説明

遠心型ポンプのキャビテーション観察装置

【課題】従来遠心型羽根車の圧力面に発生するキャビテーションの観察は困難であり、さらに構造上の問題からも制約が多かった。
【解決手段】羽根車内部の圧力面をポンプ外部から観察するために、透明な樹脂もしくはガラスにより作製された観察窓を羽根車及び、ポンプケーシングに取り付け、トルク伝達の不足分を補うための補助トルク伝達部を設ける。これらにより、羽根車強度を保持したまま出来る限りキャビテーション可視化領域を拡大することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ運転中に羽根車翼面上の圧力面に発生するキャビテーションを、各翼個別に観察することが可能な装置及び、観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャビテーション現象は古くから知られており、ポンプの羽根車や船のスクリューがキャビテーションにより壊食するなどの現象がよく知られている。キャビテーションは液体媒質中の溶在気体が周囲の圧力低下によって気体となって現れる現象であり、その気泡は圧力が低い場合には膨張し、圧力が高くなると収縮したり圧壊したりする。キャビテーション気泡の圧壊時には瞬間的に体積がゼロとなるため、極めて短時間ではあるが気泡の中心に高温・高圧の極限環境場が生成される。この現象がポンプの羽根車を壊食引き起こすことが知られている。羽根車の壊食はポンプの寿命、性能低下を引き起こし、羽根車に出来る限りキャビテーションを発生させないようにすることは非常に重要な課題である。
【0003】
従来、遠心型ポンプ運転中の圧力面上に発生するキャビテーションを目視観察、記録するための手段はなく、ポンプ運転終了後の羽根車の壊食痕によりキャビテーションの発生位置及び、発生量を推測していた。すなわち、ポンプ運転中にリアルタイムに羽根車翼面上の圧力面に発生するキャビテーションを各翼個別に観察、記録することは不可能であった。
【0004】
本発明は上記問題を解決するために提案するものであり、ポンプ運転中に羽根車翼面上の圧力面に発生するキャビテーションを観察、記録することが可能な遠心型ポンプのキャビテーション観察装置及び、観察方法を提供することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】特開2003−57164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、遠心型ポンプの羽根車においては、吸込側から目視できる負圧面側のキャビテーションの観察しか実施できていなかった。従って羽根車の前面及び背面シュラウドの間に設置されている翼の圧力面に発生するキャビテーションを観察するためには、羽根車自体を透明な樹脂にて製作する必要があった。その透明な樹脂にて製作された羽根車の場合、キャビテーションが発生するまで羽根車を高速回転させる必要があり羽根車に働く応力が高くなり、強度の面からもキャビテーション観察に用いるのは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は透明な樹脂もしくはガラスを取り付けた遠心型の羽根車の背面板及び、羽根車の背面に位置するポンプケーシングに取り付けた透明な樹脂もしくはガラスを通して、ポンプ運転中に遠心型羽根車内部の圧力面に発生するキャビテーションを各翼個別に観察・記録することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明により遠心型ポンプ羽根車の圧力面に発生するキャビテーションの目視観察を実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は遠心型ポンプの断面図を示している。図1に示すように原動機に取り付けられたシャフト3を介して回転される羽根車1により搬送流体にエネルギーを与える。流体に与えられたエネルギーはディフューザー2及び、吐出しケーシング4により圧力回復される構成となっている。羽根車内部の圧力面をポンプ外部から観察するための透明な樹脂もしくはガラスにより作製された観察窓5は羽根車1の背面側に、また透明な樹脂もしくはガラスにより作製された観察窓6はポンプケーシング4に取り付けられる。図2にポンプ羽根車の拡大図を示す。羽根車は搬送流体の入口側に位置する前面シュラウド8及び、背面側に位置する背面シュラウド9により構成される。キャビテーション観察用の透明な樹脂もしくはガラスによって作製された観察窓5は、背面シュラウド9にはめ込まれ直接ねじ止めするか、もしくはカバーにより取り付けられている。嵌合部はインロー形状もしくはテーパー形状によって嵌め込まれ、シール材によって背面シュラウド9と隙間無く密着している。図3に観察窓を取り付けた羽根車を背面側より見た図を示す。透明な樹脂もしくはガラスによって作製された観察窓5はポンプ運転中の強度が許す限り円形状に限定されることはない。
【実施例2】
【0011】
図4に溝付の環状観察窓7を取り付けたポンプ羽根車断面図を示す。図1に記載のごとくシャフト3を介して伝達される回転トルクを羽根車に与え回転させる。そのときの回転トルクを伝達する部位は図4中に記載のトルク伝達部10である。キャビテーションを発生させるためにはある程度の高速回転が必要となり、必然的にシャフトに与えるべきトルクは大きくなる。
【0012】
背面からキャビテーションの観察を実施する場合に可視化領域を出来る限り大きく取るためには、このトルク伝達部10を出来る限り小さくする必要が出てくる。このような場合に図5に示すごとく翼のハブ部分を、観察窓7に付けた溝に嵌め込みトルクの伝達に不足分を補う構造とする。補助トルク伝達部11を設けることで、十分なトルクの伝達と可視化範囲を出来る限り大きくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】観察窓を取り付けた遠心型ポンプの断面図。
【図2】観察窓を取り付けた遠心型ポンプ羽根車の断面図。
【図3】観察窓を取り付けた遠心型ポンプ羽根車を背面側から見た図。
【図4】溝付の環状観察窓を取り付けた遠心型ポンプ羽根車の断面図。
【図5】溝付の環状観察窓を取り付けた遠心型ポンプ羽根車の背面側から見た図。
【符号の説明】
【0014】
1…羽根車、2…ディフューザ、3…シャフト、4…吐出しケーシング、5…羽根車背面シュラウドに取り付けられた観察窓、6…吐出しケーシングに取り付けられた観察窓、7…羽根車背面シュラウドにつり付けられた環状観察窓、8…羽根車前面シュラウド、9…羽根車背面シュラウド、10…トルク伝達部、11…補助トルク伝達部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心型ポンプのキャビテーション観察装置及び、観察方法において、遠心羽根車の背面側に取り付けられた透明な樹脂もしくはガラスにより製作された観察窓と、羽根車の背面側のケーシングに取り付けられた透明な樹脂もしくはガラスにより製作された観察窓と、羽根車の回転を検出する回転センサと、ポンプケーシング外側に配置され羽根車の回転速度と同期して発行するストロボ光源と、ストロボ光源より発せられた光の照射によって羽根車翼面上の圧力面に発生するキャビテーションを記録するビデオカメラ、高速度カメラもしくは写真機を備えることを特徴とするポンプのキャビテーション観察装置。
【請求項2】
遠心羽根車の背面側に取り付けられた透明な樹脂もしくはガラスによって作製された溝付の観察窓に翼のハブ側を嵌め込むことにより補助トルク伝達部を設け、シャフトより伝達される回転トルクを羽根車に伝達する構造を持った羽根車を使用した請求項1に係るポンプのキャビテーション観察装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に係り遠心型ポンプ羽根車の背面部及び、背面側に位置するポンプケーシングに取り付けられた透明な樹脂もしくは、ガラスを通して羽根車翼面上の圧力面に発生するキャビテーションを観察及び記録する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−146658(P2007−146658A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338005(P2005−338005)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】