説明

適応膜構造

本発明は、移動可能な膜を有する多孔性適応膜構造に関する。構造は、周囲の環境条件に応じて、その気体、液体、または微粒子透過性を変化させることができる。本発明の用途は、提供される保護のレベルが環境中の条件に基く、着心地のよい保護衣料を含む。したがって、保護衣料は、危険でない環境中で高度に通気性かつ快適であるが、危険な環境中で不透過性であるか半透過性にすぎない。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2004年4月30日に出願された米国仮特許出願第60/567,357号の利益を主張するものであり、あらゆる目的のため、その全体を本出願の一部として援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、移動可能な膜を有する適応膜構造に関する。一実施形態において、構造は、周囲の環境条件に応じてその液体または蒸気透過性を変化させることができる。本発明の用途は、提供される保護のレベルが環境中の条件に基く、着心地のよい保護衣料などの物品を含む。したがって、保護衣料は、危険でない環境中で高度に通気性かつ快適であるが、危険な環境中で半透過性または不透過性である。
【背景技術】
【0003】
毒性化学剤および生物剤に対してガードする人の保護衣料の、必要性が増大している。これらの剤は、
(a)化学製造プラント、科学もしくは医学実験室、または病院において誤って放出されるか、
(b)敵の軍隊を攻撃するために、政府によって、戦時中意図的に放出されるか、
(c)大混乱、恐怖、および広範囲に及ぶ破壊を生じさせる目的で、犯罪者またはテロリスト組織によって、平時中放出されることがある。
【0004】
この理由のため、米国軍および世界中の国の他の防衛組織は、化学戦剤および生物戦剤に対する適切な保護をもたらそうと努めている。そのような保護衣料の必要は、また、警察署、消防署、緊急事態対応者、およびヘルスケアプロバイダーまで及ぶ。これらの組織は、化学毒素または生物毒素の破滅的な放出後、援助および救助を与える責任があるが、それらは、適切な保護なしで、それらの責任を果たすことができない(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献2によれば、ほとんどの化学戦毒素が1ppm(百万分率)の低い濃度で致死的である。したがって、化学戦剤からの適切な保護をもたらすために、保護スーツが、そのような化学物質に対してほぼ不透過性でなければならない。毒性化学蒸気および液体に対して不透過性である構造を考案することは困難でないが、そのような構造は、また、着るのに暑く、重く、不快である。保護スーツによって提供される快適さの程度は、主に、保護布帛を透過することができる水蒸気の量によって定められる。人体は、体温を制御するための方法として、水蒸気を連続的に発汗する。保護布帛が体からの水蒸気の損失を妨げるとき、蒸散冷却プロセスは妨げられ、これは、人の不快さをもたらす。保護スーツが水蒸気の損失をほとんどまたはまったく可能にしないとき、極度の熱ストレスまたは熱中症が、短期間で生じることがある。したがって、毒性化学物質および液体に対する最も高いレベルの保護を提供することに加えて、実際的な化学および生物保護スーツが、高水蒸気透過率を有さなければならない。適切な保護構造は、また、重量が軽く、長期間にわたって同じ高レベルの保護を提供しなければならない。
【0006】
今日市場で入手可能な非常にさまざまな保護衣料がある。最も高いレベルの快適さ(高水蒸気透過率)を提供する衣類は、化学的および生物学的危険に対する保護をほとんどまたはまったく提供せず、毒性危険に対する最も高いレベルの保護を提供するものは、また、典型的には、水蒸気に対して不透過性である。たとえば、織布から製造された衣類は、非常に通気性であり、着心地がよいが、有毒剤からの保護を提供しない。商品名タイベック(Tyvek)(登録商標)スパンボンドオレフィン(デラウェア州ウィルミントンのデュポン(DuPont, Wilmington, Delaware)から入手可能)で販売されるような不織布は、微粒子剤からの保護を提供するが、化学液体および蒸気に対する保護をほとんど提供しない。これらの不織布は、また、天然または合成繊維から製造された織布より、水蒸気に対して透過性でない。積層ポリマーフィルムの多数の層から製造された保護スーツは、液体剤および蒸気剤の両方に対する高レベルの保護を提供するが、また、水蒸気に対して主に不透過性である。そのような不透過性スーツは、快適さを保護スーツを着る個人に与えるために、自蔵通気装置(Self Contained Breathing Apparatus)(SCBA)を必要とすることがある。
【0007】
化学保護衣料のための積層多層フィルム構造を作る際に、かなりの努力が費やされている。積層構造内の各層は、特定の特徴を衣料に与えるように選択される。いくつかの層が強度をもたらし、他の層が、特定の種類の化学物質に対する耐性をもたらす。そのような積層構造は、受動的構造として特徴づけることができ、というのは、バリヤ層が、必ずしも透過化学種と相互作用または反応することなく、毒性化学物質の動きを物理的に妨げるからである。特許文献1(マクルア(Mc Clure))、特許文献2(ラングリー(Langley))、特許文献3(ラングリー(Langley))、および特許文献4(ハウアー(Hauer))は、1つもしくはそれ以上の化学バリヤ層からなるさまざまな積層構造を記載している。そのような積層フィルムは、化学物質の透過を著しく妨げるが、また、水蒸気の輸送を防止する。したがって、そのような多層フィルムから製造された衣料は、非常に着心地が悪い。
【0008】
衣料内の受動的保護層の別の例は、微孔性膜の使用である。微孔性膜の製造および特徴は、当該技術において周知であり、たとえば、非特許文献3を参照されたい。細孔径および細孔の表面機能性による、そのような膜は、特定の種類の液体化学物質に対する保護をもたらすことができる。また、多孔性構造のため、膜層は、非多孔性多層積層構造より通気性であり着心地がよい。特許文献5(ゴア(Gore))は、水バリヤとして親水性ポリマー層と関連してポリテトラフルオロエチレンまたはポリプロピレンから製造された疎水性微孔性膜の使用を記載している。特許文献6(ムロジンスキ(Mrozinski))は、ポリオレフィンおよびフルオロケミカルオキサゾリジノンから製造された微孔性膜を記載している。しかし、そのような膜の細孔の直径が典型的には0.1から10マイクロメートルであるので、結果として生じる構造は、化学蒸気に対する多くの保護を提供することができない。
【0009】
研究努力が、また、性質が「反応性」である保護衣料を作る方に向けられている。保護衣類は、毒性化学蒸気が衣類を通って拡散するとき、毒性化学蒸気を吸収するか、吸着するか、これらと化学的に反応することができる特定の化学種を衣類に封入することによって反応性にされる。そのような反応性衣類は、通常、多数の層から構成され、少なくとも1つの層が封入された反応物を含んでなり、少なくとも1つの外層が、空気透過性層からなる。特許文献7(フォン・ブリュッヒャー(von Blucher))は、反応種を適切なポリマーに封入し、結果として生じる固体を多孔性布帛上に堆積させることによって、反応性衣類を作る技術を記載している。この発明において提案される反応種は、シリカキセロゲル、粉末状金属酸化物および水酸化物、モレキュラーシーブ、イオン交換体、ならびに活性炭のさまざまな形態である。特許文献8(ケリー(Kelly))は、化学保護のための向上された反応性構造を記載している。向上は、活性炭層と関連する疎水性微孔性膜層の使用によってもたらされる。微孔性膜の目的は、液体化学物質からの保護をもたらし、かつ、反応性層を、液体化学物質によって充満され毒されることから保護することである。反応性衣類の主な制限の1つは、それらが限られた有効寿命を有することである。これは、活性炭などの反応性剤が、毒性化学剤と反応するだけでなく、環境中の多くの異なった不純物によって毒されることがあるからである。したがって、そのような反応性衣類によって提供される保護のレベルは、時間とともに減少する。また、活性炭などの固体反応物に依存する反応性スーツは、著しい重量を有し、したがって、長期間にわたって着るのに扱いにくい。
【0010】
危険物質(hazardous materials)(「hazmat」)保護衣類を、また、半透過性または半選択的なポリマー膜から作ることができる。そのような膜は、通常ポリマー電解質およびイオン交換ポリマーから製造される非多孔性連続ポリマーフィルムである。そのような選択的な膜は、化学剤の透過に対する著しいバリヤを提供するが、依然として、水蒸気の透過を考慮する。特許文献9(プロツカー(Plotzker))は、スルホン酸金属イオン塩官能基を含有する高度フッ素化イオン交換ポリマーから製造される半透過性ポリマー膜から複合保護布帛を作る技術を記載している。特許文献10(タン(Tan))は、スチレンセグメントの部分がスルホン化されてスルホン酸基を形成したポリスチレンおよびイソブチレンのブロックコポリマーから保護半透過性膜を作る方法を記載している。ポリマーのイオン含量は、非スルホン化スチレンブロックコポリマーから製造された膜について可能であるより大きい水蒸気の透過を考慮する。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,772,510号明細書
【特許文献2】米国特許第4,833,010号明細書
【特許文献3】米国特許第4,855,178号明細書
【特許文献4】米国特許第5,626,947号明細書
【特許文献5】米国特許第4,194,041号明細書
【特許文献6】米国特許第5,260,360号明細書
【特許文献7】米国特許第4,455,187号明細書
【特許文献8】米国特許第5,273,814号明細書
【特許文献9】米国特許第4,515,761号明細書
【特許文献10】米国特許第6,579,948号明細書
【非特許文献1】「化学兵器でのテロリズムに対応するときの警察官および救急医療職員のための化学保護衣類(Chemical Protective Clothing for Law Enforcement Patrol Officers and Emergency Medical Services when Responding to Terrorism with Chemical Weapons)」、ブイ・ジェイ・アーカ(Arca, V.J.)およびエス・エム・マーシャル(Marshall, S. M.)、化学兵器、向上された対応プログラム、米国陸軍兵士、および生物化学部隊(the Chemical Weapons, Improved Response Program, U.S. Army Soldier and Biological Chemical Command)の報告書、1999年11月
【非特許文献2】化学戦剤および生物戦剤のハンドブック(Handbook of Chemical and Biological Warfare Agents)(ディー・ハンク・エリソン(D. Hank Ellison)、CRCプレス(CRC Press)、フロリダ州ボカラトン(Boca Raton, FL)、第1版、1999))
【非特許文献3】リチャード・ダブリュー・ベーカー(Richard W. Baker)、「膜技術(Membrane Technology)」、ポリマー科学技術事典(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)、第3版、ジョン・ワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、ニュージャージー州ホーボーケン(Hoboken, NJ)、2003、184〜248ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術に記載された保護衣類のすべてで2つの主要な問題がある。第1に、すべての既存の保護衣類が、常に、同じ一定のレベルの保護を提供する。ほとんどの状況において、保護衣類の着用者は、常に環境からの保護を必要としない。保護は、毒性化学剤または生物剤が環境中に存在するときに必要とされるだけである。第2に、技術に記載された衣類のいずれも、保護および快適さの最適なバランスを提供しない。これまで記載されたすべての場合において、保護の代わりに快適さが犠牲にされるか、その逆である。本発明の目的は、移動可能な膜を有する膜構造を使用して上述の問題を克服することであり、これの1つの利点は、可変かつ制御可能な透過性である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、適応膜(adaptive membrane)構造であって、第1および第2の膜と、第1の膜を移動させて、気体、蒸気、液体、および/または微粒子に対する構造の透過性が減少される位置で、第2の膜と接触させる、作動刺激(actuating stimulus)に応答するための手段とを含む適応膜構造を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、衣料品、人、動物の収容のためのエンクロージャ、または、気体、蒸気、液体、および/または微粒子の流れを制御するためのバルブを含む、上述されたような適応膜構造から製造されるかそれを組入れる物理的資産およびデバイスを提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、穴を有する第1および第2の膜と、第1の膜を移動させて、第1の膜の穴が第2の膜の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で、第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含む適応膜構造を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、穴を有する第1および第2の膜と、第1の膜の1つもしくはそれ以上の部分を移動させて、第2の膜の対応する1つもしくは複数の部分と、第1の膜の各部分の穴が第2の膜の対応する部分の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含む適応膜構造を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、第1および第2の移動可能な膜と、電力、磁気力、動水力学的力、または静水力学的力に応答するための手段とを含む適応膜構造を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、第1および第2の移動可能な膜を含んでなる膜構造において、電力、磁気力、動水力学的力、または静水力学的力を、第1の膜に付与することによって、第1の膜を第2の膜の方に移動させるための方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、(a)穴を、各膜に、膜が互いに接触しているときに穴が実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置に設け、(b)膜を移動させて互いに接触させることによって、穴を有する第1および第2の膜を通る気体、蒸気、液体、および/または微粒子の流れを制御するための方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、穴を有する第1および第2の移動可能な膜と、いかなる穴も塞がない、膜間に配置されたスペーサとを含む適応膜構造を提供することである。望ましい場合、膜の1つを変形して、それを移動させて他方の膜と接触させるための手段もさらに含めることができる。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、第1および第2の移動可能な膜と、第1の膜を移動させて第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段と、作動刺激を活性化するセンサとを含む適応膜構造を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、穴を有する第1の膜と、突出部材を有する第2の膜と、一方の膜を他方の膜の方に移動させる作動刺激に応答する手段とを含む適応膜構造であって、突出部材が、一方の膜が他方の膜の方に移動されるときに第1の膜上の穴に挿入可能であるように第2の膜上に位置決めされる適応膜構造を提供することである。
【0023】
本発明は、また、適応膜構造を製造するためのプロセスを提供する。
【0024】
本発明によって提供される他の目的および有利な技術効果を、以下でより完全に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の1つの重要な目的は、適応膜構造を提供することによって、保護衣類および他の保護構造の上述の制限を克服することである。「適応膜構造」は、少なくとも2つの膜を含んでなる構造であり、膜は、力などの作動刺激の活性化または付与時、移動可能である。したがって、膜構造は、外部環境中の条件に基いて構造の透過性を変化させることができるという意味において「適応」である。
【0026】
本発明に使用されるような「膜」は、気体、蒸気、エアロゾル、液体、および/または微粒子などの、接触する種の輸送を適度にする別々の薄い構造である。膜の例としては、限定することなく、フィルム、プラスチックシーティング、合成バリヤ、層、薄板構造、織布、および不織シートが挙げられる。膜は、化学的にまたは物理的に均質または不均質であることができる。「微孔性膜」は、典型的には直径が0.1から10マイクロメートルの範囲内の細孔を含む膜である。微孔性膜は、典型的には、総膜体積の、多孔性である部分(すなわち、多孔性に関連する)、すなわち、膜厚さと比較された膜内の平均細孔長さ(すなわち、曲がりくねりに関連する)、および平均細孔直径を反映する用語によって特徴づけられる。ここで使用されるような「細孔」という用語は、膜を完全に横断してもしなくてもよい、膜に存在する開口部を示す。典型的には、細孔径、細孔形状、および/または細孔配置は、十分に規定または制御されないが、比較的再現可能な平均細孔径および/または細孔径分布があることができる。
【0027】
本発明の構造に使用される膜は、典型的には、細孔と区別されるような穴を有し、「穴」は、膜を完全に横断する開口部である。1つの膜の穴は、別の膜の穴と同じサイズおよび形状であってもなくてもよい。穴は、それらが円の形状を有するという観点から、ここで説明されるが、穴が、完全に円形であるかさらにはほぼ円形である形状を有することは必要ではない。
【0028】
穴が、完全に重なるか、部分的に重なるか、まったく重ならないように、膜のそれぞれの平面に垂直なまたは本質的に垂直な線の垂直方向において、1つの膜の穴を別の膜の穴と整列させることができる。穴が同じサイズである場合、それらの境界が垂直整列において一致するとき、または、穴が同じサイズでない場合、より小さい穴の領域がより大きい穴の領域内に完全に嵌まるとき、穴は完全に重なる。再び、垂直整列の方向において、一方の膜上の穴を通過する、膜のそれぞれの平面に垂直なまたは本質的に垂直な線が、他方の膜上の穴のいかなる部分も通過しないとき、穴はまったく重ならない。重なりを有さない膜が、図1Cおよび図2Cに示されている。部分的な重なりは、一方の膜上の穴を通過する垂直なまたは本質的に垂直な線が、他方の膜上の穴の一部のみを通過する中間の状態である。
【0029】
「開放領域」という用語は、2つの膜のそれぞれの穴が重なる、パーセンテージとして表現される程度を指すために使用される。図1Cおよび図2Cの膜などの、まったく重ならない膜の場合、開放領域は0%と定義される。逆に、100%の開放領域は、最大開放領域の存在に相当し、これは、特定の組の膜を、穴が完全に重なるように配列することによって達成可能である。0と100との間のパーセンテージは、部分的な重なりを示す。「位置合せされていない(not in registration)」、および同等に「位置合せされていない(out of registration)」という用語は、2つの膜の穴がまったく重ならない(再び、たとえば、図1Cおよび図2Cを参照する)ことを示すためにここで使用され、これは、0の開放領域を有することに等しい。「実質的に位置合せされていない」という用語は、部分的な重なりがあること、すなわち、膜構造の開放領域が、0%を超えて、50%までであるが50%を含まない範囲内であることを示す。
【0030】
本発明の適応膜構造は、「作動させる」ことができ、これは、隣接した膜の表面が移動して互いに接触することを引起し、それにより、膜構造の透過性を変化させる、力(「作動刺激」)などの刺激の付与または動作時の構造の状態を示す。隣接した膜は、互いに接触させることができる膜である。したがって、「未作動」という用語は、作動刺激の付与前の適応膜構造の状態を示し、この状態において、間隙が、作動刺激の付与時に接触される膜の間に存在する。「非作動」という用語は、作動されたときに接触された隣接した膜の間の間隙の再形成を伴う、作動刺激の付与およびその後の除去後の適応膜構造の状態を示す。
【0031】
ここで使用されるような「適応バリヤシステム」という用語は、作動が、化学種、生物種、および/または微粒子種に対する膜構造の透過性を変化させる適応膜構造を含んでなるシステムを示す。
【0032】
したがって、本発明の適応膜構造は、気体、蒸気、液体、および/または微粒子透過性のさまざまな状態を表示することができる。たとえば、本発明の膜構造が、危険な剤に対する保護のために使用される場合、それは、透過性の2つの異なった状態を表示することができる。1つの状態において、危険な環境条件が存在しないとき、本発明の膜構造は、水蒸気および気体に対して高度に透過性であり、それにより、高レベルの人の快適さを提供する。「未作動」という用語は、この状態を示すためにここで使用される。本発明の膜構造が危険な環境に曝されると、それは、危険な化学および/または生物毒素および/または化学および/または生物病原体に対して不透過性である別の状態に変えられ、それにより、必要とされるときに高レベルの保護を提供する。しかし、作動状態において、構造は、水蒸気に対して透過性のままであることができる。
【0033】
本発明の膜の、透過性の1つの状態から透過性の別の状態への変化は、ここで「作動刺激」と呼ばれる、力などの刺激の付与によってもたらされる。作動刺激は、限定することなく、圧力、力、水蒸気の温度または周囲濃度の変化、電圧、電流、磁界、および電界を含むいくつかの形態のいずれかであることができる。本発明の一実施形態において、作動刺激は、印加電界の形態をとり、これは、構造内の膜が、移動して、構造を未作動状態から作動状態に変えることを引起す。
【0034】
作動刺激の付与は、手動操作スイッチで行うことができる。しかし、代替実施形態において、センサが、構造が配置された環境の変化を検出することができ、かつ作動刺激を自動的に活性化する(activate)ことができる。センサは、信号(たとえば、電気信号、光信号、または電波信号)を送って、回路を閉鎖して、作動刺激を活性化する、すなわち、作動刺激の付与をトリガすることによって、たとえば、温度もしくは湿度の変化、または望ましくない化学種、生物種、および/または微粒子種の存在(濃度の変化によって示されるような)に応答することによって、これを行うことができる。
【0035】
本発明の適応バリヤシステムの典型的な実施形態の概略図が、図1A、図1B、および図1Cに示されている。このシステムは、互いに主に平行である1対の平面膜2および2’を含んでなり、各膜は、図1A、図1B、および図1Cの示された3および3’などの穴の幾何学的アレイをさらに含んでなる。穴は、膜の厚さを完全に横断し、膜厚さを横切るおよび通る、化学種、生物種、および/または微粒子種の、穴を囲む膜材料を通る同じ種の対流および/または拡散と比較されると増加された対流および/または拡散の経路を生じさせる。適応バリヤシステムが作動されないとき、膜対2および2’の隣接した表面4および4’は、互いに接触しておらず、間隙5が膜2と膜2’との間に存在する。作動力が適応バリヤシステムに付与されると、それは、膜2および2’の一方または両方を移動させ、これらの表面4および4’は互いに接触され、したがって、図2A、図2B、および図2Cに示されているように、2と2’との間の間隙をなくす。
【0036】
各膜の穴のアレイが、隣接した膜表面4および4’上の穴のアレイの開口部が、典型的には、互いに少なくとも実質的に位置合せされていないようなものであることが、本発明のさらなる特徴である。すなわち、適応バリヤシステムが作動されるとき、穴の重なりの程度は、開放領域が50%未満に低減されるようなものである。開放領域が10%以下に低減されることが好ましく、作動時、それが1%以下に低減されることがより好ましい。さらに好ましい実施形態において、穴は位置合せされておらず、開放領域は、作動時、0%に低減される。本発明のこの最も好ましい実施形態において、膜2の表面4上の穴開口部は膜2’の隣接した表面4’上の穴開口部と重ならない。2つの隣接した膜2および2’が接触しているとき、したがって、各膜の穴は効果的にシールされる。したがって、図2Cに見られるように、接触している2つの隣接した膜を横切る、化学種、生物種、および/または他の微粒子種の対流および/または拡散のための連続多孔性経路がない。しかし、2つの隣接した膜表面4および4’が接触していないとき、化学種、生物種、および/または他の微粒子種が、1つの膜をその穴を通って横断し、接触していない膜の間の間隙に入り、次に、第2の膜をその穴を通って横断することができる(たとえば、図1Cの流れ経路6を参照のこと)。種の対流および/または拡散は、接触していない隣接した膜を通って、同じ隣接した膜が作動力の作用によって移動されて接触したときの同じ種の対流および/または拡散と比較して、大きく向上される。
【0037】
上で示されたように、図1A、図1B、図1C、図2A、図2B、および図2Cに示された穴は、膜の平面に垂直な直線軸を有する直円柱形穴であるが、本発明の穴は、このジオメトリに限定されない。特に、各穴は、他の非円形断面形状、および/または膜の平面に対するそれらの軸の傾きを有することができる。実際に、一般に、いかなる穴も直線経路に沿って膜を横断することは必要ではないが、代わりに、非直線の曲がりくねった経路に従うことができる。さらに、いかなる穴の断面形状も、穴が膜を横断するときに一定である必要はない。図3は、穴が一般的な曲がりくねった経路に沿って膜を横断するときに形状およびサイズが変化する非円形断面を有する穴を有する本発明による膜の一部の断面図を示す。最適な穴の直径は、適応膜構造のなされるべき特定の使用、特に、どのくらいの流れまたは拡散が、未作動状態で穴を通って望まれるかによって変わる。すべての場合、穴は、輸送が未作動状態で生じることを可能にするのに十分に大きくなければならない。
【0038】
図1A、図1B、図1C、図2A、図2B、および図2Cに示された穴アレイは、同じ規則的な正方形ピッチパターンを含んでなるが、本発明の穴アレイはこのパターンに限定されない。特に、膜2上のアレイパターンは、膜2’上のパターンと異なることができ、いずれのパターンも、パターンが、作動力の作用下での対の隣接した表面4および4’の接触時、膜2の表面4上の穴が、膜2’の隣接した表面4’上のいかなる穴の開口部とも、位置合せされていないのでないとしても、少なくとも実質的に位置合せされていないようなものであるという条件で、いかなる規則的なまたは不規則的なピッチパターンも含んでなることができる。
【0039】
図1A、図1B、図1C、図2A、図2B、および図2Cを再び参照すると、膜2および2’は、同じまたは異なった材料もしくは材料の組合せから製造することができ、さらに、対の各膜は、同じまたは異なった厚さを有することができる。膜が製造される材料は、使用中膜と接触することがある1つもしくはそれ以上の種に対する望ましいレベルの透過性を与えるように選択される。たとえば、膜を構成する材料は、水蒸気に対する高透過性を有するが、化学戦攻撃を受ける兵員によって遭遇されることがあるような1つもしくはそれ以上の人毒性剤または人毒物剤または人病原体(human toxic or poison agents or pathogens)に対する非常に低い透過性を有するように選択することができる。
【0040】
膜2および2’を作るために使用することができる材料は、任意のシート構造から選択することができるが、シート構造が可撓性であることが好ましく、使用される材料が性質がポリマーであることがまた好ましいが、必要ではない。好ましくは、可撓性シート構造は、少なくとも1つのポリマー成分から製造することができる。膜2および2’を作るために使用されるそのようなポリマーシートまたはフィルムは、連続(すなわち、微小空隙も微小孔も含まない)または微孔性であることができる。ポリマーシートまたはフィルムを作るための方法は、当該技術において周知である。そのようなポリマーシートまたはフィルムは、非常にさまざまなポリマーから製造することができる。シートまたはフィルムを作るために使用することができるポリマーとしては、限定することなく、ポリエステル、ポリオレフィン(特に高性能ポリエチレン)、ポリアミド(脂肪族、芳香族、および混合された脂肪族/芳香族)、ポリベンザゾール、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマー、二フッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマー、ブタジエンおよびスチレンのコポリマー、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー、エチレンおよびビニルアルコールのコポリマー、エチレンならびにメタクリル酸およびアクリル酸などのアクリルモノマーのコポリマー、ならびにイオノマーが挙げられる。適切なイオノマーの非限定的な例としては、エチレン酸コポリマーのコポリマーを中和することによって形成されたイオノマー、ペルフルオロ化スルホネートイオノマーおよびペルフルオロ化カルボキシレートイオノマー、ならびにスルホン化ポリストリレン(polystryrene)が挙げられる。
【0041】
ポリウレタン、スチレンおよびブタジエンのブロックコポリマーおよびランダムコポリマー、スチレンおよびイソプレンのブロックコポリマーおよびランダムコポリマー、ブタジエンおよびイソプレンのホモポリマー、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、フルオロエラストマー、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリアクリレートゴム、ブチルゴム、およびシリコーンゴムなどであるが、これらに限定されない熱可塑性エラストマーおよび加硫エラストマーから製造されたポリマーフィルムおよびシートも、本発明の膜材料として有用である。
【0042】
膜2および2’を作るために使用されるべき連続ポリマーフィルムが、また、性質が半透過性であることができる。半透過性ポリマー膜およびそれらの製造が、たとえば、米国特許第4,515,761号明細書(プロツカー(Plotzker))および米国特許第6,579,948号明細書(タン(Tan))などのソースから知られている。
【0043】
本発明に使用される膜を作るための出発材料は、連続ポリマーフィルムに限定されない。適切な出発材料が、また、典型的な細孔径が約0.1から10マイクロメートルである、微孔性膜に存在するような微小空隙または微小孔を有することができる。微孔性膜を作るためのさまざまな方法としては、
ニュークリポア(Nuclepore)(登録商標)ブランドポリエステル膜およびポリカーボネート膜(ニュージャージー州クリフトンのワットマン・インコーポレイテッド(Whatman Inc., Clifton, NJ))を作るために用いられるトラックエッチプロセス、
ポリスルホン膜、芳香族ポリアミド膜、およびポリフッ化ビニリデン膜を作るための転相プロセス、
微孔性ポリテトラフルオロエチレン膜およびポリエチレン膜を作るための延伸プロセス、
重合反応の間存在する非反応種(「ポロゲン」)が、その後、ポリマー生成物から抽出される相分離プロセス、ならびに
不織シート構造を作るためのスパンボンド/メルトブローンプロセスが挙げられる。
【0044】
膜は、また、有害な種および好ましくない種を吸着するか、吸収するか、これらと反応する材料を含有することができる。したがって、膜としては、活性炭、高表面シリカ、モレキュラーシーブ、キセロゲル、イオン交換材料、粉末状金属酸化物、粉末状金属水酸化物、抗菌剤などを挙げることができ、これらは、望ましい場合ナノ粒子の形態であることができる。そのような材料は、典型的には、たとえば、押出コンパウンディングまたは溶液キャスティングなどのプロセスを含むであろう膜形成プロセスの間、膜材料中に混合される。
【0045】
本発明の適応膜構造のための穴は、当該技術において知られている任意の穴製造プロセスによって形成することができる。シートおよびフィルムに穴を作るために用いることができる機械的プロセスとしては、限定することなく、ドリリング、パンチング、穴抜き、穴あけ、および穿孔が挙げられる。穴は、また、超音波、放電、レーザおよび電子ビームなどの高エネルギー放射線、ならびに高速ウォータージェットなどの他の方法によって作ることができる。材料が化学的手段によって除去されるさまざまなエッチング技術も、本発明のための穴を作るために用いることができる。本発明のための好ましい穴製造プロセスは、穴が作られるべきである空間を占める材料が、穴を囲む材料の最小量の歪みで、除去されるものである。特に好ましい穴製造のための方法は、機械的パンチング、およびレーザまたは電子ビームドリリングである。いったん穴が作られると、本発明の膜をさらに処理して、穴形成プロセスによって生じたであろういかなる表面歪みも低減することができる。用いることができるプロセスとしては、限定することなく、カレンダリング、プレス、および鏡面加工が挙げられる。
【0046】
本発明での使用のための好ましい作動刺激は、静電によって発生された力である。導電性材料を、少なくとも2つおよびおそらくはより多い膜の特定の領域内または上に組入れることによって、好ましい静電力をシステムに付与することができ、それにより、適切な回路の作用時、少なくとも2つの膜上の導電性領域が反対に帯電されるようになり、それにより、2つの隣接した膜を接触させる引力を作る。したがって、一実施形態において、作動刺激に応答するための手段としては、そのような導電性材料、ならびに、それらを形成することができ、かつ静電力が動作することができる特徴、線、およびパターンを挙げることができる。
【0047】
図4A、図4B、および図4Cは、静電作動力のために構成された1対の隣接した膜2および2’の特定の実施形態を概略的に示す。この場合、膜を分離する間隙5に隣接していない各膜の表面は、導電層7および7’でコーティングされる。本発明の適応膜構造が、作動刺激によって接触される2つの膜に加えて、1つもしくはそれ以上の膜および/または層を含むことができるので、2つを超える膜が導電性コーティングを有することも、導電性コーティングを有する膜が、接触される膜であることも、この実施形態において必要ではない。すなわち、層および/または他の膜を、接触する穴を有する膜と作動刺激の直接付与が生じるところとの間に介在させることができる。しかし、穴を有する膜を移動させるために必要とされるのは何でも、適応膜構造の一部であり、したがって、構造の透過性は、そのような構成要素が、穴を有する2つの膜だけであろうと、付加的な層、膜、および/または他の材料もしくは構成要素であろうと、すべてのそのような構成要素に対して定められる。
【0048】
可能な金属導電性コーティングとしては、限定することなく、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金、およびこれらの金属の合金を挙げることができる。導電性コーティングを、また、上述のまたは他の導電性金属のコロイド形態をさまざまなポリマー中に分散させることによって作製することができる。導電層または電極を、また、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレン、および、炭素のそのような形態の、ポリマー中への分散系から作製することができる。導電層または電極の付加的な形態としては、酸化インジウムスズまたは本質的に導電性であるポリマーから形成することができるものが挙げられる。導電性ポリマーとしては、限定することなく、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、または、たとえば導電性を増加させるためのドーパントで化学的に変性されたそのような導電性ポリマーが挙げられる。導電層7および7’は、同じまたは異なった材料および厚さを含んでなることができる。
【0049】
図4Aおよび図4Cに示されているように、隣接した膜上の2つのコーティング層は、互いに直列に、導体8を介して、スイッチ9、および、バッテリ、またはソーラーパネルもしくは燃料電池などの他の電源を含むことができる電位源10に接続される。図4Aおよび図4Cに示されているように、スイッチが開放しているとき、起電力がなく、したがって、作動刺激がない。しかし、図5Aおよび図5Cに示されているように、スイッチが閉鎖しているとき、引力静電力が膜間に発生し、それにより、膜を、それらの隣接した表面に沿って接触させる。
【0050】
たとえば、(i)少なくとも2つの膜を提供し、各々が、独立して、可撓性シート、フィルム、微孔性膜、または不織層を含んでなり、各膜が穴のアレイを含み、(ii)隣接した膜の穴が実質的に位置合せされていないか位置合せされていないように、膜を互いに平行に組立て、(iii)作動刺激に応答する手段を、組立てられた膜に提供するプロセスによって、適応膜構造を製造することができる。さらに、導電層を膜の少なくとも2つの各々の1つの面に付与することができ、導電層を電圧源およびスイッチに取付けることができる。機械的ドリリング、パンチング、穴抜き、穴あけ、穿孔、超音波でのドリリング、放電によるドリリング、レーザドリリング、電子ビームドリリング、および高速ウォータージェットでのドリリングのうちから選択される少なくとも1つの方法によって、穴を作ることができる。
【0051】
さらに、たとえば、図6A、図6B、および図6Cに示されているように、各膜上の導電層7および7’を、1つもしくはそれ以上の誘電体層11および11’でコーティングすることができ、これらは、付加的な特徴を膜構造に与えることができる。特に、これらの層は、環境から導電層7および7’を絶縁するのに役立つことができ、それにより、帯電された導電層の、周囲の導電性物体への望ましくない短絡またはアークの可能性をなくすか最小にする。誘電体層11および11’は、同じまたは異なった材料および厚さを含んでなることができる。さらに、一般に、誘電体層11および11’は、基材膜2および2’を構成する材料と同じ材料または異なった材料であることができる。誘電体層を、膜の、別の膜と接触される面上に、または反対側の面上に取付けることができることにさらに留意されたい。たとえば、図6Aおよび図6Cにおいて、誘電体層11は、互いに接触される膜2の面上にあり、誘電体層11’は、互いに接触される膜2’の面上にある。この状況における接触は、実際には、2つの誘電体層11および11’の間である。しかし、図7Aに示された実施形態において、接触は、層11と反対側の面上の膜2によって行われ、図7Bに示された実施形態において、接触は、誘電体層が取付けられた面と反対側の面上の各膜によって行われる。
【0052】
図6Cおよび図7Aのように、誘電体層が、隣接した膜に面するように位置決めされた場合、誘電体層の加えられた機能は、作動刺激の付与の結果として膜が接触するときに形成されるシールを向上させることであることができる。特に、以下の実施例で説明されるように、エラストマーなどのコンプライアント誘電体材料を含んでなるコーティングが、作動刺激の作用下で接触している膜表面のシーリングを向上させるためにコンプライアント表面を提供するのに特に適している。そのようなエラストマーとしては、限定することなく、ポリウレタン、ポリウレタン−尿素、スチレンブタジエンゴムおよびスチレンイソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、およびフルオロエラストマーの熱可塑性形態および加硫形態が挙げられる。
【0053】
特定の実施形態において、導電層7、および存在する場合は誘電体層11を、膜2の、別の膜2’と接触しない面上に取付けることができる。この実施形態は図7Bに示されている。この種類の実施形態において、穴3が、基材膜2および2’を完全に貫通することに加えて、また、導電層7および7’を完全に貫通し、また、誘電体層11および11’を完全に貫通することが好ましい。しかし、そのような場合、穴3が導電層および誘電体層を完全に貫通することは必要ではなく、それらの層のいずれかまたは両方が、代わりに、膜2および/または2’のその面の表面全体を被覆することができる。そのような場合、導電層および/または誘電体層の透過性は、そのためにシステムが設計された、化学種、生物種、および/または他の微粒子種の通過に対する膜構造の全体的な透過性に影響を及ぼすことができる。
【0054】
誘電体層のさらに別の機能は、膜が未作動状態であるときに膜構造内に拡散することがある有害な種および好ましくない種を吸着するか、吸収するか、これらと反応することであることができる。したがって、誘電体層としては、活性炭、高表面シリカ、モレキュラーシーブ、キセロゲル、イオン交換材料、粉末状金属酸化物、粉末状金属水酸化物、抗菌剤などを挙げることができ、これらは、望ましい場合ナノ粒子の形態であることができる。
【0055】
あるいは、導電層は、基材膜の表面全体を被覆する必要はないが、代わりに、基材膜表面を部分的に被覆するにすぎないパターンで選択的に付与することができる。1つのそのような例が図8に示されており、導電層7が、各穴3の周りに環状パターンで基材膜2に付与される。環はすべて、基材膜2に付与された導電線を使用して互いに接続され、環状パターンはすべて互いに直列に電気的に接続され、それにより、すべての環を、線および環のネットワーク内のあるポイントにおける電圧源への適切な接続によって、同じ電位で保持することができる。別の可能なパターニングされた電極が、図9に示されており、導電層7は、穴間の空間を横断する、基材膜2に付与された平行な導電線の2つのアレイを含んでなる。図9に示された特定のパターンにおいて、いずれかのアレイからのいかなる線も、他方のアレイ内の線と交差し、かつこれらに垂直であることがわかる。再び、この線のネットワーク内のすべてのポイントを、電圧源への適切な接続によって、1つの電位で保持することができる。図8および図9に示されているようなパターニングされた導電層の使用は、図4に示されているような連続電極とは対照的に、水蒸気などの種に対する、作動状態の構造の望ましい透過性を増加させることができ、というのは、これらの望ましい種の輸送に対する、電極材料によって与えられるバリヤが、基材膜表面の多くにわたって除去されるからである。本発明の電極を提供するために使用することができる多くの他の幾何学的パターンがある。
【0056】
導電性特徴、線、およびパターンを表面上に置くための方法は、電子製造技術において周知である。導電性特徴を作るために用いることができるプロセスのいくつかとしては、限定することなく、凸版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセットリソグラフィ、フレキソ印刷、電子写真、およびレーザジェット印刷が挙げられる。ミクロンおよびサブミクロン導電性特徴を表面上に置くためのリソグラフィ印刷のいくつかの付加的な変形も、当該技術において周知である。
【0057】
誘電体層は、上述されたように構造に組入れられる場合、また、基材膜の表面全体を被覆する必要はない。特に、パターニングされた電極が本発明の構造に使用される場合、パターニングされた電極を被覆するパターニングされた誘電体層を使用して、それらをそれらの周囲から電気的に絶縁することができるが、誘電体層は、パターニングされた電極層によって被覆されない残りの基材表面のすべてを被覆する必要はない。図10は、同様の設計で基材膜2に付与されたパターニングされた電極層7に付与されたパターニングされた誘電体層11の例を示す。この例のパターニングされた誘電体が、電極の絶縁を確実にするために、パターニングされた電極よりわずかに大きい領域を被覆することが認められるであろう。パターニングされた誘電体層が、また、電気的絶縁に加えて、基材表面全体を被覆する誘電体層について上述されたような機能を有することができることに留意されたい。特に、それは、膜表面の、隣接した膜表面へのシーリングを向上させるのに役立つことができる。導電層をパターニングするための上述のプロセスは、また、誘電体層を本発明の膜基材上にパターニングするために用いることができる。
【0058】
本発明は、2つのみの基材膜を有する適応膜構造に限定されない。たとえば、図11A、図11B、および図11Cは、3つの基材膜2、2’、および2’’を含んでなる適応膜構造を示す。この実施形態において、作動刺激に応答する手段が、再び、1つもしくはそれ以上の導電体を含むので、導電層7、7’、および7’’、ならびに関連した誘電体層11、11’、および11’’、ならびにそれらの関連した穴のアレイが、基材膜2、2’、および2’’に加えて示されている。膜2’の穴に対する膜2上の穴のアレイの開口部は、位置合せされていないように示されており、膜2’’の穴に対する膜2’上の穴のアレイの開口部は、位置合せされていないように示されている。しかし、上で示されたように、膜2’の穴に対する膜2上の穴のアレイの開口部、および膜2’’の穴に対する膜2’上の穴のアレイの開口部は、いずれかまたは両方が、位置合せされていない代わりに、実質的に位置合せされていないことができる。
【0059】
システム内の導体の静電作動を可能にするために、2つの電位源10および10’、スイッチ9および9’、ならびに導体8が設けられる。したがって、3つの異なった作動状態をこのシステムで達成することができる。図12Aに示されているように、スイッチ9の閉鎖によって、上の膜および真ん中の膜を接触させ、それらの関連した穴のみをシールすることができる。または、図12Bに示されているように、スイッチ9’の閉鎖によって、真ん中の膜および下の膜を接触させ、それらの関連した穴のみをシールすることができる。または、図12Cに示されているように、両方のスイッチ9および9’の閉鎖によって、上の膜および真ん中の膜ならびに真ん中の膜および下の膜を接触させることができ、すべての穴をシールすることができる。
【0060】
基材膜2、2’、および2’’の材料および厚さが、同じでも異なってもよいことに留意されたい。同様に、導電層7、7’、および7’’の材料および厚さは、同じでも異なってもよい。同様に、誘電体層11、11’、および11’’の材料および厚さは、同じでも異なってもよい。さらに、3つの膜のいずれかまたはすべてについての、基材膜のどの面を誘電体層の配置のために使用するべきかの選択を、上で先に開示されたように逆にすることができる。
【0061】
図11A、図11B、および図11Cに開示された設計を、適切な構成要素基材膜、導電層、誘電体層、穴アレイ、電位源、スイッチ、および導体の追加によって、4つもしくはそれ以上の膜にも拡大することができる。さらに、導電層および誘電体層は、それらが付与された基材膜表面全体を被覆することができるか、たとえば先に開示された設計に従ってパターニングすることができる。多数の膜システムが、隣接した膜の閉鎖の異なった組合せを作動させることによって、異なった化学種、生物種、および/または他の微粒子種の通過を選択的に妨げることができる適応バリヤシステムを可能にする。そのようなシステムは、接触される2つに加えて、1つまたは膜に加えて、布帛の1つもしくはそれ以上の層を含むことができる。
【0062】
したがって、上で開示された実施形態は、たとえば、第1および第2の膜(2および2’)に加えて、穴を有する第3の膜2’’と、第3の膜を移動させて、第3の膜の穴が第2の膜の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で、第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含むことができる。構造は、また、穴を有する第3および/または第4の膜(2’’および2’’’)と、第3の膜を移動させて、第3の膜の穴が第2および/または第4の膜の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で、第2および/または第4の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含むことができる。
【0063】
印加電界が、作動刺激が動作する好ましい形態であるが、本発明の構造内の膜の移動を引起す目的のために有用である多数の他のタイプの作動刺激がある。他の可能な作動刺激としては、限定することなく、磁気力、静水力学的力、または動水力学的力が挙げられ、2つもしくはそれ以上の異なった種類の作動刺激を膜構造に対して使用することができる。
【0064】
たとえば、特定のポリマーが、かなりの量の水および他の溶媒を吸収することができ、それにより、元の乾燥体積より著しく大きい体積に膨張することができる。そうする際に、そのような膨張可能なポリマーの寸法の拡大および変化は、膜移動を引起す静水力学的力を伝えることができる。
【0065】
温度の変化も、作動刺激の別の形態として役立つことができる。特定の合成材料、天然に存在する材料、および工学構造が、温度の変化に応じてそれらの寸法を変化させるときに、著しい力を発生させることができる。したがって、熱エネルギーのそのようなゲインまたはロスを、また、用いて、それによりそのサイズが変化されるときに、材料を通して働く、ここでの膜の移動を引起すことができる。
【0066】
別の実施形態において、電気的に得られた力を伝えるために、電歪材料を使用することができる。電歪材料は、電圧を受けると、サイズ変形を経ることができ、結果として生じる寸法の変化を伴い、これは、作動電気刺激の効果を伝える膜を移動させる力を発生させることができる。
【0067】
導電性ワイヤ(たとえば銅ワイヤ)の渦巻巻線または螺旋巻線を、巻線が、構造内の膜に隣接し、かつ巻線の軸が膜の平面に垂直であるように配向されるように、適応膜構造に組入れることによって、作動刺激としての磁気力の使用に基いた実施形態を構成することができる。巻線は、スイッチ、およびバッテリなどの電力源と直列に電気的に接続される。磁性材料が構造内の膜の1つもしくはそれ以上に組入れられ、膜は、磁気引力の力の作用下のそれらの動きが、それらが互いにまたは1つもしくはそれ以上の他の隣接した膜と接触することを引起すように、構造内に適切に配置される。磁性材料は、膜のバルク内に、または膜表面上のコーティングとして、組入れることができる。可能な磁性材料としては、膜のバルク内に、または膜表面上のコーティングを構成するマトリックス内に分散されたカルボニル鉄粒子が挙げられる。スイッチの閉鎖によるシステムの作動時、磁界が巻線の近傍において発生し、この磁界は、1つもしくはそれ以上の膜に組入れられた磁性材料に対する力を発生させ、それにより、磁性材料を含有する膜が、1つもしくはそれ以上の隣接した膜と接触することを引起す。
【0068】
上で説明された例は、また、作動刺激に応答するために提供される手段の対応する多様性を示し、上に含まれたこれらの例は、膨張可能なポリマー、温度変化に応じてサイズを変化させる材料、電歪材料、および磁性材料である。温度の変化を受けると電気エネルギーを発生させ、したがって、力、熱エネルギーのゲインを代表する有用な電圧を膜に伝えることができる熱電材料も、作動刺激に応答する手段としての使用に適している。
【0069】
作動刺激に応答する手段は、典型的には、作動刺激の力の付与が少なくとも1つの膜を移動させることを可能にするために、それらが十分密に物理的に近接していなければならないという意味で、適応膜構造の中に、適応膜構造上に、適応膜構造内に、または適応膜構造に隣接して配置される。導体または磁性粒子を、たとえば、穴を有する膜上に印刷することができるか、穴を有さない別の膜または層上に印刷することができるか、それ自体を別個の膜または層として形成することができる。さらに、形状および/またはサイズを変化させるポリマーまたは層を、穴を有する膜に隣接して配置することができるが、移動力を、穴を有する膜に付与するポリマーまたは材料のミッションが妨げられないという条件で、穴を有さない他の膜または層をそれらの間に配置することができる。
【0070】
上述されたような、作動刺激が存在することができる形態の多様性を考慮して、本発明の別の態様は、第1および第2の移動可能な膜と、電力、磁気力、動水力学的力、または静水力学的力に応答するための手段とを含む適応膜構造である。これは、また、第1および第2の移動可能な膜を含む膜構造において、電力、磁気力、動水力学的力、または静水力学的力を第1の膜に付与することによって、第1の膜を第2の膜の方に移動させるための方法を可能にする。
【0071】
作動刺激がどんな形態をとろうとも、それは、一実施形態において、少なくとも1つの膜のすべての部分に対して実質的に均一な程度に動作する。特に、この実施形態において、作動刺激は、膜の、その穴の各々に近接した部分に対して、したがって、膜の表面を横切ってすべて規則的なパターンで、実質的に均一な程度に動作する。作動刺激の動作は、実質的に均一なだけであり、というのは、膜が、曲げやすく、多くの場合、付与された力が、平面の表面を横切ってすべての無限に小さい領域単位に対して等しく動作することができる完全な平面を形成しないからである。しかし、そのような場合の意図は、作動刺激の付与の結果として、膜全体が移動することである。
【0072】
しかし、別の実施形態において、作動刺激は、膜のすべての部分に対して均一な程度に動作せず、1つの膜の1つもしくはそれ以上の部分が移動されて、別の膜の1つもしくは複数の対応する部分と、第1の膜の各部分の穴が第2の膜の対応する部分の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で接触される。膜の、接触が行われる1つを超える部分がある場合、これらの部分は、規則的に繰返す幾何学的パターンの形態で選択することができるが、その必要はない。これらの部分が膜の表面を横切って規則的なパターンで分配される場合、作動刺激が一度に膜の特定の選択された部分のみで動作するように準備することによって、膜構造の透過性を調整することが可能になる。プログラムベースで、さまざまな部分の中で、作動および非作動の繰返しシーケンスで、作動刺激の付与を交替させることも可能になる。これは、どんな空間配列およびタイミング配列が望まれようとも、電力が作動刺激であり、かつ、電流が、膜の部分に供給されるか膜の部分から引かれることを可能にする回路が提供される場合に、最も容易に達成される。
【0073】
特に、本発明の適応膜構造は、適応膜構造が、完全作動状態、完全未作動状態、または完全非作動状態にある場合に示されるものに加えて、およびそれらと異なった、気体、蒸気、および/または液体透過性の多数の状態を表示するように設計することができる。一実施形態において、適応膜構造を、2つもしくはそれ以上の部分またはサブセクションを有するように形成することができ、構造の各サブセクションは、それ自体、ここで説明される特徴をいくつかまたはすべて表示する適応膜構造である。構造のサブセクションのいくつかまたはすべての透過性を変化させることによって、および異なった時にそうすることによって、全体としての構造の透過性を変更することができる。膜構造の各サブセクションに、他のサブセクションすべてから独立して、作動刺激を付与することができる。したがって、全体としての適応膜構造をともに構成するサブセクションのいくつかの中の膜を移動させ、サブセクションの他のものの中の膜を移動させないことによって、全体としての構造について、透過性のいくつかの異なった状態を得ることができる。しかし、別の実施形態において、すべてのサブセクション内のすべての膜を同時に移動させることができる。
【0074】
いくつかのそのようなサブセクションを有する適応膜構造の一例が、図20に示されている。この図は、4つのサブセクションを有する膜の平面図を示し、各サブセクションは穴のアレイからなる。2つもしくはそれ以上の、図20に示された膜などの膜を、1つの膜の各サブセクション内の穴のアレイが、別の隣接した膜上の対応するサブセクションの穴のアレイと実質的に位置合せされていないか位置合せされていないように、構造内に設けることができる。別個の作動刺激、およびそれに応答する手段を、膜の各サブセクションについて提供することができる。たとえば、作動刺激が印加電界である実施形態において、4つのサブセクションの各々は、膜内の他のサブセクションの導電性特徴に接続されても接続されなくてもよいそれ自体の導電性特徴を有することができる。図20に示された膜を、少なくとも1つのおよびおそらくはより多い対応する膜、ならびに適切なスペーサとともに組立てることによって、ならびに結果として生じる適応膜構造を適切な電気回路に接続することによって、作動刺激を、膜構造のサブセクションのいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、または4つすべてに付与することが可能である。そうする際に、それらは、4つのサブセクションを有するそのような適応膜構造についての透過性の少なくとも5つの異なった状態を実証することができる。
【0075】
図20の膜は、4つの同様のサブセクションを有して示されている。しかし、構造内の個別の膜は、厳密に同じサブセクションを有する必要はない。隣接した膜上の対応するサブセクションが、互いに実質的に位置合せされていないか位置合せされていない穴のアレイを有する限り、1つの膜の個別のサブセクションが同じ膜上の他のサブセクションと完全に異なるように、適応膜構造を組立てることができる。
【0076】
多数のサブセクションを有する膜を、材料の1つの連続シート上に各サブセクションについての穴のアレイを作ることによって、形成することができる。いくつかのサブセクションを含んでなる膜を、また、最初に、個別のサブセクション膜を作り、次に、サブセクションを接合して、より大きいシートまたは層を作ることによって、形成することができる。サブセクションを、反応性または非反応性接着剤を使用して、または高周波溶接、超音波溶接、および振動溶接などの異なった溶接技術を用いて、互いに接合することができる。
【0077】
本発明のさらなる特徴は、作動刺激が、膜を移動させて互いに接触させるように付与されずまた動作していないいかなる時間の間も、隣接した膜を隔置して保つ手段である。これは、膜の隣接した表面の間の間隙を生じさせて、上述されたように構造を通る透過を可能にする。図13Aおよび図13Cにおいて、隣接した表面4および4’の間の間隙5が示されており、スペーサ材料12が、隣接した膜表面4および4’の間に取付けられ、スペーサ材料は、いずれの膜表面のいかなる穴への開口部も塞がず、かつ隣接した膜表面の間の間隙の形成をもたらす厚さを有する形状である。作動刺激の付与または動作時、隣接した膜の一方または両方が、図14A、図14B、および図14Cに示されているような弾性変形を経て、隣接した表面が一緒にされて、上述されたように、隣接した表面の間の接触をもたらし、それらの穴をシールする(図13Cおよび図14Cの品目7および7’を比較する)。これに関連して、さらに、作動刺激、および作動刺激に応答する手段は、ともに、スペーサが2つの膜の間に存在するとき、膜を変形して、それを移動させて別の膜と接触させるための手段とみなすことができる。しかし、作動刺激の解除時、変形された膜内に蓄積された弾性エネルギーは回復され、膜は、図13A、図13B、および図13Cに示されているようなそれらの最初の位置の戻り、隣接した膜表面の間の間隙5は復元される。作動刺激の除去後に間隙5の再形成を促進するこの能力は、本発明のさらなる特徴であり、「非作動手段」と呼ばれる。
【0078】
上述されたような本発明の実施形態、たとえば図1に示されたものは、作動刺激によって移動された結果として、隣接した主に平面の表面4および4’に沿って互いに接触し、それにより、未作動状態でこれらの表面の間に存在した間隙5をなくす少なくとも2つの主に平面の膜を伴う。膜の接触は、また、未作動状態で、ベース膜に組入れられた穴のアレイと関連する、向上された透過、対流、および/または拡散を可能にする経路6などの経路をなくす。本発明の適応膜構造の代替実施形態が、それぞれ、未作動状態および作動状態で、図15および図16に示されている。この実施形態において、2つの隣接したベース膜の一方または両方が、ポスト、ノブ、またはバンプの形態の突出部材21のアレイを含む。図15に示されたこの実施形態の未作動状態において、隣接したベース膜は、経路6などの、向上された透過、対流、および/または拡散のための経路が存在するように、互いに分離される。しかし、図16に概略的に示されているように、アレイ内の各突出部材21は、一方または両方の膜が互いの方に移動される作動時、隣接した膜の穴に挿入可能であり入るように成形され位置決めされる。各突出部材がその対応する穴に入るとき、各突出部材は、突出部材とその嵌合穴との間にシールを作り、それにより、透過、対流、および/または拡散のための経路6をなくすように、穴の内面と接触する。図16に見られるように、この実施形態において、隣接した膜表面4および4’は、作動刺激の付与または動作下で接触している必要はなく、さらに、これらの表面の間の間隙5が、作動状態で持続することができる。突出部材21が図15および図16に円錐台として示されているが、嵌合穴表面に対してシールを形成する必要によってのみ制限される突出部材の他の形状を用いることができる。さらに、図15および図16が、規則的な正方形ピッチアレイに配置された同一の突出部材のアレイを示すが、アレイ内の2つの突出部材が、同一のジオメトリを有する必要はなく、突出部材のアレイパターンは、隣接した膜の穴のアレイパターンによって支配される。
【0079】
本発明の適応膜構造は、特に、化学および生物毒素ならびに化学および生物病原体に対して保護するように意図された衣類のための、衣料品の構成要素として使用することができる。そのような物品としては、限定することなく、保護スーツ、保護カバリング(protective covering)、帽子、フード、マスク、ガウン、コート、ジャケット、シャツ、ズボン、パンツ、手袋、ブーツ、靴、靴カバーまたはブーツカバー、および靴下よりなる群から選択されるものが挙げられる。
【0080】
本発明の適応膜構造は、また、自然要素に対して保護するために消費者用衣料に使用することができる。一実施形態において、構造は、レクリエーション活動および他の屋外活動のために使用される応答アウターウェア衣料の内側ライナとして使用することができ、ライナは、着用者の快適さを増加させるように、外部温度および風条件によってその透過性を変化させることができる。そのようなアウターウェアの例としては、限定することなく、コート、ジャケット、スキーパンツ、手袋、帽子、フード、およびマスクが挙げられる。別の実施形態において、本発明の膜構造を、雨具の応答ライナとして使用することができる。乾燥外部条件において、ライナは、高度に透過性であり、したがって通気性であるが、濡れたおよび雨の条件において、ライナは、外部降水に対して不透過性にされる。
【0081】
本発明の適応膜は、さまざまな医療用途のために使用することができる。一実施形態において、構造は、限定することなく、外科用マスク、医療用または外科用衣類、ガウン、手袋、スリッパ、靴カバーまたはブーツカバー、およびヘッドカバーを含む、ヘルスケアワーカーのための衣料品を製造するために使用することができる。
【0082】
上述の用途のいくつかの場合、本発明の適応膜構造を、いかなる付加的な多孔性材料層もの不在下で使用することができ、いくつかの他の用途の場合、多層システムを作ることができ、適応膜構造は多層システム内の1つの構成要素のみを形成する。適応膜構造と関連して使用することができる多孔性層の例は、織布、不織フィルム、および多孔性膜である。付加的な多孔性層を、(i)適応膜構造を、その性能を劣化させることがある環境から保護する複合システムを作る、および(ii)適応膜構造自体によって提供することができる特徴より多い特徴を有する複合システムを作る目的で使用することができる。
【0083】
たとえば、また消防士を有毒煙および蒸気から保護する難燃性衣料を作る目的のため、本発明の適応膜構造を、難燃性布帛と層状に重ねるか難燃性布帛の間に挟むことができる。この場合、外側難燃性布帛は、着用者および適応膜構造を火から保護する。自然要素に対して保護する商業用衣料を作る目的のため、本発明の構造を織布間に挟むことができる。外側布帛および内側布帛は、快適な感触を与えるように、およびファッショナブルな外観を衣料に与えるように選択することができる。着色されパターニングされた布帛も、付加的なカムフラージュ特徴を兵士用の化学および生物保護衣料に導入するために外層として使用することができる。いくつかの場合、適応膜構造をほこりおよび液体から保護するために、微孔性膜を使用することができる。
【0084】
当該技術において知られている編み作業、縫い作業、ステッチ作業、ステープル作業、または接着作業のいずれかによって、本発明の適応膜構造を衣料品に組入れることができる。衣料を製造すべき多数の層を有する布帛または他の材料を使用することは当該技術において一般的であり、本発明の構造を、従来の方法によってその中に組入れることができる。
【0085】
本発明の適応膜構造の潜在的な使用は、多数であり、人のための保護衣料に限定されない。他の実施形態において、本発明の適応膜構造を、人、動物、または腐敗しやすいものの収容のためのエンクロージャを作るか構成するために使用することができる。そのようなエンクロージャとしては、たとえば、個体のグループを化学戦剤および生物戦剤に対して保護する、テントなどの集合シェルタが挙げられる。別の実施形態において、本発明は、商業用および住宅用建物内のセーフルームを設置するために使用することができる。たとえば、本発明の適応膜を使用して組立てられたセーフルームは、脅威的でない条件下で透過性であるが、毒性剤が外部環境中に放出されると不透過性になる。
【0086】
本発明の適応膜は、また、住居およびオフィス建物などの商業用および住宅用建物の構造内の外部水バリヤ層を作るために使用することができる。建物内の蒸気バリヤまたは蒸気抑制層は、建物の外側からの降水が内側に透過するのを防止するのに十分に不透過性でなければならず、しかも、壁内の過剰湿気が外側に透過するのを可能にするのに十分に通気性でなければならない。したがって、一実施形態において、本発明の適応膜を、商業用および住宅用建物内の応答蒸気バリヤとして使用することができ、バリヤ層は多数の状態で存在することができる。建物壁内に過剰湿気が存在するとき、バリヤ層は蒸気透過性にされ、外部環境中に高湿度があるとき、バリヤ層は不透過性にされる。
【0087】
透明なポリマーフィルムから構成される場合、本発明の適応膜を、また、農業用および園芸用温室を構成するために使用することができる。温室内の温度制御は、最適な植物成長のための重要な問題である。既存の温室は、低気体透過性および低蒸気透過性のポリマーフィルムから構成される。そのようなポリマーフィルムが通気性でないので、温室内の温度は、従来、工学ベントの開閉によって制御される。これは、しばしば、温室内の望ましくない温度勾配をもたらす。温室を構成するために適応膜構造が使用される場合、温室を覆う膜の透過性を変化させることによって、内部温度をより均一に制御することができる。温室内の温度が上昇するにつれて、膜をより透過性にすることができ、それにより、自由対流のプロセスが温室内の温度を低減することを可能にする。同様に、温室内の温度が低下するにつれて、膜をより透過性でないようにすることができ、温室内の温度が上昇することを可能にする。
【0088】
さらに別の実施形態において、外科処置を行うための、またはコンピュータチップ製造などの高空気純度を必要とする活動を行うためのクリーンルームを作るために、一時的な軟壁構造、または永久的な構造に、適応膜構造を使用することができる。
【0089】
本発明の適応膜を、また、食用材料だけでなく、環境に敏感な、または環境に曝すことによって損傷もしくは劣化されることがあるいかなる材料も含む腐敗しやすいものを貯蔵するために使用されるような、小さいおよび大きい貯蔵領域およびコンテナ内の環境を管理するために使用することができる。たとえば、新鮮な果物および野菜などの食用材料を、新鮮さを維持し、かつそれらの貯蔵寿命を向上させるために、最適な湿度レベル下で貯蔵する必要があるであろう。本発明の適応膜を、局所的な環境条件に応じた貯蔵領域または貯蔵コンテナを作るために使用することができる。たとえば、貯蔵された領域内の局所的な水蒸気濃度が所望のレベルより高い場合、適応膜は、非作動になって、過剰水蒸気を周囲の環境に放出し、いったん水蒸気が所望のレベルより低く低下すると作動する。そのような応答貯蔵デバイスは、食用材料または他の腐敗しやすいものを1つの場所から別の場所に輸送するために、またはそれらを冷蔵領域および冷蔵庫などの商業用および住宅用設備内に貯蔵するために使用することができる。
【0090】
本発明の適応膜構造を、また、センサデバイスの寿命および性能を向上させるために使用することができ、この意味において、センサデバイスを腐敗しやすいものとみなすことができる。センサデバイス内の活性構成要素は、それらの環境に非常に敏感であり、環境中の液体種または蒸気種または微粒子種によって毒されることがある。そのようなデバイスは、また、それらが検知することが意図される種の高濃度に曝されると破損されることがある。一実施形態において、適応膜構造を、作動状態および非作動状態で透過性の異なった状態を有するその能力によって、センサの活性構成要素を収容するエンクロージャへの種の流れを制御するために使用することができる。別の実施形態において、適応膜構造を、活性構成要素の周りの保護層またはシュラウドとして使用することができる。この用途の場合、センサが検知のための活性状態であることが望ましいとき、適応膜構造を未作動状態のままにすることができ、センサの活性構成要素が、検知される必要がある環境中の種と接触することを可能にする。しかし、センサがもはや活性状態または検知状態でないとき、適応膜構造を非作動にして閉鎖状態にすることができ、それにより、センサの活性構成要素を保護し、その寿命を向上させる。
【0091】
適応膜構造を、また、バルブおよびエアフォイル用途などにおいて、気体、蒸気、液体、および/または微粒子の流れを制御するために使用することができる。構造は、加熱システム、空調システム、および換気システムにおいて遭遇されるようなプレナム、ならびに繊維紡糸プロセスの急冷システムなどの産業プロセスにおいて遭遇されるプレナムに入る気体の流れを調整するために使用することができる。これらの用途において、調整されるべき気体流は、構造の膜に主に垂直であり、流量は、作動刺激としての、その流れの力の大きさを変化させ、それにより、構造の流れに対する抵抗を変更することによって、変更される。さらに、構造は、帆船上の帆、ウインドサーファー、および他の風力船、ならびに動力供給されたおよび動力供給されていない航空機上で使用される翼として使用されるものを含むさまざまなエアフォイルが受ける揚力を調整するために使用することができる。これらの用途において、気体流は、エアフォイルを含んでなるかエアフォイルに組入れられた構造の膜に対して主に接線方向であり、揚力は、作動刺激としての、流れの力の大きさを変化させ、それにより、エアフォイルを横切る圧力差を変更することによって、変更される。
【0092】
適応膜構造を、また、芳香化合物、香水、ルームフレッシュナー、殺虫剤、病虫害防除剤、または薬剤として使用されるような蒸気、エアロゾル、または液体の放出の速度を制御するためのバルブとして使用することができる。一実施形態において、制御放出デバイスは、周囲の環境から放出されるべき剤を分離する適応膜構造を含む。構造が非作動状態であるとき、剤は、拡散およびまたは対流によって環境に放出される。しかし、構造が作動状態であるとき、剤の環境への輸送は低減されるか停止される。剤の放出の速度は、制御放出デバイス内の構造が作動状態と非作動状態との間で変動される頻度を調整することによって制御可能である。
【0093】
エンクロージャ(enclosure)、建物、センサ、およびバルブなどの物理的資産またはデバイスと関連する本発明の適応膜構造の使用を、当該技術において知られている製造および構成方法によって達成することができる。建物ラップが壁の内部と外部との間に取付けられる場合など、適応膜構造を他の層または構造的要素の間に介挿することができる。または、適応膜構造が、テント、温室、バルブ、またはセンサ用保護カバーなどの本質的に自立型用途に使用される場合、それを適切なフレームに固定することによって取付けを行うことができる。
【0094】
バルブ目的のための本発明の適応膜構造の使用は、(a)穴を、各膜に、膜が互いに接触しているときに穴が実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置に設け、(b)膜を移動させて互いに接触させることによって、穴を有する第1および第2の膜を通る気体、蒸気、液体、および/または微粒子の流れを制御するための方法を可能にする。
【実施例】
【0095】
本発明を次の実施例でさらに規定する。これらの実施例が、本発明の好ましい実施形態を示すが、あくまで例示として与えられることが理解されるべきである。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、また、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明のさまざまな変更および修正を行って、それをさまざまな使用および条件に適合させることができるであろう。
【0096】
実施例1
この実施例は、本発明の適応膜構造の性能をテストし実証するための装置および方法を説明する。構造の透過性の多数の状態は、未作動状態での酸素透過性と作動状態での酸素透過性との比を測定することによって実証する。
【0097】
適応膜構造の酸素(O)透過性は、気体透過性セルでテストし、これの概略図が、図17Aおよび図17Bに示されている。このシステムは、上述された本発明の実施形態のいずれかをテストするために使用することができる。この実施例の場合、各々が、本発明に従う穴のアレイ、ならびに導電性コーティング7および7’ならびにスペーサ材料12で変性された2つの基材膜2および2’を含んでなる、図13に示された一般的なタイプの適応膜構造が、示されている。図17Aおよび図17Bに示されているように、膜アセンブリを2つの円筒形透明アクリルピース13および13’の間で締付ける。各円筒形ピースの長さは1インチであり、その内径および外径は、それぞれ、2.25インチおよび3インチである。2つの円筒形ピースを、4つの金属タイロッド14と、2つの金属プレート15および15’とを含んでなる金属フレームによってともに保持し、それは、以下で説明されるように、気体ポートを除いて完全な閉鎖を透過性セルに与える。図17Bに見られるように、円筒形ピース13および13’は、プレート15および15’ならびに適応膜構造とともに、組合されて、2つの気体体積16および16’を規定する。0.1〜25モル%の範囲内のO濃度を測定することができる関連したエレクトロニクス18(ワシントン州ポールスボのVICIメトロニクス(VICI Metronics, Poulsbo, WA)のモデルGC−501)を有する電気化学酸素(O)センサ17を、センサの活性表面が気体体積16に曝されるように金属プレート15の1つの上に装着し、それにより、透過性セルのこの体積内のO濃度を監視し、この体積は、「透過性セルの低濃度側」とここで呼ばれる。セルの他方の気体体積16’(Oセンサを有さない)は、「透過性セルの高濃度側」とここで呼ばれる。
【0098】
膜アセンブリを透過性セルに装着した後、2つの導電性コーティング7および7’を、わに口クリップが取付けられた導電性電気ワイヤ8を介して、100ボルトから10,000ボルトの、調整可能であるが一定のDC電圧を供給することができる高電圧DC電源10(ニューヨーク州ハーパーグのスペルマン・ハイ・ボルテージ・エレクトロニクス・コーポレーション(Spellman High Voltage Electronics Corporation, Hauppauge, New York)のモデルSL10)の出力に接続する。実験の最初の部分の間、未作動状態の膜構造のO透過性を測定しているとき、電源を通電しない。
【0099】
時間ゼロと指定された実験の開始において、空気(20.9モル%のOからなる)の流れを、入口ポート19’を通して、透過性セルの高濃度側16’に開始し、窒素(99.9%の純度のN)の流れを、入口ポート19を通して、透過性セルの低濃度側16に開始する。セルの各半体は、また、排気ポート(図17Bの20および20’)を含み、各々が、そのそれぞれの気体体積から周囲条件への自由な排出をもたらす。両方の気体の流量は、入口ポート19および19’の上流の別個のインラインロータメータによって制御する。実験の間2つの半体セルへの両方の気体の流量を同じかつ一定に保つように注意する。次に、セルの低濃度側16のO濃度を時間の関数として監視する。実験の開始前、透過性セルの両方の半体16および16’が常に周囲空気を収容することに留意されたい。
【0100】
実験の開始において、N流をセルの低濃度側16に開始するとき、空気、およびしたがって、半体セル内に存在する残留Oが、Nに取って代えられる。したがって、気体体積16内のO濃度は時間とともに低下し、15分後、未作動膜構造の透過性によって、本質的に一定のレベルに達する。この一定のOレベルは、膜アセンブリを通る、セルの低濃度側16への空気の透過によって引起されたOの流入の速度と、セルの低濃度側から強制対流によって引起された、ポート20を通るOの流出の速度との間の定常状態が達成されたことを示す。
【0101】
実験の開始から15分が経過した後、既知の電位差を電源10から導電性コーティング7および7’を横切って印加する。電圧を回路に印加した後最初の数秒の間、数マイクロアンペアの範囲内の非常に小さい電流が、常に、高電圧源に取付けられた電流計によって検出される。最初の数秒の後、電流がもはや回路内で検出されず、したがって、導電性コーティング7および7’が静電荷で飽和されるようになったことを示す。電圧源、およびしたがって、電圧源に接続された膜構造を、15分間作動状態のままにする。この時間の間、透過性セルの低濃度側16のO濃度の変化を監視する。いったん膜構造を印加電圧で作動すると、セルの低濃度側16の酸素濃度は、さらに低下し、作動状態の膜構造の透過性によって、一定の値に達する。
【0102】
膜構造が15分間作動状態であった後、電圧源をオフにし、回路内のいかなる残留電荷も電圧源を介して接地にドレインする。電圧をオフにした後、膜構造をさらに15分間未作動状態でとどまらせ、この時間の間、透過性セルの低濃度側16の酸素濃度の変化を監視する。
【0103】
適応膜構造の性能は、未作動状態の膜アセンブリのO透過性と作動状態の同じ膜アセンブリの透過性との比を計算することによって定量化する。膜アセンブリの性能示数とここで呼ばれるこの比は、次の式から計算し、
【0104】
【数1】

【0105】
ここで、Kは、適応膜構造の酸素透過性であり、下付き文字は、膜構造の状態(作動または未作動)を規定し、xは、空気中のOの濃度であり、xは、定常状態が達成されたときのセルの低濃度側16のOの濃度である。この式は、透過性セルの両方の半体上のOの物質収支を行うことによって、ならびに、ポート20および20’におけるそれぞれの流出気体流中のOの濃度を、セルの対応する気体体積16および16’内に存在するものと同じであると想定することによって得られる。この式は、典型的には、また、すべてのシステムにおいて一般に有用である透過性の表示をもたらす。
【0106】
実施例2
厚さが196ゲージ(0.00196インチ)である、帝人デュポンフィルム(DuPont Teijin Films)によってメリネックス(Melinex)(登録商標)という商品名で販売される、ポリエステルフィルムとここで呼ばれるポリエチレンテレフタレートフィルムを、1つの面上で、化学蒸着プロセスを用いてアルミニウムの薄い層でコーティングする。アルミニウムコーティングポリエステルフィルムの長さ2.5インチ×幅2インチのピースの電気抵抗を、二点プローブ装置を使用して測定する。フィルムの抵抗は約4オームである。アルミニウムコーティングを含むフィルムの表面は導電性表面と呼ばれ、アルミニウムコーティングを有さない他方の表面は非導電性表面と呼ばれる。このポリエステルフィルムの2つの円形(直径4インチ)ピースを、ポリマーフィルムおよびその導電性コーティングを通して穴をパンチングすることによって、本発明に従う1対の膜に加工する。穴の直径は0.04インチである。U.S.アマダ・リミテッド(U.S. Amada Ltd.)(カリフォルニア州ビューナパーク(Buena Park, California))によって製造されたビプロス(VIPROS)345タレットパンチング機を使用して、穴をパンチングする。パンチングの方向は、ポリエステルフィルムの非導電性表面から導電性表面の方である。したがって、パンチングプロセスによって引起されたいかなる隆起表面特徴も、大部分はポリエステルフィルムの導電性表面上にある。
【0107】
第1の膜に、合計84の穴をパンチングし、第2の膜に、83の穴をパンチングする。両方の膜の穴パターンは、規則的な正方形ピッチパターンであり、任意の2つの最も近い隣り合う穴の間の中心から中心までの距離は0.111インチである。各膜の穴パターンは、円形フィルムの中心領域内の1インチ×1インチの正方形領域をカバーした。2つの膜の間の主な差は、一方の膜の穴パターンが、他方の膜の穴パターンから、隣り合う穴の間の中心から中心までの距離の半分である距離だけずれていることである。このずれは、x軸およびy軸の両方に作られ、x軸およびy軸は、互いに直交し、膜の平面内に存在する。したがって、2つの膜を互いの上に精密に置くとき、一方の膜の穴はすべて、他方の膜の穴すべてと位置合せされていない。
【0108】
本発明によるスペーサ(図13を参照のこと)を上述された2つの膜の間に挟むことによって、適応膜構造を作る。特に、スペーサは、2つの環状リングの積重ねから形成し、各リングは、厚さが0.004インチであり、内径および外径が、それぞれ、2.25インチおよび4インチである。スペーサの1つの機能は、膜間に有限間隙を作り、かつ作動刺激の付与または動作の不在下でそれらを互いに触れることから防止することである。スペーサリングの別の機能は、電圧がオフにされたとき、非作動力を膜構造に与えることである。スペーサリングは、帝人デュポンフィルムによってマイラー(Mylar)(登録商標)という商品名で販売される透明なポリエチレンテレフタレートフィルムから作る。導電性コーティングと、パンチングされた穴アレイとを有する2つの膜を、それらの非導電性表面が互いに面し、したがって、導電性表面が互いに反対の方向に面するように積重ねる。この適応膜構造を、実施例1で説明された方法を用いて、未作動状態および作動状態で、酸素透過性についてテストする。
【0109】
最初に、印加電圧の不在下での膜アセンブリの酸素透過性をテストする。15分後、1000Vの電位差を、膜上の2つの導電性コーティングを横切って印加する。電圧を印加すると、膜は、移動することが観察され、誘起された電圧の形態の作動刺激の効果を示す。膜構造を15分間作動状態のままにし、セルの低濃度側のO濃度の変化を監視する。
【0110】
次に、電圧をオフにし、いかなる残留電荷も膜アセンブリからドレインする。電圧源をオフにした数秒後、膜は、離れて移動することが観察され、先に膜を互いの方に移動させたいかなる作動刺激の消失も示す。膜構造を15分間未作動状態のままにし、結果として生じるO濃度の変化を監視する。
【0111】
この時間期間の終わりに、作動刺激を、再び、1000Vの電荷の形態で膜構造に付与する。DC電圧源をオンにし次にオフにする、したがって、15分ごとに膜構造を1000Vで帯電させ次にそれを放電するこの繰返しサイクルを、もう2回行う。電圧をオンまたはオフにするたびに、膜の動きを観察する。膜アセンブリの電圧誘起透過性の周期的変化によって引起されたセルの低濃度側のO濃度の周期的変化を、この実験の持続時間全体にわたって監視する。
【0112】
入力電圧変化としてのセルの低濃度側のO濃度の変化は、図18に示されている。膜回路への入力電圧の周期的変化も図にプロットされている。図の左側のy軸は、O濃度の変化を対数目盛で表し、図の右側のy軸は、入力電圧を線形目盛で表す。x軸は、経過した時間を分で表す。
【0113】
この実施例は、適応膜構造の気体透過性を、印加電圧の印加によって繰返して変化させることができることを実証する。電位差を、膜構造を横切って印加し、膜を静電帯電させると、本発明の導電性コーティング膜は互いの方に移動され、セルの低濃度側のO濃度の著しい低減によって示されるように「閉鎖する」。逆に、電圧をオフし、静電荷を膜構造からドレインすると、膜は、透過性セルの低濃度側のO濃度の著しい増加によって示されるように「開放する」。この実施例の膜構造が未作動状態であるときの、セルの低濃度側の定常状態O濃度は、7.7モル%である。逆に、膜構造が1000Vによって作動されるときの、セルの低側の定常状態O濃度は、わずか0.5モル%である。したがって、実施例1で説明された式から計算されるような、この実施例の適応膜構造の性能示数は、56である。膜構造が電圧によって作動されるときに、O透過性の変化がない場合、性能示数がわずか1であることが留意されるべきである。
【0114】
実施例3
実施例2の膜のために使用された導電性コーティングを有する同じポリエステルフィルムから、1対の膜を準備する。この実施例の膜対の穴のサイズ、穴パターン、および穴間隔は、実施例2の膜対のものと同じである。この実施例の膜対と実施例2の膜対との間の唯一の差は、この実施例の膜対の穴を、193nmの波長で動作するラムダ・フィジック(Lambda Physik)(ドイツ、ゲッティンゲン(Goettingen, Germany))エキシマーレーザモデルLPX 220Iを使用するレーザドリリングによって作ることである。
【0115】
前の実施例で説明されたような厚さ0.004インチの1つのポリエステルスペーサリングを、2つの膜の間に挟むことによって、適応膜構造を作る。2つの膜の穴パターンが互いにずれており、膜を組立てると、したがって、一方の膜の穴が他方の膜の穴と位置合せされていないことに留意されたい。また、膜を積重ねてアセンブリにすると、非導電性表面は、互いに面するようにされる。膜構造を、実施例1で説明された酸素透過性セルに装着しテストする。膜アセンブリを、未作動状態での酸素透過性についてテストした後、1000Vの電位差を印加して、膜アセンブリを作動させる。15分後、電圧源をオフにし、導電性膜から静電荷をドレインすることによって、膜構造を非作動にする。膜アセンブリを1000Vによって作動すると、定常状態O濃度は、未作動状態での7.3モル%から0.4モル%に低下する。電圧をオフにすると、O濃度は7.3モル%に戻る。この膜アセンブリの性能示数を、58であることを計算する。
【0116】
実施例4
実施例2で使用された導電性コーティングを有する同じポリエステルフィルムの2つの矩形ピース(6インチ×5インチ)を、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー・インコーポレイテッド(Aldrich Chemical Company, Inc.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee, Wisconsin))から得られたデュポン・オキソン(DuPont Oxone)(登録商標)一過硫酸塩(monopersulfate)化合物の5重量%水溶液中で1時間洗浄する。この洗浄プロセスは、フィルムの表面から導電性コーティングを完全に除去する。次に、実施例3で説明されたエキシマーレーザ装置を使用して、コーティングされていないポリエステルフィルムに穴をドリリングする。穴の直径、穴のパターン、および穴間の間隔は、実施例2および実施例3の膜対で作られたのと同じである。
【0117】
実施例3からの導電性コーティングを有する膜対、この実施例からのコーティングされていない膜対、および3つのポリエステルスペーサリング(各隣接した膜の間に1つ)を組合せて、4つの膜を含んでなる膜アセンブリを形成する。図19は、膜アセンブリの構成を示す。アセンブリを作るとき、(i)任意の所与の膜の穴がすべて、その最も近い隣りのものの穴すべてと位置合せされていないこと、および(ii)導電性コーティングを有する膜が、アセンブリ内の最も外側の層を形成したことを確実にするように注意する。
【0118】
未作動状態および作動状態のこのアセンブリの酸素透過性を、実施例1の透過性セルを使用してテストする。外側膜の2つの導電性コーティングに印加された1000Vの電位差を使用して、膜アセンブリを作動させる。膜が未作動状態であるときの、セルの低濃度側の定常状態O濃度は、4.9モル%であるが、膜が作動状態であるとき、定常状態O濃度は、わずか0.2モル%である。これは、外部電圧を印加すると、本発明の膜を「閉鎖」させることができることを示す。この実施例の4層膜の性能示数を、50であることを計算する。この実施例は、また、本発明の適応膜構造が2つを超える膜を含むことができること、および、静電力が作動刺激である場合、膜が導電性コーティングを有さないという事実にもかかわらず有用な目的を果たす膜が、存在することができることを実証する。
【0119】
実施例5
実施例2で説明された導電性コーティングを有するポリエステルフィルムの2つの矩形ピース(6インチ×5インチ)を、ビプロス・パンチング機上でパンチングして、各々が直径0.04インチの穴のアレイを有する1対の膜を形成する。穴をポリエステルフィルムの非導電性面からパンチングする。1つの膜が合計24の穴を有し、第2の膜が21の穴を有する。両方の膜の穴パターンは、規則的な正方形ピッチパターンであり、任意の2つの最も近い隣り合う穴の間の中心から中心までの距離は0.222インチである。各膜の穴パターンは、円形フィルムの中心領域内の1インチ×1インチの正方形領域をカバーした。実施例2のように、1つの膜の穴パターンは、他の膜の穴パターンから、隣り合う穴の間の中心から中心までの距離の半分である距離だけずれている。このずれは、x軸方向およびy軸方向の両方に作られ、x軸およびy軸は、互いに直交し、膜の平面内に含まれる。したがって、2つの膜を互いの上に精密に置くとき、一方の膜の穴はすべて、他方の膜の穴すべてと位置合せされていない。
【0120】
4つの厚さ0.004インチのポリエステルスペーサリングをこれらの膜の間に挟むことによって、適応膜構造を作る。膜の非導電性表面を、互いに直接面するように組立てる。作動状態および未作動状態の膜アセンブリの性能を、実施例1のO透過性セルでテストする。膜アセンブリを1000Vによって作動させる。膜アセンブリが未作動状態であるとき、セルの低濃度側の定常状態O濃度は5.5モル%である。作動状態において、定常状態O濃度は、0モル%であることが検出され、これは、0.1重量%、すなわち、センサによって検出可能な最も低いOレベルより低い。したがって、この膜アセンブリの性能示数は本質的に無限大であり、それにより、完全な閉鎖を示す。
【0121】
実施例6
カプトン(Kapton)(登録商標)という商品名でデュポン(DuPont)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE))によって販売される厚さ1ミルのポリイミドフィルムの2つの矩形ピース(6インチ×5インチ)を、ダウ・コーニング(Dow Corning)(ミシガン州ミッドランド(Midland, Michigan))によって販売されるシルガード(Sylgard)(登録商標)184、二液性シリコーンエラストマー配合物でコーティングする。エラストマー配合物を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマー97部を3部の架橋剤と混合することによって製造する。結果として生じる粘性液体を、ポール・エヌ・ガードナー・カンパニー・インコーポレイテッド(Paul N. Gardner Company, Inc.)(フロリダ州ポンパノビーチ(Pompano Beach, Florida))によって販売される#2.5ドローダウン・ロッド(Drawdown Rod)を使用して、ポリイミドフィルム上にコーティングする。濡れたエラストマーコーティングを、1時間フロースルー(flow−through)対流オーブン内で100℃で硬化させる。硬化されたエラストマー層は、ポリイミドフィルムを1つの面上で粘着性にし、したがって、それらが他の滑らかな表面に接着することを可能にした。ポリイミドフィルムの各々の中心領域に、直径2インチの円形穴をパンチングする。次に、これらのフィルムを、以下で説明されるようにポリエステルフィルムをコーティングするためのステンシルとして役立つように取っておく。
【0122】
実施例2で説明されたような導電性コーティングを有するポリエステルフィルムの2つの矩形ピース(6ヤード×5インチ)を、メタノール中で洗浄して、いかなる残留油またはグリースもフィルム表面から除去する。導電性表面が下方に面する乾燥フィルムを、きれいで滑らかなガラス表面上に置く。上述されたような2つのエラストマーコーティングポリイミドステンシルを、粘着性表面がポリエステルフィルムに面する状態で上に置き、次に、ポリエステルフィルムの非導電性表面に接着させる。ここで、ポリエステルフィルムの各々の中心の2インチの円形領域のみを露出し、ポリエステルフィルムの他の部分をポリイミドフィルムで被覆する。結果として生じる二層フィルムを、ワッカー・シリコーンズ(Wacker Silicones)(ドイツ、ミュンヘン(Munich, Germany))によって販売されるエラストジル(Elastosil)(登録商標)6238シリコーンエラストマー配合物でコーティングする。配合物を、PDMS97部を架橋剤3部と混合することによって製造する。均一なコーティングを作るために、#2.5ドローダウン・ロッドを使用する。コーティング工程直後、ポリイミドステンシルをポリエステルフィルムから注意深く剥離し、したがって、各ポリエステルフィルムの非導電性表面上にコーティングされた濡れたシリコーンエラストマーの2インチの円形パッチを後に残す。エラストマーコーティングを100℃で1時間硬化させる。硬化されたエラストマー層の平均厚さは0.0025インチである。
【0123】
実施例1で使用された同じ機械を使用してパンチングすることによって、穴のアレイをエラストマーコーティングポリエステルフィルムの対に加える。穴直径、穴間隔、および穴パターンは、実施例2の膜対と同じである。穴を、エラストマーコーティング表面から導電性表面の方にパンチングする。
【0124】
2つの厚さ0.004インチのポリエステルスペーサリングをエラストマーコーティング膜の間に挟むことによって、適応膜構造を作る。膜を、エラストマーコーティング表面が互いに面するように組立てる。膜の性能を、実施例1のO透過性セルでテストする。膜アセンブリが未作動状態であるときの、セルの低濃度側の定常状態O濃度は、7.7モル%である。膜アセンブリを2000Vによって作動させると、定常状態O濃度は0.1モル%に低下する。したがって、この膜アセンブリの性能示数を、290であることを計算する。
【0125】
実施例7
厚さ0.003インチのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムのロールを、ウェストレイク・プラスチックス・カンパニー(Westlake Plastics Company)(ペンシルバニア州レニ(Lenni, Pennsylvania))から得る。このPVDFフィルムの一方の表面は非常に滑らかであり、他方の表面は粗い。2つの矩形ピース(6インチ×5インチ)をPVDFフィルムロールから切断し、メタノール中で洗浄する。次に、フィルムを、加熱された対流オーブン内に120℃で1時間配置することによって熱処理する。次に、フィルムの粗い面を、化学蒸着プロセスを用いてアルミニウム層を堆積させることによって導電性にする。アルミニウム層の厚さは、PVDFフィルム表面の固有粗さのため、正確に測定することができない。しかし、十分なアルミニウムを堆積させ、結果として生じるフィルムは光学的に不透明になり、それらは、マルチメータの電極をアルミニウムコーティングPVDFフィルムの金属表面の端縁で4インチ離れて配置すると、数オームの電気抵抗を与えた。
【0126】
実施例3で説明されたエキシマーレーザを使用するレーザドリリングによって、穴のアレイを、導電性コーティングを有するPVDFフィルムの対に加える。PVDFフィルムの滑らかな表面から穴をドリリングする。膜の穴のサイズ、穴の間隔、および穴パターンは、実施例2の膜対のために使用されたのと同じである。ドリリング工程後、各PVDF膜を2つのシリコンウェーハの光学的に平坦なかつ鏡のように滑らかな表面の間に挟む。こうして作られたサンドイッチを、液圧プレスの加熱されたプレートの間に配置する。プレートの温度を120℃で保持する。シリコンウェーハが定常状態温度に達したとき、ウェーハサンドイッチを314lb/inの付与された応力で2分間圧縮する。この圧縮プロセスは、レーザドリリングプロセスによって作られたであろう膜の表面変形を低減するのを助ける。
【0127】
2つの厚さ0.004インチのポリエステルリングスペーサをPVDF膜の間に挟むことによって、適応膜構造を作る。膜アセンブリにおいて、PVDF膜の非導電性表面は、互いに直接面する。膜アセンブリを、実施例1のO透過性セルでテストする。膜アセンブリが未作動状態であるときの、セルの低濃度側の定常状態O濃度は、7.8モル%である。膜アセンブリを1000Vによって作動させると、定常状態O濃度は0.2モル%に低下した。この膜アセンブリの性能示数を、151であることを計算する。
【0128】
実施例8
この実施例は、別々の導電性特徴を可撓性ポリマーフィルム上に印刷するためのリソグラフィ方法を説明する。可撓性ポリマーフィルム上に印刷されるべきである電気回路またはアートワークを、最初に、ネガティブフォトマスクに転写する。デュポン(デラウェア州ウィルミントン)によってパイララックス(Pyralux)(登録商標)TMという商品名で販売される、フィルムの1つの面上に薄い導電性銅コーティングを有する厚さ0.002インチのポリイミドフィルムを、上に導電性回路が印刷されるべきである基材として使用する。
【0129】
この可撓性導電性フィルムを、(i)45℃のバーサ−クリーン(Versa−Clean)(登録商標)415溶液(ニューハンプシャー州ハンプトンのフィッシャー・サイエンティフィック・インターナショナル・インコーポレイテッド(Fisher Scientific International Inc., Hampton, New Hampshire))、(ii)室温の脱イオン水、(iii)35℃のシュア・エッチ(Sure Etch)550酸性銅エッチャント(カンザス州カンザスシティーのデイトン・スペリア(Dayton Superior, Kansas City, Kansas))、および(iv)室温の脱イオン水中で順次洗浄する。次に、可撓性導電性フィルムのきれいな銅表面を、バクレル(Vacrel)(登録商標)SMVL−100真空ラミネータを使用して、リストン(Riston)(登録商標)9415フォトレジストフィルムに積層する(両方ともデュポンから)。ネガティブフォトマスクをフォトレジストフィルムの上に置き、次に、フォトレジストをリストン(登録商標)PCプリンタ130内の紫外光に曝す。露光の総エネルギー密度は100mジュール/cmである。
【0130】
露光されたフィルム/フォトレジスト積層体を、ここで、ケムカット・システム(Chemcut System)CS−2000現像装置(developer)(ペンシルバニア州ステートカレッジのケムカット・コーポレーション(Chemcut Corporation, State College, Pennsylvania))で77インチ/分の速度で現像する。現像溶液は、脱イオン水中の炭酸ナトリウム1重量%からなる。現像溶液の温度は85°F(29℃)である。次に、現像されたフィルムを、ポリイミド表面からの露光された銅がすべてストリッピングするまで、水中のデュポン・オキソン(登録商標)一過硫酸塩化合物(アルドリッチ(Aldrich))の5重量%溶液中で洗浄する。最終工程において、ポリイミドフィルムを水中の水酸化カリウムの3重量%溶液中で洗浄することによって、フォトレジスト層をストリッピングする。ネガティブフォトマスクにもともと存在する特徴はすべて、ここで、ポリイミドフィルム上に導電性特徴として刻印される。
【0131】
実施例9
この実施例は、電極が、実施例8で説明されたリソグラフィプロセスを用いてフィルム表面上に印刷された別々であるが相互接続された導電線のネットワークから形成された適応膜構造を実証する。
【0132】
適応膜構造内の各膜に1つの、2つの別個であるが適合する回路パターンを、膜上の最終電気回路に望まれるのと同じ長さ割合に描く。各膜の回路パターンは、規則的な面心正方形ピッチパターンで印刷され、かつ図8に概略的に示されているような電気回路を完成させるように直線によって相互接続された200の等サイズ円形リングからなる。パターンの円形リングの内径および外径は、それぞれ、0.051インチおよび0.070インチである。最も近い隣り合うものおよび次に最も近い隣り合うものの間の中心から中心までの距離は、それぞれ、0.079インチおよび0.111インチである。円形リングを厚さ0.1mmの線によって接続する。2つの回路パターンをパイララックス(登録商標)TMフィルムの円形ディスク上に印刷する。1つのフィルム上の回路パターンは、第2のフィルム上の回路パターンの鏡像である。したがって、導電性特徴を支持した2つのフィルム表面が互いに直接面しているように、2つのパターンを互いの上に精密に置くとき、一方のフィルムのすべての200のリングが他方のフィルムのすべての200のリングと精密に重なった。
【0133】
実施例3で説明されたエキシマーレーザをここで使用して、適合する回路パターンを有するフィルムに穴のアレイを作る。10穴×10穴の規則的な正方形ピッチパターンの、直径0.04インチの、合計100の等サイズの穴を、各フィルムにドリリングする。すべての穴をドリリングして、円形導電性特徴が各穴を完全に取り囲むようにした(図8を参照のこと)。任意の2つの隣り合う穴の間の中心から中心までの間隔は0.111インチである。1つの膜の穴パターンは、他方の膜の穴パターンから、隣り合う穴の間の中心から中心までの距離の半分である距離だけずれている。このずれは、x軸方向およびy軸方向の両方に作られ、x軸およびy軸は、互いに直交し、膜の平面内に含まれる。したがって、2つの膜を互いの上に精密に置くとき、一方の膜の穴はすべて、他方の膜の穴すべてと位置合せされていない。
【0134】
2つの厚さ0.004インチのポリエステルスペーサリングを膜の対の間に挟むことによって、適応膜構造を作る。膜アセンブリにおいて、膜の非導電性表面は、互いに面するようにされる。膜アセンブリを、実施例1で説明されたO透過性セルでテストする。未作動状態において、セルの低濃度側のOの定常状態濃度は、8.9モル%である。膜を2000Vによって作動させると、定常状態O濃度は0.5モル%に低下した。この実施例の膜アセンブリの性能示数を、114であることを計算する。
【0135】
本発明の装置または方法が、特定の構成要素または工程を「含んでなる」、「含む」、「含有する」、「有する」、「から構成される」、または「によって構成される」と陳述または説明される場合、陳述または説明がそれと反対に明確に規定しない限り、明確に陳述または説明されたもの以外の1つもしくはそれ以上の構成要素または工程が、装置または方法に存在してもよいことが理解されるべきである。しかし、代替実施形態において、本発明の装置または方法は、特定の構成要素または工程から本質的になると陳述または説明してもよく、この実施形態において、装置または方法の動作の原理または際立った特徴を実質的に変更する構成要素または工程がその中に存在しない。さらなる代替実施形態において、本発明の装置または方法は、特定の構成要素または工程からなると陳述または説明してもよく、この実施形態において、陳述または説明されたもの以外の構成要素または工程がその中に存在しない。
【0136】
本発明の装置の構成要素または方法の工程の存在の陳述または説明に対して単数形(不定冠詞「a」または「an」)が使用される場合、陳述または説明がそれと反対に明確に規定しない限り、そのような不定冠詞の使用が、装置の構成要素または方法の工程の存在を数で1に限定しないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】高透過性を示す未作動適応膜構造の概略図である。(1A:斜視図。1B:平面図。1C:断面図。)
【図2】隣接した膜層上の穴の位置合せの欠如を示す、作動状態の適応膜構造の概略図である。(2A:斜視図。2B:平面図。2C:断面図。)
【図3】非円形断面の穴を有する膜の断面図の概略図である。
【図4】各外面が導電層でコーティングされた、1対の隣接した膜を含んでなる未作動適応膜構造の概略図である。(4A:斜視図。4B:平面図。4C:断面図。)
【図5】作動された図4の適応膜構造システムの概略図である。(5A:斜視図。(5B:平面図。5C:断面図。)
【図6】導電層が誘電体材料でコーティングされた適応膜構造の概略図である。(6A:斜視図。6B:平面図。6C:断面図。)
【図7】2つの基材膜と、2つの導電層と、2つの誘電体コーティングとを含んでなる適応膜構造の代替構成の断面図の概略図である。
【図8】導電層が各穴の周りに環状パターンで基材膜に付与された適応膜構造の基材膜の概略図である。
【図9】導電層が平行線で基材膜に付与された適応膜構造の基材膜の概略図である。
【図10】パターニングされた誘電体層が、基材膜に付与されたパターニングされた電極層に付与された適応膜構造の基材膜の一部の概略図である。
【図11】3つの基材膜と、3つの導電層と、3つの誘電体層とを含んでなる適応膜構造の概略図である。(11A:斜視図。11B:平面図。11C:断面図。)
【図12】3つの基材膜と、3つの導電層と、3つの誘電体層とを含んでなる適応膜構造の作動の3つの可能な状態の断面図を示す概略図である。
【図13】非作動手段としてのスペーサ材料を含む未作動適応膜構造の概略図である。(13A:斜視図。13B:平面図。13C:断面図。)
【図14】非作動手段としてのスペーサ材料を含む作動適応膜構造の概略図である。(14A:斜視図。14B:平面図。14C:断面図。)
【図15】未作動状態の、突出特徴のアレイを含んでなる適応膜構造の概略図である(15A:斜視図。15B:断面図。)。
【図16】作動状態の、突出特徴のアレイを含んでなる適応膜構造の概略図である(16A:斜視図。16B:断面図。)
【図17】適応膜構造の酸素透過性を測定する際に使用されるセルの概略図である(17A斜視図、17B断面図)。
【図18】作動状態(電圧オン)および未作動状態(実施例2)の適応膜構造についてのテストセルの低濃度側のO濃度のグラフである。
【図19】実施例4で説明されるような、4つの膜と、3つのスペーサとを含む適応膜構造の分解図の概略図である。
【図20】4つのサブセクションを有する適応膜構造の平面図を示し、各サブセクションは穴のアレイを有する。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応膜構造であって、第1および第2の膜と、第1の膜を移動させて、気体、蒸気、液体、および/または微粒子に対する構造の透過性が減少される位置で、第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含んでなる適応膜構造。
【請求項2】
各膜が穴を有し、第1の膜の穴が、第2の膜の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない請求項1に記載の構造。
【請求項3】
構造が、穴を有する第3の膜と、第3の膜を移動させて、第3の膜の穴が第2の膜の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で、第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段とをさらに含んでなる請求項2に記載の構造。
【請求項4】
作動刺激が、静電力、磁気力、静水力学的力、または動水力学的力である請求項1に記載の構造。
【請求項5】
一方または両方の膜が、その表面上に導電性コーティングを有する請求項1に記載の構造。
【請求項6】
導電性コーティングが、膜の表面の選択された領域を被覆するパターンで付与される請求項5に記載の構造。
【請求項7】
導電性コーティングが、それ自体、誘電体材料の1つもしくはそれ以上の層でコーティングされる請求項5に記載の構造。
【請求項8】
各膜が穴を有し、構造が、膜間の1つもしくはそれ以上のスペーサをさらに含んでなり、スペーサが穴を塞がない請求項1に記載の構造。
【請求項9】
構造が配置された環境の変化を検出するセンサをさらに含んでなる請求項1に記載の構造。
【請求項10】
センサが、温度の変化、湿度の変化、または、選択された化学種、生物種、または微粒子種の濃度の変化を検出する請求項9に記載の構造。
【請求項11】
作動刺激を活性化するセンサをさらに含んでなる請求項1に記載の構造。
【請求項12】
作動刺激が、第1の膜のすべての部分に対して実質的に均一な程度に動作する請求項1に記載の構造。
【請求項13】
その作動状態で、選択された人病原体または人毒素に対して不透過性である請求項1に記載の構造。
【請求項14】
その作動状態で、水、蒸気に対して透過性である請求項1に記載の構造。
【請求項15】
第1および第2の膜に加えて1つもしくはそれ以上の膜、および/または布帛の1つもしくはそれ以上の層をさらに含んでなる請求項1に記載の構造。
【請求項16】
少なくとも1つの膜が、少なくとも1つのポリマーを含んでなる請求項1に記載の構造。
【請求項17】
少なくとも1つの膜が、活性炭、高表面シリカ、モレキュラーシーブ、キセロゲル、イオン交換材料、粉末状金属酸化物、粉末状金属水酸化物、および抗菌剤よりなる群の少なくとも1つのメンバーを含んでなる請求項1に記載の構造。
【請求項18】
請求項1に記載の適応膜構造を含んでなる衣料品。
【請求項19】
保護スーツ、保護カバリング、帽子、フード、マスク、ガウン、コート、ジャケット、シャツ、ズボン、パンツ、手袋、ブーツ、靴、および靴下よりなる群から選択される請求項18に記載の物品。
【請求項20】
第1および第2の膜の一方または両方に隣接した布帛の1つもしくはそれ以上の層を含んでなる請求項18に記載の物品。
【請求項21】
請求項1に記載の適応膜構造を含んでなる、人、動物、または腐敗しやすいものの収容のためのエンクロージャ。
【請求項22】
テント、セーフルーム、クリーンルーム、温室、住居、オフィス建物、および貯蔵コンテナよりなる群から選択される請求項21に記載のエンクロージャ。
【請求項23】
請求項1に記載の適応膜構造を含んでなる、気体、蒸気、液体、および/または微粒子の流れを制御するためのバルブ。
【請求項24】
穴を有する第1および第2の膜と、第1の膜を移動させて、第1の膜の穴が第2の膜の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で、第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含んでなる適応膜構造。
【請求項25】
穴を有する第1および第2の膜と、第1の膜の1つもしくはそれ以上の部分を移動させて、第2の膜の対応する1つもしくは複数の部分と、第1の膜の各部分の穴が第2の膜の対応する部分の穴と実質的に位置合せされていないか位置合せされていない位置で接触させる、作動刺激に応答するための手段とを含んでなる適応膜構造。
【請求項26】
第1および第2の移動可能な膜と、電力、磁気力、動水力学的力、または静水力学的力に応答するための手段とを含んでなる適応膜構造。
【請求項27】
第1および第2の移動可能な膜を含んでなる膜構造において、電力、磁気力、動水力学的力、または静水力学的力を、第1の膜に付与する工程を含んでなる、第1の膜を第2の膜の方に移動させるための方法。
【請求項28】
穴を有する第1および第2の移動可能な膜と、いかなる穴も塞がない、膜間に配置されたスペーサとを含んでなる適応膜構造。
【請求項29】
第1および第2の移動可能な膜と、第1の膜を移動させて第2の膜と接触させる、作動刺激に応答するための手段と、作動刺激を活性化するセンサとを含んでなる適応膜構造。
【請求項30】
穴を有する第1の膜と、突出部材を有する第2の膜と、一方の膜を他方の膜の方に移動させる作動刺激に応答する手段とを含んでなる適応膜構造であって、突出部材が、一方の膜が他方の膜の方に移動されるときに第1の膜上の穴に挿入可能であるように第2の膜上に位置決めされる適応膜構造。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図19】
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【図20】
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【図1C】
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【図2C】
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【図4C】
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【図5C】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13C】
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【図14C】
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【図17B】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−502810(P2008−502810A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510990(P2007−510990)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/014682
【国際公開番号】WO2006/078280
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】