説明

遮光塗料、遮光膜および光学素子

【課題】 実用上十分に小さい内面反射率と実用上十分な空気界面での防眩性を兼ね備えた遮光膜を形成することができる遮光塗料、および遮光膜およびそれからなる光学素子を提供すること。
【解決手段】 少なくともエポキシ樹脂と、染料からなる着色剤と、一次粒子の個数平均粒子径が1nm以上100nm以下であるチタニア微粒子と、エポキシ樹脂硬化剤とを含んでなる遮光膜であって、前記チタニア微粒子の濃度が20質量%以上60質量%以下であることを特徴とする遮光膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光塗料、遮光膜および遮光膜が形成された光学素子に関するものである。特に、少なくともエポキシ樹脂とチタニア微粒子と着色剤を含む遮光塗料および遮光膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置等の光学機器に用いられる光学素子には、必要に応じて光学有効部外に黒色の遮光膜が配され、迷光を低減させる処置が施されている。レンズのコバ部等に届いた迷光は、この遮光膜により十分に吸収され、例えばフレアやゴーストなどといった不要光が低減されることとなる。
【0003】
この遮光膜には光学素子の内側から遮光膜に入射する迷光を低減する効果と、空気界面から遮光膜に入射する迷光を低減する効果の双方が期待され、それぞれ内面反射、表面反射と呼ばれる反射光を好適に低減することが求められている。
【0004】
一方、近年の光学機器のコンパクト化、高性能化に伴い光学系に用いられる光学素子には、より屈折率の高い材料が多用されるようになってきており、具体的には屈折率が1.8から2.0を超えるような硝材等が用いられている。屈折率の高い光学素子に入射する迷光の内面反射を低減するには、遮光膜の屈折率もそれに伴い高める必要があり、例えば屈折率の高い成分を遮光膜中に導入することで、遮光膜の屈折率を好適に制御する方法が知られている(特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1には、コールタールを用いることで屈折率を向上させ、かつ、コールタール、カーボンブラックおよび染料で光を吸収させることで内面反射防止する内面反射光吸収塗料が開示されている。また、特許文献2には、屈折率が1.5以上である無機微粒子と顔料を含有する光学部材の内面反射防止用塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭47−32419号公報
【特許文献2】特開平07−82510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようにコールタールを屈折率調整剤として用いた場合、屈折率を高めることには限りがあり、例えば高屈折率の硝材を用いた光学素子の内面反射率を所望の値に好適に低減することは困難となりやすいといった課題がある。
【0008】
また、特許文献2のようにより屈折率の高い微粒子と顔料を用いた内面反射防止用塗料の場合、屈折率は所望の値まで十分高められると考えられる。しかしながら、顔料等とのヘテロ分散系となるため、複数種の微粒子をそれぞれ好適に粗大な凝集体を形成することなく良分散させ、光学性能上好適な範囲まで内面反射率を低減させることは非常に難しくなる。
【0009】
さらに、遮光膜には表面反射も好適に低減することが求められており、空気界面では適度に荒れた表面を有することで、防眩性を高めることが求められている。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑み実用上十分に小さい内面反射率と実用上十分な空気界面での防眩性を兼ね備えた遮光膜を提供するものである。また遮光膜を形成する遮光塗料および遮光膜が形成された光学素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくともエポキシ樹脂と、染料からなる着色剤と、一次粒子の平均個数粒子径が1nm以上100nm以下であるチタニア微粒子と、エポキシ樹脂硬化剤とを含んでなる遮光膜であって、前記チタニア微粒子の濃度が20質量%以上60質量%以下であることを特徴とする遮光膜に関する。
【0012】
また、本発明は、カメラ、双眼鏡、顕微鏡又は半導体露光装置のいずれかに用いる光学素子であって、前記光学素子は、光学有効面外に遮光膜が形成されており、上記の遮光膜を用いる光学素子に関する。
【0013】
また、本発明は、少なくともエポキシ樹脂と、染料からなる着色剤と、一次粒子の平均個数粒子径が1nm以上100nm以下であるチタニア微粒子とを含んでなる樹脂組成物を、有機溶媒に溶解、分散してなる遮光塗料であって、前記樹脂組成物に対する前記チタニア微粒子の濃度が20質量%以上60質量%以下であることを特徴とする遮光塗料に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遮光膜は、実用上十分に小さい内面反射率と実用上十分な空気界面での防眩性を兼ね備えた遮光膜を形成することができる。よってカメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置等の光学機器に用いられる光学素子に供されることにより、実用上十分に不要光を低減させることができ、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、上記構成により本発明の課題を達成することができるが、具体的には次のような形態によることができる。
【0016】
遮光膜として十分に機能するためには、光学素子と遮光膜との界面では迷光を極力遮光膜内部に誘導し、また誘導された迷光は膜中で十分に吸収されることが好ましい。このためには遮光膜の屈折率は基材となる光学素子に使用されている材料の屈折率により近い値であることが好適となる。また、遮光膜内部に誘導された迷光を吸収するためには、遮光膜中に光を吸収する成分が必要となる。
【0017】
本発明者らが鋭意検討した結果、エポキシ樹脂中に屈折率を調整する成分としてチタニア微粒子、内部に誘導された迷光を吸収する成分として染料からなる着色剤を含有する遮光膜が有効であることを見出すに至った。
【0018】
(チタニア微粒子)
チタニア微粒子はそのもの自身が持つ高い屈折率のため、遮光膜を所望の屈折率に調整することが容易であり、また十分に微粒化された微粒子が比較的安価に多数上市されていることからも好適に用いることができる。本発明の遮光膜においてチタニア微粒子濃度は、不揮発分の20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以上55質量%以下であることが更に好ましい。20質量%未満であると遮光膜の屈折率を十分に高めることができず、また60質量%より多い場合は遮光膜として十分な膜質が得られないためである。なお、本発明における不揮発分とは、遮光塗料を200℃にて2時間保持した時の残存物を指すものとする。従って、遮光膜においけるチタニア微粒子濃度は、遮光塗料の有機溶媒を除いた、エポキシ樹脂、チタニア微粒子、染料等からなる樹脂組成物に対するチタニア微粒子の濃度とほぼ等しくなる。
【0019】
さらに、本発明のチタニア微粒子の一次粒子の個数平均粒径(平均一次粒子径)は1nm以上100nm以下であることが好ましく、さらには1nm以上70nm以下であることがより好ましい。1nm未満であると微粒子の表面積が飛躍的に増大し、チタニア微粒子が非常に凝集しやすくなり、好適に分散させることが困難となるためである。また、100nmより大きいと単一粒子そのものが光散乱源となってしまい遮光膜として十分な性能を発揮できなくなってしまうためである。なお、本発明における平均一次粒子径とは、凝集していない粒子における体積球相当直径を指すものとする。また、チタニア微粒子の平均一次粒子径は、個数基準の平均粒子径である。
【0020】
本発明のチタニア微粒子はその屈折率と平均一次粒子径が所望の条件を満足する限り、気相法、液相法等公知の方法により製造することができる。例えば、少なくとも酸素を含む雰囲気下において、火炎中に金属粉を投入し燃焼させることで二酸化チタン微粒子を合成する方法や、触媒存在下でチタンアルコキシドを加水分解、重縮合するゾルーゲル法等公知の方法等が挙げられる。また、チタニアはルチル構造やアナターゼ構造といった結晶構造を有することが知られており、アモルファス構造のそれと比較してより高い屈折率を示すが、所望の屈折率を満たすものであればどの結晶形態にも寄らず好適に用いることができる。
【0021】
(遮光塗料)
本発明の遮光塗料は、粉体状のチタニア微粒子をエポキシ樹脂に直接添加し、その後分散処理を施してもよいが、チタニア微粒子が溶媒中に好適に分散されたスラリーをエポキシ樹脂に添加してもよい。スラリーに用いられる溶媒としてはチタニア微粒子を好適に分散可能であり、かつエポキシ樹脂、染料等の必要な成分を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等の公知の低極性有機溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等の公知の極性有機溶媒を選択することができ、より好ましくはエーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等の公知の極性有機溶媒、更に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル(以降、PGMEと称す)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以降、PGMEAと称す)を1種または2種以上選択することができる。スラリーに用いられる溶媒は、エポキシ樹脂に添加後、エバポレート等により除去することも可能であるが、可能な限り除去することなく遮光塗料の構成成分とすることが製造コストの観点からも好ましい。そのためには光学素子への塗工性や塗工後に乾燥、焼成し塗膜を形成する際に十分に揮発除去でき、かつ空気界面を適度に荒らすことができる溶媒を選択することも同時に重要となる。
【0022】
光学素子に塗工された遮光膜の空気界面を適度に荒らす方法を以下に示す。本発明の遮光膜は、本発明の樹脂組成物を含む遮光塗料を基材に塗付後に乾燥させることにより溶媒を揮発させ形成されるが、この溶媒の揮発時に表面張力の不均一な分布が生じ、それによりマランゴニー対流が発生する。この対流により樹脂組成物中のエポキシ樹脂、染料、チタニア微粒子と溶媒の濃度分布にも不均一性が生じ、塗膜表面にベナードセル構造を形成させる。これにより、塗工膜は平滑な空気界面ではなく、適度に荒れた空気界面を有することとなる。
【0023】
(有機溶媒)
上記より、本発明の遮光塗料の有機溶媒は、チタニア微粒子の分散性、エポキシ樹脂、染料の溶解性、塗工性を満足する限りにおいて特に限定されるものではない。より好ましくはチタニアスラリー溶媒としても用いることが可能であり、かつ塗工後の乾燥中にマランゴニー対流を生じさせ、ベナードセルを形成することにより乾燥後の塗膜表面が適度に荒れた空気界面を形成し得る有機溶媒を選択することができる。
【0024】
具体的には炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等の公知の低極性有機溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等の公知の極性有機溶媒を選択することができ、より好ましくはエーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等の公知の極性有機溶媒、更に好ましくはPGMEAを1種または2種以上選択することができる。
【0025】
(分散剤)
チタニア微粒子には、粗大な凝集を防ぎ良好な分散性とするために微粒子表面を表面修飾剤で修飾したり、分散剤や界面活性剤等により分散性を高める処置を施しても良い。表面修飾剤や分散剤、界面活性剤の種類や量は、所望の分散性やエポキシ樹脂、染料等との相溶性を崩さない程度において特に限定されるものではないが、シリコン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコキシド化合物やクロロシラン等の塩化物等、リン酸やカルボン酸等の酸系分散剤、アミン系、アミド系、エステル系、ケトン系、エーテル系、グリコキシド系、アルコール系、アクリル系等公知の表面修飾剤や分散剤等を1種または2種以上用いることができる。
【0026】
また、チタニア微粒子はその光活性を低減させる目的において、所望の屈折率や分散性を損なわない程度においてシリカやアルミナ等の成分を含有しても良い。
【0027】
(エポキシ樹脂)
本発明のエポキシ樹脂は、チタニア微粒子の分散性、染料との相溶性、各種硬化剤との硬化性、塗膜としての安定性、基材との密着性を損なわない範囲において公知のエポキシ樹脂を1種または2種以上用いることができる。より具体的には、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキサイド、脂環族エポキサイド等を用いることができ、より好ましくはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、更に好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を1種または2種以上用いることができる。
【0028】
(染料からなる着色剤)
本発明の染料は、可視光域に吸収を有し、エポキシ樹脂との相溶性、チタニア微粒子の分散性を損なわない範囲内において特に限定されるものではなく、公知の染料を用いることができる。染料は1種類であっても良いし、黒色、赤色、黄色、青色など複数種の染料を併用して吸収波長を調整しても構わない。染料の種類としては、色の種類が豊富なアゾ染料がより好ましいが、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、スチルベンゼン染料、ピラゾロン染料、チアゾール染料、カルボニウム染料、アジン染料であっても良い。また、耐光性、耐水性、耐熱性などが増すため、クロム、コバルト、銅などの金属を含む染料がより好ましい。
【0029】
本発明の遮光膜に含まれる染料の含有量は、不揮発分に対して15質量%以上50質量%以下、より好ましくは15質量%以上40質量%以下、更に好ましくは15質量%以上35質量%以下が望ましい。本発明の染料は遮光膜中に誘導された迷光を十分に吸収する目的で含有されるが、更には各波長における屈折率や吸光係数をも制御することができるため、各波長の反射特性に応じて複数の染料の種類やその添加量を調整することで所望の特性を満足することができる。
【0030】
さらに本発明の遮光塗料には、本来の目的が損なわれない範囲内で、シランカップリング剤が含まれていてもよい。シランカップリング剤は一般的に硝子表面の水酸基と遮光塗料中の反応基を化学結合させるため、密着力を向上させる効果がある。本発明に用いられるシランカップリング剤としては、硝子との密着性が高いものが好ましい。より具体的には、反応性官能基がエポキシ、アミノ、ビニル、メタクリル、アクリル、スチリル、ウレイド、メルカプト、スルフィド、イソシアネート等であるシランカップリング剤を用いることができ、より好ましくは反応性官能基がエポキシであるシランカップリング剤、更に好ましくは2‐(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。
【0031】
シランカップリング剤の含有量は、不揮発分に対して20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以上5.5質量%以下が望ましい。シランカップリング剤が5.5質量%以上含まれると、基材と遮光膜界面の外観に白点が生じる場合がある。本発明のシランカップリング剤は基材と遮光膜の密着性を向上させる目的で含有されるが、厚膜で形成された遮光膜の、高温高湿下でのクラック抑制をも制御することができるため、シランカップリング剤の種類やその添加量を調整することで所望の膜特性を満足することができる。
【0032】
さらに本発明の遮光塗料には、本来の目的が損なわれない範囲内で、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、可塑剤、カップリング剤、リン酸エステル類やメラミン類等の難燃剤、脂肪酸エステル系等の界面活性剤類、アルキルスルホン酸塩、ステアリン酸のグリセリンエステル等の帯電防止剤、酸化防止剤、防かび剤、防腐剤等の物質が挙げられる。これらの添加剤は単独でも複数種の併用であってもよい。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、公知の方法により混合、分散、溶解し作製することができる。より簡易的に全ての構成材料を同一容器に混入し、プロペラ等により撹拌を行うことで混合、分散、溶解しても良いが、超音波撹拌装置、ミキサー、ホモジナイザー、遊星回転装置、衝突分散装置、ディスクミル、サンドミル、ビーズミル、ボールミル等公知の分散手法により混合、分散、溶解し作製することができる。
【0034】
(遮光膜)
本発明の遮光膜は、本発明の樹脂組成物にエポキシ樹脂硬化剤や硬化促進剤等を添加し、均一に溶解させたエポキシ樹脂組成物遮光塗料を、基材となる光学素子に塗付し、乾燥、焼成することにより形成することができる。
【0035】
エポキシ樹脂硬化剤としては、所望の特性を満足するものであれば特に限定されるものではなく公知の硬化剤や硬化促進剤を用いることができる。好ましくは脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、脂肪族三級アミン、芳香族三級アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体等の重付加型や触媒型の硬化剤または硬化促進剤を1種または2種以上併用して用いることができる。より好ましくは脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、ポリメルカプタン、脂肪族三級アミン、芳香族三級アミン、イミダゾール化合物を用いることができる。
【0036】
(光学素子)
本発明の光学素子は、レンズ、プリズム、反射鏡、回折格子等の光学機器を構成する素子として用いることができる。例えば、カメラ、双眼鏡、顕微鏡又は半導体露光装置のいずれかに用いる光学素子であって、光学有効面外に遮光膜が形成された光学素子として用いることができる。
【0037】
基材となる光学素子の光学有効面外への塗付方法としては、所望の塗布形状に応じてディップ法、スピンコート法、スリットコート法、静電塗付法、はけ、スポンジ、バーコーター等の塗付用冶具を用いての塗付等公知の方法を種々選択することができる。
【0038】
塗付後の乾燥、焼成工程としては所望の特性を満足する範囲において、また選択した硬化剤の種類や量に応じて種々選択可能であるが、好ましくは室温以上300℃以下、より好ましくは40℃以上250℃以下、更に好ましくは40℃以上200℃以下で、好ましくは10分以上10時間以下、より好ましくは30分以上10時間以下、更に好ましくは1時間以上10間以下の時間処理することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明をする。本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例および比較例における内面反射率の評価、および表面反射率の評価、高温高湿下での膜クラック評価は、以下の方法で行った。
【0040】
(内面反射率の評価)
得られた遮光膜の内面反射率の評価は、以下の方法で行った。
【0041】
内面反射率の評価は、分光光度計U−4000[製品名](日立ハイテク社製)を、評価サンプル用の基板として硝材S−LAH53[製品名](オハラ社製)の直角三角プリズムでその底面のみを粗面化処理を施したものを用いて行った。
【0042】
はじめに底面に遮光膜を配していない状態の直角三角プリズムを用いて、その底面と平行に測定光をプリズム側面から入射するようプリズムを設置し反射率(R1)を測定した。その後同一のプリズムに遮光膜を配し、同様の方法により反射率(R2)を求め、反射率(R2)を反射率(R1)で除した値を内面反射率とした。
【0043】
(表面反射率の評価)
得られた遮光膜の表面反射率の評価は以下の方法で行った。
【0044】
表面反射率の評価は分光光度計U−4000[製品名](日立ハイテク社製)を、評価サンプル用の基板として鏡面処理を施した硝材S−BSL7[製品名](オハラ社製)の平板ガラスの一面に遮光膜を配し反射率を求めた値を表面反射率とした。
【0045】
(高温高湿下での膜クラック評価)
得られた遮光膜の高温高湿下での膜クラック評価は以下の方法で行った。
【0046】
評価サンプル用の基板として鏡面処理を施した硝材S−LAH58[製品名](オハラ社製)の平板ガラスの一面に焼成後の膜厚が9μmとなるように遮光膜を形成し、室温で1時間乾燥した後、200℃で2時間焼成した。その後、遮光膜を形成した平板ガラスを温度85℃湿度95%の雰囲気に6時間曝し、顕微鏡および目視にて膜クラックの発生有無をガラスと遮光膜の界面から観察した。表1において、膜クラックの評価は、はクラックが全く無し、は目視で観察できるクラックは無し、は目視で観察できる微小なクラックは有るがガラスと遮光膜の界面の外観に悪影響を及ぼさないもの、は目視でクラックが観察でき、ガラスと遮光膜の界面の外観が著しく悪化したものを表す。
【0047】
(実施例1)
撹拌用容器にエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)12g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)12g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)52g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)2.23g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)5.58g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)2.23g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)7.81g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)1.8gを投入し、遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は22.9質量%であった。得られたエポキシ樹脂組成物28gにエポキシ樹脂硬化剤EH−6019[製品名](ADEKA社製)2.35g、硬化促進剤DMP−30[製品名](日新EM社製)0.3g、PGMEA(キシダ化学社製)7.7gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。得られた遮光塗料を前述の直角三角プリズムの粗面および平板ガラス上に焼成後の膜厚が3μm、9μmとなるようスピンコーターにて成膜し、室温にて1時間乾燥後恒温炉にて200℃2時間焼成した。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0048】
(実施例2)
実施例1において撹拌用容器にエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)10.5g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)10.5g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)68g、エポキシ樹脂硬化剤EH−6019[製品名](ADEKA社製)1.8g、PGMEA(キシダ化学社製)8.8gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物、その遮光塗料を作成し、その遮光膜を得た。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は29.5質量%であった。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0049】
(実施例3)
撹拌用容器にエポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)4g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)40g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)1.24g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)3.1g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)1.24g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)3.72g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)0.9g、PGME24g(キシダ化学社製)、カップリング剤KBM−403[製品名](信越化学工業社製)2.4g、可塑剤ニカノールY50[製品名](フドー社製)4gを投入し、遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。このときのエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は32.7質量%であった。
【0050】
得られたエポキシ樹脂組成物8gにエポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.11g、PGMEA(キシダ化学社製)4gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0051】
(実施例4)
撹拌用容器にエポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)3g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)56g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)0.99g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)2.48g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)0.99g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)2.98g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)0.8gを投入し、遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は55.5質量%であった。得られたエポキシ樹脂組成物7gにエポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.09g、PGMEA(キシダ化学社製)3gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0052】
(実施例5)
実施例1において撹拌用容器にエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)4.16g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)16.64g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)80gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物を作成した。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は33.1質量%であった。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.7gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0053】
(実施例6)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで24時間回転させた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は33.1質量%であった。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.7gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0054】
(実施例7)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25wt%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで70時間回転させた。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ系シランカップリング剤KBM−303[製品名](信越化学工業社製)0.32gを加えた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は31.6質量%であった。その後、エポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.0gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
【0055】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0056】
(実施例8)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25wt%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで70時間回転させた。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ系シランカップリング剤KBE−402[製品名](信越化学工業社製)0.32gを加えた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は31.6質量%であった。その後、エポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.0gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
【0057】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0058】
(実施例9)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25wt%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで70時間回転させた。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ系シランカップリング剤KBE−403[製品名](信越化学工業社製)0.32gを加えた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は31.6質量%であった。その後、エポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.0gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
【0059】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0060】
(実施例10)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25wt%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで70時間回転させた。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ系シランカップリング剤KBM−403[製品名](信越化学工業社製)0.32gを加えた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は31.6質量%であった。その後、エポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.0gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
【0061】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0062】
(実施例11)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25wt%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで70時間回転させた。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ系シランカップリング剤KBM−403[製品名](信越化学工業社製)0.20gを加えた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は32.2質量%であった。その後、エポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.0gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
【0063】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0064】
(実施例12)
ボールミル用ポットにエポキシ樹脂jER828[製品名](三菱化学社製)104g、エポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)416g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25wt%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)2000g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)140g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)56g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)195g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)45g、直径30mmと35mmの磁性ボールをそれぞれ25個づつを投入し、回転機によりボールミルポットを50rpmで70時間回転させた。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ系シランカップリング剤KBM−403[製品名](信越化学工業社製)0.40gを加えた。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は31.3質量%であった。その後、エポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.87g、PGMEA(キシダ化学社製)4.0gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。
【0065】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0066】
(比較例1)
撹拌用容器にエポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)8g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)1.24g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)3.1g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)1.24g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)3.72g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)0.9g、PGME54g(キシダ化学社製)、カップリング剤KBM−403[製品名](信越化学工業社製)2.4gを投入し、遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は0質量%であった。得られたエポキシ樹脂組成物8gにエポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.24g、PGMEA(キシダ化学社製)4gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0067】
(比較例2)
撹拌用容器にエポキシ樹脂EPICLON−EXA−4850−150[製品名](DIC社製)1.5g、チタニア分散液ND139[製品名](テイカ社製、チタニア濃度25質量%PGME分散液、平均一次粒子径15nm)80g、染料VALIFAST−BLACK3810[製品名](オリエント化学社製)1.12g、染料VALIFAST−RED3320[製品名](オリエント化学社製)2.79g、染料VALIFAST−YELLOW3108[製品名](オリエント化学社製)1.12g、染料VALIFAST−BLUE2620[製品名](オリエント化学社製)3.91g、防かび剤シントールM−100[製品名](住化エンビロサイエンス社製)0.8gを投入し、遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は64.0質量%であった。得られたエポキシ樹脂組成物14gにエポキシ樹脂硬化剤アデカハードナーEH551CH[製品名](ADEKA社製)0.07g、PGMEA(キシダ化学社製)6.2gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を作成したが、膜質がもろく遮光膜として使用できる膜とならなかった。
【0068】
(比較例3)
実施例2と同様の方法で得たエポキシ樹脂組成物28gにエポキシ樹脂硬化剤EH−6019[製品名](ADEKA社製)1.8g、硬化促進剤DMP−30[製品名](日新EM社製)0.3gを加え遊星回転撹拌機HM−500[製品名](キーエンス社製)で20分間撹拌した。この時のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は29.5質量%であった。
【0069】
得られた遮光塗料より、実施例1と同様の方法で遮光膜を得た。得られた遮光膜の内面反射率、表面反射率、高温高湿下での膜クラックの評価結果を表1に記す。
【0070】
【表1】

【0071】
すべての実施例および比較例3より、本発明のエポキシ樹脂組成物中のチタニア微粒子濃度は、20質量%以上60質量%以下となることで実用上十分に小さい内面反射率を有する十分な膜質の遮光膜およびそれからなる光学素子が得られることが示される。また、すべての実施例および比較例1より、本発明の樹脂組成物からなる遮光塗料中に複数の溶媒を含有させることで、それからなる遮光膜は表面反射率の更なる向上が認められ、実用上十分に小さい内面反射率と表面反射率を有する十分な膜質の遮光膜およびそれからなる光学素子が得られることが示される。また、すべての実施例および比較例1、3より、高温高湿下においてガラスと遮光膜の界面の外観に悪影響を及ぼす膜クラックは確認されず、環境耐久性を有する十分な膜質の遮光膜およびそれからなる光学素子が得られることが示される。さらに、実施例7から12は、特に外観に優れた遮光膜が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ樹脂と、染料からなる着色剤と、一次粒子の個数平均粒径が1nm以上100nm以下であるチタニア微粒子と、エポキシ樹脂硬化剤とを含んでなる遮光膜であって、前記チタニア微粒子の濃度が20質量%以上60質量%以下であることを特徴とする遮光膜。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の遮光膜。
【請求項3】
カメラ、双眼鏡、顕微鏡又は半導体露光装置のいずれかに用いる光学素子であって、前記光学素子は、光学有効面外に遮光膜が形成されており、
前記遮光膜は、請求項1又は2に記載の遮光膜であることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
少なくともエポキシ樹脂と、染料からなる着色剤と、一次粒子の個数平均粒径が1nm以上100nm以下であるチタニア微粒子とを含んでなる樹脂組成物を、有機溶媒に溶解、分散してなる遮光塗料であって、前記樹脂組成物に対する前記チタニア微粒子の濃度が20質量%以上60質量%以下であることを特徴とする遮光塗料。
【請求項5】
前記有機溶媒は複数種の有機溶媒であることを特徴とする請求項4に記載の遮光塗料。
【請求項6】
前記有機溶媒が、少なくともプロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを含んでいることを特徴とする請求項4又は5に記載の遮光塗料。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の遮光塗料。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、反応性官能基がエポキシであるシランカップリング剤を2.5質量%以上5.5質量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項4ないし7のいずれか一項に記載の遮光塗料


【公開番号】特開2013−54349(P2013−54349A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176025(P2012−176025)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】