説明

遠隔操作携帯機

【課題】所定外の機器を操作するための改造、あるいは無線送信の出力を大きくする改造を防止することのできる遠隔操作携帯機を提供する。
【解決手段】上ケース2にはスイッチ22の操作をなすための開口部10が形成され、基板4は上ケース2側の表面に信号制御回路、コンデンサーを有する送信アンテナ、増幅器の少なくとも1つを含む電子部品21を配置する部品配置領域20を備えると共に、基板4の下ケース3側の裏面には電池5と接触する電源端子23を備え、ケーシング1内には基板4の部品配置領域20を含む表面を覆う弾性被覆体6が設けられ、弾性被覆体6は基板4に対して接着材7により接着固定される固着部33を部品配置領域の外側に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の操作を無線通信により行うことのできる遠隔操作携帯機に関し、特に内部に基板を覆って防水性を確保する弾性被覆体を備えてなる遠隔操作携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機器を無線通信により遠隔操作することのできる携帯機が知られている。例えば、車のキーレスエントリー装置においては、キーと一体化、あるいはキーを有さない単体の携帯機が知られており、この携帯機に設けられたスイッチを操作することにより、車両との間で無線通信がなされて、ドアを施錠したり、あるいは解錠したりするように構成されている。また、車両においてエンジンをスタートさせるために用いられる携帯機も知られている。さらに、この種の携帯機は、テレビ等の家電機器を操作するリモコンとしても用いることができる。
【0003】
遠隔操作携帯機においては、CPU等からなる制御部においてスイッチによる操作に応じた信号が生成され、それが搬送波により周波数変調あるいは振幅変調され、増幅回路を経て送信アンテナから無線送信される。このように信号を無線送信する遠隔操作携帯機としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3320259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔操作携帯機において、制御部を改造したり、あるいは信号を送信する配線に外部からの信号を入力するようにして、所定の機器以外の機器を操作できるように改造が行われることが懸念される。また、増幅器における増幅度を上げたり、あるいは送信アンテナの容量成分を調整するなどして、無線送信の出力を大きくして通信距離を伸ばすといった改造も懸念される。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、所定外の機器を操作するための改造、あるいは無線送信の出力を大きくする改造を防止することのできる遠隔操作携帯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る遠隔操作携帯機は、上ケースと下ケースを一体化してなるケーシング内に電子部品を配置した基板及び電池を納めた遠隔操作携帯機において、
前記上ケースにはスイッチの操作をなすための開口部が形成され、前記基板は上ケース側の表面に信号制御回路、コンデンサーを有する送信アンテナ、増幅器の少なくとも1つを含む電子部品を配置する部品配置領域を備えると共に、前記基板の下ケース側の裏面には前記電池と接触する電源端子を備え、
前記ケーシング内には前記基板の部品配置領域を含む表面を覆う弾性被覆体が設けられ、該弾性被覆体は前記基板に対して接着材により接着固定される固着部を備えることを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係る遠隔操作携帯機は、前記弾性被覆体の固着部は前記基板の部品配置領域を取り囲むように形成されることを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係る遠隔操作携帯機は、前記弾性被覆体の固着部は接着材を塗布する接着部と、該接着部の少なくとも前記部品配置領域側に設けられる凹部とからなることを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係る遠隔操作携帯機は、前記弾性被覆体は前記固着部よりも外周側で前記上ケース及び下ケースに全周に渡って挟持される防水シール部を備え、前記凹部は前記接着部の防水シール部側にも設けられることを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係る遠隔操作携帯機は、前記基板は、前記弾性被覆体の固着部が接着される領域の少なくとも前記部品配置領域側に凹部を有してなることを特徴として構成されている。
【0012】
また、本発明に係る遠隔操作携帯機は、前記上ケースは前記弾性被覆体に対して当接する当接面を内周面に備え、該当接面には接着材を充填する上ケース凹部が形成されてなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る遠隔操作携帯機によれば、ケーシング内には基板の部品配置領域を含む表面を覆う弾性被覆体が設けられ、弾性被覆体は基板に対して接着材により接着固定される固着部を備えることにより、基板の部品配置領域を弾性被覆体で覆って、かつ弾性被覆体を容易には取り外すことができず、無理矢理取り外すと弾性被覆体によるケーシング内の防水機能が損なわれることととなり、基板に配置された部品の交換や改造に対する抑止力とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る遠隔操作携帯機によれば、固着部は基板の部品配置領域を取り囲むように形成されることにより、基板上の電子部品に対して確実にアクセスできないようにすることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る遠隔操作携帯機によれば、固着部は接着材を塗布する接着部と、接着部の少なくとも部品配置領域側に設けられる凹部とからなることにより、接着材の余剰分が凹部に納められるので、接着材が部品配置領域内に侵入することを防止することができる。
【0016】
さらにまた、本発明に係る遠隔操作携帯機によれば、弾性被覆体は固着部よりも外周側で上ケース及び下ケースに全周に渡って挟持される防水シール部を備え、凹部は接着部の防水シール部側にも設けられることにより、接着材が防水シール部に侵入して防水性能を損ねることを防止することができる。
【0017】
そして、本発明に係る遠隔操作携帯機によれば、基板は弾性被覆体の固着部が接着される領域の少なくとも部品配置領域側に凹部を有してなることにより、接着材の余剰分が凹部に納められるので、接着材が部品配置領域内に侵入することを防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る遠隔操作携帯機によれば、上ケースは弾性被覆体に対して当接する当接面を内周面に備え、当接面には接着材を充填する上ケース凹部が形成されてなることにより、上ケースと弾性被覆体とが接着されて、上ケースと下ケースを分離しようとすると弾性被覆体が破損することとなり、より確実に基板に配置された部品の交換や改造に対する抑止力を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態における遠隔操作携帯機の斜視図である。
【図2】遠隔操作携帯機の分解斜視図である。
【図3】上ケースを除いた遠隔操作携帯機の平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における遠隔操作携帯機の斜視図を示している。この図に示すように、本実施形態における遠隔操作携帯機は、上ケース2と下ケース3により構成されるケーシング1内に、後述する基板4や電池5等を納めてなり、ケーシング1の上ケース2には2つの開口部10が形成されると共に、開口部10からは押圧操作自在な操作部32が露出している。この操作部32を押圧操作することにより、遠隔操作携帯機からは所定の信号が無線送信される。
【0021】
図2には、遠隔操作携帯機の分解斜視図を示している。この図に示すように、上ケース2は2つの開口部10を有している。また、下ケース3はトレイ状に形成されて、底面の中央部には電池5を収容可能な電池収容部15を有している。上ケース2と下ケース3は、周縁部において互いに係合し、一体化されてケーシング1を構成する。そして、ケーシング1の内部は中空状となり、その中に基板4と電池5及び弾性被覆体6が納められる。
【0022】
基板4は、ケーシング1の内部形状に略適合する板状に形成されてなるものであって、上ケース2に対向する表面4aには、複数の電子部品21と2つのスイッチ22が配置されている。電子部品21には、スイッチ22の操作に応じた信号を生成する信号制御回路と、信号制御回路で生成した信号を搬送波で変調する信号回路と、変調した信号を増幅する増幅器と、増幅器で増幅した信号を無線送信する送信アンテナなどが含まれる。なお、送信アンテナはコンデンサーを有して構成されている。
【0023】
弾性被覆体6は、ゴム等の弾性を有する素材により形成されたものであって、基板4と上ケース2の間に設けられて、ケーシング1内において基板4の表面4a側を被覆し、基板4の防水性を確保するものである。
【0024】
弾性被覆体6は、基板4全体を覆うため、基板4よりも一回り大きく形成される。また、上面には上ケース2の開口部10の位置及び大きさに対応した突出状の操作部32を2つ有しており、開口部10からケーシング1の外方に露出する。
【0025】
図3には、遠隔操作携帯機の上ケース2を除いた平面図を示している。この図において弾性被覆体6は破線で示されている。図3に示すように、電子部品21及びスイッチ22は、基板4の表面4aにおいてその周縁部を除く中央部である部品配置領域20に配置されている。弾性被覆体6の基板4と対向する面には、基板4の部品配置領域20の外側であって、これを取り囲むように固着部33が形成され、固着部33には接着材7が設けられて弾性被覆体6と基板4とを接着固定している。
【0026】
図4には、図3のA−A断面図を示している。なお、図4では上ケース2も示している。図4に示すように、上ケース2の下端部には係合部11が形成され、下ケース3の内周面に形成される被係合部16に係合し、上ケース2と下ケース3が一体化されている。また、電池5は、下ケース3の電池収容部15に納められ、基板4の裏面4bと対向すると共に、基板4の裏面4bに設けられる電源端子23と接触する。
【0027】
弾性被覆体6は、中央部の上面に前述の操作部32が形成されると共に、その下面側は空洞状となるように形成され、部品配置領域20を覆っている。弾性被覆体6において基板4のうち部品配置領域20の周縁部と対向する部分は、基板4の表面4aと当接するように形成されており、この当接する領域に固着部33が形成されている。
【0028】
また、弾性被覆体6の周縁部は、基板4の側方から上ケース2の係合部11の下部に伸びており、上ケース2及び下ケース3によって挟持される防水シール部31となっている。防水シール部31が上ケース2と下ケース3によって挟持されていることで、それよりも内側の基板4側に水が浸入しないようにしている。
【0029】
固着部33と基板4は、接着材7により接着固定され、これによってケーシング1を分解しても基板4上の電子部品21を容易に交換したり改造したりすることができない。これらを行うためには、弾性被覆体6を基板4から無理矢理剥がすことが考えられるが、そうすると弾性被覆体6は破損することとなるため、本来果たすべき防水性能を発揮することができなくなる。すなわち、本来の機能を損なうこととなるため、基板4上の電子部品21に対する安易な改造、交換等を防止することができる。特に、基板4に配置された電子部品21において、制御部や増幅器、あるいは送信アンテナに含まれるコンデンサーなどは、改造の対象となりやすいため、これらを確実に被覆し、弾性被覆体6をめくっても露出しないように、弾性被覆体6が基板4に対して固着される。
【0030】
また、弾性被覆体6の固着部33は、接着材7が塗布されて基板4との接着をなす平面状の接着部33aと、接着部33aの両側に形成された溝状の凹部33bとからなっている。固着部33を構成する凹部33bは、接着部33aに設けられた接着材7のうち余剰分を受ける機能を果たす。
【0031】
接着部33aと基板4の表面4aは、いずれも平面状であるため、弾性被覆体6を基板4に接着するのに伴い、余剰分は接着部33aの両側に押し出されるが、凹部33bが形成されていることにより、接着材7は凹部33bよりも外側にまで漏れることがない。
【0032】
このように、凹部33bが接着部33aの両側、すなわち接着部33aの部品配置領域20側と防水シール部31側とにそれぞれ形成されているので、接着材7が部品配置領域20内に侵入して電子部品21に影響を与えたり、あるいは接着材7が防水シール部31と上ケース2あるいは下ケース3との間に侵入して防水性に影響を与えたりすることがない。
【0033】
また、本実施形態では、弾性被覆体6に凹部33bを設けているが、接着される基板4側に凹部を設けるようにしてもよい。この場合には、弾性被覆体6の固着部33を挟んで弾性被覆体6と基板4の両方にそれぞれ凹部を設けることとなる。なお、基板4にのみ凹部を設け、その場合に部品配置領域20側のみ一条の溝を形成しても良い。
【0034】
本実施形態では、上ケース2と弾性被覆体6の間にも、接着材8が設けられる。図4に示すように、上ケース2の内周面は弾性被覆体6の上面と当接する当接面12となっており、その周縁部には溝状の上ケース凹部13が形成されている。上ケース凹部13には、接着材8が充填され、上ケース2と弾性被覆体6とを接着固定する。
【0035】
このように、上ケース2と弾性被覆体6を接着材8で固定することにより、上ケース2と下ケース3を分離することも困難となり、無理矢理分離すれば弾性被覆体6を破損して防水性を損なうこととなる。このため、より改造に対する抑止力となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態では、遠隔操作携帯機は車のキーレスエントリー装置に用いられるものを想定しているが、その他にもテレビ等の電機製品のリモコンなどにも本発明を適用することができる。
【0037】
また、弾性被覆体6における固着部33の配置についても、本実施形態には限られず、例えば部品配置領域20の外側領域の複数箇所について、島状に固着部33を設けるようにしてもよい。この場合においても固着部33の凹部33bは、接着材7が塗布される接着部33aの部品配置領域20側と防水シール部31側のそれぞれに設けられる。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーシング
2 上ケース
3 下ケース
4 基板
5 電池
6 弾性被覆体
10 開口部
11 係合部
12 当接面
13 上ケース凹部
15 電池収容部
16 被係合部
20 部品配置領域
21 電子部品
22 スイッチ
23 電源端子
30 被覆部
31 防水シール部
32 操作部
33 固着部
33a 接着部
33b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケースと下ケースを一体化してなるケーシング内に電子部品を配置した基板及び電池を納めた遠隔操作携帯機において、
前記上ケースにはスイッチの操作をなすための開口部が形成され、前記基板は上ケース側の表面に信号制御回路、コンデンサーを有する送信アンテナ、増幅器の少なくとも1つを含む電子部品を配置する部品配置領域を備えると共に、前記基板の下ケース側の裏面には前記電池と接触する電源端子を備え、
前記ケーシング内には前記基板の部品配置領域を含む表面を覆う弾性被覆体が設けられ、該弾性被覆体は前記基板に対して接着材により接着固定される固着部を前記部品配置領域の外側に備えることを特徴とする遠隔操作携帯機。
【請求項2】
前記弾性被覆体の固着部は前記基板の部品配置領域を取り囲むように形成されることを特徴とする請求項1記載の遠隔操作携帯機。
【請求項3】
前記弾性被覆体の固着部は接着材を塗布する接着部と、該接着部の少なくとも前記部品配置領域側に設けられる凹部とからなることを特徴とする請求項1または2記載の遠隔操作携帯機。
【請求項4】
前記弾性被覆体は前記固着部よりも外周側で前記上ケース及び下ケースに全周に渡って挟持される防水シール部を備え、前記凹部は前記接着部の防水シール部側にも設けられることを特徴とする請求項3記載の遠隔操作携帯機。
【請求項5】
前記基板は、前記弾性被覆体の固着部が接着される領域の少なくとも前記部品配置領域側に凹部を有してなることを特徴とする請求項1または2記載の遠隔操作携帯機。
【請求項6】
前記上ケースは前記弾性被覆体に対して当接する当接面を内周面に備え、該当接面には接着材を充填する上ケース凹部が形成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠隔操作携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−219590(P2010−219590A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60484(P2009−60484)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】