説明

遠心圧縮機

【課題】サージングの原因になるブレード13の前縁付近における空気の流れの剥離を十分に抑制して、遠心圧縮機1の作動域を低流量側に拡大すること。
【解決手段】ハウジング3の内壁5におけるインペラ7の入口側に、シュラウド周辺におけるガスの流れにインペラ7の回転方向と逆方向の旋回を与える複数枚の入口ガイドベーン27が周方向に間隔を置いて設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等のガスを遠心力を利用して圧縮する遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用過給機、船舶用過給機、ガスタービン等に用いられる遠心圧縮機について種々の開発がなされており、一般的な遠心圧縮機の構成等について簡単に説明すると、次のようになる(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
即ち、一般的な遠心圧縮機は、ハウジングを具備しており、このハウジング内には、インペラが回転可能に設けられている。また、インペラは、インペラの軸心周りに回転可能なホイール、及びこのホイールの外周面に間隔を置いて設けられた複数枚のブレードを備えている。ここで、各ブレードの外縁は、ハウジングの内壁に沿うように延びている。
【0004】
ハウジングの内壁の上流側周縁には、空気(ガスの一例)をインペラ側へ吸入する吸入口が形成されている。また、ハウジングの内壁の下流側周縁には、圧縮した空気を排気する排気流路が形成されている。
【0005】
従って、遠心圧縮機を運転する場合には、例えば、内燃機関(図示省略)からの排気ガスのエネルギを利用してロータ軸(図示省略)の回転させることにより、複数枚のブレードをホイールと一体的に回転させ、換言すれば、インペラを回転させる。これにより、吸入口からインペラ側に吸入した空気を遠心力を利用して圧縮することができ、圧縮した空気を排気流路から排気することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−240680号公報
【特許文献2】特開2006−152972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、遠心圧縮機の運転中に、インペラの入口側の空気流量が少なくなって、インペラの入口側のインシデンス(相対流れ角と羽角度の差)が増大すると、ブレードの前縁付近に空気の流れの剥離(剥離域)が発生して、遠心圧縮機はサージングに至ることになる。一方、近年、遠心圧縮機のサージングを十分に抑制して、遠心圧縮機の作動域を拡大させるという要求が高まってきている。
【0008】
そこで、本発明は、前述の課題を解決することができる、新規な構成の遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、前述の課題を解決するために、種々の試行錯誤を繰り返した結果、インペラの入口側のシュラウド周辺におけるガスの流れにインペラの回転方向と逆方向の旋回を与えた場合には、インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えない場合に比べて、図5及び図6に示すように、インペラの入口側の相対マッハ数が増加し、インペラの入口側のシュラウド周辺におけるガスの流れが遷音速流れから超音速流れに移行して、ブレードの前縁付近にブレード面に対して略垂直な離脱衝撃波が生成され、ガスの流れの剥離(剥離域)の発生を抑制することができるという、第1の新規な知見を得ることができ、第1の発明を完成するに至った。更に、前記条件に加えて、ハウジングの内壁に周方向溝を複数枚のブレードの前縁の下流側近傍を囲むように形成した場合には、周方向溝を介してブレードの圧力面から負圧面にガスの流れが発生し、図7に示すように、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位(移行)させて、ブレード間における低エネルギ領域(インペラ内における低エネルギ領域)の発達を抑制できるという、第2の新規な知見を得ることができ、第2の発明を完成するに至った。なお、前記条件に加えて、仮に前記逆方向の旋回を与えなくてもインペラの入口側のシュラウド周辺におけるガスの相対流れが超音速流れになる程度に、インペラの入口側の相対マッハ数が非常に高い場合には、ハウジングの内壁に周方向溝を複数枚のブレードの前縁の下流側近傍を囲むように形成した場合と同様の相対マッハ数分布(図示省略)を得ることができ、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位させて、ブレード間における低エネルギ領域の発達を抑制できるという、別の新規な知見も得ることができた。
【0010】
ここで、図5は、インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えない場合における、径方向外側から見たインペラ内のガスの相対マッハ数分布を示す図、図6は、インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えた場合における、径方向外側から見たインペラ内のガスの相対マッハ数分布を示す図、図7は、インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えかつ周方向溝を形成した場合における、径方向外側から見たインペラ内のガスの相対マッハ数分布を示す図である。また、インペラ内のガスの相対マッハ数分布は、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析により求められる。
【0011】
第1の発明の特徴は、ガスを遠心力を利用して圧縮する遠心圧縮機において、ハウジングと、前記ハウジングの内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なホイール、及び前記ホイールの外周面に周方向に間隔を置いて設けられかつ外縁が前記ハウジングの内壁に沿うように延びた複数枚のブレードを備えたインペラと、を具備し、前記ハウジングの内壁の上流側周縁部(前記インペラの入口側)にガスを前記インペラ側へ吸入する吸入口が形成され、前記ハウジングの内壁の下流側周縁部(前記インペラの出口側)に圧縮したガスを排気する環状の排気流路が形成され、前記ハウジングの内壁における前記インペラの入口側(前記インペラの上流側)に、シュラウド周辺(前記ハウジングの内壁周辺)におけるガスの流れに前記インペラの回転方向と逆方向の旋回を与える複数枚の入口ガイドベーンが周方向に間隔を置いて設けられていることを要旨とする。
【0012】
ここで、特許請求の範囲及び明細書において、「上流」とは、主流のガスの流れ方向から見て上流のことであって、「下流」とは、主流のガスの流れ方向から見て下流のことである。
【0013】
第1の発明の特徴によると、前記遠心圧縮機を運転する場合には、複数枚の前記ブレードを前記ホイールと一体的に回転させ、換言すれば、前記インペラを回転させる。これにより、前記吸入口から前記インペラ側に吸入したガスを遠心力を利用して圧縮することができ、圧縮したガスを前記排気流路から排気することができる。
【0014】
また、前記ハウジングの内壁における前記インペラの入口側に複数枚の前記入口ガイドベーンが周方向に間隔を置いて設けられているため、前述の第1の新規な知見を考慮すると、前記遠心圧縮機の運転中に、前記インペラの入口側のガス流量が少なくなっても、前記インペラの入口側のシュラウド周辺におけるガスの相対流れを超音速流れに保って、図8に示すように、前記ブレードの前縁付近に生成された離脱衝撃波の作用によってガスが前記ブレードのブレード面に沿うように促すことができる。
【0015】
ここで、図8は、離脱衝撃波を通過したガスの相対流れを示す径方向外側から見た展開図である。
【0016】
また、仮に前記逆方向の旋回を与えなくてもインペラの入口側のシュラウド周辺におけるガスの相対流れが超音速流れになる程度に、前記インペラの入口側の相対マッハ数が非常に高い場合には、前述の別の新規な知見を適用すると、図8において二点鎖線で示すように、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位させて、前記ブレード間における低エネルギ領域(前記インペラ内における低エネルギ領域)の発達を抑制できる。
【0017】
第2の発明の特徴は、第1の特徴に加えて、前記ハウジングの内壁に周方向溝(周溝)が複数枚の前記ブレードの前縁の下流側近傍を囲むように形成されていることを要旨とする。
【0018】
ここで、「複数枚の前記ブレード」とは、複数枚の前記ブレードが軸長の異なる複数種の前記ブレードからなる場合には、最も軸長の長い複数枚のブレードのことをいう。
【0019】
第2の発明の特徴によると、第1の発明の特徴による作用の他に、前記ハウジングの内壁に前記周方向溝が複数枚の前記ブレードの前縁の下流側近傍を囲むように形成されているため、前述の第2の新規な知見を適用すると、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位させて、前記ブレード間における低エネルギ領域の発達を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
第1及び第2の発明によれば、前記遠心圧縮機の運転中に、前記インペラの入口側のガス流量が少なくなっても、前記インペラの入口側のシュラウド周辺におけるガスの相対流れを超音速流れに保って、離脱衝撃波の作用によってガスが前記ブレードのブレード面に沿うように促すことができるため、前記遠心圧縮機のサージングの原因になる前記ブレードの前縁付近におけるガスの流れの剥離を十分に抑制して、前記遠心圧縮機の作動域を低流量側に拡大することができる。
【0021】
また、第2の発明によれば、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位させて、前記ブレード間における低エネルギ領域の発達を抑制できるため、前記ブレード間におけるエネルギ損失を低減して、前記遠心圧縮機の効率(圧縮機効率)を高めることができる。なお、第1の発明でも、前記インペラの入口側の相対マッハ数が非常に高い場合には、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る遠心圧縮機に係る側断面図である。
【図2】図2(a)は、図1における矢視部IIAの拡大図、図2(b)は、図2(a)における矢視部IIBの展開図である。
【図3】第2の実施形態に係る遠心圧縮機の側断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る遠心圧縮機の側断面図である。
【図5】インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えない場合における、径方向外側から見たインペラ内のガスの相対マッハ数分布を示す図である。
【図6】インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えた場合における、径方向外側から見たインペラ内のガスの相対マッハ数分布を示す図である。
【図7】インペラの回転方向と逆方向の旋回を与えかつ周方向溝を形成した場合における、径方向外側から見たインペラ内のガスの相対マッハ数分布を示す図である。
【図8】離脱衝撃波を通過したガスの相対流れを示す径方向外側から見た展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1及び図2(a)(b)を参照して説明する。なお、図面中、「F」は、前方向を指し、「R」は、後方向を指してある。
【0024】
図1に示すように、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1は、過給機に用いられ、遠心力を利用して空気(ガスの一例)を圧縮するものである。そして、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1の具体的な構成は、以下のようになる。
【0025】
遠心圧縮機1は、ハウジング3を備えており、このハウジング3は、内側に、内壁5を有している。また、ハウジング3は、別のハウジング(図示省略)に一体的に取付られている。
【0026】
ハウジング3の内壁5内には、インペラ7が回転可能に設けられている。具体的には、ハウジング3の内壁5内には、ホイール9が設けられており、このホイール9の外周面は、インペラ7の軸方向から径方向外側へ向かって徐々に延びている。また、ホイール9は、別のハウジングに回転可能に設けられたロータ軸(タービン軸)11の一端部(前端部)に一体的に連結されてあって、インペラ7の軸心周りに回転可能である。更に、ホイール9の外周面には、複数枚(1枚のみ図示)の長ブレード(フルブレード)13及び複数枚(1枚のみ図示)の短ブレード(スプリッタブレード)15が周方向に間隔を置いて交互に設けられている。ここで、長ブレード13の前縁は、短ブレード15の前縁よりも上流側(前側)に位置してあって、各長ブレード13の外縁及び各短ブレード15の外縁は、ハウジング3の内壁5に沿うように延びている。なお、軸長の異なる2種類のブレード13,15を用いる代わりに、軸長の同じブレードを用いても構わない。
【0027】
ハウジング3の内壁5の上流側周縁(インペラ7の入口側)には、空気をインペラ7側へ吸入(給気)する吸入口(給気口)17が形成されており、この吸入口17は、エアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ハウジング3の内壁5の下流側周縁(インペラ7の出口側)には、圧縮した空気を減速させて排気する環状のディフューザ流路19(排気流路の1つ)が形成されており、ハウジング3の内部におけるディフューザ流路19の周縁側には、圧縮した空気を排気する渦巻き状のスクロール流路21(排気流路の1つ)が形成されている。そして、ハウジング3の適宜位置には、圧縮した空気を吐出する吐出口(図示省略)が形成されており、この吐出口は、スクロール流路21及びディフューザ流路19に連通してあって、内燃機関の吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0028】
図1及び図2(a)(b)に示すように、ハウジング3の内壁5におけるインペラ7の入口側には、絞り部23が形成されており、この絞り部23は、下流方向へ向かって内径を徐々に縮径してある。そして、ハウジング3の内壁5における絞り部23の上流側(インペラ7の入口側)には、円弧状の複数(1つのみ図示)のベーンプレート25が周方向に沿って埋設されており、各ベーンプレート25には、インペラ7の入口側のシュラウド周辺(ハウジング3の内壁5周辺)における空気の流れにインペラ7の回転方向と逆方向の旋回を与える複数枚の入口ガイドベーン27が設けられている。換言すれば、ハウジング3の内壁5における絞り部23の上流側には、複数枚の入口ガイドベーン27が複数のベーンプレートを介して周方向に間隔を置いて設けられている。
【0029】
ここで、絞り部23の縮径量をL、入口ガイドベーン27の高さをHとした場合に、H≦Lの関係が成立するようになっている。これは、入口ガイドベーン27の後流を絞り、インペラ7に流入する空気の流れを整流するためである。なお、絞り部23の縮径量Lとは、絞り部23の上流端23uの内半径から絞り部23の下流端23dの内半径を引いた値である。
【0030】
続いて、第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
遠心圧縮機1を運転する場合には、内燃機関の排気マニホールド(図示省略)からの排気ガスのエネルギを利用してロータ軸11を回転させることにより、複数枚のブレード13,15をホイール9と一体的に回転させ、換言すれば、インペラ7を回転させる。これにより、吸入口17からインペラ7側に吸入した空気を遠心力を利用して圧縮することができ、圧縮した空気をディフューザ流路19及びスクロール流路21から排気して、吐出口を経由して内燃機関の吸気マニホールドに送ることができる。
【0032】
また、ハウジング3の内壁5における絞り部23の上流側に複数枚の入口ガイドベーン27が周方向に間隔を置いて設けられているため、前述の第1の新規な知見([課題を解決するための手段]参照)を考慮すると、遠心圧縮機1の運転中に、インペラ7の入口側の空気流量が少なくなっても、インペラ7の入口側のシュラウド周辺における空気の相対流れを超音速流れに保って、長ブレード13の前縁付近に生成された離脱衝撃波の作用によって空気が長ブレード13の負圧面に沿うように促すことができる。
【0033】
更に、仮に前記逆方向の旋回を与えなくてもインペラ7の入口側のシュラウド周辺における空気の相対流れが超音速流れになる程度に、インペラ7の入口側の相対マッハ数が非常に高い場合には、前述の別の新規な知見([課題を解決するための手段]参照)を適用すると、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位させて、長ブレード13間における低エネルギ領域(インペラ7内における低エネルギ領域)の発達を抑制できる。
【0034】
従って、第1の実施形態によれば、遠心圧縮機1のサージングの原因になる長ブレード13の前縁付近における空気の流れの剥離を十分に抑制して、遠心圧縮機1の作動域を低流量側に拡大することができる。
【0035】
また、インペラ7の入口側の相対マッハ数が非常に高い場合には、長ブレード13間における低エネルギ領域(インペラ7内における低エネルギ領域)の発達を抑制できるため、長ブレード13間におけるエネルギ損失を低減して、遠心圧縮機1の効率(圧縮機効率)を高めることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図3を参照して説明する。
【0037】
図3に示すように、第2の実施形態に係る遠心圧縮機29は、遠心力を利用して空気を圧縮するものであって、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1と略同じ構成を有しており、第2の実施形態に係る遠心圧縮機29の具体的な構成のうち、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1の具体的な構成と異なる部分について説明する。なお、第2の実施形態に係る遠心圧縮機29における複数の構成要素のうち、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付して、説明を省略する。
【0038】
ハウジング3の内壁5には、周方向溝(周溝)31が複数枚の長ブレード13の前縁の下流側近傍を囲むように形成されている。ここで、長ブレード13の前縁の下流側近傍とは、長ブレード13の前縁と後縁の中間であって、長ブレード13の前縁側に寄った部位のことをいう。
【0039】
第2の実施形態によると、第1の実施形態による作用と同様の作用を奏する他に、ハウジング3の内壁5に周方向溝31が複数枚の長ブレード13の前縁の下流側近傍を囲むように形成されているため、前述の第2の新規な知見([課題を解決するための手段]参照)を適用すると、離脱衝撃波の生成箇所を下流側に変位させて、長ブレード13間における低エネルギ領域の発達を抑制できる。
【0040】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態による効果を奏する他に、インペラ7内における低エネルギ領域の発達を抑制できるため、長ブレード13間におけるエネルギ損失を低減して、遠心圧縮機1の効率を高めることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図4を参照して説明する。
【0042】
図4に示すように、第3の実施形態に係る遠心圧縮機33は、遠心力を利用して空気を圧縮するものであって、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1と略同じ構成を有しており、第3の実施形態に係る遠心圧縮機33の具体的な構成のうち、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1の具体的な構成と異なる部分について説明する。なお、第3の実施形態に係る遠心圧縮機33における複数の構成要素のうち、第1の実施形態に係る遠心圧縮機1における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付して、説明を省略する。
【0043】
ハウジング3の内壁5における長ブレード13の前縁の下流側には、逆流した空気を抽気可能な1つ又は複数(1つのみ図示)の抽気穴35が形成されており、ハウジング3の内壁5における入口ガイドベーン27の前縁の上流側には、空気をインペラ7の入口側へ流出可能な1つ又は複数(1つのみ図示)の流出穴37が形成されている。そして、ハウジング3の内部には、抽気穴35側から流出穴37側へ空気の流れを許容する環状のキャビティ(トリートメントキャビティ)39が形成されている。なお、1つ又は複数の抽気穴35の代わりに、環状の抽出溝(抽出穴の一例)が形成されたり、1つ又は複数の流出穴37の代わりに、環状の流出溝(流出穴の一例)が形成されたりしても構わない。
【0044】
第3の実施形態によると、第1の実施形態による作用と同様の作用を奏する他に、遠心圧縮機33の運転中に、インペラ7の入口側の空気流量の少なくなって、インペラ7内において空気(インペラ7側へ吸入した空気の一部)の逆流が生じ、逆流した空気が抽気穴35から抽気され、キャビティ39内に流入する。そして、キャビティ39内に流入した空気は、抽気穴35側から流出穴37側へ流れて、流出穴37からインペラ7の入口側へ流出して、再びインペラ7側に吸入される。これにより、インペラ7側へ吸入した空気の一部を抽気穴35と流出穴37の間で循環させて、遠心圧縮機33の作動を安定させることができる。
【0045】
従って、第3の実施形態によれば、第1の実施形態による効果をより一層高めることができる。
【0046】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0047】
1 遠心圧縮機
3 ハウジング
5 内壁
7 インペラ
9 ホイール
11 ロータ軸
13 長ブレード
15 短ブレード
17 吸入口
19 ディフューザ流路(排気流路)
21 スクロール流路(排気流路)
23 絞り部
23u 上流端
23e 下流端
25 ベーンプレート
27 入口ガイドベーン
29 遠心圧縮機
31 周方向溝
33 遠心圧縮機
35 抽気穴
37 流出穴
39 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを遠心力を利用して圧縮する遠心圧縮機において、
ハウジングと、
前記ハウジングの内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なホイール、及び前記ホイールの外周面に周方向に間隔を置いて設けられかつ外縁が前記ハウジングの内壁に沿うように延びた複数枚のブレードを備えたインペラと、を具備し、
前記ハウジングの内壁の上流側周縁部にガスを前記インペラ側へ吸入する吸入口が形成され、前記ハウジングの内壁の下流側周縁部に圧縮したガスを排気する排気流路が形成され、
前記ハウジングの内壁における前記インペラの入口側に、シュラウド周辺におけるガス流れに前記インペラの回転方向と逆方向の旋回を与える複数枚の入口ガイドベーンが周方向に間隔を置いて設けられていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記ハウジングの内壁に周方向溝が複数枚の前記ブレードの前縁の下流側近傍を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジングの内壁における前記ブレードの前縁の下流側に逆流したガスを抽気可能な抽気穴が形成され、前記ハウジングの内壁における前記入口ガイドベーンの前縁の上流側にガスを前記インペラの入口側へ流出可能な流出穴が形成され、前記ハウジングの内部に前記抽気穴側から前記流出穴側へガスの流れを許容する環状のキャビティが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記ハウジングの内壁における前記インペラの入口側に下流方向へ向かって内径を徐々に縮径した絞り部が形成されており、複数枚の前記入口ガイドベーンが前記ハウジングの内壁における前記絞り部の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記絞り部の縮径量をL、前記入口ガイドベーンの高さをHとした場合に、H≦Lの関係が成立するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の遠心圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−270641(P2010−270641A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121942(P2009−121942)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】