説明

適用温度が低いホットメルト接着剤

温度性能が高いホットメルト接着剤は低温、すなわち300°F未満の温度で適用するために配合される。マレエート化ポリエチレンワックスと共に、メタロセンポリマーを低濃度で含有するホットメルト接着剤は、高温および低温性能の優れたバランスを示し、特に、ケースおよびカートンの包装用接着剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2009年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/230,322号の利益を主張するものであり、当該出願の内容は参照することにより本明細書に含まれるものとする。
【0002】
本発明は、ホットメルト接着剤に関するものであり、より詳しくは、高い耐熱性と良好な低温性能(cold temperature performance)との両方を有する、適用温度が低いホットメルト接着剤に関する。当該接着剤は特に包装用途によく適している。
【背景技術】
【0003】
ホットメルト接着剤は、溶融時に基体に適用された後、第2の基体と接触させて配置される。当該接着剤は冷えて固化し、基体間で結合を形成する。ホットメルトは、製品の組立および包装などの工業的な接着用途に広く使用されている。包装としては、ケースおよびカートンのシール(sealing)が挙げられる。
【0004】
ホットメルト接着剤は、包装産業において、厚紙ケース、トレー、およびカートンをシールするために広く使用されている。これらの作業の中には、良好な低温性能を妥協することなく、非常に高い耐熱性(高温で繊維引き裂けを維持する性能)を有するホットメルト接着剤を必要とする作業がある。例えば、焼きたての商品を140°F超の温度で包装した後、−20°Fのフリーザー温度で保存することが挙げられる。良好な耐熱性と耐寒性を有するホットメルト接着剤を必要とする別の例として、シールされたケース、カートンまたはトレーのトラックや鉄道による輸送過程での作業が挙げられる。トラック内の温度は、夏では非常に高く(最高145°F)、また冬では非常に低く(−20°F)なり得る。使用されるホットメルト接着剤は、シールされた容器が輸送過程中、ポンと開かないように、十分な強度を有していなければならない。
【0005】
ケースやカートンのシールなどの包装用途のためのホットメルトは典型的には、ポリマー、稀釈剤(通常は粘着付与剤)およびワックスからなっている。ワックスは幾つかの機能を提供する。ワックスは分子量が低いので、粘度を低減させる。低粘度により、適用温度の低下が促進され、洗浄剤加工(cleaner processing)の提供が促進され、基体による良好な濡れの提供も促進される。さらに、ワックスは迅速に結晶化し、材料が迅速に固化または硬化するのを促進する。速い硬化速度は高速製造に重要である。最後に、ワックスは、自身の融点上昇により、最終的な結合に対する耐熱性を提供する。
【0006】
従来の包装用接着剤は、例えばパラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスなどの石油系のワックスを用いる。低分子量のパラフィンワックスは適用温度が低い接着剤において最初に選択されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エチレンビニルアセテートおよび/またはエチレンn−ブチルアクリレートに基づく白色のホットメルト接着剤が包装用途で使用されているが、高い耐熱性と良好な低温接着性(cold adhesion)との両方を備えた、新規なポリマーまたはポリマーの特定の組み合わせに基づく配合物などの、新規で改善されたホットメルト配合物に対する必要性が継続して存在している。現在の発明はこの必要性に取り組んだものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオレフィンコポリマー成分およびマレエート化ポリエチレンワックスを含有する、適用温度が低いホットメルト接着剤を提供する。当該接着剤は300°F未満の温度での適用目的で配合される。
【0009】
一実施態様においては、当該適用温度が低いホットメルト接着剤は、ポリオレフィンコポリマー成分およびマレエート化ポリエチレンワックス成分を含有する。当該ポリオレフィン成分は2種の異なるポリオレフィンコポリマーを含む。少なくとも1種のポリオレフィンコポリマーは、メタロセン触媒系を用いて、エチレンとα−オレフィン(例えば、ブタン、ヘキセン、オクテン)とを重合させることにより製造されたメタロセン触媒型(metallocene-catalyzed)エチレン/α−オレフィンコポリマーであり、当該コポリマーの190℃でのメルトインデックスは約400g/10分より大きい。好ましい実施態様においては、当該190℃でのメルトインデックスが約400g/10分より大きいポリオレフィンコポリマーは、エチレンモノマーおよび1−オクテンモノマーから製造される。
【0010】
当該接着剤は、120℃での粘度が約3000センチポイズより小さくなるように配合される。
【0011】
一実施態様においては、当該接着剤は、190℃でのメルトインデックスが約500g/10分のポリオレフィンコポリマーおよび190℃でのメルトインデックスが約1000g/10分のポリオレフィンコポリマーを含む。
【0012】
別の実施態様においては、当該接着剤は、190℃でのメルトインデックスが約1000g/10分のポリオレフィンコポリマーおよび190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満のポリオレフィンコポリマーを含む。メルトインデックスがより低いコポリマーは好ましくはブロック構造を有する。
【0013】
本発明の接着剤配合物は典型的にはポリオレフィンコポリマー成分を30重量%以下、より典型的には25〜30重量%の量で含有する。マレエート化ポリエチレンワックス成分は典型的には接着剤重量に対して10重量%以下、より典型的には5〜10重量%の量で接着剤配合物中に存在する。
【0014】
本発明はまた、本発明の接着剤を用いて製造された物品も提供する。当該接着剤は有利には、例えば、ケース、カートン、トレー、および袋をシールおよび/または形成するために使用されてもよい。本発明は従って、ケース、カートン、トレー、または袋をシールおよび/または形成する方法を提供する。当該方法は、ホットメルト接着剤を溶融形態で基体表面に適用し、ケース、カートン、トレー、または袋をシールおよび/または形成することを含む。本発明はまた、カートン、ケース、トレーまたは袋内に収容されてなる、包装された食料品などの包装物品であって、当該カートン、ケース、トレーまたは袋が当該ホットメルト接着剤を用いて形成および/またはシールされているものを包含する。
【0015】
本発明の別の実施態様は、基体を類似または非類似の基体と結合させる方法に関する。当該方法は、少なくとも第1基体の少なくとも一部分に溶融ホットメルト接着剤を適用すること、該第1基体上に存在する接着剤と、第2基体とを接触させること、および該接着剤を凝固させることを含み、これによって第1基体が第2基体と結合する。前記溶融接着剤は300°F未満の温度で基体に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aは、接着剤結合の耐熱性を測定するために使用された接着剤ビーズの配置および他の寸法パラメータを示す側面図である。
【図1B】図1Bは、接着剤結合の耐熱性を測定するために使用された接着剤ビーズの配置および他の寸法パラメータを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は適用温度が低いホットメルト接着剤に関する技術を提供する。適用温度が低いホットメルト接着剤は、低温適用型ホットメルト接着剤とも呼ばれるものであり、接着剤温度300°F未満で基体表面に適用することができ、その後、当該基体を第2基体の表面に結合させるのに使用される接着剤として定義される。このような接着剤は、適用前に粘度を低減させるために、300°F超の温度に加熱する必要がない。本発明の接着剤は、約275°F未満の温度で適用するために配合されてもよいし、250°Fまたはそれより低い温度でも適用するために配合されてもよい。当該接着剤は、高い耐熱性および低温接着性を示し、結合のための十分な開放時間(open time)および275°Fで500時間の優れた熱安定性を有する。
【0018】
低温適用型ホットメルト接着剤組成物は、マレエート化ポリエチレンワックスおよび低濃度のエチレンα−オレフィンコポリマーを用いて配合され得ることがわかった。ホットメルト接着剤で現在、広く使用されているエチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンn−ブチルアセテート(EnBA)およびEVA/EnBAのブレンドに基づくホットメルトと比較して、マレエート化ポリエチレンワックスの使用により、高い耐熱性を示す様々な樹脂およびメタロセン触媒型ポリマーとの優れた相溶性が提供される。本明細書中で説明するように、低濃度のメタロセンポリマー(25%〜30%)および5〜10%のマレエート化ポリエチレンワックス、例えばハニーウェルから入手可能なAC575P、を含有するホットメルト接着剤は、ケースおよびカートンの300°F未満の包装用接着剤において、高温性能と低温性能との優れたバランスを示す。
【0019】
本発明の実施に際して使用することができるポリオレフィンコポリマーとしては、ダウ・ケミカルから入手できる、アフィニティー(AFFINITY)ポリオレフィンプラストマー、エンゲージ(ENGAGE)ポリオレフィンエラストマーおよびインヒューズ(INFUSE)熱可塑性オレフィンブロックコポリマー(OBC)が挙げられる。
【0020】
本発明のホットメルト接着剤は、少なくとも2種の異なるオレフィンコポリマーを含有しなければならない。本明細書中で使用される「異なる」という用語は、当該ポリマーが、例えば、メルトインデックス、融点、結晶化度、またはブロック性(blockiness)に関して異なることを意味する。
【0021】
「エチレン/α−オレフィン共重合体(ethylene/α-olefin interpolymer)」は一般的には、エチレンおよび炭素原子数3以上のα−オレフィンを含有するポリマーを意味する。好ましくは、エチレンは全ポリマーの大部分のモル分率を構成し、すなわち、エチレンは全ポリマーの少なくとも約50モル%を構成する。より好ましくは、エチレンは少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、または少なくとも約80モル%を構成するとともに、全ポリマーのうちの実質的な残部は、炭素原子数3以上のα−オレフィンであることが好ましい少なくとも1種の他のコモノマーを含有する。多くのエチレン/オクテンコポリマーにおいて、好ましい組成は、エチレン含量が全ポリマーの約80モル%超であって、オクテン含量が全ポリマーの約10〜約15モル%、好ましくは約15〜約20モル%である。
【0022】
メタロセンポリエチレンコポリマーが必要とされ、当該メタロセンポリエチレンコポリマーは、メタロセン触媒系を用いて、エチレンモノマーとα−オレフィン(例えば、ブタン、ヘキサン、オクタン)とを重合させることにより得られたものであり、190℃でのメルトインデックスが約400g/10分より大きい。
【0023】
このようなポリマーはエクソン・モービル・カンパニー(Exxon Mobil Company)(商品名エグザクト(EXACT))またはダウ・ケミカル(商品名アフィニティーポリマー)から市販されている。
【0024】
「ブロック構造」または「ブロックコポリマー」という用語は、2種またはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」ともいう)を含有するコポリマーを意味し、好ましくは直線状に結合されたもの、すなわち、ペンダント式またはグラフト式ではなく、重合性エチレン系官能基について端と端とで結合された化学的に区別される複数の単位を含有するポリマーである。複数のブロックは、そこに含まれるコモノマーの量または種類、密度(density)、結晶化度の量、このような組成物のポリマーに帰因する微結晶の大きさ、立体規則度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)の種類または程度、位置規則性または位置不規則性、長鎖枝分れまたは超枝分れ(hyper-branching)を含む枝分れの量、均質性、またはあらゆる他の化学的または物理的特性が異なっている。マルチブロックコポリマー(multi-block copolymers)は、当該コポリマーを製造する方法による、両方の多分散指数(both polydispersity index)(PDIまたはMw/Mn)の特有の分布、ブロック長の分布、および/またはブロック数の分布により特徴付けられる。
【0025】
本発明の実施に際して使用することができる適切なオレフィンブロックコポリマーは、半結晶質系「ハード」セグメントおよびエラストマー系「ソフト」セグメントのランダムまたは交互ブロックを有し、エチレンおよびαオレフィン(プロピレン、ブチレン、ヘキサン、オクテン)に基づくものである。好ましいブロックオレフィンブロックコポリマーは、190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満であり、融点が130℃未満であるものである。ブロック構造を有する有用なオレフィンコポリマーは、ダウ・ケミカル(商品名エンゲージ)から入手できる融点が38〜104℃のオレフィンコポリマーおよびダウ・ケミカル(商品名インヒューズポリマー)から入手できる融点が118〜122℃のオレフィンコポリマーである。
【0026】
当該オレフィンコポリマーは、30重量%以下、より典型的には約25〜約30重量%の量で存在している。
【0027】
本発明の接着剤は、当該オレフィン成分以外に、変性ワックス、特にマレエート化ポリエチレンワックスを含有しなければならい。このようなマレエート化ポリエチレンワックスは約10重量%以下、より典型的には約5〜10重量%の量で存在している。無水マレイン酸変性ワックスは、イーストマン・ケミカル社(商品名エオポレーン(EOPOLENE))およびハニーウェル(商品名AC−575A、AC−575P、AC−573AおよびAC−573P)から入手できる。
【0028】
本発明のホットメルト接着剤組成物は通常、オレフィン系ポリマーおよびマレエート化ポリエチレンワックス以外に、相溶性のある粘着付与剤および/または可塑剤、従来のワックスおよび典型的な添加剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、顔料等も含有する。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤は典型的には、必要な無水マレイン酸変性ポリエチレンワックス以外に、石油系ワックスも含有する。石油系ワックスという用語は、融点が約130°F〜約225°Fの範囲内のパラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスの両方、ならびに合成ワックス、例えば、低分子量ポリエチレンワックスまたはフィッシャー・トロプシュワックス(Fisher-Tropsch wax)を包含する。フィッシャー・トロプシュワックスおよびパラフィンワックスが最も好ましく使用される。マイクロクリスタリンワックスは5〜10重量%の量で、典型的には他のワックスと組み合わせて使用される。
【0030】
本発明の接着剤組成物において有用な粘着付与性樹脂としては、炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、ロジンエステル、天然テルペン等が挙げられる。当該粘着付与剤は通常、接着剤組成物の約40〜約70重量%の濃度、好ましくは少なくとも約60重量%の濃度で存在している。
【0031】
より詳しくは、有用な粘着付与性樹脂は、個々のベースポリマーに依存するものであり、あらゆる相溶性樹脂またはそれらの混合物を包含し、具体例として以下のものが挙げられる。例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水添ロジン、二量体化ロジン(dimerized rosin)および重合ロジンなどの、天然および変性ロジン;例えば、ペール(pale)、ウッドロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステルおよびロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステルなどの、天然および変性ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステル;例えばスチレン/テルペンおよびαメチルスチレン/テルペンなどの、天然テルペンのコポリマーおよびターポリマー;ASTM法E28−58Tにより測定された軟化点が約80℃〜150℃のポリテルペン樹脂;例えば、酸性媒体中での二環式テルペンとフェノールの縮合から生じる樹脂生成物などの、フェノール変性テルペン樹脂およびその水添誘導体;約70℃〜135℃の環球式軟化点を有する脂肪族石油炭化水素樹脂;脂環式石油炭化水素樹脂およびその水添誘導体。配合物の中には、上記した粘着付与性樹脂のうちの2種以上の混合物を必要とするものがあってもよい。また環式または非環式C樹脂および芳香族変性非環式または環式樹脂も挙げられる。
【0032】
好ましい粘着付与剤は石油から誘導された合成炭化水素樹脂である。具体例としては、制限されず、脂肪族オレフィン誘導樹脂、例えば、グッドイヤー社(Goodyear)からウィングタック(Wingtack)(登録商標)として入手できるもの、およびエクソン社からエスコレッツ(Escorez)(登録商標)1300シリーズとして入手できるものが挙げられる。この部類において共通するC粘着付与性樹脂は、約95℃の軟化点を有する、ピペリレンおよび2−メチル−2−ブテンのジエン−オレフィンコポリマーである。この樹脂は、商品名ウィングタック95として市販されており、米国特許第3,577,398号明細書に教示されているように、およそ60%ピペリレン、10%イソプレン、5%シクロ−ペンタジエン、15%2−メチル−2−ブテンおよび約10%ダイマーを含有する混合物をカチオン重合することにより製造される。当該樹脂は通常、ASTM法E28により測定される環球式軟化点が約20℃〜150℃である。エクソン社からエスコレッツ2000シリーズとして入手できるC芳香族/脂肪族オレフィン誘導樹脂も有用である。水添炭化水素樹脂が特に有用である。当該水添樹脂としては、エクソン社製のエスコレッツ5000シリーズなどの水添脂環式樹脂、アラカワ・ケミカル社製のアルコン(Arkon)(登録商標)P70,P90,P115,P125などの水添Cおよび/またはC樹脂、ヘルクル・スペシャルティ・ケミカルズ(Hercules Specialty Chemicals)社製のリーガルレッツ(Regalrez)(登録商標)1018,1085およびリーガライト(Regalite)(登録商標)Rシリーズなどの水添芳香族炭化水素樹脂が挙げられる。他の有用な樹脂として、日本のヤスハラ・ユシ・コウギョウ・カンパニー社製のクリアロン(Clearon)(登録商標)P−105,P−115およびP−125などの水添ポリテルペンが挙げられる。このような粘着付与剤の混合物を使用してもよい。
【0033】
本明細書中に記載の接着剤組成物には、酸化防止剤または安定剤が約3重量%以下、より典型的には約0.5重量%の量で含有されてもよい。本発明で有用な安定剤または酸化防止剤の中にヒンダードフェノールまたはヒンダードフェノールと二次酸化防止剤、例えばジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)またはジラウリルチオ−ジプロピオネート(「DLTDP」)との組み合わせがある。代表的なヒンダードフェノールには、1,3,5‐トリメチル2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン;ペンタエリスリチルテトラキス‐3(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート;ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート);n−オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート;4,4'‐メチレンビス(2,6‐tert‐ブチルフェノール):4,4'‐チオビス(6‐tert‐ブチル‐o‐クレゾール);2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール;6‐(4‐ヒドロキシフェノキシ)‐2,4−ビス(n‐オクチル−チオ)‐1,3,5‐トリアジン;ジ‐n‐オクタデシル3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート;2‐(n‐オクチルチオ)エチル3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ−ベンゾエート;およびソルビトールヘキサ[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]がある。チバ社(Ciba)から入手できる二次酸化防止剤 イルガフォス(IRGAFOS)168、チバ・ガイギー社(Ciba-Geigy)から入手できるヒンダードフェノール一次酸化防止剤が好ましい。他の酸化防止剤として、アルバマーレ(Albermarle)社製のヒンダードフェノール、エタノックス(ETHANOX)330;モンサント(Monsanto)社製の2,5−ジtert−アミルヒドロキノン、サントバール(SANTOVAR);およびユニロイヤル(Uniroyal)社製のトリス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ナバガード(Navagard)Pが挙げられる。
【0034】
本発明の接着剤組成物には、様々な特性を満足させ、かつ特定用途の要求に合わせるために従来からホットメルト接着剤に使用されている他の添加剤が添加されてもよい。このような添加剤として、例えば、充填材、顔料、流れ調整剤、色素が挙げられ、当該添加剤は目的に応じて少量または大量に接着剤配合物へ混合されてもよい。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、例えば約90℃以上、典型的には約110℃の温度で、均一なブレンドが得られるまで、溶融体中、成分をブレンドすることにより製造され、通常は約2時間で十分である。ブレンド方法は当該分野において様々な方法が知られており、均一なブレンドを製造するあらゆる方法が満足できる。
【0036】
本発明のホットメルト接着剤は、例えば、包装、加工(converting)、製本、袋エンディング(bag ending)における用途および不織布市場における用途を見い出す。当該接着剤は、ケース、カートン、およびトレーの作製材料としての特定の用途、および例えば、穀物、クラッカーおよびビール製品の包装におけるヒートシール用途を含むシール接着剤としての特定の用途を見い出す。本発明は、例えば、カートン、ケース、ボックス、袋、トレーなどの容器を包含する。
【0037】
包装用ホットメルト接着剤は通常、ピストンポンプ式またはギアポンプ式押出装置を用いてビーズ状で基体上に押し出される。ホットメルト適用装置は、ノードソン(Nordson)、アイ・ティー・ダブリュー(ITW)およびスラウターバック(Slautterback)を含む幾つかの供給業者から入手できる。ホットメルト接着剤の適用には、ホイル式適用装置(wheel applicator)も通常使用されるが、押出装置ほど頻繁には使用されない。別法として、当該接着剤は包装業者への輸送前に、包装加工業者により適用されてもよく、すなわち、容器は予備適用された接着剤を含む。容器の包装後、当該容器は、従来の方法によりヒートシールされてもよいし、当該接着剤を適正な結合温度に加熱する他のあらゆるエネルギー源に供してもよい。本発明の低温接着剤は、結合を形成する適正な温度まで再活性化または再加熱するのに必要なエネルギーが少ないため、特に、これらの用途に適している。好ましい実施態様においては、予備適用されるべき接着剤はエネルギー吸収成分を含有する。
【0038】
結合される基体としては、未使用および再生クラフト紙、高密度および低密度クラフト紙、チップボードならびに様々な種類の処理済および被覆済のクラフト紙およびチップボードが挙げられる。アルコール飲料の包装などの包装用途に複合材料も使用される。当該複合材料として、アルミニウム箔に積層されたチップボードが挙げられ、当該アルミニウム箔はさらに、ポリエチレン、マイラー、ポリプロピレン、ポリビニリデンクロライド、エチレンビニルアセテートおよび様々な他の種類のフィルムなどのフィルム材料に積層されている。さらには、当該フィルム材料は、チップボードまたはクラフト紙に直接的に結合していてもよい。非常に多くの基体、特に複合材料が包装産業において実用的であるので、前記した基体は決して完全な例示を表すものではない。
【0039】
以下の実施例は説明することを目的として示すものであり、限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
以下の実施例においては、実施例は例示して説明することを目的としてのみ提供されるものである。特記しない限り、全ての部は重量に基づくものであり、全ての温度は華氏温度である。熱応力は、図1Aおよび図1Bで図示される、上記された方法で測定される。
【0041】
全ての接着剤配合物は、280°Fに加熱された単一羽根混合機において成分を均一になるまで混合することにより製造した。その後、接着剤を、好結果の商業用途を想定した各種試験に供した。
【0042】
配合成分を以下で詳しく説明する。
【0043】
AF1900/1000は、メタロセンポリエチレン/1−オクテンコポリマーであり、ダウ・ケミカル・カンパニーから商品名アフィニティー(AFFINITY)GA 1900として入手でき、メルトインデックスが1000g/10分である。
【0044】
AF1950/500は、メタロセンポリエチレン/1−オクテンコポリマーであり、ダウ・ケミカル・カンパニーから商品名アフィニティーGA1950として入手でき、メルトインデックスが500g/10分である。
【0045】
エンゲージ(ENGAGE)8130は、メタロセンポリエチレン/1−オクテンランダムコポリマーであり、メルトインデックスが35g/10分未満、軟化点が38−104℃であり、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手できる。
【0046】
エンゲージ8200は、メタロセンポリエチレン/1−オクテンランダムコポリマーであり、メルトインデックスが35g/10分、軟化点が38−104℃であり、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手できる。
【0047】
OBC D9808.15は、ポリエチレン/1−オクテンブロックコポリマーであり、メルトインデックスが35g/10分未満、軟化点が118−122℃であり、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手できる。
【0048】
AC 575Pは、無水マレイン酸ポリエチレンワックスであり、ケン化価が20−40mgKOH/gm(試験方法357−OR−1)であり、ハニーウェル(Honeywell)から入手できる。
【0049】
AC 573Pは、無水マレイン酸ポリエチレンワックスであり、ケン化価が3−6mgKOH/gm(試験方法357−OR−1)であり、ハニーウェルから入手できる。
【0050】
カリスタ(Calista)158/IGI 1339は、フィッシャー・トロプシュ・ワックスであり、融点が158°Fであり、アイ・ジー・アイ/シェル・オイル(IGI/Shell oil)から入手できる。
【0051】
C80は、パラフリント(Paraflint)C80プロピレンワックスであって、フィッシャー・トロプシュ精留ワックスであり、サソール(Sasol)から入手できる。
【0052】
パルバン(Parvan)1471は、エクソンモービル・カンパニー社製のパラフィンワックスである。
【0053】
HCは、C炭化水素粘着付与性樹脂を示す。
【0054】
HCは、C炭化水素粘着付与性樹脂を示す。
【0055】
−CHCは、C−C炭化水素粘着付与性樹脂を示す。
【0056】
REは、ロジンエステル粘着付与剤を示す。
【0057】
ホットメルト接着剤の溶融粘度は、No.27スピンドルを用いたブルックフィールド・サーモセル粘度計(Brookfield Thermosel viscometer)で測定した。
【0058】
120°F、130°F、135°Fおよび140°Fでの接着力は、基体に依存するものであり、接着剤の1/2インチ幅のビーズを250°Fで2''×3''片の2段型段ボール(double fluted corrugated board)へ適用し、すぐに段ボールの第2片を接触させ、結合を形成することにより測定した。200g重量をすぐに当該結合の上部に2秒間置き、圧縮させた。製作した試験片を室温に一晩中置いた後、オーブンまたは冷蔵庫中、様々な温度に8〜24時間置いた。当該結合体を手で引き離し、生じた繊維引き裂けを記録した。
【0059】
熱応力試験(HS)については、2''×6''寸法のフルート状の接着剤層を有し、2''側に沿って延びる3つの結合体に100g重量をかけ、オーブン中、開始温度130°F〜150°Fで、それぞれ8時間および24時間置いた。試験結果は、合格(2つの結合体が合格);不合格(2つの結合体が不合格)として記録した。図1Aおよび図1Bを参照。
【0060】
曇り点温度は、透明な均一液相から半固体相へ冷却するとき、構成材料が凝固または「曇り」始める温度である。例えば、ワックスの曇り点は通常、当該ワックスの融点に接近している。相溶性は接着剤の曇り点と関係しており、一般的に言えば、曇り点が低いほど、相溶性は大きい。
【0061】
実施例1
マレエート化ポリエチレン(PE)ワックス(AC575P)を使用して、または使用せずに、接着剤試料を製造した。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示す結果からわかるように、AC575Pをアフィニティーおよびエンゲージメタロセンポリマーと組み合わせて用いると、AC575Pを用いることなく配合された接着剤と比較して、より高い熱応力値が観察された。AC575Pなしに配合された試料1,3および4は、試料2,5および6と比較して、より低い熱応力値を示す。
【0064】
実施例2
接着剤試料を製造し、マレエート化ポリエチレン(PE)ワックスAC574Pの効果を、より低い粘性のAC573Pと比較した。配合および性能の結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2に示す結果からわかるように、アフィニティー、エンゲージおよびOBCは、AC575Pとの組み合わせで、250°F適用において優れた熱応力値を示した。試料7(アフィニティー+エンゲージ)、試料8(アフィニティー1000MI+アフィニティー500MI)および試料11(アフィニティー+OBC)は、150°Fで合格のより高い熱応力値を示し、良好な低温接着力(cold adhesion)も示した。AC575Pを粘性がより低いAC573Pで置き換えたとき(試料9および10)、当該配合物は140°F熱応力が合格したが、AC575P含有配合物(試料7および8)は同配合物で5〜10°F高い熱応力値を示した。
【0067】
実施例3
AC575Pを様々な量で含有する接着剤配合物を製造した。配合および性能の結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3に示す結果からわかるように、AC575Pの割合の増大により、250°Fでの配合物粘度が増大した。
【0070】
実施例4
表4に示す配合の接着剤試料16〜18を275°Fで適用した。性能の結果を表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
表4からわかるように、ポリマーの割合の増大により、上記全ての配合物の粘度が増大したが、275°Fで適用したとき、3種の全ての配合物はより高い熱応力と良好な低温接着力を示した。
【0073】
実施例5
表5に示す配合の接着剤試料19〜21を製造した。性能の結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
表5に示す結果からわかるように、試料19および20においてパラフィンワックスを3%添加することにより、これらの配合物の粘度は減少し、良好な熱応力を示したが、低温接着力は改善されなかった。試料21配合物においてC80ワックスを30%添加することにより、250°Fでの粘度は増大したが、135°Fでの高温接着力は改善されなかった。
【0076】
本発明の目的および範囲を逸脱しなければ、本発明に多くの変更および変形をすることができることは当該分野の当業者にとって明らかである。ここで記載された特定の具体例は実施例としてのみ提供されるものであり、本発明は添付の特許請求の範囲の用語、および当該特許請求の範囲が表されるに等しい最大範囲によってのみ制限されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンコポリマー成分およびマレエート化ポリエチレンワックス成分を含有する適用温度が低いホットメルト接着剤であって、該ポリオレフィンコポリマー成分が2種の異なるポリオレフィンコポリマーを含み、少なくとも1種のポリオレフィンコポリマーがエチレンモノマーおよび1−オクテンモノマーから製造されたメタロセン触媒型エチレン/α−オレフィンコポリマーであり、該コポリマーの190℃でのメルトインデックスが約400g/10分より大きく、該接着剤の120℃での粘度が約3000センチポイズより小さいホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記2種の異なるポリオレフィンコポリマーは分子量が異なる請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
190℃でのメルトインデックスが約1000g/10分のポリオレフィンコポリマーを含む請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満のポリオレフィンコポリマーを含む請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤。
【請求項5】
190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満のエチレン−オクテン系オレフィンブロックコポリマーを含む請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満のエチレン−オクテン系ランダムコポリマーを含む請求項4に記載の接着剤。
【請求項7】
190℃でのメルトインデックスが約500g/10分のポリオレフィンコポリマーおよび190℃でのメルトインデックスが約1000g/10分のポリオレフィンコポリマーを含む請求項2に記載の接着剤。
【請求項8】
エチレン−オクテン系オレフィンブロックコポリマーが118〜122℃の融点を有する請求項5に記載の接着剤。
【請求項9】
エチレン−オクテン系ランダムコポリマーが38〜104℃の融点を有する請求項6に記載の接着剤。
【請求項10】
190℃でのメルトインデックスが約1000g/10分のポリオレフィンコポリマーおよび190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満のポリオレフィンコポリマーを含む請求項8に記載の接着剤。
【請求項11】
190℃でのメルトインデックスが約1000g/10分のポリオレフィンコポリマーおよび190℃でのメルトインデックスが約35g/10分未満のポリオレフィンコポリマーを含む請求項9に記載の接着剤。
【請求項12】
前記ポリオレフィンコポリマー成分が接着剤重量に対して30重量%以下の量で存在し、前記マレエート化ポリエチレンワックス成分が接着剤重量に対して10重量%以下の量で存在する請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤。
【請求項13】
前記ポリオレフィンコポリマー成分を25〜30重量%で、前記マレエート化ポリエチレンワックス成分を5〜10重量%で含有する請求項12に記載の接着剤。
【請求項14】
前記マレエート化ポリエチレンワックス成分とは異なるワックス成分をさらに含有する請求項13に記載の接着剤。
【請求項15】
ケース、カートン、トレー、袋または本をシールおよび/または形成する方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載のホットメルト接着剤を溶融形態で基体表面に適用し、ケース、カートン、トレー、袋または本をシールおよび/または形成することを含む方法。
【請求項16】
カートン、ケース、トレーまたは袋内に収容された包装物品であって、該カートン、ケース、トレーまたは袋が、請求項1〜15のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて形成および/またはシールされている物品。
【請求項17】
包装された食料品である請求項16に記載の包装物品。
【請求項18】
少なくとも一方の基体に請求項1〜15のいずれかに記載の溶融ホットメルト接着剤組成物を適用することを含む、基体を類似または非類似の基体と結合させる方法であって、溶融接着剤を約300°Fより低い温度で基体に適用し、該適用された接着剤に第2基体を接触させる方法。
【請求項19】
前記溶融接着剤を275°F以下で基体に適用する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶融接着剤を250°F以下で基体に適用する請求項19に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate


【公表番号】特表2013−501099(P2013−501099A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523064(P2012−523064)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/043804
【国際公開番号】WO2011/014714
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】