説明

遠赤外線画像処理装置、遠赤外線撮像装置、遠赤外線画像処理方法および遠赤外線画像処理プログラム

【課題】遠赤外線画像における特定の領域の出力値を詳細に表示する。
【解決手段】画像処理部110は、遠赤外線センサによって検知された遠赤外線の量を示す画像信号を受け付け、領域指定レジスタ110b1は、遠赤外線画像のうちの分解能変換領域を示す領域指定情報の入力を受け付ける。そして、画像処理部110は、遠赤外線画像における、領域指定情報によって示された特定の領域についての遠赤外線の量の分解能を変換した領域内分解能変換画像110eを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線画像処理装置、遠赤外線撮像装置、遠赤外線画像処理方法および遠赤外線画像処理プログラムに関し、特に、物体から放射される遠赤外線を検知することによって撮像された遠赤外線画像の処理を行う遠赤外線画像処理装置、遠赤外線撮像装置、遠赤外線画像処理方法および遠赤外線画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射された遠赤外線が持つエネルギー(熱)を検知する焦電素子、ボロメータなどの、遠赤外線を検知する画素から構成される遠赤外線センサを用いて物体を撮像し、撮像対象の物体の温度の測定などに用いられる遠赤外線撮像装置(サーモグラフィ)がある。
【0003】
このような遠赤外線撮像装置で撮像対象の物体を撮像した場合、画像を構成するそれぞれの画素の実際に出力された値の区間の幅が大きいときには、各測定値を画像に表した際の階調幅を大きくとらないと、出力された値の分解能が低下してしまう。逆に、同じ階調幅で分解能を高くすると、表示可能な温度の幅が狭くなってしまう。例えば、最小分解能が0.05℃である遠赤外線カメラで撮像した遠赤外線画像を、256階調で表示可能なモニタに表示する場合、最低温度と最高温度との差が最大でも12.8℃以内のものしか区別可能に表示することができない。
【0004】
従来、赤外線カメラによって撮影された対象物の温度情報を示す赤外線映像における任意の点を指示すると、その点の温度を表示する赤外線温度測定装置が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、データレンジのフルスケールに演算結果データが満たない場合、ビットシフトを行って信号処理系が要求するビット数の画像表示データを生成する遠赤外線画像表示装置が考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、低照度物体と高照度物体とが1フレーム内に混在する場合、信号レベルをオフセットすると共に、信号レベルの増幅率を制御する撮像装置が考えられている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、赤外線を放射する物体の温度に比例するイメージ信号の相対温度分布に基づき、低い濃度の温度範囲を縮小させて、温度分解能を選択的に強調する遠赤外線カメラシステムが考えられている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平07−035621号公報
【特許文献2】特開平07−239271号公報
【特許文献3】特開2000−074741号公報
【特許文献4】特開2003−344167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、撮像対象である物体の表面温度の測定に使用した際における微細な温度差の検出を行う場合や、物体検知に使用した際における撮像対象の詳細な状態などを表現したい場合などに、背景や撮像対象以外の物体については重視せずに、撮像対象の特定箇所およびその周辺箇所におけるわずかな差異を表現することはできない。
【0009】
例えば、上述した特許文献1記載の技術では、画像に表された特定の点の詳細な温度を知ることはできるが、撮像対象の点の周辺部分の表面温度の差異の詳細を、画像により視覚的に表現することはできない。
【0010】
また、上述した特許文献2記載の技術では、撮像範囲全体において温度差が大きい場合(例えば、撮像対象に高温の物体と低温の物体とが含まれる場合や、撮像対象と背景との間で温度差が大きい場合など)には、十分な分解能が得られない場合が生じてしまう。
【0011】
また、上述した特許文献3記載の技術では、赤外線の検知量(温度)を示す信号レベルの出現頻度に基づいて自動的に信号レベルのオフセットが行われるため、撮像対象が予め特定されている場合や、撮像対象を含む画像領域が予め特定されている場合などには適さない。
【0012】
また、上述した特許文献4記載の技術では、遠赤外線カメラの示す温度の濃度(出現頻度)により、集中している温度範囲について自動的に温度強調(特定の温度範囲だけ分解能を高める)が行われるので、特許文献3記載の技術と同様に、撮像対象が予め特定されている場合や、撮像対象を含む画像領域が予め特定されている場合などには適さない。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、遠赤外線画像における特定の領域の出力値を詳細に表示できるようにした遠赤外線画像処理装置、遠赤外線撮像装置、遠赤外線画像処理方法および遠赤外線画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では上記課題を解決するために、物体から放射される遠赤外線を検知することによって撮像された画像の処理を行う遠赤外線画像処理装置において、遠赤外線カメラによって撮像された遠赤外線画像を示す画像信号を受け付ける画像信号受付部と、前記遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付ける領域指定受付手段と、前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を変換した分解能変換画像情報を生成する分解能変換部と、を有することを特徴とする遠赤外線画像処理装置が提供される。
【0015】
このような遠赤外線画像処理装置では、画像信号受付部は、遠赤外線カメラによって撮像された遠赤外線画像を示す画像信号を受け付け、領域指定受付手段は、前記遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付け、分解能変換部は、前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を変換した分解能変換画像情報を生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の遠赤外線画像処理装置によれば、遠赤外線画像のうち特に関心の高い特定の領域の遠赤外線の量の分解能のみを変換可能にすることで、画像全体の分解能を維持しつつ、特定の領域の分解能を適切に設定できる。これによって、画像全体の概要を表現しながら、撮像対象のうち特に関心の高い部分の状態を、より的確に表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、遠赤外線撮像装置の構成図である。
図1に示す遠赤外線撮像装置100は、遠赤外線センサ101、光学ブロック102、読み出し回路103、センサ信号処理回路104、画像処理部110を具備する。
【0018】
光学ブロック102は、被写体からの光を遠赤外線センサ101に集光するためのレンズ102a、レンズを移動させてフォーカス合わせやズーミングを行うための駆動機構、アイリス機構(いずれも図示せず)などを具備している。これらのうちの可動部は、画像処理部110が具備する制御部111からの制御信号に基づいて駆動される。
【0019】
遠赤外線センサ101は、多数の遠赤外線画素を有すると共に、遠赤外線撮像装置100に入射して遠赤外線検知画素のそれぞれに照射された遠赤外線の量を検知する。
遠赤外線センサ101は、焦電素子、ボロメータなど照射された遠赤外線が持つエネルギー(熱)を検知する素子である遠赤外線検知素子を含む遠赤外線検知画素から構成され、遠赤外線検知画素のそれぞれに照射された遠赤外線の量を検知する。検知された遠赤外線検知画素ごとの遠赤外線の量は、アナログの画像波形として出力され、読み出し回路103によって取得される。また、遠赤外線センサ101は、センサ信号処理回路104からの制御信号に応じて、信号読み出しのタイミングなどが制御される。
【0020】
読み出し回路103は、制御部111の制御の下で動作するフロントエンド回路である。読み出し回路103は、遠赤外線センサ101が出力したアナログの画像波形を、13ビットで示された画像信号に変換するADコンバータ103aを有している。ADコンバータ103aは、初期状態では、物体の温度が409.55℃の時に、画像信号のビット数が“8192”となり、0℃の時にデジタル信号の階調値が“0”となり、遠赤外線センサ101が検知した温度を0.05℃刻みで示すように設定されているが、この設定は変更可能である。
【0021】
センサ信号処理回路104は、画像処理部110が具備する制御部111の制御の下で、遠赤外線センサ101を制御する制御信号を出力する。遠赤外線センサ101は、この制御信号に従って動作する。
【0022】
また、画像処理部110は、制御部111、画像処理回路112、圧縮・伝送処理回路113を具備する。
制御部111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成されるマイクロコントローラであり、ROMなどに記憶されたプログラムを実行することにより、この遠赤外線撮像装置100の各部を統括的に制御する。
【0023】
また、制御部111は、画像処理回路112によって処理された画像信号から、全ての遠赤外線検知画素の階調値を抽出する。また、制御部111は、遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付ける領域指定レジスタ110b1と、分解能を示す分解能情報の入力を受け付けるビット指定レジスタ110b2を有するレジスタブロック110b(図2参照)を具備する。
【0024】
そして制御部111は、詳しくは図6において後述するが、領域指定情報によって示された特定の領域についての遠赤外線の量の分解能を変換した領域内分解能変換画像を生成し、生成した領域内分解能変換画像を示す分解能変換画像情報を出力する。
【0025】
画像処理回路112は、制御部111の制御の下で、ADコンバータ103aによりデジタル化された信号に対して、画像信号として適するように信号処理を施し、信号処理された遠赤外線画像データを圧縮・伝送処理回路113および制御部111に出力する。
【0026】
圧縮・伝送処理回路113は、画像処理回路112によって処理された遠赤外線画像データを、コンピュータ400に送信するための処理を行う。圧縮・伝送処理回路113は、制御部111の制御の下で動作し、画像処理回路112からの信号に対して、JPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)方式などの所定の静止画像データフォーマットで圧縮符号化処理を行う。
【0027】
なお、圧縮・伝送処理回路113は、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式などにより動画像の圧縮符号化処理を実行可能なようにしてもよい。
コンピュータ400は、遠赤外線撮像装置100と、LAN(Local Area Network)などの通信手段を介して接続されており、入力部、出力部、表示部、記録媒体(いずれも図示せず)などを具備している。このうち入力部は、ユーザによる遠赤外線撮像装置100の操作内容の入力を受け付ける。出力部は、入力に応じた制御信号を制御部111に出力する。表示部は、遠赤外線撮像装置100による撮像画像を表示する。記録媒体は遠赤外線撮像装置100による撮像画像の画像データを記録すると共に、制御部111からの制御信号を基に指定されたデータを読み出し、読み出されたデータが制御部111に出力される。
【0028】
ここで、上記の遠赤外線撮像装置における基本的な動作について説明する。
制御部111による制御の下、センサ信号処理回路104から出力された制御信号に従い、遠赤外線センサ101によって、撮像対象310および背景320より照射された遠赤外線の検知が行われる。そして、検知された遠赤外線に基づいて遠赤外線センサ101から出力されたアナログの画像波形で示された遠赤外線の検知信号が読み出し回路103に順次供給され、ADコンバータ103aによって階調値を示すデジタル信号に変換される。
【0029】
画像処理回路112は、ADコンバータ103aによってデジタル変換された読み出し回路103からのデジタル信号に対して補正処理を施し、処理後の画像信号を圧縮・伝送処理回路113に供給する。
【0030】
圧縮・伝送処理回路113は、供給された画像信号を圧縮符号化し、生成した符号化データを、制御部111を通じてコンピュータ400に供給する。
以上によって、遠赤外線撮像装置100が撮像した遠赤外線画像が表示され、ユーザは表示画像を見て撮像対象310の表面温度などを知ることができる。
【0031】
また、遠赤外線センサ101から出力された遠赤外線の検知信号が、読み出し回路103のADコンバータ103aによって階調値を示すデジタル信号に変換され、画像処理部110に供給される。ここで、詳しくは図3において後述するように、階調値を示すデジタル信号は、13桁のビット列を用いた2進数を用いて表されている。そして、画像処理部110は、デジタル信号のビット列のうちの連続する8ビットのビット列を抽出して、分解能変換画像情報として、制御部111を通じてコンピュータ400に出力する。このとき、画像処理部110は、デジタル信号から抽出するビット列の抽出の位置を変化させることによって、遠赤外線の量の分解能を変換する。
【0032】
なお、本実施の形態では、画像処理部110と、遠赤外線画像の撮像を行う遠赤外線センサ101、光学ブロック102、読み出し回路103、センサ信号処理回路104とが、遠赤外線撮像装置100として一体に構成されているが、これに限らず、例えば、遠赤外線画像の撮像を行う遠赤外線カメラと、本実施の形態の画像処理部110を具備し、遠赤外線カメラによって撮像された遠赤外線画像の処理を行う遠赤外線画像処理装置とに分離して構成してもよい。
【0033】
次に、遠赤外線撮像装置における分解能の変換動作の詳細について説明する。
図2は、画像処理部で実行される処理を説明するブロック図である。
画像処理部110は、図2に示すように、レジスタブロック110bを具備すると共に、受け付けた遠赤外線画像110aに対して、分解能変換領域指定110cおよび分解能変換画像生成110dの処理を行い、領域内分解能変換画像110eを示す分解能変換画像情報(図4参照)をコンピュータ400に出力する。
【0034】
画像処理部110は、遠赤外線センサ101によって検知された遠赤外線の量を表す遠赤外線画像110aを示す画像信号(図3参照)を受け付ける。この画像信号は、それぞれの画素における遠赤外線の量を2進数で表した13桁のビット列から構成されている。
【0035】
レジスタブロック110bは、画像処理部110が備える制御部111内部の記憶領域であり、さらに領域指定レジスタ110b1およびビット指定レジスタ110b2を具備する。レジスタブロック110bは、LANなどを通じてコンピュータ400から送信されたデータを受け付けると共に、受け付けたデータを記憶可能である。
【0036】
領域指定レジスタ110b1は、遠赤外線画像110aのうち特定された分解能変換領域を示す領域指定情報(図7参照)の入力を受け付ける。領域指定レジスタ110b1は、入力を受け付けた領域指定情報を記憶可能である。
【0037】
ここで、分解能変換領域は、大きさ、位置、形状等を自由に指定および変更することができる。
ビット指定レジスタ110b2は、コンピュータ400から変換する分解能を示す分解能情報の入力を受け付ける。ビット指定レジスタ110b2は、入力を受け付けた分解能情報を記憶可能である。また、ユーザは、分解能情報によって、分解能変換領域を生成して分解能の変換を行うか否かを指定することができる。
【0038】
以上のように、レジスタブロック110bによって、ユーザは、コンピュータ400によって希望する分解能変換領域および分解能を設定することができる。また、レジスタブロック110bは、ユーザの希望する分解能変換領域および分解能を記憶しておくことができる。
【0039】
以下、画像処理部110によって行われる、遠赤外線画像の分解能を変換する処理について説明する。
まず、画像処理部110は、分解能変換領域指定110cによって、領域指定レジスタ110b1が受け付けた領域指定情報を読み出す。
【0040】
すると、画像処理部110は、遠赤外線画像110aの画像信号から、分解能変換画像生成110dによって、分解能変換領域指定110cで読み出された領域指定情報に基づき、分解能変換領域(図7参照)の画素の分解能を変換する一方、分解能変換領域以外の領域の画素については、予め設定された分解能に変換することによって、領域内分解能変換画像110eを生成する。ここで、画像処理部110は、遠赤外線画像110aの遠赤外線画像の画素のうち、分解能変換領域に含まれる画素のみについて、画像信号のビット列から一部を抽出する位置を、当該分解能変換領域以外とは異ならせることによって、分解能情報によって示された分解能に変換した領域内分解能変換画像110eを生成する。
【0041】
そして、画像処理部110は、生成された領域内分解能変換画像110eを示す分解能変換画像情報として、コンピュータ400に出力する。この分解能変換画像情報の値は、画像信号のビット列のうちの連続する一部のビット列である8桁のビット列から構成されている。詳しくは図7から図9において後述するが、出力された分解能変換画像情報に基づき、256階調の領域内分解能変換画像110eがコンピュータ400のモニタに表示される。
【0042】
なお、分解能変換領域以外の領域の画素の分解能については、分解能を最も低くして、すなわち画像信号のビット列から一部を抽出する位置を表示可能である範囲が最大になるように設定するが、自由に設定することもできる。
【0043】
なお、これに限らず、この分解能変換領域以外の領域の画素の分解能は、分解能変換領域の画素の分解能と同様にして、かつ分解能変換領域とは独立させて、変換可能にしてもよい。これにより、分解能変換領域以外の領域についても、適切な分解能で遠赤外線の量(対象物の表面温度)を表示させることができる。
【0044】
次に、分解能変換領域における分解能の変換について説明する。
図3は、遠赤外線撮像装置で検知された遠赤外線の量を示す画像信号を説明する図である。
【0045】
画像信号1101aは、画素ごとに対応してそれぞれ13桁のビットデータによって構成されており、遠赤外線センサ101が検知した遠赤外線の画素ごとの量を2進数で表したものである。画像信号1101aのそれぞれの位は、一番右からそれぞれ、“0.05℃”、“0.1℃”、・・・、“102.4℃”、“204.8℃”に対応し、0℃から409.55℃までを表現することができる。例えば、図中の画像信号1101aは、“27.3℃”を示している。
【0046】
図4から図6は、画像信号から分解能が変換された分解能変換画像情報を説明する図である。
図4における分解能変換画像情報1102eは、画像信号1101a(図3)の13桁のビット列のうち、“4bit”から“11bit”までの8桁のビット列を抽出したものである。この分解能変換画像情報1102eは、分解能変換領域以外の領域における、分解能の変換後の階調値を示す値である。
【0047】
分解能変換画像情報1102eは、“12bit”の値が“0”であるか“1”であるかによって異なるが、例えば、“12bit”の値が“0”の場合には、“0℃”から“204.0℃”まで(また、“12bit”の値が“1”の場合には、“204.8℃”から“408.8℃”まで)を、“0.8℃”間隔で、256階調によって表現することができる。
【0048】
このように、分解能変換領域以外の領域の画素の分解能については、分解能を比較的低くして、画像信号のビット列から一部を抽出する位置を表示可能である範囲が比較的大きくなるように(例えば、図4のように、画像信号1101aの13桁のビット列のうち、“4bit”から“11bit”までの8桁のビット列を抽出するように)設定するが、自由に設定することもできる。
【0049】
例えば、初期設定として、分解能変換領域以外の領域の画素の分解能について、画像信号1101aの13桁のビット列のうち、“5bit”から“12bit”までの8桁のビット列を抽出するように分解能を最も低くして、画像信号のビット列から一部を抽出する位置を表示可能である範囲が最大になるように設定することもできる。これにより、遠赤外線撮像装置100によって撮像された遠赤外線画像のうちの、通常は関心が低いと考えられる分解能変換領域以外の領域については分解能を最低にしておくことで、コンピュータ400の図示しないモニタに表示された遠赤外線画像を監視するユーザの意識や、コンピュータ400やその他の機器の資源などを分解能変換領域に集中させることができる。
【0050】
なお、これに限らず、この分解能変換領域以外の領域の画素の分解能は、分解能変換領域の画素の分解能と同様にして、かつ分解能変換領域とは独立させて、変換可能にしてもよい。これにより、例えば、遠赤外線撮像装置100によって撮像された遠赤外線画像のうちの、通常は関心が低いと考えられる分解能変換領域以外の領域については分解能を比較的低くしておく一方、分解能変換領域以外の領域について注意を払う必要が生じた場合には、これに応じてユーザは分解能を大きくして、監視することができる。
【0051】
図5における分解能変換画像情報1103eは、画像信号1101aの13桁のビット列のうち、“0bit”から“7bit”までの8桁のビット列を抽出したものである。
分解能変換画像情報1103eは、“12bit”から“8bit”までの値によって異なるが、例えば、“12bit”から“8bit”までの値が全て“0”の場合には、“0℃”から“12.75℃”までを、“0.05℃”間隔で、256階調によって表現することができる。
【0052】
このように、本実施の形態の遠赤外線撮像装置100は、13桁のビット列で構成される画像信号から連続する一部である8桁のビット列を抽出して分解能変換画像情報を生成するが、生成の際、分解能変換領域に含まれる画素のみについて、ビット列の抽出する位置を、それ以外の領域の画素の分解能変換画像情報とは異なるように設定することによって、分解能変換領域の画素の分解能を変化させることができる。
【0053】
図6における分解能変換画像情報1104eは、画像信号1101aの13桁のビット列のうち、“0bit”から“6bit”までの7桁のビット列を抽出したものの最も下位に、1桁のビットを付加したものである。
【0054】
分解能変換画像情報1104eは、“12bit”から“7bit”までの値によって異なるが、例えば、“12bit”から“7bit”までの値が全て“0”の場合には、“0℃”から“6.35℃”までを、“0.05℃”間隔で、128階調によって表現することができる。このように、遠赤外線センサ101から出力された遠赤外線画像をデジタル化して表示する時の分解能以下のビット列を用いて表示させてもよい。
【0055】
このように、本実施の形態では、遠赤外線画像をデジタル化した画像情報から任意の連続するビット列を抽出して使用することができる。
以上のように、本実施の形態の画像処理部110は、検知される出力値である温度の表示上の最小間隔を変化させない場合に、領域内分解能変換画像の表示に用いる階調数を減らすことによって、温度の差異の視認を容易にすることができる。
【0056】
なお、ユーザが更に温度の差異を強調したい場合には、抽出するビットを右にシフトしていけばよい。これにより、抽出するビットを1つシフトするごとに、階調数が2分の1になっていくため、差異が2倍ずつ強調されていくことになる。
【0057】
次に、遠赤外線撮像装置100によって撮像された遠赤外線画像に基づいて、コンピュータ400のモニタにおいて表示される表示画面について説明する。
図7は、表示画面を説明する図である。遠赤外線センサ101から入力がない場合であって、ユーザによる設定に基づき分解能の変換が行われている場合には、コンピュータ400の図示しないモニタには図のような表示画面401が表示される。
【0058】
表示画面401には、含まれる画素の遠赤外線の量の分解能が変換されている分解能変換領域501が設けられている。この分解能変換領域501は、画像処理部110によって、画像信号の分解能が他の領域とは異なる分解能に変換されて表示される。
【0059】
表示画面401には、同一の遠赤外線の量の画素には同一の階調で表示される。ここでは、遠赤外線センサ101からの入力がないため、画像信号の値も同一であり、分解能変換領域501内(領域521g)は全て同一の階調で表示されている。また、分解能変換領域501以外の領域(領域421g)も同様に、画像信号の値も同一であり、全て同一の階調で表示されている。ここで、分解能変換領域501は、目的や撮像対象に合わせて大きさ、位置、形状等を自由に設定することができる。
【0060】
図8は、表示画面に撮像対象が表示されている状態を説明する図である。遠赤外線センサ101によって撮像対象312が撮像されている場合であって、ユーザによる設定に基づき分解能の変換が行われていない場合には、コンピュータ400の図示しないモニタには図のような表示画面402が表示される。
【0061】
表示画面402には、遠赤外線センサ101によって撮像された撮像対象312が表示されている。この表示画面402では、分解能が低いため、撮像対象312の表面温度はわずかにばらつきがあるにもかかわらず、全て同一の階調で表示されており、1つの領域(領域412a)を形成している。また、撮像対象312以外の領域(領域422g)も同様に、分解能が低いため、全て同一の階調で表示されている。
【0062】
図9は、撮像対象が表示されている表示画面の分解能が変換されている状態を説明する図である。遠赤外線センサ101によって撮像対象313が撮像されている場合であって、ユーザによる設定に基づき分解能の変換が行われている場合には、コンピュータ400の図示しないモニタには図のような表示画面403が表示される。
【0063】
表示画面403には、遠赤外線センサ101によって撮像された撮像対象313が表示されている。この表示画面403には、図7の表示画面401と同様に、含まれる画素の遠赤外線の量の分解能が変換されている分解能変換領域503が設けられている。
【0064】
分解能変換領域503では、領域内の画素の分解能は、分解能変換領域503以外の領域(領域413aおよび領域423g)と異なるように設定されるが、通常、分解能変換領域503の分解能は、それ以外の領域の分解能よりも高く設定される。分解能変換領域503内は、図中の領域513b,513c,513d,513eおよび523gのように、検知された遠赤外線の量に応じた複数の階調で表現される。
【0065】
また、分解能変換領域503以外の領域(領域413aおよび領域423g)は、図8と同様に、分解能が低いため、それぞれ同一の階調で表示されている。
このように、本実施の形態では、例えば、人間を映し出している時に、顔の部分は比較的分解能が低い画像で表示しながら、ズボンや胸のポケットの凹凸がわかるようになる。これにより、ポケットに異物が入っているかどうかが容易にわかるようになる。
【0066】
また、警備員等が尋問等を行うことにより、嘘の回答をすると顔部分の体温が上昇する人間が多いことから、顔の部分を分解能変換領域に指定すれば、この尋問等の対象者の体全体の動きを観察しながら、顔部分の体温を詳細に調べることがより容易になる。
【0067】
なお、本実施の形態に係る遠赤外線撮像装置100の機能の一部は、コンピュータによって実現することができる。その場合、このような機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そして、そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。
【0068】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録された光ディスクなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、そのプログラムを、サーバコンピュータからネットワークを介して他のコンピュータに転送することもできる。
【0069】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムまたはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】遠赤外線撮像装置の構成図である。
【図2】画像処理部で実行される処理を説明するブロック図である。
【図3】遠赤外線撮像装置で検知された遠赤外線の量を示す画像信号を説明する図である。
【図4】画像信号から分解能が変換された分解能変換画像情報を説明する図である。
【図5】画像信号から分解能が変換された分解能変換画像情報を説明する図である。
【図6】画像信号から分解能が変換された分解能変換画像情報を説明する図である。
【図7】表示画面を説明する図である。
【図8】表示画面に撮像対象が表示されている状態を説明する図である。
【図9】撮像対象が表示されている表示画面の分解能が変換されている状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
100……遠赤外線撮像装置、101……遠赤外線センサ、102……光学ブロック、102a……レンズ、103……読み出し回路、103a……ADコンバータ、104……センサ信号処理回路、110……画像処理部、111……制御部、112……画像処理回路、113……圧縮・伝送処理回路、310……撮像対象、320……背景、400……コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体から放射される遠赤外線を検知することによって撮像された画像の処理を行う遠赤外線画像処理装置において、
遠赤外線カメラによって撮像された遠赤外線画像を示す画像信号を受け付ける画像信号受付部と、
前記遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付ける領域指定受付手段と、
前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を変換した分解能変換画像情報を生成する分解能変換部と、
を有することを特徴とする遠赤外線画像処理装置。
【請求項2】
前記分解能変換部が変換する前記分解能を示す分解能情報の入力を受け付ける分解能受付手段を有し、
前記分解能変換部は、前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を、前記分解能情報によって示された分解能に変換した前記分解能変換画像情報を生成することを特徴とする請求項1記載の遠赤外線画像処理装置。
【請求項3】
前記画像信号は、前記遠赤外線画像のそれぞれの画素における遠赤外線の量を2進数で表した所定の長さのビット列から構成され、
前記分解能変換画像情報の値は、前記画像信号の前記ビット列のうちの連続する一部のビット列によって構成され、
前記分解能変換部は、前記画像信号によって示される前記遠赤外線画像の画素のうち、前記領域指定情報によって示された特定の領域に含まれる画素のみについて、前記画像信号のビット列から一部を抽出する位置を、当該特定の領域以外とは異ならせることによって、当該特定の領域の前記分解能を変換した前記分解能変換画像情報を生成することを特徴とする請求項1記載の遠赤外線画像処理装置。
【請求項4】
前記領域指定受付手段は、入力を受け付けた前記領域指定情報を記憶可能であることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線画像処理装置。
【請求項5】
前記分解能受付手段は、入力を受け付けた前記分解能情報を記憶可能であることを特徴とする請求項2記載の遠赤外線画像処理装置。
【請求項6】
前記分解能変換部は、前記分解能変換画像情報を、前記特定の領域以外の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を低くして生成することを特徴とする請求項1記載の遠赤外線画像処理装置。
【請求項7】
物体から放射される遠赤外線を検知することによって撮像を行う遠赤外線撮像装置において、
遠赤外線画像を撮像し、撮像した当該遠赤外線画像を示す画像信号を出力する遠赤外線撮像手段と、
前記遠赤外線撮像手段から出力された画像信号を受け付ける画像信号受付部と、
前記遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付ける領域指定受付手段と、
前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を変換した分解能変換画像情報を生成する分解能変換部と、
を有することを特徴とする遠赤外線撮像装置。
【請求項8】
物体から放射される遠赤外線を検知することによって撮像された遠赤外線画像の処理を行う遠赤外線画像処理方法において、
画像信号受付部が、遠赤外線カメラによって撮像された遠赤外線画像を示す画像信号を受け付け、領域指定受付手段が、前記遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付けるステップと、
分解能変換部が、前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を変換した分解能変換画像情報を生成するステップと、
を含むことを特徴とする遠赤外線画像処理方法。
【請求項9】
物体から放射される遠赤外線を検知することによって撮像された遠赤外線画像の処理をコンピュータに実行させる遠赤外線画像処理プログラムにおいて、
遠赤外線カメラによって撮像された遠赤外線画像を示す画像信号を受け付け、領域指定受付手段が、前記遠赤外線画像のうちの特定の領域を示す領域指定情報の入力を受け付けるステップと、
前記遠赤外線画像における、前記領域指定情報によって示された前記特定の領域についての前記遠赤外線の量の分解能を変換した分解能変換画像情報を生成するステップと、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする遠赤外線画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−14475(P2009−14475A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175920(P2007−175920)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】