信号に応じて、分離成分の秤量、分離成分と試薬との混合、分離成分の測定位置への移動などを行うための姿勢にそれぞれ対応する回転角度位置へと変更する。
【0231】
つまり、本実施の形態の検体液分析装置100は、遠心力付与装置6において、回転台駆動機構66の回転駆動源の回転方向及び回転角度位置を制御することで、マイクロチップ200を所望の回転方向に所望の回転角度だけ回転させ、且つ該回転角度位置での停止状態を保持することができる。
【0232】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図28ないし図30は、本発明に係る遠心力付与装置および検体液分析装置の第3の実施の形態を示す図である。
上記第1の実施の形態では、図9に示すように、回転台駆動力伝達機構27としてソレノイド本体27aによる駆動機構を採用したのに対し、本実施の形態では、モータおよびカム機構による駆動機構を採用する点が異なる。なお、以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0233】
上記第1の実施の形態のように、ショックアブソーバ27c付きソレノイドでは衝撃を完全には吸収できないため、マイクロチップ200内の液体が攪拌されてしまうという問題が想定される。この対策として、本実施の形態は、モータおよびカム機構による駆動機構を採用することにより、プッシャ27gの突き上げ速度の調整が可能となり、マイクロチップ200の回転時の衝撃を低減することを実現する。
【0234】
本実施の形態に係る回転台駆動力伝達機構27の構成を説明する。
図28は、遠心力付与装置2の正面図である。
図29は、遠心力付与装置2の側面図である。
回転台駆動力伝達機構27は、図28および図29に示すように、モータ27hと、モータ27hの回転駆動により回転する板カム27iと、板カム27iに従動して上下動する突き上げシャフト27jと、突き上げシャフト27jを軸支するリニアブッシュ27kと、突き上げシャフト27jの先端に取り付けられたプッシャ27gとを有して構成されている。
【0235】
モータ27hは、回転軸27lが水平となるように配置されている。モータ27hとしては、例えば、DCモータまたはステッピングモータを採用することができる。本実施の形態では、DCモータと減速機を組み合わせて構成した。これにより、小型モータで大きいトルクを得ることができ、装置の小型化が可能となる。また、モータ回転数(入力電圧)を制御することによりプッシャ27gの突き上げ速度を調整(例えば、遅く)することができるので、マイクロチップ200の回転時の衝撃を低減することができる。なお、モータ27hに代えて、回転の駆動力を得ることができるアクチュエータを採用することもできる。
【0236】
板カム27iは、モータ27hの回転軸27lに取り付けられている。なお、板カム27iに代えて、溝カム、円筒カム、斜板カム、端面カムまたは球面カム等のカム機構を採用することもできる。
突き上げシャフト27jは、垂直に配置され、その下端が板カム27iの外周面上端に当接している。突き上げシャフト27jには、コイルばね27mが巻き付けられているとともに、フランジ状のストッパ27nが形成されている。コイルばね27mは、ストッパ27nとリニアブッシュ27kの間に介挿され、その下端がストッパ27nにより係止される。突き上げシャフト27jは、コイルばね27mの付勢力によりその下端が板カム27iに押し付けられ、常に、その下端が板カム27iの外周面に接する状態となる。そのため、突き上げシャフト27jを板カム27iに従動させることができる。
【0237】
リニアブッシュ27kは、基台1の下面に取り付けられ、突き上げシャフト27jを軸支している。これにより、突き上げシャフト27jは、水平方向の移動が拘束され垂直方向にのみ変位可能となる。
同じ材料の金属同士を摺動させた場合に発生しやすいかじりを防止するために、板カム27i、突き上げシャフト27j、プッシャ27gは、それぞれ異なる材料で構成することが好ましい。例えば、ナイロン、S45C等の炭素鋼、SUS304等のステンレス、黄鋼、A5052のようなアルミ合金の組み合わせで構成することができる。本実施の形態では、板カム27iをS45C、突き上げシャフト27jをA5052、プッシャ27gをナイロンで構成した。
【0238】
回転台駆動力伝達機構27は、さらに、図示しないが、突き上げシャフト27jの上下方向の位置を検出する位置検出センサを有して構成されている。これにより、制御基板300では、位置検出センサからのセンサ信号に基づいて突き上げシャフト27jの位置を判定することができるので、入力パルス数によって位置決めを行うステッピングモータでなくても、オン・オフ制御のみを行うDCモータを使用し、突き上げシャフト27jの上下動を制御することができる。
【0239】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図30は、回転台駆動力伝達機構27の動作を示す図である。
制御基板300は、まず、マイクロチップ200の姿勢を変更するために、回転台駆動力伝達機構27に制御信号を出力し、モータ27hを駆動させる。モータ27hが駆動すると、モータ27hの駆動力により板カム27iが回転し、図30(c)、同図(b)、同図(a)の順に状態が遷移し、板カム27iに従動して突き上げシャフト27jが上方に直進移動する。これに伴って、プッシャ27gが上方に直進移動し、姿勢検出回転角度位置に停止している回転台回転機構25の伝達部25cを突き上げる。これにより、伝達部25cと一体形成されたカム25aが回転台回転軸24に沿って突き上げられる。
【0240】
カム25aが突き上げられると、上端カム面25jと、上側カム用ピン25dとによって、突き上げ力が回転台回転軸24の回転力へと変換され、回転台回転軸24が時計回りに回転する。
その後、モータ27hをさらに駆動させると、モータ27hの駆動力により板カム27iが回転し、同図(a)、同図(c)の順に状態が遷移し、板カム27iに従動して突き上げシャフト27jが下方に直進移動する。これに伴って、プッシャ27gが下方に直進移動し、伝達部25cから離間する。回転台回転機構25では、カム25aが回転台回転軸24に沿って下方向に直進移動し、下端カム面25oと、下側カム用ピン25eとによって、カム25aの下方向の移動力が回転台回転軸24の回転力へと変換され、回転台回転軸24がさらに時計回り(または反時計回り)に回転する。
【0241】
このようにして、本実施の形態では、モータ27hと、モータ27hの回転駆動により回転する板カム27iと、板カム27iに従動して上下動する突き上げシャフト27jと、突き上げシャフト27jの先端に取り付けられたプッシャ27gとを備える。
これにより、プッシャ27gの突き上げ速度の調整が可能となり、マイクロチップ200の回転時の衝撃を低減することができる。
【0242】
上記第3の実施の形態において、チップ回転台23は、発明7又は8の第2回転体に対応し、回転台回転機構25及び回転台駆動力伝達機構27は、発明7又は8の第2駆動機構に対応し、モータ27hは、発明7又は8の第2アクチュエータに対応している。
【0243】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図31ないし図33は、本発明に係る遠心力付与装置および検体液分析装置の第4の実施の形態を示す図である。
上記第1の実施の形態では、図12に示すように、光情報測定部30の移動機構としてソレノイド39による駆動機構を採用したのに対し、本実施の形態では、モータおよびクランク機構による駆動機構を採用する点が異なる。なお、以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0244】
上記第1の実施の形態のように、ソレノイド39による駆動機構の場合、光情報測定部30をチップ回転機構部に接近させ測定を行う場合、測定中常にソレノイド39に電流を流しておく必要がある。そのため、ソレノイド39が発熱源となり、装置内温度管理が困難であった。検体液分析装置100では、精度保障のため装置内温度を細かく制御する必要があり、発熱の少ない機構への変更が求められる。この対策として、本実施の形態は、モータ駆動およびクランク機構を採用することにより、光情報測定部30の移動時にのみモータを駆動すればよいので、発熱を抑えることができ、装置内温度管理を精密に行うことを実現する。
【0245】
本実施の形態に係る光情報測定部30の移動機構を説明する。
図31は、光学式測定装置3の正面図である。
図32は、光学式測定装置3の側面図である。
光学式測定装置3は、図31および図32に示すように、モータ39aと、モータ39aの回転駆動により回転するクランク円盤39bと、クランク円盤39bの盤面上に一端が固定されたコネクティングロッド39cと、コネクティングロッド39cの他端に連結し光情報測定部30の移動方向に変位可能な伝達シャフト39dと、伝達シャフト39dの先端に取り付けられた伝達部材41とを有して構成されている。
【0246】
モータ39aは、回転軸39eが水平でかつ光情報測定部30の移動方向に直交するように配置されている。モータ39aとしては、例えば、DCモータまたはステッピングモータを採用することができる。なお、モータ39aに代えて、回転の駆動力を得ることができるアクチュエータを採用することもできる。
コネクティングロッド39cの一端は、クランク円盤39bの盤面上に、クランクピン39fによりその軸回りに回転自在に固定されている。また、コネクティングロッド39cの他端は、伝達シャフト39dの末端に、クランクピン39gによりその軸回りに回転自在に固定されている。
【0247】
伝達シャフト39dは、図示しない支持部材により垂直方向の移動が拘束され光情報測定部30の移動方向にのみ変位可能となっている。伝達シャフト39dには、所定間隔をあけて2つのフランジ39h、39iが形成されている。そして、フランジ39h、39iの間には伝達部材41が外嵌され、伝達部材41とフランジ39iの間にはコイルばね39jが巻き付けられている。
【0248】
光学式測定装置3は、さらに、図示しないが、コネクティングロッド39cの一端がチップ回転機構部に最も接近したときの伝達部材41の位置を検出する第1位置検出センサを有して構成されている。これにより、制御基板300では、第1位置検出センサからのセンサ信号に基づいて光情報測定部30がチップ保持部26に当接したことを判定することができるので、そのタイミングでモータ39aを停止させることにより、光情報測定部30をチップ保持部26に固定した状態で保持することができる。
【0249】
光学式測定装置3は、さらに、図示しないが、コネクティングロッド39cの一端がチップ回転機構部から最も離間したとき(図31、図32の状態)の伝達部材41の位置を検出する第2位置検出センサを有して構成されている。これにより、制御基板300では、第2位置検出センサからのセンサ信号に基づいて光情報測定部30が初期位置に復帰したことを判定することができるので、そのタイミングでモータ39aを停止させることにより、光情報測定部30を初期状態に保持することができる。
【0250】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図33は、光学式測定装置3の動作を示す図である。
初期状態では、図33(a)の状態となり、伝達部材41は、フランジ39hによってチップ回転機構部とは反対の方向に押されるので、光情報測定部30をチップ回転機構部から離間させることができる。これにより、アーム回転機構22により回転アーム20を回転させることができる。
【0251】
回転アーム20が測定回転角度位置に停止すると、制御基板300は、モータ39aに制御信号を出力し、モータ39aを駆動させる。モータ39aが駆動すると、モータ39aの駆動力によりクランク円盤39bが回転し、同図(a)、同図(b)、同図(c)の順に状態が遷移し、クランク円盤39bに従動してコネクティングロッド39cの一端が回転する。これに伴って、伝達シャフト39dがチップ回転機構部の方向に直進移動する。伝達部材41は、伝達シャフト39dの直進運動力を、連結部材38cを介して光情報測定部30に伝達する。これにより、光情報測定部30の結合部を介して伝達された直進運動力によって、スライダ34、35の固着された光情報測定部30が、上方側角柱部材36a、スライドレール32、33のレール部に沿ってチップ回転機構部の方向に直進移動する。光情報測定部30は、支持部材30d、30eがチップ保持部26の角部に当接するまで直進移動する。当接後、チップ回転機構部の方向への移動量は、伝達部材41とフランジ39iの間に設けられたコイルばね39jによって吸収される。そして、支持部材30d、30eによってチップ保持部26の角部を押さえ付けることで、測定処理位置においてチップ保持部26と光情報測定部30との位置決めが行われかつその位置が固定支持される。
【0252】
光情報測定部30が測定処理位置に移動すると、制御基板300は、上記第1の実施の形態と同様に、光学式測定装置3に制御信号を出力してレーザ光照射部30aを駆動し測定を行う。
測定が完了すると、制御基板300は、モータ39aに制御信号を出力し、モータ39aを再度駆動させる。モータ39aが駆動すると、モータ39aの駆動力によりクランク円盤39bが回転し、同図(c)、同図(a)の順に状態が遷移し、クランク円盤39bに従動してコネクティングロッド39cの一端が回転する。これに伴って、伝達シャフト39dがチップ回転機構部とは反対の方向に直進移動し、光情報測定部30がチップ回転機構部から離間し、初期位置へと復帰する。
【0253】
このようにして、本実施の形態では、モータ39aと、モータ39aの回転駆動により回転するクランク円盤39bと、クランク円盤39bの盤面上に一端が固定されたコネクティングロッド39cと、コネクティングロッド39cの他端に連結し光情報測定部30の移動方向に変位可能な伝達シャフト39dと、伝達シャフト39dの先端に取り付けられた伝達部材41とを備える。
【0254】
これにより、光情報測定部30の移動時にのみモータ39aを駆動すればよいので、発熱を抑えることができ、装置内温度管理を精密に行うことができる。
上記第4の実施の形態において、スライドレール32、33、スライダ34、35およびモータ39aは、発明9の移動手段に対応し、モータ39aは、発明9の回転駆動手段に対応している。
【0255】
〔第3および第4の実施の形態の変形例〕
なお、上記第3の実施の形態に対して上記第4の実施の形態を適用することもできる。
また、上記第3の実施の形態における回転台駆動力伝達機構27に対して上記第4の実施の形態のクランク機構を適用することもできる。
また、上記第4の実施の形態における光情報測定部30の移動機構に対して上記第3の実施の形態のカム機構を適用することもできる。
また、上記第3および第4の実施の形態に対して上記第1の実施の形態の変形例を適用することもできる。
【0256】
なお、上記第1の実施の形態においては、アーム回転機構22の回転駆動源として、ステッピングモータ22aを用いているが、これに限らず、ステッピングモータ以外のモータ(例えば、DCモータ、ブラシ・レスモータ、インダクションモータなど)を用いる構成や、モータ以外のロータリーソレノイドなどのモータ以外の他のアクチュエータを用いる構成としても良い。この場合は、回転角度位置を検出するためにエンコーダなどの回転角度位置を検出する装置と組み合わせて使用する。
【0257】
また、上記第1の実施の形態においては、回転台駆動力伝達機構27に対してのみ、ショックアブソーバ27cによって、ソレノイド本体27aの駆動によってソレノイドシャフト27bに発生する衝撃を緩和する構成としたが、これに限らず、レーザヘッドをスライドレールに沿って移動させるソレノイド39についても同様にショックアブソーバによってスライド移動時の衝撃を緩和する構成としても良い。
【0258】
また、上記第1の実施の形態においては、回転アーム20を矩形の板状部材で構成したが、これに限らず、円盤状の部材など他の形状で構成しても良い。
また、上記第1の実施の形態においては、レーザ光を上から下に向かって照射する構成としたが、これに限らず、レーザ光を下から上に向かって照射する構成としても良い。これにより、天井に設置された蛍光灯の光などの外光が、受光部に侵入するのをより適切に防ぐことができる。
【0259】
また、上記第1の実施の形態においては、ステッピングモータ22aとして、HB型のステッピングモータを用いたが、これに限らず、PM型(Permanent Magnet Type)、VR型(Variable Reluctance Type)など他の型のステッピングモータを用いる構成としても良い。PM型(Permanent Magnet Type)のステッピングモータを用いた場合には、永久磁石により、最後の状態を保持する保持力が働くため保持電流を流す必要がなくなる。
【0260】
また、上記第1の実施の形態においては、検体液分析装置100を、透過光の受光情報を外部のコンピュータに出力する構成としたが、この構成に限らず、内部にコンピュータシステムを有し、内部のコンピュータシステムにおいて、透過光の受光情報から血漿中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量、総ヘモグロビン量などを分析する構成としても良い。
【0261】
また、上記第1及び第2の実施の形態においては、回転アーム20、60を矩形形状とし、その両端の対称位置に1つずつマイクロチップ200の姿勢を変更する機構(第2回転機構)を設ける構成としたが、これに限らず、回転アーム20、60を十字形状や円形状など別の形状にし、3つ以上の第2回転機構を、それぞれが重量バランスを平衡にできる対称位置に設ける構成としても良い。
【0262】
また、上記第1の実施の形態においては、カム25a上端面及び下端面に傾斜面を形成し、カム25aの上下動の移動力を回転台回転軸24の回転駆動力に変換する構成を説明したが、これに限らず、回転台回転機構25を、カム25aの上端面にのみ傾斜面を形成し、回転台回転軸24の外周面に上側カム用ピン25dのみを設け、カム25aの上方向の移動時にのみ、その移動力を回転台回転軸24の回転力に変換する構成としても良い。
【0263】
また、上記第1の実施の形態においては、ソレノイドシャフト27bの先端部に緩衝部材27fを設けて、プッシャ27gが伝達部25cに衝突時の衝撃を緩衝部材27fで緩和する構成としたが、緩衝部材を、ソレノイド39の駆動力を伝達するソレノイドシャフト40又は伝達部材41などの他の部材と衝突する部材に設け、光情報測定部30と衝突時に発生する衝撃を緩和する構成としても良い。
【0264】
また、上記第1の実施の形態においては、回転台駆動力伝達機構27において、ソレノイド本体27aでソレノイドシャフト27b及びプッシャ27gを直進運動させるときに発生する衝撃を、支持ブラケット27dで基体1側に固定支持されたでショックアブソーバ27cのピストンロッドに、ソレノイドシャフト27bの直進移動と連動して直進移動する衝撃吸収ブラケット27eを衝突させることで吸収する構成としたが、この構成を、ソレノイド39及びソレノイドシャフト40に対しても適用して、ソレノイドシャフト40を直進移動させるときに発生する衝撃を吸収する構成としても良い。ショックアブソーバに加えて、ソレノイドシャフト40の先端や伝達部材41の先端などのソレノイド39の駆動によって他の部材と衝突する部材の面に緩衝部材を設け、衝突時の衝撃を緩和する構成としても良い。
【0265】
また、上記変形例1においては、偏心機構でずらした後の位置を、アクチュエータの動力によって保持する構成としたが、これに限らず、例えば、ノック部材のノックによってペン先の出し入れをするボールペンにおけるノック状態を保持する機構を応用するなど、アクチュエータの動力を用いずにずらした後の位置を保持する構成としても良い。
また、上記変形例2においては、ピン42をピン穴25uに嵌合することで光情報測定部30に対する第1回転体の位置決めを行う構成としたが、これに限らず、ピン以外の嵌合突部を該嵌合突部を嵌合する嵌合受部に嵌合する構成としたり、ピン42などの嵌合突部を例えば回転台回転機構25に設け、ピン穴25uなどの嵌合受部を光情報測定部30に設ける構成としても良い。
【0266】
また、上記変形例2においては、ピン穴25uを回転台回転機構25に設ける構成としたが、これに限らず、例えば、ピン42を設ける位置を回転アーム20などの他の構成部と対向する位置に変更して、他の構成部にピン42を設ける構成としても良い。
また、上記変形例3においては、シリンダ内に液体を封入し、該液体を貫通穴に通すときの抵抗力によって、制動力を得る構成としたが、これに限らず、シリコンラバーなどの液体以外の衝撃吸収体が封入された構成としても良い。
【0267】
また、上記変形例3においては、回転台駆動力伝達機構27に対して、上記構成のショックアブソーバ付ソレノイド28を適用しているが、これに限らず、光情報測定部30を接近、離間移動させる駆動機構を構成する、ソレノイド39、ソレノイドシャフト40及び伝達部材41から構成される機構部を、上記ショックアブソーバ付ソレノイド28と同様に、ソレノイドシャフト40とショックアブソーバのピストンロッドとを一体構成したショックアブソーバ付ソレノイドを含む構成としても良い。これにより、ソレノイド39、ソレノイドシャフト40とは別体でショックアブソーバを設けるよりも、省スペースで、ショックアブソーバの機能を有するソレノイドを構成することができる。
【0268】
更に、ソレノイドシャフト40の先端又は伝達部材41の先端などの光情報測定部30に力を伝達する際に他の部材と衝突する箇所に緩衝部材を設けることも可能である。これにより、衝突時の衝撃を緩和することができるので、光情報測定部30を伝ってチップ保持部26及びマイクロチップ200に伝わる衝撃を和らげることができる。
また、上記第2の実施の形態においては、回転アーム60及びアーム回転軸61の内部に、電源ライン67及び信号ラインを通す通路を形成した構成としたが、これに限らず、回転アーム60及びアーム回転軸61の一方又は両方を中空構造としても良い。これにより、内部に通路を設けるよりも簡易な構成で回転アーム60及びアーム回転軸61を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】(a)及び(b)は、本発明に係る検体液分析装置100の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る検体液分析装置100を上面から見た概略構成図である。
【図3】遠心力付与装置2の概略構成を示す正面図である。
【図4】アーム回転機構22の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は、マイクロチップ200の形状例を示す図であり、(b)及び(c)はチップ保持部26の構造例を示す図であり、(d)は、マイクロチップ200の装着例を示す図であり、(e)及び(f)は、マイクロチップ200の装着されたチップ保持部26の側面図及び平面図である。
【図6】(a)〜(c)は、遠心力付与装置2の遠心力付与時の回転バランスを均衡させる構成を示す図である。
【図7】回転台回転機構25の詳細な構成を示す図である。
【図8】(a)は、カム25aの正面図であり、(b)は、カム25aの底面図である。
【図9】回転台駆動力伝達機構27の詳細な構成を示す図である。
【図10】(a)〜(c)は、プッシャ27gで突き上げ時の回転台回転機構25の動作を示す図である。
【図11】(a)〜(c)は、プッシャ27gで突き上げ後の回転台回転機構25の動作を示す図である。
【図12】(a)は、光学式測定装置3の平面図であり、(b)、(c)は、光学式測定装置3の側面図である。
【図13】(a)及び(b)は、光情報測定部30のスライド動作の一例を示す図である。
【図14】(a)及び(b)は、測定処理位置に移動時の光情報測定部30の平面図であり、(c)は、レーザ光受光部30fの平面図であり、(d)及び(e)は、測定処理位置に移動時の光情報測定部30の側面図である。
【図15】(a)〜(c)は、黒色の絶縁部材を用いて形成された光情報測定部30の一例を示す図である。
【図16】温度調整装置4の内部構成を示す図である。
【図17】検体液分析装置100の内部における空気の流れの一例を示す図である。
【図18】基台1の上面部における空気の流れの一例を示す図である。
【図19】(a)は、遠心力付与時の動作例を示す図であり、(b)及び(c)は、マイクロチップ200の姿勢変更時の動作例を示す図である。
【図20】(a)〜(c)は、各工程におけるマイクロチップ200の姿勢を示す図である。
【図21】(a)〜(c)は、光学式測定装置3の分析時の動作を示す図である。
【図22】(a)〜(e)は、遠心力の付与時における重心位置の変更動作の一例を示す図である。
【図23】(a)及び(b)は、本変形例における、測定処理時の光情報測定部30とマイクロチップ200との位置をピン及びピン穴によって固定支持する場合の構成例を示す図である。
【図24】ショックアブソーバ付ソレノイド28の構成を示す図である。
【図25】本変形例の回転台回転機構25の構成を示す図である。
【図26】(a)〜(d)は、チップ保持部及びマイクロチップの構成例を示す図である。
【図27】本実施の形態の遠心力付与装置6の構成を示す図である。
【図28】遠心力付与装置2の正面図である。
【図29】遠心力付与装置2の側面図である。
【図30】回転台駆動力伝達機構27の動作を示す図である。
【図31】光学式測定装置3の正面図である。
【図32】光学式測定装置3の側面図である。
【図33】光学式測定装置3の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0270】
100 検体液分析装置
200,200A〜D マイクロチップ
200a 測定部
1 基台
2,6 遠心力付与装置
3 光学式測定装置
4 温度調整装置
5 上面カバー
13,14 センサ
10,11,16,17 通風口
15 開閉シャッタ
20,60 回転アーム
21,61 アーム回転軸
22 アーム回転機構
23,65 チップ回転台
24,64 回転台回転軸
25 回転台回転機構
26 チップ保持部
27 回転台駆動力伝達機構
28 ショックアブソーバ付ソレノイド
30 光情報測定部
32 第1スライドレール
33 第2スライドレール
34 第1スライダ
35 第2スライダ
36 スライド補助部材
37 心棒
38 戻り用ばね部
39 ソレノイド
40 ソレノイドシャフト
41 伝達部材
42 ピン
43 支持部材
22a ステッピングモータ
22b 駆動回路
25a カム
25b ガイド部材
25c 伝達部
25d 上側カム用ピン
25e 下側カム用ピン
25f コイルばね
25g 低摺動部材
25h,25i 磁石
25j 上端カム面
25m,25p 傾斜面
25n,25r 壁
25q ピン嵌合溝
25t 係合溝
25u ピン穴
25o 下端カム面
26a 枠部
26b チップ押さえ部
26c,26d 被検出部
27a ソレノイド本体
27b ソレノイドシャフト
27c ショックアブソーバ
27d 支持ブラケット
27e 衝撃吸収ブラケット
27f 緩衝部材
27g プッシャ
30a レーザ光照射部
30b 第1レーザヘッド部
30c 第2レーザヘッド部
30d 第1支持部材
30e 第2支持部材
30f レーザ光受光部
30g 第1受光ヘッド部
30h 第2受光ヘッド部
38a,38b コイルばね
38c 伝達部材
50 調温装置
51,55 温度測定用プローブ
52 ファン
53 発熱体
54 筐体
62 モータ
63 動力伝達機構
66 回転台駆動機構
67 電源ライン
68 スリップリング
27h,39a モータ、
27i 板カム
27j 突き上げシャフト
27k リニアブッシュ
27l,39e 回転軸
27m,39j コイルばね
27n ストッパ
39b クランク円盤
39c コネクティングロッド
39d 伝達シャフト
39f,39g クランクピン
39h,39i フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向への遠心力の付与に応じて、少なくとも、検体液を遠心分離し該遠心分離後の検体液の分離成分をチップの所定位置に案内可能な検体液分析用のマイクロチップを、前記所定方向に対応する姿勢を保持した状態で回転して、前記マイクロチップに対して前記所定方向に遠心力を付与する遠心力付与装置であって、
基台と、該基台に対して垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第1回転体と、回転駆動力を発生する第1アクチュエータを含み、該第1アクチュエータの回転駆動力を前記第1回転体に伝達して該第1回転体を回転駆動する第1駆動機構と、前記第1回転体に、該第1回転体の回転中心位置から所定距離を離した位置を回転中心位置として垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第2回転体と、前記第2回転体に対して該第2回転体と共に回転可能に設けられた、前記マイクロチップを保持するチップ保持部と、第2アクチュエータを含み、該第2アクチュエータの動力を前記第2回転体にその回転駆動力として伝達して前記第2回転体を回転駆動する第2駆動機構と、を備えることを特徴とする遠心力付与装置。
【請求項2】
前記第2駆動機構を、前記第2アクチュエータを含み該該第2アクチュエータの駆動力を第2伝達機構に伝達する第1伝達機構と、該第1伝達機構から伝達された駆動力を前記第2回転体の回転駆動力として該第2回転体に伝達する第2伝達機構とから構成し、
前記第1伝達機構を他の構成部とは独立に前記基台に設け、前記第2伝達機構を前記第1回転体に設けたことを特徴とする請求項1に記載の遠心力付与装置。
【請求項3】
前記第1伝達機構を、第1伝達部材を有し、前記第2アクチュエータの動力によって第1伝達部材を移動させて該第1伝達部材を前記第2伝達機構の第2伝達部材と係合させることで前記第2アクチュエータの動力を前記第2伝達機構に伝達する構成とし、
前記第2伝達機構を、前記第1伝達部材と係合する前記第2伝達部材を有し、該第2伝達部材を介して伝達された前記第2アクチュエータの動力を前記第2回転体の回転駆動力として前記第2回転体に伝達する構成としたことを特徴とする請求項2に記載の遠心力付与装置。
【請求項4】
遠心分離後の検体液の分離成分に対して光学的な測定処理を行う領域を含んでなる測定部を有し、所定方向への遠心力の付与に応じて、少なくとも、前記検体液を遠心分離し、遠心分離後の検体液の分離成分と試薬とを混合し、試薬を混合後の分離成分を前記測定部に案内可能な検体液分析用のマイクロチップを、前記所定方向に対応する姿勢を保持した状態で回転して、前記マイクロチップに対して前記所定方向に遠心力を付与し、該遠心力の付与によって前記測定部に案内された前記試薬を混合後の分離成分に対して前記測定処理を行う検体液分析装置であって、
基台と、該基台に対して垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第1回転体と、回転駆動力を発生する第1アクチュエータを含み、該第1アクチュエータの回転駆動力を前記第1回転体に伝達して該第1回転体を回転駆動する第1駆動機構と、前記第1回転体に、該第1回転体の回転中心位置から所定距離を離した位置を回転中心位置として垂直方向の軸周りに回転自在に設けられた第2回転体と、前記第2回転体に対して該第2回転体と共に回転可能に設けられた、前記マイクロチップを保持するチップ保持部と、第2アクチュエータを含み、該第2アクチュエータの動力を前記第2回転体にその回転駆動力として伝達して前記第2回転体を回転駆動する第2駆動機構と、前記第1回転体が所定の回転角度位置で停止しているときに、前記チップ保持部に保持されたマイクロチップの前記測定部に対して光を照射可能な光照射部と、該測定部を透過した光を受光する受光部と、該受光部で受光した光量の情報を出力する出力部と、を備えることを特徴とする検体液分析装置。
【請求項5】
前記第2駆動機構を、前記第2アクチュエータを含み該該第2アクチュエータの駆動力を第2伝達機構に伝達する第1伝達機構と、該第1伝達機構から伝達された駆動力を前記第2回転体の回転駆動力として該第2回転体に伝達する第2伝達機構とから構成し、
前記第1伝達機構を他の構成部とは独立に前記基台に設け、前記第2伝達機構を前記第1回転体に設けたことを特徴とする請求項4に記載の検体液分析装置。
【請求項6】
前記第1伝達機構を、第1伝達部材を有し、前記第2アクチュエータの動力によって第1伝達部材を移動させて該第1伝達部材を前記第2伝達機構の第2伝達部材と係合させることで前記第2アクチュエータの動力を前記第2伝達機構に伝達する構成とし、
前記第2伝達機構を、前記第1伝達部材と係合する前記第2伝達部材を有し、該第2伝達部材を介して伝達された前記第2アクチュエータの動力を前記第2回転体の回転駆動力として前記第2回転体に伝達する構成としたことを特徴とする請求項5に記載の検体液分析装置。
【請求項7】
前記第2駆動機構は、回転駆動力を発生する前記第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの回転駆動により回転するカムと、前記カムに従動して直線方向に変位可能なシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられたプッシャとを有し、
前記第2駆動機構は、前記プッシャの直進移動を回転運動に変換することにより前記第2回転体を回転させることを特徴とする請求項1に記載の遠心力付与装置。
【請求項8】
前記第2駆動機構は、回転駆動力を発生する前記第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの回転駆動により回転するカムと、前記カムに従動して直線方向に変位可能なシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられたプッシャとを有し、
前記第2駆動機構は、前記プッシャの直進移動を回転運動に変換することにより前記第2回転体を回転させることを特徴とする請求項4に記載の検体液分析装置。
【請求項9】
前記チップ保持部の回転軌跡外の位置から前記測定処理を行うための前記第1回転体の回転角度位置である測定回転角度位置まで少なくとも前記光照射部及び前記受光部を含んで構成される光情報測定部を移動させる移動手段を備え、
前記移動手段は、回転駆動手段と、前記回転駆動手段の回転駆動により回転する円盤と、
前記円盤の盤面上に一端が固定されたコネクティングロッドと、前記コネクティングロッドの他端に連結し前記光情報測定部の移動方向に変位可能なシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられた伝達部材とを有し、
前記伝達部材の直進移動により前記光情報測定部を移動させることを特徴とする請求項4乃至6並びに請求項8のいずれか1項に記載の検体液分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2009−75067(P2009−75067A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156525(P2008−156525)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】