説明

遠隔浄水システム

【課題】遠隔浄水システムを提供する。
【解決手段】本発明の遠隔浄水システムは、無人化浄水場に設置される凝集剤注入率決定装置(12)と、通信ネットワークを介して凝集剤注入率決定装置(12)を操作する遠隔操作端末(11)とを備え、凝集剤注入率決定装置(12)は、遠隔操作端末(11)からの指示に応じて、1つの試験槽を用いてジャーテストを実行し、前記試験槽を動画撮像し、動画撮像した撮像データを、遠隔操作端末(11)に送信する。遠隔操作端末(11)は、凝集剤注入率決定装置(12)から、それぞれ異なる凝集剤の注入率で複数回実行させて得られる動画撮像した撮像データを取得して動画合成して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や湖沼水等の表流水、工業用水、下水、汚泥、工場廃水などを処理するための凝集沈澱処理において、凝集剤注入率(被処理水の水量に対する凝集剤注入量の比率)の決定を行う装置を遠隔的に操作又は監視する遠隔浄水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
急速ろ過方式を採用した浄水場では、一般的に、凝集剤(又は「集塊剤」とも称される)を注入するとともに急速撹拌を実施する混和池と、混和池で生成された凝集体(フロック)を成長させるフロック形成池と、成長したフロックを沈澱除去するための沈殿池と、沈澱しきらなかった粒子やフロックを除去するろ過池で浄水システムを構成している。
【0003】
急速ろ過方式における重要なポイントは、原水水質に応じて凝集剤の注入率を適正な値に制御し、沈降性のよいフロックを形成することである。不適切な注入率によって凝集処理を行った場合には、沈澱池からのフロックのキャリーオーバや凝集不良により、ろ過池の損失水頭の上昇、逆洗頻度の上昇、微細粒子のろ過池からの流出などの問題が発生する。
【0004】
適正な凝集剤注入率は、原水濁度の他に、アルカリ度,pH,水温などによっても変化し、原水の水質ごとに異なるので、原水濁度を基に一義的に凝集剤注入率を決定することはできない。そのため、従来から浄水場ではジャーテストが行われる。尚、本願明細書中、「ジャーテスト」とは、凝集剤注入率を決定することを云う。
【0005】
一般的に知られるジャーテストは、処理すべき原水の一定量を幾つかの試験槽に採取し、試験槽ごとに注入率を段階的に変化させて、急速撹拌と緩速撹拌とにより凝集反応を起こし、所定の時間だけ静置させた後の上澄み水濁度やフロックの沈降状況を判定して、凝集剤注入率を決定する。
【0006】
ただし、一般的に知られる従来からのジャーテストでは熟練したオペレータが必要であり、さらにはオペレータによって異なる結果になりやすい。
【0007】
そこで、安定的に、被処理水に凝集剤を注入して凝集沈殿処理を行う水処理方法にて被処理水水量に対する凝集剤注入量の比率(凝集剤注入率)を決定する技術として、被処理水を複数個の試験槽にそれぞれ所定量採取し、各試験槽に採取された試料水に対して、それぞれ異なる凝集剤注入率を有する試料水となるように、予め設定した異なる所定量の凝集剤を注入し、各試料水を攪拌させて凝集剤を分散させ、各試料水内の粒子の集塊が始まるまでの時間(集塊化開始時間)を、各試料水毎に測定し、試料水毎に測定された集塊化開始時間と、対応する各凝集剤注入率とに基づいて、集塊化開始時間と凝集剤注入率との相関関数(フィッティングライン)を決定し、水処理設備に応じて予め設定する集塊化開始時間適正値と、フィッティングラインとに基づいて、水処理設備に対する浄水に適正な凝集剤注入率を決定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、急速ろ過方式の浄水場は、原水濁度の変動に応じて凝集剤の注入量をこまめに調整する必要がある。一般的には、運転技術者が必要に応じて採水をおこない、実験室のビーカーにおいて凝集剤の注入量を何種類か設定して模擬試験(ジャーテスト)を実施した上でプロセスに適用する注入率を決定している。そのため、小規模な浄水場でも24時間運転技術者を常駐させており、無人化の障害となっている。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて為された発明であり、凝集剤注入率(被処理水の水量に対する凝集剤注入量の比率)の決定を行う装置を遠隔的に操作又は監視する遠隔浄水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば小規模浄水場に対して、浄水用の凝集剤注入率を決定する凝集剤注入率決定装置と、通信ネットワークを介して凝集剤注入率決定装置に接続される遠隔操作端末とを備える遠隔浄水システムを提供する。遠隔操作端末によって、小規模浄水場に設置される凝集剤注入率決定装置の動作状況を把握できるようにすることにより、小規模浄水場の無人化を実現する。その際、遠隔操作端末は、凝集剤注入率決定装置に指示を与え、凝集剤注入率決定装置における動作状況をカメラによって撮像させ、凝集剤注入率決定装置から試験槽の動画像のデータを取得し、それぞれ異なる凝集剤の注入率におけるジャーテストの開始時刻を同期させた動画合成を施して表示する。遠隔操作端末は、合成画像に基づいて決定された凝集剤の注入率に従って凝集混和池への凝集剤の注入率を制御する。
【0012】
即ち、本発明による遠隔浄水システムは、浄水用の凝集剤注入率を決定する凝集剤注入率決定装置と、通信ネットワークを介して前記凝集剤注入率決定装置に接続される遠隔操作端末とを備える遠隔浄水システムであって、 前記凝集剤注入率決定装置は、1つの試験槽を用いて凝集剤の注入率がそれぞれ異なる複数のジャーテストを実行するジャーテスト実行手段と、各ジャーテスト実行時における前記試験槽の動画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された動画像のデータを、前記遠隔操作端末に送信するデータ送信手段とを備え、 前記遠隔操作端末は、 前記凝集剤注入率決定装置に対して ジャーテスト実行の指示を送出する指示手段と、 前記データ送信手段から前記試験槽の動画像のデータを取得し、それぞれ異なる凝集剤の注入率におけるジャーテストの開始時刻を同期させた動画合成を施して表示する合成表示手段と、 前記合成表示手段によって表示された合成画像に基づいて決定された凝集剤の注入率に従って凝集混和池への凝集剤の注入率を制御する制御手段と、 を備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、遠隔操作端末によって、小規模浄水場に設置される凝集剤注入率決定装置の動作状況を把握できるようになり、小規模浄水場の無人化を実現することが可能となる。
【0014】
また、本発明による遠隔浄水システムにおいて、前記凝集剤注入率決定装置は、前記撮像手段によって撮像された動画像のデータを記憶する記憶手段を備え、前記ジャーテスト実行手段は、前記複数のジャーテストを繰り返し実行する手段を有し、 前記撮像手段は、繰り返し実行される複数のジャーテスト実行時における前記試験槽の動画像を前記記憶手段に時系列的に記憶する手段を有し、前記データ送信手段は、前記指示手段からジャーテスト実行の指示を受信した場合、前記記憶手段に記憶されている直近の注入率が異なる複数の動画像のデータを前記遠隔操作端末に送信する手段を有することを特徴とする。
【0015】
これにより、遠隔操作端末のオペレータが合成画像の表示を指示したか否かに関係なく、凝集剤注入率決定装置は、常に(又は所定時間毎に)ジャーテストを行い、その画像を所定の記憶部に記憶しておくため、オペレータが合成画像の表示を指示した場合に、所定の記憶部に記憶されている凝集剤の注入率が異なる直近の4回のジャーテストの画像を用いて合成画像を作成、表示することができるのでリアルタイム性を損なうことなくジャーテストの結果を把握することができるようになる。
【0016】
また、本発明による遠隔浄水システムにおいて、前記ジャーテスト実行手段は、前記指示手段からジャーテスト実行の指示を受信した場合に前記複数のジャーテストを実行する手段を有することを特徴とする。
【0017】
これにより、凝集剤注入率決定装置は、遠隔操作端末の指示手段によって指示されたタイミングで、ジャーテストを開始し、撮像データを取得することができ、例えば、ジャーテストを行う条件を変更して行う場合にも適応できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定の浄水場に対して無人化を実現することができ、無人化浄水場における管理コストを低減させることができる。さらに、小規模浄水場での24時間常駐体制をなくし、昼間のみの巡回で運用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による一実施例の遠隔浄水システムを適用する典型例を示す図である。
【図2】本発明による一実施例の遠隔浄水システムの構成を示す概略図である。
【図3】本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する遠隔操作端末のブロック図である。
【図4】本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する凝集剤注入率決定装置及びその周辺設備のブロック図である。
【図5】本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する中央管理装置のブロック図である。
【図6】本発明による一実施例の遠隔浄水システムに係る集塊化開始時間の算出例を示す図である。
【図7】本発明による一実施例の遠隔浄水システムに係る集塊化開始時間の最適値に基づく凝集剤注入率の算出例を示す図である。
【図8】本発明による一実施例の遠隔浄水システムの動作フロー図である。
【図9】本発明による一実施例の遠隔浄水システムの別の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による一実施例の遠隔浄水システムについて説明する。
【0021】
〔システム構成〕
図1には、1つ以上の浄水場を有する複数の事業体(異なる地域の事業体A,B,C,・・・,X)の浄水処理の情報を、通信ネットワークを通じて一元的に管理する集中管理センタを示している。集中管理センタは、例えば事業体Xが管理するA浄水場(中核浄水場)の設備とネットワークを通じて通信可能であり、A浄水場(中核浄水場)の設備は、処理対象の河川から原水を取水し、浄水可能な設備である。
【0022】
また、本発明による一実施例の遠隔浄水システムでは、例えば処理対象の河川における上流、中流及び下流に設置される無人化した浄水場(A浄水場、B浄水場、C浄水場)における浄水処理の情報をA浄水場(中核浄水場)によって管理する。
【0023】
図2に、本発明による一実施例の遠隔浄水システムの構成の概略図を示す。中核浄水場では、オペレータUが遠隔操作端末11を操作して、無人化浄水場に設置された凝集剤注入率決定装置12の動作を、ネットワークを通じて遠隔的に操作又は監視可能であり、オペレータUは、凝集剤注入率決定装置12を遠隔的に操作して無人化浄水場のジャーテスト及び凝集剤の注入率の決定及び浄水用注入剤の注入指示を与えることができる。
【0024】
浄水場の無人化の利点を最大限に生かすためには、無人化浄水場の管理コスト(設備の故障率)をより少なくするのが好適であり、そのため、通常のジャーテストでは複数の試験槽を常設して実施するところ、本発明による一実施例の遠隔浄水システムでは、単一の試験槽でのジャーテストを可能にしている。つまり、オペレータUは、凝集剤注入率決定装置12を制御して、無人化浄水場における単一の試験槽を用いる凝集剤注入率決定装置12から、異なる凝集剤注入率で実行した試料水内の粒子の集塊化の様子を表す撮像データ(さらには、凝集剤注入率決定装置12によってジャーテストの実行で算出された凝集剤注入率のデータ)を取得し、あたかもオペレータUが当該無人化浄水場にてジャーテストを管理しているかのように、ジャーテストの様子を遠隔操作端末11の表示装置11aに映し出すことができる。
【0025】
以下、本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する遠隔操作端末11、凝集剤注入率決定装置12、及び集中管理装置13について、より詳細に説明する。
【0026】
図3は、本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する遠隔操作端末のブロック図である。遠隔操作端末11は、凝集剤注入率決定装置12を遠隔操作することが可能な装置であり、制御部111と、ネットワークを通じて外部装置と通信するためのインタフェースを構成する通信I/F112と、凝集剤注入率決定装置12から取得したデータを記録するデータ記録部113と、記憶部114と、オペレータUが操作するためのインタフェースを構成するユーザI/F115と、表示装置11aに対する各種データ等の表示を制御する表示制御部116とを備える。制御部111は、制御コマンド生成部1111と、データ記録制御部1112と、撮像データ合成処理部1113とを備え、凝集剤注入率決定装置12によってジャーテストごとに算出された凝集剤の適正注入率のデータを収集する場合には、凝集剤注入率決定装置12からデータを収集して解析するデータ解析部1114を備えることもできる。遠隔操作端末11は、コンピュータとして構成することができ、制御部111の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部114に格納しておき、当該コンピュータの中央演算処理装置(CPU)によってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。従って、本発明に係る制御部111の各機能を説明するが、遠隔操作端末11が備える他の機能を排除することを意図したものではないことに留意する。
【0027】
制御コマンド生成部1111は、ジャーテストを実行させるためのジャーテスト実行コマンド、ジャーテストの結果のみを取得要求するためのジャーテスト取得コマンド、及び、実際の浄水用の凝集剤注入率を設定させるための浄水用注入率設定コマンドを生成する機能を有する。
【0028】
データ記録制御部1112は、ジャーテストにおける所定回数(例えば、4回)分のカメラ(例えば、Webカメラ)の撮像データと必要に応じてジャーテストごとに算出された凝集剤の適正注入率のデータを受信してデータ記録部113に記録・保持する機能を有する。
【0029】
撮像データ合成処理部1113は、データ記録部113に記録・保持した所定回数(例えば、4回)分のカメラ(例えば、Webカメラ)の撮像データを読み出して、遠隔操作端末11によってマーキングされた開始時刻を基に、表示装置11aに対して並べて合成表示する機能を有する。
【0030】
図4は、本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する凝集剤注入率決定装置及びその周辺設備のブロック図である。周辺設備は、河川から水を貯留する着水井10と、処理原水へ凝集剤を注入し、混和させる混和池20と、緩速攪拌により処理原水中にフロックを形成させるフロック形成池30と、懸濁物質やフロックを沈殿させる沈殿池40と、処理水をろ過するためのろ過池50とから構成されている。そして、凝集沈殿処理においては、凝集剤注入後の混和池20における急速攪拌からフロック形成池30における緩速攪拌の工程において、微粒子が集塊化し、フロックとして成長していく。この状況においては、混和池20以降の処理が良好に行われ、結果として沈降性の高いフロックが形成され、沈殿水濁度を低減することができる。
【0031】
そこで、浄水場内、あるいは取水施設において、ジャーテストを実行して凝集剤の適正注入率を決定する凝集剤注入率決定装置12が設置される。まず、凝集剤注入率決定装置12は、採排水用弁19−2を制御して、着水井10の取水口から混和池20へ供給される原水の一部を試験用貯水槽14に貯め、さらに、採排水用弁19−1を制御して、ジャーテストを行う試験水を試験槽16内に採取し、センサ18によって原水の水質を測定する。原水の水質としては、濁度や微粒子数、pH、アルカリ度、水温などのパラメータで規定することができる。濁度の測定は、例えば、透過光方式や散乱光方式などの光源から光ビームを試験槽に照射し、その透過光又は反射光を受光して光電変換するセンサを用いて測定することができる。微粒子数の測定は、光遮断方式の微粒子カウンタ等のセンサを使用して測定することができる。
【0032】
凝集剤注入率決定装置12は、原水の一部を採取した試験槽16内の原水に対して所定の注入率で凝集剤が注入された場合の集塊化開始時間を基に、凝集剤の適正注入率を測定する装置である。集塊化開始時間は、試験槽内に注入された凝集剤を攪拌して分散させ、特許文献1に記載されているように、微粒子カウント法又は変動解析法により解析する。
【0033】
微粒子カウント法の場合には、センサ18によって粒子数及び粒径を測定し、一定の粒径の粒子数が増加する時間か、又は減少する時間のどちらか又は両方の平均値を集塊化開始時間として決定する。
【0034】
変動解析法の場合には、センサ18によって少なくとも一箇所から光ビームを照射し、前方散乱光と、側方散乱光と、後方散乱光と、透過光のうち、少なくとも1つの光を受光し、光電変換後の電気信号として得られる平均値及び標準偏差から、試験槽の試料水に含まれる粒子の平均粒径及び粒子数を求め、平均粒径の増大が見られ始める時間か、又は粒子数が増加し始める時間のどちらか又は両方の平均値を集塊化開始時間として決定する(図6参照)。
【0035】
複数の異なる凝集剤注入率で凝集剤を注入して得られる各集塊化開始時間を測定してプロットすることで、相関関数(フィッティングライン)を算出することができる。図7に示すように、例えば4回分(図7に示すA,B,C,D)の集塊化開始時間を基に、相関関数(フィッティングライン)を算出することができる。この相関関数(フィッティングライン)は、折線近似式、あるいは最小二乗法による多項式への近似によって得られる。
【0036】
この相関関数(フィッティングライン)上の集塊化開始時間の適正値を決定することにより、実際の浄水用注入率の適正値を決定することができる。水処理設備に応じてあらかじめ適正値として設定される集塊化開始時間の適正値は、混和池の滞留時間に基づいて決定される。
【0037】
凝集剤注入率決定装置12の構成について図4を参照して、より詳細に説明する。
【0038】
凝集剤注入率決定装置12は、遠隔操作端末11によって遠隔操作される装置であり、制御部121と、ネットワークを通じて外部装置と通信するためのインタフェースを構成する通信I/F122と、記憶部123と、攪拌用モータ15を駆動して攪拌器17を機能させるためのモータドライバ124と、試験槽16に凝集剤を注入するための凝集剤注入器125と、試験槽16を動画撮像するWebカメラ16を制御するためのWebカメラドライバ126と、濁度・粒径を測定するセンサ18を駆動し、センサ出力を受信するセンサドライバ127と、試験槽16の採排水用弁19−1,19−2,19−3を制御するための試験槽採排水制御器128とを備える。
【0039】
また、周辺機器として、混和池20に凝集剤を注入するための凝集剤注入器125aが設けられ、モータドライバ124、凝集剤注入器125、Webカメラドライバ126、センサドライバ127、及び試験槽採排水制御器128は、凝集剤注入率決定装置12の外部装置として接続される周辺機器として構成することもできる。制御部121は、制御コマンド解析部1211と、送信データ生成部1212と、試験槽採排水設定部1213と、凝集剤注入率算出部1214と、カメラ制御部1215と、ジャーテスト実行部1216と、撮像データ蓄積管理部1217とを備える。また、凝集剤注入率決定装置12は、撮像データ蓄積管理部1217によって管理する撮像データを蓄積するための撮像データ記憶部1218を備える。凝集剤注入率決定装置12は、コンピュータとして構成することができ、制御部121の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部123に格納しておき、当該コンピュータの中央演算処理装置(CPU)によってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。従って、本発明に係る制御部121の各機能を説明するが、凝集剤注入率決定装置12が備える他の機能を排除することを意図したものではないことに留意する。
【0040】
制御コマンド解析部1211は、ジャーテストを実行させるためのジャーテスト実行コマンド、ジャーテストの結果のみを取得要求するためのジャーテスト取得コマンド、及び、実際の浄水用の凝集剤注入率を設定させるための浄水用注入率設定コマンドを受け付けて各コマンドを実行させるべく解析する機能を有する。
【0041】
送信データ生成部1212は、各コマンドに対するレスポンスのメッセージを生成する機能、及びジャーテストの実行に伴って得られるWebカメラの撮像データと必要に応じてジャーテストによって算出した凝集剤の注入率のデータを遠隔操作端末11への送信用に生成する機能を有する。また、送信データ生成部1212は、地域別浄水データ(ジャーテストを行った浄水場を識別する地域識別情報、実施年月日、水質のパラメータ、ジャーテストの集塊化開始時間や算出した凝集剤注入率の適正値のデータ、実際の浄水用の凝集剤注入率のデータ等)を遠隔操作端末11への送信用に生成する機能を有するように構成することもできる。
【0042】
試験槽採排水設定部1213は、試験槽採排水制御器128を制御して、ジャーテストの実行に伴って試験槽16の採水又は排水を実行するよう設定する機能を有する。
【0043】
凝集剤注入率算出部1214は、ジャーテストの実行に伴って、センサドライバ127に指示を与え、センサ18からのセンサ出力の記録の開始及び停止をセンサドライバ127に指示する機能を有し、さらに、記憶部123の所定領域に格納されるセンサ出力の記録データから集塊化開始時間を算出して凝集剤注入率の最適値を算出する機能を有し、さらに、算出した凝集剤注入率の最適値を、ジャーテストの実行に伴って撮像したWebカメラ19の撮像データと関連付けて撮像データ記憶部1218に記憶させるために、撮像データ蓄積管理部1217へと送出する機能を有する。
【0044】
尚、凝集剤注入率算出部1214は、取水口から混和池20へ供給される原水の一部を採取した試験槽16内の原水に対して所定の注入率で凝集剤が注入された場合の集塊化開始時間を測定し、特許文献1に記載されているように、微粒子カウント法又は変動解析法により解析し、水質に応じて試料水毎に測定された集塊化開始時間と、対応する各凝集剤注入率とに基づいて、集塊化開始時間と凝集剤注入率との相関関数(フィッティングライン)を決定し、水処理設備に応じて予め設定する集塊化開始時間適正値と、フィッティングラインとに基づいて、水処理設備に対する浄水に適正な凝集剤注入率を算出する。
【0045】
カメラ制御部1215は、ジャーテストの実行に伴ってWebカメラ19の撮像データを取得し、撮像データ記憶部1218に記憶させるために、撮像データ蓄積管理部1217へと送出する機能を有する。
【0046】
ジャーテスト実行部1216は、ジャーテストを実行させるためのジャーテスト実行コマンドに応じて、カメラ制御部1215及び撮像データ蓄積管理部1217に指示を与え、ジャーテストにおける所定回数(例えば、4回)分のWebカメラの撮像データと必要に応じてジャーテストごとに算出された凝集剤の適正注入率のデータを取得するよう制御する機能を有する。ジャーテストの実行は、試験槽16へのジャーテストの凝集剤の注入率を設定し、指定の注入率で凝集剤を注入する。
【0047】
撮像データ蓄積管理部1217は、ジャーテストの実行に伴って撮像したWebカメラ19の撮像データを撮像データ記憶部1218に記憶して管理する。尚、撮像データ蓄積管理部1217は、繰り返し実行される複数のジャーテスト実行時における試験槽16の動画像を撮像データ記憶部1218に時系列的に記憶する機能と、ジャーテストの結果のみを取得要求するためのジャーテスト取得コマンドに応じて、撮像データ記憶部1218に時系列的に記憶されている複数の動画像のデータのうち、ジャーテスト取得コマンドの受信時に直近の注入率が異なる複数の動画像のデータを取り出し、ジャーテスト取得コマンドに対するレスポンスのメッセージを生成させるために送信データ生成部1212に送出する機能を有する。
【0048】
図5は、本発明による一実施例の遠隔浄水システムを構成する中央管理装置のブロック図である。中央管理装置13は、遠隔操作端末11から水質のパラメータや凝集剤注入率のデータ等(以下、総括して「浄水データ」と称する)を収集してデータベースを構築して各地域における情報を管理するための装置であり、制御部131と、ネットワークを通じて外部装置と通信するためのインタフェースを構成する通信I/F132と、遠隔操作端末11から取得したデータを記録する地域別浄水データベース133と、記憶部134と、管理者が操作するためのインタフェースを構成するユーザI/F136と、表示装置13aに対する各種データ等の表示を制御する表示制御部135とを備える。制御部131は、浄水データ収集部1311と、水質相関演算部1312と、ジャーテスト時期予測部1313とを備える。中央管理装置13は、コンピュータとして構成することができ、制御部131の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部134に格納しておき、当該コンピュータの中央演算処理装置(CPU)によってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。従って、本発明に係る制御部131の各機能を説明するが、中央管理装置13が備える他の機能を排除することを意図したものではないことに留意する。
【0049】
浄水データ収集部1311は、1つ以上の遠隔操作端末11からの地域別浄水データを収集して、地域別浄水データベース133に記録・保持する機能を有する。
【0050】
水質相関演算部1312は、地域別浄水データベース133に累積的に記録・保持したデータから、ユーザI/F136を介して入力される水質のパラメータを基準に類似する水質パラメータを有する他の地域の浄水場を推定するために、相関演算を実行し、相関値の高い水質の地域の遠隔操作端末11にジャーテストを行う必要性を示す情報を提示する機能を有する。
【0051】
ジャーテスト時期予測部1313は、地域別浄水データベース133に累積的に記録・保持したデータから、統計学に基づく確率演算を行って次回のジャーテストの実行時期を予測し、対応する遠隔操作端末11に通知する機能を有する。
【0052】
次に、本発明による一実施例の遠隔浄水システムの動作について説明する。
【0053】
〔システム動作〕
図8は、本発明による一実施例の遠隔浄水システムの動作フローを示す図である。遠隔操作端末11は、凝集剤注入率決定装置12を遠隔操作して、ジャーテストを所定回数(例えば、4回)行った後、浄水用凝集剤の注入率を決定させ、ジャーテストに係る動画像を取得するために、ジャーテストの開始を決定する(ステップS1)。
【0054】
ステップS2にて、遠隔操作端末11は、制御コマンド生成部1111によって生成したジャーテストを実行させるためのジャーテスト実行コマンドを凝集剤注入率決定装置12に送信する。
【0055】
凝集剤注入率決定装置12は、制御コマンド解析部1211によって、ジャーテスト実行コマンドを受信して解析し(ステップS3)、試験槽採排水設定部1213によって、まず試験槽16の採水を行う(ステップS4)。
【0056】
ステップS5にて、凝集剤注入率決定装置12は、試験槽16が所定量まで試験対象の原水で満たされた後、ジャーテスト実行部1216によってモータドライバ124に指示を与え、攪拌用のモータ15を始動させる。尚、流量スイッチあるいは出力機能つき流量計(図示せず)を設けておけば、試験槽16が満水になったことを自動的に検知することができる。また、試験槽16自体の洗浄のために撹拌器17を動作させておくのが好適である。
【0057】
ステップS6にて、凝集剤注入率決定装置12は、ジャーテスト実行部1216によって、まず、所定の試験用注入率を設定する(ステップS7)。
【0058】
ステップS8にて、凝集剤注入率決定装置12は、さらに、凝集剤注入率算出部1214によって、センサドライバ127に指示を与え、センサ18からのセンサ出力の記録を開始する。
【0059】
ステップS9にて、凝集剤注入率決定装置12は、Webカメラ19の撮像及びセンサ18からのセンサ出力の記録の準備ができた段階で、ジャーテスト実行部1216によって、カメラ制御部1215に指示を与えてWebカメラの撮像を行うとともに、凝集剤注入器125に対して指示を与えて設定されている注入率で凝集剤を注入させ、所定時間後(例えば、15分後)にセンサ出力を解析して集塊化開始時間を算出する。凝集剤注入率決定装置12は、繰返し試験槽採排水設定部1213に指示を与えることによって試験槽16の排水及び採水を実行させ、凝集剤を凝集剤注入器125に対して指示を与えてその都度設定されている異なる注入率で凝集剤を注入させることで、図7に関して説明した手順で、凝集剤注入率の最適値を算出する(ステップS10)。算出した凝集剤注入率の最適値は、今回のジャーテストのデータに関連付けて撮像データ蓄積管理部1217に記憶・保持することができる。
【0060】
ステップS11にて、凝集剤注入率決定装置12は、送信データ生成部1212によって、ジャーテスト実行コマンドに対するレスポンスのメッセージを生成し、ジャーテストの実行に伴って得られるWebカメラ19の撮像データと必要に応じてジャーテストによって算出した凝集剤の注入率のデータを遠隔操作端末11への送信用に生成し、遠隔操作端末11に返す。
【0061】
ステップS12にて、遠隔操作端末11は、データ記録制御部1112によって、Webカメラの撮像データと必要に応じてジャーテストによって算出した凝集剤の注入率のデータを受信してデータ記録部113に記録・保持する。一方、凝集剤注入率決定装置12は、Webカメラ19の撮像データと必要に応じてジャーテストによって算出した凝集剤の注入率のデータの送信後に、自動的に試験槽16の排水及び攪拌用のモータ15を停止させる(ステップS13,S14)。
【0062】
遠隔操作端末11は、所定回数(例えば、4回)分のWebカメラ19の撮像データを受信してデータ記録部113に記録・保持することができる。
【0063】
ステップS15にて、遠隔操作端末11は、撮像データ合成処理部1113によって、所定回数(例えば、4回)分のWebカメラの撮像データをマーキングした開始時刻を揃えて表示装置11aに対して並べて合成表示する。これにより、オペレータUは、あたかも4つの試験槽で当該浄水場にてジャーテストを行ったかのように、異なる注入率の凝集剤による集塊化の様子を確認することができ、従来からのジャーテストによるものと遜色の無い態様で遠隔的にジャーテストを監視することができるようになる。
【0064】
遠隔操作端末11は、データ解析部1114によって、凝集剤注入率決定装置12からジャーテストごとの撮像データ及び凝集剤の注入率の最適値を収集して解析することができる。オペレータUは、ジャーテストごとの撮像データを参照して、対応する凝集剤の注入率の最適値を考慮し、実際の混和池20への凝集剤の注入率を決定することもできる(ステップS16)。
【0065】
この場合、遠隔操作端末11は、実際の浄水用の凝集剤注入率を設定させるための浄水用注入率設定コマンドを凝集剤注入率決定装置12に送信する(ステップS18)。凝集剤注入率決定装置12は、制御コマンド解析部1211によって浄水用注入率設定コマンドを受信して解析し、指定の注入率で凝集剤を注入するよう凝集剤注入器125aに指示して注入させ、送信データ生成部1212によって浄水用注入率設定コマンドに対するレスポンスとして注入完了の応答メッセージを生成して遠隔操作端末11に返すように構成することができる(ステップS18)。
【0066】
また、遠隔操作端末11は、注入完了の応答メッセージを受信後に、自動的に又はオペレータUの操作により、地域別浄水データ(ジャーテストを行った浄水場を識別する地域識別情報、実施年月日、水質のパラメータ、ジャーテストの凝集剤注入率のデータ、実際の浄水用の凝集剤注入率のデータ等)を生成して集中管理装置13に送信する。
【0067】
ステップS19にて、集中管理装置13は、浄水データ収集部1311によって、遠隔操作端末11からの地域別浄水データを収集して地域別浄水データベース133に記録・保持する。
【0068】
ステップS20にて、集中管理装置13は、水質相関演算部1313及びジャーテスト時期予測部1314によって、収集した地域別浄水データから、時期的・地理的予測演算を実行して、次のジャーテストの時期や他の地域におけるジャーテストの必要性等の予測演算を実行することが可能である。例えば、上流及び下流のジャーテストの結果から、中流の注入率を高い確度で予測決定することが可能である。
【0069】
このように、本発明による一実施例の遠隔浄水システムによれば、遠隔操作端末11による遠隔操作を実現することにより特定の浄水場に対して無人化を実現することができるようになる。さらに、本発明による一実施例の遠隔浄水システムによれば、遠隔操作端末11によるジャーテストに係る単一の試験槽16の撮像データを合成して監視することにより無人化浄水場における管理コストを低減させることができるようになる。さらに、本発明による一実施例の遠隔浄水システムによれば、遠隔操作端末11による収集したデータを集中管理装置13によって一元的に管理するため、あらゆる地域における浄水検査の予測精度、時期的な予測精度、並びにデータの信頼性をも高めることができるようになる。
【0070】
次に、本発明による一実施例の遠隔浄水システムの動作の別の例について説明する。
【0071】
上述した図8に示す例では、1つの浄水槽16を4回繰返し測定するジャーテストを行う場合、1回の測定に15分要するとすると、全て(4回)の測定が完了するまでに1時間(15分×4回)要することになる。このため、オペレータUが合成画像の表示のためにジャーテストの実行コマンドを送出してから、ジャーテストに係る動画像の取得及び合成画像の生成・表示までに、多くの時間が必要となり、リアルタイム性が低下するおそれがある。
【0072】
そこで、凝集剤注入率決定装置12について、オペレータUが合成画像の表示を指示したか否かに関係なく、常に(又は所定時間毎に)ジャーテストを行うように構成しておき、撮像データ蓄積管理部1217の制御によって、繰り返し実行される複数のジャーテスト実行時における試験槽16の動画像を撮像データ記憶部1218に時系列的に蓄積するようにする。
【0073】
遠隔操作端末11は、オペレータUが合成画像の表示のために、凝集剤注入率決定装置12に対して撮像データの取得を指示した場合には、凝集剤注入率決定装置12は、撮像データ記憶部1218に蓄積された凝集剤の注入率が異なる直近の4回のジャーテストの動画像を撮像データ記憶部1218から読み出し、遠隔操作端末11に返信する。この場合、凝集剤注入率決定装置12は、4回のジャーテストの動画像のデータとともに、当該ジャーテストに係る算出した注入率の最適値のデータを遠隔操作端末11に返信することもできる。具体的には、時系列の各測定に係る動画像ファイルをD,D、D,・・・,DN−4,DN−3,DN−2,DN−1,Dとして撮像データ記憶部1218に蓄積しておき、Dのタイミングで、遠隔操作端末11からの指示を受け付けた場合には、DN−4,DN−3,DN−2,DN−1の動画像ファイルを遠隔操作端末11に返信する。これにより、遠隔操作端末11は、DN−4,DN−3,DN−2,DN−1の動画像ファイルを用いて合成画像を生成することができる。ジャーテストの結果には、動画像のほかに、集塊化開始時間,凝集剤の注入率,試験を行った時間や原水に関する情報等を含めることができる。
【0074】
これにより、オペレータUは、凝集剤注入率決定装置12に対して動画像の取得指示をしてから直ちに合成画像を生成して確認することができるようになる。
【0075】
図9は、この場合の遠隔浄水システムの動作フローを示す図である。凝集剤注入率決定装置12は、オペレータUが合成画像の表示を指示したか否かに関係なく、常に(又は所定時間毎に)ジャーテストを行うように構成される(ステップS101〜S111)。尚、ステップS101〜S111の動作は、図8に示すステップS3〜S11の動作に対応する。
【0076】
遠隔操作端末11は、オペレータUが合成画像の表示のために、凝集剤注入率決定装置12に対して撮像データの取得を指示したジャーテストの結果のみを取得要求するためのジャーテスト取得コマンドを送信する(ステップS112)。
【0077】
凝集剤注入率決定装置12は、制御コマンド解析部1211によって、ジャーテスト取得コマンドを受信して解析し(ステップS113)、撮像データ記憶部1218に蓄積された凝集剤の注入率が異なる直近の所定回数(例えば、4回)のジャーテストの動画像を撮像データ記憶部1218から読み出し、遠隔操作端末11に返信する(ステップS114)。
【0078】
遠隔操作端末11は、データ記録制御部1112によって、Webカメラの撮像データと必要に応じてジャーテストによって算出した凝集剤の注入率のデータを受信してデータ記録部113に記録・保持し(ステップS114)、撮像データ合成処理部1113によって、所定回数(例えば、4回)分のWebカメラの撮像データをマーキングした開始時刻を揃えて表示装置11aに対して並べて合成表示する(ステップS115)。
【0079】
これにより、オペレータUは、リアルタイム性を損なうことなく、あたかも4つの試験槽で当該浄水場にてジャーテストを行ったかのように、異なる注入率の凝集剤による集塊化の様子を確認することができ、従来からのジャーテストによるものと遜色の無い態様で遠隔的にジャーテストを監視することができるようになる。
【0080】
遠隔操作端末11は、データ解析部1114によって、凝集剤注入率決定装置12からジャーテストごとの撮像データ及び凝集剤の注入率の最適値を収集して解析することができる。オペレータUは、ジャーテストごとの撮像データを参照して、対応する凝集剤の注入率の最適値を考慮し、実際の混和池20への凝集剤の注入率を決定することもでき(ステップS116)、実際の浄水用の凝集剤注入率を設定させるための浄水用注入率設定コマンドを凝集剤注入率決定装置12に送信し(ステップS117)、凝集剤注入率決定装置12は、制御コマンド解析部1211によって浄水用注入率設定コマンドを受信して解析し、指定の注入率で凝集剤を注入するよう凝集剤注入器125aに指示して注入させ、送信データ生成部1212によって浄水用注入率設定コマンドに対するレスポンスとして注入完了の応答メッセージを生成して遠隔操作端末11に返すように構成することができる(ステップS118)。
【0081】
このように、本発明による一実施例の遠隔浄水システムによれば、遠隔操作端末11による遠隔操作を実現することにより特定の浄水場に対して無人化を実現することができるようになる。さらに、本発明による一実施例の遠隔浄水システムによれば、リアルタイム性を損なうことなく、遠隔操作端末11によるジャーテストに係る単一の試験槽16の撮像データを合成して監視することにより無人化浄水場における管理コストを低減させることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、特定の浄水場に対して無人化を実現することができ、無人化浄水場における管理コストを低減させることができ、あらゆる地域における浄水検査の予測精度、時期的な予測精度、並びにデータの信頼性をも高めることができるので、浄水設備に関する様々な用途に有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 着水井
11 遠隔操作端末
11a 表示装置
12 凝集剤注入率決定装置
13 中央管理装置
13a 表示装置
14 試験用貯水槽
15 攪拌用モータ
16 試験槽
17 攪拌器
18 センサ
19−1,19−2,19−3 採排水用弁
20 混和池
30 フロック形成池
40 沈殿池
50 ろ過池
111 制御部
112 通信I/F
113 データ記録部
114 記憶部
115 ユーザI/F
116 表示制御部
121 制御部
122 通信I/F
123 記憶部
124 モータドライバ
125 凝集剤注入器
126 Webカメラドライバ
127 センサドライバ
128 試験槽採排水制御器
125a 凝集剤注入器
131 制御部
132 通信I/F
133 地域別浄水データベース
134 記憶部
135 表示制御部
136 ユーザI/F
1111 制御コマンド生成部
1112 データ記録制御部
1113 撮像データ合成処理部
1114 データ解析部
1211 制御コマンド解析部
1212 送信データ生成部
1213 試験槽採排水設定部
1214 凝集剤注入率算出部
1215 カメラ制御部
1216 ジャーテスト実行部
1217 撮像データ蓄積管理部
1218 撮像データ記憶部
1311 浄水データ収集部
1312 水質相関演算部
1313 ジャーテスト時期予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水用の凝集剤注入率を決定する凝集剤注入率決定装置と、通信ネットワークを介して前記凝集剤注入率決定装置に接続される遠隔操作端末とを備える遠隔浄水システムであって、
前記凝集剤注入率決定装置は、
1つの試験槽を用いて凝集剤の注入率がそれぞれ異なる複数のジャーテストを実行するジャーテスト実行手段と、
各ジャーテスト実行時における前記試験槽の動画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された動画像のデータを、前記遠隔操作端末に送信するデータ送信手段とを備え、
前記遠隔操作端末は、
前記凝集剤注入率決定装置に対して ジャーテスト実行の指示を送出する指示手段と、
前記データ送信手段から前記試験槽の動画像のデータを取得し、それぞれ異なる凝集剤の注入率におけるジャーテストの開始時刻を同期させた動画合成を施して表示する合成表示手段と、
前記合成表示手段によって表示された合成画像に基づいて決定した注入率に従って凝集混和池への凝集剤の注入率を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする、遠隔浄水システム。
【請求項2】
前記凝集剤注入率決定装置は、前記撮像手段によって撮像された動画像のデータを記憶する記憶手段を備え、
前記ジャーテスト実行手段は、前記複数のジャーテストを繰り返し実行する手段を有し、
前記撮像手段は、繰り返し実行される複数のジャーテスト実行時における前記試験槽の動画像を前記記憶手段に時系列的に記憶する手段を有し、
前記データ送信手段は、前記指示手段からジャーテスト実行の指示を受信した場合、前記記憶手段に記憶されている直近の注入率が異なる複数の動画像のデータを前記遠隔操作端末に送信する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の遠隔浄水システム。
【請求項3】
前記ジャーテスト実行手段は、前記指示手段からジャーテスト実行の指示を受信した場合に前記複数のジャーテストを実行する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の遠隔浄水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−35241(P2012−35241A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180495(P2010−180495)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】