遠隔管理システム
【課題】大容量の動画広告表示データなどを移動局と固定局との間で高速に送受信できる遠隔管理システムを提供する。
【解決手段】管理部1と常時接続される固定局2と移動局3の無線通信部で、接近時に無線通信により短時間で固定局と移動局間で高速の表示データと管理情報との送受信を行い、移動局は受信したデータを記憶部32に蓄積し、固定局は移動局から受信した管理情報データを記憶する記憶部を有し、移動局は、固定局との接続時に移動局の情報を固定局へ送信し、固定局は、移動局の情報を前記記憶部に記憶し、固定局の情報と記憶部に記憶された移動局の情報を管理部に送り、管理部は、各固定局の情報と各移動局の情報を一括して管理する。
【解決手段】管理部1と常時接続される固定局2と移動局3の無線通信部で、接近時に無線通信により短時間で固定局と移動局間で高速の表示データと管理情報との送受信を行い、移動局は受信したデータを記憶部32に蓄積し、固定局は移動局から受信した管理情報データを記憶する記憶部を有し、移動局は、固定局との接続時に移動局の情報を固定局へ送信し、固定局は、移動局の情報を前記記憶部に記憶し、固定局の情報と記憶部に記憶された移動局の情報を管理部に送り、管理部は、各固定局の情報と各移動局の情報を一括して管理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理部と、当該管理部から隔離されて配置された移動局との間で情報の伝達を行う遠隔管理システムに関し、特に、移動局としての列車内での表示システム等との間で、管理部に常時接続される固定局を介して、情報の伝達を行うに好適な遠隔管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車内の表示部への表示データの交換は、例えば、CD−ROM等の記憶手段を利用して行われており、そのため、当該記憶手段を車内で入れ替えるなどの必要があり、乗務員の負担となっていた。また、従来では、運行される列車毎に当該記憶手段を持ち込む必要があり、そのため、列車毎に記憶手段のデータコピーを行う等、やはり、乗務員の負担となっていた。
【0003】
そこで、以下の特許文献1では、列車内の表示部への表示データの交換を、線路の近傍に設置された中継無線装置を介して画像や文字情報を送信し、列車内で表示する列車表示システムが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−152156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術においては、データの交換を、線路の近傍に設置された中継無線装置を介して送信するため、移動中における列車との間の通信速度や外部からの雑音信号の混入などを考慮すると、確実に、列車内で表示する映像表示データを含めた大容量の情報を、移動局である列車に伝送することは難しかった。
【0006】
そこで、本発明では、上述の従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、大容量の情報を、管理部から移動局である列車との間で、確実に、映像表示データを含めた大容量の情報を伝送することを可能にする遠隔管理システムを提供することを目的とする。
【0007】
なお、本発明では、高速に移動局との間で送受信する場合の高速無線通信として、例えば、ミリ波など、波長の短い無線電波による高速通信を用いることにより、上記の目的を達成せんとするものである。その際、ミリ波など波長の短い無線電波による高速通信を用いた場合、広帯域な無線伝送が可能であるため、高速に大容量のデータ通信が可能となる利点がある反面、無線通信が可能な距離が短く、且つ、指向性が狭いという特性がある。即ち、ミリ波など波長の短い無線電波による高速通信は、位置変動が少ない条件下で使用されるのが一般的であり、そのため、上記の特許文献1にも開示されるように、列車のような移動局との間での高速通信に利用することは、例えば、車両が駅構内に停車している時間に限られてしまい、利用可能な通信時間が制限されてしまう。そのため、列車表示システムには、かかるミリ波通信は使用されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、上記の目的を達成するため、管理部と、前記管理部に常時接続される少なくとも一つの固定局と、当該固定局の一つと接続される少なくとも一つの移動局とから構成され、少なくとも、前記管理部からの情報を、前記一つの移動局が前記一つの固定局に近接した際、前記一つの固定局を介して前記一つの移動局へ伝送する遠隔管理システムにおいて、前記固定局と前記移動局との間の情報の伝送をミリ波を利用して行うと共に、少なくとも、前記移動局側には、前記移動局から前記ミリ波を利用して伝送された情報を記憶する記憶部を備えた遠隔管理システムが提供される。
【0009】
即ち、本発明では、ミリ波など波長の短い無線電波による高速通信を利用することにより、管理部に常時接続される固定局と移動局との間で、映像表示データを含めた大容量の情報を伝送する一方、例えば、駅構内に配置される固定局と、列車内の移動局との間の距離及び指向性による通信時間の制限を考慮して、伝送した大容量の情報を、一旦、移動局側の記憶装置に記憶しておき、もって、移動局側での大容量の情報の利用を可能にするものである。
【0010】
また、本発明に係る遠隔管理システムにおける管理方法は、管理部が固定局に対し情報の取得を要求するステップと、前記固定局が移動局と接続時に当該移動局に対して当該移動局の情報の取得を要求するステップと、前記移動局が前記固定局と接続時に当該移動局の情報を前記固定局へ送信するステップと、前記固定局が前記移動局の情報を記憶するステップと、前記固定局が当該固定局の情報と前記移動局の情報とを前記管理部へ送信するステップとを含めば好適である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、車両内の移動局と、管理部に常時接続されて複数設けられた固定局との間で、移動局が固定局に近接した(例えば、列車が駅構内に停車した)際、管理部からの大容量の情報を、確実に、移動局側へ伝送することを可能とすると共に、その後、移動局側の記憶装置を介して、一旦、そこに記憶された大容量の情報利用を、その後、移動局側で利用可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る遠隔管理システムの一実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、添付の図1は、本発明に係る遠隔管理システムを、特に、列車内で表示する映像表示データを含めた大容量の情報を転送するための列車内表示装置システムに適用した場合の構成を示すシステムの構成図である。この図1において、表示装置51は、列車内に設けられた、例えばLCDなど、複数の表示装置を示している。これら表示装置51、51…は、列車内に設けられた移動局3−1〜3−mと接続されており、当該移動局3−1〜3−mから提供される映像などを含む表示データを表示する。
【0014】
一方、上記の移動局3−1〜3−mと無線通信するための固定局2−1〜2−nは、例えば、各駅の構内に設けられており、かつ、これらの各固定局2−1〜2−nは、ネットワークを介して、管理部1へ接続されている。なお、この管理部1は、上記の列車内表示装置システムにおいては、列車内で表示する映像表示データを含めた大容量の情報を、所望の列車内の移動局3−1〜3−mに対して、各駅の構内に設けられた固定局2−1〜2−nを介して転送する。なお、これらの固定局2−1〜2−nは、上記管理部1に対し、常時、接続される。
【0015】
次に、添付の図12には、上述した列車内表示装置システムにおいて、上記管理部1から転送されてきた映像表示データを含めた大容量の情報を、列車内の移動局3−1〜3−mに接続されるアンテナ36に対して無線を利用して伝送する状態を示した図である。この図からも明らかなように、移動局3−1〜3−mを内部に備えた列車は、その先頭車両の前面又は側面に、アンテナ36を備えており、一方、駅の構内には、図の例では、プラットホームや構内の一部に、上記アンテナ36と通信できる範囲内において対向する位置に、固定局2−1〜2−nのアンテナ26を設けている。なお、固定局2のアンテナ26は、移動局3−1〜3−mのアンテナ36との間で通信できる距離内において対向するように設けられる。なお、これらの位置は、上記に限定されるものではないが、要するに、ミリ波を用いて送受信するために、移動局3−1〜3−mのアンテナ36と固定局2のアンテナ26とは、車両が駅構内に停車する際、お互いに、通信可能な距離内で配置されるように設定されていることが重要である。
【0016】
また、ミリ波を用いることにより、大容量のデータ伝送を500〜1Gb/sの速度で送信できるため、短時間でデータ伝送を行うことができる。例えば、CD−ROM1枚分のデータは、列車が駅で停車しているわずかの間(例えば、20秒以内)に、固定局と移動局間でデータ転送を行うことが可能となる。
【0017】
ここで、一つの移動局は、一つの固定局と接近した場合にのみ無線通信が可能であり、移動局が二つの固定局との間にあり、かつ、それぞれの固定局との距離が離れている場合は、無線通信ができないものとする。また、固定局と移動局との間は双方向通信が可能であり、管理部1、各固定局2−1〜2−n、各移動局3−1〜3−mの間でデータ通信を行うことができる。
【0018】
図2には、本実施例の列車内表示装置の遠隔管理システムにおける管理部1の構成を示す。管理部1は、制御部11と、管理情報を記憶する記憶部12と、固定局と管理部間を有線のネットワークを介して接続されるネットワーク通信部13と、制御部を操作する操作部14と、制御部により制御される表示部15とから構成されている。なお、本実施例における固定局と移動局間の無線通信はミリ波を用いて伝送を行うものとする。
【0019】
図3は本実施例の固定局の構成である。各固定局は、制御部21と、記憶部22と、ネットワーク通信部23と、無線通信部24から構成されている。
【0020】
図4に本実施例の遠隔管理システムにおける移動局3−1〜3−mの構成を示す。各移動局は、制御部31と、記憶部32と、無線通信部33と、ネットワーク通信部34から構成されている。
【0021】
まず、管理部、固定局、移動局が上記のように構成される本実施例の列車内表示装置の図5A、図5Bにより本実施例の遠隔管理システムにおけるデータ転送方法について説明する。図5Aは管理部1から移動局へデータを伝送する場合の流れを、図5Bは移動局から管理部へデータを伝送する場合の流れを、それぞれ示している。
【0022】
以下、管理部1から移動局へデータを伝送する方法について説明する。なお移動局3−1〜3−nは複数あるが、各移動局への伝送方法は同様であるので、それぞれ代表して1台の固定局2、1台の移動局3として説明する。
【0023】
図5Aにおいて、先ず管理部1は、ネットワークを介して固定局2のネットワーク通信部23に接続要求を行い、接続要求した固定局2からの応答を受信後、固定局2へ列車内で表示するための広告動画像表示データ、ニュース画像などを送信する。固定局2は、管理部1から送信されてきたこれらの表示データを受信して固定局2の記憶部22に蓄積する。固定局2は、データ受信および蓄積が完了した後、移動局3とのリンク制御を無線通信部24を介して制御部21により監視し、移動局3とのリンク確立後、固定局2の記憶部22に蓄積されたデータを移動局3へ、ミリ波を用いて無線通信部24から送信する。 移動局3は、固定局2とのリンク制御を無線通信部33を介して制御部31が監視し、固定局2とのリンク確立後、固定局2から送信されてきた大容量の表示データをミリ波通信により受信して記憶部32へ蓄積する。これにより列車が動き始めて無線通信ができなくなっても、次の固定局と接近するまでに必要な時間以上の大容量の表示データを蓄積しておくことができるので、移動局3の無線通信部33が固定局2と通信できない状態が続いても、列車内表示装置は映像表示を途切れることなく表示することが可能となる。
【0024】
次に図5Bにより、移動局3から管理部1へ管理情報データを伝送する方法について説明する。移動局3は無線通信部33を介して制御部31により、固定局2とのリンク制御を監視し、固定局2とのリンク確立後、移動局3は記憶部32に蓄積されたデータを固定局2へ送信する。固定局2は無線通信部24を介して制御部21により、移動局3とのリンク制御を監視し、移動局3とのリンク確立後、移動局から送信されてきた管理情報データを受信して記憶部22へ蓄積する。
【0025】
また、固定局2は、データ受信および蓄積が完了した後、管理部1に対しネットワーク通信部23を介して接続要求を行い、管理部1からの応答を受信後、記憶部22に蓄積された管理情報データをネットワークを介して管理部1へ送信する。管理部は1、固定局2から送信されてきた管理情報データを受信して記憶部12に蓄積する。管理情報についても、固定局と移動局間で常時通信ができなくとも蓄積された管理情報データを受信できることで、管理部は取得した管理情報を基に移動局、固定局の一括管理を行うことが可能となる。
【0026】
次に、本実施例における遠隔管理システムの管理方法について説明する。図6は本実施例の遠隔管理システムにおける管理方法の流れを示す図である。図6では、固定局2−1〜2−i〜2−nと移動局3−jとが無線通信可能状態になり、その後、管理部1の管理情報取得処理が行われる場合の動作を示したものである。
【0027】
固定局2−iは、移動局3−jとのリンク確立時に移動局3−jへ管理情報取得要求iを送信し、管理情報取得要求iを受信した移動局3−jは移動局管理情報Mjを固定局2−iへ送信する。管理部1は、各固定局2−1〜2−nに対し管理情報取得の為の管理情報送信要求i(管理情報取得要求i)を行い、各固定局は管理部1からの管理情報取得要求に応じて、管理情報を管理部へ送信する。ここで、固定局iは、移動局jの管理情報Mjを取得済みであるので、固定局iの管理情報Niと共に、移動局jの管理情報Mjとを、管理部1へ送信する。管理部は、固定局2−iから受信した固定局の管理情報と移動局の管理情報Mjとを基に、固定局及び移動局の状態等を管理する。
【0028】
図7に、本実施例の管理方法における管理部の管理処理フローを示す。ここでも、移動局3−1〜3−nは複数あるが、固定局、移動局へのそれぞれの管理処理方法は同様であるので、それぞれ代表して1台の固定局2、1台の移動局3として説明する。以下の図8、図9においても同様である。
【0029】
まず、管理部1は、管理情報送信要求を固定局2へ送信する(S71)。そして、固定局2は管理情報を受信すると(S72、Yes)、管理情報を記憶部22へ格納する(S73)。上記の処理を固定局2の数だけ繰り返す(S74)。
【0030】
図8、図9に本実施例の管理方法における固定局の処理フローを示す。図8は移動局の管理情報の取得方法の処理を、図9は管理情報を管理部へ送信する処理を、それぞれ示している。
【0031】
図8に示した固定局管理処理1を説明する。固定局2は、まず、移動局3とのリンク確立を監視し(S81)、リンクが確立すると(S82、Yes)、移動局3へ管理情報取得のために、管理情報送信要求を送信し(S82)、移動局3からの管理情報の受信を待つ(S83)。そして、移動局からの管理情報受信後(S83、Yes)、管理情報を記憶部22に格納する(S84)。
【0032】
次に、図9に示した固定局管理処理2について説明する。固定局2は、管理部1からの管理情報送信要求を受信すると(S91、Yes)、移動局3の管理情報を取得済みの場合(S92、Yes)、固定局2の管理情報と移動局3の管理情報情報を多重して(S93)、管理情報を管理部1へ送信する(S94)。
【0033】
図10に本実施例の管理方法における、移動局3の処理フローを示す。移動局3は、まず、固定局2とのリンク確立を監視し(S101)、リンクが確立すると(S101、Yes)、固定局2からの管理情報取得要求のための管理情報送信要求信号の受信を待つ(S102)。そして、管理情報送信要求信号を受信後(S102、Yes)、移動局3の管理情報を固定局2へ送信する(S103)。
【0034】
図11に固定局2が管理部1へ送信する管理情報のフォーマットの例を示す。固定局2を識別するための固定局ID、固定局管理情報と、管理部1からの管理情報取得要求のための管理情報送信要求信号が来る間に、固定局2が移動局3から受信した移動局の管理情報の個数と、その個数分の移動局IDと、移動局管理情報が続く構成となっている。移動局の管理情報としては、例えば、車内で表示する画像や映像情報(映像表示終了、表示映像の変更など)や、車両故障情報(ドアの故障など)である。移動局の管理情報がない場合は、移動局情報個数には0が入り、その後の移動局管理情報は付随しない。
【0035】
このように列車内表示装置を遠隔管理することにより、管理部1は、各固定局2−1〜2−nの情報と、各固定局に蓄積された各移動局3−1〜3−mの管理情報とを得ることができ、複数の固定局、複数の移動局の管理を一括して行うことができる。
以上、好適な実施例について述べたが、本発明は列車内表示装置の遠隔管理の実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、列車内の監視システムなどにも適用できることは勿論である。この場合、列車内の移動局には無線通信部、制御部、記憶部の他に、監視カメラを設置する必要がある。列車内の監視カメラの映像表示データを、移動局の記憶部に蓄積し、列車内での不審な行動、不審物などの映像が蓄積された表示データを駅で停車している間に移動局から固定局へ短時間で送信でき、ネットワークに接続されている固定局から即座に警察へ映像情報を送ることができるので、犯罪防止や、犯人逮捕などに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る遠隔管理システムを列車内表示装置システムに適用した場合の構成図。
【図2】管理部ブロック図。
【図3】固定局ブロック図。
【図4】移動局ブロック図。
【図5A】管理部から移動局へのデータ通信の動作を説明する流れ図。
【図5B】移動局から管理部へのデータ通信の動作を説明する流れ図。
【図6】本発明に基づく遠隔管理方法の動作を説明する流れ図。
【図7】管理部処理フローを示す図。
【図8】固定局処理フロー1を示す図。
【図9】固定局処理フロー2を示す図。
【図10】移動局処理フローを示す図。
【図11】フレーム・フォーマットの例を示す図。
【図12】固定局と移動局の設置例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
1…管理部、2−1〜2−n…固定局、3−1〜3−m…移動局、11…制御部、12…記憶部、13…ネットワーク通信部、14…操作部、15…表示部、21…制御部、22…記憶部、23…ネットワーク通信部、24…無線通信部、31…制御部、32…記憶部、33…無線通信部、34…ネットワーク通信部、26…アンテナ、36…アンテナ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理部と、当該管理部から隔離されて配置された移動局との間で情報の伝達を行う遠隔管理システムに関し、特に、移動局としての列車内での表示システム等との間で、管理部に常時接続される固定局を介して、情報の伝達を行うに好適な遠隔管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車内の表示部への表示データの交換は、例えば、CD−ROM等の記憶手段を利用して行われており、そのため、当該記憶手段を車内で入れ替えるなどの必要があり、乗務員の負担となっていた。また、従来では、運行される列車毎に当該記憶手段を持ち込む必要があり、そのため、列車毎に記憶手段のデータコピーを行う等、やはり、乗務員の負担となっていた。
【0003】
そこで、以下の特許文献1では、列車内の表示部への表示データの交換を、線路の近傍に設置された中継無線装置を介して画像や文字情報を送信し、列車内で表示する列車表示システムが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−152156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術においては、データの交換を、線路の近傍に設置された中継無線装置を介して送信するため、移動中における列車との間の通信速度や外部からの雑音信号の混入などを考慮すると、確実に、列車内で表示する映像表示データを含めた大容量の情報を、移動局である列車に伝送することは難しかった。
【0006】
そこで、本発明では、上述の従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、大容量の情報を、管理部から移動局である列車との間で、確実に、映像表示データを含めた大容量の情報を伝送することを可能にする遠隔管理システムを提供することを目的とする。
【0007】
なお、本発明では、高速に移動局との間で送受信する場合の高速無線通信として、例えば、ミリ波など、波長の短い無線電波による高速通信を用いることにより、上記の目的を達成せんとするものである。その際、ミリ波など波長の短い無線電波による高速通信を用いた場合、広帯域な無線伝送が可能であるため、高速に大容量のデータ通信が可能となる利点がある反面、無線通信が可能な距離が短く、且つ、指向性が狭いという特性がある。即ち、ミリ波など波長の短い無線電波による高速通信は、位置変動が少ない条件下で使用されるのが一般的であり、そのため、上記の特許文献1にも開示されるように、列車のような移動局との間での高速通信に利用することは、例えば、車両が駅構内に停車している時間に限られてしまい、利用可能な通信時間が制限されてしまう。そのため、列車表示システムには、かかるミリ波通信は使用されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、上記の目的を達成するため、管理部と、前記管理部に常時接続される少なくとも一つの固定局と、当該固定局の一つと接続される少なくとも一つの移動局とから構成され、少なくとも、前記管理部からの情報を、前記一つの移動局が前記一つの固定局に近接した際、前記一つの固定局を介して前記一つの移動局へ伝送する遠隔管理システムにおいて、前記固定局と前記移動局との間の情報の伝送をミリ波を利用して行うと共に、少なくとも、前記移動局側には、前記移動局から前記ミリ波を利用して伝送された情報を記憶する記憶部を備えた遠隔管理システムが提供される。
【0009】
即ち、本発明では、ミリ波など波長の短い無線電波による高速通信を利用することにより、管理部に常時接続される固定局と移動局との間で、映像表示データを含めた大容量の情報を伝送する一方、例えば、駅構内に配置される固定局と、列車内の移動局との間の距離及び指向性による通信時間の制限を考慮して、伝送した大容量の情報を、一旦、移動局側の記憶装置に記憶しておき、もって、移動局側での大容量の情報の利用を可能にするものである。
【0010】
また、本発明に係る遠隔管理システムにおける管理方法は、管理部が固定局に対し情報の取得を要求するステップと、前記固定局が移動局と接続時に当該移動局に対して当該移動局の情報の取得を要求するステップと、前記移動局が前記固定局と接続時に当該移動局の情報を前記固定局へ送信するステップと、前記固定局が前記移動局の情報を記憶するステップと、前記固定局が当該固定局の情報と前記移動局の情報とを前記管理部へ送信するステップとを含めば好適である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、車両内の移動局と、管理部に常時接続されて複数設けられた固定局との間で、移動局が固定局に近接した(例えば、列車が駅構内に停車した)際、管理部からの大容量の情報を、確実に、移動局側へ伝送することを可能とすると共に、その後、移動局側の記憶装置を介して、一旦、そこに記憶された大容量の情報利用を、その後、移動局側で利用可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る遠隔管理システムの一実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、添付の図1は、本発明に係る遠隔管理システムを、特に、列車内で表示する映像表示データを含めた大容量の情報を転送するための列車内表示装置システムに適用した場合の構成を示すシステムの構成図である。この図1において、表示装置51は、列車内に設けられた、例えばLCDなど、複数の表示装置を示している。これら表示装置51、51…は、列車内に設けられた移動局3−1〜3−mと接続されており、当該移動局3−1〜3−mから提供される映像などを含む表示データを表示する。
【0014】
一方、上記の移動局3−1〜3−mと無線通信するための固定局2−1〜2−nは、例えば、各駅の構内に設けられており、かつ、これらの各固定局2−1〜2−nは、ネットワークを介して、管理部1へ接続されている。なお、この管理部1は、上記の列車内表示装置システムにおいては、列車内で表示する映像表示データを含めた大容量の情報を、所望の列車内の移動局3−1〜3−mに対して、各駅の構内に設けられた固定局2−1〜2−nを介して転送する。なお、これらの固定局2−1〜2−nは、上記管理部1に対し、常時、接続される。
【0015】
次に、添付の図12には、上述した列車内表示装置システムにおいて、上記管理部1から転送されてきた映像表示データを含めた大容量の情報を、列車内の移動局3−1〜3−mに接続されるアンテナ36に対して無線を利用して伝送する状態を示した図である。この図からも明らかなように、移動局3−1〜3−mを内部に備えた列車は、その先頭車両の前面又は側面に、アンテナ36を備えており、一方、駅の構内には、図の例では、プラットホームや構内の一部に、上記アンテナ36と通信できる範囲内において対向する位置に、固定局2−1〜2−nのアンテナ26を設けている。なお、固定局2のアンテナ26は、移動局3−1〜3−mのアンテナ36との間で通信できる距離内において対向するように設けられる。なお、これらの位置は、上記に限定されるものではないが、要するに、ミリ波を用いて送受信するために、移動局3−1〜3−mのアンテナ36と固定局2のアンテナ26とは、車両が駅構内に停車する際、お互いに、通信可能な距離内で配置されるように設定されていることが重要である。
【0016】
また、ミリ波を用いることにより、大容量のデータ伝送を500〜1Gb/sの速度で送信できるため、短時間でデータ伝送を行うことができる。例えば、CD−ROM1枚分のデータは、列車が駅で停車しているわずかの間(例えば、20秒以内)に、固定局と移動局間でデータ転送を行うことが可能となる。
【0017】
ここで、一つの移動局は、一つの固定局と接近した場合にのみ無線通信が可能であり、移動局が二つの固定局との間にあり、かつ、それぞれの固定局との距離が離れている場合は、無線通信ができないものとする。また、固定局と移動局との間は双方向通信が可能であり、管理部1、各固定局2−1〜2−n、各移動局3−1〜3−mの間でデータ通信を行うことができる。
【0018】
図2には、本実施例の列車内表示装置の遠隔管理システムにおける管理部1の構成を示す。管理部1は、制御部11と、管理情報を記憶する記憶部12と、固定局と管理部間を有線のネットワークを介して接続されるネットワーク通信部13と、制御部を操作する操作部14と、制御部により制御される表示部15とから構成されている。なお、本実施例における固定局と移動局間の無線通信はミリ波を用いて伝送を行うものとする。
【0019】
図3は本実施例の固定局の構成である。各固定局は、制御部21と、記憶部22と、ネットワーク通信部23と、無線通信部24から構成されている。
【0020】
図4に本実施例の遠隔管理システムにおける移動局3−1〜3−mの構成を示す。各移動局は、制御部31と、記憶部32と、無線通信部33と、ネットワーク通信部34から構成されている。
【0021】
まず、管理部、固定局、移動局が上記のように構成される本実施例の列車内表示装置の図5A、図5Bにより本実施例の遠隔管理システムにおけるデータ転送方法について説明する。図5Aは管理部1から移動局へデータを伝送する場合の流れを、図5Bは移動局から管理部へデータを伝送する場合の流れを、それぞれ示している。
【0022】
以下、管理部1から移動局へデータを伝送する方法について説明する。なお移動局3−1〜3−nは複数あるが、各移動局への伝送方法は同様であるので、それぞれ代表して1台の固定局2、1台の移動局3として説明する。
【0023】
図5Aにおいて、先ず管理部1は、ネットワークを介して固定局2のネットワーク通信部23に接続要求を行い、接続要求した固定局2からの応答を受信後、固定局2へ列車内で表示するための広告動画像表示データ、ニュース画像などを送信する。固定局2は、管理部1から送信されてきたこれらの表示データを受信して固定局2の記憶部22に蓄積する。固定局2は、データ受信および蓄積が完了した後、移動局3とのリンク制御を無線通信部24を介して制御部21により監視し、移動局3とのリンク確立後、固定局2の記憶部22に蓄積されたデータを移動局3へ、ミリ波を用いて無線通信部24から送信する。 移動局3は、固定局2とのリンク制御を無線通信部33を介して制御部31が監視し、固定局2とのリンク確立後、固定局2から送信されてきた大容量の表示データをミリ波通信により受信して記憶部32へ蓄積する。これにより列車が動き始めて無線通信ができなくなっても、次の固定局と接近するまでに必要な時間以上の大容量の表示データを蓄積しておくことができるので、移動局3の無線通信部33が固定局2と通信できない状態が続いても、列車内表示装置は映像表示を途切れることなく表示することが可能となる。
【0024】
次に図5Bにより、移動局3から管理部1へ管理情報データを伝送する方法について説明する。移動局3は無線通信部33を介して制御部31により、固定局2とのリンク制御を監視し、固定局2とのリンク確立後、移動局3は記憶部32に蓄積されたデータを固定局2へ送信する。固定局2は無線通信部24を介して制御部21により、移動局3とのリンク制御を監視し、移動局3とのリンク確立後、移動局から送信されてきた管理情報データを受信して記憶部22へ蓄積する。
【0025】
また、固定局2は、データ受信および蓄積が完了した後、管理部1に対しネットワーク通信部23を介して接続要求を行い、管理部1からの応答を受信後、記憶部22に蓄積された管理情報データをネットワークを介して管理部1へ送信する。管理部は1、固定局2から送信されてきた管理情報データを受信して記憶部12に蓄積する。管理情報についても、固定局と移動局間で常時通信ができなくとも蓄積された管理情報データを受信できることで、管理部は取得した管理情報を基に移動局、固定局の一括管理を行うことが可能となる。
【0026】
次に、本実施例における遠隔管理システムの管理方法について説明する。図6は本実施例の遠隔管理システムにおける管理方法の流れを示す図である。図6では、固定局2−1〜2−i〜2−nと移動局3−jとが無線通信可能状態になり、その後、管理部1の管理情報取得処理が行われる場合の動作を示したものである。
【0027】
固定局2−iは、移動局3−jとのリンク確立時に移動局3−jへ管理情報取得要求iを送信し、管理情報取得要求iを受信した移動局3−jは移動局管理情報Mjを固定局2−iへ送信する。管理部1は、各固定局2−1〜2−nに対し管理情報取得の為の管理情報送信要求i(管理情報取得要求i)を行い、各固定局は管理部1からの管理情報取得要求に応じて、管理情報を管理部へ送信する。ここで、固定局iは、移動局jの管理情報Mjを取得済みであるので、固定局iの管理情報Niと共に、移動局jの管理情報Mjとを、管理部1へ送信する。管理部は、固定局2−iから受信した固定局の管理情報と移動局の管理情報Mjとを基に、固定局及び移動局の状態等を管理する。
【0028】
図7に、本実施例の管理方法における管理部の管理処理フローを示す。ここでも、移動局3−1〜3−nは複数あるが、固定局、移動局へのそれぞれの管理処理方法は同様であるので、それぞれ代表して1台の固定局2、1台の移動局3として説明する。以下の図8、図9においても同様である。
【0029】
まず、管理部1は、管理情報送信要求を固定局2へ送信する(S71)。そして、固定局2は管理情報を受信すると(S72、Yes)、管理情報を記憶部22へ格納する(S73)。上記の処理を固定局2の数だけ繰り返す(S74)。
【0030】
図8、図9に本実施例の管理方法における固定局の処理フローを示す。図8は移動局の管理情報の取得方法の処理を、図9は管理情報を管理部へ送信する処理を、それぞれ示している。
【0031】
図8に示した固定局管理処理1を説明する。固定局2は、まず、移動局3とのリンク確立を監視し(S81)、リンクが確立すると(S82、Yes)、移動局3へ管理情報取得のために、管理情報送信要求を送信し(S82)、移動局3からの管理情報の受信を待つ(S83)。そして、移動局からの管理情報受信後(S83、Yes)、管理情報を記憶部22に格納する(S84)。
【0032】
次に、図9に示した固定局管理処理2について説明する。固定局2は、管理部1からの管理情報送信要求を受信すると(S91、Yes)、移動局3の管理情報を取得済みの場合(S92、Yes)、固定局2の管理情報と移動局3の管理情報情報を多重して(S93)、管理情報を管理部1へ送信する(S94)。
【0033】
図10に本実施例の管理方法における、移動局3の処理フローを示す。移動局3は、まず、固定局2とのリンク確立を監視し(S101)、リンクが確立すると(S101、Yes)、固定局2からの管理情報取得要求のための管理情報送信要求信号の受信を待つ(S102)。そして、管理情報送信要求信号を受信後(S102、Yes)、移動局3の管理情報を固定局2へ送信する(S103)。
【0034】
図11に固定局2が管理部1へ送信する管理情報のフォーマットの例を示す。固定局2を識別するための固定局ID、固定局管理情報と、管理部1からの管理情報取得要求のための管理情報送信要求信号が来る間に、固定局2が移動局3から受信した移動局の管理情報の個数と、その個数分の移動局IDと、移動局管理情報が続く構成となっている。移動局の管理情報としては、例えば、車内で表示する画像や映像情報(映像表示終了、表示映像の変更など)や、車両故障情報(ドアの故障など)である。移動局の管理情報がない場合は、移動局情報個数には0が入り、その後の移動局管理情報は付随しない。
【0035】
このように列車内表示装置を遠隔管理することにより、管理部1は、各固定局2−1〜2−nの情報と、各固定局に蓄積された各移動局3−1〜3−mの管理情報とを得ることができ、複数の固定局、複数の移動局の管理を一括して行うことができる。
以上、好適な実施例について述べたが、本発明は列車内表示装置の遠隔管理の実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、列車内の監視システムなどにも適用できることは勿論である。この場合、列車内の移動局には無線通信部、制御部、記憶部の他に、監視カメラを設置する必要がある。列車内の監視カメラの映像表示データを、移動局の記憶部に蓄積し、列車内での不審な行動、不審物などの映像が蓄積された表示データを駅で停車している間に移動局から固定局へ短時間で送信でき、ネットワークに接続されている固定局から即座に警察へ映像情報を送ることができるので、犯罪防止や、犯人逮捕などに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る遠隔管理システムを列車内表示装置システムに適用した場合の構成図。
【図2】管理部ブロック図。
【図3】固定局ブロック図。
【図4】移動局ブロック図。
【図5A】管理部から移動局へのデータ通信の動作を説明する流れ図。
【図5B】移動局から管理部へのデータ通信の動作を説明する流れ図。
【図6】本発明に基づく遠隔管理方法の動作を説明する流れ図。
【図7】管理部処理フローを示す図。
【図8】固定局処理フロー1を示す図。
【図9】固定局処理フロー2を示す図。
【図10】移動局処理フローを示す図。
【図11】フレーム・フォーマットの例を示す図。
【図12】固定局と移動局の設置例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
1…管理部、2−1〜2−n…固定局、3−1〜3−m…移動局、11…制御部、12…記憶部、13…ネットワーク通信部、14…操作部、15…表示部、21…制御部、22…記憶部、23…ネットワーク通信部、24…無線通信部、31…制御部、32…記憶部、33…無線通信部、34…ネットワーク通信部、26…アンテナ、36…アンテナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理部と、前記管理部に常時接続される少なくとも一つの固定局と、当該固定局の一つと接続される少なくとも一つの移動局とから構成され、少なくとも、前記管理部からの情報を、前記一つの移動局が前記一つの固定局に近接した際、前記一つの固定局を介して前記一つの移動局へ伝送する遠隔管理システムにおいて、
前記固定局と前記移動局との間の情報の伝送をミリ波を利用して行うと共に、少なくとも、前記移動局側には、前記移動局から前記ミリ波を利用して伝送された情報を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする遠隔管理システム。
【請求項1】
管理部と、前記管理部に常時接続される少なくとも一つの固定局と、当該固定局の一つと接続される少なくとも一つの移動局とから構成され、少なくとも、前記管理部からの情報を、前記一つの移動局が前記一つの固定局に近接した際、前記一つの固定局を介して前記一つの移動局へ伝送する遠隔管理システムにおいて、
前記固定局と前記移動局との間の情報の伝送をミリ波を利用して行うと共に、少なくとも、前記移動局側には、前記移動局から前記ミリ波を利用して伝送された情報を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする遠隔管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−91993(P2008−91993A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267324(P2006−267324)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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