説明

遠赤外線偽装用布帛およびその製造方法

【課題】 耐久性と通気性を有し、遠赤外線に対して優れた偽装性を有する遠赤外線偽装用布帛を提供する。
【解決手段】布帛の少なくとも片面に、金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層が積層されており、かつ、金属粒子含有樹脂層の金属粒子が金属粒子含有樹脂層を構成する層構成用樹脂とは異なる樹脂またはケイ素の酸化物で被覆されてなることを特徴とする遠赤外線偽装用布帛、およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線偽装用布帛の改良に関するものであり、詳しくは布帛表面に金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層が形成された遠赤外線偽装用布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境における偽装技術として、可視および0.8〜1.2μmの波長領域の近赤外線に対する偽装に加え、8〜14μmの波長領域の遠赤外線に対する偽装について鋭意検討がなされている。その遠赤外線に対する偽装技術として、布帛表面に蒸着法、めっき法等により金属薄膜層を形成した後、着色剤をプリント法またはコーティング法により付着せしめて得られる遠赤外線偽装用布帛等が開示されている。例えば、フィルムや布帛表面に金属薄膜層を形成し、その表面に着色剤含有樹脂を積層した遠赤外線偽装用布帛(例えば、特許文献1)、金属薄膜層と着色剤含有樹脂層を形成後、撥水樹脂を施した遠赤外線偽装用布帛(例えば、特許文献2)、布帛表面の糸条部のみにスパッタリングにより金属薄膜層を施した偽装用布帛(例えば、特許文献3)、金属にエポキシ樹脂を処理した金属樹脂層を有する遠赤外線偽装用布帛(例えば、特許文献4)が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている遠赤外線偽装用布帛は、可視、近赤外線および遠赤外線偽装性は認められるが、金属薄膜層により通気性が失われ、通気性を必要とする分野への適用ができなかった。また、金属層と基材との接着力が十分でないため、洗濯耐久性が得られず、耐久性が必要とする分野には適用できなかった。特許文献2に開示されている遠赤外線偽装用布帛は、可視、近赤外線および遠赤外線偽装性や洗濯耐久性は認められるが、金属薄膜層により通気性が失われ、通気性を必要とする分野への適用ができなかった。特許文献3に開示されている遠赤外線偽装用布帛は、可視、近赤外線および遠赤外線偽装性や通気性は認められるが、金属層と基材との接着力が十分でないため、洗濯耐久性が得られず、耐久性が必要とする分野には適用できなかった。また、特許文献4に開示されている遠赤外線偽装用布帛は、可視、近赤外線および遠赤外線偽装性が認められ、金属にエポキシ樹脂が処理されているため、耐久性が向上してはいるものの、洗濯耐久性を満足するものが得られないのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−48940号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2006−110784号公報(請求項1、[0014])
【特許文献3】特開2005−169970号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2004−53039号公報([0013])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、かかる従来技術の欠点に鑑み、耐久性と通気性を有し、遠赤外線に対して優れた偽装性を有する遠赤外線偽装用布帛、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような構成を有する。
すなわち、布帛の少なくとも片面に、金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層が積層されており、かつ、金属粒子含有樹脂層の金属粒子が金属粒子含有樹脂層を構成する層構成用樹脂とは異なる樹脂またはケイ素の酸化物で被覆されてなることを特徴とする遠赤外線偽装用布帛、ならびにその製造方法であって、布帛の少なくとも片面に、金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層をこの順に凸版印刷していくことを特徴とする、遠赤外線偽装用布帛の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐久性と通気性に優れ、森林や草原などの自然環境に対し、優れた遠赤外線偽装用布帛を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明は、優れた耐久性と通気性を有し、自然環境に対して優れた遠赤外線偽装特性を有する布帛を提供せんと鋭意検討したところ、布帛表面に金属粒子含有樹脂層、着色剤含有樹脂層を形成せしめることにより、かかる課題を解決できることを見出したものである。
【0009】
本発明における布帛とは、織物、編地、不織布などが例示される。その中でも、布帛強力の面からは、織物が好ましく用いられる。かかる布帛を構成する素材としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合した共重合ポリエステルなどからなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ナイロン6成分とナイロン6・6成分を共重合した共重合ポリアミドなどからなるポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどに代表されるアラミド繊維、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、 ポリプロピレン、ポリウレタンなどの繊維がある。 かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤などを適宜含有せしめてもよい。また、これらの繊維からなる布帛は、染色等により着色されていてもよい。これらの繊維の中でも、金属粒子含有樹脂の加工性の面からポリエステル繊維、N66からなるポリアミド繊維、アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0010】
金属粒子含有樹脂層の金属粒子を形成する金属としては、チタン、ステンレス、ニッケル、クロム、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム等や、これら合金等が適宜使用される。その中でも加工性および遠赤外線偽装性の面から、チタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銅、銀から選ばれる少なくとも1種の金属もしくはこれら金属の合金が好ましく用いられる。更に好ましくは一般的に原料入手が容易であり、安価で更に粒子径やその形状のコントロールが容易なアルミニウムの使用が望ましい。
【0011】
そして、これら金属へ耐薬品性や洗濯性を付与するためには、金属粒子の表面を樹脂で完全に被覆させる必要がある。この被覆剤としてアクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、ベンゾグアナミン系、メラミン系、エポキシ系等の樹脂が適宜使用される。その中でも耐久性、加工性および遠赤外線偽装性の面より、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、もしくはアクリル系、塩化ビニル、酢酸ビニルなど二重結合が重合して得られる樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
また、より金属への耐薬品性や洗濯性を付与するために、樹脂被覆前に又は樹脂被覆に代えて、より安定な無機材料等で金属粒子を事前に処理してもよい。無機材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミ、ジルコン、モリブデン、クロムおよびリン酸およびこれらを含む複合酸化物が使用可能であるが、本発明では、無機材料で金属粒子を被覆する場合、より安価で加工性に優れるケイ素の酸化物を用いることとしている。中でも、酸化ケイ素を用いることが好ましい。
【0013】
上記金属粒子の形状としては、円盤状であっても、薄板状であってもよく、他の形状であってもよく、とくに限定されるものではない。これらの中でも、加工性および遠赤外線偽装性の面から円盤状が好ましく用いられる。金属粒子の径としては、金属粒子含有樹脂層を構成する樹脂とは異なる樹脂またはケイ素の酸化物で金属粒子の径が被覆された状態で、1〜50μmの範囲内に90重量%以上があることが好ましい。金属粒子径とは樹脂又は無機材料、及びその両方で被覆された金属径を指す。50μmを超える粒子径の粒子が多すぎると加工性と耐久性に問題が生じ、1μm未満の粒子径の粒子が多すぎると場合は遠赤外線偽装性が不十分となる。
【0014】
これら金属粒子は金属粒子含有樹脂層中の20〜80wt%を占めることが望ましい。20wt%以下の場合は遠赤外線偽装性が不十分となり、80wt%以上の場合は加工性や耐久性等が著しく低下する。
【0015】
かかる金属粒子含有樹脂層を形成する樹脂としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、繊維素系、エポキシ系、アルキド系、ロジン系、メラミン系樹脂が挙げられ、硬化剤としてポリイソシアネート系、カルボジイミド系、シラノール系、金属キレート系硬化剤の使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも布帛への接着性、柔軟性及び洗濯性の面からウレタン系、ポリエステル系樹脂に、ポリイソシアネート系硬化剤を用いる方法が好ましく使用される。また、使用される溶媒は水系でも溶剤系であってもよい。これらからなる金属粒子含有樹脂の処理液を、プリント(顔料捺染)方式、噴霧方式、印刷方式等で布帛上に塗布し、乾燥して金属粒子含有樹脂層は形成されるが、布帛の柔軟性を損なわない面から、印刷方式が好ましい。特に通気性を損ないにくいことや布帛の凹凸にムラなく印刷できることから、凸版(フレキソ)印刷が好ましく用いられる。また、塗工量としては布帛1mあたり乾燥皮膜2g〜15gの塗工量が望ましい。15g以上の場合は布帛の柔軟性と通気性が著しく低下し、2g以下の場合は遠赤外線偽装性が低下する。
【0016】
着色剤含有樹脂層は、可視および800〜1200μmの近赤外線領域において、偽装性を付与するものであり、布帛表面に形成された上記金属粒子含有樹脂層上に形成される。かかる着色剤としては、顔料、染料が挙げられるが、主として無機顔料、有機顔料が用いられる。例えば、無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化鉄、酸化鉄、鉄黒、アルミナ白、酸化亜鉛、酸化クロム、コバルトブルー、硫化亜鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、紺青、群青、マンガンバイオレット、沈降性硫酸バリウム、鉛白、カーボンブラック等を主成分とする顔料、有機顔料としては、フタロシアニン系、スレン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キナクリドン系、ペリレン系、フタロン系、メチン・アゾメチン系、ジケトピロロピロール系、アゾレーキ系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系等が挙げられる。
【0017】
また、着色剤含有樹脂層を形成する樹脂としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、繊維素系、エポキシ系、アルキット系、ロジン系、メラミン系樹脂が挙げられ、更に該樹脂にポリイソシアネート系、カルボジイミド系、シラノール系、金属キレート系硬化剤を使用する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、金属粒子含有樹脂層への接着性、柔軟性及び耐洗濯性の面からウレタン系、ポリエステル系樹脂にポリイソシアネート系硬化剤を使用する方法が好ましく用いられる。
【0018】
また、使用される溶媒は水系でも溶剤系であってもよい。これらからなる着色剤含有樹脂の処理液は、コーティング方式、プリント(顔料捺染)方式、噴霧方式、印刷方式等で金属含有樹脂層上に塗布し、乾燥して着色剤含有樹脂層は形成される。薄膜形成つまり表面の遠赤外線偽装性の面から、印刷方式が好ましく、特に通気性を損ないにくいことから凸版(フレキソ)印刷が好ましく用いられる。
【0019】
また、着色剤含有樹脂層は、3色以上の複数色で迷彩模様を有していることが可視偽装および近赤外線偽装の面から好ましい。
【0020】
また、得られた遠赤外線偽装用布帛は、適宜撥水樹脂層を形成することができる。撥水樹脂としては、通常、撥水性または防水性樹脂として使用されるものが適宜使用されるが、好ましくはポリウレタン樹脂、例えばポリエステル共重合系、ポリエーテル共重合系、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂、およびアミノ酸、シリコーン、フッ素系モノマーを共重合してなる変性ポリウレタン樹脂等が使用される。また、必要に応じ、エポキシ系、イソシアネート系等の架橋剤を併用することもできる。撥水樹脂層の厚さは、柔軟性、遠赤外線偽装性および撥水性の点から0.01〜5μmが好ましい。0.01μm未満では、十分な撥水性が得られ難くなり、5μmを越えると柔軟性および遠赤外線偽装性が得られ難くなる。
【0021】
かかる撥水樹脂層の形成方法としては、ナイフコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、リバースロールコーティング等のコーティング方式、または凸版印刷、グラビア印刷等の印刷方式、またはパッデイング方式を採用することができる。また、かかる撥水樹脂からなる処理液は、水系あるいは溶剤系のどちらであってもよい。
【0022】
本発明の遠赤外線偽装用布帛は、JIS L 1096:8.27.1 A法(フラジール形法)に基いて測定したときの通気量が1.0cc/cm/s以上であることが好ましい。通気量を上記の範囲に調整することで、被服、雨衣として使用する際に蒸れがなく、快適に着用することができる。通気量が1.0cc/cm/s未満であると体から発散される蒸気がこもり、蒸れるため着心地が悪化する。
【0023】
また、JIS L 0217:103法で規定される洗濯方法で処理しても、外観に変化がなく、遠赤外線放射率の変化率が20%未満であることが必要である。洗濯により樹脂剥がれや色落ちがあると、可視・近赤外線偽装性を維持できない。また、遠赤外線放射率の変化率が20%よりも大きくなると、遠赤外線偽装性が維持できなくなる。このような観点から、洗濯前後の放射率の変化率はより好ましくは10%未満である。
【0024】
本発明の遠赤外線偽装用布帛は、被服、雨衣、バッグ、テント、カバー類などの用途に好ましく用いられ、通気性、耐久性と遠赤外線に対する偽装性を備えたものとなる。
【実施例】
【0025】
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
なお、実施例中における特性は、下記の方法により求めた。
【0026】
(1)通気性
JIS L 1096:8.27.1 A法(フラジール形法:試験差圧125Pa)に準じ測定を行い、次の基準で判定した。
1.0cc/cm/s以上 ○
0〜1.0cc/cm/s ×
【0027】
(2)洗濯耐久性
JIS L 0217:103法に準じ、10回の繰り返し洗濯処理を行ない、布帛の表面状態を観察し、次の基準で判定した。
外観検査:
変化無し ○
一部樹脂剥がれ・色落ち有り △
樹脂剥がれ・色落ち大 ×
性能評価:洗濯前後の上記(3)で測定される熱放射率の変化率が
10%未満 ○
10%以上20%未満 △
20%以上 ×
【0028】
(3)平均熱放射率
各色につき2箇所づつD and S AERD放射率計(Devices & Services社製)にて測定し、その平均値を算出した。
【0029】
(4)偽装性
試料を樹木の前に吊るし、背景との混和をA〜Cの条件で確認し、次の基準で偽装性を判定した。
識別困難 ○
偽装効果有り △
識別容易 ×
A.遠赤外線偽装性
検出波長8〜14μmの赤外線画像装置(遠赤外線カメラ)を用いて、100mの距離から観察し、上記基準にて判定した。
B.近赤外線偽装性
近赤外線カメラを用いて、100mの距離から観察し、上記基準にて判定した。
C.可視偽装性
目視で100mの距離から観察し、上記基準にて判定した。
【0030】
実施例1
総繊度83dtex、フィラメント数36本のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、生アルミを粉砕して得たアルミ粒子の表面をアクリル樹脂への重合で被覆し、粒子径10〜16μmの被覆アルミニウム粒子を得た。これをウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、アルミニウム含有樹脂層上に、淡緑色、濃緑色、茶色および黒色の顔料とビヒクルからなる4色のインキ組成液を用い、各色の膜厚が2〜5μmになるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により塗布、乾燥し、迷彩模様を有する着色剤含有樹脂層を形成した。しかる後、パッド、ドライ、キュア法にて布帛に“アサヒガード”GS10(フッ素系撥水剤、旭硝子(株)製)の3%水溶液を付着率40%になる様に付与し、120℃で1分間乾燥した後、180℃で40秒間熱処理して撥水処理布帛を得た。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例1の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性・洗濯耐久性とも優れていた。
【0031】
比較例1
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、表面を被覆していない粒子径10〜16μmのアルミニウムをウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例1の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が洗濯前では認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性がなく、洗濯後の偽装性が不十分であった。
【0032】
比較例2
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、表面をアクリル樹脂で被覆したアルミニウム箔を裁断して得たアルミニウム材料を得た。このアルミニウム材料は樹脂で被覆されていない部分が存在した。これをウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例2の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性が満足するレベルにはなかった。
【0033】
比較例3
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、実施例1と同一の方法でアクリル樹脂を被覆した粒子径52〜58μmのアルミニウムをウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例3の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が洗濯前では認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性がなく、洗濯後の偽装性が不十分であった。
【0034】
実施例2
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、生アルミを粉砕して得たアルミ粒子の表面をアルコキシシランの加水分解反応によってシリカで被覆した後アクリル保護層の重合を施し、粒子径7〜13μmの被覆アルミニウム粒子を得た。しかる後、ウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が3g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により1度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例2の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性・洗濯耐久性とも優れていた。
【0035】
比較例4
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、実施例2と同一の被覆アルミニウム粒子をウレタン−ポリエステル樹脂と混合し、塗布量が3g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により1度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例4の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が洗濯前では認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性がなく、洗濯後の偽装性が不十分であった。
【0036】
実施例3
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。しかる後、生アルミを粉砕して得たアルミ粒子の表面をアルコキシシランの加水分解反応によってシリカで被覆し、粒子径10〜16μmの被覆アルミニウム粒子を得た。しかる後、ウレタン−ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート硬化剤と混合し、乾燥皮膜塗布量が9g/mとなるように凸版印刷(フレキソ印刷)法により3度塗布し、乾燥した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。実施例3の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、通気性・洗濯耐久性とも優れていた。
【0037】
比較例5
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。一方、ポリエステルフィルム上に離型層を介して真空蒸着により、アルミニウムの膜厚が0.05μmになるように蒸着加工を施した上に、接着層として5μmの膜厚を有するポリウレタン系樹脂を塗布した。しかる後、上記フィルム上に形成されたアルミニウム薄膜層を接着層を介してかかる織物表面に転写した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例5の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が認められ、洗濯耐久性も十分であったが、通気性がなかった。
【0038】
比較例6
実施例1と同一のポリエステル繊維100%からなる目付け65g/m2の平組織の織物を常法により精練・熱セットした。次いで、スパッタリング装置を用い、この織物の表面に、アルミニウムの膜厚が0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中で蒸着加工を施し、織物表面にアルミニウム薄膜層を形成した。次いで、実施例1と同一の方法で着色剤含有樹脂層の形成、撥水加工を実施した。
このようにして得られた偽装布帛の特性を後述の表1に示した。比較例6の偽装布帛は、森林に混和した可視・近赤外線偽装性および遠赤外線偽装性が洗濯前では認められ、通気性も十分であったが、洗濯耐久性がなく、洗濯後の偽装性が不十分であった。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の少なくとも片面に、金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層が積層されており、かつ、金属粒子含有樹脂層の金属粒子が金属粒子含有樹脂層を構成する層構成用樹脂とは異なる樹脂またはケイ素の酸化物で被覆されてなることを特徴とする遠赤外線偽装用布帛。
【請求項2】
前記金属粒子を被覆する樹脂が、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系から選ばれる1種類の樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載の遠赤外線偽装用布帛。
【請求項3】
前記金属粒子含有樹脂層の層構成用樹脂が、ポリイソシアネートを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の遠赤外線偽装用布帛。
【請求項4】
前記金属粒子が、チタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銅、銀から選ばれる少なくとも1種類の金属もしくはこれらの金属の合金からなる粒子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の遠赤外線偽装用布帛。
【請求項5】
前記金属粒子含有樹脂層と着色剤含有樹脂層が凸版印刷法により積層されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の遠赤外線偽装用布帛。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の遠赤外線偽装用布帛の製造方法であって、布帛の少なくとも片面に、金属粒子含有樹脂層および着色剤含有樹脂層をこの順に凸版印刷していくことを特徴とする、遠赤外線偽装用布帛の製造方法。

【公開番号】特開2012−200936(P2012−200936A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65768(P2011−65768)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000205410)大阪印刷インキ製造株式会社 (12)
【出願人】(392033233)株式会社ヨシモト印刷社 (2)
【Fターム(参考)】