説明

遠赤外線を照射した水からなる活性酸素消去剤

【課題】遠赤外線を照射した水からなる活性酸素消去剤を提供する。
【解決手段】遠赤外線を照射した水からなる活性酸素消去剤、該活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を照射した水からなる活性酸素消去剤に関するものであり、また、該活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康指向の高まりを背景に、生体に及ぼす活性酸素の様々な影響が注目されている。活性酸素は、通常の基底状態(32、三重項)にある酸素に比べて、著しく化学反応を起こしやすい酸素であり、具体的には、スーパーオキサイドアニオンラジカル(・O2-)、過酸化水素(H22)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、ヒドロペルオキシルラジカル(・OOH)、一重項酸素(12)等の反応性に富む酸素を総称して活性酸素と呼んでいる。この活性酸素は、紫外線への暴露、白血球の殺菌機構、生体細胞内のエネルギー代謝過程、ストレス等を通じて発生することが知られている。
【0003】
活性酸素は、生体内の殺菌作用に関与して、生体防御上、重要な役割を果たす反面、生体に対して好ましくない影響も及ぼす。例えば、活性酸素は、癌や、動脈硬化などの生体の老化や、シワ、シミ、皮膚炎症、脱毛などの皮膚の老化の原因となる。
さらに、活性酸素は、生体に対してだけでなく、各種製品に対しても好ましくない影響を及ぼす。例えば、飲食品である野菜、果物、穀物や切り花等を酸化して、それらの品質劣化の促進、異味異臭の発生、変色・退色の発生等をも引き起こす。
そのため、活性酸素による、こうした各種弊害を解消するため、従来、数多くの活性酸素消去剤が報告されている。
【0004】
一方、遠赤外線は、波長3μmから1mmの範囲の電磁波であり、目に見えないが物を温める力のある光線として認知され、主に調理や暖房など加熱機器に利用されているものである。
そして、一般に電磁波は、波長が長い方が物体に浸透する能力が大きくなるため、波長が長い遠赤外線を用いることにより、対象を内部から暖めることができる(その好例がコタツである)とされている。
また、近年の健康指向の高まりから、種々の遠赤外線の効果(例えば、抗菌効果、抗酸化効果等)を謳う商品が多く開発されているものの、それらの効果は何れも科学的に実証されていないものであり、そのため、遠赤外線の本当の効果に付いては、未だ明確にされていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な活性酸素消去剤、該活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、遠赤外線を照射した水が活性酸素消去作用を示して活性酸素消去剤となり得ること、また、該活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことにより該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素が消去できることを見い出し本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、
1.遠赤外線を照射した水からなる活性酸素消去剤、
2.前記1.に記載の活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法、
に関するものである。
また、本発明は以下の発明にも関連する。
前記1.に記載の活性酸素消去剤を含有する発癌抑制剤。
前記2.に記載の方法により得られる野菜。
前記2.に記載の方法により得られる果物。
前記2.に記載の方法により得られる穀物。
前記3.に記載の方法により得られる切り花。
前記1.に記載の活性酸素消去剤の製造装置であって、水収容部を備え、該水収容部は水を貯えることができる収容容器又は水を流通させることができる収容管であり、前記収容容器又は収容管の水と接する内面の少なくとも一部に被加熱体を備え、該被加熱体は前記内面に表面被覆された遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層であるか、又は、該被加熱体は遠赤外線を放射する物質を混合した樹脂材であり、そして場合により、前記被加熱体の水と接する側と反対側に熱源を備えてなる、装置。
前記に記載の装置の水収容部内に満たされた水に、野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことを含む、前記2.記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性酸素消去剤は、水に遠赤外線を照射することにより容易に製造でき、また、使用する水は通常の水道水を使用することができ、特別の操作を必要とする蒸留水や脱イオン水等を使用することを必ずしも必要としないため、非常に経済性に優れている。
【0009】
また、本発明の活性酸素消去剤を含有する発癌抑制剤は、上記水を飲料水として摂取すること等により、容易にそして安価に発癌のリスクを低減させることができると考えられるものであり、更に、該活性酸素消去剤は、単に遠赤外線が照射された水であるので、副作用等のない安全なものである。
【0010】
また、本発明の活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法は、上記水中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すだけで活性酸素を消去することができ、容易で安価である。
また、活性酸素が消去された野菜、果物、穀物又は切り花は、品質劣化、異味異臭の発生、変色・退色等の抑制が期待される。
更に、上記野菜、果物、穀物は、活性酸素が消去されるため、これらの摂取により、発癌リスクの低減効果も期待される。
【0011】
また、本発明の活性酸素消去剤の製造装置は、基本的に、遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層であるか又は遠赤外線を放射する物質を混合した樹脂材である被加熱体を内面の少なくとも一部に備えた、水を貯えることができる収容容器又は水を流通させることができる収容管という簡易な構成であり、また、前記遠赤外線を放射する物質は、産業廃棄物として廃棄処理されていたものを再利用することができ、経済的に優れるだけでなく、リサイクル、環境保護の観点においても優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を更に詳細に説明する。
本発明の活性酸素消去剤は、水に遠赤外線を照射することにより製造される。
使用される遠赤外線は、遠赤外線を放射し得る光源を用いることもでき、また、遠赤外線を放射する物質を用いることもできる。
遠赤外線を放射する物質としては、遠赤外線を放射する効率に優れるものであれば特に
限定しないが、具体的には、シリカ、紅ガラ、珪藻土、フライアッシュ、セラミック及び上記物質の2種以上を含有する混合材料が挙げられ、好ましくは、フライアッシュ、紅ガラ、珪藻土、フライアッシュと紅ガラを含有する混合材料、フライアッシュと珪藻土を含有する混合材料、珪藻土と紅ガラを含有する混合材料、セラミックと紅ガラを含有する混合材料、珪藻土とセラミックを含有する混合材料、シリカと珪藻土を含有する混合材料、セラミックとフライアッシュを含有する混合材料、フライアッシュと珪藻土と紅ガラを含有する混合材料、等が挙げられる。
上記の混合材料における組成比(質量%)としては、任意の組成比を使用することができるが、好ましい組成比の具体例としては、フライアッシュ:紅ガラ=33:67、フライアッシュ:紅ガラ=67:33、フライアッシュ:紅ガラ=80:20、フライアッシュ:珪藻土=75:25、フライアッシュ:珪藻土=65:35、フライアッシュ:珪藻土=50:50、フライアッシュ:珪藻土=67:33、珪藻土:紅ガラ=30:70、珪藻土:紅ガラ=70:30、セラミック:紅ガラ=70:30、珪藻土:セラミック=50:50、珪藻土:セラミック=30:70、シリカ:珪藻土=35:65、シリカ:珪藻土=70:30、セラミック:フライアッシュ=30:70、フライアッシュ:珪藻土:紅ガラ=50:25:25、フライアッシュ:珪藻土:紅ガラ=25:50:25、等が挙げられる。
また、好ましくは、フライアッシュ、紅ガラ及び珪藻土を任意の割合で含有する混合材料が挙げられる。
尚、本発明において、遠赤外線を放射する物質としては、遠赤外線放射率が遠赤外線分光放射計で80%以上を示す物質を使用するのが好ましい。
また、遠赤外線放射率は、温度に影響され、温度が高い方が遠赤外線放射率も高くなる傾向にある。
従って、低い温度で、遠赤外線を放射する物質で水を処理して活性酸素消去剤を製造する場合は、長い処理時間が必要となるため、遠赤外線放射率が高い物質を使用するのが好ましい。
【0013】
水の処理は、遠赤外線を放射する物質と水を直接接触させて行い、加熱条件下又は非加熱で行うこともできる。
加熱条件で処理を行う場合は、非加熱で処理する場合に比して短時間で行うことができる。
非加熱で処理する場合に使用する水の温度は外気温より5℃以上低いことが必要であり、外気温より6℃以上低い水を使用するのが好ましい。
これにより、水が外気温により温められる際の熱は、外気から伝わった熱によって遠赤外線を放射する物質から放射された遠赤外線により供給されることとなる。
また、非加熱で処理する場合の処理時間は、通常8時間以上を必要とし、好ましくは、12時間以上、また、8時間ないし3日である。
加熱条件下における処理時間は、加熱する熱源の出力に依存するため一概には決定できないが、例えば、水温が加熱前の温度から1℃ないし10℃、好ましくは、4℃ないし7℃上昇するまでの時間が挙げられ、具体的には、通常1分間ないし1時間程度であり、好ましくは、10分間ないし30分間程度である。
加熱する場合は、遠赤外線を放射する物質と水が接触している面とは逆の面(即ち、裏側)から熱エネルギーを与えた方が、高い遠赤外線放射率を得やすくなるため好ましい。
使用する水の種類は特に限定されないが、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水等が挙げられ、好ましくは水道水が挙げられる。
【0014】
本発明の活性酸素消去剤は発癌抑制剤として使用することができるが、該発癌抑制剤は、ヒトを含む全ての哺乳類を対象とする。
具体的な発癌抑制剤の投与は、上述の方法により製造された活性酸素消去剤を直接飲料水して摂取することもできるが、例えば、ジュース、コヒー、種々の茶(緑茶、紅茶、ウ
ーロン茶、麦茶、プアール茶等)等と混合した種々の飲料又は活性酸素消去剤である水から調製された上記飲料として摂取することもできる。
また、飲料・食品として許容される種々の添加物や医薬的に許容される種々の添加物を添加することもできる。
また、他の薬効成分と共に摂取することもできる。
本発明の活性酸素消去剤の摂取量は特に限定されないが、1日当たり10mLないし5L程度であり、好ましくは、200mLないし3Lであり、また、例えばヒトが1日に飲料水として摂取するとされる1.8Lである。
また、摂取回数や摂取方法もとくに限定されるものでない。
本発明の活性酸素消去剤は、単に遠赤外線が照射された水であるので副作用等の心配が無く、従って、大量にまた頻繁に摂取することが可能である。
但し、本発明の活性酸素消去剤は、時間が経過するとその効力が弱くなるため、製造後なるべく早く摂取するのが好ましく、具体的には3日以内に摂取するのが好ましい。
【0015】
本発明の活性酸素消去剤の使用により、野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素の消去方法が提供される。
前記野菜としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホウレン草、フキ、大根菜、キュウリ、ナス、トマト、ミニトマト、ニラ、タマネギ、ジャガイモ、キャベツ、ニンジン、ネギ、サツマイモ、春菊、白菜、菜の花、ラディッシュ、かぶら、大根等が挙げられる。
前記果物としては、特に限定されるものではないが、例えば、リンゴ、イチゴ、ブドウ、キウイ、バナナ、グレープフルーツ、マンゴー、オレンジ、パパイヤ、パイナップル、メロン等が挙げられる。
前記穀物としては、特に限定されるものではないが、例えば、米、トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、はと麦、キビ、アワ、ヒエ、モロコシ、小豆、大豆、リョクトウ、ソラマメ、蕎麦等が挙げられる。
前記切り花としては、特に限定されるものではないが、例えば、バラ、ユリ、カーネーション、カスミソウ、ガーベラ、胡蝶蘭、カトレア、オンシジウム、デンドロビウム、椿、カラー、デルフィニウム、スターチス、マーガレット、スイトピー、パンジー、ビオラ、ストック等が挙げられる。
具体的には、上述の方法により製造された活性酸素消去剤中に対象物(野菜、果物、穀物又は切り花)を浸すことにより行われるが、具体的には例えば、一定時間加熱条件下又は非加熱で遠赤外線を放射する物質と水を直接接触させて遠赤外線照射を行った水中に、上記対象物を一定時間浸すことにより達成することができる。
使用する水の初期温度は、あまり高いと対象物が劣化を起こし易くなるため、通常30℃以下であり、好ましくは、0℃ないし10℃程度である。
加熱条件で処理を行う場合は、非加熱で処理する場合に比して短時間で行うことができる。
非加熱で処理する場合に使用する水の温度は外気温より5℃以上低いことが必要であり、外気温より6℃以上低い水を使用するのが好ましい。
これにより、水が外気温により温められる際の熱は、外気から伝わった熱によって遠赤外線を放射する物質から放射された遠赤外線により供給されることとなる。
また、非加熱で処理する場合の処理時間は、通常8時間以上を必要とし、好ましくは、12時間以上、また、8時間ないし3日である。
加熱条件下における処理時間は、加熱する熱源の出力に依存するため一概には決定できないが、例えば、水温が加熱前の温度から1℃ないし10℃、好ましくは、4℃ないし7℃上昇するまでの時間が挙げられ、具体的には、通常1分間ないし1時間程度であり、好ましくは、10分間ないし30分間程度である。
加熱する場合は、遠赤外線を放射する物質と水が接触している面とは逆の面(即ち、裏側)から熱エネルギーを与えた方が、高い遠赤外線放射率を得やすくなるため好ましい。
使用する水の種類は特に限定されないが、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水等が挙げられ、好ましくは水道水が挙げられる。
対象物を浸す時間は特に限定されないものの、通常対象物を長時間水に浸しておくと対象物が劣化しやすくなるため、通常1分間ないし1時間、好ましくは10分間ないし30分間程度である。
また、別の方法として、未処理の水に対象物を浸した後に、一定時間、遠赤外線を非加熱又は加熱条件下で放射することによっても達成することができる。
尚、上記の場合の遠赤外線の照射時間は、上述と同様である。
上記方法により得られた活性酸素が消去された対象物(野菜、果物、穀物又は切り花)は、鮮度を長時間維持することができ、品質劣化、異味異臭の発生、変色・退色等の抑制が期待される。
更に、上記野菜、果物、穀物は、活性酸素が消去されるため、これらの摂取により、発癌リスクの低減効果も期待される。
但し、上記対象物における活性酸素消去効果は、時間が経過するとその効力が低下し、通常3日程度でその効力が減弱するため、3日以内に消費するのが好ましい。
【0016】
次に、本発明の活性酸素消去剤を容易に製造し得る、製造装置について説明する。
本発明の製造装置は、水を貯えることができる収容容器又は水を流通させることができる収容管である水収容部を備えるものである。
水を貯えることができる収容容器の形状については特に限定は無く、例えば、箱型、円柱形、円錐形、三角錐、四角錐、球形等が挙げられ、またその容積についても特に限定されるものではない。
また、水を流通させることができる収容管の形状についても特に限定は無く、例えば、直線状の管、蛇行している管、ループ状になっている管等の何れの形状であってよく、また管断面の形状や径の大きさについても、特に限定されない。
前記収容容器又は収容管の水と接する内面の少なくとも一部に被加熱体を備えるが、該被加熱体は収容容器又は収容管の内面に表面被覆された遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層であるか又は遠赤外線を放射する物質を混合した樹脂材である。
前記被加熱体が収容容器又は収容管の内面に表面被覆された遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層である場合、その基材となるものとしては、例えば、ステンレス、トタン、アルミニウム等の金属、軟質ガラス、硬質ガラス等のガラス、ベニヤ板、合板、単板等の木材及び以下に示す合成樹脂等が挙げられる。
【0017】
合成樹脂としては、FRP樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
遠赤外線を放射する物質としては、前記で説明した通りであり、コーティング方法としては、慣用的なコーティング方法を使用することができ、例えば、非水溶性樹脂と遠赤外線を放射する物質を含む混合物を、例えば、焼付塗装等を行うことにより、コーティングすることができる。
【0018】
非水溶性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリレート又はメタクリレートの重合体、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体のようなアクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン−不飽和カルボン酸グラフト共重合体、ポリプロピレン−不飽和カルボン酸グラフト共重合体のような変性樹脂、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体、エチレン−メタクリル酸−アクリロニトリル三元共重合体、ポリメチルメタクリレート、セルロース、ポリ酢酸ビニルのような、ビニル系重合体、二元又は三元共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体にかかわる各種熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0019】
また、上記混合物には、着色顔料、添加剤、溶剤(アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤)を必要に応じて添加することもできる。
上記の場合の、遠赤外線を放射する物質の使用量は、樹脂100に対して、3ないし30%使用され、好ましくは、5ないし20%の範囲である。
前記被加熱体が、遠赤外線を放射する物質を混合した樹脂材である場合の樹脂としては、例えば、FRP樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられ、これに、遠赤外線を放射する物質を混合して、溶融し、例えば、シートとした後、成形して容器としてもよく、また、溶融物を鋳型で成型して容器としてもよい。
上記の場合の、遠赤外線を放射する物質の使用量は、樹脂100に対して、3ないし30%使用され、好ましくは、5ないし20%の範囲である。
【0020】
また、本発明の製造装置は、場合により前記被加熱体の水と接する側と反対側に熱源を備えてなるものである。
熱源を備える場合の熱源の種類としては、電熱線、蒸気、温水、灯油、ガス等による加熱が挙げられる。
熱源が備えられている場合、該熱源は被加熱体の片面のみが水と接するときは、水と接する面の裏側から加熱するものであり、前記被加熱体の両面が水と接するときは、該被加熱体の内部から加熱するものである。
熱源が備えられていない場合、前記水収容部を取り囲む地熱、蒸気、外気温又は温水が熱源として作用することになる。
本発明の製造装置の水収容部に水、例えば水道水を入れ、加熱条件下又は非加熱で遠赤外線放射処理した後、該水収容部内に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことにより該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を容易に消去することができ、また、処理された水は、そのまま、発癌抑制剤として使用することができる。
【0021】
本発明の製造装置の態様の1例を図1に示した。
該態様において、水収容部は水を貯えることができる収容容器であり、その形状は箱型であり、箱の底部の裏側には熱源として、電熱線3を備えており、被加熱体は基材1の容器内面に表面被覆された遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層2であり、容器内面の全体に備えられている。
本発明の製造装置の態様の別の例は、水収容部は水を貯えることができる収容容器であり、その形状は箱型であるが、仕切りにより2分割されており、そして前記仕切りは、基材の両面に被加熱体として遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層が備えられており、前記仕切りの基材の内部には熱源として電熱線が備えられる。
本発明の製造装置の態様の別の例は、水収容部は水を貯えることができる収容容器であり、その形状は箱型であり、被加熱体は基材の容器内面に表面被覆された遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層であり、容器内面の全体に備えられているが、熱源は備えていない。
本発明の製造装置の態様の別の例は、水収容部が水を流通させることができる収容管であり、該管は、基材と該基材の内面全体に被加熱体として備えられた遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層で構成され、熱源は備えていない。
【0022】
本発明はまた、上記の製造装置の水収容部内に満たされた水に、野菜、果物、穀物又は
切り花を浸すことを含む、野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法に関連する。
具体的には、上記製造装置の水収容部内に満たされた水を一定時間加熱条件下又は非加熱で遠赤外線照射処理した後に、この処理された水中に上記対象物を一定時間浸すか又は上記製造装置の水収容部内に満たされた未処理の水に対象物を浸した後に、一定時間非加熱又は加熱条件下で遠赤外線を放射することによっても達成することができる。
尚、上記の場合の具体的な条件等に付いては前述と同様にして行うことができる。
【実施例】
【0023】
以下に示す実施例及び比較例において、本発明を具体的且つ更に詳細に説明する。下記実施例は本発明の説明のためのみのものであり、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
実施例1:該活性酸素消去剤の製造装置の製造
1)FPR容器を用いる製造装置
以下に示す組成の塗料を調製した。
着色顔料 36.1%
添加剤 0.3%
アクリル樹脂 17.1%
メラミン樹脂 11.8%
エポキシ樹脂 1.1%
キシレン 11.2%
アルコール系樹脂 9.4%
ケトン系溶剤 2.1%
石油炭化水素系溶剤 8.7%
グリコール系溶剤 2.2%
上記塗料の全質量に対して、20%の混合素材(珪藻土:紅ガラ=50:50)を添加混合し、この混合液をFPR容器の内部に焼付塗装することにより活性酸素消去剤の製造装置を製造した(以下装置1と記載する。)。
2)ステンレス容器を用いる製造装置
フッ素樹脂に対して、20%の混合素材(珪藻土:紅ガラ=50:50)を添加混合し、この混合液をステンレス容器の内部に焼付塗装することにより活性酸素消去剤の製造装置を製造した(以下装置2と記載する。)。
3)種々の遠赤外線を放射する物質及び基材を使用した装置
遠赤外線を放射する物質、基材及び作成方法を種々変えて以下の表1に示す装置3ないし14を製造した。
【表1】

【0024】
実施例2:発癌抑制作用の評価
実施例1で製造した装置3に水道水を入れ、非加熱で12時間放置した後、以下に記す処理水として使用した。
尚、上記処理を行わなかった水道水を未処理水と記載する。
雄性ラットを以下のAないしDの4群(各群10匹)に分け舌癌発生抑制試験を行った。
A群:発癌物質4−ニトロキノリン−1−オキシド(4−NQD)を20ppm含有する未処理水を飲料水として8週間与えた。
B群:発癌物質4−ニトロキノリン−1−オキシド(4−NQD)を20ppm含有する処理水を飲料水として8週間与えた。
C群:未処理水を飲料水として8週間与えた。
D群:処理水を飲料水として8週間与えた。
各群において、飲料水の摂取量には殆ど差は見られなかった。
発癌物質投与後18週目に各群5匹を屠殺し、舌部の病理組織標本を作製したが、視診においては何れの標本においても癌の発生を示す異常を認めなかった。 次に、発癌物質投与後32週目に各群5匹を屠殺し、舌部の病理組織標本を作製し、各標本の抗変異原率(癌の発生などを抑える確率)を電子顕微鏡を用いて測定したところ、A群の抗変異原率は、7%、B群の抗変異原率は、90%以上、C群の抗変異原率は、7%、D群の抗変異原率は、90%以上であった。
以上の事より、本発明の活性酸素消去剤を投与した群(上記B群及びD群)は、90%以上の確率という非常に高い確率で発癌性を抑えることが判明した。
また、本発明の活性酸素消去剤を投与した群(上記B群及びD群)は、細胞の細胞膜に酸化応力が発生し、そして、細胞の設計図である染色体<DNAが分裂するというアポトーシス効果が確認された。
【0025】
実施例3:イチゴにおける活性酸素消去発光試験
大久保一良により報告されている活性酸素消去発光測定方法に従って、イチゴにおける活性酸素消去発光試験を行った(大久保一良.2002.XYZ系活性酸素消去発光研究会誌.1.p.3−20)。
実施例1で製造した装置4に水道水(水温19℃)を入れ、ヒ-タ線で25℃まで加熱
した。この中にイチゴを20分間浸し翌日、上記処理を行わなかったイチゴと共に輪切りにして、XYZ系活性酸素消去発光試験に供した。
以下に記すY活性(抗酸化作用)は、直接活性酸素(X)に働きかける活性酸素消去物質の活性酸素消去活性に対応するものであり、Z活性(メディエーター作用)は、活性酸素消去物質(Y)が活性酸素を消去するのを仲介(触媒)する際の活性に対応するものであり、どちらの活性も、発光が強い程、強力であることを意味する。
尚、Y活性(抗酸化作用)は、X試薬として1mLの過酸化水素(3.75%、HOOH)とZ試薬として1mLの10%アセトアルデヒド飽和炭酸水素カリウム(satd.KHCO3 in 10%MeCHO)の両試薬をサンプル0.3gと混合後、これによ
る発光を発光検出器で600秒間測定して数値化したものであり、Z活性(メディエーター作用)は、X試薬として1mLの過酸化水素(3.75%、HOOH)とY試薬として1mLの10%アセトアルデヒド飽和没食子酸(satd.GA in 10%MeCHO)の両試薬をサンプル0.3gと混合後、これによる発光を発光検出器で600秒間測定して数値化したものである。
結果として得られた数値(Y活性、Z活性)を表2に示した。
また、その際の発光をCCDカメラで600秒間撮影したものを図2に示した。
【表2】

図2(写真)の左下には、処理水で処理されたイチゴのZ活性による発光を示し、左上には未処理のイチゴのZ活性による発光を示し、右下には、処理水で処理されたイチゴのY活性による発光を示し、右上には未処理のイチゴのY活性による発光を示す。
表1及び図2より、活性酸素消去におけるY活性(抗酸化作用)及びZ活性(メディエーター作用)の両方において、処理水で処理されたイチゴは、未処理のイチゴに比して、高い活性を示した。
【0026】
実施例4:水の種類による影響
3種の水(水道水、蒸留水、脱イオン水)をそれぞれ別の装置5に入れ、非加熱で12時間放置した(非加熱による遠赤外線放射)後、この中にブドウ(巨峰)を浸し(35℃)、20分間処理した後、容器から取り出し、上記処理を行わなかった水道水に浸したブドウ(巨峰)と共に輪切りにして、Y活性を測定し、その際の発光の強さを皮部分と果肉部分別に数値化したものを表3に示した。
【表3】

水の種類により皮部分と果肉部分で、多少Y活性の度合いが異なったが、何れの処理水による処理においても未処理水による処理に比して高いY活性を示した。
【0027】
実施例5:ネギ及び精米の処理結果
水道水を装置6に入れ、非加熱で12時間を処理して処理水を調製し、ネギ及び精米を浸して処理した後、Y活性、Z活性及びE活性(増強作用:メディエーター(Z)の作用を増強する作用)を測定し、また、対照として未処理水(水道水)で処理した精米のY活性、Z活性及びE活性を測定し、表4に示し、その際のY活性による各サンプルの発光の写真を図3、Z活性による各サンプルの発光の写真を図4及びE活性による各サンプルの発光の写真を図5に示した。
【表4】

尚、E活性(増強作用)は、X試薬として1mLの過酸化水素(3.75%、HOOH)、Z試薬として1mLの10%アセトアルデヒド飽和炭酸水素カリウム(satd.KHCO3 in 10%MeCHO)及びY試薬として1mLの10%アセトアルデヒド
飽和没食子酸(satd.GA in 10%MeCHO)の3種の試薬をサンプル0.3gと混合後、これによる発光を発光検出器で600秒間測定して数値化したものである。
処理水で処理された精米は、未処理水で処理された精米よりも高いY活性、Z活性及びE活性を示し、これにより、前記処理により、精米においても活性酸素を消去し得ることが明らかとなった。また、ネギも高いY活性、Z活性及びE活性を示し、前記処理によりネギにおいても活性酸素を消去し得ることが示された。
【0028】
実施例6:野菜の鮮度への影響
実施例3ないし5において、遠赤外線で照射された水で処理された野菜、果物、穀物において活性酸素が消去され得ることを示した。
そこで、本処理により活性酸素が消去された野菜の鮮度低下に対する抑制効果を評価した。
操作手順は、最初に、実施例1で製造された装置1又は装置2(但し、容器外から加熱できるヒーターを設置する。)に、水道水を入れ、一定時間ヒーターに通電(加熱)して遠赤外線照射を行った後、この中に各野菜を一定時間浸し、その後、取り出して、鮮度の状態の経時変化を観察し、5日目に2回目の処理(通電及び浸漬)して、鮮度の状態の経時変化を観察し、10日目に3回目の処理(通電及び浸漬)を行い、14日目まで鮮度の状態の経時変化の観察を行った。
結果を表5に示した。
尚、表中の“装置”において“1”は装置1を用いたことを意味し、“2”は装置2を用いたことを意味する。
また、“条件”において、“10−10”は、10分間ヒーターに通電(加熱)し、そのあと10分間対象となる野菜を浸漬することを意味する。
また、表中の鮮度を表す数字は、鮮度を目視により20から0(20は最も優れた鮮度の状態を表し、0は鮮度が低下し商品として使用できない状態を表す。)
尚、使用した野菜は何れも上記処理を行わない場合は、3日程度で商品として使用できないほど鮮度が低下(ほぼ鮮度が0となる)する。
【表5】

表5より、何れの野菜及び装置においても、鮮度低下の抑制が観られた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の活性酸素消去剤の製造装置の態様の1例を示した図である。
【図2】実施例3において処理水で処理されたイチゴ及び未処理のイチゴにおけるY活性及びZ活性を発光強度として示す写真である。
【図3】実施例5において、処理水で処理されたネギ(1)、精米(2)及び未処理水で処理された精米(3)のY活性を発光強度として示す写真である。
【図4】実施例5において、処理水で処理されたネギ(1)、精米(2)及び未処理水で処理された精米(3)のZ活性を発光強度として示す写真である。
【図5】実施例5において、処理水で処理されたネギ(1)、精米(2)及び未処理水で処理された精米(3)のE活性を発光強度として示す写真である。
【符号の説明】
【0030】
1:基材
2:遠赤外線を放射する物質を含有するコーティング層
3:電熱線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外線を照射した水からなる活性酸素消去剤。
【請求項2】
請求項1に記載の活性酸素消去剤中に野菜、果物、穀物又は切り花を浸すことによる該野菜、果物、穀物又は切り花中の活性酸素を消去する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−142059(P2008−142059A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336251(P2006−336251)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(506413982)株式会社 カタクラ (1)
【Fターム(参考)】