説明

遠隔画像システム及びサーバー

【課題】医用画像の表示を円滑化する。
【解決手段】遠隔画像システムは、医用画像を取得する病院端末と、病院端末からネットワークを介して送信された医用画像を保存するサーバーと、サーバーからネットワークを介して医用画像を取得し、表示する表示端末と、を備えている。病院端末は、DICOMフォーマットの医用画像を取得し、病院端末又はサーバーは、DICOMフォーマットの医用画像を画像処理して(ステップB)、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、サーバーは、作成された参照画像を表示端末に送信し(ステップD5)、表示端末は、送信された参照画像を表示する(ステップD6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔画像システム及びサーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療施設ではPACS(Picture Archiving and Communication)が利用されている(例えば、特許文献1参照)。PACSによれば、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)等により撮影された医用画像が、病院内のサーバーに蓄積される。サーバーから医師が使用する表示端末に、医用画像をダウンロードすることにより、医用画像を医師の閲覧に供することができ、効率的な診察が可能となる。
【0003】
病院内だけでなく、病院外の遠隔地にあるサーバーに医用画像を転送する遠隔システムも開発されている(例えば、特許文献2参照)。このような遠隔システムによれば、読影の専門医が常駐する読影センターのサーバーに、医用画像を転送することができ、高度な読影診断が可能となる。
【0004】
一般的に、医用画像のフォーマットや医用画像の通信規格として、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)が利用されている。
DICOMによりフォーマット化された医用画像は、JPEG等のような汎用画像フォーマットに比べてデータ量が大きい。そのため、サーバーから表示端末へDICOMフォーマットの医用画像をダウンロードしようとすると、表示端末が使用するネットワークや、表示端末自身のスペックによって、ダウンロードに長時間を要することがある。
【0005】
上記特許文献1によれば、サーバーがDICOMフォーマットの医用画像からビットマップの医用画像を抽出し、これを可逆圧縮して表示端末に送信することにより、表示端末へ送信するデータ量を削減し、通信時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−11651号公報
【特許文献2】特開2002−15062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、表示端末において圧縮画像の伸張処理を行う必要があり、表示端末が低スペックであれば、伸張処理に時間を要することになる。結局、医用画像が表示されるまでの医師の待ち時間が長くなってしまい、快適な操作性が得られない。
サーバーが圧縮せずに、抽出したビットマップの医用画像をそのまま表示端末に送信し、伸長処理を不要としてもよいが、医用画像はDICOMフォーマットでなくとも、もともとデータ量が大きい。そのため、ネットワークの負荷状況や表示端末のスペックによってダウンロードが長時間となる点は変わらない。
【0008】
近年では、表示端末として、タブレット型の携帯端末が用いられることも多い。通常の有線回線に比べ、3G(第3世代通信システム)やWi−fiのような通信速度が遅いネットワークが通信に用いられるため、医用画像の表示まで医師が待たされるという状況が生じやすかった。
【0009】
本発明の課題は、医用画像の表示を円滑化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、
医用画像を取得する病院端末と、前記病院端末からネットワークを介して送信された医用画像を保存するサーバーと、前記サーバーからネットワークを介して医用画像を取得し、表示する表示端末と、を備え、
前記病院端末は、DICOMフォーマットの医用画像を取得し、
前記病院端末又は前記サーバーは、DICOMフォーマットの前記医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、
前記サーバーは、作成された前記参照画像を表示端末に送信し、
前記表示端末は、送信された参照画像を表示する遠隔画像システム。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、
前記病院端末又は前記サーバーは、前記医用画像に対しアノテーションが作成された場合、当該医用画像及びアノテーションを画像処理し、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を作成する請求項1に記載の遠隔画像システムが提供される。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、
前記病院端末又は前記サーバーは、DICOMフォーマットの医用画像から参照画像が作成された後、当該医用画像に対しアノテーションが追加された場合、当該医用画像及びアノテーションを画像処理し、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を作成し、
前記サーバーは、先に作成された参照画像を、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像に更新し、表示端末に再送する請求項2に記載の遠隔画像システムが提供される。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、
前記画像処理は、DICOMフォーマットの医用画像からビットマップの医用画像を取得し、当該ビットマップの医用画像を前記表示端末の表示サイズに合わせて縮小処理した後、補間処理し、汎用画像フォーマットによりフォーマット化する処理である請求項1〜3の何れか一項に記載の遠隔画像システムが提供される。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、
前記サーバーは、前記病院端末により参照画像が作成されていない場合、前記参照画像を作成する請求項1〜4の何れか一項に記載の遠隔画像システムが提供される。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、
前記サーバーは、前記表示端末により医用画像が要求されたとき、要求された医用画像の参照画像が前記病院端末により作成されていなければ、前記参照画像を作成する請求項1〜4の何れか一項に記載の遠隔画像システムが提供される。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、
医用画像を取得し、ネットワークを介してサーバーに送信する病院端末と、前記病院端末から送信された医用画像を保存し、ネットワークを介して、当該医用画像を表示端末に送信するサーバーと、を備え、
前記病院端末は、DICOMフォーマットの医用画像を取得し、
前記病院端末又は前記サーバーは、DICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、
前記サーバーは、作成された前記参照画像を、ネットワークを介して表示端末に送信する遠隔画像システムが提供される。
【0017】
請求項8に記載の発明によれば、
病院端末からネットワークを介して送信されたDICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、作成された前記参照画像を、ネットワークを介して表示端末に送信するサーバーが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、参照画像のフォーマットが汎用画像フォーマットであるので、表示端末がDICOMに対応していなくても、Webブラウザーにより参照画像を容易に表示することができる。汎用画像フォーマットの参照画像は、DICOMフォーマットの医用画像に比べてデータ量が小さいため、表示端末が参照画像の取得に要する通信時間を短縮し、参照画像による医用画像の表示を円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る遠隔画像システムのシステム構成図である。
【図2】病院端末の機能ブロック図である。
【図3】サーバーの機能ブロック図である。
【図4】病院端末が実行する処理のフローチャートである。
【図5】参照画像の作成処理のフローチャートである。
【図6】DICOMフォーマットの医用画像から取得されるビットマップの医用画像を示す図である。
【図7】ビットマップの医用画像と縮小処理された医用画像の例を示す図である。
【図8】医用画像にアノテーションを重ねて縮小処理する例を示す図である。
【図9】サーバーが実行する処理のフローチャートである。
【図10】サーバーと表示端末が実行する処理のフローチャートである。
【図11】参照画像が表示されたWebページの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の遠隔画像システム、サーバーの実施の形態について説明する。
【0021】
〔遠隔画像システム〕
図1は、本実施の形態に係る遠隔画像システムPのシステム構成図である。
図1に示すように、遠隔画像システムPは、病院端末1、サーバー2、表示端末3を備えて構成されている。病院端末1、表示端末3は、ネットワークNを介してサーバー2と通信することができ、相互にデータの送受信が可能である。
なお、図1の遠隔画像システムPは例示であり、遠隔画像システムPを構成する病院端末1、サーバー2、表示端末3の設置台数、設置場所等は、特に限定されない。
【0022】
ネットワークNは、電話回線、ISDN回線、専用線、衛星通信回線網、移動体通信網、CATV回線、光通信回線、無線通信回線等によって構築されたインターネットである。
【0023】
病院端末1は、PACS4におけるサーバーであり、医療施設内に構築されたLANを介してモダリティ5に接続されている。病院端末1は、モダリティ5によって生成されたDICOMフォーマットの医用画像を保存し、バックアップのため、当該医用画像をサーバー2に送信する。医用画像の他にも、PACS4における表示端末3により作成された電子カルテ、図示しないHIS(Hospital Information System)等から取得した電子カルテ、検体検査結果等の医療データを、病院端末1が取得し、サーバー2に送信する。医療施設内のセキュリティを確保するため、病院端末1はサーバー2との通信時、ネットワークN上でVPNを構築する。
【0024】
サーバー2は、医療データのバックアップサービスを提供し、ネットワークNを介して病院端末1から送信された医療データを保存し、管理する。医療データは、医療に関するデータであり、例えば電子カルテ、モダリティ5により得られた医用画像、血液検査等の検体検査結果等が挙げられる。医療データに対するリスク分散のため、サーバー2は、医療施設外の遠隔地にあるサービスセンターに設置されている。
【0025】
サーバー2は、保存された医療データを、表示端末3に送信し、閲覧に供することができる。
また、サーバー2は、医師間の連携サービスを提供することができる。連携サービスとは、連携元のユーザー(医師)から連携先のユーザー(医師)へ、サーバー2に保存されている医療データを送信し、読影や診断、検査の依頼等を可能とするサービスである。
【0026】
表示端末3は、無線又は有線の通信によって、サーバー2から医療データを取得し、表示する。表示端末3としては、通信によって医療データを取得し、表示できる端末であれば、デスクトップ型のパーソナルコンピューターの他、ノート型のパーソナルコンピューター、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型のコンピューター装置、iphone(登録商標)やiPad(登録商標)に代表されるタブレット型の携帯端末等も用いることができる。
【0027】
表示端末3は、医療施設内のセキュアなLAN経由でサーバー2と通信することもできるし、医療施設外のネットワーク経由でサーバー2と通信することもできる。例えば、3G(第3世代移動通信システム)等の移動体通信網を利用して、又はWi−Fi(Wireless Fidelity)等を利用して医療施設内のLAN、医師の自宅のネットワークを経由して、ネットワークNに接続することもできる。表示端末3は、病院端末1と同様に、ネットワークN上でVPNを確立したうえでサーバー2と通信してもよい。
【0028】
〔病院端末〕
図2は、病院端末1の機能ブロック図である。
図2に示すように、病院端末1は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15を備えて構成されている。
【0029】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、記憶部15に記憶されているプログラムを読み出し、当該プログラムとの協働により各種処理を実行して、病院端末1の各部を制御する。
【0030】
制御部11は参照画像の作成処理を実行し、DICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、Webブラウザーにより表示可能な汎用画像フォーマットの参照画像を作成する。画像処理の詳細については後述する。
【0031】
操作部12は、キーボード、マウス、タッチパネル等を備え、これらの操作に応じた操作信号を制御部21に出力する。
表示部13は、ディスプレイ、又はタッチパネルと一体に構成されたディスプレイを備え、制御部11の表示制御に従って、操作画面や医療データの表示画面等を表示する。
【0032】
通信部14は、通信用のインターフェイスを備え、ネットワークN上のサーバー2と通信する。通信部14は、例えばIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)等を用いて、VPNを構築することができる。
【0033】
記憶部15は、制御部11が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータを記憶している。記憶部15としては、ハードディスクや不揮発性メモリー等を用いることができる。
【0034】
記憶部15は、医療データを記憶している。医療データには、DICOMフォーマットの医用画像、電子カルテ、検体検査結果が含まれる。医用画像に対し参照画像、アノテーションが作成された場合、記憶部15は参照画像、アノテーション情報を医用画像に対応付けて記憶している。アノテーションとは、医用画像上に付加された矢印や丸等の図形、文字であり、アノテーション情報はアノテーションの図形、文字の種類、それらの配置位置を示す情報である。
記憶部15は、保存された医療データを管理するためのデータベースを備えている。例えば、医用画像の管理に用いられる画像管理データベースは、DICOMフォーマットの医用画像のファイル名、アノテーション情報、参照画像のファイル名等がデータベース化されている。
【0035】
〔サーバー〕
図3は、サーバー2の機能ブロック図である。
図3に示すように、サーバー2は、制御部21、記憶部22、通信部23、記憶装置S1、S2を備えている。
【0036】
制御部21は、CPU、RAM等を備えて構成され、記憶部22からプログラムを読み出して実行し、サーバー2の各部を制御する。
例えば、制御部21は、Webサーバーのプログラムを読み出して実行し、Webページを作成して表示端末3に送信する。
【0037】
制御部21は、バックアップサービス時、病院端末1からバックアップ用に送信された医療データを記憶装置S1に1次保存する。記憶装置S1における保存期間が一定期間経過すると、制御部21は記憶装置S1から記憶装置S2へと医療データを移動し、記憶装置S2に医療データを蓄積していく。
【0038】
制御部21は、参照画像の作成処理を実行し、DICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、Webブラウザーにより表示可能な汎用画像フォーマットの参照画像を作成することができる。画像処理の詳細は後述する。制御部21は、作成された参照画像を、医用画像に対応付けて記憶装置S1又は記憶装置S2に保存する。
【0039】
制御部21は、医療データの提供サービス時、ログイン時に表示端末3から送信されるユーザーID、パスワード等のユーザー情報を、記憶部22に記憶されているユーザーデータベースのユーザー情報と照合し、一致すればログインを許可する。ログインが許可された表示端末3から医療データの閲覧が要求されると、ユーザーデータベースによってユーザーが属する医療施設を特定し、記憶装置S2の特定された医療施設の領域から医療データを読み出し、通信部23により表示端末3に送信する。
【0040】
制御部21は、連携サービス時、連携元のユーザーから連携の依頼情報が送信されると、制御部21は、連携依頼の電子メールを作成し、記憶部22に記憶されている連携データベースにより連携先のユーザーを特定し、当該ユーザーの電子メールアドレスをユーザーデータベースから取得する。制御部21は、取得した電子メールアドレス宛に、通信部23により電子メールを送信させる。例えば、依頼内容が医用画像の読影であれば、制御部21は連携元からのコメント、患者情報等が記載された電子メールを作成し、読影対象の医用画像を添付して連携先の表示端末3に送信する。
連携依頼に対し、連携先の表示端末3から読影レポートや電子カルテ等が送信されると、制御部21はこれら医療データを記憶装置S1に保存する。制御部21は、連携先からのコメント等が記載された電子メールを作成し、読影レポート等を添付して、連携元のユーザーの電子メールアドレス宛に、通信部23により電子メールを送信させる。
【0041】
記憶部22は、制御部21が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を記憶している。記憶部22としては、ハードディスクや不揮発性メモリーを用いることができる。
【0042】
記憶部22は、ユーザーデータベース、連携データベース等を記憶している。
ユーザーデータベースは、医療施設毎に、サーバー2が提供するサービスを利用可能なユーザー(医師)のユーザー情報からなる。サービスが課金制であれば、課金状況をユーザーデータベースにより管理してもよい。ユーザー情報としては、各ユーザーに付与されたユーザーID、ログインパスワード、ユーザーが所属する医療施設に付与された施設ID、施設名、ユーザーが所属する診療科、ユーザー名、ユーザーの住所、電話番号、電子メールアドレス等が挙げられる。
【0043】
連携データベースは、連携サービスにおいて連携するユーザーのユーザー情報からなる。例えば、連携元のユーザーのユーザーID、その連携先として登録されたユーザーが所属する医療施設の施設ID、施設名、ユーザー名等が対応付けられている。
【0044】
通信部23は、通信用のインターフェイスを備え、ネットワークN上の病院端末1、表示端末3と通信する。通信部23は、例えばIPsec等を用いて、VPNを構築することができる。
【0045】
記憶装置S1、S2は、大容量のメモリーであれば、ハードディスクや不揮発性メモリーを用いることができる。
記憶装置S1、S2は、病院端末1から送信されたDICOMフォーマットの医用画像、電子カルテ、検体検査結果等の医療データを記憶する。記憶装置S1には、病院端末1から送信された医療データが一定期間保存され、記憶装置S2には、記憶装置S1において一定期間保存された後、移動された医療データが保存される。
【0046】
記憶装置S1、S2には、医療施設毎に専用の記憶領域が設けられ、各医療施設の病院端末1から送信された医療データは、医療施設に応じた記憶領域に保存される。医用画像について作成された参照画像、アノテーション情報は、医用画像に対応付けて保存される。
【0047】
記憶装置S1、S2は、それぞれ保存されている医療データを管理するためのデータベースを備えている。特に、医用画像の管理に用いられる画像管理データベースは、DICOMフォーマットの医用画像のファイル名、アノテーション情報、参照画像のファイル名等がデータベース化されている。
【0048】
〔表示端末〕
表示端末3は、病院端末1と基本的な構成が同じであるので、その機能ブロック図の図示を省略する。表示端末3は、制御部、操作部、表示部、通信部、記憶部等を備えて構成されている。
表示端末3にはWebブラウザーのプログラムがインストールされ、制御部がこのプログラムを記憶部から読み出して実行し、参照画像を含むWebページを表示部に表示させる。
【0049】
次に、上記遠隔画像システムPにおいて、病院端末1によって取得された医療データの中でも医用画像が、サーバー2に保存され、表示端末3において閲覧できるまでの処理の流れを説明する。
【0050】
〔病院端末の処理〕
図4は、医用画像をサーバー2に保存する際、病院端末1が実行する処理のフローチャートである。
図4に示すように、病院端末1は、モダリティ5によって生成されたDICOMフォーマットの医用画像を、通信部14により取得し、制御部11が記憶部15に保存する(ステップA1)。
【0051】
制御部11は、現在のCPUの使用率をチェックし、使用率が一定値以下で負荷が大きくなければ(ステップA2;N)、参照画像の作成処理を実行する(ステップB)。使用率が一定値を超え、負荷が大きければ(ステップA2;Y)、参照画像の作成処理をスキップして次の処理(ステップA3)に移行する。
【0052】
図5は、参照画像の作成処理のフローチャートである。
図5に示すように、制御部11は、DICOMフォーマットの医用画像から、ビットマップの医用画像を取得する(ステップB1)。DICOMフォーマットの医用画像は、図6に示すように付帯情報f1とビットマップの医用画像f2から構成されている。付帯情報f1は患者情報や検査情報等、DICOMの規定に従って収集された医用画像f2に関する情報である。制御部11は、図6に示すように、付帯情報f1とビットマップの医用画像f2を分離することにより、ビットマップの医用画像f2を取得する。
【0053】
制御部11は、取得されたビットマップの医用画像に対応するアノテーション情報が記憶部15に保存されているか否かによって、作成されたアノテーションの有無を判断する(ステップB2)。
アノテーション情報が記憶部15に保存されておらず、作成されたアノテーションが無い場合(ステップB2;N)、制御部11はビットマップの医用画像に縮小処理を施す(ステップB4)。具体的には、制御部11が医用画像から画素を一定間隔で間引き、医用画像のサイズを縮小する。このとき、制御部11は、医用画像の2辺のうちサイズが大きい方が、表示端末3の最小表示サイズ内に収まるように縮小する。例えば、図7に例示する医用画像は、x方向よりy方向のサイズが大きい。表示端末3の最小表示サイズが1024画素であれば、医用画像のy方向のサイズが2048画素であるので、制御部11は、y方向のサイズが1024画素となるようにx方向、y方向ともに1画素おきに1画素ずつ間引き、全体として医用画像のサイズを1/4に縮小する。
【0054】
なお、医用画像のサイズがもともと最小表示サイズ以下であれば、制御部11は縮小処理を省略する。
また、表示端末3によって最小表示サイズは様々であるので、各表示端末3の最小表示サイズを満たすサイズに縮小し、同じ医用画像についてサイズが異なる参照画像を作成してもよい。または、各表示端末3によって異なる最小表示サイズを平均した平均表示サイズを定めて一律にこの平均表示サイズに縮小し、平均表示サイズより表示端末3の最小表示サイズが小さければ、表示端末3においてさらに参照画像を縮小処理して表示端末3の最小表示サイズ内に収めてもよい。
【0055】
記憶部15にアノテーション情報が保存されており、作成されたアノテーションが有る場合(ステップB2;Y)、制御部11は、アノテーション情報に基づいて、図8に示すようにアノテーションを作成し、ビットマップの医用画像上に重ねて配置する(ステップB3)。その後、制御部11は、アノテーションが重ねられた医用画像に対し、縮小処理を施す(ステップB4)。
【0056】
次に、制御部11は、縮小処理された医用画像を補間処理する(ステップB5)。補間処理は、縮小処理により間引かれた後の画素間の画素値を補間する処理である。縮小処理によって画素が間引かれた後の画像は、隣接する画素間で画素値が階段状となり、画質が低下しやすい。そこで、周辺画素の画素値を補間することにより、画質の低下を回避する。補間処理としては特に限定されず、ニアレストネイバー、バイリニア、バイキュービック等が挙げられる。
【0057】
補間処理後、制御部11は汎用画像フォーマットにより医用画像をフォーマット化し、Webブラウザーにより表示可能な参照画像を作成する(ステップB6)。汎用画像フォーマットは、JPEG、GIF、TIFF、PNG、PDF等のように、Webブラウザーによって表示可能な汎用画像フォーマットであれば、特に限定されない。
【0058】
以上のようにして参照画像が作成されると、作成された参照画像は、元のDICOMフォーマットの医用画像に対応付けて記憶部15に保存される。
次に、図4に示すように、制御部11は医用画像をバックアップする時期に至ったか否かを判断する(ステップA3)。毎日24:00のように、予め設定されたバックアップの時期に至ると(ステップA3;Y)、制御部11は記憶部15に保存されているDICOMフォーマットの医用画像をサーバー2に送信する。医用画像について参照画像、アノテーション情報も保存されていれば、参照画像、アノテーション情報もともにサーバー2に送信する(ステップA4)。サーバー2では、送信された医用画像、参照画像、アノテーション情報が記憶装置S1に保存される。
【0059】
アノテーションは、医師による医用画像の読影時に作成されるが、医用画像の取得後すぐに医師が読影するとは限らず、時間をおいて読影することがある。そのため、参照画像が作成され、サーバー2に送信された後にアノテーションが作成される場合がある。その場合(ステップA5;Y)、制御部11はCPUの負荷状況を再度チェックし(ステップA6)、負荷が大きく、参照画像を作成する余裕がなければ(ステップA6;Y)、制御部11はアノテーション情報をサーバー2に送信する(ステップA7)。
【0060】
負荷が大きくなければ(ステップA6;N)、制御部11は上述の参照画像の作成処理を実行する(ステップB)。これにより、アノテーションが医用画像上に重ねられた参照画像が得られるので、制御部11は新たに作成された参照画像を、サーバー2に送信する(ステップA8)。サーバー2では、アノテーションが作成される前に作成され、保存されている参照画像が、送信された参照画像に更新されて保存される。
【0061】
〔サーバーの処理〕
図9は、病院端末1から送信された医用画像を保存する際にサーバー2が実行する処理のフローチャートである。
図9に示すように、サーバー2は、通信部23により病院端末1からDICOMフォーマットの医用画像が送信されると、制御部21が当該医用画像を記憶装置S1に保存する。制御部11は医用画像とともに参照画像、アノテーション情報が送信された場合は当該参照画像、アノテーション情報を、医用画像に対応付けて記憶装置S1に保存する(ステップC1)。
【0062】
その後、記憶装置S1における保存期間が一定期間以上に至ると(ステップC2;Y)、制御部21は保存期間が一定期間以上に至った医用画像、参照画像、アノテーション情報を、記憶装置S2に移動し、保存する(ステップC3)。
【0063】
制御部21は、記憶装置S1又は記憶装置S2の画像管理データベースを検索し、各医用画像に対し、未作成の参照画像が有るか、又は追加されたアノテーション情報が有れば(ステップC4;Y)、参照画像の作成処理を実行する(ステップB)。参照画像の作成処理の内容は、病院端末1と同じ処理内容であり、制御部21が図5に示した処理を実行する。処理内容は上述したとおりであるので、詳細な説明を省略する。
【0064】
制御部21は、作成された参照画像を記憶装置S1又は記憶装置S2に保存する(ステップC5)。アノテーション情報が追加される前に先に作成され、保存されている参照画像が有る場合、制御部21はアノテーションを重ねて新たに作成された参照画像に更新して保存する。
【0065】
一方、未作成の参照画像が無く、かつ追加されたアノテーション情報も無ければ(ステップC4;N)、参照画像の作成、保存は行わずに本処理が終了する。
【0066】
〔サーバーと表示端末の処理〕
図10は、医用画像を表示端末3が表示する際に、サーバー2と表示端末3が実行する処理を示すフローチャートである。
図10の処理は、ログインが許可された表示端末3において表示する医用画像がユーザーによって選択されると、開始する。
【0067】
図10に示すように、表示端末3がサーバー2に対し、ユーザーにより選択された医用画像を要求する(ステップD1)。サーバー2の制御部21は、記憶装置S1、S2の画像管理データベースを検索し、要求された医用画像に対応する参照画像の有無を判断する(ステップD2)。
【0068】
参照画像が無ければ(ステップD2;N)、制御部21が要求されたDICOMフォーマットの医用画像を記憶装置S1又は記憶装置S2から読み出して、参照画像を作成する(ステップB)。参照画像の作成処理は、病院端末1と同じ処理内容であり、制御部21が図5に示した処理を実行する。処理内容は上述したとおりであるので、詳細な説明を省略する。制御部21は、作成された参照画像を医用画像に対応付けて記憶装置S1又は記憶装置S2に保存し(ステップD4)、通信部23により表示端末3に送信する(ステップD5)。
【0069】
参照画像が有る場合(ステップD2;Y)、制御部21は画像管理データベースを検索し、参照画像の作成後に追加されたアノテーション情報の有無を判断する(ステップD3)。
追加されたアノテーション情報が無ければ(ステップD3;N)、制御部21は要求された医用画像の参照画像を記憶装置S1又は記憶装置S2から読み出して、通信部23により表示端末3に送信する(ステップD5)。
追加されたアノテーション情報が有れば(ステップD3;Y)、制御部21は参照画像の作成処理を実行し(ステップB)、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を得る。制御部21は、記憶装置S2に既に保存されているアノテーションが無い参照画像を、新たに作成されたアノテーションが重ねられた参照画像に更新して保存するとともに(ステップD4)、表示端末3に送信する(ステップD5)。
【0070】
表示端末3は、サーバー2から送信された参照画像を、Webブラウザーにより表示する(ステップD6)。
図11は、参照画像の表示画面例を示している。
図11に示すように、参照画像はWebページの一部に用いられ、表示端末3の表示サイズ内に収まるように表示されている。
【0071】
以上のように、本実施の形態によれば、遠隔画像システムPは、医用画像を取得する病院端末1と、病院端末1からネットワークNを介して送信された医用画像を保存するサーバー2と、サーバー2からネットワークNを介して医用画像を取得し、表示する表示端末3と、を備えている。病院端末1は、DICOMフォーマットの医用画像を取得し、病院端末1又はサーバー2は、DICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成する。サーバー2は、作成された参照画像を表示端末3に送信し、表示端末3は送信された参照画像を表示する。
【0072】
参照画像のフォーマットが汎用画像フォーマットであるので、表示端末がDICOMに対応していなくても、Webブラウザーにより参照画像を容易に表示することができる。汎用画像フォーマットの参照画像は、DICOMフォーマットの医用画像に比べてデータ量が非常に小さいため、DICOMフォーマットの医用画像に代えて、参照画像を表示端末3に送信することにより、表示端末3が参照画像の取得に要する通信時間を短縮し、参照画像による医用画像の表示を円滑化することができる。表示端末3のスペックやネットワークNによらず、医用画像を速やかに表示することができ、快適な操作性を実現できる。
【0073】
また、病院端末1又はサーバー2は、医用画像に対しアノテーションが作成された場合、当該医用画像及びアノテーションを画像処理し、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を作成する。
これにより、医師は、アノテーションが反映された参照画像を、表示端末3において閲覧することができる。
【0074】
また、病院端末1又はサーバー2は、DICOMフォーマットの医用画像から参照画像が作成された後、当該医用画像に対しアノテーションが追加された場合、当該医用画像及びアノテーションを画像処理し、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を作成し、サーバー2は、先に作成された参照画像を、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像に更新し、表示端末3に再送する。
参照画像が既に表示端末3に送信された後に、アノテーションが作成された場合も、アノテーションが重ねられた参照画像に更新されるので、医師はアノテーションが反映された参照画像を、表示端末3において閲覧することができる。
【0075】
また、画像処理は、DICOMフォーマットの医用画像からビットマップの医用画像を取得し、当該ビットマップの医用画像を表示端末3の表示サイズに合わせて縮小処理した後、補間処理し、汎用画像フォーマットによりフォーマット化する処理である。
これにより、表示端末3により表示可能なサイズに縮小することができ、縮小による画質の劣化を避けることができる。また、汎用画像フォーマットを用いることにより、参照画像のデータ量を削減できるとともに、Webブラウザーによる表示が容易となる。
【0076】
サーバー2は、病院端末1により参照画像が作成されていない場合、参照画像を作成することができる。
これにより、病院端末1の負荷が大きい場合には、サーバー2が対応して参照画像を作成することができる。
【0077】
サーバー2は、表示端末3により医用画像が要求されたとき、要求された医用画像の参照画像が病院端末1により作成されていなければ、参照画像を作成する。
これにより、参照画像がまだ作成されていない医用画像が要求された場合にも、サーバー2が対応して参照画像を作成し、表示端末3に提供することができる。
【0078】
上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、医用画像以外の電子カルテや検体検査結果等の他の医療データについても同様に、医療データそのものではなく、医療データをPDFのような汎用画像フォーマットによりフォーマット化した参照画像を作成し、表示端末3に提供することとしてもよい。電子カルテ等はDICOMフォーマットの医用画像に比べればデータ量は小さく、通信時間も短いが、Webブラウザーにより表示できる汎用画像フォーマットとすることにより、表示端末3における表示が容易となる。
【0079】
また、病院端末1、サーバー2、表示端末3が使用するプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、プログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
P 遠隔画像システム
1 病院端末
11 制御部
14 通信部
15 記憶部
2 サーバー
21 制御部
23 通信部
S1、S2 記憶装置
3 表示端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像を取得する病院端末と、前記病院端末からネットワークを介して送信された医用画像を保存するサーバーと、前記サーバーからネットワークを介して医用画像を取得し、表示する表示端末と、を備え、
前記病院端末は、DICOMフォーマットの医用画像を取得し、
前記病院端末又は前記サーバーは、DICOMフォーマットの前記医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、
前記サーバーは、作成された前記参照画像を表示端末に送信し、
前記表示端末は、送信された参照画像を表示する遠隔画像システム。
【請求項2】
前記病院端末又は前記サーバーは、前記医用画像に対しアノテーションが作成された場合、当該医用画像及びアノテーションを画像処理し、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を作成する請求項1に記載の遠隔画像システム。
【請求項3】
前記病院端末又は前記サーバーは、DICOMフォーマットの医用画像から参照画像が作成された後、当該医用画像に対しアノテーションが追加された場合、当該医用画像及びアノテーションを画像処理し、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像を作成し、
前記サーバーは、先に作成された参照画像を、医用画像上にアノテーションが重ねられた参照画像に更新し、表示端末に再送する請求項2に記載の遠隔画像システム。
【請求項4】
前記画像処理は、DICOMフォーマットの医用画像からビットマップの医用画像を取得し、当該ビットマップの医用画像を前記表示端末の表示サイズに合わせて縮小処理した後、補間処理し、汎用画像フォーマットによりフォーマット化する処理である請求項1〜3の何れか一項に記載の遠隔画像システム。
【請求項5】
前記サーバーは、前記病院端末により参照画像が作成されていない場合、前記参照画像を作成する請求項1〜4の何れか一項に記載の遠隔画像システム。
【請求項6】
前記サーバーは、前記表示端末により医用画像が要求されたとき、要求された医用画像の参照画像が前記病院端末により作成されていなければ、前記参照画像を作成する請求項1〜4の何れか一項に記載の遠隔画像システム。
【請求項7】
医用画像を取得し、ネットワークを介してサーバーに送信する病院端末と、前記病院端末から送信された医用画像を保存し、ネットワークを介して、当該医用画像を表示端末に送信するサーバーと、を備え、
前記病院端末は、DICOMフォーマットの医用画像を取得し、
前記病院端末又は前記サーバーは、DICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、
前記サーバーは、作成された前記参照画像を、ネットワークを介して表示端末に送信する遠隔画像システム。
【請求項8】
病院端末からネットワークを介して送信されたDICOMフォーマットの医用画像を画像処理して、汎用画像フォーマットの参照画像を作成し、作成された前記参照画像を、ネットワークを介して表示端末に送信するサーバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−111092(P2013−111092A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257025(P2011−257025)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】