説明

遠隔ガイダンスシステム

【課題】ユーザに対して、遠隔地のオペレータが対話を行いながら各種案内を行う、遠隔ガイダンスシステムを提供する。
【解決手段】小型ロボットを接続した携帯端末を所持したユーザに対し、遠隔地のオペレータが、携帯端末の情報よりユーザの周囲の情景を確認し、また、ユーザに対して音声対話を行いつつ、画像やロボットのモーションを使いながら案内を行うことにより、オペレータがユーザの近くに存在しなくても、きめ細かな案内を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに対し対話を行いながら各種案内を行う、遠隔ガイダンスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが購入した商品のユーザサポートは、電話やインターネットなどのネットワークを利用して行われることが一般的となっているほか、商品の販売などもネットワーク経由で行われることが増えつつある。
【0003】
一方、例えば観光案内では、長らくバスガイド等の人間が直接ユーザ(観光客)対応を行っていたが、最近ではGPS(全地球測位システム)を搭載した携帯端末により、ユーザの求めに応じてコンピュータにより適時情報を画像や音声で配信するようなシステムの開発も行われている(例えば特許文献1)。人間が直接ユーザに対して案内等を行う場合、案内者であるガイドは対象ユーザの近くにいる必要があるため、必然的にガイドもユーザとともに観光地に滞在する必要がある。これに対し、携帯端末を利用しネットワーク或いは電話回線を介した情報配信では、コンピュータとユーザとの物理的な位置関係には制約されない。
【0004】
ところで、人間が他の人間に対して説明を行う場合、説明に身振りを交え、より解り易く説明を試みるということが一般的に行われる。また、一般的な会話においても、例えば、うなずきや首振りといった仕草を交えて話すことにより、話し相手に対して、より強い共感を与えることができる。これは人間以外のもの、例えばロボットが人間と対話する場合においても有効であることが知られている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−261967号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】神田,他:“人間対話ロボットのための協調的身体動作の利用”,日本ロボット学会誌,pp.898−909,2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コンピュータによる情報配信では、提供される情報は画一的になり、必ずしも、ユーザが求めているものと合致しているとは限らない。また、画像や音声のみでの情報配信では、ユーザに解り易く情報を提供するという点でも課題が残る。
【0008】
そこで、本発明は、ユーザの物理的な存在場所にかかわらず、ユーザに対して求める情報を的確に案内するための、遠隔ガイダンスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明は、ユーザが案内を受けるための、通信機能、GPS機能、画像の撮影および表示機能、音声の録音および再生機能を有する携帯端末と、携帯端末に取り付ける小型ロボット、ユーザに対して案内を行うオペレータが操作する、ネットワークや電話回線による携帯端末からの画像・音声受信機能、携帯端末のGPS機能により取得したユーザの位置情報受信機能、携帯端末への映像・音声の送信機能、携帯端末に取り付けられた小型ロボットを操作する機能、を有するオペレートPCにより構成されることを特徴とする。
【0010】
これによれば、オペレータはユーザの持つ携帯端末より、通信機能を利用してユーザの置かれた環境の画像情報、音声情報、及び、GPS機能を利用してユーザの位置情報を知ることができる。このため、遠隔地であってもオペレータはユーザの現在状況をリアルタイムに詳しく知ることが可能である。また、オペレートPCより音声を携帯端末に送信する機能も有しているため、オペレータがユーザと対話することによって、ユーザの嗜好や興味、要求などを詳しく知ることが可能である。さらに、画像やロボットの動きを利用して案内が行えるため、ユーザに解り易く説明を行うことが可能である。
【0011】
さらに、オペレートPCと携帯端末は、インターネット或いは電話回線にて接続されており、オペレータは、例えば在宅の人が一定時間のみ行う、といったことも可能であり、これまでの観光ガイドのように現地で長時間案内を行うことが困難な人でもオペレータとして働くことが可能である。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明において小型ロボットがオペレータの身体動作に連動し、もしくはオペレータの操作によって携帯端末より出力される画像や音声と連動しながら動作することを特徴とする。
【0013】
これによれば、例えば、オペレータが「そうですね」といった肯定の発言をした際に小型ロボットがうなずく、というように、オペレータの発話内容に合わせてロボットが動作することが可能であり、これによってユーザに対してよりオペレータの発言に対する共感を与えることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、ユーザに提示する可能性のある情報、例えば、観光地の商品案内の静止画像や動画像をあらかじめデータベースに登録しておき、ユーザへ観光案内を行う間に、適時携帯端末に表示させる機能である。
【0015】
これによれば、例えば、地域限定、期間限定の商品をユーザの嗜好に応じて適時紹介することが可能であり、特産品の知名度アップ向上といった効果が期待できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項3に記載の発明において、ユーザが携帯端末を用いて、広告された商品を購入することが出来る機能である。
【0017】
これによれば、例えば、お酒などの重たいものや、嵩張るものなど、お土産物として敬遠されがちな商品でも、例えば、自宅に届けるようなしくみにすれば、売り上げ向上といった効果が期待できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オペレータが遠隔地よりユーザに対して案内行為を行うため、例えば、在宅の人が空いた時間に観光案内を行うなど、より自由度の高い労働形態が実現可能である。また、人が案内を行うためコンピュータによる画一的な案内に比べ、よりきめ細やかな案内が行えるほか、小型ロボットを使用することにより、ユーザに対して共感性の高い案内を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシステム構成例を示す図である。
【図2】携帯端末と小型ロボットの構成を示す図である。
【図3】システムの処理の流れを示す図である。
【図4】本発明の利用局面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明のシステム構成例を示している。携帯端末1には小型ロボット2が接続され、一体となった形態をとっている。携帯端末1には端末ディスプレイ3と端末カメラ4が備わっており、また端末スピーカ5と端末マイク6が接続されている。ユーザは、この小型ロボット2を備えた携帯端末1を持ち歩いてシステムを利用する。持ち歩く際は、もちろん直接手で持っても良いし、首から提げるなどしても良い。
【0022】
一方、オペレータが使用するオペレートPC7には、PCディスプレイ8、PCカメラ9、PCスピーカ10、PCマイク11、入力装置12が接続されている。PC入力装置12は、例えば一般的なキーボードやマウスが該当する。オペレータは、オペレートPCを使用してユーザに対する案内を行う。
【0023】
また、オペレータは小型ロボット2を、オペレータの顔の向きと同期する動きをさせるため、ヘッドセット14を装着している。
【0024】
携帯端末1とオペレートPC7はネットワーク13を介してデータの送受信が可能である。ネットワークは、一般的なインターネット網が利用可能である。そのため、オペレータとユーザの存在場所に関する制約は少ない。例えばオペレータは自宅からでも案内を行うことが可能である。
【0025】
図2は、小型ロボット2の構成について示している。携帯端末1はロボット外装2aと接続されている。ロボット外装2aにはロボット筐体2bが取り付けられている。このロボット外装2aを人間、動物などさまざまに変えることができ、例えば、観光地では外装をその観光地のマスコットキャラクターにするなども可能である。また、ロボット外装2aの頭部を動かすために、ロボット筐体2bには第1アクチュエータ2cと第2アクチュエータ2dが備わっている。第1アクチュエータ2cはロボット外装2aの頭部をうなずき方向に、第2アクチュエータ2dは首振り方向に動かす。これにより、ユーザに対し、より共感度の高い案内が可能となる。
【0026】
図3は、本発明の処理の流れを示す図である。まず情報端末1に接続された端末カメラ4、端末マイク6、および情報端末1に内蔵されたGPS1aの情報がオペレートPC7に伝達され、PCディスプレイ8に表示されるほかPCスピーカ10より出力される。これにより、オペレータはユーザの存在位置、状態、発話内容を確認することができる。一方、オペレータの声はPCマイク11より端末スピーカ5を経由して、ユーザに伝えられる。これにより、オペレータとユーザは自由に会話が可能である。また、オペレータの顔の向きを、オペレータが装着しているヘッドセット14に装備しているLED15の動きをPCカメラ9より検出し、オペレータ顔動作検出器7dを経由して検出され、結果がロボット動作指令生成器7cに渡され、小型ロボット2が動作する。これにより、オペレータの発話に合わせて小型ロボットがオペレータの顔の向きと連動して動作することが可能である。さらに、オペレータはPC入力装置12を操作して、小型ロボット2を動かしたり、端末ディスプレイ3に画像や動画を表示させたり、広告を表示することが可能である。画像・動画を表示する場合には、PC入力装置12からの入力に対して画像・動画選択器7aが該当画像や動画を携帯端末1に送り、端末ディスプレイ3や端末スピーカ5を使用してユーザに提示する。広告を表示する場合には、同じくPC入力装置12の操作により、広告データベース7bから必要な広告をオペレータが選択すると、その広告に対応した画像・動画が画像・動作選択器7aにより情報端末1に送信され、端末ディスプレイ3、端末スピーカ5を用いた広告の提示が行われる。また、オペレータはPC入力装置12を使用して直接ロボットの動作指令を送信し、小型ロボット2を操作することも可能である。以上の機能を組み合わせることにより、オペレータはユーザに対してさまざまな案内を行うことが可能となる。
【0027】
図4は、本発明の利用局面の一例である。観光地において情報端末1を持ったユーザ16に対し案内を行う場合である。このとき、オペレータは情報端末1よりのGPSやカメラ情報からユーザ16の位置を把握する。この情報をもとに、オペレータは例えば小型ロボット2の動作を伴いながら「左手に見えますのは、○○○です。」といった案内を行う。ここで、ユーザ16から「○○○は、いつごろ作られたのですか」といった問い合わせを受けた場合には、画像やロボットの動作を交えながら「それは・・・」と返答するなどして案内を行う。また、「このあたりでは、△△△が有名だと聞いたのですが。」といった話題となった場合には、場所や季節などに応じて、「今ですと・・・」といって広告を提示する。
【0028】
このように、従来は観光ガイドが現地で直接行っていた観光案内も、本発明を利用することにより、遠隔地のオペレータが実施できるようになる。そのため、一人の観光ガイドでは観光客の多様な要求に同時にこたえることが難しいが、本発明では各地のオペレータがそれぞれ案内を行うため、各観光客ごとに個別の要求に応じた対応が可能である。また、コンピュータによる画一的な案内では不可能な決め細やかな対応も可能である。
【0029】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、観光案内のほかアミューズメント施設でのイベント、アトラクションへの利用など、幅広い分野への適用が可能である。また、オペレータは在宅のままでも案内業務が可能であるため、高齢者など長時間の現地労働が困難な人にも労働の機会を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯端末
2 小型ロボット
3 端末ディスプレイ
4 端末カメラ
5 端末スピーカ
6 端末マイク
7 オペレートPC
8 PCディスプレイ
9 PCカメラ
10 PCスピーカ
11 PCマイク
12 PC入力装置
13 ネットワーク
14 ヘッドセット
15 LED
16 ユーザ
1a GPS
2a ロボット外装
2b ロボット筐体
2c 第1アクチュエータ
2d 第2アクチュエータ
7a 画像・動画選択器
7b 広告データベース
7c ロボット動作指令生成器
7d オペレータ顔動作検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型ロボットを取り付けた携帯端末を所持するユーザに対し、遠隔地に居るオペレータが、オペレートPCによりネットワーク或いは電話回線を経由して、前記携帯端末を操作し、各種案内を行う遠隔ガイダンスシステムであって、通信機能、GPS機能、画像の撮影および表示機能、音声の録音および再生機能をもつ前記携帯端末と、前記携帯端末に取り付けられたアクチュエータを有する前記小型ロボットと、ネットワーク或いは電話回線により前記携帯端末から画像、音声、前記GPS機能より前記ユーザの位置情報を受信し、また、前記携帯端末に画像と音声を送信し、前記小型ロボットを操作する機能を有する前記オペレートPCからなる、遠隔ガイダンスシステム。
【請求項2】
前記オペレータの動きに連動しながら、もしくは前記オペレータの操作に応じて前記携帯端末より出力される画像、音声と連動しながら前記小型ロボットが動作する機能を有する、請求項1に記載の遠隔ガイダンスシステム。
【請求項3】
前記オペレートPCを使用し、広告データベースより前記ユーザに対して適切な広告を選択し、前記携帯端末の表示機能を用いて案内する機能を有する、請求項1または請求項2に記載の遠隔ガイダンスシステム。
【請求項4】
前記ユーザは、前記広告された商品が気に入った場合、前記携帯端末から購入する事が出来る機能を有する、請求項1または請求項3に記載の遠隔ガイダンスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−875(P2013−875A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151268(P2011−151268)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(509192640)
【Fターム(参考)】