説明

適合可能なスライスレベルを使用したテレビジョン信号からのデータ抽出

【課題】テレビジョン信号から、テレテキスト又はクローズドキャプションデータ等のデータをスライシングによって抽出する。
【解決手段】テレビジョン信号レベルがスライスレベルを上回るか又は下回るかに応じてバイナリデータ信号を形成する。スライスレベルは、中間レベルに対して±振幅値に等しい信号値を有し且つテレビジョン信号がスライスレベルと交差する時点においてこれらの信号値間の移行を伴う再構成データ信号を規定することにより選択する。再構成データ信号が差し引かれたテレビジョン信号を含む補助信号が形成される。補助信号中の残余データ信号振幅をゼロに調整するように振幅値を適合させるフィードバックループが設けられる。スライスレベルは、テレビジョン信号との間の差から決定される。テレビジョン信号から、テレテキスト又はクローズドキャプションデータ等のデータがスライシングによって抽出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン信号受信装置に関し、特に、例えばクローズドキャプション又はテレテキストのためのアナログテレビジョン信号中の符号化されたデジタルデータを再生するスライサに関する。また、本発明は、テレビジョン信号を受信する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばテレテキスト及びクローズドキャプションのために、アナログテレビジョン信号中にデジタルデータを含ませることは良く知られている。テレビジョン信号の残部を受信可能なままとするために、デジタルデータ信号は、通常はテレビジョン信号中でビデオ画像情報を規定する信号レベルの範囲内の選択された信号レベルをとる。概して、デジタルデータ信号は、垂直帰線消去期間(VBI)の一部である水平テレビジョンライン周期中に含められる。デジタルデータは、通常は(VBI外)ビデオピクセル情報が含められる水平線周期の一部に含められる。ここで、デジタルデータ信号は、ビデオ情報に対して課される制約を満たす。即ち、デジタルデータ信号の振れは、「ブラックレベル」(テレビジョン信号のゼロレベルを上回る、ビデオデータにおいて最も低い許容できるレベル)からピークホワイトレベルを下回るレベルへ到達する。このようにして、デジタルデータ信号がビデオ処理回路を妨害しないようにする。
【0003】
デジタルデータは、デジタルデータ信号を含むテレビジョン信号の一部をスライスレベルと比較することによりテレビジョン信号から再生される。テレビジョン信号のレベルがスライスレベルを上回っているのか又は下回っているのかに応じて、論理1又は論理0が再生される。最適な検出結果のため、スライスレベルは、データ信号レベルの最大値と最小値との間になければならない。即ち、テレビジョン信号の「ゼロ」レベルを上回る選択されたレベルになければならない。
【0004】
このスライスレベルの適切な選択は、テレビ受信器において問題を与える。これは、選択が同一チャンネル干渉、予測できない電圧オフセット、エコー、ノイズ等の要因に起因するテレビジョン信号の偏りに影響されるからである。スライスレベルを選択するための様々な技術が提案されてきている。
【0005】
一つの技術対策は、デジタルデータ信号のために使用される信号レベルに対して既知の信号レベルを有するテレビジョン信号の二つの部分の信号レベルを測定するとともに、これらの測定された信号レベルからスライスレベルを得る。例えば、米国特許出願公開第2002/0129380号公報(特許文献1)は、テレビジョン信号のクロックランイン(CRI:Clock Run In)部分(CRIは、水平線においては実際のデジタルデータ信号に先行する)の間に、テレビジョン信号の最大レベル及び最小レベルの検出を示している。この場合、スライスレベルは、最大レベルと最小レベルとの平均から計算される。他の実施態様は、水平線の開始時にテレビジョン信号ペデスタルの信号レベルを使用し、CRI中に最大信号レベルを使用する。また、欧州特許出願第1379086号(特許文献2)は、CRI部分の最小値及び最大値からスライスレベルを得る。欧州特許出願第1379086号(特許文献2)は、最小値及び最大値が同一チャンネル干渉やノイズ等の要因によって影響される可能性があることを認識している。欧州特許出願第1379086号(特許文献2)は、エラー検出結果に基づいた、特定の基準を満たさない最小値及び最大値の除去、又は、並行して使用される多数のスライスレベルからのスライスレベルの選択等の解決策を提案している。しかしながら、依然として妨害に影響されやすい。
【0006】
他の技術対策は、デジタルデータ信号の可変部分が除去された後に残るテレビジョン信号のデジタルデータ信号部分の平均レベルから基本的にスライスレベルを決定する。例えば、英国特許第GB2048618号(特許文献3)は、検出されたデータが論理ハイのときに信号レベル「A」を有し且つ検出されたデータが論理ローのときに信号レベル「−A」を有する再構成データ信号を使用してスライスレベルが定められる技術について記載している。この場合、Aは、データ信号振れの推定振幅である。再構成データ信号は、入力されるデジタルデータ信号から差し引かれる。結果として得られる差分信号は、デジタルデータ信号の論理ハイ及び論理ローにおける信号レベル間の中間の入力信号のレベルに対応している。この差分信号の時間平均は、スライスレベルとして使用することができる。英国特許第GB2048618号(特許文献3)において、この差は時間の関数として積算され、また、フィードバックループ内でスライスレベルを調整するために被積分関数が使用される。
【0007】
この種の技術においては、データ信号振れの振幅の評価が必要とされる。英国特許第GB2048618号(特許文献3)は、この振幅をクロックランイン(CRI)周期中にテレビジョン信号のブラックレベル(データ信号の開始前に信号から得られる)及び平均信号レベルから評価できる方法について記載している。従って、この技術もテレビジョン信号における所定の位置での信号レベルの測定に依存している。その結果、振幅評価は、CRI周期中に最小値及び最大値の平均からスライスレベルを直接に決定する際と同じ問題を伴う。即ち、同一チャンネル干渉等に起因してエラーが生じる。
【0008】
英国特許第GB2232856号(特許文献4)は、振幅を決定するための改良された技術について記載している。振幅を設定するためにテレビジョン信号の絶対値(即ち、信号がプラスの場合には+信号、信号がマイナスの場合には−信号)が使用される。しかしながら、この解決策は、依然として、予測できないオフセット電圧及び同一チャンネル干渉等のエラーに影響されやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0129380号公報
【特許文献2】欧州特許出願第1379086号
【特許文献3】英国特許第GB2048618号
【特許文献4】英国特許第GB2232856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に、本発明の目的は、テレビジョン信号を処理する方法であって、妨害要因の影響を受け難いデータスライスレベルが使用される方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る装置が請求項1に記載されている。スライスレベルを決定する目的で、再構成データ信号を規定するために、振幅値が使用される(規定された再構成データ信号は、明示的に生成されてもよく、又は、スライスレベル決定の一環として暗示的に使用されてもよい。)。本発明において、振幅値は、補助信号における残余データ信号振幅をゼロに調整するフィードバックループにおいて選択される。補助信号は、再構成データ信号をテレビジョン信号から差し引くことにより得られる。残余データ信号振幅は、同期検出によって決定されてもよく、例えばテレビジョン信号がスライスレベルと交差するときに符号を変える信号を補助信号に掛け合わせることにより決定されてもよい。本発明は、時間連続フィードバックループ又は時間離散フィードバックループ又はこれらのループの組み合わせを使用して実施されてもよい。好ましくは、積算フィードバックを伴うフィードバックループは、振幅値を調整するために使用される。これは、テレビジョン信号において適当に機能することが判明している。しかしながら、別の方法として、他のタイプのフィードバックフィルタ、例えば残余データ信号振幅の振幅を時間平均するローパスフィルタが使用されてもよい。
【0012】
実施の一形態においては、データ信号を含む水平テレビジョン信号ラインの少なくとも一部にわたって残余振幅が積算され又は平均化された後に上記水平テレビジョン信号ラインごとに1回その振幅値を更新するフィードバックループが使用される。振幅値は、ラインのデータ部分を積算する若しくは平均化するときに若しくはその終了付近において、又は、ラインの後半において更新されることが好ましい。
【0013】
実施の一形態において、減算回路は、スライスレベル及び再構成データ信号の両方をテレビジョン信号から差し引くことにより補助信号を形成するように構成されている。このようにすると、振幅選択の選択に対するテレビジョン信号の中間レベル変化の影響がほぼ排除される。これは、妨害に対するスライシングのロバスト性を増大させることが判明している。補助信号は、補助信号が平均してゼロになるようにスライスレベルを調整するために第2のフィードバックループにおいて使用されることが好ましい。従って、それぞれのフィードバックループにおいてスライスレベル及び振幅値の両方を調整するために同じ補助信号が使用され、それにより、妨害に対するロバスト性が高まる。
【0014】
図面に示される非限定的な実施の形態を使用して、本発明のこれらの目的及び他の目的並びに有利な態様について更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】データスライス回路を有するテレビ受信器を示している。
【図2】テレビジョン信号の一部を示している。
【図3】スライスレベル選択回路を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、データスライス回路を有するテレビ受信器を示している。テレビ受信器は、受信回路10と、ビデオ処理回路12と、データ抽出回路14と、ビデオ修正回路16と、表示装置18とを含んでいる。受信回路10は、例えばアンテナ(図示せず)又はケーブルネットワーク(図示せず)からテレビジョン信号を受け取るための入力を有している。受信回路10は、ビデオ処理回路12及びデータ抽出回路14に結合された出力を有している(受信回路10は、通常、音声処理回路(図示せず)に結合された更なる出力を有しているが、これは本発明においては関係がない。)。ビデオ処理回路12及びデータ抽出回路14はビデオ修正回路16に結合されており、ビデオ修正回路16は表示装置18に結合された出力を有している。
【0017】
動作において、受信回路10は、テレビジョン信号を受け取るとともに、この信号をテレビジョン信号のビデオ部分に相当するサンプル値のストリームに変換する。ビデオ処理回路12は、サンプル値を処理して、ビデオ出力信号を形成する。データ抽出回路14は、サンプル値を処理して、例えばテレテキスト及び/又はクローズドキャプションのためのテレビジョン信号中の符号化されたデジタルデータを抽出する。ビデオ修正回路16は、抽出されたデータを使用して、視覚情報をビデオ信号に対して加え、又は、ビデオ信号の一部若しくは全体をそのような視覚情報と完全に置き換える。
【0018】
図2は、受信回路10によって生成されるサンプルによって表されるテレビジョン信号の一部を概略的に示している。この信号は、水平線周期に対応している。信号は、水平同期パルスHSと、カラーバーストCBと、クロックランイン信号CRIと、データ信号DSとを連続的に含んでいる。クロックランイン信号CRI及びデータ信号DSは、ブラックレベルBよりも上側のテレビジョン信号のこれらの部分の信号レベル変化を包含(包絡)するボックスによって示されている。一般に、CRIは、所定の周波数及び振幅の一連の振動を含んでおり、また、データ信号DSは、同じ振幅のデータ依存レベル変化を含んでいる。
【0019】
ここで、データ抽出に関連する信号処理について更に詳しく説明する。説明のため、相互に接続された回路素子がそれぞれの機能を果たして関連する信号をやりとりする実施の形態が示されている。しかしながら、実際には、機能の多くが、これらの機能を実現するのに適したプログラムの制御の下で、単一の信号処理回路によって果たされてもよいことは認識されるべきである。
【0020】
図示の実施の形態のデータ抽出回路14は、連続的に直列に接続されたフィルタ140とスライサ142と補間器149とを含んでいる。また、データ抽出回路14は、スライサ142に結合された振幅推定器144を含んでいる。スライサ142と補間器149の制御入力との間にはゼロ交差検出器146とビット同期器148とが直列に結合されている。動作において、フィルタ140は、ビデオ信号をローパスフィルタ処理する。スライサは、フィルタ処理された信号がスライスレベルを上回っているか又は下回っているかどうかを決定して、対応するスライス出力信号を生成する。ゼロ交差検出器146及びビット同期器148は、ビット情報がスライス出力信号中に位置付けられているかどうかを決定する。それに応じて、補間器149は、ビット情報をスライス出力信号から抽出する。フィルタ140、ゼロ交差検出器146、ビット同期器148、補間器149の実装は、それ自体知られている。これらの要素は、それぞれ別個の回路として設けられてもよいが、他の方法として、要素の一部又は総ての機能が、対応する機能を果たすようにプログラムされた単一のプロセッサ回路によって実行されてもよい。
【0021】
図3は、スライスレベル選択回路を示している。回路は、第1の減算器31と第2の減算器32と積算器33とを有するスライスレベル選択ループ30を含んでいる。第1の減算器31は、フィルタ140(図示せず)からテレビジョン信号Viを受け取るとともに、テレビジョン信号Viと第1の減算器31がスライスレベル入力において積算器33から受け取るスライスレベルSとの間の差を示す出力信号Voを生成する。
Vo=Vi−S
【0022】
第2の減算器32は、出力信号Voを受け取るとともに、再構成されたデータ信号D(以下で更に説明する。)を上記出力信号から差し引いて、結果として得られる差分出力信号Rを生成する。
R=Vo−D
【0023】
理想的には、スライスレベルSが正確な値を有し且つ再構成データ信号Dが正確であれば、第2の減算器32からの結果として得られる差分出力信号Rはゼロ平均値を有する。積算器33は、結果として得られる差分出力信号Rを積算して、積算結果Sを第1の減算器31のスライスレベル入力に対して供給する。ループは、スライスレベルSがその正確な値を上回っている場合又は下回っている場合のそれぞれにおいて積算結果をそれぞれ下げ又は上げるようになっている。従って、スライスレベルSは、フィードバックループで設定される。
【0024】
一般に、このループは、少なくともテレビジョン信号Viのデータ部分DSの処理中に起動される。任意的には、ループは、クロックランイン部分CRIの処理中にも起動される。従って、CRI部分におけるテレビジョン信号Viは、データ部分DSの開始前に水平線におけるスライスレベルSを初期化するために使用される。これは、テレビジョン信号のCRI部分がViとして印加されるときに図3の回路が動作することができるようにすることによって簡単に実現され得る。任意的に、再構成データ信号Dは、一定のゼロレベル信号D′=0に取って代えられる。即ち、再構成移行を伴わない。その場合、スライスレベルは、第1の減算器31と積算器33とからなるフィードバックループにより効果的に調整される。この場合には、スライスレベルを中心に対称であることが知られている所定の形状をCRI信号が有しているため、切り換え基準信号Dは不要である。
【0025】
また、図3は、第2の減算器32が第1の減算器31の出力信号Voから差し引く再構成データ信号Dを生成するための回路も示している。再構成データ信号を生成するための回路は、残余信号整流器34と、更なる積算器36と、サブサンプリング回路37と、トグル回路38とを、テレビジョン信号におけるデータ信号振れの振幅を設定する機能を果たす更なるフィードバックループに含んでいる。残余信号整流器34は、第2の減算器32の出力信号をデータ入力において受け取るとともに、第1の減算器の出力信号を制御入力において受け取る。更なる積算器36は、残余信号整流器34の出力信号を受け取る。
【0026】
トグル回路38は、第2の積算器36の出力信号をサブサンプリング回路37を介して受け取る。トグル回路38は、第2の減算器32による減算のための再構成データ信号Dを生成する。トグル回路38は、テレビジョン信号がスライスレベルを上回っているか又は下回っているかをそれぞれ第1の減算器31の出力信号が示しているかどうかに応じて、データ信号振れの振幅を表す入力信号Aを受け取るとともに、受け取った振幅又は受け取った振幅のマイナス値に等しい出力信号値Dを出力する。
D=A×sign(Vo)
【0027】
(この場合、信号Dの中間レベルはゼロに等しいが、フィードバックループが使用されるため、異なる中間レベルが動作に著しい影響を与えないことは理解されるべきである。)。残余信号整流器34は、第2の減算器32からの差分出力信号Rにおけるデータ関連の信号変化の振幅を検出する。これは、例えば、テレビジョン信号がスライスレベルを上回っているか又は下回っているかをそれぞれ第1の減算器31の出力信号が示しているかどうかに応じてこの差分出力信号に±1を掛けることによって行われる。この場合、残余信号整流器34の出力信号Cは、
C=R×sign(Vo)に等しい。
【0028】
理想的には、再構成データ信号Dにおいて正確な振幅信号が使用されると、第1の減算器31の出力信号Rは、平均して残余データ関連の信号振れを含まない。その結果、残余信号整流器34は、この場合、平均ゼロ信号Cを出力する。しかしながら、再構成データ信号Dの振幅とVoにおける実際のデータ信号の振幅との間にずれが存在する場合、残余信号整流器34は、その平均が誤差に比例する結果Cを出力する。
【0029】
更なる積算器36は、残余信号整流器34の出力信号Cを積算して、振幅を表す信号Aをトグル回路38に対して出力する。サブサンプリング回路37は、データ信号を含む水平テレビジョンラインのデータ部分が終わるたびに更なる積算器36の出力をサンプリングする。振幅Aがテレビジョン信号Viの振幅に対応すると、更なる積算器36の出力信号Aが変化しないように残余信号整流器34の平均出力信号がゼロとなる。残余信号整流器34、更なる積算器36、サブサンプリング回路37、トグル回路38、第2の減算器32を含むフィードバックループは、過小又は過大な再構成データ信号が第2の減算器32によって差し引かれる場合に、更なる積算器36の出力信号Aをそれぞれ増加又は減少させるように構成されている。
【0030】
このように、実際のテレビジョン入力信号Viのデータ部分を使用して振幅を制御することにより、再構成データ信号の振幅Aがフィードバックループにおいて制御される。振幅のフィードバック制御を多くの異なる方法で実現できることは認識されるべきである。例えば、データ部分DSの終わりでのみ更なる積算器36の出力をサブサンプリングするのではなく、サブサンプリング回路37は、データ部分DSの終了前(例えば、データ部分DSの後半の間のどこか)においてサンプリングするように構成されていてもよく、又は、データ部分Dの間の複数の時点において、例えばテレビジョン信号Viのサンプルがデータ部分Dにおいて又はCRI部分においても利用可能な総ての時点において、出力をサンプリングするように構成されていてもよい。
【0031】
他の実施の形態として、トグル回路38と第2の減算器との間にローパスフィルタを挿入し、再構成データ信号Dを第2の減算器32に対して印加する前にテレビジョン信号Viが受け取ったのと同じタイプのフィルタリングを適用してもよい。これにより、データ信号の再構成が向上し、実際のデータ信号と再構成データ信号との間のスライスレベルからの高い周波数ずれを平均化する必要性が減少する。
【0032】
基準信号をD′=0にすることにより水平線のクロックランイン部分CRIの間に、スライスレベルSが初期化される場合、出力信号Aの調整は、CRI信号が受け取られる間に無効にされる。
【0033】
典型的には、様々な信号の計算は、サンプリングされた信号値を使用して時間離散態様で行われる。この場合、積算器36により行われる積算は、以下のような総和に対応している。
=Ai−1+係数×C
【0034】
ここで、添字iは、連続するサンプルを識別する。係数は、ループ帯域幅を設定するために選択されてもよい。サブサンプリング回路がデータ部分の終わりにおいてサンプリングする実施の形態の場合、ループ帯域幅は、テレビ回路のフレーム周波数をはるかに下回るように設定される。このようにすると、一時的な摂動に対して感度の低い振幅が得られる。データ部分Dの間に、複数のサンプルが取得される場合、ループ帯域幅は、テレビジョン信号Viにおける異なるデータ信号レベル間の変化の速度において生じる効果がフィルタ除去されるように設定されることが好ましい。
【0035】
積算器の代わりに、例えばローパスフィルタと増幅器との直列配置等の異なるフィードバック要素を使用し、それにより、比例非積算フィードバックループが実現されてもよい。あるいは、積算と比例フィードバックとの組み合わせが使用されてもよい。様々な方法で残余信号振幅を検出することもでき、例えば、データ信号Voの符号との乗算の代わりに、インバータを使用して逆信号「−C」を生成してもよく、また、マルチプレクサを加えて、信号C又は逆信号−Cを積算器36の入力に対して供給してもよい。信号Cを決定するためにVoの符号との乗算を行う代わりに、Vo自体との乗算等、Voの他の関数との乗算が使用されてもよい。また、デジタル時間離散フィードバックループが好ましいが、他の方法として、時間連続フィードバックループが使用されてもよい。
【0036】
任意のこれらの方法において、再構成データ信号の振幅Aは、実際のテレビジョン入力信号Viのデータ部分を使用して振幅を制御することにより、フィードバックループにおいて制御される。フィードバックループの動作中、振幅選択は、データ部分の外側のテレビジョン信号Viの所定の場所における信号レベルに依存しないことが好ましい。無論、そのような所定の場所における信号レベルは、更なる積算器36(及び/又は積算器33)の出力を初期化するために使用されてもよい。あるいは、標準的な初期値が使用されてもよく、又は、テレビジョン信号における前の水平線から保持された値が初期化のために使用されてもよい。
【0037】
また、図3は、フィードバックループの動作の実施の形態の機能的関係を示しているが、他の実施の形態も存在し、そのような他の実施の形態においては、機能の異なる配置が使用されてもよいことは認識されるべきである。例えば、トグル回路38は、第2の減算器32を実装する集積回路であってもよい。他の実施の形態として、スライス信号を形成し且つ振幅を決定するための別個の回路が使用されてもよく、即ち、スライスレベルSをテレビジョン信号から差し引いてデータ抽出中に使用するために、第1の減算器と並列に別個の減算回路が設けられてもよい。この場合、第2の減算器32が第1の減算器31の前に位置され、それにより、第1の減算器31がVi−ADを受け取ってVi−AD−Sを第1の積算器33及び残余信号整流器34に対して出力するようにしてもよい。また、図3の要素の機能は、対応する機能を果たすようにプログラムされる一つ以上のプログラマブル信号プロセッサ回路により果たされてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…受信回路、12…ビデオ処理回路、14…データ抽出回路、16…ビデオ修正回路、18…表示装置、30…スライスレベル選択ループ、31、32…減算器、33…積算器、34…残余信号整流器、36…積算器、37…サブサンプリング回路、38…トグル回路、140…フィルタ、142…スライサ、144…振幅推定器、146…ゼロ交差検出器、148…ビット同期器、149…補間器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビジョン信号を受け取るための受信回路と、
テレビジョン信号レベルがスライスレベルを上回るか又は下回るかに依存するバイナリデータ信号を形成するためのデータ信号スライス回路と、
テレビジョン信号と再構成データ信号との間の差から選択スライスレベルを選択するためのスライスレベル選択回路と、
を備え、
前記スライスレベル選択回路は、
前記再構成データ信号を規定するためのデータ信号再構成回路であって、前記再構成データ信号は、ある中間レベル±振幅値に等しい信号値を有し且つ前記テレビジョン信号が前記スライスレベルと交差する時点においてこれらの信号値間の移行を伴う信号である、データ信号再構成回路と、
前記再構成データ信号が差し引かれたテレビジョン信号を含む補助信号を形成するための減算回路と、
前記補助信号中の残余データ信号振幅をゼロに調整するように前記振幅値を適合させるように構成されているフィードバックループと、
を備えているテレビジョン信号受信装置。
【請求項2】
前記フィードバックループは、データ信号を含む前記テレビジョン信号の部分から得る前記補助信号の少なくとも一部の間に時間の関数として前記残余データ信号振幅を積算するための積算器を含んでいる、請求項1に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項3】
データ信号を含む水平テレビジョンラインごとに1回、前記フィードバックループにおける前記振幅値を適合させるように構成されているサブサンプリング回路を前記フィードバックループ中に備えている、請求項1に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項4】
前記減算回路は、前記スライスレベル及び前記再構成データ信号の両方を前記テレビジョン信号から差し引くことにより前記補助信号を形成するように構成されている、請求項1に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項5】
前記補助信号の少なくとも時間平均をゼロに調整するように前記スライスレベルを適合させるように構成されている更なるフィードバックループを備えている、請求項4に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項6】
前記データスライス回路は前記減算回路を備え、前記スライスレベル選択回路は、適合されたスライスレベルを使用してデータ信号をスライスする、請求項5に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項7】
前記更なるフィードバックループは、少なくとも、データ信号を伴う部分を含むそれぞれの特定の水平線周期ごとに、当該特定の水平線周期のクロックランイン部分の間に、スライスレベルを初期化するように構成されている、請求項5に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項8】
前記フィードバックループは、前記補助信号と、前記テレビジョン信号が前記スライスレベルと交差するときに符号を変える基準信号との積に対応する検出信号を形成するように構成されている残余振幅検出器を備えている、請求項1に記載のテレビジョン信号受信装置。
【請求項9】
テレビジョン信号からデジタルデータを再生する方法であって、
テレビジョン信号を受け取るステップと、
テレビジョン信号レベルがスライスレベルを上回るか又は下回るかに依存するバイナリデータ信号を形成するステップと、
を含み、
前記スライスレベルは、
ある中間レベル±振幅値に等しい信号値を有する再構成データ信号であって、前記テレビジョン信号が前記スライスレベルと交差する時点においてこれらの信号値間の移行を伴う再構成データ信号を規定し、
前記再構成データ信号が差し引かれたテレビジョン信号を含む補助信号を形成し、
前記補助信号中の残余データ信号振幅をゼロに調整するように前記振幅値を適合させるフィードバックループを設け、
前記テレビジョン信号と前記再構成データ信号との間の差から前記スライスレベルを決定する、
ことにより決定される、方法。
【請求項10】
前記フィードバックループは、データ信号を含む前記テレビジョン信号の部分から得る前記補助信号の少なくとも一部に対して時間の関数として前記残余データ信号振幅を積算するための積算器を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
データ信号を含む水平テレビジョンラインごとに1回、前記振幅値を適合させることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−200000(P2012−200000A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−136000(P2012−136000)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2007−523195(P2007−523195)の分割
【原出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【出願人】(312001878)トライデント マイクロシステムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】