説明

遠隔操作の内視鏡カプセル

人体の腔内の診断および(または)治療目的の遠隔操作の内視鏡カプセルであって、前方部分(12)と後方部分(13)を有する本体部(11)と、該本体部(11)から突出する運動脚(18)と、同じ本体部(11)内に収容される前記脚(18)の移動手段(19)と、エネルギ源(16)と、画像取得手段(15)と、取得された画像を制御しかつ転送できるように、操作者からおよび操作者へ信号を受信/送信する手段(17)を含む遠隔操作の内視鏡カプセルである。前記脚(18)は前記本体部(11)にヒンジ接続され、二つの個別のグループ(20,21)に細分されている。前記移動手段(19)は、移動可能なナットねじカーソル(25)が係合している対応するウオームスクリュー(24)に接続されたモータ(23)を各々含む、2個の駆動装置(22)を含む。前記のナットねじカーソル(25)はそれぞれのグループ(20,21)の脚(18)に運動学的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に内視鏡装置の分野に関し、より詳しくは診断および(または)治療目的の内視鏡カプセルであって、遠隔制御され、人体の各種部位の内部で移動可能であり、特に胃腸部位において、より詳しくは小腸においては受動的に、結腸においては能動的に移動可能である内視鏡カプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近知られているように、殆ど自律的に、かつ最小の侵襲的な方法で内視鏡による検査や治療を可能とする装置に関する関心が増している。
【0003】
この目的に対して、例えば国際特許出願第02/68035号公報(WO02/68035)に記載の内視鏡装置のように、「シャクトリムシ運動モデル(inchworm locomotion model)」に基づき、ビデオカメラを装着された端子を備えた半自動運動による方法が検討されてきた。これらの装置では、運動パラメータの制御可能性が限定されているという欠点を有し、速度を変えることが全くできない。更に、それらはその本体部が人体の腔の壁に沿って這い歩き、前記腔の内部では起こりうる傷害や病的部位を避けうることなくそれらが動くという欠点も有している。
【0004】
力の場(例えば磁場)を介して外部から制御される内視鏡装置が開示されてきたが、これらの装置はその場を発生させる適当な装置を患者が着装することを必要とする。例えば、日本の会社であるRFシステムラボ(RF System Lab)によって製造されているノリカ(Norika)3として知られる装置を参照することができる。しかしながら、これらの装置の使用は問題を発生させ、かつ患者に適用されているその他の生物医学的装置と干渉する可能性があるために更に危険でもある。更に、この種の外部から制御される内視鏡装置はまた、電磁場に広範に露出されるために副作用の危険性も伴う。
【0005】
小型のカプセルに一体化され、無線データ送信を伴う画像を検出する完全自律性内視鏡装置が米国特許第5604531号公報(US patent no.5604531)に記載されている。この装置は、CMOS画像発生器、送信機、LED照明および時計用ボタン電池によって提供されるエネルギ供給源を含んでいる。この装置の主要な制約は能動的運動制御(active locomotion control)の欠如に関するものであって、カプセルは通常の蠕動作用によって前進し、その移動の間は停止も方向を決めることもできないことである。
【0006】
能動的運動制御の問題を解決しようとする解決方法では外部の操作者により制御可能な自律性運動手段(autonomous locomotion means)を具備したカプセルを含む。一般に、これらの解決方法は探るべき人体の腔内での移動を可能とする、複数の運動モジュール(locomotion modules)を表面に配置した円筒形本体部を含む。前記の円筒形本体部には、エネルギ源と、操作者による遠隔制御によって送信された指令に従って運動モジュールを駆動するマイクロコントローラと、マイクロコントローラによって制御された画像取得用のビデオカメラと、操作者による遠隔制御によって送信された指令を受信し、ビデオカメラを介して取得した画像を伝送するトランシーバシステムが収容されている。
【0007】
いずれにしても、これらの「自律性」のシステムは、カプセルの移動を可能とし、かつ人体の腔を最適に視ることができるように探るべき腔の壁を拡張するためにガスを導入する必要がある。このガスの使用は、内視鏡検査を受ける患者にとって苦痛な経験となる。
【0008】
ガスの使用を避けることを目指した方法が、一体とした運動手段と外部の操作者によって管理される無線制御装置を備えたカプセルに関する国際特許第2006121239号公報(WO2006121239)に記載されている。このカプセルは、ビデオカメラおよび操作と制御並びに無線信号送信/受信のための各種の電子手段を収容した透明の球形キャップを端部に備える外側の円筒形本体部を有している。前記カプセルの運動手段は基本的に、前記の円筒形本体部に形成された長手方向のスリットから突出し、前記本体部の内部で該本体部にしっかりと取り付けられた電動モータによって駆動されるウオームスクリュー(worm screw)に結合されたナットねじカーソル(nut screw cursor)に装着されたブロックにヒンジ接続されているフック歯(hooking teeth)から構成されている。ウオームスクリューが一方の方向に回転すると、前記の歯は、そこを通過しかつ検査すべき腔の壁を掴持するために前記本体部の外側へ伸張し、前記歯を備えたブロックは本体部の後端に向かって移動する。しかしながら、前記の歯は腔の壁中へ掛け止めされているので、この結果前記の腔において前記本体部はほふく運動のような前進移動を行う。ウオームスクリューが反対方向に回転されると、前記ブロックは軸線方向に前進移動し、一方、前記の歯は本体部内へ後退し、カプセルは静止状態に留まる。
【0009】
しかしながら、構成要素の小型化が如何に十分に満足のいくものであろうとも、この解決方法におけるカプセルは検査中に腔の細部を観察するために回転させたり、あるいは傾動させたりすることはできない。更に、逆移動を行うことはできず、また運動サイクルの一部においても前記歯のいずれもが腔の壁に掛け止めできないという事実を鑑みれば垂直方向に移動することができない。更に、カプセルは胃腸管の独特の各種の形状に対して適応することができず、かつ腸の組織の最適な観察を可能とする診断上の観点から極めて重要な局面である、周りの腸壁を十分に拡張させることができるどんなシステムも含んでいない。
【0010】
ガスの使用を避けることを目的とした別の方法が国際特許第2005082248号公報(WO2005082248)に開示されている。詳しくは、この場合、運動モジュールは円筒形本体部にヒンジ接続された6本の脚によって形成され、各脚に接続されかつ反対方向に作動して該脚をヒンジの軸線の周りで角度方向に移動させるワイヤからなる駆動系によって制御される。前記ワイヤは伝動手段(transmission means)によって電気接点に接続されている。前記脚とワイヤの双方はSMA(形状記憶合金)でつくられている。2本の対向するワイヤの一方は電流を通すことによって加熱され、SMAの相遷移温度にまで持ってきて、その結果ワイヤを収縮させ(冷えた方のワイヤは熱いワイヤの作用によって変形する)前記脚を回転させる。電流供給が遮断されると、温度は低下し、ワイヤはその牽引力を停止し、順次加熱された反作用しているワイヤが収縮できるようにし、このようにして前記脚の復帰移動を完了させ、同時に最初のワイヤを元の長さまで戻す。脚は円筒形本体部の軸線に対して放射状方向に、かつ前記軸線の周りで等距離をおいて突出し、そのために探るべき腔の気道が脚を突出させたカプセルのサイズよりも断面が小さい場合腔の拡張を行う。
【0011】
この方法は、従来技術によるカプセル装置と比較してカプセルの案内、コンパクトなサイズおよび探索すべき気道の「拡張」に関して利点があるかもしれないが、依然として改良すべきある局面を有している。これらの局面とはワイヤを加熱することによる電力消費の高さに主として関連するものであって、このために当該装置の作動範囲を狭める結果となる。更に、SMAワイヤによって発生する力は腸の腔を完全に拡張させるには不十分である可能性があり、この結果非拡張の組織によって発生する摩擦によって前進移動が困難となる。更に、腔の壁が不規則であり、かつ表面が滑りやすいので前記脚は常に腔の壁に取り付いた状態に留まったり、あるいは接着状態にありうるものでない。接着を確実なものとするには接触力を増す必要があるが、このためにはより大きな断面のワイヤを使用する必要があり、その結果サイズが増大し、エネルギ消費が大きくなり、除去すべき熱の量の故に運動サイクルの回数が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主要な目的は人体の腔内で自律性移動やエネルギ供給を行う内視鏡カプセルであって、医療、診断および治療手順を実施できるようにし、かつ詳しくはそれが通過する人体の腔における関心のある領域の画像を伝送できるようにするために、外部からその移動を制御することが可能である内視鏡カプセルを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は腔の壁を拡張するためにガスを使用する必要なしに探索すべき腔の内部で自律的に移動することのできる遠隔操作の内視鏡カプセルを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は周囲の組織に対して刺激あるいは傷害を発生させることなく、それが位置される環境に対してよく順応しうる遠隔操作の内視鏡カプセルを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、自律性運動手段を具備した内視鏡カプセルであって、その移動が外部からの遠隔制御を介した要求に従って容易に停止、加速あるいは減速できる内視鏡カプセルを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は角を容易に転回できる自律性運動手段を具備した内視鏡カプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、人体の腔内での診断および(または)治療目的の遠隔操作の内視鏡カプセルであって、前方部分と後方部分を画成する本体部と、前記本体部から伸長しうる運動脚と、前記本体部内に収容された前記脚の移動手段(moving means)と、エネルギ源と、画像を取得する手段と、カプセルの制御および取得した画像の転送を可能とするために操作者から、および操作者まで信号を受信/送信する手段とを含む遠隔操作の内視鏡カプセルによって達成される。前記の脚は前記本体部にヒンジ接続され、かつ二つの個別のグループに分割され、前記移動手段は2個の駆動装置を含み、各駆動装置は移動可能なナットねじカーソルがその上に噛み合っている対応のウオームスクリューに接続されたモータを含み、前記ナットねじカーソルは前記脚のそれぞれのグループの脚に運動学的に接続されている。
【0018】
本発明による内視鏡カプセルの更に詳細な特徴や利点は添付図面を参照して非限定的な例として提供されている実施例の以下の説明から明らかとされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】最も伸張した位置における運動脚を示す、本発明によるカプセルの不等角投影図を示す。
【図2】部分的に断面で示す、図1に示すカプセルの不等角投影図を示す。
【図3】前述の図面におけるカプセルの内部構成要素、特に脚の移動のための装置の不等角投影図を示す。
【図4】カプセルの本体部の軸線に対して垂直の平面におけるカプセルの前面図を示す。
【図5】脚の最も拡張した位置と点線で示す最も拡張の少ない位置とが示されている、脚の移動装置を駆動する装置の一部の概略側面図である。
【図6】脚の移動装置を駆動する装置の一部を特に断面で示す概略側面図を示す。
【図7】前記駆動装置の一部の正面図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
前述の図面を参照すれば、本発明による診断および(または)治療目的の遠隔操作の内視鏡カプセルは一貫して数字10によって識別される。
【0021】
前記カプセル10は前方部分12および後方部分13を画成する概ね円筒形の本体部11を含む。
【0022】
前記本体部11の前方部分12の端部には透明のドーム14が設けられており、該ドームの内部には、例えば腕時計用ボタン電池のような電気エネルギ源16に接続された(図示していない既知タイプの照明手段を付属された)デジタルビデオカメラのような画像取得手段15が配置されており、ビデオカメラと電池の双方は図2に概略的に示されている。
【0023】
外部の操作者への、および操作者からの信号受信/送信手段17はドーム14の下方に収容され、カプセルの遠隔制御と操作者が介入しうる外部端子への取得画像の転送を可能とする。これらの手段は、例えば国際特許出願第2005082248号公報に記載のもののような概ね既知タイプのものであるが、その他の機能的に同等の手段も代替的に使用可能である。
【0024】
ビデオカメラは、それぞれ本体部11の前方部分12と後方部分13とに位置された、例えば2個のビデオカメラのように数が1個以上としうる態様も他の実施例において明らかである。
【0025】
カプセル10はまた、本体部11から突出しうる運動脚18を含む。詳しくは図3に示されている脚18を移動させる手段19は前記本体部11の内部に位置している。詳しくは、前記脚18は二つの個別のグループに分割されており、第一のグループ20は本体部11の前方部分12に向かって位置され、一方第二のグループ21は後方部分13に向かって位置されている。
【0026】
図2および図3は、前記移動手段19が第一のグループ20と第二のグループ21に対してそれぞれ作動する、前記脚18のための2個の個別の駆動装置22を含む態様を示している。前記駆動装置22は以下説明するように、概ね同じタイプのものであることが好ましい。
【0027】
各駆動装置22は前記脚18に運動学的に接続されたナットねじカーソル25と係合された対応するウオームスクリュー24に接続のモータ23を含む。ナットねじカーソル25は、ウオームスクリュー24に対して平行で、かつ前記本体部11にしっかりと接続されている案内バー25aに摺動可能に結合されているため、前記ウオームスクリュー24に沿って平行移動するように強制される。
【0028】
例えばモータ23は並木精密宝石株式会社(Namiki Precision Jewel Co.,Ltd.)によって製造されている直流のブラシレスタイプの電動モータであって、外径が4ミリメートルで、全長が16.2ミリメートルであるモータである。前記モータは一体の減速機を有しており、減速機のシャフトにおける最大伝達トルクは2.92mNmと等しい(減速機の無い場合の同じモータではシャフトにおける最大伝達トルクは0.058mNmと等しい)。前記電動モータは電池16によって給電される。
【0029】
詳しくは、本発明の重要な特徴によれば、2個の駆動装置22のウオームスクリュー24は本体部11の軸線に対して共軸線関係にあり、モータ23はそれらの駆動シャフト27を本体部11の軸線に対して平行にして、従ってウオームスクリュー24の共通軸線に関して両側に位置されている。
【0030】
各モータ23は、伝動比が1以下である標準的な伝動装置によって対応するウオームスクリュー24に接続されている。詳しくは、前記標準的な伝動装置はモータ23の駆動軸27の端部に固定されたピニオン28と、ウオームスクリュー24の端部に固定され、前記ピニオン28よりも直径が大きい歯車29とによって形成されている。伝動比は0.420と0.430の間の範囲で、好ましくは0.425に等しい。これは標準的な伝動装置が占める空間での前記脚に伝えられる力に関して最適な値である。モータ23は相互に対して対向して位置されており、従って2個のウオームスクリュー24の歯車29は前記スクリューの各端に位置されている。
【0031】
脚18の移動手段19はまた、外部の制御装置からの指令に従って二つのグループの脚18の独立した移動を制御することのできる、前述の国際特許出願番号第2005082248号に記載のもののような概ね既知タイプのものである(図には簡単にするために番号を付していない)電子手段も含んでいる。
【0032】
各グループ20および21の前記脚18はそれぞれのナットねじカーソル25に接続されている(詳しくは図5,図6および図7を参照のこと)。独自の各脚18の第一の端部において、脚の各グループ20および21は、ナットねじカーソル25に固定されて回転可能な取り付けヒンジ31からなる第一の抑制手段(restraint)30を有し、同じ脚18の中間位置において、本体部11の固定点33に対して回転運動(roto−translation)を可能とし、その回転軸線はヒンジ31の軸線に対して平行である、第二の抑制手段32を有することが好ましい。
【0033】
詳しくは、前記第二の抑制手段32は、本体部11に固定された回転ピンと、対応する脚18に沿って画成された案内溝35を含む。前記ピン34と溝35とは前述の回転運動の実行を可能とするために相互に対して摺動しながら結合されている。
【0034】
実際には各ナットねじカーソル25は、(図5において点線で記した部分から判るように)対応する脚18が最小の伸長の位置で、本体部11に沿って位置する初期位置から、前記脚18が最大の伸長であり、(図5において実線で記した部分である)本体部11の軸線から最大の距離に脚の自由端36が位置するような角度で本体部の11の外方に向かって突出する最終位置まで、対応するウオームスクリュー24に沿って移動することができる。
【0035】
駆動装置22は、脚18が突出しうるように内側から外側に向かって通る長手方向のスロット37が外面に形成されている本体部11の内部に収容されている。更に詳しくは、前記本体部11の上には角度方向に等間隔の二つのグループのスロットが設けられており、各グループの脚に対して一つのグループのスロットがそれぞれ本体部11の前端からと後端から中間位置まで延在している。一方のグループのスロットは他方のグループの対応するスロットとは整合しておらず、相互に近接して位置してはいるが、2対2で互い違いになっている。
【0036】
各グループ20,21の脚は6個の脚18から形成されることが有利である。この選択は色々な数の脚を提供する原型のカプセルに対して実行した多数の試験の結果から得られたものである。これらの試験から、運動性能は脚の数の増加に伴って増大することが認められた。このことは、脚の数が増えると、推進力並びに腸壁の拡張がより均等に配分されるという事実による。従って、市販されている内視鏡カプセルの直径(約11ミリメートル)によって加えられる寸法上の限度を満足させながら、脚の数は(各グループに6個で)12個まで最大化された。この数の脚は以下明瞭に説明するように提案された目的を達成するものである。
【0037】
図4において、第一のグループ20の脚の自由端は記号36′で識別され、一方第二のグループ21の脚の自由端は数字36″で識別されている。図4に示されているように、(本体部11の軸線と一致する)対応するウオームスクリュー24の軸線に対して直交する平面における第一のグループ20と第二のグループ21の双方の脚18の自由端36の突出部は、その中心が前記軸線と一致する点線によって示されている概ね同じ円周上に配置されている。
【0038】
図から判るように、自由端36は円周に沿って相互から概ね同じ角距離(angular distance)をおいて設定されている。詳しくは、図4に示すように、双方のグループ20−21の脚18がそれらの広げられた位置にあると、対応するウオームスクリュー24の軸線に対して直交する面における自由端の突出部は同じ円周に配置されている。更に詳しくは、二つのグループに属する脚はカプセルの軸線に対して直交する平面において交互に突出しており、寸法上の理由から、それぞれのモータから最も離れた各グループの2本の脚はそれらの理想的な位置に対してある角度(約4度)僅かにずれている。前述の配置は、脚の等距離の間隔をもたらすカプセル本体の容積の変性(degeneration)を避けるために必要とされる。より詳しくは、前述の脚の長手方向のスロット(前記脚が完全に後退した位置まで畳まれるとき前記脚をその内部に収容するスロット)が相互に対して同じ角距離に配置されるとすれば、これは前記脚の後退段階において脚の間で衝突が起きるようにさせる。このような干渉状態は脚を相互から僅かな距離だけ間隔を空けることによって避けられてきた。
【0039】
自由端36と案内溝35との間の中間点において、各脚18には、それが接触する組織の撓み性(yielding nature)に脚を順応させるための別の自由度を形成する弾性のひざ状部分38が形成されている。換言すれば、脚の終端部分は前記のひざ状部分の周りで弾力的に撓むことができる。
【0040】
2個の対向する延長部分39が脚18の伸長方向における数度の回転を制限するために前記ひざ状部分38の近傍に位置されており、一方別の対の延長部分40が、ひざ状部分38の周りで広範囲に回転した後相互に当接するように脚18の反対側に位置させることができる。したがって、対の延長部分40は脚18に加えられる可能性のある撓み量を制限し、該脚に対する損傷の可能性を防止することができる。
【0041】
図に示されているように、各脚の自由端は腸の粘膜を掴んで前方移動ができるように概ねフック状とされている。前記フックのサイズは腸の粘膜の厚さ(0.2ミリメートル)よりも小さく、このようにして、下に位置する組織を傷つけない。
【0042】
二つのグループの脚の機能は異なっている。第二のグループ21は主としてカプセルを推進させることを目的とし、一方第一のグループ20は主として探っている腔の壁にカプセルと取り付け、湾曲した軌道をとり易くし、かつその壁を最適に視れるように拡張させることである。
【0043】
本発明による内視鏡カプセルは、食事の摂取の間、脚が偶発的に外方へ伸長するのを阻止し、飲み込み作用を容易、かつ安全にするために生体適合性で、かつ生物分解性の層で有利にコーティングすることができる。
【0044】
このようなカプセル構造によって、例えばコンパクトなサイズ(好ましくは24ミリメートルと28ミリメートルの間の長さ)、(好ましくは90度と130度の間の)脚の広がり角度、(本体部11の全容積の10.5%以上を占拠しないモータのお陰で)電子要素を収容するに十分な内側サイズ、(好ましくは1.8Nと3.2Nの間の)脚の自由端における制御された強度、および(8本と12本の間の)脚の数、のような重要な構造上および動力学的パラメータに留意することを可能とする。
【0045】
更に、本発明によるカプセルの構造のお陰で、その他の従来技術によるカプセルの場合よりもはるかに多い数の脚(説明した例では12個)を使用できるようにする。
【0046】
このように数々の利点を提供し、なかんずく、a)探査のために腔の壁をより容易に拡張させることが可能で、それによって腔を膨らませるためのガスの使用が避けられること、b)腔の壁に対する各脚の相互作用の力を低くするが、壁に対するフックの掴持並びに壁に沿った運動を可能とするに十分強力な全体の力を提供することが可能であり、組織の刺激や損傷の危険性に関して明白な利点があること、およびc)運動速度を調整できるより大きな融通性がある、という利点を提供する。
【0047】
本発明によるカプセルは数々の方法で修正や変更が可能であり、それらはすべて本発明の範囲内であり、更に全ての細部をその他の同等な要素によって交換することが可能である。実際、それらが特定の使用に適合する限り、使用される材質並びに寸法は現在技術の要件および状態に従うものとしうる。
【0048】
いずれの特許請求の範囲の請求項に記載の特徴や技術が特定的に参照される場合常に、それらは請求項の説明をより理解しやすいようにするという唯一の目的のための例として含んできたものであり、従ってそれらは参照される要素の解釈になんら制限を加えるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内の腔内の診断および(または)治療目的の遠隔操作の内視鏡カプセルであって、前方部分(12)および後方部分(13)を有する本体部(11)と、前記本体部(11)から突出することができる運動脚(18)と、前記本体部(11)内に収容される前記脚(18)の移動手段(19)と、エネルギ源(16)と、画像取得手段(15)と、前記カプセルの制御および取得された画像の転送を可能とするために操作者から信号を受信しおよび操作者へ信号を/送信する手段(117)と、を含む内視鏡カプセルにおいて、前記脚(18)が前記本体部(11)にヒンジ接続され、かつ二つのグループ(20,21)に細分されており、前記移動手段(19)が二つの駆動装置(22)を含み、各駆動装置は、移動可能なナットねじカーソル(25)が係合している対応のウオームスクリュー(24)に接続されているモータ(23)を含み、前記ナットねじカーソルがそれぞれのグループ(20,21)の脚(18)に運動学的に接続されていることを特徴とする遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項2】
前記の少なくとも一方の第一のグループ(20)が、各脚(18)の第一の端部において該脚(18)を関連の前記ナットねじカーソル(25)に枢動可能に固定するためにヒンジによって形成された第一の抑制手段(30)と、前記脚(18)の中間位置において、前記本体部(11)の固定点(33)に対して前記ヒンジ(31)の軸線に平行な回転軸線を備え回転運動を可能とする第二の抑制手段(32)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項3】
前記第二の抑制手段(32)が前記本体部(11)に固定された回転ピン(34)と、前記脚(18)に沿って形成された案内溝(35)を含み、前記ピン(34)および前記溝(35)とが相対的に摺動するように結合されていることを特徴とする請求項2に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項4】
前記本体部(11)の前方部分(12)の近傍に配置された第一のグループ(20)の脚(18)と、前記本体部(11)の後方部分(13)の近傍に位置された第二のグループ(21)の脚(18)を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項5】
前記駆動装置(22)の複数のウオームスクリュー(24)が共軸線関係にあることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項6】
各モータ(23)は伝動比が1以下の伝動装置によって対応する前記ウオームスクリュー(24)に接続されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項7】
前記の伝動装置が、前記モータ(23)の駆動軸(27)の端部に固定された第一の歯車(28)と、該第一の歯車(28)より直径が大きく、前記ウオームスクリュー(24)の端部に固定されている第二の歯車(29)とを含み、前記の二つのグループ(20,21)の脚(18)の前記の二つの駆動装置(22)の前記二つのモータ(23)が前記ウオームスクリュー(24)の両側に位置されていることを特徴とする請求項4、5、6のいずれか一項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項8】
前記伝動装置の伝動比が0.420と0.430の間であることを特徴とする請求項7に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項9】
前記本体部(11)には前記脚(18)を中に収容するために外面に長手方向の貫通スロット(37)が形成されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項10】
角度方向に等距離の二つのグループのスロット(37)であって、各グループ(20,21)の脚(18)に対して1個のスロットが前記本体部(11)の前端からと、後端からそれぞれ中間位置まで延在しており、一方のグループの前記スロットと他方のグループの前記スロットが2個毎に互い違いの位置に設置されていることを特徴とする請求項9に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項11】
前記本体部(11)の前方部分(12)が透明のドーム(14)を具備しており、該ドームの内部に画像取得手段(15)、詳しくはビデオカメラが装着されていることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項12】
前記の少なくとも1個のモータ(23)が直流のブラシレスモータであって、外径が3.5ミリメートルと4.5ミリメートルの間で、全長が15.2ミリメートルと17.2ミリメートルの間であり、前記モータは減速機を具備しており、該減速機の軸に伝達される最大トルクが概ね2.92mNmに等しいことを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項13】
各グループ(20,21)の脚(18)が4本と6本の間の数の多数の脚(18)から形成され、前記ウオームスクリュー(24)の軸線に対して直交する平面における前記脚(18)の自由端の突出が、その中心が前記軸線と一致する同じ円周に概ね位置しており、前記自由端(36)は前記円周に沿って相互から概ね等距離にあり、前記移動手段(19)は、前記脚(18)が前記本体部(11)の外側を外方に突出する最大広がり延長位置から、前記脚(18)が前記本体部(11)に沿って位置している最小広がり延長位置まで、前記脚(18)の配置を可能とすることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項14】
双方のグループ(20,21)の前記脚(18)が前記最大広がり延長位置に位置すると、対応するウオームスクリュー(24)の軸線に対して直交する平面における諸グループ(20,21)の自由端(36′、36″)の突出部は交互に位置し、かつ同じ円周に沿って概ね等距離離隔していることを特徴とする請求項13に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項15】
各脚(18)が前記自由端(36)と前記案内溝(35)との間の中間点において、それが接触する前記組織の撓み性に前記脚を順応させる別の自由度を提供する弾性のひざ状部分(38)を提供することを特徴とする請求項3から14までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項16】
前記脚(18)のその延長方向における回転を制限するために相互に当接するように2個の対向する延長部(39)が前記ひざ状部分(38)において設けられていることを特徴とする請求項15に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項17】
前記のひざ状部分(38)の周りで広範に回転した後相互に当接するように別の対の延長部(40)が前記のひざ状部分(38)に設けられていることを特徴とする請求項15または16に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項18】
各脚(18)の前記自由端(36)がフック状であることを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。
【請求項19】
全長が概ね24ミリメートルと28ミリメートルの間であり、脚の開き角度が概ね90度と130度の間であり、電動モータが本体部(11)の全容積の10.5%以下を占め、各脚(18)の前記自由端(36)で発生する力が概ね1.8Nと3.2Nの間であることを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載の遠隔操作の内視鏡カプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−523193(P2010−523193A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501672(P2010−501672)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000259
【国際公開番号】WO2008/122997
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(503455260)スクオラ スペリオレ デイ ストウデイ ユニベルシタリ エ デイ ペルフェジオナメント エス.アンナ (2)
【出願人】(591074116)韓国科学技術研究院 (17)
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF SCIENCE AND TECNOLOGY
【住所又は居所原語表記】39−1 Hawolgok−dong,Seongbuk−gu,Seoul 136−791KOREA
【Fターム(参考)】