説明

遠心装置用プレート、及び遠心装置

【課題】 液体試料を遠心力によって移動させて、液体試料を試料保持部内で定量化を行い、確実に一定量の液体試料を流路内に流入する遠心装置用プレート、及び遠心装置を提供する。
【解決手段】 試料保持部を持つプレートに液体試料を注入後、遠心力によって前記液体試料の移動を行うプレート101において、遠心された際に定量化を行う定量部110を形成するための壁109を試料保持部107の円心方向へ覆いかぶさるように設け、液体試料を流路108に流入するために必要な圧力をP1、遠心を行った際に流路108にかかる圧力をP2とした場合に、P1>P2となる回転数で遠心を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAやタンパクその他の生体サンプルを緩衝剤中で移動させて得られる輸送反応を検出して生体サンプルを判別するための液体試料の定量を行い、一定量の液体試料を流路内に充填する遠心装置用プレート、及び遠心装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な生体サンプルを考えた場合、大きくはDNAとタンパクが存在している。そして、近年、分子生物学の急速な進展によって、様々な疾患において遺伝子の関与がかなり正確に理解されるようになり、遺伝子をターゲットにした医療に注目が集まるようになってきている。
【0003】
DNAに関しては、現在SNPs(single nucleotide polymorphismの略で「1塩基多型」と一般に訳されており、遺伝子における1暗号(1塩基)の違いの総称である。)が注目されている。その理由としては、SNPsの分類により、多くの疾患に対する罹患率や各個人の薬剤に対する効果や感受性を予測でき、さらには、地球上に親子兄弟といえども全く同じSNPsを持つ人間は絶対に存在しないことから個人の完全な特定ができると考えられているからである。
【0004】
現在SNPsを調べる方法としては、DNAの塩基配列を端から直接読んでいくシーケンシング(塩基配列の決定)が最も一般的に用いられている。そして、前記シーケンシングを行う方法としては、いくつかの報告があるが、もっとも一般的に行われているのは、ジデオキシシーケリング(Sanger法)である。なお、シーケンシングは、このSanger法を含め何れの方法においても、分離能の高い変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動か、キャピラリー電気泳動によって1塩基長の長さの違いを分離・識別する技術が基になって成り立っている。
【0005】
また他の方法として、アフィニティリガンドキャピラリー電気泳動法がある。
アフィニティリガンドキャピラリー電気泳動は、分子間親和力、とくに生態系における特異的親和力(酵素と基質、抗原と抗体の親和力等)を利用して分離に特異性を持たせるものであり、具体的には、キャピラリー管中の泳動溶液に、塩基配列を特異的に認識するアフィニティリガンドを添加しておき、試料を電気泳動させると、試料混合物中で相互作用する分子種だけが移動速度に変化を生じることに着目して分析を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、タンパク質は、細胞、組織、生体液中に存在し、生体活動の調節、細胞へのエネルギー供給、重要な物質の合成、生物構造体の維持、さらには細胞間でのコミュニケーションや細胞内情報伝達に関与している。現在では、タンパク質が様々な環境や、相互作用する他のタンパク質の存在、タンパク質が受けた修飾の程度や種類に応じて、複数の機能を有することが明らかになってきている。
【0007】
タンパク質は、20種類のアミノ酸が遺伝子の指示(配列情報)により順番につながることでつくられており、その種類は数千万種と言われるが、その遺伝子の配列がわかれば、どのアミノ酸がどういう順番でつながってできているかの情報を得ることができる。生物の遺伝子(ゲノム)から作られるタンパク質の一そろいのセットは、プロテオームと呼ばれるが、ヒトゲノムの塩基配列解読が終わった今、プロテオームの解析が盛んに進められている。
【0008】
そして、このようなタンパク質の機能解析研究としては、同定やキャラクタリゼーションのみならず、生化学アッセイやタンパク質間相互作用研究、タンパク質ネットワーク、または細胞内外のシグナリング解明なども行っていく必要がある。このタンパク質機能の研究には、多方面の技術が使用され、酵素アッセイ、酵母 two−hybrid アッセイ、クロマトグラフィーによる精製、情報ツールとデータベース等があるが、特に、電気泳動によるたんぱく質の判別は重要な手法である。そして、電気泳動のように、キャピラリー管中のサンプル、分析物、緩衝剤、及び試薬等の液体を移動させた際に得られる輸送反応を検出して、該サンプルの分析、判別、判定等を行う場合の前記液体の輸送及び方向付けに関しては、さまざまな報告がある(例えば、特許文献2〜特許文献4)。
【特許文献1】特開平7−311198号公報
【特許文献2】特表2000−513813号公報
【特許文献3】特表2001−523341号公報
【特許文献4】国際公開第2005/064339号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、DNAやタンパクその他の生体サンプルを緩衝剤中で移動させて得られる輸送反応を検出して生体サンプルを判別するための液体試料を遠心する際に、液体試料は遠心装置用プレートにピペッター等により注入されるが、注入される液体試料の量にはバラツキが生じるため、確実に一定量を流路に充填することは難しく、流路に充填される液体試料の量に過不足が生じるという問題がある。
【0010】
また、特許文献4に記載の方法では、プラットホームに微細チャンネルを埋設し、該プラットホームの回転速度を変化させることで、該回転から生じる向心力を変化させて液体試料を移動させているが、この方法では、1回目の遠心により液体試料は流路に流入してしまうため、液体試料の入れ忘れや不足した場合に、流路が使用できなくなるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、液体試料を遠心力によって移動させて、液体試料を試料保持部内で定量化を行い、確実に一定量の液体試料を流路内に充填することができる遠心装置用プレート、及び遠心装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1にかかる遠心装置用プレートは、試料保持部に液体試料を注入した後、遠心力によって前記液体試料の移動を行う遠心装置用プレートにおいて、前記試料保持部は、遠心された際に前記液体試料を定量化する定量部を試料保持部の最外周部の側壁から円心方向に向って突出する壁で形成し、前記試料保持部の前記定量部の最外周部から前記プレートの遠心方向にのびる流路を設け、前記液体試料は、前記試料保持部内の前記壁の位置よりも、前記プレートの内周側の位置に注入されることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2にかかる遠心装置は、請求項1に記載の遠心装置用プレートを用いる遠心装置において、前記流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3にかかる遠心装置は、請求項2に記載の遠心装置において、前記流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心を行った後に一旦停止し、P1<P2となる回転数で再び遠心を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4にかかる遠心装置用プレートは、請求項1に記載の遠心装置用プレートにおいて、前記壁は、前記試料保持部の円心方向へ覆いかぶさるようにせり出し、注入された液体試料は、遠心されることで定量化する液体試料を前記壁の下部へ移動し、定量化しない液体試料を前記壁の上部へ分離することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5にかかる遠心装置用プレートは、請求項1に記載の遠心装置用プレートにおいて、前記流路が前記壁の下部の定量部に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6にかかる遠心装置用プレートは、請求項1に記載の遠心装置用プレートにおいて、前記遠心装置用プレートの前記試料保持部に対し、プレートの重心方向の位置に、前記液体試料を注入する試料注入部を設け、前記試料保持部の最外周部から前記プレートの遠心方向にのびる第1の流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記第1の流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心した際に前記液体試料が前記試料保持部へ流入する第2の流路を、前記試料注入部の最外周部から前記試料保持部にのびる位置に設け、前記試料保持部は、前記液体試料が前記第2の流路から前記試料保持部に流入する流入口を設け、前記流入口は、遠心された際前記液体試料が前記定量部に流れ込み、前記試料保持部を左右に分割するように1枚または複数枚の壁を前記プレートの遠心方向の位置に設け、遠心することで、定量化する液体試料を前記第1の流路の形成された試料保持部の最外周部に移動し、定量化しない液体試料を前記定量化する液体試料が移動した側と前記壁を隔てた反対側に分離することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項7にかかる遠心装置用プレートは、請求項4から6のいずれかに記載の遠心装置用プレートにおいて、前記壁は、前記液体試料にぬれやすい材料、または前記液体試料にぬれやすい処理を行った材料であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項8にかかる遠心装置用プレートは、請求項7に記載の遠心装置用プレートにおいて、電流値に基づき前記液体試料の有無を確認する1対または複数対の正電極と負電極を、前記定量部内に設けることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項9にかかる遠心装置用プレートは、請求項8に記載の遠心装置用プレートにおいて、電流値に基づき前記流路に流入するのに必要な量の前記液体試料が保持されているか確認する1対の正電極と負電極を、前記壁の最内周上に設けることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項10にかかる遠心装置用プレートは、請求項7に記載の遠心装置用プレートにおいて、電流値に基づき保持されている前記液体試料の量を測定する複数対の正電極と負電極を、前記定量部内の前記壁の最内周部から最外周部にかけて設けることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項11にかかる遠心装置用プレートは、請求項7に記載の遠心装置用プレートにおいて、電流値に基づき保持されている前記液体試料の量を測定する1対の正電極と負電極を、前記定量部内の前記壁の最内周部から最外周部にかけて設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の遠心装置用プレート、及び遠心装置によれば、複数のパターンがプレート上に放射状に形成され、前記試料保持部に液体試料を注入した後、遠心力によって前記液体試料の移動を行う遠心装置用プレートにおいて、前記試料保持部は、遠心された際に前記液体試料を定量化する定量部を試料保持部の最外周部の側壁から円心方向に向って突出する壁で形成し、前記試料保持部の前記定量部の最外周部から前記プレートの遠心方向にのびる流路を設け、前記液体試料は、前記試料保持部内の前記壁の位置よりも、前記プレートの重心方向の位置に注入されるようにし、前記流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心することにより、注入された液体試料の量にかかわらず液体試料の定量化を行うことができる。
【0024】
また、本発明の遠心装置用プレート、及び遠心装置によれば、流路に液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心を行った後に一旦停止し、P1<P2となる回転数で再び遠心を行うことにより、注入された液体試料の量にかかわらず液体試料の定量化を行い、確実に一定量の液体試料を流路に充填することができる。
【0025】
また、本発明の遠心装置用プレート、及び遠心装置によれば、定量部に電極を設け、電流値を測定することにより、液体試料の有無および量の確認を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、図1〜図6を用いて、本発明の実施の形態1による遠心装置用プレート、及び遠心装置について説明する。
本発明の実施の形態1では、本遠心装置用プレートが、注入された液体試料を予備回転により定量化し、液体試料は本回転により流路へ流入するものである。
【0027】
まず、本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートの流路形成面を示す図である。
図1において、本実施の形態1によるプレート101には、パターン102が8個放射状に形成されている。
【0028】
図1に示すように本実施の形態1におけるプレート101の外形は8センチ四方の正方形で4角のうち3角は円の一部を形成するよう角を丸くしたR(アール)が設けられ、残りの1角は面取りされている。
【0029】
プレート101は更に穴104を設けているが、これは外形を非対称にしてパターンの場所を特定できるようにされている。プレート101の材料はアクリル系の樹脂を使用し厚みは2mmである。流路形成面には溝が形成され、さらに厚さ50μmのアクリル製フィルムを接着することで密閉流路が形成されている。また、重心105は本プレートの重心であり、重心105を中心に本プレートを回転部に固定するための回転部固定用穴103を設けている。
【0030】
次に、パターン102について説明する。例えば、図1のパターン102は、2つの試料保持部107が管により連結された構成とする。
図2は、図1に示すプレート101に形成されたパターン102の詳細形状を示す図である。図3は、パターン102のA−A断面図である。
【0031】
パターン102には液体試料が注入される試料注入口106と、注入された試料を一旦保持するための試料保持部107と、試料保持部107の最外周部から外周方向にのびる流路108が設けられている。
【0032】
図3に示すように、試料保持部107には液体試料にぬれやすい処理を行った壁109が試料保持部107の最外周部の側壁から円心方向へ覆いかぶさるようにせり出しており、試料保持部107は壁109の上部と下部に分割されている。また、流路108は壁109の下部より形成されており、定量部110は遠心された際に液体試料を定量化する試料保持部107の最外周部の側壁から円心方向へ向って突出する壁109の下部になっている。ここで、壁109は液体試料にぬれやすい材料であるようにしてもよい。
【0033】
また、定量部110に正電極111および負電極112が設けられている。正電極111は正電圧印加部113と、負電極112は負電圧印加部114とそれぞれ接続されており、正電圧印加部113に正電圧、負電圧印加部114に負電圧を印加することにより、液体試料の有無および量を確認することができる。ここで、正電圧印加部113と負電圧印加部114を流路形成面に設ける場合、正電極111および負電極112は壁109を形成するプレートに設け、正電圧印加部113と負電圧印加部114を裏面に設ける場合は正電極111および負電極112は密閉流路を形成するフィルムに設ける。
【0034】
次に、本発明の実施の形態1のプレート101に設ける正電極111および負電極112のパターンについて説明する。
【0035】
本実施の形態1のパターン102では、壁109の最内周部から最外周部にかけて壁109の最内周部上を含めて複数対の電極が設けられている。この場合、試料保持部107に保持される液体試料の量により、電流の流れる電極の本数が変化するため、電圧を印加し、電流値を測定することにより、試料の有無および量を確認することができる。
【0036】
次に、図4を用いて、本発明の実施の形態1による遠心装置の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態1による遠心装置の構成図である。
【0037】
本実施の形態1による遠心装置は、プレート101内の液体試料を移動させるためのモータ10と、該モータ10によりプレート101を搭載可能な回転駆動するプレートトレイ20と、プレート101に対して電圧印加を行う電圧印加手段30と、本遠心装置100の動作を制御する制御基板40などを備える。
【0038】
また、電圧印加手段30は液体試料の有無および量を電流値により確認するための電極プローブ31a、31bを備えている。ここで、電極プローブ31a、31bはそれぞれプレート101上に複数対の電極を設ける場合は電極対の数設けられる。また、本実施の形態1ではプレート101上にパターン102が8つ設けられているため、電極プローブ31a、31bはそれぞれ8つずつ設けられている。さらに多くのパターン102が設けられる場合はこの限りではない。
【0039】
また、本実施の形態1では電圧印加手段30はトレイ20の上側に設けているが、正電圧印加部113および負電圧印加部114の設けられている面次第では、例えば、図3に示す壁109の下面に正電圧印加部113および負電圧印加部114を設けた場合は、電圧印加手段30はトレイ20の下側に設けてもよい。
【0040】
また、電圧印加手段30のベースである電圧印加手段ベースプレート32上では、プレート101に電圧を印加するための電極プローブ31a、31bを電気的に接続して固定した電極基板ユニット33を、プレート101に対して離間或いは接触動作を行わせるために、DCモータなどの電極駆動手段34と係合された状態で配置されているが、電極プローブ31a、31bの先端部には、圧縮バネなどの電極プローブ内蔵バネ35を備えていることにより、プレート101に対する電極プローブ31a、31bの接触圧力を調整している。
【0041】
さらに、本遠心装置100には、電圧印加手段30の電極プローブ31a、31bに接続されている電源50、装置電源60、当該装置のon、off状態を切り換える電源スイッチ70、該電源スイッチがON状態の際に点灯するLED71、遠心装置内を冷却する冷却ファン80、及び遠心装置100を振動から守り、高さ調節可能なゴム脚90が備えられている。
【0042】
次に、以下液体試料を定量化するまでの具体的操作および動作の一例を図5、6を利用して説明する。
図5、6は、本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートのパターン102に遠心を行った時の液体試料の状態を示す図である。
【0043】
まず、液体試料をプレート内へ注入し、液体試料を定量化するため、予備回転を行う。
【0044】
液体試料はピペッター等により試料剤注入口106から試料保持部107へ注入する。
【0045】
次に、遠心装置100のプレートトレイ20にプレート101を固定し、重心105を軸にプレート101を回転させる。このとき、回転数は液体試料を流路108に流入するために必要な圧力をP1、遠心を行った際に流路108にかかる圧力をP2とした場合に、P1>P2となる回転数、すなわち、液体試料を流路108に流入するために必要な圧力が、遠心を行った際に流路108にかかる圧力よりも大きくなる回転数で遠心を行う。
【0046】
この時、液体試料は、遠心力により外周方向へと移動し、図5に示すように液体保持部内107で同一円周上に液面が保持される。ここで、注入された液体試料の量が定量よりも多い場合、図6に示すように液体試料は遠心力により、壁109の下部へ移動した後、不要な液体試料は壁109の上部へ分離され、下部の定量部110で定量化される。ここで、壁109は液体試料にぬれやすい材料であるため、DNA液体試料は容易に分離することができる。
【0047】
次に、試料を定量化するための予備回転を一旦停止し、試料保持部107の定量部110の液体試料の量の確認を行う。
【0048】
パターン102の正電圧印加部113および負電圧印加部114に電極プローブ31a、31bを押し当て、電圧を印加する。
【0049】
正電極111および負電極112は壁109の最内周部から最外周部にかけて壁109の最内周部上を含めて複数対設けられている。そのため、定量部110に液体試料が保持されていれば、電極に電流が流れ、電流値を測定することにより液体試料の有無を確認することができる。さらに、壁109の最内周上に電極を設けることにより、最内周上に設けた電極の電流の有無により、液体試料の不足を確認することができる。また、電極を複数設け、電流の流れた電極を確認することにより、液体試料の不足量を確認することができる。
【0050】
ここで、印加する電圧は液体試料が酸化還元反応により気泡が発生しない程度である。
【0051】
液体試料の量が不足している場合、不足している量の液体試料を追加注入する。そして、再度回転を行うことで液体試料の定量化を行う。これにより、一定量の液体試料を確実にプレートに充填することができる。
【0052】
次に、予備回転で定量化した液体試料を流路108に流入するため、本回転を行う。
1<P2となる回転数、すなわち、遠心を行った際に流路108にかかる圧力が、液体試料を流路108に流入するために必要な圧力よりも大きくなる回転数で再び遠心を行うことにより、定量化された液体試料は流路108に流入することになる。
【0053】
なお、本実施の形態1では、壁109をプレート表面に対して水平方向に形成する場合について説明したが、プレート表面に対して垂直方向に形成するようにしてもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態1によれば、試料保持部に遠心を行った際に定量化を行う壁を設けて、液体試料が流路に流入しない程度の回転数で遠心を行うことにより液体試料を定量化し、一定量の液体試料を流路に流入することができる。また、電極を設けることにより、液体試料の有無および量を確認でき、不足分を補充することができるため、流路が使用不可能になってしまう心配がないという効果がある。
【0055】
(実施の形態2)
以下図7、8を用いて、本発明の実施の形態2による遠心装置用プレート、及び遠心装置について説明する。
【0056】
なお、本発明の実施の形態2では、実施の形態1と同様の遠心装置を用いており、プレート101上に形成されるパターン102の別の例について説明する。
【0057】
図7は、本発明の実施の形態2による遠心装置用プレートのパターン102の流路形成面から見た図である。
【0058】
パターン102には液体試料が注入される試料注入口115と、注入された液体試料を一旦保持するための試料注入部116と、試料保持部117と、試料注入部116の最外周部から試料保持部117へのびる第2の流路118と、試料保持部117の最外周部から外周方向へのびる第1の流路119が設けられている。
【0059】
ここで第2の流路118は、第1の流路119に液体試料を流入するために必要な圧力をP1、遠心を行った際に第1の流路119に液体試料を流入するために必要な圧力をP2とした場合に、P1>P2となる回転数、すなわち、第1の流路119に液体試料を流入するために必要な圧力が、遠心を行った際に第1の流路119に液体試料を流入するために必要な圧力よりも大きくなる回転数で遠心を行った際に、液体試料が試料保持部117に流入するように設けられている。
【0060】
試料保持部117には液体試料にぬれやすい処理を行った第1、第2の壁120a、120bが円心方向へ左右を分割するよう設けられている。また、第1の流路119は第1、2の壁120a、120bに挟まれた部分より形成されており、定量部121は遠心された際に液体試料を定量化する第1、2の壁120a、120bに挟まれた部分になっている。ここで、第1、2の壁120a、120bは液体試料にぬれやすい材料であるようにしてもよい。
【0061】
また、第2の流路118から試料保持部117へ流入する流入口122は、遠心された際に液体試料が定量部121へ流れ込むように設けられている。
【0062】
また、定量部121に正電極123および負電極124が設けられている。正電極123は正電圧印加部125と、負電極124は負電圧印加部126とそれぞれ接続されており、正電圧印加部125に正電圧123、負電圧印加部126に負電圧124を印加することにより、液体試料の有無および量を確認することができる。ここで、正電圧印加部125と負電圧印加部126を流路形成面に設ける場合、正電極123および負電極124はプレート101の裏面を形成するプレートに設け、正電圧印加部125と負電圧印加部126を裏面に設ける場合は正電極123および負電極124は密閉流路を形成するフィルムに設ける。
【0063】
次に、プレート101に設ける正電極123および負電極124のパターンについて説明する。
【0064】
本発明の実施の形態2のパターン102では、第1、2の壁120aおよび120bの最内周部から最外周部にわたって1対の電極が設けられている。この場合、試料保持部117に保持される液体試料の量により抵抗値が変化するため、電圧を印加し、電流値を測定することにより、液体試料の有無および量を確認することができる。
【0065】
次に、本発明の実施の形態2において以下液体試料を定量化するまでの具体的操作および動作の一例を図8を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態2による遠心装置用プレートのパターン102に遠心を行った時の液体試料の状態を示す図である。
【0066】
液体試料の準備が終わったところで、液体試料をプレート内へ注入し、液体試料を定量化するため、予備回転を行う。
【0067】
まず、液体試料をプレート内へ注入する。液体試料はピペッター等により液体試料注入口115から試料注入部116へ注入する。
【0068】
次に、実施の形態1と同様に遠心装置100のプレートトレイ20にプレート101を固定し、液体試料を第1の流路119に流入するために必要な圧力をP1、遠心を行った際に第1の流路119にかかる圧力をP2とした場合に、P1>P2となる回転数、すなわち、液体試料を第1の流路119に流入するために必要な圧力が、遠心を行った際に第1の流路119にかかる圧力より大きくなる回転数で遠心を行う。
【0069】
このとき、第2の流路118はP1>P2となる回転数で遠心を行った際に液体試料が試料保持部117に流入するように設けているため、液体試料は、遠心力により外周方向へと移動し、液体試料は第2の流路118を通って流入口122より試料保持部117の定量部121へ移動する。そして、液体試料は図8に示すように試料保持部内117で同一円周上に液面が保持される。この時、注入された液体試料は定量部121の容量よりも多い場合は、第1、2の壁120a、120bにより不要な液体試料は定量部121の左右へ分離される。ここで、第1、2の壁120a、120bは液体試料にぬれやすい処理を行っているため容易に分離することができる。
【0070】
次に、液体試料を定量化するための予備回転を一旦停止し、試料保持部117の定量部121の液体試料の量の確認を行う。
【0071】
パターン120の正電圧印加部125および負電圧印加部126に第1、第2の電極プローブ31a、31bを押し当て、電圧を印加する。
【0072】
正電極123および負電極124は第1、2の壁120a、120bの最内周部から最外周部にわたって1対設けられている。そのため、液体試料の量が変化すると電極間の抵抗値が変化するため、電圧を印加して電流値を測定することにより、液体試料およびサンプルの有無および量の確認を行うことができる。
【0073】
ここで、印加する電圧は、液体試料が酸化還元反応により気泡が発生しない程度である。液体試料の量が不足している場合、不足している量の液体試料を追加注入する。そして、再度回転を行うことで液体試料の定量化を行う。これにより、一定量の液体試料を確実にプレートに充填することができる。
【0074】
次に、予備回転で定量化した液体試料を第1の流路119に流入するため、本回転を行う。
1<P2となる回転数、すなわち、遠心を行った際に第1の流路119にかかる圧力が、液体試料を第1の流路119に流入するために必要な圧力より大きくなる回転数で再び遠心を行い、定量化された液体試料は第1の流路119に流入する。
【0075】
なお、本実施の形態2では、壁120a、120bをプレート表面に対して垂直方向に形成する場合について説明したが、プレート表面に対して水平方向に形成するようにしてもよい。
【0076】
以上のように、本実施の形態2によれば、試料保持部に遠心を行った際に定量化を行う壁を設けて、液体試料が流路に流入しない程度の回転数で遠心を行うことにより液体試料を定量化し、一定量の液体試料を流路に流入することができる。また、電極を設けることにより、液体試料の有無および量を確認でき、不足分を補充することができるため、流路が使用不可能になってしまう心配がないという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の遠心装置用プレート、及び遠心装置は、流路へ液体試料を充填する前に、確実に定量化するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートの流路形成面を示す図
【図2】本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートに形成されるパターン102を示す図
【図3】本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートに形成されるパターン102の断面を示す図
【図4】本発明の実施の形態1による遠心装置の構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートのパターン102に遠心を行った時の液体試料の状態を示す図
【図6】本発明の実施の形態1による遠心装置用プレートのパターン102に遠心を行った時の液体試料の状態を示すプレート断面図
【図7】本発明の実施の形態2による遠心装置用プレートに形成されるパターン102を示す図
【図8】本発明の実施の形態2による遠心装置用プレートのパターン102に遠心を行った時の液体試料の状態を示す図
【符号の説明】
【0079】
101 プレート
102 流路パターン
103 回転部固定用穴
104 位置決め穴
105 プレート重心
106 試料注入口
107 試料保持部
108 流路
109 壁
110 定量部
111 正電極
112 負電極
113 正電圧印加部
114 負電圧印加部
115 試料注入口
116 試料注入部
117 試料保持部
118、119 流路
120a、120b 壁
121 定量部
122 流入口
123 正電極
124 負電極
125 正電圧印加部
126 負電圧印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料保持部に液体試料を注入した後、遠心力によって前記液体試料の移動を行う遠心装置用プレートにおいて、
前記試料保持部は、遠心された際に前記液体試料を定量化する定量部を試料保持部の最外周部の側壁から円心方向に向って突出する壁で形成し、前記試料保持部の前記定量部の最外周部から前記プレートの遠心方向にのびる流路を設け、
前記液体試料は、前記試料保持部内の前記壁の位置よりも、前記プレートの内周側の位置に注入される、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心装置用プレートを用いる遠心装置において、
前記流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心する、
ことを特徴とする遠心装置。
【請求項3】
請求項2に記載の遠心装置において、
前記流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心を行った後に一旦停止し、P1<P2となる回転数で再び遠心を行う、
ことを特徴とする遠心装置。
【請求項4】
請求項1に記載の遠心装置用プレートにおいて、
前記壁は、前記試料保持部の円心方向へ覆いかぶさるようにせり出し、
注入された液体試料は、遠心されることで定量化する液体試料を前記壁の下部へ移動し、定量化しない液体試料を前記壁の上部へ分離する、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項5】
請求項1に記載の遠心装置用プレートにおいて、
前記流路が前記壁の下部の定量部に形成されている、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項6】
請求項1に記載の遠心装置用プレートにおいて、
前記遠心装置用プレートの前記試料保持部に対し、プレートの重心方向の位置に、前記液体試料を注入する試料注入部を設け、
前記試料保持部の最外周部から前記プレートの遠心方向にのびる第1の流路に前記液体試料を流入するのに必要な圧力をP1、遠心により前記第1の流路にかかる圧力をP2とした場合、P1>P2となる回転数で遠心した際に前記液体試料が前記試料保持部へ流入する第2の流路を、前記試料注入部の最外周部から前記試料保持部にのびる位置に設け、
前記試料保持部は、前記液体試料が前記第2の流路から前記試料保持部に流入する流入口を設け、前記流入口は、遠心された際前記液体試料が前記定量部に流れ込み、
前記試料保持部を左右に分割するように1枚または複数枚の壁を前記プレートの遠心方向の位置に設け、
遠心することで、定量化する液体試料を前記第1の流路の形成された試料保持部の最外周部に移動し、定量化しない液体試料を前記定量化する液体試料が移動した側と前記壁を隔てた反対側に分離する、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の遠心装置用プレートにおいて、
前記壁は、前記液体試料にぬれやすい材料、または前記液体試料にぬれやすい処理を行った材料である、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項8】
請求項7に記載の遠心装置用プレートにおいて、
電流値に基づき前記液体試料の有無を確認する1対または複数対の正電極と負電極を、前記定量部内に設ける、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項9】
請求項8に記載の遠心装置用プレートにおいて、
電流値に基づき前記流路に流入するのに必要な量の前記液体試料が保持されているか確認する1対の正電極と負電極を、前記壁の最内周上に設ける、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項10】
請求項7に記載の遠心装置用プレートにおいて、
電流値に基づき保持されている前記液体試料の量を測定する複数対の正電極と負電極を、前記定量部内の前記壁の最内周部から最外周部にかけて設ける、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。
【請求項11】
請求項7に記載の遠心装置用プレートにおいて、
電流値に基づき保持されている前記液体試料の量を測定する1対の正電極と負電極を、前記定量部内の前記壁の最内周部から最外周部にかけて設ける、
ことを特徴とする遠心装置用プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−216090(P2008−216090A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55087(P2007−55087)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】