説明

遠心脱水方法及び遠心脱水装置

【課題】直胴型遠心脱水装置において、ボウル内堆積重相からの水分の抜けを容易にして脱水効果を高め、且つ圧搾効率を高め負荷の軽減を図る。
【解決手段】直胴型遠心脱水装置において、スクリューコンベア20の回転胴21の外周面が、ストレート部24と該ストレート部から径大方向に傾斜したテーパー部25からなり、前記回転胴のストレート部24の内周面に無機凝集剤を供給する無機凝集剤供給経路を有し、且つ前記ストレート部には、前記無機凝集剤供給経路と連通し無機凝集剤添加用のオリフィス108とボウルの環状空間内に突出する無機凝集剤添加用ノズル109が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理や工業排水処理、あるいは化学・食品工業用諸生産品において、処理液を、遠心力により固液分離し固形物及び分離液の回収を行うようにした遠心脱水方法及び遠心脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥等(以下、処理液と称する)を遠心力により固液分離するのにデカンタ型遠心脱水装置が広く使用されている。従来のデカンタ型遠心脱水装置は、ボウル円錐部では回転中心からの距離(径)が短くなるため、遠心力が弱くなり含水率が高まってしまう現象が見られる等の欠点があり、本出願人らはこのような従来のデカンタ型遠心脱水装置の欠点を解消するものとして、先に直胴型遠心脱水装置を提供した(特許文献1)。該直胴型遠心脱水装置は、ボウルの内周壁がその回転軸に沿って延在する円筒形を形成し、沈殿した重成分をボウル外へ排出するための排出経路を前記ボウルの一端壁内に設け、排出経路のボウルの開口がボウル内周壁近傍に設けられるとともに、排出経路が排出量を制限する絞り通路となっており、これによって排出経路の開口近傍に圧密状態の脱水ケーキの堆積層を形成させ、絞り通路の排出抵抗によって形成される堆積層の厚さに応じて脱水ケーキに作用する遠心水頭圧と、スクリューコンベアの搬送力によって、排出経路を介し前記圧密状態の脱水ケーキが直接排出されることを特徴とするものである。これにより、ボウル内の脱水ケーキの堆積層のうち、最も高い圧密作用を受けている部分のみを直接排出するので、脱水ケーキの含水率を従前の遠心脱水装置に例を見ないほどに下げることができた。
【0003】
一方、脱水効果を高めるために、脱水装置の上記のような構造・機能的な改良と共に、処理液に高分子凝集剤又は無機凝集剤あるいはそれら両方を添加してフロックを形成して分離・脱水処理することが行なわれている。これらの凝集剤の添加方法は脱水機のタイプや処理液の種類に応じて異なり、デカンタ型の遠心脱水機で固液分離する際の凝集剤の具体的な添加方法として、複合管により内胴の汚泥供給室に汚泥と共に高分子凝集剤を供給する方法(例えば特許文献2、3参照)が一般的であるが、予め外部の攪拌槽内で汚泥に高分子凝集剤を添加攪拌して凝集フロックを生成させたものを内胴の汚泥供給室に供給し、且つ外胴内周のテーパー部を脱水されつつ小径側へ移動する汚泥堆積物に内胴内から無機凝集剤を添加するいわゆる二液法(特許文献4)、あるいは無機凝集剤と高分子凝集剤が供給された汚泥を遠心脱水装置内で固液分離が進んだ分離汚泥に無機凝集剤を再注入する方法(特許文献5)等が提案されている。
【0004】
これらデカンタ型遠心脱水機において、特許文献3の方法では、脱水汚泥の含水率を82%まで低下させることができることを見出した旨記載されている。また、特許文献4の方法では、実験室で卓上遠心脱水機を用いて下水消化汚泥の脱水ケーキ含水率を72.7%に低下させたこと、特許文献5の方法では、同じく下水消化汚泥(汚泥濃度1.5%)、処理量1.5m/h、遠心効果2500Gで行なった結果、脱水ケーキ含水率75.0%となったことが示されている。
以上のように、従来のデカンタ型遠心脱水機の脱水ケーキ含水率は、小型機で例えば消化汚泥の場合で、実機で最大で75%で程度しか低下させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4153138号公報
【特許文献2】特開2000−254549号公報
【特許文献3】特開2006−192403号公報
【特許文献4】特公平6−41000号公報
【特許文献5】特開2010−264417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記提案した直胴型遠心脱水装置は、機内脱水ケーキの堆積層のうち、最も高い圧密作用を受けている部分のみを直接排出するので、脱水ケーキの含水率を従来の遠心脱水装置に比べて飛躍的に低下させることができたが、スクリューコンベアの内筒先端から壁が半径方向外方に立ち上がって排出経路入口まで延びているため、脱水ケーキの堆積層はボウルの前端部分の壁に当たると共に、絞り通路となっている排出経路の排出抵抗により、大きな堆積層をこの部分に形成し、この部分の機内脱水ケーキの高遠心場から排出経路への移動が容易でなく運転負荷が増大する傾向にあると共に、スクリューコンベアの内筒側の低遠心力部の水分が抜けにくいという問題点があった。
【0007】
一方、脱水効果をさらに高めるために、特許文献4、5に示しているデカンタ型遠心脱水機と同様に高分子凝集剤に加えて無機凝集剤を添加する二液法によってさらに脱水効果を向上させることが考えられるが、無機凝集剤、例えばポリ硫酸第二鉄は水の中では凝集効果が薄くある程度脱水された状態、即ち機内添加でないと効果が少ない。しかしながら、従来の直胴型遠心脱水装置においては、前記のようにボウルの前端部分が垂直壁であり、その箇所に脱水ケーキの堆積層が形成されるため、機内で無機凝集剤を添加するとこの堆積層で固まってしまい排出できなくなって機内閉塞を起こし運転不能となるため、従来の直胴型遠心脱水機では無機凝集剤の後添加による二液添加法は採用できないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、直胴型遠心脱水装置の前記問題点を解決しようとするものであり、ボウル内の脱水ケーキからの水分の抜けが容易でより脱水効果を高めると共に、圧搾効率を高め装置内負荷の軽減を図ることができる遠心脱水方法及び直胴型遠心脱水機を提供することを第1の目的とし、且つ無機凝集剤の後添加による二液添加法が採用できてより脱水効果を高めることができる遠心脱水方法及び直胴型遠心脱水機を提供することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決する本発明の直胴型遠心脱水方法は、一方向に回転する直胴型のボウルと、該ボウル内で該ボウルと同軸に回転速度差を有して同方向に回転する回転胴の外周に螺旋翼を巻装してなるスクリューコンベアを有する直胴型遠心脱水装置により処理液を固液分離して固形物及び分離液の回収を行なう直胴型遠心脱水装置による遠心脱水方法において、前記遠心脱水装置は、前記ボウルの内周壁が前記ボウルの回転軸に沿って延在する円筒形を形成し、且つ前記スクリューコンベアの前記回転胴の外周面が、上流側がストレートな円周面からなるストレート部と、下流側が前記ストレート部から径大方向に傾斜したテーパー部とから構成され、前記処理液は、前記回転胴の内部に形成された処理液供給室を介して前記ボウルと前記スクリューコンベアとの間の環状空間に供給され、前記ボウル及び前記スクリューコンベアの回転の遠心力で固液分離されながら分離液は分離液排口より排出され、脱水ケーキは遠心水頭圧と前記スクリューコンベアの搬送力とにより脱水ケーキ排出経路へ押出してなり、前記脱水ケーキは、前記脱水ケーキ排出経路側に向けて前記テーパー部によって、徐々に高遠心力場に移動させ、かつ脱水ケーキ排出路側に向かって脱水ケーキの通過面積を漸減させて脱水することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の直胴型遠心脱水方法において、前記回転胴の処理液供給口から前記テーパー部開始点までのストレート部の軸方向長さL1と、前記回転胴のテーパー部の軸方向長さL2との比L1/L2が1.2〜5.0の範囲とすることによって、ストレート部からの押し込み力が増大し、より含水率を低下させることができ望ましい。
【0011】
前記処理液供給室に処理液と高分子凝集剤を供給する処理液供給工程、前記処理液供給室から前記高分子凝集剤が添加された処理液が回転胴に形成された供給口を介してボウル内周の環状空間に供給され、遠心力により脱水されながら前記スクリューコンベヤにより搬送される前記脱水ケーキに、前記スクリューコンベアの回転胴内方より無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程を備えていることによって、前記第2の目的を達成することができる。
【0012】
本発明の直胴型遠心脱水方法において、前記無機凝集剤の供給工程は、前記スクリューコンベアのストレート部の前記供給口から下流側と前記テーパー部上流端との間で、前記脱水ケーキに添加することがテーパー部での脱水ケーキの機内閉塞を防止する上で望ましい。また、前記無機凝集剤の添加は、脱水ケーキ表面と脱水ケーキ内部への添加の組合せにより行なうのが、脱水効率をより高める上で望ましい。
【0013】
上記直胴型遠心脱水方法を実施する本発明の直胴型遠心脱水装置は、一方向に回転する直胴型のボウルと、該ボウル内で該ボウルと同軸に回転速度差を有して同方向に回転する回転胴の外周に螺旋翼を巻装してなるスクリューコンベアを有する直胴型遠心脱水装置において、前記ボウルの内周壁が前記ボウルの回転軸に沿って延在する円筒形を形成し、且つ前記スクリューコンベアの前記回転胴の外周面が、前記上流側がストレートな円周面からなるストレート部と、前記下流側が前記ストレート部から径大方向に傾斜したテーパー部とから構成され、前記テ―パー部のテーパー開始部の傾斜角が5乃至30゜の範囲内であることを特徴とするものである。
本発明の上記直胴型遠心脱水装置において、前記回転胴の処理液供給口から前記テーパー部開始点までのストレート部の軸方向長さL1と、前記回転胴のテーパー部の軸方向長さL2との比L1/L2が1.2〜5.0の範囲であることが、圧搾効率を高める上で望ましい。
【0014】
そして、本発明の直胴型遠心脱水装置は、前記回転胴のストレート部の内周面に無機凝集剤を供給する無機凝集剤供給経路を有し、且つ前記ストレート部には、前記無機凝集剤供給経路と連通し前記回転胴を貫通して無機凝集剤添加用のオリフィスとボウルの環状空間内に突出する無機凝集剤添加用ノズルが設けられている構成を有することにより、前記第2の目的を達成することができる。
また、前記回転胴のストレート部の内周面に無機凝集剤を供給する無機凝集剤供給経路を有し、且つ前記ストレート部には、前記無機凝集剤供給経路と連通し前記回転胴を貫通して無機凝集剤添加用のオリフィスとボウルの環状空間内に突出する無機凝集剤添加用ノズルが設けられている。
【0015】
また、前記テーパー部が、傾斜角の異なる2段構造をなし、1段目の傾斜角が緩やかな傾斜角で、それに続く2段目が前記1段目の傾斜角より大きい急勾配の傾斜角にすることによって、高含水率脱水ケーキの排出側へのショートパスを有効に阻止するのに望ましい。また、ショートパス阻止手段として、前記ストレート部と前記テーパー部との境界部及び/又はテーパー部の途中に段差面となっている堰が形成されていること、前記テーパー部に配置された前記螺旋翼の回転胴への付け根部の一部に切り欠けを設けてなること等が有効に採用できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の直胴型遠心脱水装置による遠心脱水方法及び請求項6に記載の直胴型遠心脱水装置によれば、次の(1)〜(5)に記載の格別な効果がある。
(1)回転胴の外周面を脱水ケーキの排出側に向かって径大方向に5〜30゜の範囲内で傾斜したテーパー形状とすることにより、排出される脱水ケーキを徐々に高遠心力場に移動させることができるので、水分の抜けが容易となり、脱水ケーキの含水率低下が図れる。
(2)回転胴の外周面を脱水ケーキの排出側に向かって径大方向にテーパー形状とすることにより、従来の直胴型遠心脱水装置のような排出側端部での圧密状態の脱水ケーキが堆積することがなく脱水ケーキの排出が容易となる。
(3)スクリューコンベアが径大方向に傾斜したテーパー部を有するため、脱水ケーキ排出側に向かって脱水ケーキの体積が徐々に減少することにより押し込み圧を有効に使用でき、圧搾力が増大して脱水ケーキ含水率を低下させ且つ容易に排出することができる。その結果、負荷圧を軽減することが可能となり、装置負荷が減少して消費電力の低減を図ることができる。
(3)テーパー部により高脱水ケーキ保持容量が増え、ネガティブダム時の脱水ケーキ側への漏水防止効果が期待できる。
(4)脱水ケーキ搬送力と水頭圧を押し込み圧として有効に利用できることから運転中の脱水ケーキによる装置内閉塞が大幅に軽減される。
【0017】
本発明の請求項3に記載の直胴型遠心脱水装置による遠心脱水方法及び請求項8に記載の直胴型遠心脱水装置によれば、前記(1)〜(4)に記載の効果に加えさらに、次の効果を奏する。
(5)前記テーパー部を有することにより、従来の直胴型遠心脱水装置のような排出側端部での圧密状態の脱水ケーキが堆積することがなく脱水ケーキの排出が容易となり、従来の直胴型遠心脱水装置では不可能であった無機凝集剤の機内添加が可能となり、より低含水率の脱水ケーキを得ることが可能となった。
(6)処理液に機内添加された無機凝集剤はテーパー部で処理液との混合が有効に行なわれ、脱水ケーキ含水率をさらに低下させる。
(7)無機凝集剤は、機内で含水率が低下しつつある脱水ケーキに添加されるので、凝集効果が高く脱水効果を高めることができる。
(8)脱水ケーキ搬送力と水頭圧を押し込み圧として有効に利用できることから運転中の脱水ケーキによる装置内閉塞が大幅に軽減される。
【0018】
請求項4の発明によれば、上記効果(1)〜(8)に加え、さらに無機凝集剤は、ストレート部で添加され、機内で含水率が低下しつつある脱水ケーキに添加されるので、凝集効果が高く脱水効果を高め、且つ圧搾力が最大に増大するテーパー部では無機凝集剤の添加は行わないので、テーパー部での脱水ケーキの固まりを有効に防止して排出が容易である。
さらに、請求項5及び請求項8の発明によれば、無機凝集剤の脱水ケーキへの添加は、脱水ケーキ表面と脱水ケーキ内部への組み合わせにより行なうので、無機凝集剤が脱水ケーキと効率よく均一に混合することができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、テーパー部を有していてもストレート部による搬送力がテーパー部への押し込み力となって有効に作用するため、搬送不良を生じることがない。
請求項9の発明によれば、1段目の緩やかなテーパー部で脱水ケーキが徐々に圧搾されて脱水され、2段目の急勾配部により低遠心力部の高含水率脱水ケーキはボウル底部(ケーキ排出口)に移動することなく緩やかなテーパー部を分離液側に移動する。この場合、1段目のテーパー部でショートパスがあっても、2段目のテーパー部で押し戻されてしまうので、ケーキ含水率は、従来の直胴型と比較して約3〜4%の水分低下が得られる。
請求項10の発明によれば、テーパー部の入口及び又テーパー部の途中に段差を形成して堰を設けることによって、高含水率脱水ケーキがテーパー部にショートパスすることを有効に防止することができる。
請求項11の発明によれば、螺旋翼に切り欠けを設けることによって、高含水率脱水ケーキが螺旋翼によってテーパー部へ押し上げられて移動することを防止でき、高含水率脱水ケーキの排出側へのショートパスを有効に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る遠心脱水装置の正面断面図である。
【図2】その要部の拡大断面概略図である。
【図3】図1におけるZ−Z断面図である。
【図4】図1におけるX−X断面図である。
【図5】図1におけるY−Y断面図である。
【図6】図1におけるU−U断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る遠心脱水装置の要部正面断面の拡大断面概略図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る遠心脱水装置の要部正面断面の拡大断面概略図である。
【図9】本発明のさらにまた他の実施形態に係る遠心脱水装置の要部正面断面の拡大断面概略図である。
【図10】図9の螺旋翼のA−A矢視図である。
【図11】本発明の図7に示す実施形態に図8に示す実施形態を付加した他の実施形態に係る遠心脱水装置の要部正面断面の拡大断面概略図である。
【図12】本発明の図7に示す実施形態に図9に示す実施形態を付加した他の実施形態に係る遠心脱水装置の要部正面断面の拡大断面概略図である。
【図13】実施例及び比較例における高分子凝集剤添加率に対する脱水ケーキ含水率の変化を示すグラフ。
【図14】実施例2と比較例3における機内脱水ケーキの含水率分布を示すグラフである。
【図15】実施例3と比較例4における脱水ケーキ含水率と処理量の関係を示すグラフである。
【図16】実施例3と比較例4における脱水ケーキ含水率と遠心効果の関係を示すグラフである。
【図17】実施例4と比較例5における脱水ケーキ含水率と処理量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る遠心脱水装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る直胴型遠心脱水装置1を示し、図2はその要部の拡大概略図である。本実施形態の直胴型遠心脱水装置1は、直胴円筒型のボウル10と該ボウル内に配置され相対速度差を有して同方向に回転するスクリューコンベア20、ボウル10及びスクリューコンベア20の両端部に突出形成された中空軸35、40、スクリューコンベアの前端に設けられた脱水ケーキ排出室50、後端部に設けられた分離液排出室60を備えている。そして、ボウル10、その内部に装着されたスクリューコンベア20、脱水ケーキ排出室50、分離液排出室60がケーシング19内に収納されている。
【0022】
ボウル10は、横型円筒の直胴形をなし、ボウル前端が脱水ケーキ排出室壁11をなし、ボウル後端が分離液の排出口13が形成されたボウル後端壁12をなしている。分離液の排出口13は、ボウル後端壁12に多数の小孔を同心状に隔設するのが望ましいが、これに限らず適宜形成することが可能である。
ボウル後端壁12の中央部から外側に突出形成された上流側の中空軸40がベースフレーム80に設けられた軸受95に回転自在に軸受され、且つボウル前端壁である脱水壁排出室壁11の中央部から外側に突出形成された下流側の中空軸40が軸受部90に回転可能に軸受されている。中空軸40の外周にプーリ71が設けられ、図示しない駆動源としてのモータに伝動されボウル10が回転駆動される。中空軸40の先端部は変速装置70に連結されていると共に、中空軸40の内部を貫通して回転自在に設けられたスクリューコンベア駆動軸23が変速装置70に連結され、中空軸40の回転力は変速装置70を介してスクリーコンベア駆動軸23に伝達され、スクリューコンベア20がボウル10と同方向に相対速度差を持って回転駆動される。
そして、上流側の中空軸40の中心部を貫通して、外周部が後述する凝集剤供給管となっている二重管構造の処理液供給管41が貫通して、処理液と凝集剤をスクリューコンベアの回転胴21の内部まで供給できるようになっている。
【0023】
ボウル内に配設されたスクリューコンベア20は、内部が中空の回転胴21の外周に螺旋翼22が巻装されてなり、前述のように駆動装置によりボウル10と所要の速度差をもって同方向に回動されるようになっている。回転胴21は、図1及び図2に示すように、外周面が円筒のストレート部24とテーパー部25とから形成されている。ストレート部24は、図2に示すように、回転胴の上流側端部から延びてさらに脱水ケーキ供給口27から回転胴の下流側寄りに距離L1の位置まで伸び、テーパー部25は、回転胴の下流側寄りに脱水ケーキ14の排出通路の入口まで傾斜角αでボウルの内周壁に向かって傾斜して、軸方向距離L2の範囲に形成されている。前記テーパー部25は、従来のストレート構造の回転胴を脱水ケーキ排出側に向けて大径に傾斜するテーパー構造とすることにより、脱水ケーキ排出方向に脱水ケーキが搬送されるにしたがって圧搾力が増大され、排出される脱水ケーキの含水率が低下することに着目して形成されたものである。
【0024】
しかしながら、回転胴のテーパー部のテーパー角度を30゜以上の急勾配にすると搬送不良が生じて分離液側から脱水ケーキが流出するキャリーオーバーが発生して搬送負荷を上昇させることができず脱水ケーキ含水率の改善が認められなかった。種々実験した結果テーパー角度αは、30゜未満、特に10〜15゜が望ましい結果が得られた。なお、ここでいうテーパー角度は、テーパー部のテーパー開始部の角度を指すが、後述するようにテーパ−部を多段に形成して下流側でテーパー角度が上記範囲を超える傾斜角に設定するのが望ましい場合もあり、多段に形成する場合はテーパー部の始端と終端部を結ぶ直線が中心線となす角度を指す。従って、後述する実施形態の場合のように、下流端部近傍ではテーパー角度が上記範囲を超えても、テーパー部の始端と終端部を結ぶ直線の角度は30゜未満の範囲とするのが望ましい。また、処理液供給口から回転胴ストレート部の距離L1とテーパー部距離L2の比は、ストレート部24の搬送力がテーパー部への押し込み力となるためL1を短くすると押し込み力が不足して搬送不良を生じてキャリーオーバーを引き起こす。このため、L1とL2の比は、L1/L2=1.2〜5であることが望ましい。より望ましくは、L1/L2=1.2〜1.5である。L1/L2<1.2であると、直線部からの押し込み力が弱くなって脱水率が低下し、L1/L2>5以上であると装置の軸方向長さが必要以上に長くなるので、装置の小型化を図る上で好ましくない。一方、L2が短小過ぎると、テーパー角度が大きくなり、前述したように搬送不良が生じて脱水ケーキの含水率低下の効果が少ない。
【0025】
前記テーパー部25の下流端、即ちボウル内周壁と最も接近し高遠心力が作用する位置には、該位置から内側に向けて傾斜する逆テーパー面28が形成され、後述するボウル側逆テーパー面との間で脱水ケーキの排出経路となる絞り通路52を形成する。図示の実施形態では、逆テーパー面28を形成する部材を回転胴21と別部材の円板部材で形成しているが、回転胴21と一体に形成してもよい。回転胴と別部材で形成することによって、処理液の性状等に応じて絞り通路の形状や断面積を調整できるという利点がある。
【0026】
一方、ボウル10の内周面の下流端部近傍には、前記回転胴側の逆テーパー面28と対向して、ボウル側絞り通路部材18が調整可能に取り付けられている。該ボウル側絞り通路部材18も本実施形態ではボウルと別体に形成されているが、ボウルと一体に形成しても良い。回転胴側絞り通路部材28とボウル側絞り通路部材18とによって、下流側に向けて断面積が漸減する断面円錐環状の絞り通路となる脱水ケーキ排出経路52を形成する。
【0027】
したがって、脱水ケーキの排出経路52の入口53、即ち排出経路のボウルの開口部は、ボウル10の周壁内面15に接して設けられ、一方、ボウル外への排出口となる脱水ケーキ排出経路の出口54は半径方向への高さを有している。従って、入口53から排出経路52内に侵入できる脱水ケーキは堆積層の最も下層部の部分のみに限定されることとなる。一方、出口54は、運転初期において、処理液がこの出口54を溢流しない程度に供給されるもので、ボウル内の液面の初期の高さを定める。この排出経路の出口54が高過ぎると、排出経路52内の脱水ケーキに作用する遠心力がボウル内の脱水ケーキ層に作用する押圧力を相殺することによって、脱水ケーキの排出力を低減してしまうので、必要な範囲でなるべく低いことが望ましい。
【0028】
一方、分離液排出口13は、運転中の環状空間17の液面を定め、分離液排出口13の位置が出口54よりも低いときは「下側溢流」の状態での運転となり、高いときは「上側溢流」の状態での運転となる。そして、上側溢流の状態での運転の場合、処理液の脱水ケーキ排出経路52からの流出は、脱水ケーキ排出経路の入口53の近傍に堆積した脱水ケーキによって阻止される。その最も極端な場合は、分離液の排出は軸心からの排出とすることも可能であるため分離液は脱水ケーキの出口54から溢流しない。
【0029】
次に、上記装置において、凝集剤の添加手段及び方法について説明する。
回転胴21内には、処理液の供給室26が設けられ、その周壁には、ボウル10と回転胴21との間の環状空間17に通ずる複数個の供給口27が開設されているとともに、ボウル10の中空軸40より挿通された処理液の供給管41が供給室26に開口して設けられている。二重構造になっている処理液供給管は、図1におけるZ−Z断面、X−X断面を図3、4に示すように、内管100が処理液通路となっており、その外側を囲む外管101は、高分子凝集剤供給路101a、無機凝集剤供給路101b、洗浄水供給路101cの3つに供給路に区画され、その上流端でそれぞれ供給口102a、102b、102cが設けられ、それぞれの供給配管を接続できるようになっている。
【0030】
高分子凝集剤供給路101aはそのまま内管100に沿って延びて、処理液供給室26で開口しており、処理液の周囲から供給室内に供給されて処理液と攪拌混合される。一方、無機凝集剤供給路101bは、処理液供給管41が処理液供給室26に達する上流側において、図5に示すように、開口して回転胴21に内周面に沿って画成された無機凝集剤の軸方向流路(図の実施形態では4本)105に通じる半径方向流路104に開口連通しており、後述するようにボウル内の遠心脱水される脱水ケーキの表面及び内部に無機凝集剤を添加するように構成されている。
【0031】
回転胴21の内部には、前述のように処理液供給室26が上流側よりに区画形成され、その下流側のストレート部の内部区間が無機凝集剤添加区域107となっており、テーパー部には無機凝集剤は達しないように構成されている。本発明では、無機凝集剤が効率的に処理液と混合し、かつ効果的に凝集効果を高めて脱水率の向上に寄与すると共に、高脱水率であっても脱水ケーキのボールからの排出を阻害することなく、良好な排出を可能にするために、次のような工夫を施した。
【0032】
無機凝集剤は、処理液の水分が多い状態では効果が小さいので、本実施形態では処理液に遠心力の作用とスクリューコンベアの押圧力により脱水効果が生じ始める前記供給室より下流側からテーパー部に至るまでのストレート部の回転胴21の胴壁に、図6に示すように、前記無機凝集剤の軸方向流路105に通じる複数個のオリフィス108及び胴壁からボウル内に延びて突出するノズル109を設け、回転胴壁のオリフィス108から無機凝集剤を遠心場で脱水処理中の脱水ケーキ14の表面に後添加すると共に、ノズル109により脱水ケーキ14の内部に後添加することによって、無機凝集剤が脱水ケーキに均一に効果的に添加される。無機凝集剤の後添加位置は、処理液供給口27からケーキ排出側に向かってスクリューコンベアの螺旋翼22の1ピッチ〜2ピッチの区間が望ましいので、前記オリフィス及びノズルはストレート部のその区間に設けるのが望ましい。
【0033】
本発明者の実験によれば、無機凝集剤の添加はオリフィスによる回転胴の内周面から脱水ケーキ表面だけ、又はノズルにより内部への添加のみの場合と比べて、上記のようにオリフィスとノズルを組み合わせることにより添加効果が向上することがわかり、本実施形態では上記の位置にオリフィスとノズルを配置した。また、圧搾力が増大するテーパー部で凝集剤を添加すると、脱水ケーキが固まってしまいスクリューで押圧が困難でなるため、テーパー部では無機凝集剤を添加しないで、ストレート部のみで無機凝集剤を添加することとした。
【0034】
上記の装置において、脱水処理する処理液は、処理液供給管41から処理液供給室26に入り、供給口27から環状空間17内に供給され、ボウル10及びスクリューコンベア20の回転の遠心力で固液分離されながら螺旋翼22により前端に向け搬送されるようになる。そして、分離された液体分である分離液は、後端壁の分離液排出口13から機外に排出される。一方、脱水ケーキは螺旋翼22によってボウル10の前端方向へと掻き寄せられて行きながら、さらに遠心力による分離作用を受けて、残留液分の分離が進み、その分離液は分離液排出口13より排出される。
【0035】
そして、本発明では、スクリューコンベア20の外周面は脱水ケーキ排出側に向けてテーパー構造となっているので、脱水ケーキは徐々に高遠心力場に移動され、且つ脱水ケーキ排出経路側に向かって脱水ケーキの通過面積が漸減するため、排出抵抗力及び体積減少力が増加し、脱水ケーキの含水率の更なる低下が可能となった。より詳細には、テーパー部の脱水ケーキの体積が徐々に減少するため圧搾効率が向上し、押し込み圧を有効に使用できる。その結果、負荷圧が軽減可能となり消費電力の低減が図れる。さらに、脱水分離液は、回転胴の脱水ケーキ排出側から分離液排出側に向かっての移動が容易となり、脱水ケーキへの分離液混入がなく低含水率の脱水ケーキのみの排出が可能となった。さらに、高脱水ケーキ保持容量が増え、上側溢流時の固形側への漏水防止効果が期待できる。さらに、また脱水ケーキ搬送力と液圧を押し込み圧として有効に利用できることから運転中の装置内閉塞が大幅に軽減される。
【0036】
以上のように、本実施形態の直胴型遠心脱水装置では、テーパー角度が30゜未満、10゜以上であり、脱水ケーキ供給口からストレート部の距離L1とテーパー部の距離L2の比L1/L2=1.2倍以上であると、従来の直胴型遠心脱水装置に比べて2%以上の含水率低下(即ち脱水率の向上)が得られ、さらに高分子凝集剤と機内のストレート部での無機凝集剤添加の二液添加法によって、2%以上の含水率低下が得られた。
【0037】
さらに、より脱水率を向上させるために、上記実施形態についてさらに研究した結果、上記実施形態のテーパー形状の場合、内半径側の高水分の脱水ケーキがテーパー部を移動して、ボウル底部の低含水率脱水ケーキと混合して排出されるためケーキ含水率の低下が困難な脱水ケーキ種が存在することがわかった。例えば、混合生汚泥の場合、固形分の脱水は限界値まで充分脱水できるが、テーパー面に達した分離液が固形分の表面に付着してその状態で排出されるため、結果的に脱水率の低下を阻害することになる。
すなわち、テーパー部先端に向けて高含水率脱水ケーキのショートパスが生じる。したがって、この高含水率脱水ケーキのショートパスを封じることによって、さらに脱水率を高めることが期待できる。ショートパスを防止する方法について、さらに研究した結果、以下に示すような方法が有効であることが確認された。
【0038】
図7は、ショートパスの発生を防止した本発明の他の実施形態であり、以下の実施形態では、前記実施形態と同様な部分には同様な符号を付し、異なる要部のみについて説明する。
本実施形態では、回転胴21のテーパー部25を2段構造にしたことに特徴を有する。即ち、1段目は緩やかなテーパー部25a(傾斜角α1=5〜15゜)とし、2段目は1段目よりも急勾配なテーパー部25b(傾斜角α2=20〜60゜)としたものである。テーパー部25をこのように2段構造にすることによって、1段目の緩やかなテーパー部25aで脱水ケーキが圧搾される。そして、2段目の急勾配のテーパー部25bにより内半径の高含水率脱水ケーキは、ボウル底部のケーキ排出口に移動することなく緩やかなテーパー部25を分離液側に移動する。その結果、排出路から排出された機外脱水ケーキの含水率を、従来の直胴型と比較して約3〜4%低下させ得ることが確認できた。
【0039】
図8は、ショートパスの発生を防止した本発明のさらに他の実施形態である。
本実施形態では、テーパー部25の入口(回転胴外周面の形状変換点)に高さ10mm程度のリング等で構成した堰29を設けることによってショートパスの発生を防止したものである。このようにテーパー部25の入口に段差を形成して堰29を設けることによって、高含水率脱水ケーキがテーパー部にショートパスすることを有効に防止することができた。なお、堰は本実施形態の場合に限らず、テーパー部の途中に形成することも可能である。
【0040】
図9は、ショートパスの発生を防止した本発明のさらに他の実施形態である。
本実施形態の遠心脱水装置では、回転胴21のテーパー部25の螺旋翼22のテーパー部表面と螺旋翼22の接続部に、図10に模式的に示すように一部に切り欠き30を設けることによって、螺旋翼22によって高含水率脱水ケーキがテーパー部25を押し上げて移動することを防止したものである。それにより、テーパー領域の内周側脱水ケーキを搬送させないようにし、高含水率脱水ケーキの排出側へのショートパスを有効に阻止することができる。
【0041】
以上の図7〜10に示す各実施形態は、有効に高含水率脱水ケーキのショートパスを防止することができるが、さらにこれらの手段を複合的に有することにより、より効果的にショートパスを防止することができる。
図11は、図7に示す実施形態に図8に示す実施形態のショートパス防止手段を付加したものであり、前記実施形態と同様な箇所に同一符号を付して詳細な説明は省略する。図12は、同様に図7に示す実施形態に図9に示す実施形態のショートパス防止手段を付加したものであり、前記実施形態と同様な箇所に同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0042】
図1に示す実施形態の遠心脱水装置を使用して、無機凝集剤と高分子凝集剤の添加方法を変えた場合のケーキ含水率に及ぼす影響を調べた。なお、以下に示す実施例及び比較例とも回収率96〜98%の範囲内で行なった。
実施例1:
処理液:消化汚泥
無機凝集剤:ポリ硫酸第二鉄
高分子凝集剤:両性高分子凝集剤
添加方法:表1に示すように、高分子凝集剤を添加率0.92〜1.80DS%の間で変化させて処理液供給室に供給して処理液と攪拌混合させ、ポリ硫酸第二鉄を前記オリフィス及びノズルから常に一定量(添加量19.0L/h)添加して、そのときのケーキ含水率の変化を調べた。その結果、表1及び図13のグラフに示す線図aの結果が得られた。該結果から本実施例では、ケーキ含水率高分子凝集剤添加率0.92DS%で約73.4%で、1.55%で約71.6%、1.80%で71.1%というきわめて低い含水率になり、脱水効果が極めて高いことが確認された。
【0043】
比較例1:
実施例1と同様な処理液に対して、実施例1おける高分子凝集剤のみを添加して、その添加率とケーキ含水率の変化を調べた。その結果を実施例1と共に図13に線図cとして示す。
比較例2
実施例と同様な処理液に対して、表1に示すように、同様な両性高分子凝集剤とポリ硫酸第二鉄とを従来の2液法と同様に、前添加(処理液に予め攪拌槽又は配管を通して、遠心脱水前の処理液に攪拌混合)して、無機凝集剤は実施例1と同様に一定量とし、高分子凝集剤の添加率実施例1と同様に変化させた。その結果、実施例1と共に表1および図13に線図bとして示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1、比較例1、2の結果から明らかなように、実施例1の場合が高分子凝集剤の略同じ添加率に対して、ケーキ含水率が低下していることがわかる。しかも、無機凝集剤を前添加で行なう比較例2の場合は、無機凝集剤、高分子凝集剤とも実施例1と略同じ量添加しても実施例の方が、約2〜3%含水率を低下している結果が得られた。また、高分子凝集剤のみを添加する比較例1に比べれば、実施例は約6%以上も低下している結果が得られた。
以上の実施例から、本実施形態の装置および薬剤添加方法が従来技術と比較して格別な脱水効果があることが確認された。また、実施例及び比較例の何れの場合も脱水ケーキの排出不良を起こすことなく、高脱水率の場合も良好に排出することができ、本実施形態の遠心脱水装置が遠心脱水機能に優れていることが確認された。
【0046】
次に、本発明の直胴型遠心装置の回転胴が径大方向にテーパー部を有することによる脱水ケーキの含水率低下を従来の直胴型遠心脱水装置と比較して確認するために実施例2及び比較例3に示す次のような実証試験を行った。
[実施例2および比較例3]
実施例2−1〜2−3として図1に示す実施形態の遠心脱水装置において、α=10゜、L1/L2=1.5/1(実施例2−1)、L1/L2=1.2/1(実施例2−2)、L1/L2=1/1(実施例2−3)である試験機をそれぞれ製作して、当該装置により処理液として混合生汚泥の脱水処理を高分子凝集剤の前添加のみで行い、それぞれについて機内脱水率分布状態を調べた。
また比較例3として従来の直胴型遠心脱水装置を使用して、同様な混合生汚泥の脱水処理の実証試験を同様に行って機内脱水率分布状態を調べた。
機内脱水率の分布状態の測定は、それぞれ遠心脱水装置の定常運転時に運転を非常停止させて完全停止後、装置を分解してスクリューコンベアの軸方向断面におけるスクリュー間に堆積している機内堆積ケーキを採取して、それぞれのスクリューピッチ毎の外周側・真中及び内周側の3点におけるケーキ含水率を測定することによって行った。その結果を図14に示す。
【0047】
図14のグラフは、前記のように測定した実施例2−1〜2−3及び比較例3の機内脱水率の分布状態を示し、ピッチごとの3点の平均値を示している。その結果、従来の直胴型遠心脱水装置である比較例の場合は、図示のように機内含水率は排出側端部に向けてほぼ直線的に低下し、排出側端部の含水率は、略80.3%まで低下した。これに対し、実施例における機内含水率は、何れもテーパー起点に向けて比較例と比較して高い低下勾配で減少し、テーパー部で含水率の低下勾配はやや減少するが、含水率は排出部まで減少を続けている。実施例のうちL1/L2=1.5/1である実施例2−1が最も含水率の低下が見られ、78.0%まで低下し、従来の直胴型遠心脱水機に比べて約2%以上も含水率の低下が観測された。その理由は、回転胴の外周面下流側をテーパー形状にすることにより、排出抵抗力および体積減少力が増加することにより、ストレート部でテーパー起点に向けて含水率の低下率が比較例と比較して高い勾配で増大したと考えられる。したがって、回転胴の下流部をテーパー形状にすることにより、脱水ケーキの含水率の更なる低下が可能になることが確認された。また、実施例2におけるL1/L2の含水率への影響については、実施例2−1が実施例2−2、2−3よりも押し込み圧が充分確保でき、含水率低下により効果的であることが確認された。なお、図14のグラフにおいて「供給部」とは、図1に示す実施形態の直胴型遠心脱水装置において供給口27に相当する位置を示し、「排出部」とは脱水ケーキの排出経路の入口53に相当する位置を示している。
【0048】
[実施例3、比較例4]
実施例2−1で採用した遠心脱水装置において、実施例2の場合と同様に処理液として混合生汚泥の脱水処理を行った場合の遠心効果の影響を調べた。その結果を図15に示す。図15は、実施例3−1および比較例4の遠心効果を共に2000Gのもとで2m/hの処理を回収率98%以上で行った場合の脱水ケーキの含水率と、実施例3−2では2500Gの遠心効果の基で2〜5m/hを処理した場合の脱水ケーキ含水率と処理量との関係を示し、図16は、遠心効果と脱水ケーキ含水率との関係を示している。なお、図15、図16の各グラフには、そのときの回収率も併せて表示してある。また、図15には、後述する実施例5の結果も併せて表示してある。
実施例3−1の装置で混合生汚泥を処理量2m/hを処理した場合の脱水ケーキの含水率は遠心効果2000Gで69.0%であった。これに対して、比較例1の装置で同じく混合生汚泥を処理量2m/hを遠心効果2000Gで処理した場合の脱水ケーキの含水率71.8%であった(実施例3−1、比較例4)。
即ち、実施例3−1が比較例4よりも約2%含水率を低下させることができ、本発明の有効性が確認できた。そして、実施例3−2は、遠心効果2500Gで行った場合の処理量と脱水ケーキ含水率の関係を示しているが、処理量の増大により脱水ケーキ含水率は相関的に増大しており、この傾向は遠心効果2000Gの場合も見込まれるので、逆に実施例2−1の装置で比較例2の装置と同じ含水率71.8%の含水率で脱水処理をするとしたら、図15のグラフに示すように、実施例の装置では5m/hの処理が可能となることを示し、実施例3−1では比較例4の2〜2.5倍の処理量が見込まれる。また、図16のグラフに示すように、同等含水率では1/2程度の遠心効果の低下が認められ、その分装置負荷の低減が可能となる。これらのことから、実施例は、比較例と比較して小型大容量化が可能であり、比較例と比較して大幅なコストの低減および省電力化が可能である。
【0049】
[実施例4および比較例5]
実施例2−1と同様な装置(L1/L2=1.5/1)において、テーパー角度を10゜(実施例4−1)、30゜(実施例4−2)、40゜(実施例4−3)に変更した装置を試作して、処理液として嫌気性消化汚泥の脱水処理を行った。実証試験に供した処理液である嫌気性消化汚泥の脱水ケーキ濃度(TS)は1.82%、有機物濃度(VTS)は73.8%であった。実証試験は、遠心効果2500G、回収率99%以上の基で行い、処理量をそれぞれ2.0〜5.0m/hに1.0m/hづつ増やして4段階で行った。そのときの脱水ケーキの含水率は、それぞれ図17に示すとおりであった。
【0050】
図17から明らかなように、同一遠心効果のもとで処理量が増大することによって脱水ケーキの含水率は増大するが、処理量に関わらず実施例が比較例と比較してケーキ含水率の低下が認められた。特に、テーパー角度が10゜である実施例4−1の場合は、比較例と比較して2.0〜2.7%程度の低下が認められ、顕著な効果が認められた。なお、回転胴のテーパー角度は、実施例のうち小さい方が脱水ケーキ含水率低下傾向が認められる。以上のように、本発明に係る直胴型遠心脱水装置によれば、嫌気性消化汚泥でも混合生汚泥の場合と同様な効果が認められ、処理液の種類によらず脱水に効果的であることが確認された。
【0051】
[実施例5]
図7に示すように回転胴のテーパー部を2段テーパーにした場合の効果を確認するために、1段目のテーパー角度10゜、2段目のテーパー角度30゜の直胴型遠心脱水装置を製作し、該装置における遠心効果2500Gの基における処理量−脱水ケーキ含水率の関係を調べた。その結果、表2及び図15に示す結果が得られた。なお、処理液(汚泥種)は実施例3−1及び比較例4の場合と同様に、混合生汚泥である。
【表2】

上記表で明らかなように、2段テーパーにすることによって、実施例5は1段テーパーの実施例3−1に比べて約1%程度含水率を低下させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の直胴型遠心脱水装置は、下水処理や工業排水処理、化学・食品工業用諸生産品の脱水処理等に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 直胴型遠心脱水装置 10 ボウル
11 脱水ケーキ排出室壁 12 ボウル後端壁
13 分離液排出口 14 脱水ケーキ
15 周壁内面 17 環状空間
18 ボウル側絞り通路部材 19 ケーシング
20 スクリューコンベア 21 回転胴
22 螺旋翼 23 回転軸
24 ストレート部 25 テーパー部
26 供給室 27 供給口
28 逆テーパー面 29 堰
30 切り欠き 35 下流側の中空軸
40 上流側の中空軸 40 下流側の中空軸
41 処理液供給管 50 脱水ケーキ排出室
52 脱水ケーキ排出経路 53 入口
54 出口 60 分離液排出室
70 駆動装置 80 ベースフレーム
90、95 軸受部
100 内管 101 外管
101a 高分子凝集剤供給路 101b 無機凝集剤供給路
101c 洗浄水供給路 102a〜102c 供給口
104 半径方向流路 105 軸方向流路
108 オリフィス 109 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転する直胴型のボウルと、該ボウル内で該ボウルと同軸に回転速度差を有して同方向に回転する回転胴の外周に螺旋翼を巻装してなるスクリューコンベアを有する直胴型遠心脱水装置により処理液を固液分離して固形物及び分離液の回収を行なう直胴型遠心脱水装置による遠心脱水方法において、
前記遠心脱水装置は、前記ボウルの内周壁が前記ボウルの回転軸に沿って延在する円筒形を形成し、且つ前記スクリューコンベアの前記回転胴の外周面が、上流側がストレートな円周面からなるストレート部と、下流側が前記ストレート部から径大方向に傾斜したテーパー部とから構成され、
前記処理液は、前記回転胴の内部に形成された処理液供給室を介して前記ボウルと前記スクリューコンベアとの間の環状空間に供給され、前記ボウル及び前記スクリューコンベアの回転の遠心力で固液分離されながら分離液は分離液排口より排出され、脱水ケーキは遠心水頭圧と前記スクリューコンベアの搬送力とにより脱水ケーキ排出経路へ押出してなり、
前記脱水ケーキは、前記脱水ケーキ排出経路側に向けて前記テーパー部によって、徐々に高遠心力場に移動させ、かつ脱水ケーキ排出路側に向かって脱水ケーキの通過面積を漸減させて脱水することを特徴とする直胴型遠心脱水装置による遠心脱水方法。
【請求項2】
前記回転胴の処理液供給口から前記テーパー部開始点までのストレート部の軸方向長さL1と、前記回転胴のテーパー部の軸方向長さL2との比L1/L2が1.2〜5.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の遠心脱水方法。
【請求項3】
前記処理液供給室に処理液と高分子凝集剤を供給する処理液供給工程、前記処理液供給室から前記高分子凝集剤が添加された処理液が回転胴に形成された供給口を介してボウル内周の環状空間に供給され、遠心力により脱水されながら前記スクリューコンベヤにより搬送される前記脱水ケーキに、前記スクリューコンベアの回転胴内方より無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程を備えている請求項1又は2に記載の直胴型遠心脱水装置による遠心脱水方法。
【請求項4】
前記無機凝集剤の供給工程は、前記スクリューコンベアのストレート部の前記供給口から下流側と前記テーパー部上流端との間で、前記脱水ケーキに添加することを特徴とする請求項3に記載の遠心脱水方法。
【請求項5】
前記無機凝集剤の添加は、脱水ケーキ表面と脱水ケーキ内部への添加の組合せにより行なう請求項4に記載の遠心脱水方法。
【請求項6】
一方向に回転する直胴型のボウルと、該ボウル内で該ボウルと同軸に回転速度差を有して同方向に回転する回転胴の外周に螺旋翼を巻装してなるスクリューコンベアを有する直胴型遠心脱水装置において、
前記ボウルの内周壁が前記ボウルの回転軸に沿って延在する円筒形を形成し、且つ前記スクリューコンベアの前記回転胴の外周面が、前記上流側がストレートな円周面からなるストレート部と、前記下流側が前記ストレート部から径大方向に傾斜したテーパー部とから構成され、前記テ―パー部のテーパー開始部の傾斜角が5乃至30゜の範囲内であることを特徴とする直胴型遠心脱水装置。
【請求項7】
前記回転胴の処理液供給口から前記テーパー部開始点までのストレート部の軸方向長さL1と、前記回転胴のテーパー部の軸方向長さL2との比L1/L2が1.2〜5.0の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の直胴型遠心脱水装置。
【請求項8】
前記回転胴のストレート部の内周面に無機凝集剤を供給する無機凝集剤供給経路を有し、且つ前記ストレート部には、前記無機凝集剤供給経路と連通し前記回転胴を貫通して無機凝集剤添加用のオリフィスとボウルの環状空間内に突出する無機凝集剤添加用ノズルが設けられている請求項6又は7に記載の直胴型遠心脱水装置。
【請求項9】
前記テーパー部が、傾斜角の異なる2段構造をなし、1段目の傾斜角が緩やかな傾斜角で、それに続く2段目が前記1段目の傾斜角より大きい急勾配の傾斜角となっていることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の直胴型遠心脱水装置。
【請求項10】
前記ストレート部と前記テーパー部との境界部及び/又はテーパー部の途中に段差面となっている堰が形成されていることを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の遠心脱水装置。
【請求項11】
前記テーパー部に配置された前記螺旋翼の回転胴への付け根部の一部に切り欠けを設けてなることを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の遠心脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−187570(P2012−187570A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232090(P2011−232090)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(505279215)寿工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】