説明

遠隔運転及び手動運転併用車

【課題】手動運転から遠隔運転への切替えを迅速に行い、さらに、非常停止要因が存在する場合についても手動運転から遠隔運転への切替えを安全かつ迅速に行うことを可能とした遠隔運転及び手動運転併用車を提供すること。
【解決手段】手動運転及び遠隔運転の切替えが可能な遠隔運転及び手動運転併用車1であって、ハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバーの少なくともいずれか1つを含む操作機器と、操作機器に接続された遠隔運転用アクチュエータ52と、遠隔運転時において、遠隔運転用アクチュエータ52に対して指示を与える制御装置48と、を有し、制御装置48は、切替えの状態に拘らず起動状態を維持しており、手動運転時において、制御装置48から操作機器に向けての指示を遮断する指示遮断装置54を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が搭乗して直接操縦を行う手動運転と、人の搭乗有無に関らず外部からのコマンドにて操縦する遠隔運転の併用が可能な遠隔運転及び手動運転併用車に関する。
【0002】
人が搭乗して直接操縦を行う手動運転と、人の搭乗有無に関らず外部からのコマンドにて操縦する遠隔運転の併用が可能なロボットとして、例えば、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1は、油圧ショベルの制御について、全自動運転、教示操作、遠隔運転について選択可能にすることで、例えば、ブルドーザに乗車したオペレータがブルドーザの操縦をしながら、油圧ショベルも遠隔制御することが可能になるというものである。
【0004】
特許文献1における制御方法として、遠隔及び手動切替えスイッチを手動側に切替え操作を行ったときに、遠隔制御ユニットの電源をOFFにして遠隔コマンドの受信処理が行われないようにしている。そのため、手動操作時において、遠隔コマンド受信によって動作してしまうことを防止している。
また、遠隔運転時において、遠隔側の送受信ユニット内の非常停止スイッチやエンジン停止スイッチ、あるいはロボット側のエンジン停止スイッチ等により、何らかの異常が生じた際にロボットの動作を停止させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許第3286143号「移動式自動砕石プラントおよび自動油圧ショベル」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような遠隔及び手動運転併用ロボットには、人が搭乗して運転可能な場所を走行する際には手動運転を行い、人が搭乗して運転するには危険な場所を走行しなければならない場合には人が下車して遠隔運転を行うものがある。
かかる場合に、時間的に余裕がない状況等においては、上記遠隔及び手動の切替えを連続的に、かつ、即座に行うことが求められるケースが考えられる。
この点において、特許文献1においては、手動運転時においては遠隔制御ユニットの電源がOFFにされていることから、遠隔運転側への切替え操作を行っても、遠隔制御ユニットの立ち上げに時間がかかり、スムーズな移行が難しいという問題点があった。
【0007】
また、特許文献1においては、異常が生じた際にロボットの動作を停止させる機能があるが、その具体的な方法、手順は記載されていない。
特許文献1に記載されている非常停止機能は、遠隔運転時における異常の際の安全装置であるが、この非常停止が入力されたままの状態で、手動運転から遠隔運転側への切替え操作を行った場合、ロボットは即座に非常停止状態に移行する。
この場合、非常停止実施後、再度ロボットを使用できるようにするためには、エンジン再起動等のシステム復帰処理が必要となり、結果として遠隔運転側への迅速な移行が妨げられる可能性がある。
さらに、切替え操作を行ったと同時に非常停止による急制動がかかることになり、搭乗者に対して危険であるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、手動運転から遠隔運転への切替えを迅速に行い、さらに、非常停止要因が存在する場合についても手動運転から遠隔運転への切替えを安全かつ迅速に行うことを可能とした遠隔運転及び手動運転併用車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、手動運転及び遠隔運転の切替えが可能な遠隔運転及び手動運転併用車であって、
ハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバーの少なくともいずれか1つを含む操作機器と、
該操作機器に接続された遠隔運転用アクチュエータと、
前記遠隔運転時において、前記遠隔運転用アクチュエータに対して指示を与える制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記切替えの状態に拘らず起動状態を維持しており、
前記手動運転時において、前記制御装置から前記操作機器に向けての指示を遮断する指示遮断装置を有する、ことを特徴とする遠隔運転及び手動運転併用車が提供される。
【0010】
本発明において、前記指示遮断装置は、バッテリと前記遠隔運転用アクチュエータの中間に存在する操縦権用リレー(接点部)からなり、
前記手動運転時において、前記操縦権用リレー(接点部)が開かれることによって、前記遠隔運転用アクチュエータへの電源供給を遮断する。
【0011】
また、本発明において、前記指示遮断装置は、前記制御装置と前記遠隔運転用アクチュエータの中間に存在する操縦権用リレー(接点部)からなり、
前記手動運転時において、前記操縦権用リレー(接点部)が開かれることによって、前記制御装置から前記遠隔運転用アクチュエータへの指示伝達を遮断する。
【0012】
本発明によると、非常停止要因発生用リレー(コイル部)を有し、
前記手動運転時において、前記非常停止要因発生用リレー(コイル部)が非常停止要因を認識した場合には前記遠隔運転への切替えを不可とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遠隔運転側の切替え時に、制御装置の電源はOFFにされていないので、制御装置の再起動を要さずに連続的な切替えが可能となる。
さらに、手動運転時に遠隔運転用アクチュエータの電源がOFFにされている、または/かつ、遠隔運転用アクチュエータへの指示信号ラインが切断されているので、仮に制御の誤動作が生じた場合においても、遠隔運転用アクチュエータが駆動されることはなく、安全が確保される。
【0014】
また、本発明によれば、非常停止要因が存在する場合には遠隔運転側への切替えが不可であるため、操縦者は速やかに非常停止要因を排除して再度切替え操作を行うことにより、時間のロスを最小限に留め、迅速な切替えが可能となる。
また、切替え操作に伴って急制動がかかることがないため、搭乗者に対して安全である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の遠隔運転及び手動運転併用車の全体図である。
【図2】本発明の主電源系シーケンス図である。
【図3】本発明の制御電源系シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の遠隔運転及び手動運転併用車の全体図である。
この図において、1は遠隔運転及び手動運転併用車、2は無線通信機、3はハンドル、4はハンドル用アクチュエータ、5はアクセル/ブレーキ、6はアクセル/ブレーキ用アクチュエータ、7はシフトレバー、8はシフトレバー用アクチュエータ、9は制御装置、10はタイヤ、11は操縦権切替え用スイッチ(手動)、12は操縦権切替え用スイッチ(遠隔)、13は非常停止状態用スイッチ、14は非常停止状態用アクチュエータである。
【0018】
遠隔運転及び手動運転併用車1は、遠隔運転と手動運転の併用が可能な車のことである。
遠隔運転及び手動運転併用車1は、この例においては車両であるが、車椅子等でもよい。
【0019】
無線通信機2は、遠隔運転時において、遠隔運転場所(図示しない)から指示を受信する。
【0020】
ハンドル用アクチュエータ4、アクセル/ブレーキ用アクチュエータ6、シフトレバー用アクチュエータ8は、遠隔運転時において制御装置9からの指示を受け、ハンドル3、アクセル/ブレーキ5、シフトレバー7の操作を行う。
【0021】
制御装置9は、無線通信機2を通じて、遠隔運転についての指示を遠隔運転場所(図示しない)から受け、各アクチュエータに向けて操作指示を行う。
【0022】
操縦権切替え用スイッチ(手動)11、操縦権切替え用スイッチ(遠隔)12は、手動運転及び遠隔運転の切替えを行う部位であり、操縦者が操縦を行っている際にも押下が可能な場所に設置するのが望ましい。
【0023】
非常停止状態用スイッチ13は、操縦者が非常停止要因を認識した場合に手動で非常停止を行うためのスイッチであり、操縦者が操縦を行っている際にも押下が可能な場所に設置するのが望ましい。
【0024】
非常停止状態用アクチュエータ14は、非常停止状態用スイッチ13が押下された際に、ブレーキ6を操作して遠隔運転及び手動運転併用車1を停止させる。
【0025】
図2は、本発明の主電源系シーケンス図である。
この図において、21は主電源バッテリ、22は主電源系スイッチ、23は主電源バッテリ用リレー(コイル部)、24は操縦権用リレー(接点部)、25は非常停止要因発生用リレー(接点部)、26は非常停止状態用リレー(コイル部)、27は非常停止状態用スイッチ、28は無線非常停止指示用リレー(接点部)、29は非常停止ブレーキ操作用リレー(接点部)、30は制御装置非常停止指示用リレー(接点部)、31は重故障発生用リレー(接点部)、32は非常停止リセット用スイッチ、33は非常停止要因発生用リレー(接点部)、34は非常停止要因発生用リレー(コイル部)、35は非常停止ブレーキ用アクチュエータ、36は非常停止状態用リレー(接点部)、43は操縦権切替え用スイッチ(手動)、44は操縦権切替え用スイッチ(遠隔)、45は非常停止要因発生用リレー(接点部)、46は操縦権用リレー(接点部)、47は操縦権用リレー(コイル部)、である。
図3は、本発明の制御電源系シーケンス図である。
この図において、41は制御電源バッテリ、42は制御電源系スイッチ、48は制御装置、49は操縦権用リレー(接点部)、50は操縦権用リレー(接点部)、51は非常停止状態用リレー(接点部)、52は遠隔運転用アクチュエータ、53は信号ライン、54は指示遮断装置である。
【0026】
主電源バッテリ21は、例えば、車両の既設バッテリを用いることを想定しており、オルタネータ等により常時充電が可能で、手動運転時、遠隔運転時に関らず、常にONにされていることを想定している。
【0027】
主電源系スイッチ22は、手動スイッチであり、主電源バッテリ21より供給する電源のON/OFFの切替えを行うためのスイッチである。
【0028】
主電源バッテリ用リレー(コイル部)23は、主電源系スイッチ22がONになっている場合、主電源バッテリ用リレー(コイル部)23に電流が流れるために、ONの状態なる。
【0029】
操縦権用リレー(接点部)24は、操縦権用リレー(コイル部)47がONになっている場合(遠隔運転が行われている状態の場合)には、ONの状態になり、操縦権用リレー(コイル部)47がOFFになっている場合(手動運転が行われている状態の場合)には、OFFの状態になる。
【0030】
非常停止要因発生用リレー(接点部)25は、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がONになっている場合(非常停止要因が存在している場合)には、OFFの状態になり、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がOFFになっている場合(非常停止要因が存在していない場合)には、ONの状態になる。
【0031】
非常停止状態用リレー(コイル部)26は、操縦権用リレー(接点部)24がONになっている場合、かつ、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がONになっている場合(非常停止要因発生用リレー(接点部)25がOFFになっている場合)には、非常停止状態用リレー(コイル部)26には電流が流れるために、ONの状態になる。
この場合、非常停止状態用リレー(接点部)36がONになるため、非常停止ブレーキ用アクチュエータ35は作動することになる。
この仕組みによって、遠隔運転時であって、かつ、非常停止要因が存在している場合には、非常停止が行われることになる。
一方、手動運転時には、非常停止要因の有無に関らず、非常停止は行われないことになる。
さらに、非常停止状態用リレー(接点部)51がONになるため、遠隔運転用アクチュエータ52の動力電源は遮断されることになる。
【0032】
非常停止状態用スイッチ27は、例えば、操縦席のように装置内部に設置されており、操縦席いた人が非常停止要因発生を検知した場合に、手動で非常停止要因発生用リレー(コイル部)34をONにするためのものである。
【0033】
無線非常停止指示用リレー(接点部)28は、無線非常停止指示用リレー(コイル部)(図示しない)が遠隔地からの非常停止指示を無線によって受信することによってONになった場合に、OFFになるものである。
【0034】
非常停止ブレーキ操作用リレー(接点部)29は、非常停止ブレーキ用リレー(コイル部)(図示しない)がONになった場合に、OFFになるものである。
【0035】
制御装置非常停止指示用リレー(接点部)30は、制御装置非常停止指示用リレー(コイル部)(図示しない)が制御装置48からの信号を受信してONになった場合に、OFFになるものである。
【0036】
重故障発生用リレー(接点部)31は、重故障発生用リレー(コイル部)(図示しない)が装置内部に備え付けられているウォッチドックタイマや電圧センサ等からの信号を受信してONになった場合に、OFFになるものである。
【0037】
非常停止リセット用スイッチ32は、自動復帰型のスイッチであり、非常停止要因の発生条件が全て解除されているときに押されると、非常停止要因発生を排除する。
通常、操縦席の乗員が操作可能な場所に設置される。
【0038】
非常停止要因発生用リレー(接点部)33は、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がONになっている場合(非常停止要因が存在している場合)には、OFFの状態になり、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がOFFになっている場合(非常停止要因が存在していない場合)には、ONの状態になる。
【0039】
非常停止要因発生用リレー(コイル部)34は、非常停止状態用スイッチ27、無線非常停止指示用リレー(接点部)28、非常停止ブレーキ操作用リレー(接点部)29、制御装置非常停止指示用リレー(接点部)30、重故障発生用リレー(接点部)31のいずれかがOFFになった場合に、ONになる。
また、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34が一度ONになると、上記条件の全てが解除されても、非常停止リセット用スイッチ32が押されるまでその状態は維持される。
【0040】
非常停止ブレーキ用アクチュエータ35は、非常停止状態用リレー(接点部)36がOFFのときに、ブレーキを踏み込んだ位置(装置を停止させる位置)に維持する。
【0041】
非常停止状態用リレー(接点部)36は、非常停止状態用リレー(コイル部)26がONになった場合に、ONになる。
【0042】
操縦権切替え用スイッチ(手動)43は、操縦権を「手動」に切替え得る自動復帰型の手動スイッチであり、操縦席の乗員が操作可能な場所に設置されるのが好ましい。
【0043】
操縦権切替え用スイッチ(遠隔)44は、操縦権を「遠隔」に切替え得る自動復帰型の手動スイッチであり、操縦席の乗員が操作可能な場所に設置されるのが好ましい。
【0044】
非常停止要因発生用リレー(接点部)45は、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がONになっている場合(非常停止要因が存在している場合)には、OFFの状態になり、非常停止要因発生用リレー(コイル部)34がOFFになっている場合(非常停止要因が存在していない場合)には、ONの状態になる。
【0045】
操縦権用リレー(接点部)46は、操縦権用リレー(コイル部)47がONになっている場合(遠隔運転が行われている状態の場合)には、ONの状態になり、操縦権用リレー(コイル部)47がOFFになっている場合(手動運転が行われている状態の場合)には、OFFの状態になる。
【0046】
操縦権用リレー(コイル部)47は、非常停止要因発生リレー(接点部)45がONになっている場合、かつ、操縦権切替え用スイッチ(遠隔)44がONになっている場合には、操縦権用リレー(コイル部)47に電流が流れるため、ONの状態になる。
さらに、操縦権用リレー(コイル部)47は、操縦権用リレー(接点部)46がONのときに、操縦権切替え用スイッチ(手動)43がONになると、OFFの状態になる。
この仕組みによって、操縦権用リレー(接点部)46がONのときに、非常停止要因発生用リレー(接点部)45がONになっても、操縦権用リレー(コイル部)47はONの状態が維持されるようになっている。
よって、手動運転時においても非常停止要因の発生有無を認識し、非常停止要因がある場合には遠隔運転側への切替えができないようになっている。
そのため、非常停止要因が存在する場合は、遠隔運転側への切替えが不可であるため、操縦者は速やかに非常停止要因を排除して再度切替え操作を行うことにより、時間のロスを最小限に留め、迅速な切替えが可能となる。
また、切替え操作に伴って急制動がかかることが無いため、搭乗者に対して安全である。
【0047】
制御電源バッテリ41は、遠隔運転を行う際に必要な機器(制御装置48や遠隔運転用アクチュエータ52)に電力を供給するものであり、手動運転のみ行うことが明らかな場合にはOFFにしていてもよい。
また、制御電源バッテリ41は必ずしも装置の走行中に充電がなされることを前提としていない。このため、装置の走行中に制御電源バッテリ41の枯渇に伴う電圧低下が生じた場合に、確実に非常停止が行われる必要があることから、非常停止ブレーキ用アクチュエータ35等の非常停止関連機器及び回路は主電源系に配置されている。
【0048】
制御電源系スイッチ42は、制御電源系バッテリより供給する制御電源のON/OFF用保持型手動スイッチである。
【0049】
制御装置48は、遠隔運転時において、遠隔運転用アクチュエータ52に向けて指示を行う。また、手動運転時においても起動状態が維持される。
【0050】
操縦権用リレー(接点部)49は、操縦権用リレー(コイル部)47がONになっている場合(遠隔運転が行われている状態の場合)には、ONの状態になり、操縦権用リレー(コイル部)47がOFFになっている場合(手動運転が行われている状態の場合)には、OFFの状態になる。
この仕組みによって、遠隔運転時には制御装置48から遠隔運転用アクチュエータ52への指示信号ライン53が切断される。
そのため、手動運転時において、仮に制御装置48に誤作動が生じたとしても遠隔運転用アクチュエータ52が駆動されることなく、安全が確保される。
【0051】
操縦権用リレー(接点部)50は、操縦権用リレー(コイル部)47がONになっている場合(遠隔運転が行われている状態の場合)には、ONの状態になり、操縦権用リレー(コイル部)47がOFFになっている場合(手動運転が行われている状態の場合)には、OFFの状態になる。
この仕組みによって、遠隔運転時には制御電源バッテリ41から遠隔運転用アクチュエータ52へ電源供給が停止されるため、遠隔運転用アクチュエータ52の起動は停止される。
そのため、手動運転時において、仮に制御装置48に誤作動が生じたとしても遠隔運転用アクチュエータ52が駆動されることなく、安全が確保される。
【0052】
非常停止状態用リレー(接点部)51は、非常停止状態用リレー(コイル部)26がONになった場合に、ONになる。
この仕組みによって、非常停止状態の場合には、手動運転時又は遠隔運転時のいずれかであるかにかかわらず、制御電源バッテリ41から遠隔運転用アクチュエータ52へ電源供給が停止されるため、遠隔運転用アクチュエータ52の起動は停止される。
そのため、非常停止状態時において、仮に制御装置48に誤作動が生じたとしても遠隔運転用アクチュエータ52が駆動されることなく、安全が確保される。
【0053】
遠隔運転用アクチュエータ52は、アクセル、ブレーキ、シフトレバーを含む操作機器に接続されており、遠隔運転による指示を受けて、各操作機器を操縦する機器である。
【0054】
信号ライン53は、制御装置48からの遠隔運転指示を遠隔運転用アクチュエータ52に送信する回線である。
【0055】
指示遮断装置54は、手動運転時において、操縦権用リレー(接点部)49又は/かつ操縦権用リレー(接点部)50によって、遠隔運転用アクチュエータ52の電源を停止する又は/かつ遠隔運転用アクチュエータ52への指示信号ライン53を切断する。
この例において、指示遮断装置54は、操縦権用リレー(接点部)49と操縦権用リレー(接点部)50からなっており、手動運転時には、操縦権用リレー(接点部)49と操縦権用リレー(接点部)50の両方が開かれるため、必然的に遠隔運転用アクチュエータ52の電源を停止する及び遠隔運転用アクチュエータ52への指示信号ライン53の切断を同時に行うことになっているが、いずれかのみを実施する構造にしてもよい。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
特に図2、図3においては、リレーに代表される有接点論理回路を用いた有接点シーケンス制御にて説明しているが、IC等の無接点論理回路を用いて無接点シーケンス制御を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 遠隔運転及び手動運転併用車、2 無線通信機、3 ハンドル、
4 ハンドル用アクチュエータ、5 アクセル/ブレーキ、
6 アクセル/ブレーキ用アクチュエータ、7 シフトレバー、
8 シフトレバー用アクチュエータ、9 制御装置、10 タイヤ、
11 操縦権切替え用スイッチ(手動)、
12 操縦権切替え用スイッチ(遠隔)、
13 非常停止状態用スイッチ、
14 非常停止状態用アクチュエータ、
21 主電源バッテリ、22 主電源系スイッチ、
23 主電源バッテリ用リレー(コイル部)、24 操縦権用リレー(接点部)、
25 非常停止要因発生用リレー(接点部)、
26 非常停止状態用リレー(コイル部)、
27 非常停止状態用スイッチ、
28 無線非常停止指示用リレー(接点部)、
29 非常停止ブレーキ操作用リレー(接点部)、
30 制御装置非常停止指示用リレー(接点部)、
31 重故障発生用リレー(接点部)、32 非常停止リセット用スイッチ、
33 非常停止要因発生用リレー(接点部)、
34 非常停止要因発生用リレー(コイル部)、
35 非常停止ブレーキ用アクチュエータ、
36 非常停止状態用リレー(接点部)、
41 制御電源バッテリ、42 制御電源系スイッチ、
43 操縦権切替え用スイッチ(手動)、44 操縦権切替え用スイッチ(遠隔)、
45 非常停止要因発生用リレー(接点部)、46 操縦権用リレー(接点部)、
47 操縦権用リレー(コイル部)、48 制御装置、
49 操縦権用リレー(接点部)、50 操縦権用リレー(接点部)、
51 非常停止状態用リレー(接点部)、52 遠隔運転用アクチュエータ、
53 信号ライン、54 指示遮断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動運転及び遠隔運転の切替えが可能な遠隔運転及び手動運転併用車であって、
ハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバーの少なくともいずれか1つを含む操作機器と、
該操作機器に接続された遠隔運転用アクチュエータと、
前記遠隔運転時において、前記遠隔運転用アクチュエータに対して指示を与える制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記切替えの状態に拘らず起動状態を維持しており、
前記手動運転時において、前記制御装置から前記操作機器に向けての指示を遮断する指示遮断装置を有する、ことを特徴とする遠隔運転及び手動運転併用車。
【請求項2】
前記指示遮断装置は、バッテリと前記遠隔運転用アクチュエータの中間に存在する操縦権用リレー(接点部)からなり、
前記手動運転時において、前記操縦権用リレー(接点部)が開かれることによって、前記遠隔運転用アクチュエータへの電源供給を遮断する、ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔運転及び手動運転併用車。
【請求項3】
前記指示遮断装置は、前記制御装置と前記遠隔運転用アクチュエータの中間に存在する操縦権用リレー(接点部)からなり、
前記手動運転時において、前記操縦権用リレー(接点部)が開かれることによって、前記制御装置から前記遠隔運転用アクチュエータへの指示伝達を遮断する、ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔運転及び手動運転併用車。
【請求項4】
請求項1に記載の遠隔運転及び手動運転併用車であって、
非常停止要因発生用リレー(コイル部)を有し、
前記手動運転時において、前記非常停止要因発生用リレー(コイル部)が非常停止要因を認識した場合には前記遠隔運転への切替えを不可とする、ことを特徴とする遠隔運転及び手動運転併用車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−255757(P2011−255757A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130973(P2010−130973)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)