説明

適応的行動トレーナー

訓練生の精神生理学的状態を最適化することで訓練速度を向上するための技術を提供する。これらの技術には、使用者の、脳波(EEG)、心臓(EKG)、筋肉組織(EMG)、呼吸およびその他の使用者の状態を特徴付けるパラメータなどの精神生理学状態を反映するデータの取得、解析、表示、および変換をリアルタイムで行うよう設定された適応的行動訓練システムを含む。このシステムは、視覚的、音声的、および/または触覚的フィードバックを、使用者の現在の精神生理学的状態に基づいて提供するため、特定の作業を実行するための目標状態に向かって使用者が進歩することを促進するため、またその作業の行動を最適化するための複数のフィードバックメカニズムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、精神生理学的反応を習得速度の向上のために使用することに関する。特に、複数の知覚反応を使用して、使用者に精神状態を意識させ、インタラクティブに精神状態を維持または変化させるよう訓練したり、特定の作業や活動に有益だと知られている状態に移行するよう訓練する、習得速度を向上するためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳波計(EEG)、心電計(EKG)、筋電図検査(EMG)などの生理学的信号を検知するため、またこれらの信号を意味があるフィードバックに変換して、使用者の精神生理学的状態に関する情報を使用者に提供するために使用できる方法は数多くある。これは、複数のコンピュータと訓練された技術スタッフがいる制御された研究所の環境で最も良く行われている。さらに、開示される用途の多くは、アルファまたはシータ帯域、心拍数の増減、あるいは筋活動の特定のパターンなどの、EEGの単純誘導体測定値を増減させるための使用者の訓練に関連するものである。
【0003】
バイオフィードバックEEGの主なサブ帯域(デルタ、シータ、アルファ、ベータ)はそれぞれ、個人に固有の個人的な特徴と一致することが理論化されている。デルタ帯域は熟睡中、シータ帯域は眠りの浅い時や眠い時、アルファ帯域は創作活動時、穏やかな時や内部に意識が向けられている時などの覚醒時のさまざまな状態時、およびベータ帯域は外部に集中している、警戒している覚醒状態時に最も明らかに観察される。研究所ベースの反応訓練における問題の1つは、刺激、状況、対象者が処理方法を習得する予定の作業量が相対的に限られている拘束された環境で行われるということである。具体的には、訓練は一般的に、いくつかの偽だと分かりやすい不正解の選択肢で混乱させるため、研究所でしばらく過ごすうちに予測が可能になる。実際、得た知識や習得した技術は、実世界での応用に転化されないことや、知識や技術の保持期間が短くなることがある。そうすると、使用者が生理学的状態を制御し続けるには、研究所に繰り返し訪れる必要がある。
【0004】
精神状態の制御を行うために、EEGバイオフィードバックに対し多様な手法が取られてきた。たとえば、米国特許第4,928,704では、有用な程度のEEG動作の自主制御を開発するよう人物を訓練するためのバイオフィードバックの手法とシステムについて開示している。EEGセンサが、制御環境チャンバでEEG信号を感知するため頭部皮膚部位に取り付けられている。信号は、自然な神経活動に合わせた制限時間内で処理するための厳しい条件に従って、増幅されフィルタされる。信号は、事前定義されたアルファ、シータ、ベータ、デルタ帯域でフィルタされ、モニタされている人物に視覚、聴覚、触覚への刺激という形でフィードバックされる。別の例では、米国特許第4,949,726、米国特許第5,024,235、米国特許第5,406,957では、帯域幅ウィンドウで生体電気信号を測定し、増幅信号での高速フーリエ変換による複合増幅を生成する訓練および認識状態の追跡用のEEGのニューロフィードバック装置について開示している。選択した帯域幅がコンピュータで表示およびモニタされ、人物の訓練を音声または言語によるフィードバックでのモニタを可能にする。これらすべてのシステムは研究所ベースであり、現場で適用することはできない。さらに、希望するあるいは目標とする精神状態の定義は「その場」で、行っている作業の熟練者だと考えられる対象者の精神状態を考慮せずに行われる。
【発明の概要】
【0005】
適応的行動訓練のシステムと方法を提供する。本発明の態様に従うと、携帯可能で現場に配置可能なシステムにより、使用者が研究所ではなく実世界環境で訓練できるようになる。本発明のさまざまな態様は、精神生理学的評価を、対象のフィードバックと組み合わせて使用し、技術取得速度を速め、リアルタイムでさまざまな状況下での訓練生の認識および生理学的状態を検知することにより、成功した訓練の量的エビデンスを提供する。実施形態では、オフィス、家庭、現場作業などの複数の環境に適用できる携帯可能で信頼性の高い、使用しやすいフィードバックシステムを提供する。実施形態は、状態の変更に関する先進的な視覚的、聴覚的、または触覚的フィードバックを提供して目標の精神状態に向かうことにより使用者の精神状態を自動的に「黄金状態」に形成するための複数のインターフェイスと出力を含む。訓練を個別化し自動化することにより、提供された技術が指導速度を向上させ行動を改善する。
【0006】
実施形態に従い、リアルタイムデータ取得と、使用者から取得したリアルタイムの精神生理学的信号の解析を使用した作業の習得速度の向上のためのシステムを提供する。システムは、使用者が習得作業を実行している間に使用者に取り付けた複数のセンサから収集された精神生理学的信号データを連続的にモニタするよう設定されたモニタモジュールを含む。システムはまた、使用者の現在の精神生理学的状態を生成し、使用者の現在の精神生理学的状態と1つまたは複数の習得する作業の熟練者の行動に関連付けられた目標状態とを比較し、使用者の現在の精神生理学的状態と1つまたは複数の目標状態との差に基づいて制御信号のセットを生成するための精神生理学的信号データを解析するよう設定された専門技術プロファイラモジュールも含む。さらにシステムは、制御信号を専門技術プロファイラモジュールから受信し、複数モダリティフィードバックを、使用者にリアルタイムで送信して使用者を1つまたは複数の目標状態に近づけるよう指導するよう設定されたリアルタイムフィードバックジェネレータも含む。ここで、使用者に送信される複数モダリティフィードバックは専門技術プロファイラモジュールから受信した制御信号に基づく。
【0007】
別の実施形態に従い、リアルタイムデータ取得と、使用者が装着した適応的携帯可能訓練装置を使用して使用者から取得したリアルタイムの精神生理学的信号の解析とを使用した作業の習得速度向上のための方法を提供する。この方法は、使用者が習得する作業を実行している間の使用者に取り付けた複数のセンサからの精神生理学的信号データの携帯可能な訓練装置での連続的モニタ、使用者の現在の精神生理学的状態を生成するための精神生理学的信号データの携帯可能な訓練装置での解析、携帯可能な訓練装置での現在の精神生理学的状態と習得作業の熟練者行動に関連付けられた1つまたは複数の目標状態との比較、使用者の現在の精神生理学的状態と1つまたは複数の目標状態との比較に基づいた携帯可能な訓練装置での使用者に提供される複数モダリティフィードバックの決定、および携帯可能な訓練装置からの使用者への、使用者が1つまたは複数の目標状態に向かうよう指導するためのリアルタイムでの複数モダリティフィードバックの送信を含む。ここで、使用者に送信される複数モダリティフィードバックは専門技術プロファイラモジュールから受信した制御信号に基づいている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に従った技術習得速度を向上するためのシステムの機能コンポーネントのブロック図である。
【図2】一実施形態に従った図1で示した習得速度を向上するためのシステムの実装に使用できる適応的行動訓練システムの典型的な実施形態の図である。
【図3】一実施形態に従った図1および図2で示した習得速度を向上するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の構造と動作の両方の詳細は、添付図面を調査することで集められる。図面では、同じ参照番号は同じ部品を示す。
【0010】
習得速度を向上するためのシステムと方法を提供する。これらの技術は、神経学および精神生理学測定値からの自動推定と、使用者が自身の精神状態を認識し、使用者が精神状態を特定の作業や活動に有益であると分かっている状態に移行する支援をするための複数感知フィードバックとを使用することで、選択した作業の初心者から熟練者への使用者の進歩を促進するために使用できる。この説明を読めば、当業者には本発明のさまざまな実施形態や用途における実装方法が明らかになるであろう。本発明のさまざまな実施形態を本明細書で説明しているが、これらの実施形態は例示の目的でのみ示されておりこれに制限されるものではないことは理解されよう。このように、さまざまな実施形態のこの詳細な説明は、本発明の適用範囲および広さを制限するものと解釈されるべきではない。本明細書で開示するシステムおよび方法で、初心者の習得速度を速め、初心者が熟練者のレベルに、従来の習得技術よりも速く進むための支援を行うことができる。
【0011】
本明細書で開示された技術の実施形態は、特定の作業における熟練者の特性として特定されるモデル目標状態を、使用者の精神状態を整え、作業における使用者の行動を改善し、作業の訓練速度の向上を促進するために使用できる。従来の神経フィードバックシステムは、EEGの主なサブ帯域(デルタ、シータ、アルファ、およびベータ)に関連付けられた精神状態の基本的な定義によっていた。本明細書で提供する技術は、使用者に、初心者レベルから熟練者レベルに進歩する作業における技術のレベルに関連付けられた神経学および精神生理学的測定基準を使用して、使用者を1つまたは複数の目標とする一連の精神生理学的状態に導くことより洗練され、的を絞った訓練手法を提供する。
【0012】
最近の調査では、EEGパワースペクトルと事象関連EEGにおける変化は、単純な作業と複雑な作業との両方において、スキル取得の段階に関連付けられていると考えられることが示されている。EEGパラメータと実世界の活動における熟練度との間の関係性は、ゴルフのパット、アーチェリー、および射撃技術などのさまざまな活動において報告されてきている。これらの実世界環境では、最も予測可能なデータが、精神面での準備期間中に取得され(通常、この期間中の8〜15秒間)、その後、技量が必要な動作が発生する。これはスポーツ医学では「プリショットルーティン」と呼ばれる。プリショットルーティンは、熟練した視覚運動が必要な作業に関連しない皮質部位の活性の減少を伴いながら、特に頭頂後頭部域にかけて、EEGのアルファ帯域(8〜12Hz)が漸進的に増加することが特徴である。プリショット期間はまた、心拍の減速と電気的皮膚コンダクタンスレベルの減少が特徴である。心拍数の変化はまた、注意の集中と、行動に対する感覚運動準備の技量に関連する様子を反映していると考えられている。成功するプリショットルーティンの一貫性と再現性が高いことが、初心者と熟練者とを区別する主な特徴である。本明細書で使用する技術は、使用者の精神生理学的状態をモニタし、使用者が特定の作業の専門技術に関連する精神生理学的状態に導く手助けとなり得るフィードバックを生成できる。
【0013】
図1は、一実施形態に従った技術習得速度を向上するためのシステムの機能コンポーネントのブロック図である。図1は、システムの機能コンポーネントとコンポーネント間のデータの流れを示している。熟練者の行動を十分定義した量的測定基準は、使用者の精神生理学的特性から抽出することができ、習得段階におけるこれらの測定基準の変化の連続的なリアルタイムのフィードバックの提供により、初心者から熟練者への移行が促進される。
【0014】
システムは使用者140が着用可能な携帯可能な訓練モジュール100を含む。携帯可能な訓練モジュール100は、モニタモジュール110、熟練者測定基準データ格納部115、およびリアルタイムフィードバック生成モジュール130を含む。モニタリングモジュールは、リモートストレージおよび処理モジュール150、ルールモジュール150、およびインタラクティブ環境システム170とやり取りする。それぞれのモジュールとモジュール間のやり取りの詳細については以降で説明する。
【0015】
モニタモジュール110は、使用者140からの精神生理学的信号を収集するよう設定されたさまざまなタイプのセンサからの信号データを受信するよう設定できる。これらの信号には、脳波図(EEG)、心電図(EKG)、眼電図(EOG)、筋電図(EMG)、呼吸、心拍数、体の動き、電気皮膚反応、血圧、血流、血液化学、行動反応、またはその他の神経認知機能または感情の状態によって変化する精神額的信号、およびこれらの組み合わせを含むことができるがこれに限定されない。この信号データは解析し、使用者の現在の状態を判別することができる。たとえば、眼球運動の激しさ、質、頻度は、覚醒度/眠気の度合いに応じて変化する。眼球運動が激しく、素早く回りを見ているときは、一般に覚醒が活性しており、対象者が疲労したり眠気を催すに従って、頻度が減り、通常眼球運動がゆっくりと減っていき、睡眠の初期段階の到来を示す、別の種類の定期的な正弦的な目の動き(いわゆる緩徐眼球運動(SEM)が発生する。眠気を妨害すると、覚醒が活性している以前の状態と比べて呼吸量が著しく減少し、時には呼吸振幅の最大振幅において正弦波変化がゆっくり(90〜120秒の範囲)になる。別の例では、不規則な呼吸が覚醒、懸念、またはその他の強い感情の兆候となることがある。
【0016】
電気皮膚反応(GSR)、選択した筋肉群(首、顔面筋肉組織、前腕および/または手など)のEMG、瞳孔のサイズおよび顔の表情(両方ともたとえば小さいカメラなどで捉えられる)、およびパルス酸素濃度計で計測した心拍数が一般的に、使用者の感情状態についての推定をコンピュータ/コンピュータシステムで行うために使用される。習得対象の作業に関連する、あるいは重要な脳の領域を特定するため、脳の異なる部位の酸素供給および/または血流の、作業関連の変化が、特に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)調査において一般的に使用される。当業者には、認識または感情状態の働きにつれて変化するいくつもの精神学的信号を使用者140から収集することができ、この目的のために対応するセンサをいくつでも使用でき、センサはさまざまな実施形態で使用できることは認識されよう。
【0017】
モニタモジュール110はまた、基本信号処理のためのアルゴリズムも備えている。たとえば、モニタ110は偽者の認識および却下、帯域通過フィルタ、他の信号処理アルゴリズム、またはそれらを組み合わせた基本信号処理のためのアルゴリズムを含むことができる。
【0018】
専門技術プロファイラモジュール120は、モニタ110で収集した精神学的信号データを受信するよう設定される。モニタから受信した信号データは、専門技術プロファイラモジュール120に提供される前に、モニタモジュール110で処理することができる。一実施形態によると、専門技術プロファイラモジュール120は、スキル取得の異なる段階に対応する量的測定基準をモニタモジュール110が収集した信号データから抽出し、抽出した測定基準と熟練者測定基準データ格納部115からの事前定義された指数とを比較するよう設定できる。熟練者測定基準データ格納部115は、システムの使用者が習得する、または習得中の作業の熟練した行動に共通のさまざまな測定基準を含むことができ、一般に作業の熟練者レベルの行動で現れる、目的の精神生理学的状態を表す1つまたは複数の目標状態を含むことができる。測定基準には、注意、作業付加、習得および記憶、心拍数変化解析、ストレスおよび不安度、交感神経および副交感神経の活性度の測定、まばたきの頻度とタイミング、作業の完了にかかる時間と作業から作業に移る際の測定値全体の変動のEEGの兆候を含むことができるがこれに限定されない。
【0019】
一実施形態によると、熟練者測定基準データは、複数の頭皮部位から記録され、秒単位で1から50Hzまでの1Hz刻みで周波数範囲が計算された対象者のEEG活性のパワースペクトル密度(PSD)データを含むことができる。一実施形態によると、パワーは標準非パラメトリックアルゴリズム(高速フーリエ変換、フィルタバンクなど)または自己回帰(AR)モデルや自己回帰移動平均(ARMA)モデルなどのパラメトリック技術を使用して計算できる。計算されたPSD指数は、さらに、文献から知られている従来のEEG帯域、すなわちデルタ(1〜4Hz)、シータ(4〜7Hz)、アルファ(8〜13Hz)、ベータ(13〜30Hz)、およびガンマ(30〜50Hz)にグループ化またはまとめられる。一実施形態によると、異なる頭皮部位でのEEGのPSDの特定の変化は覚醒度、精神的努力と没頭度、対象者に作業によって与えられる作業負荷、および対象者の作業記憶の測定基準として使用できる。
【0020】
一実施形態によると、熟練者測定基準データには、ピークタイム(待ち時間)、最大振幅および対象者の作業からの刺激により誘発された事象関連電位(ERP)の波形を含むことができる。たとえば、ERPは思考または知覚の結果である脳の反応の測定値である。言い換えれば、ERPは内部または外部刺激に対する電気物理的反応である。さまざまなERPに関連するデータは、作業要求がない場合の任意の予測不能な刺激により誘発されるN100、情報処理の最新の注意段階に関連付けられたN100およびP200、頻度の低い作業関連の刺激により誘発されるERPであるP300、一般に意義のある、あるいは潜在的に意義のある入力により誘発されるN400、記憶関連遅発性陽性構成要素、およびその他の事象関連電位、あるいはこれらの組み合わせを含む熟練者測定基準データ格納部115内に含めることができる。一実施形態によると、これらの電位は対象者に提示されたテスト/作業の既知の刺激の発生時(刺激関連ERP)、あるいは対象者の提示された作業/テストへの、ボタンの押下などの行動反応の発生時(反応関連ERP)、またはカメラ付き光視線トラッカにより追跡できる視線固定などの精神的事象(凝視固定ERP、またはFLERP)、あるいはEOGに合わせて発生することがある。実験的文献では、遅延、振幅および事象関連電位の全体的な形は、知覚的鋭敏度や知覚速度、意思決定速度と正確性、選択能力、注目度と全体的注意力、または状況認識により影響を受け、またはその結果反映されることがあるということについて説得力のある実証を示している。一実施形態によると、前述のPSD計算はERP(刺激または反応関連、あるいはFLERPのいずれか)と、パワー事象関連電位(PERP)で組み合わせることができる。PERPは凝視などの刺激、反応または精神的事象、または心拍のいずれかに集中したERPを含むEEGのセグメントで前述のように計算されたPSDである。
【0021】
一実施形態によると、熟練者測定基準データに瞬間心拍数データを含めることができる。瞬間心拍数データは記録されたEKGの2つの連続したQRS群間の時間間隔から計算することができ、心拍変動(HRV)信号は、瞬間心拍数の最初の差として計算することができる。
【0022】
一実施形態によると、熟練者測定基準データにHRV信号のパワーを、0.04〜0.15Hzの低周波(LF)範囲と0.15〜0.4Hzの高周波(HF)範囲の2つの範囲で含めることができる。パワーは標準非パラメトリックアルゴリズム(高速フーリエ変換、フィルタバンクなど)または自己回帰(AR)モデルや自己回帰移動平均(ARMA)モデルなどのパラメトリック技術を使用して計算できる。一実施形態によると、LFおよびHFパワーが計算されると、LFおよびHFパワーが全体パワーの割合として示すか、LF対HFの比を計算することができる。LFパワーとLF/HF比は、交感神経刺激の度合いに関係して表される。一方でHFパワーは副交感神経刺激の度合いを反映する。したがって、これらの測定値は、不安、怒り、恐れなどの自律神経の興奮に関連した感情状態を示すことができる。
【0023】
一実施形態によると、熟練者測定基準データにEOG/EEGデータを含めることができる。使用者のEOGまたは、前頭骨または前頭葉前部EEGが記録されている場合、対象者のEOGまたは(前)前頭葉デルタパワーは水平方向の緩徐眼球運動と関連付けられる。前述のように、水平方向の緩徐眼球運動(SEM)は覚醒時から睡眠の初期段階への移行の指標となり、したがって眠気/覚醒度の測定値または指標の1つとして使用できる。
【0024】
一実施形態によると、熟練者測定基準データに帯域通過フィルタされたEMG信号(EMGが記録されている場合)の差異データを含めることができる。一実施形態によると、EMGは特別なセンサ/チャンネルを使用して記録する必要はない。なぜなら、顔面および顎の筋肉からのある程度のEMGが、頭皮から取得されるEEGに現れるためである。高EMG活性は活動的な覚醒、高い精神的没頭度、または不安、恐れ、焦り、怒りの状態と関連付けられる。したがって、一実施形態によると、EMGは覚醒度、精神的努力、作業負荷、感情の状態の評価に使用できる。
【0025】
一実施形態によると、熟練者測定基準データに没頭度測定値を含めることができる。一部の実施形態では、没頭度測定値は米国特許第6,496,724および第6,625,485で開示されている方法を使用して抽出できる。当該内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。没頭度測定値を決定するためのこれらの方法は、3つの基準値条件の取得と、1〜40Hzでの1Hz刻みの周波数における複数の頭皮位置から記録される秒単位でのEEGのパワーを測定し、4クラスの二次の判別関数を使用してこれらのパワー測定値を没頭度高、没頭度低、注意散漫、および眠気の4つのクラスの1つに属する対象者の精神的努力と没頭度のレベルの確率に変換することによる4つ目の対象者の各サブ作業中の覚醒度、精神的努力および没頭度を決定する精神状態の予測によっている。
【0026】
一実施形態によると、熟練者測定基準データに精神的作業負荷の測定値を含めることができる。一実施形態によると、精神的作業負荷は2クラスの判別関数を使用してこれらのパワー測定値を対象者が低作業負荷または高作業負荷にある確率に変換して特徴付けられる。
【0027】
リアルタイムフィードバックジェネレータモジュール130は、使用者が自身の精神状態を認識したり目標の精神状態に移行することを支援するためのリアルタイムのフィードバックを使用者に提供するよう設定できる。一実施形態によると、広範囲に及ぶ処理または要約を必要とせずに収集できるフィードバックは、モニタモジュール110から直接収集できる。たとえば、モニタリングモジュール110は体の動き、呼吸、心拍数、および/またはその他の生理学的信号データを示す信号データを提供できる。
【0028】
一実施形態によると、専門技術プロファイラモジュール120はリアルタイムフィードバックジェネレータモジュール130への制御信号入力を生成するアルゴリズムも含むことができる。リアルタイムフィードバックジェネレータモジュール130への入力として使用するために専門技術プロファイルモジュール120によって生成され出力される信号は、モニタモジュール110と熟練者測定基準データ格納部115からの目的の測定基準とを比較する専門技術プロファイルモジュール120の結果を基にすることができる。
【0029】
一実施形態によると、異なるフィードバック様式を使用することができる。これには、聴覚的、視覚的、触覚振動、臭い、熱さまたは冷たさ、あるいはその他の作業の実行への干渉が最小限になるような、また認識負荷の要求が最小限となるようなフィードバックを提供するフィードバック技術を含むことができるがこれに限定されない。一実施形態によると、フィードバックには過去のまたは予測行動から導き出された処理されたパラメータの振幅および/または周波数の比例指標を含むことができる。またはいくつかの実施形態においては、このフィードバックに使用者を目的の状態に導くための簡単な指示を含めることができる。提供されたフィードバックは、使用者を1つまたは複数の訓練プロファイルに関連付けられた目標状態に導く支援とすることができる。提供されるこの種のフィードバックは、使用者が参加している訓練の種類に基づいて部分的に決定することができる。
【0030】
携帯可能な訓練モジュール100は完全に持ち運びが可能で、実行作業への干渉を最小限に現場に配備することができる。さまざまなタイプの着用可能なセンサを、EEG、EOG、EMG、EKG、呼吸、GSR、血圧、近赤外光脳および筋計測値(NIRS)の取得で使用できる。これらおよびその他のタイプのセンサを、携帯可能な訓練モジュール100で使用できる。一実施形態によると、EEGデータは、その全体が説明されているものとして参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,640,122で開示する、無線の、着用可能な、現場配備可能なEEG装置を使用して取得できる。
【0031】
一実施形態によると、携帯可能な訓練モジュール100は屋内訓練でも研究プラットフォームでも使用でき、データを収集し、特定の作業の専門技術を特徴付けるために使用できる測定値を抽出できる。抽出した測定値は、熟練者測定値データ格納部115に投入するために使用できる。
【0032】
いくつかの実施形態では、モニタモジュール110による信号出力はリモートコンピュータシステム(図示されていない)に、オフラインでの解析および保存のために出力できる。一部の実施形態では、モニタモジュール110による信号出力は、無線でリモートパーソナルコンピュータシステムまたはノートパソコンに送信して、オフライン解析のために信号を収集することができる。リモート処理およびストレージモジュール150は、リモートコンピュータシステムで実装できる。リモートコンピュータシステムは、携帯可能な訓練モジュール100から収集したデータを処理するため、および使用者の特定の作業行動を評価する行動レポート、使用者の作業の習熟度を改善し習熟速度を速めるための追加手順を提案可能な訓練レポートを生成するため、あるいはその両方のための追加ソフトウェアを含むことができる。
【0033】
インタラクティブ環境システム170は、使用者が作業を習得できる環境を提供する。インタラクティブ環境システム170は、作業の実行前または作業の習得前に、あるいはリアルタイムのフィードバックを習得プロセス全体で使用者に提供する前に、あるいは両方の前に使用者を教育するために使用できる。インタラクティブ環境システム170は、神経生理学、神経心理学、覚醒、注意、習得および記憶の行動および主観的測定を含むがこれに限定されない作業行動の追加パラメータをモニタするためのシステムを含むことができる。一実施形態によると、インタラクティブ環境システム170はまた、キーの押下、マウスクリック、ジョイスティックの押下程度、またはその他のタイプの感圧装置やコンピュータインターフェイス、あるいはそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない、さまざまなインターフェイスとのさまざまなタイプの使用者のやり取りをモニタするためのシステムも含むことができる。これらのやり取りは、使用者の習得プロセスの特性を特定するためにオフラインで記録し解析できる。一実施形態によると、リモート処理およびストレージモジュール150は、インタラクティブ環境システム170のシステムで取得したデータを受信でき、インタラクティブ環境システム170から受信したデータを解析して、作業実行中の使用者または作業の状態を評価できる。たとえば、射撃技術の訓練環境では、インタラクティブ環境システム170は1つまたは複数のセンサを取り付けた本物の銃または模擬銃のどちらかを含むことができる。たとえば、銃または模造銃は、使用者がどの程度の圧力を銃のトリガにかけたかを感知するための圧力センサをトリガに取り付けることができる。他のタイプのセンサ、たとえば銃の位置、および/または使用者がどの程度しっかりと銃を保持しているかを感知する加速度計も含むことができる。射撃技術訓練環境におけるインタラクティブ環境システム170には、1つまたは複数の標的も含めることができる。銃は、本物の標的を撃つためのいくつかの実施形態(銃射撃場など)では実弾または空砲または模擬弾薬を含むことができる。たとえば、レーザーや実弾に代わる他の代替物を使用して、実弾で標的を撃つシミュレーションに使用できる。
【0034】
別の例では、インタラクティブ環境システム170は、使用者が模擬ゴルフコースを表示できるシミュレーションゴルフ環境を備えることができる(スクリーンに投影したり、バーチャルリアリティゴーグルを使用するなど)。使用者は、使用者のスイングの特性を感知する加速度計などのセンサを含むゴルフクラブを使用することができる。さらに別の実施形態では、インタラクティブ環境システム170は射撃場、ゴルフコース、またはスポーツ競技場などの、使用者が訓練環境および行動データを取得してその行動データを実在の場所(ノートパソコンやその他のモバイルデバイスなど)に配備することもできるリモート処理およびストレージモジュール150に提供するために使用できる環境に配備されるセンサ、カメラなどと相互作用できる携帯可能訓練モジュールの実世界への配備またはモジュール100の実世界訓練環境への配備を含むことができる。また、インタラクティブ環境システム170は、後からリモート処理およびストレージモジュール150に転送またはコピーすることができるデータを取得することができる。
【0035】
ルールモジュール160は、特定の作業または使用者のニーズに合わせてカスタマイズまたはパーソナライズできるルールと指標のセットを含む。ルールモジュール160は、リモート処理およびストレージモジュール150からデータを取得し、それに従ってルールを設定するよう設定することができる。ルールは、特定の使用者向けに訓練内容をカスタマイズするよう設定できる。たとえば、インストラクターは使用者の習得進度に関する質的なフィードバックを、質的評価モジュール175を使用して提供できる。このフィードバックはその後、訓練プロセスの強化、終了、その他の修正を行うルールを設定するためにリモート処理およびストレージモジュール150で使用される。たとえば、ルールは熟練者測定値情報と共に使用して、使用者が訓練を完了するために到達しなければならない1つまたは複数の目標状態のセットを選択できる。また、ルールは、使用者に提供するフィードバックのタイプを、使用者の現在の状態および選択した訓練プロファイルに関連付けられた1つまたは複数の目標状態に基づいて定義するために使用できる。使用者を1つまたは複数の訓練プロファイルに関連付けられた目標状態に導く支援となるフィードバックを選ぶことができる。
【0036】
一実施形態によると、スキル習得速度を速めるシステムは、神経認知プロファイリングを使用した自動チュートリアルを提供するよう設定することができる。いくつかの実施形態では、事象関連電位(ERP)を、複数レベルの情報処理を調査するために採用できる。たとえば、パワースペクトル解析、ウェーブレット解析、および/またはその他の技術などの良く知られた技術を採用したロックデータ抽出および解析などである。
【0037】
一実施形態によると、システムはまた、ストレスの多い実世界の状況を訓練プログラムに導入するよう設定することもできる。たとえば、3Dシューティングゲームを射撃技術訓練に導入して、戦闘に対するマインドを持つよう促進することができる。
【0038】
本明細書で説明する習得速度を速めるシステムと使用方法は、特定の作業で使用者を訓練するために必要な指導者の数を減らすために使用することができる。一実施形態によると、システムはインタラクティブな習得環境を提供することができる。この環境では、指導者は質的および/または量的行動評価を提供することができる。指導者は、訓練前および/または訓練内トリアージおよび/または介入を実施して習得プロセスを支援することができる。一実施形態によると、質的評価モジュール175は指導者に質的および/または量的評価情報を使用者に提供するためのユーザーインターフェイスを提供するよう構成できる。一実施形態では、ユーザーインターフェイスは指導者が評価情報の入力および/またはシステムで収集された使用者の行動データの表示ができるWebページまたはWebページのセットを備えている。一実施形態によると、質的評価モジュール175はリモート処理およびストレージモジュール150に実装できる。別の実施形態では、質的評価モジュール175は、指導者がフィードバックを提供することができるユーザーインターフェイスを提供するリモートコンピュータシステム(図示されていない)に実装でき、このリモートコンピュータシステムはリモート処理およびストレージモジュール150と、インターネットなどの有線または無線ネットワーク接続を介して通信する。
【0039】
保存プロファイルモジュール165は、行動データが記録された人数の80%以上に共通の熟練者行動を基準に抽出するよう構成できる。記録された行動情報は、訓練対象の作業を熟練者が実行して得られる神経生理学的測定値と複数の知覚反応を記録するさまざまなタイプのセンサを使用して記録できる。使用できるセンサのタイプの例は前述のとおりである。記録された行動情報はその後、保存プロファイルモジュール165および/またはリモート処理およびストレージモジュール175を使用して解析し、作業の習得速度を速めるシステムを使用した使用者の行動を評価するために使用できるプロファイルを生成できる。保存プロファイルモジュール165により抽出された情報は、熟練者測定基準データ格納部115に保存される熟練者測定基準のベースを形成することができる。
【0040】
図2は、図1で示した習得速度を向上するためのシステムの実装に使用できる適応的行動訓練システムの典型的な実施形態を示す図である。図2に示す実施形態では、ライフル射撃技術訓練で使用する周辺機器およびアクセサリが示されている。ただし、これは、訓練速度の向上のためのシステムの一実施形態にすぎない。別の実施形態では、異なるセンサの組み合わせにより使用できる周辺機器が、実施される訓練のタイプによって異なる。このシステムの基本的なアーキテクチャは多目的でモジュール式であり、多様な作業に対して簡単に再構成し、さまざまな環境で選択した作業の習得のために配備できる。
【0041】
図2に示すシステムは、適応的行動訓練(APT)201を含む。適応的行動トレーナー200は図1に示した携帯可能な訓練モジュール100に対応しており、訓練期間中に使用者がやり取りできるインタラクティブ訓練環境(インタラクティブ環境システム170など)とやり取りできる。一実施形態によると、適応的行動トレーナーは再充電可能なバッテリ電源の、さまざまな訓練環境で使用できるよう再構成可能な機器である。適応的行動トレーナー200は、図1に示した携帯可能な訓練モジュール100を実施形態に従って実装するために使用できる。図2の、適応的行動トレーナー200の実施形態はデュアルコアアーキテクチャを備えている。この実施形態では、データ取得関連タスクとデータ処理関連タスクは、2つの異なるプロセッサに分けられている。データ取得プロセッサ201は、アナログおよびデジタル入力データを収集するよう設定でき、1つまたは複数のデータ処理プロセッサ202は、データ処理で複合マルチスレッドリアルタイムアルゴリズムを実行するよう設定できる。一実施形態によると、データ収集プロセッサ201から収集された生データおよび/またはデータ処理アルゴリズムからの出力は、オフライン処理のために不揮発性メモリ206に保存することができる。一実施形態によると、メモリ206はフラッシュメモリを使用して実装できるが、別の実施形態では、他の種類の固定コンピュータ読み書き可能メモリを使用できる。別の実施形態によると、単一のプロセッサまたは2つ以上のプロセッサを使用できる。
【0042】
適応的行動トレーナー200は、適応的行動トレーナー200のリアルタイムオペレーティングシステム204を起動または初期化するよう設定されたブートローダー255を含む。リアルタイムオペレーティングシステム204はマルチスレッドアプリケーションファームウェア205を実行するよう設定されている。いくつかの実施形態によると、リアルタイムオペレーティングシステム204はまた、コンピュータで読み取り可能なメディア、たとえばデータストレージ206などにおける複数スレッドソフトウェアの実行に使用することもできる。
【0043】
データストレージ206はまた、熟練者測定基準情報を保存して、リモートコンピュータシステム212、モバイルデバイス213、および/またはリモートサーバー214から提供される熟練者測定基準データ格納部115を実施するために使用することもできる。
【0044】
実施形態によると、データ取得プロセッサ201、リアルタイムオペレーティングシステム204、マルチスレッドアプリケーションファームウェア205、メモリ206、およびメモリ206に保存されたデータおよび/または実行可能プログラムコードに加え、汎用アナログ入力208、専用アナログ入力ポート207、および標準入力ポート210を、図1に示したモニタモジュール110の実装に使用することができる。
【0045】
実施形態によると、1つまたは複数のデータ処理プロセッサ202、リアルタイムオペレーティングシステム204、および複数スレッドアプリケーションファームウェア205、メモリ206、およびメモリ206に保存されたデータおよび/または実行可能プログラムコードは、図1に示した専門技術プロファイラモジュール120へ使用できる。
【0046】
一実施形態では、1つまたは複数のデータ処理プロセッサ202、リアルタイムオペレーティングシステム204、複数スレッドアプリケーションファームウェア205、およびメモリ206は、図1に示した専門技術プロファイラモジュール120の実装に使用できる。一実施形態では、データ取得プロセッサ201、リアルタイムオペレーティングシステム204、複数スレッドアプリケーションファームウェア205、メモリ206、およびメモリ206に保存されたデータおよび/または実行可能プログラムコードに加え、専用出力ポート209を、図1に示したリアルタイムフィードバック生成モジュール130の実装に使用することができる。
【0047】
適応的行動トレーナー200は、広範囲にわたるセンサおよび周辺機器と接続するためのさまざまな入出力ポートを含むことができる。図2は、取り得る構成の1つを示したものである。一実施形態によると、センサおよび周辺機器は、複数モダリティフィードバックを提供するために専用およびサードパーティ製のセンサ/機器を含むことができる。
【0048】
専用アナログ入力ポート207は、脳波図(EEG)、心電図(EKG)、眼電図(EOG)、筋電図(EMG)、その他の生理学的信号、またはそれらの組み合わせなどのアナログ生理学的信号255の収集に使用できる。一実施形態によると、専用アナログ入力ポート207は、これらの信号を最小限のゆがみや副作用で取得するための専用ハードウェアフィルタおよび振幅ブロックを含むことができる。
【0049】
汎用アナログ入力208は、他のタイプの従来型または非従来型センサまたはトランスデューサーからの受信データとアナログデータ出力とのインターフェイスを提供する。一実施形態によると、汎用アナログ入力208は、センサまたはトランスデューサーから受信したアナログデータを必要な入力仕様に整え、適用するためのソフトウェアプログラム可能なフィルタと増幅器を含むことができる。たとえば、図2に示したライフルの射撃技術訓練の実施形態では、センサはトリガコントロール277a用の感圧レジスタ、呼吸コントロールを獲得するための呼吸ベルトトランスデューサー277b、体の動きを感知するための多軸加速度計277c、および/またはアナログデータ出力を行うその他のセンサ277dを含む汎用アナログ入力208と接続している。汎用アナログ入力208もまた、データをインタラクティブ環境システム170へ/からデータをやり取りするために使用できる。
【0050】
標準入力ポート210は、標準プロトコルで通信する周辺機器との接続を提供する。たとえば、実施形態には、USBホスト/デバイス、シリアルポート、パラレルポート、FireWire、および/またはその他のタイプの入力ポート向けの入力ポートを含めることができる。一実施形態によると、Inter-Integrated circuit(I2C)、System Packet Interface(SPI)、Content Addressable Network(CAN)などのプロトコルをサポートし、高速周辺機器と接続するため標準ヘッダを提供できる。標準入力ポート210もまた、データをインタラクティブ環境システム170へ/からデータをやり取りするために使用できる。
【0051】
射撃技術訓練に使用できるいくつかの典型的な機器には、屋内での空撃ち訓練に使用するレーザーを使用した模擬標的への命中を捉える赤外線(IR)カメラ278a、武器からの専用出力、その他の周辺機器、またはそれらの組み合わせなどがある。これらの周辺機器は、訓練期間中に使用者と通信するインタラクティブ環境170の一部とすることもできる。標準入力ポート210もまた、リモートコンピュータシステムと、有線接続278c経由で接続して傾向データをダウンロードするよう構成できる。標準入力ポートも、バッテリ211を充電するためにバッテリ充電器278bに構成することができる。一実施形態によると、対応ドライバを適応的行動トレーナー200のリアルタイムオペレーティングシステム204に読み込むことで新しいインターフェイス周辺機器用のソフトウェアのサポートが提供される。一実施形態によると、バッテリ211は充電式リチウムポリマーバッテリまたはその他のタイプの充電式バッテリを備えることができる。別の実施形態では、バッテリ211は1つまたは複数の適応的行動トレーナー200から取り外して交換可能な非充電式バッテリを備えても良い。
【0052】
一実施形態によると、適応的行動トレーナー200は複数モダリティフィードバック出力を、さまざまな出力ポート209を介して提供できる。一実施形態によると、専用出力ポート209は、制御信号をさまざまなタイプの、少なくとも使用者が訓練中に没頭するインタラクティブ環境(図1のインタラクティブ環境システム170など)の一部で実装するために使用できるフィードバックデバイスに出力するために使用できる。たとえば、射撃技術訓練では、入力パラメータに比例して周波数またはパルス幅を変調した出力および/または訓練中に使用者を指示するための音声指示を提供するために使用できるヘッドフォンまたはスピーカーを接続するための音声出力279a、発光ダイオード(LED)や小さい液晶ディスプレイ(LCD)などの状態の視覚的インジケーター279b、触覚的フィードバックのための複数無軸振動モータ触覚フィードバックモジュール279cおよび279d、およびその他の出力デバイス279eなどである。
【0053】
一実施形態によると、適応的行動トレーナー200には、パーソナルコンピュータシステム212または携帯端末、携帯電話、あるいは同様のデバイスなどのモバイルデバイス213などのリモートコンピュータステーションと接続する無線トランシーバも含むことができる。一実施形態によると、無線トランシーバは、リモートコンピュータシステム212またはモバイルデバイス213に接続するための1つまたは複数の、Bluetooth(登録商標)などの既知のプロトコルをサポートするよう構成できる。
【0054】
一実施形態によると、適応的行動トレーナー200からリモートコンピュータシステム212またはモバイルデバイス213に転送されたデータは、回収可能なデータベース形式で、リモートコンピュータ212またはモバイルデバイス213のいずれかに保存することができる。データ格納部内のデータは、行動のオフライン解析および/または訓練期間中に使用者にアドバイスを作成したりフィードバックを提供するために使用できる。一実施形態によると、リモートコンピュータシステム212またはモバイルデバイス213は、追加のテストを実施したり、訓練前に使用者を教育したり、テスト中またはテスト後に追加のフィードバックを提供したり、あるいはそれらを組み合わせて行うために使用できるインタラクティブユーザインターフェイスを含むことができる。たとえば、ライフル射撃技術訓練では、インタラクティブ訓練環境には、屋内空撃ち演習のための模擬レーザー標的を含むことができる。一実施形態によると、使用者はスキル習得速度を速めるために、キーの押下、マウスクリック、ジョイスティックの押下程度、またはその他のタイプの感圧装置やコンピュータインターフェイス、あるいはそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない、さまざまなインターフェイスとのさまざまなタイプのやり取りやインターフェイスを通じてシステムと通信できる。
【0055】
一実施形態によると、リモートコンピュータステーションは、保護されたネットワーク接続を介して通信できるようリモートサーバ214と対にすることができる。一実施形態によると、リモートサーバ114はパスワード保護されたWebインターフェイスを、訓練プロセスの前後両方でデータおよび訓練の状態をモニタするために提供できる。
【0056】
一実施形態では、リモートコンピュータシステム212、モバイルデバイス213、リモートサーバ214、またはそれらの組み合わせは、図1で示したリモート処理およびストレージモジュール150、ルールモジュール160、保存プロファイルモジュール165、および質的評価モジュール175を実装するために使用できる。
【0057】
一実施形態では、適応的行動トレーナー200は、使用者の精神生理学的状態を、実行する作業における熟練者の最高の行動状態特性へと、特定の作業を実施する直前に形成するよう、構成できる。たとえば、適応的行動トレーナー200は、使用者を、銃を撃つ数秒前に、熟練した射撃者の最高の行動状態特性へと形成するよう構成できる。別の実施形態では、適応的行動トレーナー200は、使用者を、使用者がボールを打つ前に、熟練したゴルファーの最高の行動状態特性へと形成するよう構成できる。さらに別の実施形態では、適応的行動トレーナー200は、使用者を、使用者がフリースローを打とうとする時に、熟練したバスケットボールの選手の最高の行動状態特性へと形成するよう構成できる。一実施形態では、最高の行動状態にはEEGシータ(4〜7Hz)およびアルファ(8〜12Hz)パワーの増加、低EEG関与レベル、および高EEG作業負荷レベルを含む。
【0058】
一実施形態では、他のショット前の生理学的熟練度インジケータには、心拍数の局所的な減少、低交感神経活性(ストレスおよび不安の測定基準)、呼吸制御(ショットが自然な呼吸休止中に行われたか)、およびトリガ制御(ゆっくりと確実にトリガを引いたか)などを含む。一実施形態によると、訓練促進システムは、モデル目標状態として保存されている熟練度のさまざまなプロファイル(経験的または理論的)を組み合わせて構成され、神経生理学的測定値からの自動推定に基づいて初心者から熟練者への進歩速度を速めるために使用される。前述のように、保存プロファイルモジュール165は、熟練者プロファイルを保存するために使用できる。一実施形態によると、システムはリアルタイムEEG測定値(アルファおよびシータ)と心拍数とを統合して、使用者にショット前の期間の熟練者の整理精神生理学的状態と使用者の精神生理学的状態との比較に基づいた自動フィードバックを提供する。たとえば、使用者がゴルフコースまたは射撃場にいる場合、首の後ろにつけた、使用者にショットする際に理想的な状態にいることを示す2つの小さな振動するセンサを介して触覚的フィードバックを使用者に伝えることができる。
【0059】
別の実施形態では、前回確立された、呼吸、心拍数およびEEGアルファ制御などの精神生理学的目標プロファイルに基づいてリラックスした訓練と不安軽減のためのフィードバック訓練を提供することができる。この実施形態では、習得速度向上システムは、次の同じ主要機能を使用することができる。1)EKG、呼吸および4チャンネルEEGの取得と処理、2)触覚および音声を介した心拍数のリアルタイムフィードバック、3)触覚および音声を介したアルファ状態のリアルタイムフィードバックおよび4)Bluetooth(登録商標)プロトコルまたはその他の無線プロトコルを介した、使用者が特定の状態に達する支援を行うための表示とオフライン解析のためのEKGおよびEEGのリモートコンピュータへの無線転送。
【0060】
実施形態によると、適応的行動トレーナー200は、初心者の使用者を、熟練者のショット前の最高の行動状態に方向付ける支援ができる。一実施形態では、訓練システムは視覚的、音声的、触覚的フィードバックを単独で、または組み合わせて配備し、使用者が自身の生理を制御する支援ができる。一実施形態によると、触覚振動ユニットは、使用者のそれぞれの肩に、触覚バイブレータ279cおよび279dのように配置して、使用者の状態を方向付けるための支援ができる。たとえば、射撃技術訓練の例では、触覚振動ユニットは、参加者が理想的なトリガを引く前の状態になるように、呼気に関連する自身の心拍数を減速させるようより意識させるため、参加者の実際の心臓の鼓動に倣ったペースで使用者の肩を「叩く」よう設定することができる。アルファが基準レベル以下の場合、触覚ユニットは両方とも振動する。アルファが通常を超えるまで増加すると、1つの触覚ユニットが振動を停止し、アルファが理想的な状態に到達すると、両方の触覚的ユニットの振動が停止する。このようにして、理想的な射撃状態に達したことを使用者に通知する。触覚を使用して、アルファと心拍数の両方のフィードバックを提供することにより、使用者に提供される情報の流れは単純化される。結果として、使用者に情報を与えすぎずに使用者の認識をより高め、使用者の生理を熟練者に見られる生理と同様になるよう制御する方向に向かうよう最大のフィードバックを使用者に提供できる。
【0061】
初心者から熟練者への移行には、演習が必要である。しかし、反復だけで確実に成功するわけではなく、レベルの低い技術の反復はマイナスの訓練をもたらし、パフォーマンスの欠如および/またはストレス障害を引き起こすことがある。近年の調査では、運動能力の習得は、注意力および作業記憶などの認知リソースの可用性の上に成り立ち、習得の速度と効率は、これらの認知能力の状態または特性の違いに影響されることが示されている。
【0062】
適応的行動トレーナー200は直接、これらの状態または特性の違いを、EEGの特徴に関する知識と、習得段階において変化するその他の一連の生理学的測定基準を使用して評価できる。適応的行動トレーナー200は、これらの測定値に関連した変更に関する連続的な精神生理学的モニタリングおよびフィードバック(視覚、音声、および/または触覚的フィードバック)を、使用者にリアルタイムで提供することができる。従来の訓練技術を超える適応的行動トレーナーの利点の1つは、まず適応的行動トレーナーが最初に専門技術の精神生理学的プロファイルを特徴づけ、次に使用者が、熟練者の精神生理学的状態を形成するよう使用者を方向付けるための個別にカスタマイズしたフィードバックを提供するということである。APT設計で、次のような訓練の複数オプションを実現する。センサ入力(EEG、EKG、呼吸、視線追跡)、状態の変化を抽出するアルゴリズム(単一または複数のセンサ入力に基づき、熟練者モデルに形作るよう設計されている)およびフィードバックの提供(視覚的、音声的、触覚的または複数モダリティ)。訓練は、調査者または訓練生のニーズを満たすようカスタマイズすることができる。訓練プロトコルは次に、現場での配信用に合理化し最適化することができる。
【0063】
また、図2は適応的行動トレーナー291a〜291nも含む。これは適応的行動トレーナー200と同様の構成をとることができる。いくつかの実施形態によると、複数使用者およびチーム活動の場合、複数の適応的行動トレーナー291a〜291nで、適応的行動トレーナー291a〜291nのそれぞれが適応的行動トレーナー291a〜291nからデータを受信し、適応的行動トレーナー291a〜291nに訓練プログラムを調整するために指示を送信するためのマスタデバイスとして動作するよう設定できるリモートコンピュータステーションに接続できる即時無線ネットワークで通信するよう設定できる。それぞれの適応的行動トレーナー291a〜291nは、それぞれの使用者から収集されたデータの個々の解析を提供し、各使用者へ個別のフィードバックを提供するよう設定することができる。一実施形態では、複数の適応的行動トレーナーは、サッカー場やバスケットボールコートなどのチームスポーツ施設で、習得速度の向上のためにシステムの使用者の行動情報を取得するためにセンサが配備されている施設に配備したインタラクティブ環境システム170で使用できる。
【0064】
図3は、実施形態に従って図1および図2で示した習得速度を向上するための方法のフロー図である。図3で参照した手順は、図2の適応的行動トレーナー200に言及しているが、前述のように、適応的行動トレーナーは、図1の携帯可能な訓練モジュール100の考えられる実施形態にすぎない。したがって、図3で示した方法の手順は、図1で説明したさまざまなコンポーネントおよびモジュールにも同等に適用される。
【0065】
この方法は、1つ以上の作業の習得速度の向上を促進するために使用できる。たとえば、この方法は、適応的行動トレーナーの使用者を、1つまたは複数の、習得作業の熟練者レベルの行動に関連付けられた精神生理学的な目標状態に近づけるよう方向付けるために使用できる。一実施形態では、この方法は使用者がゴルフ、バスケットボール、射撃、および/またはその他の使用者の行動をモニタでき、使用者が1つまは複数の、そのスポーツに関連する、たとえばボールを打つ、銃を撃つ、またはゴルフクラブを振るなどの1つまたは複数の作業での熟練者レベルの行動に関連付けられた精神生理学的目標状態に方向付けられるスポーツなどのスポーツにおける適応的行動訓練を支援するために使用できる。
【0066】
訓練時に使用する訓練プロファイルが選択される(手順305)。訓練プロファイルは、実施する特定の作業または活動と関連付けることができる。たとえば、専門技術プロファイルは、射撃技術訓練、ゴルフ、またはその他の使用者が本明細書で説明する適応的習得技術を活用できる活動に対し作成できる。前述のように、さまざまな作業または活動に対する熟練者プロファイルは、熟練者以外の者が習得すべき作業を熟練者が実施するときの神経学的および生理学的状態をモニタすることにより作成できる。たとえば、クラブのスイングなどの動作を実行する時のゴルフのプロをモニタして、ゴルフのプロのスイング前とスイング中の神経学的および生理学的状態に関する情報を収集し、収集したデータは解析してゴルフ指導の速度を向上するための熟練者プロファイルを作成することができる。別の例では、熟練した射撃者を、射撃のために並び銃を撃つなどの射撃技術に関する動作を実行する時にモニタし、収集したデータを解析して、射撃技術訓練速度の向上のための熟練者プロファイルを作成することができる。他の種類の活動における熟練者もモニタして、収集データをこれらの活動の熟練者プロファイルの作成のために解析することができる。熟練者プロファイルは、1つまたは複数の目標状態、適応的訓練に向けた神経学的および/または生理学的状態を含むことができる。
【0067】
訓練プロファイルが選択されると、神経学的および生理学的データを収集するためのさまざまなセンサや、使用者を1つまたは複数の目標状態に方向付けるために支援するためのフィードバックを提供するさまざまなフィードバックデバイスが使用者に取り付けられる。たとえば、実施形態にはEEG、EKG、EMG、EOG、呼吸測定用の呼吸ベルト、体の位置を測定する加速度計、および/またはその他の種類の使用者の神経学的および生理学的状態をモニタするためのセンサを含むことができる。さまざまな種類のフィードバックデバイスも使用者に取り付けることができる。たとえば、一実施形態では、ヘッドフォンのセットを使用して使用者に音声出力を提供したり、および/または触覚バイブレータのセットを使用者に取り付けて触覚的フィードバックを提供することができる。たとえば、射撃技術訓練では、使用者が習得動作を実施する時にフィードバックを提供するために使用者の両肩に触覚バイブレータを取り付けることができる。いくつかの実施形態では、フィードバックデバイスは適応的行動訓練モジュールに組み込むこともできる。たとえば、一実施形態では、適応的行動トレーナーに音声フィードバックを提供するスピーカーおよび/または触覚的フィードバックを使用者に提供する触覚バイブレータを含むことができる。
【0068】
センサを使用者に取り付けると、適応的行動トレーナー200を使用者に取り付けることができる(手順315)。いくつかの実施形態では、適応的行動トレーナー200はストラップまたはベルトでその位置を固定できる。いくつかの実施形態では、使用者の体に取り付ける適応的行動トレーナーの位置は、少なくとも、実施する訓練の種類に基づいて決定される。
【0069】
センサおよび適応的行動トレーナーを使用者の所定位置に取り付けると、適応的行動トレーナーは神経学的および/または生理学的データのさまざまなセンサおよび/または赤外線カメラ278aおよび/またはその他のセンサおよび機器278dなどのその他の外部データソースからのモニタを開始することができる(手順320)。赤外線カメラ278aおよび/またはその他のセンサおよび周辺機器278dは、インタラクティブ環境システム170の一部とすることもできる。
【0070】
センサおよび/またはその他の入力から受信したデータはその後、解析されて使用者の現在の精神生理学的状態を判別することができる(手順325)。使用者の現在の精神生理学的状態はその後、1つまたは複数の選択した訓練プロファイルに関連付けられた目標状態と比較できる(手順330)。その後、選択した訓練プロファイルに関連付けられている1つまたは複数の目標を達成しているかどうかの判定が行われる(手順335)。いくつかの実施形態によると、訓練プロファイルは、プロファイルに関連付けられている訓練要件を満たすために1つまたは複数の目標のどれを満たしていなければならないかを指定しても良い。たとえば、異なるプロファイルで、使用者が訓練プロファイルに関連付けられた目標状態をより達成することを段階的に要求する訓練プロセスの異なる手順を、たとえば初心者、中級者、上級者プロファイルなどといったように開発しても良い。
【0071】
使用者が訓練プロファイルの要件を満たす状態に達した場合、使用者に肯定的なフィードバックを提供することができ(手順340)、使用者の進行状況の追跡に使用される行動情報を更新できる(手順345)。この行動情報は後から、動作の習得における使用者の進行状況の詳細レポートを生成するために使用できる。たとえば、射撃技術訓練では、訓練プロファイルで使用者に特定の体の位置、特定の呼吸パターンを維持することを求め、トリガを引く直前に特定の照準水準を示すよう求めても良い。これらの目標状態を満たしている場合、使用者は触覚、光、音声、または使用者が目標の状態に到達したことを示すその他のフィードバックを受け取ることができる。指導者はまた、この行動情報を、質的および/または量的フィードバックを使用者に提供するために確認することができる。
【0072】
また、使用者が訓練プロファイルの要件を満たす状態にまだ達していない場合、適応的行動トレーナーで、使用者に目的の状態に向けて方向付けるためのフィードバックを提供するかを判別できる(手順350)。フィードバックを判別すると、適応的行動トレーナーは、1つまたは複数のフィードバックデバイスに信号を出力して、デバイスでフィードバックを生成させる。たとえば、音声信号は、音または声などの指示を生成でき、視覚信号は、光や表示などを更新してフィードバックを提供でき、および/または触覚デバイスは触覚的フィードバックの提供に活用しても良い。たとえば、触覚センサは、使用者が呼吸数を調整する必要があることまたは使用者の腕の位置を調整する必要があることを示すために活用しても良い。フィードバックデバイスのさまざまな組み合わせおよびフィードバック信号の組み合わせは、行われている訓練の種類に基づいて提供することができる。使用者の進行状況の追跡に使用される行動情報は、使用者の動作習得に向けた進行状況および動作の熟練者行動に関連付けられた希望する目標状態の達成に向けた進行状況を追跡するためのフィードバックの提供前および/または提供後の使用者の神経学的および生理学的状態を反映するよう更新できる(手順360)。フィードバックが使用者に提供されると、適応的行動トレーナーはフィードバックが、使用者が1つまたは複数の目標状態に向けて進む支援となっているかを判断するために使用者のモニタを継続することができる。
【0073】
当業者は、図3が習得速度を向上するために取り得る方法を示しており、別の実施形態ではその手順は異なる順番で組み合わせたり、および/またはさらに手順を追加できることを認識するであろう。たとえば、適応的行動トレーナーは、いくつかの実施形態で使用者にセンサが取り付けられる前に使用者に取り付けることができる。さらに、センサおよび適応的行動トレーナーを使用者に取り付けた後、訓練プロファイルを選択することができる。
【0074】
本発明のさまざまな実装の実例を説明してきた。しかし、通常の当業者は、追加の実装も可能であり、本発明の範囲内であることは分かるであろう。本明細書で開示した前述の図および形態で説明したさまざまな実例のモジュールおよび方法手順は頻繁に、電子ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または前述の組み合わせとして実装されることが多くあることは、このような当業者には理解されよう。このハードウェアおよびソフトウェアの互換性を明確に示すために、さまざまな実例のモジュールおよび方法手順はその機能性の観点から上記で説明してきた。このような機能性がハードウェアとソフトウェアのどちらで実装されるかは、システム全体が課す特定のアプリケーションおよび設計拘束次第である。当業者は説明した機能性をさまざまな方法で特定のアプリケーションで実装できるが、このような実装の決定は、本発明の範囲から逸脱させるものであると解釈されるべきではない。さらに、モジュールまたは手順内での機能性のグループ分けは、説明を簡単にするためのものである。具体的な機能は、1つのモジュールまたは手順から別のモジュールまたは手順に、本発明から逸脱せずに動かすことができる。
【0075】
さらに、本明細書で開示した実施形態と連携して説明した実例に挙げた多様なモジュールおよび方法手順は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、またはその他のプログラム可能な論理デバイス、離散ゲートまたはトランジスタ論理、離散ハードウェアコンポーネント、または本明細書で説明した機能を実行するために設計されたそれらの任意の組み合わせなどのハードウェアを使用して実装または実行できる。汎用プロセッサはハードウェアであり、マイクロプロセッサとすることができるが、代わりにプロセッサは任意のハードウェアプロセッサまたはコントローラ、マイクロコントローラとすることもできる。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、たとえばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと併用した1つまたは複数のマイクロプロセッサ、あるいはその他の任意の同様の構成などとして実装できる。
【0076】
また、本明細書で開示した実施形態と連携して説明した方法の手順またはアルゴリズムは直接ハードウェア内、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュール内、またはその2つの組み合わせ内に組み込むことができる。ソフトウェアモジュールは、コンピュータで読み取り可能なメディア、たとえばRAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、またはその他の形式の、ネットワークストレージメディアなどのストレージメディアなどにアクセスできるコンピュータまたはコントローラ内に置くことができる。典型的なストレージメディアは、プロセッサが情報を読み取り、情報を書き込むことができるようなストレージメディアのようなプロセッサに結合できる。この他に、ストレージメディアはプロセッサと一体化することもできる。プロセッサおよびストレージメディアも、ASIC内に置くことができる。
【0077】
開示された実施形態の前述の説明は、当業者が本発明を作成または使用することができるように提供されたものである。これらの実施形態へのさまざまな変更は、当業者にはすぐに明らかになろう。また、本明細書で説明した一般的原理は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、他の実施形態に適用できる。したがって、本明細書で提示した説明および図面は、本発明の典型的な実施形態であり、本発明を幅広く検討される当該の代表であることは理解されよう。さらに、本発明の範囲は他の実施形態を完全に網羅するものであり、それに応じて本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲以外により制限されるものではないことは理解されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイムデータ取得と、使用者から取得されたリアルタイムの精神生理学的信号の分析を使用した作業の習得速度の向上のためのシステムであって、
前記使用者の習得作業実行中に使用者に取り付けた複数のセンサから収集された精神生理学的信号データを連続的にモニタするよう設定されたモニタリングモジュールと、
前記使用者の現在の精神生理学的状態を生成するための前記精神生理学的信号データを解析し、
前記使用者の前記現在の精神生理学的状態と1つまたは複数の習得作業の熟練者動作に関連付けられた目標状態とを比較し、
前記使用者の前記現在の精神生理学的状態と1つまたは複数の目標状態との差に基づく制御信号のセットを生成するよう設定された
専門技術プロファイラモジュールと、
前記制御信号を前記専門技術プロファイラモジュールから受信し、
前記使用者が前記1つまたは複数の目標状態に向かうよう指導するためのリアルタイムでの複数モダリティフィードバックを前記使用者に送信し、ここで前記使用者に送信される前記複数モダリティフィードバックが前記専門技術プロファイラモジュールから受信した前記制御信号に基づいて送信するよう設定された
リアルタイムフィードバックジェネレータと、
を備えたシステム。
【請求項2】
前記使用者に前記フィードバックが送信された後に継続して前記精神生理学的信号データをモニタするようモニタリングモジュールが設定されており、かつ、前記使用者に送信された前記フィードバックが、前記使用者が前記1つまたは複数の目標状態に到達する支援となったかどうかを判別するよう設定されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記精神生理学的信号データが1つまたは複数の脳波計(EEG)データ、心電計(EKG)データ、筋電図検査(EMG)データ、呼吸データ、筋緊張、血圧、体温、血流、電気皮膚反応、および動作のデータを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記モニタリングモジュールがさらに使用者のシステムとのやり取りを捉えるための1つまたは複数のインターフェイスとの使用者のやり取りのモニタを含む作業行動の追加パラメータをモニタするよう設定された請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
リアルタイムフィードバックジェネレータがさらに、1つまたは複数のフィードバックデバイスを、前記使用者に提供される前記複数モダリティフィードバックに基づいてアクティベートするための制御信号を生成するよう設定された請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つまたは複数のフィードバックデバイスがビデオ表示を含む請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数のフィードバックデバイスが音声出力デバイスを含む請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つまたは複数のフィードバックデバイスが触覚バイブレータを含む請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
適応的行動トレーナーを前記使用者の体に着用できる請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
適応的行動トレーナーがさらに無線データインターフェイスを備え、前記モニタリングモジュールで収集した精神生理学的信号データをリモートコンピュータステーションに前記無線インターフェイスを介して転送するよう設定された請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記リモートコンピュータステーションが、精神生理学的データを前記適応的行動トレーナーから前記無線インターフェイスを介して受信し、前記精神生理学的信号データをオフライン解析し、かつ、前記使用者の作業行動の改善を支援するための行動フィードバックを生成するよう設定された請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記リモートコンピュータステーションが指導者からのフィードバックデータを受信するためのインターフェイスを含み、前記フィードバックデータをシステムから無線インターフェイスを介して受信するよう設定され、前記フィードバックデータに従って前記専門技術プロファイラモジュールによって使用される前記1つまたは複数の目標状態を調整するよう設定された請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
リアルタイムデータ取得と、使用者が装着した適応的携帯可能訓練装置を使用して使用者から取得されたリアルタイムの精神生理学的信号の分析を使用した作業の習得速度の向上のための方法で、
前記使用者が習得作業を実行している間に使用者に取り付けた複数のセンサからの精神生理学的信号データの前記携帯可能な訓練装置で連続的にモニタし、
前記使用者の現在の精神生理学的状態を生成するために、前記精神生理学的信号データの前記携帯可能な訓練装置で解析し、
前記携帯可能な訓練装置での前記現在の精神生理学的状態と前記習得作業の熟練者行動に関連付けられた1つまたは複数の目標状態とを比較し、
前記携帯可能な訓練装置で、前記使用者に提供される複数モダリティフィードバックを、使用者の前記現在の精神生理学的状態と前記1つまたは複数の目標状態との比較に基づいて決定し、
前記携帯可能な訓練装置から前記使用者へ、前記使用者が前記1つまたは複数の目標状態に向かうよう指導するためのリアルタイムでの複数モダリティフィードバックを送信し、この送信が前記使用者に送信される前記複数モダリティフィードバックが専門技術プロファイラモジュールから受信した制御信号に基づく送信であること、
とを備えた方法。
【請求項14】
さらに、
前記使用者に前記フィードバックが送信された後に前記精神生理学的信号データを複数のセンサから連続的にモニタし、
かつ、前記使用者に送信された前記フィードバックが、前記使用者が前記1つまたは複数の目標状態に到達する支援となったかどうかを判別すること、
とを備えた請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記精神生理学的信号データが1つまたは複数の脳波計(EEG)データ、心電計(EKG)データ、筋電図検査(EMG)データ、呼吸データ、筋緊張、血圧、体温、血流、電気皮膚反応、および動作のデータを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
使用者に取り付けた複数のセンサからの精神生理学的信号データをモニタする方法が、さらに、作業行動の追加のパラメータを、使用者が使用者とシステムとのやり取りを捉える1つまたは複数のインターフェイスとのやり取りのモニタを含めてモニタすることを備えた請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記使用者が前記1つまたは複数の目標状態に向かうよう指示するために前記複数モダリティのフィードバックを前記使用者に送信することと、さらに、1つまたは複数のフィードバックデバイスの制御信号を、前記使用者に提供される前記複数モダリティフィードバックに基づいて生成することを備えた請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数のフィードバックデバイスがビデオ表示を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数のフィードバックデバイスが音声出力デバイスを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数のフィードバックデバイスが触覚バイブレータを含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
適応的行動トレーナーを使用者の体に着用できる請求項17に記載の方法。
【請求項22】
さらに、
精神生理学的データを適応的行動トレーナーから無線データインターフェイスを介してリモートコンピュータシステムで受信し、
前記精神生理学的信号データをオフライン解析し、
前記使用者の前記作業行動の改善を支援するための行動フィードバックデータを生成すること
とを備えた請求項13に記載の方法。
【請求項23】
さらに、
精神生理学的データを適応的行動トレーナーから無線データインターフェイスを介してリモートコンピュータシステムで受信し、
前記リモートコンピュータシステムで指導者からのフィードバックデータを受信すること
とを備えた請求項13に記載の方法。
【請求項24】
さらに、
前記リモートコンピュータシステムからの前記フィードバックを携帯可能な訓練デバイスで受信することと、
フィードバックデータに基づいた前記使用者の進行状況の評価に使用する前記1つまたは複数の目標状態を調整すること
とを備えた請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記作業の習得速度の向上に少なくとも1つの前記作業での改善行動、前記作業取得にかかる時間の減少、習得した前記作業の前記使用者の保持力の改善、訓練中に最初の精神生理学的状態から2番目の精神生理学的状態に変化する前記使用者の能力の改善を含む請求項13に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524636(P2012−524636A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507445(P2012−507445)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032291
【国際公開番号】WO2010/124247
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511250460)アドバンスド ブレイン モニタリング,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】