説明

遠隔デスクトップ共有技術を使った、PIP機能を備えたKVMスイッチ

【課題】ピクチャインピクチャ機能を実行し、多数のコンピュータからのデスクトップ画像をユーザコンソールモニタに表示できるようにするキーボード、ビデオ、マウス(KVM)スイッチを提供する。
【解決手段】KVMスイッチは、複数のコンピュータのうちの第1のものをユーザコンソールに切り換える。KVMスイッチはさらに、第1のコンピュータと他のコンピュータそれぞれとの間で、デスクトップ共有および遠隔制御関係を確立し、それにより第1のコンピュータは、他のコンピュータ(サーバ)のデスクトップを見ることができ、それらを制御することができる、クライアントとして作動する。他のコンピュータのデスクトップ画像は、コンソールモニタにウィンドウとして表示され、ウィンドウは移動およびサイズ変更することができる。他のコンピュータからのオーディオデータも、ユーザコンソールに送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード、ビデオ、マウス(KVM)スイッチに関し、特に、ピクチャインピクチャ(PIP)機能を備えたKVMスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2008年10月21日に出願された米国特許出願第12/255,320号の優先権を主張し、その主題は引用により本明細書中に組み込まれるものとする。
キーボード、ビデオ、マウス(KVM)スイッチシステムにおいて、複数のコンピュータはKVMスイッチを介して、1つ以上のユーザコンソールに接続される。各ユーザコンソールは、ビデオ(映像)表示装置(モニタ)、キーボードおよびマウスなどのユーザ入力装置、ならびにオーディオ(音声)スピーカ(任意)を含んでいる。各コンピュータはコンピュータポートに接続されており、各ユーザコンソールはKVMスイッチのコンソールポートに接続されている。KVMスイッチは、各コンソールポートをコンピュータポートに選択的に接続するために、ルーティングマトリクスを有している。このように、各ユーザコンソールはコンピュータのうちの1台に対して、まるでそのコンピュータに直接差し込まれているかのように、選択的にアクセスし制御を行うことができる。KVMスイッチは通常、オンスクリーン表示(OSD)メニューシステムを実行して、ユーザがKVMスイッチと相互作用し、例えばスイッチへのログオンやアクセスするコンピュータの選択などの、その機能を制御できるようにする。
【0003】
いくつかのKVMスイッチシステムにおいて、ピクチャインピクチャ(PIP)機能がKVMスイッチにおいて実行されて、ユーザが多数のコンピュータからのビデオ信号(デスクトップ画像)を同時に見られるようにしている。例えば、米国特許第7240111号は、多数のコンピュータからの、「ホストウィンドウ」と呼ばれるデスクトップ画像が、ユーザコンソールのモニタに同時に表示される、「管理装置」と呼ばれるKVMスイッチを記載している。同文献の図3および図4を参照のこと。このシステムによりユーザは、所望のコンピュータのホストウィンドウ上でマウスを動かすことにより、複数のコンピュータ間を横断(ナビゲート)することができる。管理装置はハードウェアを使って、PIP機能を実行する。特に、コンソールモニタに表示されるビデオ信号は、多数のコンピュータからのビデオ信号を入力として使用して、管理装置により生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7240111号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第12/255,320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、関連技術の限界および欠点からくる1つ以上の問題を実質的に回避する、ユーザコンソールにより2台以上のコンピュータにアクセスするための、改良されたKVMスイッチおよび関連方法に向けられている。
本発明は、ユーザが、KVMスイッチに接続された2台以上のコンピュータにアクセスし、コンソールモニタ上で2台以上のコンピュータのデスクトップ画像を見ることができるようにする、KVMスイッチ装置を提供する。
【0006】
本発明はまた、特別なビデオ処理ハードウェアを追加せずに、このようなKVMスイッチ装置を提供する。
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明に記載され、一部は詳細な説明から明らかとなるであろうし、または本発明の実施によって理解されてもよい。本発明の目的および他の利点は、その詳細な説明および特許請求の範囲ならびに添付図面において特に指摘する構造により、実現および達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、これらおよび他の利点を実現するために、実施形態を示し、広範に記載するように、本発明は、ユーザコンソールに接続するための、少なくとも1つのコンソールポートと、それぞれコンピュータに接続するための、複数のコンピュータポートと、前記複数のコンピュータポートおよび前記少なくとも1つのコンソールポートに連結された切り換え構造であって、前記コンソールポートと選択されたコンピュータポートとの間でビデオデータおよびユーザ入力装置データを選択的に接続するための切り換え構造と、それぞれが前記コンピュータポートの1つに連結された複数の通信制御器であって、あらかじめ定められた通信プロトコルを使用して前記それぞれのコンピュータと通信するための複数通信制御器と、前記複数の通信制御器に連結された制御回路とを含み、前記制御回路は、デスクトップ共有および遠隔制御用途のために、クライアント側遠隔制御プログラムおよびサーバ側遠隔制御プログラムを記憶するメモリを含み、前記コンピュータポートの第1のものと、前記コンピュータポートの第2のものとを選択する、前記ユーザコンソールからの指示に応答して、前記制御回路は、前記切り替え構造を制御して、前記コンソールポートと前記選択された第1のコンピュータポートとの間で、ビデオデータおよびユーザ入力装置データを接続し、前記選択された第1のコンピュータポート用の前記通信制御器を制御して、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第1のマスストレージ装置をエミュレートし、前記選択された第1のコンピュータポートに接続された第1のコンピュータにより実行するために、前記クライアント側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に転送し、前記選択された第2のコンピュータポート用の前記通信制御器を制御して、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置をエミュレートし、前記選択された第2のコンピュータポートに接続された第2のコンピュータにより実行するために、前記サーバ側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に転送し、前記第1および第2のコンピュータポート用の前記通信制御器の間でデータを転送する、キーボード、ビデオ、マウス(KVM)スイッチを提供する。オーディオ(音声)データは、ビデオ(映像)データと同じ経路(パス)で送信することができる。
【0008】
また別の局面において、本発明は、ユーザコンソールにより2台以上のコンピュータにアクセスするためのKVMスイッチにおける方法であって、(a)前記ユーザコンソールが第1のユーザコマンドを出して、第1のコンピュータポートに接続された選択された第1のコンピュータにアクセスするステップと、(b)前記第1のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが前記第1のコンピュータポートを前記コンソールポートに接続して、前記コンソールポートと前記第1のコンピュータポートとの間で、ビデオデータおよびユーザ入力装置データを転送するステップと、(c)前記第1のコンピュータが、そのデスクトップ画像のビデオデータを、前記KVMスイッチを介して前記ユーザコンソールに送信するステップと、(d)前記ユーザコンソールが、前記KVMスイッチを介して受信した前記ビデオデータを、コンソールモニタに表示するステップと、(e)前記KVMスイッチが、あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第1のマスストレージ装置を、前記第1のコンピュータポート用にエミュレートし、前記第1のコンピュータにより実行するために、クライアント側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に転送するステップと、(f)前記ユーザコンソールが、第2のユーザコマンドを出して、第2のコンピュータポートに接続された選択された第2のコンピュータにアクセスするステップと、(g)前記第2のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置を、前記第2のコンピュータポート用にエミュレートし、前記第2のコンピュータにより実行するために、サーバ側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に転送するステップと、(h)前記KVMスイッチが、前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置および前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置の間で、データを転送するステップと、(i)前記第2のコンピュータが、前記サーバ側遠隔制御プログラムを実行して、当該第2のコンピュータのデスクトップ画像を表すビデオデータを、前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に送信し、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされたユーザ入力装置から受信するステップと、(j)前記第1のコンピュータが、前記クライアント側遠隔制御プログラムを実行して、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に送信し、ビデオデータを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置から受信するステップと、(k)前記第1のコンピュータが、前記第2のコンピュータのデスクトップ画像を含む、そのデスクトップ画像のビデオデータを、前記KVMスイッチを介して前記ユーザコンソールへ送信することを継続するステップとを含む、方法を提供する。オーディオデータは、ビデオデータと同じ経路で送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るKVMスイッチシステムの構成およびデータ経路を示す。
【図2】本発明の実施形態に係るKVMスイッチの構造を示す。
【図3】本発明の実施形態に係るKVMスイッチシステムの動作を示す流れ図である。
【図4】本発明の実施形態に係るKVMスイッチシステムの動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明はともに例示的および説明的であって、特許を請求された発明について、さらなる説明を提供することを意図していることを理解すべきである。
要求に従い、本発明の詳細な例示的実施形態を本明細書において開示する。しかし、本発明に係る技術、システムおよび作動構造は、多様な形態および態様で実施されてもよく、そのうちのいくつかは開示された実施形態のものと大きく異なっていてもよい。したがって、本明細書中に開示する特定の構造および機能の詳細は単なる代表例であるが、しかしこの点で、それらは開示の目的のための最良の実施形態であり、本発明の範囲を規定する本特許請求の範囲の根拠を提供するとみなされる。以下に、本発明の好ましい実施形態およびいくつかの代替的な実施形態の詳細な説明を示す。
【0011】
本発明は、ユーザが同一のコンソールモニタ上で複数のコンピュータのデスクトップ画像を見ることができるようにし、それによりピクチャインピクチャ機能、すなわちPIP機能を実現する、改良されたKVMスイッチおよびKVMスイッチにおける関連方法を提供する。PIP機能は、KVMスイッチ中に特別なビデオ処理ハードウェアを必要とせず、KVMスイッチのソフトウェア/ファームウェアとして主に実現される。くわえて、コンピュータに特別なソフトウェアをインストールすることも必要としない。所望のコンピュータのデスクトップ画像は、コンソールモニタにウィンドウとして表示され、ウィンドウはユーザにより移動(ドラッグ)およびサイズ変更することができる。くわえて、所望のコンピュータからのオーディオ(音声)データは、ケーブルを追加せずに、ユーザコンソールのスピーカで再生することができる。これらの機能は、2台のコンピュータの間のデスクトップ共有および遠隔制御技術を使用することにより実現できる。
【0012】
デスクトップ共有技術は、VNC(バーチャルネットワークコンピューティング)と呼ばれることがある。VNCは、1台のクライアントコンピュータがサーバコンピュータを遠隔制御できるようにする、グラフィカルデスクトップ共有システムである。VNCシステムにおいて、サーバコンピュータおよびクライアントコンピュータはネットワークによって接続されて、サーバからクライアントへとビデオデータを交換し、かつ、クライアントからサーバへとキーボード/マウスデータを交換する。
【0013】
2008年10月21日に提出された、「REMOTE DESKTOP CONTROL SYSTEM USING USB INTERFACE AND METHOD THEREOF」(代理人明細書72836.8036)と題し、本明細書に引用によりそのまま組み込まれる、共通の譲受人による米国出願第12/255,320号は、USBプロトコルを使用した接続装置によりサーバコンピュータおよびクライアントコンピュータが接続される、デスクトップ共有および遠隔操作システムを記載している。接続装置は、制御ユニット(MCU)と、サーバコンピュータおよびクライアントコンピュータと通信する、2台のUSB制御器(コントローラ)とを含んでいる。サーバ側USB制御器は、USB CD-ROM/キーボード/マウス複合装置をエミュレートし、クライアント側USB制御器はUSB CD-ROMをエミュレートする。サーバはビデオ(映像)データ(デスクトップ画像)をサーバ側のエミュレートされたCD-ROMに連続的に書き込み、クライアントはそのデータをクライアント側のエミュレートされたCD-ROMから連続的に読み出し、それをそのモニタに適用する。キーボードデータおよびマウスデータは、クライアント側のエミュレートされたCD-ROM装置およびサーバ側のエミュレートされたキーボード装置およびマウス装置を介して、ビデオデータと反対方向に転送される。MCUは2台のUSB制御器の間でデータを転送する。接続装置は、エミュレートされたCD-ROMの自動実行(オートラン)機能を使用してサーバおよびクライアントにより自動で実行される、アプリケーションプログラムを記憶しており、プラグアンドプレイを実現する。
【0014】
本発明は、KVMスイッチに接続された2台以上のコンピュータが、それらの間でデスクトップ共有および遠隔制御関係を確立できるように、KVMスイッチを使用して、同様のデスクトップ共有および遠隔制御方法を実現する。本発明の実施形態に係るKVMシステムの全体構成およびデータフローを、図1に示す。1台以上のユーザコンソール14および複数のコンピュータが、KVMスイッチ12に接続されている。各コンピュータ16はコンピュータポートに接続されており、各ユーザコンソール14はKVMスイッチ12のコンソールポートに接続されている。各ユーザコンソール14は、表示装置(モニタ)、1台以上のユーザ入力装置(例えばキーボードおよびマウス)、およびスピーカ(任意)を含んでいる。本例で「PC1」とする、複数のコンピュータのうちの第1のものは、KVMスイッチにより従来の仕方で、ユーザコンソール14に接続されている。すなわち、KVMスイッチ12はビデオデータおよびオーディオデータを、第1のコンピュータポートからコンソールポートにルートし(送り)、キーボード信号およびマウス信号を、コンソールポートから第1のコンピュータポートにルートする。KVMスイッチ12は、信号ルーティング(送り)の一部として、適切な仕方で信号を処理してもよい。このデータ経路(パス)を図1において、破線「D1」により示す。このKVM切り換え(スイッチング)機能は当該技術において公知であり、いかなるふさわしい切り換え構造によって実現されてもよいため、より詳細な説明は省略する。
【0015】
本例で「PC2」とする第2のコンピュータは、KVMスイッチ12により第1のコンピュータPC1と、デスクトップ共有および遠隔制御関係に接続されている。この関係において、第2のコンピュータPC2は、そのデスクトップ画像を共有し、制御を受けるサーバであり、第1のコンピュータPC1は、サーバのデスクトップ画像を見、キーボード信号およびマウス信号を送信してサーバを制御するクライアントである。サーバはサーバ側遠隔制御プログラムを実行し、クライアントはクライアント側遠隔制御プログラムを実行し、以下に、より詳細に説明するように、デスクトップ共有および遠隔制御機能を実現する。KVMスイッチ12は、上述した共通の譲受人による米国特許出願に記載されている接続装置と同様の役割を果たす。KVMスイッチ12、サーバコンピュータPC2およびクライアントコンピュータPC1は相互に協働し、それにより、デスクトップ画像を表すビデオデータとオーディオデータとが、KVMスイッチを介してサーバからクライアントに送信され、キーボードデータおよびマウスデータが反対方向へ送信される。このデータ経路を図1において、破線「D2」により示す。
【0016】
その結果、コンソール装置14のモニタに第1のコンピュータPC1のデスクトップ画像が表示されるが、これはPC1がKVMスイッチ12によりコンソールに切り換えられるためであり、第2のコンピュータPC2のデスクトップ画像がウィンドウとして表示されるが、これはPC1およびPC2がデスクトップ共有関係にあるためである。同様に、コンソール装置14のスピーカは第1のコンピュータPC1および第2のコンピュータPC2のオーディオデータを再生するが、これはPC2のオーディオデータがPC1のオーディオデータと混ざっており、PC2のオーディオポートに存在するためである。ユーザはユーザ入力装置(キーボードおよびマウス)を使用して、それらがまるで第1のコンピュータに直接差し込まれているかのように、第1および第2のコンピュータをともに制御することができる。
【0017】
図2を参照して、KVMスイッチ12に接続された2台のコンピュータの間でデスクトップ共有および遠隔制御関係を可能にするために、KVMスイッチには一式の構成要素(コンポーネント)が設けられており、これには各コンピュータポート用の追加のUSB装置制御器と、これらのUSB装置制御器に接続されるロジック(論理回路)とが含まれている。(図2では、繁雑にならないように、一式の構造が複数個並行して設けられている場合、一式のもののみに参照番号を付している。)
図2に示すように、KVMスイッチ12は、それぞれコンピュータ16に接続するための複数のコンピュータポート(本例では3つ示す)と、ユーザコンソール14に接続するためのコンソールポートとを含んでいる。各コンピュータポートは、ビデオスイッチ26に連結されたビデオ接続(コネクション)と、USBハブ21の上流端に連結されたUSB接続とを含んでいる。USBハブ21の2つの下流端は、第1のUSB装置制御器22および第2のUSB装置制御器23に連結されている。一実施形態において、第1のUSB装置制御器22は高速の制御器であり、第2のUSB装置制御器23は低速の制御器である。各コンピュータポートの第1のUSB装置制御器22はDMA(ダイレクトメモリアクセス)ロジック24に連結されている。各コンピュータポートの第2のUSB装置制御器23は、マイクロコントローラユニットMCU25などの制御回路に連結されている。MCU25はKVMスイッチ12の機能を全体的に制御し、制御ファームウェアならびに他のプログラムおよびデータを記憶する適切なメモリ(図示せず)を含んでいる。MCU25は、KVMスイッチ12のコンソールポートに連結されているUSBホスト制御器27に連結されている。コンソールポートがキーボードおよびマウス用に2台の別個のUSBコネクタを有している場合、USBハブ28は、USBホスト制御器27とコンソールポートとの間に設けられていてもよい。ビデオスイッチ26は、KVMスイッチ12のコンソールポートのモニタポートに接続されている。
【0018】
第2のUSB装置制御器23、MCU25、ビデオスイッチ26、USBホスト制御器27、およびUSBハブ28(あれば)はKVMスイッチの構成要素である。ビデオスイッチ26はビデオ信号を、選択されたコンピュータポートからユーザコンソール14のモニタに切り換える。第2のUSB装置制御器23およびUSBホスト制御器27は、USBプロトコルを使用して、コンピュータ16およびユーザコンソール14の各々との、キーボード信号およびマウス信号の通信を制御する。MCU25はキーボード信号およびマウス信号を、ホストUSB制御器27を介してコンソールポートから、第2のUSB装置制御器23を介して選択されたコンピュータポートへ送信する。繁雑にならないように、図2にはオーディオデータを切り換えるための構造を示していないが、これらは通常、オーディオコーデック、オーディオスイッチまたはオーディオミキサなどを含んでいる。むろん、他のふさわしい構造を使用して、ビデオ、オーディオ、キーボードおよびマウス信号用のKVM切り換え機能を実現してもよい。より一般的には、KVMスイッチ12は、コンソールポートとコンピュータポートとの間に、ビデオ、オーディオ、キーボードおよびマウス信号を切り換える機能を実行するための切り換え構造を含んでいる。OSDメニューを生成するための構造などの、図2に示していない他の構造が、KVMスイッチ12に含まれていてもよい。
【0019】
複数の第1のUSB装置制御器22と、DMAロジック24と、MCU25とを、本明細書中で集合的に、KVMスイッチ12のデスクトップ共有および遠隔制御セクションと呼ぶ。これらはKVMスイッチ12のデスクトップ共有および遠隔制御機能を実現する。第1のUSB制御器22はUSBプロトコルを使用して、対応するコンピュータポートに接続されたコンピュータと通信する。第1のUSB制御器22はそれぞれ、接続されたコンピュータ用に1台以上のUSB装置をエミュレートする。接続されたコンピュータがデスクトップ共有および遠隔制御関係においてクライアントとして機能する場合、USB制御器22はUSB CD-ROM装置をエミュレートする。すなわち、クライアントコンピュータにとってUSB制御器26は、USBプロトコルを使用してクライアントと通信するCD-ROMに見える。クライアント用のエミュレートされたCD-ROM装置は、クライアントコンピュータによって実行されるクライアント側遠隔制御プログラムを含んでいる。接続されたコンピュータがデスクトップ共有および遠隔制御関係においてサーバとして機能する場合、USB制御器22はUSB CD-ROM/キーボード/マウス複合装置をエミュレートする。すなわち、サーバコンピュータにとってUSB制御器22は、USBプロトコルを使用してサーバと通信するCD-ROM/キーボード/マウス複合装置に見える。サーバ用のエミュレートされたCD-ROM装置は、サーバコンピュータによって実行されるサーバ側遠隔制御プログラムを含んでいる。
【0020】
DMAロジック24は、複数のUSB制御器22の間でデータを転送する。MCU25はDMAロジック24を介してUSB制御器22を制御し、USB制御器が適切なUSB装置をエミュレートするようにする。MCU25はまた、そのメモリに記憶されている適切な遠隔制御プログラム(サーバ側プログラムまたはクライアント側プログラム)を、エミュレートされたCD-ROM装置に転送し、それらをクライアントまたはサーバに提供することができるようにする。図2の例ではDMAロジック24およびMCU25は2つの別個の構成要素であるが、これらを組み合わせて、上記の機能を実行する1つの構成要素(制御回路)とすることもできる。
【0021】
エミュレートされた装置(USB CD-ROMまたはUSB CD-ROM/キーボード/マウス)は標準の装置であるため、Windows(登録商標)、Mac(商標)、Linux(商標)などの、普及しているオペレーティングシステムを実行するコンピュータは、それらの既存のドライバを使用して、特別なドライバをインストールする必要なしに、USB制御器と通信することができる。USB CD-ROM装置またはUSB CD-ROM/キーボード/マウス複合装置をエミュレートする方法は当該技術において公知であり、より詳細な説明は本明細書において省略する。くわえて、サーバおよびクライアント用のエミュレートされたCD-ROMは自動実行機能を有していることが好ましく、これはエミュレートされたCD-ROMに自動実行ファイルを設けることで実現されてもよい。このように、エミュレートされたCD-ROM中のクライアント側およびサーバ側遠隔制御プログラムは、エミュレートされたCD-ROMが存在するときに、クライアントコンピュータおよびサーバコンピュータによって自動で実行されることになり、ユーザはクライアントコンピュータまたはサーバコンピュータに対して、個別にプログラムをインストールする手順を行う必要がない。
【0022】
サーバ側遠隔制御プログラムはサーバコンピュータに指示して、エミュレートされたCD-ROM装置にビデオデータおよびオーディオデータを書き込むことにより、サーバによって生成される、デスクトップ画像を表すビデオデータおよびオーディオデータを、対応するUSB制御器22に連続して転送させ、かつ、エミュレートされたキーボード装置およびマウス装置からキーボードデータおよびマウスデータを連続して読み出させる。サーバコンピュータはキーボードデータおよびマウスデータを使用して、その機能を制御する。
【0023】
クライアント側遠隔制御プログラムはクライアントコンピュータに指示して、エミュレートされたCD-ROM装置からビデオデータおよびオーディオデータを読み出すことにより、対応するUSB制御器22からビデオデータおよびオーディオデータを連続して受信させる。クライアントコンピュータは、ビデオデータおよびオーディオデータをそのモニタポートおよびスピーカポートに適用する。サーバからのオーディオデータは通常、クライアントコンピュータ自体からのオーディオデータと混ぜられ、スピーカポートに適用される。好ましい実施形態において、サーバのデスクトップ画像は、クライアントのデスクトップ上でウィンドウ(本明細書中では遠隔制御ウィンドウと呼ぶ)として表される。クライアントはサーバから、サーバのデスクトップ画像の解像度について情報を受信し、クライアントはこの情報に基づき、遠隔制御ウィンドウおよびその内容を描画する。遠隔制御ウィンドウはドラッグ(移動)およびサイズ変更することができてもよい。好ましい実施形態において、クライアント側遠隔制御プログラムは遠隔制御ウィンドウを生成するが、ウィンドウを描画および管理する実際の機能(ドラッグ、サイズ変更など)は、クライアントコンピュータのオペレーティングシステムにより行われる。あるいは、これらの機能をクライアント側遠隔制御プログラムが行うこともできる。クライアント側遠隔制御プログラムはまた、クライアントコンピュータに指示して、サーバに向けられたキーボードイベントおよびマウスイベントを取得させる。例えば、入力カーソルが遠隔制御ウィンドウ内に位置しているかどうか、および/または、そのウィンドウがクライアントのデスクトップでのトップ(一番上の)ウィンドウであるかどうかに基づき、キーボードイベントまたはマウスイベントがサーバを制御するためのものであるかを、クライアントは判断することができる。これはクライアントのオペレーティングシステムの機能でもある。キーボードイベントまたはマウスイベントがサーバに向けられている場合、クライアントはキーボードデータおよびマウスデータを、その対応する第1のUSB装置22(CD-ROMをエミュレートしている)に連続して転送する。
【0024】
ビデオデータおよびオーディオデータは、KVMスイッチ12を介してサーバコンピュータからクライアントコンピュータへ連続して転送され、キーボードデータおよびマウスデータは反対方向に連続して転送されるため、サーバコンピュータのグラフィカルデスクトップ共有および遠隔制御が達成される。
図2で、デスクトップ共有および遠隔制御関係において、PC2がサーバとして作動し、PC1がクライアントとして作動すると仮定すると、ビデオデータおよびオーディオデータは、USBハブ2、(CD-ROMをエミュレートしている)USB装置制御器2A、DMAロジック、(CD-ROMをエミュレートしている)USB装置制御器1A、およびUSBハブ1を介して、PC2からPC1に送信される。PC1からPC2へのキーボードデータおよびマウスデータは、さまざまな仕方で扱われてもよい。一実施態様において、PC1からのキーボードデータおよびマウスデータはPC2へと、上記ビデオデータおよびオーディオデータと同じ経路で、ただし反対方向に送信され、USB制御器2AはサーバPC2のために、USB CD-ROM/キーボード/マウス複合装置をエミュレートする。別の実施態様において、キーボードデータおよびマウスデータは、第2のUSB装置制御器23およびMCU25を介して送信される。後者の実施態様において、MCUはキーボードデータおよびマウスデータを、第2のUSB装置制御器23の間で転送する。
【0025】
サーバPC2からのビデオデータおよびオーディオデータは、2台のUSB制御器22によりエミュレートされたUSB CD-ROM装置を介し、バルクデータ転送方法を使用して転送される。DMAロジック24はデータを、2台のUSB制御器22の間で転送する。バルクデータ転送方法の詳細は、上述した共通の譲受人による米国特許出願に記載されており、本明細書では省略する。クライアントPC1からのキーボードデータおよびマウスデータは、バルクデータとして転送することもできるし、あるいは、クライアントPC1がその対応するUSB制御器1Aに送る、SCSIコマンドに格納(パッケージ)することもできる。後者の方法において、DMAロジック24はコマンドを処理してキーボードデータおよびマウスデータを抽出し、キーボードデータおよびマウスデータをUSB制御器2Aへ転送する。USB制御器2Aはキーボードデータおよびマウスデータを、エミュレートされたUSBキーボード装置およびマウス装置のそれぞれのエンドポイント(終点)を介して、サーバPC2に出力する。このような仕方でキーボードデータおよびマウスデータをSCSIコマンドにより転送することで、バルクデータ転送効率が向上する。
【0026】
ユーザインターフェース構成情報、ハードウェア情報などの、クライアントからサーバへ送信する必要のある他の情報は、キーボードホットキーを使用して送信することができる。例えば、ファンクションキーを音声(オーディオ)のオン・オフに使用してもよい。クライアント側のユーザがファンクションキーを押したときに、ホットキー信号は他のキーボードデータと同じ仕方で送信される。サーバのサーバ側遠隔制御プログラムは、ホットキーデータを受信すると、それに従って応答する。
【0027】
ユーザコンソール14は、KVMスイッチ12により第1のコンピュータに対して、まるで第1のコンピュータ(例えばPC1)に直接差し込まれているかのように接続されているため、ユーザコンソールのモニタは第1のコンピュータのデスクトップ画像を表示することになり、それには、第1のコンピュータが第2のコンピュータ(例えばPC2)とデスクトップ共有および遠隔制御関係にある場合、第2のコンピュータのデスクトップを示すウィンドウが含まれることになる。ユーザがユーザコンソール14から、ユーザ入力装置信号(例えばキーボード信号またはマウス信号)を入力したとき、入力装置信号は、ユーザコンソールがまるで第1のコンピュータ(PC1)に直接差し込まれているかのように、第1のコンピュータに受信され、第1のコンピュータは入力装置信号を、上述したように、どのウィンドウがアクティブであるかに基づいて、第1のコンピュータまたは第2のコンピュータに適用する。
【0028】
第1のコンピュータは、1台以上の第2のコンピュータと、デスクトップ共有および遠隔制御関係を同時に有していてもよい。このような状況において、KVMスイッチ12のDMAロジック24は、すべての第2のコンピュータからのビデオデータを(それぞれのUSB制御器を介して)、第1のコンピュータ用のUSB制御器に転送する。その結果、複数の遠隔制御ウィンドウがコンソールモニタに表示される。ユーザは適切なウィンドウをアクティブにすることにより、第1のコンピュータを、または第2のコンピュータのうちの1台を、選択的に制御する。DMAロジック24はまた、キーボード信号およびマウス信号を、第1のコンピュータPC1用のUSB制御器1Aから、意図した第2のコンピュータ(PC2またはPC3)のUSB制御器2Aまたは3Aに選択的に転送する。
【0029】
KVMスイッチシステムの動作を、図3および図4を参照して記載する。図3を参照して、まず(ユーザコンソール14を使用している)ユーザが、KVMスイッチ12に指示して、第1のコンピュータ(本例ではPC1)にアクセスさせる(ステップS31)。これは、OSDメニューまたはホットキーを使用して行われてもよい。このとき、現時点でコンソールへと切り換えられているコンピュータはないため、KVMスイッチはPC1用のコンピュータポートをコンソールポートに切り換える(ステップS32)。これがKVMスイッチ12の切り換え(スイッチング)機能である。いったんPC1がユーザコンソールに切り換わったなら、PC1はKVMスイッチを介してコンソールに対し、ビデオ信号およびキーボード信号およびマウス信号の通信を行う(ステップS33)。同時に、コンソールはPC1のデスクトップ画像を表示し、KVMスイッチを介してPC1へキーボード信号およびマウス信号を送る(ステップS34)。これにより、ユーザコンソールによるPC1の制御が達成される。
【0030】
第1のコンピュータPC1がKVMスイッチを介してユーザコンソールに接続されているあいだに、ユーザがPC1に加えて第2のコンピュータ(本例ではPC2)にアクセスすることを望んだ場合、ユーザはKVMスイッチに対して指示を出す(ステップS35)。これは、OSDメニューまたはホットキーを使用して行われてもよい。PC2およびPC1は異なる機構を介してユーザコンソールによりアクセスされることになるが、ユーザコマンドに区別を設ける必要はなく、ユーザは単にPC2へのアクセスを要求するだけであることに留意されたい。このとき、第1のコンピュータPC1はKVMスイッチ12により、コンソールポートにすでに切り換えられているため、KVMスイッチは、PC1とPC2との間のデスクトップ共有および遠隔制御関係を確立を進める(ステップS36a)。KVMスイッチは、デスクトップ共有および遠隔制御関係において、現在コンソールへと切り換えられている第1のコンピュータ(PC1)をクライアントとして扱い、制御を受ける第2のコンピュータ(PC2)をサーバとして扱う。KVMスイッチのMCU25はUSB制御器1AおよびUSB制御器1Bを制御して、上述した仕方で、適切なUSBマスストレージ(大容量記憶)装置をエミュレートし、かつ、クライアント側およびサーバ側遠隔制御プログラムをPC1およびPC2それぞれに提供する。その間に、KVMスイッチ12は第1のコンピュータPC1の、コンソールポートへの切り換えを継続する(ステップS36b)。
【0031】
第1のコンピュータPC1および第2のコンピュータPC2は、エミュレートされたUSBマスストレージ装置を提供されると、クライアント側およびサーバ側遠隔制御プログラムをそれぞれ自動で実行し、その後、上述した仕方で、デスクトップ共有および遠隔制御関係のクライアント側機能およびサーバ側機能をそれぞれ実行する(ステップS37aおよびS38)。その結果、第2のコンピュータPC2はKVMスイッチ12を介して、そのデスクトップ画像のビデオデータを第1のコンピュータPC1に送信し、第1のコンピュータPC1はKVMスイッチを介して、キーボード信号およびマウス信号を第2のコンピュータPC2に送信する。
【0032】
その間に、第1のコンピュータPC1はKVMスイッチ12の切り換え機能を介して、ユーザコンソール14にビデオデータを送信し、ユーザコンソール14からキーボード信号およびマウス信号を受信する(ステップS37b)。ユーザコンソール14は第1のコンピュータPC1からビデオデータを受信し、かつ、それをユーザコンソールのモニタに表示することを継続する(ステップS39)。PC1とPC2との間のデスクトップ共有および遠隔制御関係の結果、現在コンソールモニタに表示されている第1のコンピュータPC1のデスクトップ画像は、第2のコンピュータPC2のデスクトップ画像を含む遠隔制御ウィンドウを含んでいる。ユーザは今や、遠隔制御ウィンドウをアクティブにすることにより(例えば、入力カーソルをウィンドウ内に置くことにより)、第2のコンピュータPC2と通信することができ、遠隔制御ウィンドウを移動またはサイズ変更することができる。
【0033】
上記記載において、(PC1とPC2との間のデスクトップ共有および遠隔制御関係を確立する)ステップS36aは、ユーザがKVMスイッチに対して、第2のコンピュータPC2にアクセスするよう指示したときに行われる。あるいは、(PC1をコンソールポートに切り換える)ステップS32が行われるとすぐに、PC1がクライアント側遠隔制御プログラムの実行を開始することができるよう、KVMスイッチが第1のコンピュータPC1(クライアント)に対してUSBマスストレージ装置をエミュレートすることができる。次いで、KVM装置は、第2のコンピュータPC2にアクセスするようにとのユーザ指示を受信すると、第2のコンピュータPC2に対してUSBマスストレージ装置/キーボード/マウスをエミュレートし、PC2はサーバ側遠隔制御プログラムの実行を開始する。
【0034】
PC1およびPC2がアクセスを受けているあいだに、ユーザがKVMスイッチ12に対して、別の第2のコンピュータ(例えばPC3)にアクセスするよう指示した場合、KVMスイッチはPC3とPC1との間にデスクトップ共有および遠隔制御関係を確立する。このステップはステップS36aと同様であるが、クライアントPC1 用のエミュレートされたUSB装置がすでに存在しているため、KVMスイッチが(サーバとしての)PC3のためにUSBマスストレージ装置をエミュレートするだけでよい点が異なっている。これらのステップは図3に示していない。
【0035】
さらに、PC1およびPC2がアクセスを受けているあいだに、ユーザがKVMスイッチ12に対して、第2のコンピュータへのアクセスを解除するよう指示した場合、KVMスイッチ12のMCU25はPC2用のUSB制御器2Aを制御して、エミュレートされたUSBマスストレージ装置/キーボード/マウス装置を削除する、削除イベントをエミュレートする。PC1用のエミュレートされたUSB装置は削除されるか、または保持される(遠隔制御されている他の第2のコンピュータがある場合に保持される)。これらのステップは図3に示していない。
【0036】
図4を参照して(図4のタイミングシーケンスは図3から継続している)、PC1がKVMスイッチ機能によりユーザコンソール14に切り換えられて、PC2がPC1とデスクトップ共有および遠隔制御関係にあるとき、ユーザはKVMスイッチに対して、PC1のアクセスを解除し、PC2のアクセスを維持するよう指示してもよい(ステップS41)。これに応じて、KVMスイッチはPC1とPC2との間のデスクトップ共有および遠隔制御関係を終了する(ステップS42)。これは、削除イベントをエミュレートするUSB制御器1Aおよび2Aによって行われ、PC1およびPC2用のエミュレートされたUSB装置それぞれを削除する。KVMスイッチは次いで、KVMスイッチの切り換え機能を使用して、PC2をユーザコンソール14に切り換える(ステップS43)。その後、PC2はKVMスイッチを介して、ビデオ信号およびキーボード信号およびマウス信号をコンソールに対して通信する(ステップS44)。コンソールはPC2のデスクトップ画像を表示し、KVMスイッチを介してキーボード信号およびマウス信号をPC2に送る(ステップS45)。
【0037】
上述した仕方において、いずれのコンピュータをもユーザコンソールに直接切り換えることができる点で、システムを動的に再構成することができ、すべてのコンピュータを動的に追加し削除することができる。
上記記載において、接続装置16はサーバおよびクライアント用にCD-ROMをエミュレートしたが、装置16は、USBマスストレージクラス基準に準拠した他のマスストレージ装置、例えばDVD-ROM、フラッシュドライブ、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブなどをエミュレートすることができる。CD-ROMは便利な自動実行機能を提供するため、エミュレートされる装置として好ましい。
【0038】
上記記載において、サーバ26用のUSB制御器はキーボード装置およびマウス装置の両方をエミュレートするが、代りに、キーボード装置のみまたはマウス装置のみ(これらを個別にまたは集合的にユーザ入力装置と呼ぶ)をエミュレートしてもよい。
上記記載において、クライアント側およびサーバ側遠隔制御プログラムは異なるプログラムであるが、これらを、クライアント側機能用のコードおよびサーバ側機能用のコードの両方を含む複合プログラムの形態とすることもできる。この同じ複合プログラムをサーバコンピュータおよびクライアントコンピュータの両方にロードする。クライアントコンピュータは自動でクライアント側コードを実行し、サーバコンピュータは自動でサーバ側コードを実行する。
【0039】
USBは、上記記載において、サーバ、接続装置およびクライアントの間のインターフェースおよび通信プロトコルとして使用されているが、本発明は、将来登場するかもしれないものを含む他の標準のインターフェースおよび通信プロトコル、例えばFirewire(登録商標)などを使用して、実現してもよい。プロトコルは、その時点で使用されている多数のコンピュータにより、広くサポートされているのが好ましい。
【0040】
先に指摘したように、図1の構成において、複数のユーザコンソール14がKVMスイッチに接続されていてもよい。複数のユーザコンソールを接続することのできるKVMスイッチは、マトリックスKVMと呼ばれることがある。各ユーザコンソールは上述した仕方で、1台の第1のコンピュータに接続され、さらに1台以上の第2のコンピュータを制御してもよい。さらに、ユーザコンソール14は適切なネットワークプロトコルを使用するネットワークを介して、KVMスイッチ12に接続されてもよい。ネットワークを通じてユーザコンソールに接続することができるKVMスイッチは、ネットワークイネーブルKVMまたはIP経由KVMと呼ばれることがある。
【0041】
本明細書に記載の方法を使用して、いずれか1台のコンピュータ(第1のコンピュータ)がKVMスイッチによってユーザコンソールに切り換えられたとき、ユーザは、KVMスイッチによって提供されるデスクトップ共有および遠隔制御機能を介して、他のコンピュータ(第2のコンピュータ)のいずれに対してもアクセスすることおよび制御を行うことができる。KVMスイッチ中に特別なビデオ処理ハードウェアが必要なPIP機能に比べて、本発明の実施形態に係るシステムはハードウェアの経費を削減する。同時に、制御されるコンピュータに特別なソフトウェアプログラムをインストールする必要がなく、コンピュータの修正が必要ではない。さらに、KVMスイッチ中に特別なオーディオ処理または切り換えハードウェアを設けずに、すべてのアクセスされているコンピュータから、ユーザコンソールがオーディオデータを受信することができる。
【0042】
本発明の精神または範囲を逸脱することなしに、本発明の改良されたKVM機器および関連方法に種々の修正および変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。ゆえに本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にある修正および変更を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザコンソールに接続するための、少なくとも1つのコンソールポートと、
コンピュータにそれぞれ接続するための、複数のコンピュータポートと、
前記複数のコンピュータポートおよび前記少なくとも1つのコンソールポートに連結された切り換え構造であって、前記コンソールポートと選択されたコンピュータポートとの間でビデオデータおよびユーザ入力装置データを選択的に接続するための切り換え構造と、
それぞれが前記コンピュータポートの1つに連結された複数の通信制御器であって、あらかじめ定められた通信プロトコルを使用して前記それぞれのコンピュータと通信するための複数の通信制御器と、
前記複数の通信制御器に連結された制御回路とを備え、
前記制御回路は、デスクトップ共有および遠隔制御用途のために、クライアント側遠隔制御プログラムおよびサーバ側遠隔制御プログラムを記憶するメモリを含み、
前記コンピュータポートの第1のものと、前記コンピュータポートの第2のものとを選択する、前記ユーザコンソールからの指示に応答して、前記制御回路は、前記切り替え構造を制御して、前記コンソールポートと前記選択された第1のコンピュータポートとの間で、ビデオデータおよびユーザ入力装置データを接続し、前記選択された第1のコンピュータポート用の前記通信制御器を制御して、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第1のマスストレージ装置をエミュレートし、前記選択された第1のコンピュータポートに接続された第1のコンピュータにより実行するために、前記クライアント側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に転送し、前記選択された第2のコンピュータポート用の前記通信制御器を制御して、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置をエミュレートし、前記選択された第2のコンピュータポートに接続された第2のコンピュータにより実行するために、前記サーバ側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に転送し、前記第1および第2のコンピュータポート用の前記通信制御器の間でデータを転送する、KVMスイッチ、すなわち、キーボード、ビデオ、マウススイッチ。
【請求項2】
前記あらかじめ定められた通信プロトコルは、USBプロトコル、すなわち、ユニバーサルシリアルバスプロトコルであり、前記通信制御器は、USB装置制御器である、請求項1に記載のKVMスイッチ。
【請求項3】
前記エミュレートされた第1および第2のマスストレージ装置はCD-ROM装置であり、前記メモリは第1および第2の自動実行ファイルをさらに記憶し、前記制御回路は前記第1および第2の自動実行ファイルを前記エミュレートされた第1および第2のCD-ROM装置にそれぞれ転送する、請求項1に記載のKVMスイッチ。
【請求項4】
前記クライアント側遠隔制御プログラムは、前記第1のコンピュータに、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に転送させ、ビデオデータを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置から受信させるよう構成されており、
前記サーバ側遠隔制御プログラムは、前記第2のコンピュータに、前記第2のコンピュータのデスクトップ画像を表すビデオデータを前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に送信させ、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされたユーザ入力装置から受信させるよう構成されている、請求項1に記載のKVMスイッチ。
【請求項5】
前記切り換え構造は、さらに、前記コンソールポートと前記選択されたコンピュータポートとの間でオーディオデータを選択的に接続し、
前記クライアント側遠隔制御プログラムは、前記第1のコンピュータに、オーディオデータを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置から受信させるようさらに構成されており、
前記サーバ側遠隔制御プログラムは、前記第2のコンピュータに、オーディオデータを前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に送信させるようさらに構成されている、請求項4に記載のKVMスイッチ。
【請求項6】
KVMスイッチ、すなわち、キーボード、ビデオ、マウススイッチ、前記KVMスイッチのコンソールポートに接続されたユーザコンソール、および前記KVMスイッチの複数のコンピュータポートに接続された複数のコンピュータを含むKVMスイッチにおいて、
(a)前記ユーザコンソールが、第1のユーザコマンドを出して、第1のコンピュータポートに接続された選択された第1のコンピュータにアクセスするステップと、
(b)前記第1のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが前記第1のコンピュータポートを前記コンソールポートに接続して、前記コンソールポートと前記第1のコンピュータポートとの間で、ビデオデータおよびユーザ入力装置データを転送するステップと、
(c)前記第1のコンピュータが、そのデスクトップ画像のビデオデータを、前記KVMスイッチを介して前記ユーザコンソールに送信するステップと、
(d)前記ユーザコンソールが、前記KVMスイッチを介して受信した前記ビデオデータを、コンソールモニタに表示するステップと、
(e)前記KVMスイッチが、あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第1のマスストレージ装置を、前記第1のコンピュータポート用にエミュレートし、前記第1のコンピュータにより実行するために、クライアント側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に転送するステップと、
(f)前記ユーザコンソールが、第2のユーザコマンドを出して、第2のコンピュータポートに接続された選択された第2のコンピュータにアクセスするステップと、
(g)前記第2のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置を、前記第2のコンピュータポート用にエミュレートし、前記第2のコンピュータにより実行するために、サーバ側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に転送するステップと、
(h)前記KVMスイッチが、前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置および前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置の間で、データを転送するステップと、
(i)前記第2のコンピュータが、前記サーバ側遠隔制御プログラムを実行して、当該第2のコンピュータのデスクトップ画像を表すビデオデータを、前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に送信し、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされたユーザ入力装置から受信するステップと、
(j)前記第1のコンピュータが、前記クライアント側遠隔制御プログラムを実行して、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置に送信し、ビデオデータを前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置から受信するステップと、
(k)前記第1のコンピュータが、前記第2のコンピュータのデスクトップ画像を含む、そのデスクトップ画像のビデオデータを、前記KVMスイッチを介して前記ユーザコンソールへ送信することを継続するステップとを含む、ユーザコンソールにより2台以上のコンピュータにアクセスするための方法。
【請求項7】
前記あらかじめ定められた通信プロトコルは、USBプロトコル、すなわち、ユニバーサルシリアルバスプロトコルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エミュレートされた第1および第2のマスストレージ装置は、CD-ROM装置であり、
前記ステップ(e)は、第1の自動実行ファイルを前記エミュレートされた第1のCD-ROM装置に転送することをさらに含み、
前記ステップ(g)は、第2の自動実行ファイルを前記エミュレートされた第2のCD-ROM装置に転送することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
(l)前記ユーザコンソールが、第3のユーザコマンドを出して、前記第2のコンピュータのアクセスを解除するステップと、
(m)前記第3のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが削除イベントをエミュレートして、前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置およびユーザ入力装置を削除するステップとをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
(m)前記ユーザコンソールが、第4のユーザコマンドを出して、第3のコンピュータポートに接続された選択された第3のコンピュータにアクセスするステップと、
(o)前記第4のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが、前記あらかじめ定められた通信プロトコルに準拠する第3のマスストレージ装置およびユーザ入力装置を、前記第3のコンピュータポートのためにエミュレートし、前記第3のコンピュータにより実行するために、サーバ側遠隔制御プログラムを前記エミュレートされた第3のマスストレージ装置に転送するステップと、
(p)前記KVMスイッチが、前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置および前記エミュレートされた第3のマスストレージ装置およびユーザ入力装置の間で、データを転送するステップと、
(q)前記第3のコンピュータが、前記サーバ側遠隔制御プログラムを実行して、当該第3のコンピュータのデスクトップ画像を表すビデオデータを、前記エミュレートされた第3のマスストレージ装置に送信し、ユーザ入力装置データを前記エミュレートされたユーザ入力装置から受信するステップとをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
(q)前記ユーザコンソールが、第5のユーザコマンドを出して、前記第1のコンピュータのアクセスを解除し、前記第2のコンピュータポートへのアクセスを維持するステップと、
(n)前記第5のユーザコマンドに応答して、前記KVMスイッチが削除イベントをエミュレートして、前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置を削除し、かつ、前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置および前記ユーザ入力装置を削除し、前記KVMスイッチが前記第2のコンピュータポートを前記コンソールポートにさらに接続して、前記コンソールポートと前記第2のコンピュータポートとの間で、ビデオデータおよびユーザ入力装置データを転送するステップとをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)は、前記KVMスイッチが、オーディオデータを、前記コンソールポートと前記第1のコンピュータポートとの間で転送することをさらに含み、
前記ステップ(c)は、前記第1のコンピュータが前記KVMスイッチを介して、オーディオデータを前記ユーザコンソールに送信することをさらに含み、
前記ステップ(d)は、前記ユーザコンソールが、前記KVMスイッチを介して受信した前記オーディオデータを、コンソールスピーカで再生することをさらに含み、
前記ステップ(i)は、前記第2のコンピュータが、オーディオデータを、前記エミュレートされた第2のマスストレージ装置に送信することをさらに含み、
前記ステップ(j)は、前記第1のコンピュータが、オーディオデータを、前記エミュレートされた第1のマスストレージ装置から受信することをさらに含み、
前記ステップ(k)は、前記第1のコンピュータが前記KVMスイッチを介して、オーディオデータを前記ユーザコンソールへ送信することをさらに含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−102682(P2010−102682A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134800(P2009−134800)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504125687)宏正自動科技股▲分▼有限公司 (4)
【Fターム(参考)】