説明

遠隔制御装置

【課題】遠隔にある装置、例えば車両を制御する際に、多様な命令を少ないネットワーク負荷で送信することを可能にする。
【解決手段】命令を送信したいユーザが持つ電話端末から、遠隔にある車両に搭載した車載器に命令を送信するとき、電話端末は、命令送信手段を持ち、車載器は、命令取得手段、車両制御手段、命令管理テーブルを持ち、命令管理テーブルには、発呼時間と命令の対応や、一回又は複数回の連続した発呼パターンと命令の対応や、発信者番号と命令の対応等の命令送信パターンを格納する。
ユーザが電話端末の命令送信手段を用いて、命令送信パターンの何れかで車載器に向けて発呼を行うと、車載器の命令取得手段は、命令管理テーブルを参照して命令を特定し、車両制御手段を用いてユーザの要求する制御を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通信装置を備えた端末装置を用いて、遠隔にある通信装置を備えた装置を制御する方法に関する。特に、制御対象として携帯電話網に接続可能な無線通信装置を備えた車両等を想定する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は車載器に搭載した電話番号を持つ通信部に向けてユーザが電話端末を用いて発呼する。車載器で呼接続状態にすると、ユーザに対して自動音声ガイダンスを行い、ユーザが音声ガイダンスに従ったプッシュボタン操作を実施することにより車両を制御する方法を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、特定の電話番号を持つ端末からの発呼を契機に車両を制御する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-264315号公報
【特許文献2】特開2001-40920号公報
【非特許文献1】ITU-T勧告I.320 ISDN protocol reference model、[online]、1994-11-15、International Telecomunication Union(ITU)、[平成23年2月20日検索]、インターネット<URL : http://www.itu.int/rec/T-REC-I.320-199311-I/en>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1を用いた場合の電話の発呼から通話までの流れを示す。
【0006】
電話網などの通信網は、コントロールプレーン及びユーザプレーンの2つのプレーンから構成されている場合がある。その場合、電話端末などの通信端末(発信装置という)から電話番号など相手の識別子を入力して相手先に発呼すると、コントロールプレーンでその識別子に対応する通信相手の電話(受信装置という)を探し出し、呼設定を要求する。受信装置が呼設定要求に応答し、呼が設定されると、以降ユーザプレーンで互いの音声等データを交換できるようになる。
【0007】
特許文献1を用いた場合、制御命令を送信する際に、コントロールプレーンとユーザプレーンの両方を利用するため、両プレーンに負荷が掛かる。
【0008】
また、特許文献2を用いた場合、コントロールプレーンのみで命令を送信することが可能であるが、複数の命令に対応することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示されるのは、制御装置と被制御装置とを含んで構成される制御システムにおいて、制御装置が制御命令を送信する場合に、発信装置として、命令によって異なる方法により呼設定要求(発呼)を行い、被制御装置は、受信装置として、呼設定要求(着呼)には応答せず、呼設定要求(着呼)の方法の違いにより、命令内容を判断し、実行する遠隔制御方法である。
【0010】
また、同様に、被制御装置が制御結果を送信する場合に、発信装置として、結果によって異なる方法により呼設定要求(発呼)を行い、制御装置は、受信装置として、呼設定要求(着呼)には応答せず、呼設定要求(着呼)の方法の違いにより、制御結果内容を判断し、利用者に伝える遠隔制御方法も開示される。
【0011】
より具体的に開示されるのは、制御装置と被制御装置とが通信網で接続され、制御装置が被制御装置を遠隔制御する遠隔制御システムにおいて、通信網は、発信装置から発呼される呼設定要求を受信装置に着呼させ、受信装置が着呼した呼設定要求に応答することにより、発信装置と受信装置との間に呼を設定するものである場合に、発信装置としての制御装置は、制御命令ごとに異なる方法により、呼設定要求を行い、受信装置としての被制御装置は、呼設定要求には応答せずに、呼設定要求方法を特定し、特定した呼設定要求方法に対応する制御を行うことを特徴とする遠隔制御システムである。
【0012】
さらに、発信装置としての被制御装置は、制御結果ごとに異なる方法により、呼設定要求を行い、受信装置としての制御装置は、呼設定要求には応答せずに、呼設定要求方法を特定し、特定した呼設定要求方法に対応する制御結果を取得してもよい。
【0013】
ここで、制御命令または制御結果ごとに異なる呼設定要求方法とは、たとえば、呼設定要求の発呼時間を、制御命令または制御結果ごとに異ならせること、または、呼設定要求の要求元の発信者番号を、制御命令または制御結果ごとに異ならせること、または、呼設定要求を繰り返し行う場合の発呼パターンを、制御命令または制御結果ごとに異ならせること、のいずれかである。
【0014】
さらに、呼設定要求を繰り返し行う場合の、繰り返し方法を制御命令または制御結果ごとに異ならせるために、繰り返し回数、繰り返す際の間隔、繰り返す際の各回の発呼時間、呼設定の要求元の発信者番号のいずれか一つ以上を、制御命令または制御結果ごとに異ならせてもよい。
【0015】
受信装置が、呼設定要求には応答せずに、呼設定要求方法に基づき命令を判断することにより、通信網のユーザプレーンには負担を掛けずに、多様な遠隔制御とその結果の報告が可能になる。
【0016】
さらに、発信装置は、発呼時間を制御命令または制御結果ごとに異ならせる場合には、同一の制御命令または制御結果を、所定時間以内に複数回繰り返し、発呼パターンを制御命令または制御結果ごとに異ならせる場合には、発呼時間の合計時間の発呼を最後に行うことにより、確実に命令または結果を送受信するようにしてもよい。
【0017】
さらに、被制御装置が、車両に搭載されている場合に、車両の位置情報または、車両の状態に応じて、受信した制御命令の実行可否を判断し、結果を、制御装置に報告してもよい。
【0018】
なお、制御装置は、ユーザが操作する端末であり、端末は、制御命令の選択画面を表示し、ユーザにより選択された制御命令を受け付け、被制御装置から、制御結果を受信し、制御結果を表す画面または音をユーザに提示するものであってもよい。
【0019】
または、制御装置は、ユーザが操作する端末により遠隔操作されるサーバ装置であり、端末は、サーバ装置から、制御命令の選択画面を受信して、表示し、ユーザによる制御命令の選択結果をサーバ装置に送信し、サーバ装置から、制御命令の制御結果を表す画面または音を受信し、サーバ装置は、端末から選択された制御命令を受信し、被制御装置から、制御結果を受信し、制御結果を表す画面または音を端末に送信するものであってもよい。
【0020】
制御命令または制御結果ごとに方法の異なる呼設定要求を行うために、発信装置、受信装置共に、命令管理テーブルや結果管理テーブルを備え、命令または結果ごとの呼設定要求方法を定義しても良い。
【発明の効果】
【0021】
開示により、通信網のユーザプレーンに掛かる通信負荷を削減し、かつ、車両の多様な遠隔制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のシステム構成の一例。
【図2】命令管理テーブルの一例
【図3】実施例1の処理の流れの一例
【図4】命令として発呼時間を用いる場合の命令取得処理の流れの一例
【図5】命令として発呼パターンを用いる場合の命令送信処理の流れの一例
【図6】命令として発呼パターンを用いる場合の命令取得処理の流れの一例
【図7】実施例2のシステム構成の一例
【図8】実施例2の処理の流れの一例
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
制御装置(すなわち発信装置)として電話端末を用いて、遠隔にある自動車車両に搭載した車載器を被制御装置(すなわち受信装置)として用いて、当該車両を制御する実施例を示す。
【0024】
遠隔制御を行いたいユーザは電話端末を用い車両に、ドアロック/アンロック、エアコンオン/オフ、充電状態確認(電気自動車向け)等の命令を送信する。車両には通信機能を備えた車載器を搭載し、命令に応じて車両を制御できるようにエアコンやロック機構、充電機構と情報をやり取りできるように構成する。例えば車両内の情報伝達に用いられるCAN(Controller Area Network)に車載器を接続できるように構成し、CANを介してエアコンオン/オフ等の命令を車載器から送信できるようにする方法が考えられる。
【0025】
図1に電話端末100と車載器150の構成図を示す。電話端末100と車載器150はネットワーク120を介して接続可能である。
【0026】
電話端末100は、CPU101、メモリ110、入力部102、出力部103、通信部104を備える。入力部102として、例えばキーボード、タッチパネルを利用することが考えられ、出力部103として、例えば液晶ディスプレイやスピーカ、バイブレーション機能を利用することが考えられる。
【0027】
通信部104は、特定の電話番号に向けて発呼したり、別の電話からの着呼を確認したりできる。
【0028】
メモリ110には、CPU101により実行されるプログラムやプログラムが参照するデータを格納する。ここでは、命令送信部112、結果取得部113を実現するプログラムと、命令管理テーブル114とを持つこととする。
【0029】
上記プログラムは、電話端末100のメモリ110に予め格納されていても良いし、必要なときに、電話端末100が利用可能な媒体を介して、他の装置から上記メモリ110に導入されてもよい。媒体とは、たとえば、電話端末100に着脱可能な記憶媒体、または通信媒体(すなわち、通信部104に接続する有線、無線のネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号)を指す。
【0030】
車載器150は、CPU151、メモリ160、通信部152、車両制御関連170であるエアコン制御部171、ドアロック制御部172、充電状態取得部173を備える。
【0031】
メモリ160には、CPU151が実行することにより、命令取得部161、車両制御部162、結果送信部163を実現するプログラムと、命令管理テーブル164とを持つ。
【0032】
上記プログラムは、車載器150のメモリ160に予め格納されていても良いし、必要なときに、車載器150が利用可能な媒体を介して、他の装置から上記メモリ160に導入されてもよい。媒体とは、たとえば、車載器150に着脱可能な記憶媒体、または通信媒体(すなわち、通信部152に接続する有線、無線のネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号)を指す。
【0033】
図2に、命令管理テーブル114、164、716の例を示す。ここでは3つの命令送信パターンについて説明する。
【0034】
発呼時間を用いた命令管理テーブル201は、発呼時間の違いを用いて命令を表すときに用いるテーブルであり、命令と発呼時間の関係を管理する。例えば、ドアアンロックを行いたい場合、5秒の発呼を行う。
【0035】
実際は、発信側での発呼時間の計測値と、着信側での呼出し時間の計測値には差異が生じるため、命令の間隔は1、5、10、15秒等と差異を許容できる間隔を開けて定義する。さらに、着信時の命令特定の際は、幅を持って命令を判定するようにする。例えば5±2秒(3秒〜7秒)であればドアアンロックと判定するようにする。
【0036】
発呼パターンを用いた命令管理テーブル202は、発呼パターンの違いを用いて命令を表すときに用いるテーブルであり、命令と発呼パターンの関係を管理する。ここで、発呼パターンとは、発呼時間が同じ、または、異なる一回又は複数回の発呼の繰り返し方である。例えば、エアコンオンをする場合、1秒の発呼、5秒以内の無発呼、5秒の発呼、6秒以上の無発呼が連続して起こるとエアコンオンと判定する。
【0037】
発信者番号を用いた命令管理テーブル203は、発信者番号の違いを用いて命令を表すときに用いるテーブルであり、命令と発信者番号の関係を管理する。例えば、ドアロックをする場合、00011112222の電話番号を持つ電話端末から発呼を行う。
【0038】
図3に電話端末100と車載器150間の処理の流れを示す。
【0039】
ユーザは、電話端末の入力部を介して命令を入力する(301)。図2に示す命令管理テーブルの命令送信パターンの発呼をユーザが自ら電話端末を操作して行う方法も考えられるがここでは電話端末に命令を送出するための命令送信部112を用いる。
【0040】
命令送信部112は、ディスプレイに命令を表示し、ユーザが、表示された命令の何れかを選択すると、その命令を、命令管理テーブル114を用いて、命令送信パターンに変換し、発呼により車載器に送信する(302)。
【0041】
車載器150の命令取得部161で発呼による命令を取得すると(303)、その発呼に対応する命令を、命令管理テーブル114から特定し、車両制御部162を用いて車両を制御する(304)。
【0042】
車両を制御した結果は、命令と同様に発呼により電話端末に送信する(305)。電話端末100では着呼すると、結果取得部113により、その結果をユーザが理解できる言葉または表示に変換し、ユーザに伝える(306)。例えば、電話端末で5秒以内の着呼があれば成功、6秒以上であれば失敗として、ユーザに伝える方法が考えられる。また、結果のバリエーションが多い場合は、命令と同様に結果管理テーブルを作成し、多様な結果をユーザに示す方法が考えられる。
【0043】
電話端末100の命令送信部112と、車載器150の命令取得部161について、命令送信パターン毎に説明する。
(a) 発呼時間を用いた命令伝達
ユーザの指示した命令を車載器150に伝えるために、命令送信部112は、ユーザの命令を受け取り、命令管理テーブル114から命令に対応する発呼時間を特定する。次に、車載器150に対して特定した発呼時間分連続して発呼を行う。
【0044】
車載器150の命令取得処理の流れを図4に示す。
【0045】
通常は、着呼待ち状態で待機する(401)。着呼があると、着呼の発信者番号が正しいことを確認する(402)。これはセキュリティ上の施策であり、予め設定しておいた命令を発信する電話端末100の電話番号と、着呼の発信者番号が同一であるかどうかを確認する処理である。
【0046】
同一でない場合、着信を待つ状態に戻す(401)。同一である場合、命令を受け付け可能かどうか判定する(403)。
【0047】
判定の条件として以下が考えられる。
【0048】
・運転中かどうか
運転中であれば危険が伴うことも考えられるため、命令を拒否する。判定する方法として、例えばエンジンがスタートしているかどうか、速度が出ている状態であるかどうか等の情報を車載器150で収集し、判定する。
【0049】
・車両の位置が事前に設定した場所かどうか
例えば、自宅のガレージに車があるときにだけ、命令を許可したい場合がある。これを判定する方法として、車両に備えたGPS等の位置測位デバイスを用いて位置を取得し、自宅であるかどうかを判定する方法が考えられる。
【0050】
これらの判定条件を命令管理テーブル164に判定条件カラムを追加し、命令毎に条件を管理する方法が考えられる。
【0051】
上記の判定結果、命令受付可能でなければ結果送信ステップ(409)に移動する。受付可能であれば、着呼時間を計測する(404)。これは、着呼が開始してから終了するまでの時間を計測する処理である。
【0052】
次に、キャンセル待ちを行う(405)。これは特定時間(例えば5秒以内)に、電話端末からキャンセル指示が届くことを待つ処理である。ユーザが間違った命令を送信してしまった場合、電話端末で特定時間以内にキャンセル指示を送信すると、車両制御をキャンセルすることができるようにする。例えば、キャンセル待ち時に5秒以内の着呼が発生したらキャンセルとする。
【0053】
キャンセルが発生(406)したら着呼待ち状態(401)に戻す。キャンセルがなければ、着呼時間に対応する命令を、命令管理テーブルを用いて特定する(407)。特定した命令に従い、車両制御部162を用いて車両を制御し(408)、制御結果を、結果送信部163を用いて送信する(409)。
【0054】
結果送信部163は、成功、失敗等の制御結果を命令送信パターンと同様に発呼を用いて電話端末100に送信する部である。電話端末100の命令送信部112と同様の方法で実現する。電話端末100では、結果取得部113により着呼のパターンを解釈し、成功、失敗等の解釈結果をディスプレイに表示または音で出力する。
(b) 発呼パターンを用いた命令伝達
命令送信部112は、ユーザの指示した命令を車載器150に伝えるために、特定の発呼パターンの発呼を行う。
【0055】
命令送信処理の流れを図5に示す。(a)と同様に、命令送信部112を介してユーザの命令を受け取り、命令管理テーブル114から命令に対応する発呼パターンを特定する(501)。次に、車載器150に対して発呼パターンの最初の発呼を行う(502)。発呼が終わったら、特定時間、例えば1秒待つ(503)。発呼パターンの全発呼が終了したかを確認(504)し、終了していなければ次の発呼を行う(502)。終了していれば命令送信処理を終了する(505)。
【0056】
車載器150の命令取得処理の流れを図6に示す。
【0057】
着呼があると(601)、(a)と同様に、着呼の発信者番号が正しいことを確認し(602)、正しくない場合、着信を待つ状態(601)に戻す。正しい場合、命令を受付可能かどうか調べる(603)。これも(a)と同様である。受付可能でなければ、結果送信ステップ(609)に進み、受付可能であれば、着呼の連続時間を計測する(604)。これは、着呼が終わるのを待ち、それまでの時間を計測する処理である。計測した時間はメモリ内に記録していく。
【0058】
次に特定の時間(例えば5秒間)着呼がないことを確認する(606)。特定の時間内に着呼があれば、発信者番号が正しいかを確認する処理から行う(602)。特定時間着呼がなければ、これまで記録した一回又は複数回の着呼時間の記録にマッチする発呼パターンを命令管理テーブル164から探索し、命令を特定する(607)。特定した命令に従い、車両制御部162を用いて車両を制御し、制御結果を、結果送信部163を用いて送信する(609)。
(c) 発信者番号を用いた命令伝達
命令送信部112は、ユーザの指示した命令を車載器150に伝えるために、特定の電話番号から車載器150に発呼を行う。ここでは、複数の電話番号を使い分けることが可能な電話端末100を用いることを想定する。命令送信部112は、ユーザの命令を受け取り、命令管理テーブル114から命令に対応する電話番号を特定する。次に、車載器150に対してその電話番号から発呼を行う。
【0059】
車載器150の命令取得部の流れを説明する。
【0060】
着呼の発信者番号を、命令管理テーブル164から探索し、命令を特定する。特定した命令に従い、車両制御部162を用いて車両を制御し、制御結果を、結果送信部163を用いて送信する。
【0061】
本実施例に示す方法を用いれば、遠隔にある装置を制御するときにユーザプレーンを用いないため、通信網に掛かる負荷を削減しつつ、車両の多様な制御が可能となる。
【実施例2】
【0062】
実施例1では、電話端末100と車載器160間で直接命令のやり取りを実施していたが、この場合、ユーザが命令に合う発呼を手で行うか、実施例1で示したように予め電話端末に命令送信部112と結果取得部113を実現するプログラムを入れておき、ユーザはそれらを通して命令及び結果の送受信を行う。このときの課題として、ユーザが命令送信パターンに従った発呼を手で行うのはミスの原因になること、また、電話端末の機能上、プログラムを入れることが困難な場合があることがある。
【0063】
そこで、本実施例では、電話端末100として現在一般的に普及しているインターネットに接続できるWebブラウザを備えた電話端末を、操作端末として利用し、命令送信部、結果取得部を備えるサーバ装置を遠隔操作する方法の実施例を示す。
【0064】
図7に構成を示す。
【0065】
電話端末100は、メモリ110内にWebブラウザ721及びインターネット接続部722を持つ。インターネット接続部722は、通信部104を介してインターネットに接続する部である。Webブラウザ721は、インターネット接続部722を通して、外部のWebサーバからデータを入手し、Webブラウザ721の画面に表示、及びユーザからの入力を受け付けてWebサーバに送信する部を持つ。
【0066】
サーバ装置700は、インターネットに接続したコンピュータであり、CPU701及びメモリ710及び通信部702で構成しメモリ710には、CPU701が実行することによりWebサーバ711、命令入力画面生成部712、結果画面生成部713、命令送信部714、結果取得部715を実現するプログラムと、命令管理テーブル716とを持つ。
【0067】
車載器150は、実施例1と同様の構成とする。
【0068】
図8に実施例2の処理の流れを示す。
【0069】
ユーザは電話端末100のWebブラウザ721を通して、サーバ装置700に命令入力画面を要求する(801)。サーバ装置700のWebサーバ711が命令入力画面要求(801)を受けると、命令入力画面生成部712を用いて命令入力画面を生成し(802)、電話端末100に返す。電話端末100は、命令入力画面(803)を描画する。
【0070】
次に、ユーザが命令入力画面から車載器150への命令を入力し、サーバ装置700に送信(804)すると、サーバ装置700の命令送信部714では、命令管理テーブル716を利用して、ユーザが入力した命令に対応する命令送信パターンを特定し(805)、その命令送信パターンにて発呼による命令を行う(806)。
【0071】
車載器150では命令取得部161を用いて、命令送信パターンに対応する命令を取得し(807)、車両制御部162により命令された車両制御を行う(808)。その後、車両制御の処理結果を、発呼によりサーバ装置に返す(809)。サーバ装置700の結果取得部715は、着呼のパターンから車両制御の結果を特定し(810)、結果画面生成部713により、成功、失敗等の結果を埋め込んだ結果画面を生成し(811)、電話端末のWebブラウザに返す(812)。
【0072】
本実施例を実現すれば、Webブラウザを備えた電話端末を用い、かつユーザプレーンに掛かる負荷を削減して遠隔にある車両の多様な制御が可能となる。
【実施例3】
【0073】
実施例1及び実施例2において、命令の確かさを向上する方法を示す。無線による発呼は、回線状態により期待する発呼がされないことがある。そのため、期待しない命令が実行されないように確かさを向上する必要がある。
【0074】
命令送信パターン毎に説明する。
(a) 発呼時間を用いた命令伝達
電話端末100の命令送出処理では、命令管理テーブル114に格納された発呼時間の発呼を複数回(例えば2回)行うこととする。命令取得部161では、例えば、必ず2回の発呼を受け取るようにし、各発呼時間から命令を特定した結果、どちらも同じ命令であると特定できればその命令が正しいと判定する。2回ではなく3回以上とし、より確かさを向上させてもよい。また、同じ長さの発呼を繰り返すのではなく、二回目以降はn分の一の長さの発呼にすることで命令に掛かる時間を短縮してもよい。
(b) 発呼パターンを用いた命令伝達
電話端末100の命令送出処理では、命令管理テーブル114に格納された発呼パターンの一連の発呼を行った後、全発呼時間を合計した秒数(又はn分の一の秒数)の発呼を最後に行うこととする。
【0075】
命令取得部では、一連の発呼を受け取り、命令管理テーブル164を用いてマッチする命令を特定する。次に、命令管理テーブル164に格納した、特定した命令に対応する発呼パターンの合計値を算出し、最後に受け取った発呼時間を、算出した合計値と比較し、差異が一定値以下、例えば±2秒以下であれば正しい発呼パターンであると判断し、車両の制御を行う。もし、命令送出処理で、最後に加えた発呼を全発呼時間のn分の一の秒数とした場合、最後の発呼時間をn倍して比較を行うこととする。
(c) 発信者番号を用いた命令伝達
発信者番号は電話回線網管理者(電話会社)が通知するため、確かさは高いと考える。
【0076】
本実施例を実現すれば、不安定な無線通信での発呼を用いた命令伝達であっても命令伝達の確かさを向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
100:電話端末
101:CPU
102:入力部
103:出力部
104:通信部
110:メモリ
111:命令送受信部
112:命令送信部
113:結果取得部
114:命令管理テーブル
150:車載器
151:CPU
152:通信部
160:メモリ
161:命令取得部
162:車両制御部
163:結果送信部
164:命令管理テーブル
170:車両制御関連
171:エアコン制御部
172:ドアロック制御部
173:充電状態取得部
201:発呼時間を用いた命令管理テーブル
202:発呼パターンを用いた命令管理テーブル
203:発信者番号を用いた命令管理テーブル
700:サーバ装置
701:CPU
702:通信部
710:メモリ
711:Webサーバ
712:命令入力画面生成部
713:結果画面生成部
714:命令送信部
715:結果取得部
716:命令管理テーブル
721:Webブラウザ
722:インターネット接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と被制御装置とが通信網で接続され、前記制御装置が前記被制御装置を遠隔制御する遠隔制御システムであって、
前記通信網は、発信装置から発呼される呼設定要求を受信装置に着呼させ、前記受信装置が着呼した呼設定要求に応答することにより、前記発信装置と前記受信装置との間に呼を設定するものである場合に、
前記発信装置としての前記制御装置は、制御命令ごとに異なる方法により、呼設定要求を行い、
前記受信装置としての前記被制御装置は、前記呼設定要求には応答せずに、前記呼設定要求方法を特定し、特定した前記呼設定要求方法に対応する制御を行う
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記発信装置としての前記被制御装置は、制御結果ごとに異なる方法により、呼設定要求を行い、
前記受信装置としての制御装置は、前記呼設定要求には応答せずに、前記呼設定要求方法を特定し、特定した前記呼設定要求方法に対応する前記制御結果を取得する
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記制御命令または前記制御結果ごとに異なる呼設定要求方法とは、前記呼設定要求の発呼時間を、前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせること、または、前記呼設定要求の要求元の発信者番号を、前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせること、または、前記呼設定要求を繰り返し行う場合の発呼パターンを、前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせること、のいずれかである
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記呼設定要求を繰り返し行う場合の、前記繰り返し方法を前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせるために、繰り返し回数、繰り返す際の間隔、繰り返す際の各回の発呼時間、呼設定の要求元の発信者番号のいずれか一つ以上を、前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせる
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記発信装置は、
前記発呼時間を前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせる場合には、同一の前記制御命令または前記制御結果を、所定時間以内に複数回繰り返し、
前記発呼パターンを前記制御命令または前記制御結果ごとに異ならせる場合には、前記発呼時間の合計時間の発呼を最後に行う
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記被制御装置が、車両に搭載されている場合に、前記車両の位置情報または、前記車両の状態に応じて、受信した前記制御命令の実行可否を判断し、前記結果を、前記制御装置に報告する
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記制御装置は、ユーザが操作する端末であり、
前記端末は、
前記制御命令の選択画面を表示し、
前記ユーザにより選択された前記制御命令を受け付け、
前記被制御装置から、前記制御結果を受信し、
前記制御結果を表す前記画面または前記音を前記ユーザに提示する
ことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一に記載の遠隔制御システムにおいて、
前記制御装置は、ユーザが操作する端末により遠隔操作されるサーバ装置であり、
前記端末は、
前記サーバ装置から、前記制御命令の選択画面を受信して、表示し、
前記ユーザによる前記制御命令の選択結果を前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置から、前記制御命令の制御結果を表す画面または音を受信し、
前記サーバ装置は、
前記端末から選択された前記制御命令を受信し、
前記被制御装置から、前記制御結果を受信し、
前記制御結果を表す前記画面または前記音を前記端末に送信する
ことを特徴とする遠隔制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195897(P2012−195897A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60029(P2011−60029)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】