説明

遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置

【課題】鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現することが可能な遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置を提供する。
【解決手段】遠心模型実験に用いる静的載荷装置10が筒状の載荷用タンク13と、流動性を有し、模型地盤Gの載荷面G1に荷重を載荷するための載荷体Wとを備えて構成されている。そして、模型地盤Gの載荷面G1上に開口部を配して設けた載荷用タンク13内に載荷体Wを供給するとともに、載荷用タンク13内の載荷体Wの量に応じた荷重を、載荷用タンク13の開口部を通じて模型地盤Gの載荷面G1に載荷するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して模型地盤の応力レベルを、実地盤を模擬した状態にし、静的載荷装置で模型地盤に荷重を載荷するとともに模型地盤の変位を計測して、実地盤の挙動を予測する遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実際の建物の挙動(実地盤の挙動)を把握するためには、実物を用いてその挙動を調べることが確実である。しかしながら、実物を用いて実験を行う場合には、実大規模の模型を構築(製作)する必要が生じるため、多大な労力とコストを要する。
【0003】
これに対し、遠心力を利用して模型地盤の応力レベルを、実地盤を模擬した状態にし、特に応力−ひずみ(変位)の関係を実地盤と同様に再現することにより、縮小模型を用いて実物の挙動をより正確に把握できるようにした遠心模型実験が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、この遠心模型実験で沈下実験を行う場合には、図7及び図8に示すように、試料容器1に模型地盤Gを充填し、変位計2や地圧計3を所定位置に配置するとともに、模型地盤Gの載荷面G1(地表面)に荷重を載荷する静的載荷装置4を設置する。そして、静的載荷装置4とともに試料容器1(模型地盤G)を遠心模型実験装置に搭載し、所定の遠心加速度で回転させることによって、遠心力を利用し模型地盤Gの応力レベルを、実地盤を模擬した状態にする。この段階から、静的載荷装置4によって模型地盤Gの載荷面G1に荷重を載荷し、模型地盤Gの鉛直方向の変位(沈下量)や地圧を計測する。例えば実際の建物構築過程で順次増加する荷重に応じて段階的に荷重を増加させ、荷重に対する変位、地圧を計測することによって、建物構築過程の各段階における実地盤の挙動を予測することが可能になる。
【特許文献1】特開2004−93482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来、遠心模型実験で沈下実験を行う場合には、図7及び図8に示すように、ロードセル4aと載荷板4bを備えた静的載荷装置4を用いて模型地盤Gに荷重を載荷するようにしている。そして、このようなロードセル4aと載荷板4bを備えた静的載荷装置4を用いた場合には、載荷板4bが剛体であるため、変位制御荷重(すなわち、載荷面G1全体の鉛直変位が一定となる剛体荷重)しか載荷できない。このため、実際の建物構築過程では、建物の荷重分布が一定となり、実地盤の鉛直方向の変位が荷重と地中応力に応じて分布する場合が多いのに対し、変位分布が生じた載荷面G1に等分布荷重を載荷することができないため、鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現することが可能な遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の遠心模型実験の静的載荷方法は、遠心模型実験の静的載荷方法であって、静的載荷装置が筒状の載荷用タンクと、流動性を有し、模型地盤の載荷面に荷重を載荷するための載荷体とを備えて構成され、前記模型地盤の載荷面上に開口部を配して設けた前記載荷用タンク内に前記載荷体を供給するとともに、前記載荷用タンク内の前記載荷体の量に応じた荷重を、前記載荷用タンクの開口部を通じて前記模型地盤の載荷面に載荷するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この発明においては、例えば粉粒体や液体などの流動性を有する載荷体を用いて模型地盤の載荷面に荷重を載荷するようにしたことで、載荷体が載荷面の変位に応じて流動(載荷面の変位に従動)するため、常時、実地盤上に構築する建物(構造物)の荷重に応じた等分布荷重を載荷面に載荷することが可能になる。
【0010】
また、本発明の遠心模型実験の静的載荷方法において、前記載荷用タンクには、供給した前記載荷体を前記載荷用タンク内に貯留するための膜体が設けられており、前記遠心力が作用した状態で、前記載荷用タンク内の前記載荷体と前記模型地盤の載荷面との間に介装された前記膜体が前記模型地盤の載荷面に密着し、前記膜体を介して前記載荷体の量に応じた荷重を前記模型地盤の載荷面に載荷するようにしてもよい。
【0011】
この発明においては、載荷用タンクに供給した載荷体を膜体によって載荷用タンク内に貯留することが可能になる。そして、この膜体が載荷面の変位に応じて載荷面に常時密着するように変形し、膜体の変形とともに載荷体が流動するため、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を載荷面に載荷することが可能になる。
【0012】
さらに、本発明の遠心模型実験の静的載荷方法においては、複数の変位計を設け、該複数の変位計によって前記模型地盤の載荷面の複数箇所の変位を計測することが望ましい。
【0013】
この発明においては、載荷面の複数箇所の変位を計測することで、この載荷面の変位分布を捉えることができ、載荷時の実地盤の地表面(載荷面)の沈下分布を精度よく予測することが可能になる。
【0014】
また、本発明の遠心模型実験の静的載荷方法においては、前記模型地盤の載荷面と前記載荷体の間に、前記実地盤上に構築される実構造物の剛性を模した模擬板を設置することがより望ましい。
【0015】
この発明においては、例えば建物の基礎などの実地盤上に構築される実構造物の剛性を模した模擬板を設置することで、より実際に近い変位分布を捉えることができ、より高精度で実地盤の沈下分布を予測することが可能になる。
【0016】
さらに、本発明の遠心模型実験の静的載荷方法においては、前記載荷体に液体を用いることが望ましい。
【0017】
この発明においては、載荷体として例えば水や重液などの液体を用いることによって、載荷体が載荷面の変位に応じて確実に流動して、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を確実に載荷面に載荷することが可能になる。
【0018】
また、本発明の遠心模型実験の静的載荷方法においては、前記液体に重液を用いることがより望ましい。
【0019】
この発明においては、液体(載荷体)に重液を用いることによって、例えば水を用いる場合と比較し、少量の重液を載荷用タンクに供給して所望の荷重を載荷することが可能になり、効率的に沈下実験を行うことが可能になる。
【0020】
本発明の遠心模型実験に用いる静的載荷装置は、遠心模型実験に用いる静的載荷装置であって、筒状の載荷用タンクと、流動性を有し、模型地盤の載荷面に荷重を載荷するための載荷体とを備えており、前記模型地盤の載荷面上に開口部を配して設けた前記載荷用タンク内に前記載荷体を供給するとともに、前記載荷用タンク内の前記載荷体の量に応じた荷重を、前記載荷用タンクの開口部を通じて前記模型地盤の載荷面に載荷するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
この発明においては、例えば粉粒体や液体などの流動性を有する載荷体を用いて模型地盤の載荷面に荷重を載荷することができ、載荷体が載荷面の変位に応じて流動(載荷面の変位に従動)するため、常時、実地盤上に構築する建物(構造物)の荷重に応じた等分布荷重を載荷面に載荷することが可能になる。
【0022】
また、本発明の遠心模型実験に用いる静的載荷装置において、前記載荷用タンクには、供給した前記載荷体を前記載荷用タンク内に貯留するための膜体が設けられており、前記遠心力が作用した状態で、前記載荷用タンク内の前記載荷体と前記模型地盤の載荷面との間に介装された前記膜体が前記模型地盤の載荷面に密着するように構成されていてもよい。
【0023】
この発明においては、載荷用タンクに供給した載荷体を膜体によって載荷用タンク内に貯留することが可能になる。そして、この膜体が載荷面の変位に応じて載荷面に常時密着するように変形し、膜体の変形とともに載荷体が流動するため、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を載荷面に載荷することが可能になる。
【0024】
さらに、本発明の遠心模型実験に用いる静的載荷装置においては、前記模型地盤の載荷面の複数箇所の変位を計測する複数の変位計が設けられていることが望ましい。
【0025】
この発明においては、載荷面の複数箇所の変位を計測することで、この載荷面の変位分布を捉えることができ、載荷時の実地盤の地表面(載荷面)の沈下分布を精度よく予測することが可能になる。
【0026】
また、本発明の遠心模型実験に用いる静的載荷装置においては、前記模型地盤の載荷面と前記載荷体の間に、前記実地盤上に構築される実構造物の剛性を模した模擬板が設置されていることがより望ましい。
【0027】
この発明においては、例えば建物の基礎などの実地盤上に構築される実構造物の剛性を模した模擬板を設置することで、より実際に近い変位分布を捉えることができ、より高精度で実地盤の沈下分布を予測することが可能になる。
【0028】
さらに、本発明の遠心模型実験に用いる静的載荷装置においては、前記載荷体が液体であることが望ましい。
【0029】
この発明においては、載荷体として例えば水や重液などの液体を用いることによって、載荷体が載荷面の変位に応じて確実に流動して、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を確実に載荷面に載荷することが可能になる。
【0030】
また、本発明の遠心模型実験に用いる静的載荷装置においては、前記液体が重液であることがより望ましい。
【0031】
この発明においては、液体(載荷体)に重液を用いることによって、例えば水を用いる場合と比較し、少量の重液を載荷用タンクに供給して所望の荷重を載荷することが可能になり、効率的に沈下実験を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置によれば、例えば粉粒体や液体などの流動性を有する載荷体を用いて模型地盤の載荷面に荷重を載荷するようにしたことで、この載荷体が載荷面の変位に応じて流動するため、常時、実地盤上に構築する建物(構造物)の荷重に応じた等分布荷重を載荷面に載荷することが可能になる。これにより、鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図1から図5を参照し、本発明の一実施形態に係る遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置について説明する。本実施形態は、遠心力を利用して模型地盤の応力レベルを、実地盤を模擬した状態にし、静的載荷装置で模型地盤に荷重を載荷するとともに模型地盤の鉛直方向の変位を計測して、実地盤の挙動を予測する遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置に関するものである。
【0034】
はじめに、本実施形態において、遠心模型実験装置は、周知のアーム可動型遠心載荷実験装置であり、回転軸を鉛直方向に配して設けられた回転軸と、この回転軸の上部に固設されるとともに水平方向に延出し、回転軸中心に対称に配設された回転アームと、回転アームの先端側に、この回転アームの延設方向に向けた垂直方向に回動自在に懸吊されたプラットホームとを備えて構成されている。
【0035】
この遠心模型実験装置においては、模型地盤Gを充填した試料容器1がプラットホームに搭載される。そして、回転軸を回転させ、この回転軸の軸線回りに回転アームを回動させると、試料容器1を搭載したプラットホームが遠心加速度の増加に伴って振り上がり、試料容器1内の模型地盤Gに遠心力が作用する。これにより、所定の遠心加速度に達するとともに模型地盤Gの応力レベルが実地盤を模擬した状態になる。そして、模型地盤Gの応力レベルが実地盤を模擬して再現された段階で、模型地盤Gに荷重を載荷し変位を計測することによって実地盤の沈下挙動を予測することが可能になる。
【0036】
ここで、模型地盤Gに荷重を載荷するための本実施形態の静的載荷装置10は、図1及び図2に示すように、試料容器1と一体に設けられたフレーム11と、試料容器1よりも上方に位置するフレーム11の上部に取り付けて支持された液体補給用タンク12と、載荷用タンク13と、電磁バルブ14aを介して液体補給用タンク12と載荷用タンク13に繋げられた液体供給管14と、変位計15、16、17とを備えて構成されている。
【0037】
液体補給用タンク12は、試料容器1に充填した模型地盤Gの載荷面G1に荷重を載荷するための液体(流動性を有する載荷体)Wを貯留するタンクであり、この載荷用の液体Wとして例えば水、あるいはSPT(ポリタングステン酸ナトリウム)、液体水銀などの重液が貯留されている。
【0038】
載荷用タンク13は、図1及び図2に示すように、例えば方形の筒状に形成されており、その上端側をフレーム11に繋げて支持され、下端側の開口部13aを模型地盤Gの載荷面G1(地表面)上に配して設置されている。また、図3に示すように、載荷用タンク13には、液体供給管14の電磁バルブ14aを開いて液体補給用タンク12から供給された液体Wを載荷用タンク13内で貯留するための袋状で柔軟性を有する膜体20が設けられている。この膜体20は、載荷用タンク13の上端側で開口し、底部20aが載荷用タンク13の下端の開口部13a側に配されて、載荷用タンク13内に緩挿した状態で設置されている。さらに、膜体20は、液体補給用タンク12から供給して貯留された液体Wと模型地盤Gの載荷面G1の間に底部13aが載荷用タンク13の開口部13aを通じて介装され、遠心力が作用した状態で、常時、この膜体20の底部20aが模型地盤Gの載荷面G1に密着するように設けられている。
【0039】
変位計15、16、17は、接触式変位計であり、図1から図3に示すように、変位計本体15a、16a、17aと、この変位計本体15a、16a、17aに伸縮自在に繋がるロッド15b、16b、17bと、ロッド15b、16b、17bの先端部が当接するターゲット板15c、16c、17cとを備えて構成されている。そして、変位計本体15a、16a、17aをフレーム11の上部に取り付けて支持され、ロッド15b、16b、17bが膜体20(載荷用タンク13)の内部に配され、このロッド15b、16b、17bの先端部が当接するターゲット板15c、16c、17cを膜体20の底部20aの内側に取り付けて設置されている。また、本実施形態においては、模型地盤Gの載荷面G1の中央とこの中央を挟んで左右両側の変位をそれぞれ計測するように、3つの変位計15、16、17が設置されている。このように設置した各変位計15、16、17は、ターゲット板15c、16c、17cが、遠心力が作用した状態で、載荷面G1に密着する膜体20の底部20aに取り付けられているため、このターゲット板15c、16c、17cが模型地盤Gの載荷面G1とともに変位することになり、膜体20を介して模型地盤G(載荷面G1)の変位を計測することができる。
【0040】
ついで、上記構成からなる静的載荷装置10によって模型地盤Gに荷重を載荷し、遠心模型実験で沈下実験を行う方法について説明するとともに、本実施形態の遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置10の作用及び効果について説明する。
【0041】
遠心模型実験で沈下実験を行う際には、はじめに、遠心模型実験装置のプラットホームに模型地盤Gを充填した試料容器1及びフレーム11を搭載する。ついで、膜体20を設けた載荷用タンク13を、フレーム11に取り付けて支持させ、その下端側の開口部13aを模型地盤Gの載荷面G1上に配して設置する。また、膜体20の底部20aにターゲット板15c、16c、17cを設置するとともに、変位計本体15a、16a、17aをフレーム11の上部に取り付けるとともにロッド15b、16b、17bの先端部をターゲット板15c、16c、17cに当接させて、各変位計15、16、17を設置する。さらに、液体補給用タンク12に載荷用の液体Wを入れて貯留する。
【0042】
そして、このように静的載荷装置10を設置した段階で、遠心模型実験装置の回転軸を回転させ、回転アームを回転させる。これにより、模型地盤Gを充填した試料容器1及び静的載荷装置10を搭載したプラットホームが遠心加速度の増加に伴って振り上がり、所定の遠心加速度に達するとともに、試料容器1内の模型地盤Gの応力レベルが実地盤を模擬した状態になる。
【0043】
模型地盤Gの応力レベルが実地盤を模擬して再現された段階で、電磁バルブ14aを開き、液体供給管14を通じて液体補給用タンク12から膜体20(載荷用タンク13)の内部に所定量の液体Wを落下させる。このように液体Wを載荷用タンク13内に供給すると、遠心力が加えられた液体Wによって、膜体20の底部20aが模型地盤Gの載荷面G1に密着するとともに、液体Wの量に応じた所定の荷重が模型地盤Gの載荷面G1に載荷される。また、この荷重に応じて模型地盤Gの載荷面G1に変位が生じた場合には、柔軟性を有する膜体20の底部20aが模型地盤Gの載荷面G1に密着した状態を維持するように載荷面G1とともに変位(変形)し、さらに流動性を有する液体Wが載荷面G1の変位に応じて流動(従動)する。このため、載荷面G1内で変位分布が生じた場合においても、液体Wによって、常時、例えば実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重が載荷面G1に載荷されることになる。
【0044】
また、膜体20の底部20aが載荷面G1に密着して載荷面G1とともに変位することで、この膜体20の底部20aに取り付けたターゲット板15c、16c、17cが載荷面G1の変位に従動して変位する。これにより、変位計15、16、17によって載荷面G1の変位量(模型地盤Gの変位量(沈下量))が計測される。さらに、電磁バルブ14aを開閉し、段階的に載荷用タンク13内に液体Wを供給することにより、実際の建物構築過程で順次増加する荷重に応じて段階的に荷重を増加させてゆき、各段階の荷重に対する変位(沈下量)を計測する。そして、このとき、載荷面G1の変位に応じて流動する液体Wによって、常時載荷面G1に建物の荷重に応じた等分布荷重が載荷されるため、中央と左右両側に設けた変位計15、16、17でそれぞれ計測した結果は、鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現したものになる。
【0045】
ここで、図5は、図4に示すように液体Wの量を段階的に増加させて模型地盤Gの載荷面G1に載荷する荷重を段階的に増加させた場合における載荷面G1の中央、左右両側の変位の計測結果を示している。この試験結果から、段階的に荷重を載荷するとともに沈下が生じる状況を再現でき、且つ載荷面G1内での変位分布を捉えて、鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現できることが確認された。
【0046】
したがって、本実施形態の遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置10においては、液体W(流動性を有する載荷体)を用いて模型地盤Gの載荷面G1に荷重を載荷することにより、この液体Wが載荷面G1の変位に応じて流動(載荷面G1の変位に従動)して、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を載荷面G1に載荷することが可能になる。これにより、鉛直変位が荷重と地中応力に応じて分布する実地盤の沈下現象を忠実に再現することが可能になる。
【0047】
また、載荷用タンク13に膜体20を設けることによって、載荷用タンク13に供給した液体Wをこの膜体20によって載荷用タンク13内に貯留することが可能になる。そして、膜体20が載荷面G1の変位に応じてこの載荷面G1に常時密着するように変形し、膜体20の変形とともに液体Wが流動するため、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を載荷面G1に載荷することが可能になる。
【0048】
さらに、複数の変位計15、16、17を設けて、載荷面G1の複数箇所の変位を計測することで、この載荷面G1の変位分布を捉えることができ、載荷時の実地盤の地表面(載荷面G1)の沈下分布を精度よく予測することが可能になる。
【0049】
また、載荷体として例えば水や重液などの液体Wを用いることによって、載荷体(液体W)が載荷面G1の変位に応じて確実に流動して、常時、実地盤上に構築する建物の荷重に応じた等分布荷重を確実に載荷面G1に載荷することが可能になる。さらに、このとき、液体Wに重液を用いることによって、例えば水を用いる場合と比較し、少量の重液を載荷用タンク13に供給して所望の荷重を載荷することが可能になり、効率的に沈下実験を行うことが可能になるとともに、液体補給用タンク12や載荷用タンク13を小さく形成することも可能になる。また、重液としてSPTを用いた場合には、無害であるため、例えば液体水銀などを用いる場合よりもその取扱いを容易にすることが可能である。
【0050】
以上、本発明に係る遠心模型実験の静的載荷方法及び遠心模型実験に用いる静的載荷装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、載荷体が液体Wであるものとして説明を行ったが、本発明に係る載荷体は、流動性を有していればよく、例えば金属の粉粒体を用いてもよい。また、このような粉粒体を載荷体として用いる場合には、載荷用タンク13内に供給して貯留するとともに、載荷用タンク13の開口部13aを通じて直接模型地盤Gの載荷面G1に接触させて、載荷面G1に荷重を載荷することが可能である。このため、必ずしも膜体20を載荷用タンク13に設けることに限定しなくてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、載荷用タンク13がその上端側をフレーム11に取り付けて支持されているものとしたが、載荷用タンク13を、フレーム11で支持することなく、模型地盤G上に載置して設けてもよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、遠心模型実験装置がアーム可動型遠心載荷実験装置であるものとして説明を行ったが、本発明は、ドラム型遠心載荷実験装置を用いて沈下実験を行う際にも適用可能である。
【0053】
また、本実施形態では、変位計15、16、17が接触式変位計であるものとしたが、模型地盤Gの載荷面G1の変位を計測することができれば、特に接触式変位計に限定する必要はない。
【0054】
さらに、例えば図6に示すように、模型地盤Gの載荷面G1と液体W(載荷体)の間に、実地盤上に構築される例えば建物の基礎スラブなどの実構造物の剛性を模した模擬板21を設置するようにしてもよい。この場合には、模擬板21によって建物の基礎スラブなどの変形の影響を反映させて、模型地盤Gの載荷面G1に載荷体による荷重を載荷することができる。このため、より実際に近い変位分布を捉えることができ、より高精度で実地盤の沈下分布を予測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る静的載荷装置を示す図である。
【図2】図1のX1−X1線矢視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る静的載荷装置の載荷用タンク(膜体)を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る静的載荷装置を用いて行った試験における荷重履歴を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る静的載荷装置を用いて行った試験結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る静的載荷装置の変形例を示す図である。
【図7】従来の静的載荷装置を示す図である。
【図8】従来の静的載荷装置を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 試験容器
10 静的載荷装置
11 フレーム
12 液体補給用タンク
13 載荷用タンク
13a 開口部
14 液体供給管
14a 電磁バルブ
15 変位計(中央)
16 変位計(左側)
17 変位計(右側)
20 膜体
20a 底部
G 模型地盤
G1 載荷面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心模型実験の静的載荷方法であって、
静的載荷装置が筒状の載荷用タンクと、流動性を有し、模型地盤の載荷面に荷重を載荷するための載荷体とを備えて構成され、
前記模型地盤の載荷面上に開口部を配して設けた前記載荷用タンク内に前記載荷体を供給するとともに、前記載荷用タンク内の前記載荷体の量に応じた荷重を、前記載荷用タンクの開口部を通じて前記模型地盤の載荷面に載荷するようにしたことを特徴とする遠心模型実験の静的載荷方法。
【請求項2】
請求項1記載の遠心模型実験の静的載荷方法において、
前記載荷用タンクには、供給した前記載荷体を前記載荷用タンク内に貯留するための膜体が設けられており、
前記遠心力が作用した状態で、前記載荷用タンク内の前記載荷体と前記模型地盤の載荷面との間に介装された前記膜体が前記模型地盤の載荷面に密着し、前記膜体を介して前記載荷体の量に応じた荷重を前記模型地盤の載荷面に載荷するようにしたことを特徴とする遠心模型実験の静的載荷方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の遠心模型実験の静的載荷方法において、
複数の変位計を設け、該複数の変位計によって前記模型地盤の載荷面の複数箇所の変位を計測することを特徴とする遠心模型実験の静的載荷方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の遠心模型実験の静的載荷方法において、
前記模型地盤の載荷面と前記載荷体の間に、前記実地盤上に構築される実構造物の剛性を模した模擬板を設置することを特徴とする遠心模型実験の静的載荷方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の遠心模型実験の静的載荷方法において、
前記載荷体に液体を用いることを特徴とする遠心模型実験の静的載荷方法。
【請求項6】
請求項5記載の遠心模型実験の静的載荷方法において、
前記液体に重液を用いることを特徴とする遠心模型実験の静的載荷方法。
【請求項7】
遠心模型実験に用いる静的載荷装置であって、
筒状の載荷用タンクと、流動性を有し、模型地盤の載荷面に荷重を載荷するための載荷体とを備えており、
前記模型地盤の載荷面上に開口部を配して設けた前記載荷用タンク内に前記載荷体を供給するとともに、前記載荷用タンク内の前記載荷体の量に応じた荷重を、前記載荷用タンクの開口部を通じて前記模型地盤の載荷面に載荷するように構成されていることを特徴とする遠心模型実験に用いる静的載荷装置。
【請求項8】
請求項7記載の遠心模型実験に用いる静的載荷装置において、
前記載荷用タンクには、供給した前記載荷体を前記載荷用タンク内に貯留するための膜体が設けられており、
前記遠心力が作用した状態で、前記載荷用タンク内の前記載荷体と前記模型地盤の載荷面との間に介装された前記膜体が前記模型地盤の載荷面に密着するように構成されていることを特徴とする遠心模型実験に用いる静的載荷装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の遠心模型実験に用いる静的載荷装置において、
前記模型地盤の載荷面の複数箇所の変位を計測する複数の変位計が設けられていることを特徴とする遠心模型実験に用いる静的載荷装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれかに記載の遠心模型実験に用いる静的載荷装置において、
前記模型地盤の載荷面と前記載荷体の間に、前記実地盤上に構築される実構造物の剛性を模した模擬板が設置されていることを特徴とする遠心模型実験に用いる静的載荷装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれかに記載の遠心模型実験に用いる静的載荷装置において、
前記載荷体が液体であることを特徴とする遠心模型実験に用いる静的載荷装置。
【請求項12】
請求項11記載の遠心模型実験に用いる静的載荷装置において、
前記液体が重液であることを特徴とする遠心模型実験に用いる静的載荷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−66148(P2010−66148A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233249(P2008−233249)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】