説明

遮光性に優れたガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム

【課題】隠蔽性が高く、ボイル・レトルトといった熱水処理後も高いガスバリア性を有する二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】白色顔料を5〜40質量%含有した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム基材と、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを含有するガスバリア層形成用塗料にて形成されたガスバリア層と、1価の金属化合物と2価以上の金属化合物との少なくとも一方を含有するオーバーコート層形成用塗料にて形成されたオーバーコート層と、トップコート層形成用塗料にて形成されたトップコート層とがこの順に積層されてなるガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料に使用されるフィルムとして好適な遮光性、バリア性に優れた二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油脂含有食品、ボイル・レトルト食品、冷凍食品等の内容物を充填包装する包装用袋の構成材料には耐摩耗性、耐衝撃性、耐ピンホール性などに優れている二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムと、遮光性、酸素や水蒸気に対するバリア性に優れたアルミニウム箔あるいはアルミニウム蒸着フィルムが構成材料として用いられてきた。
【0003】
アルミニウム箔あるいはアルミニウム蒸着フィルムは酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性を有すると共に遮光性を有するので内容物保護、つまり酸化等による内容物の変質等を防止することができる極めて有用な材料とされてきたが、金属探知機等による内容物への金属片(異物)等の混入を検査することが極めて困難であるという問題点もあった。
【0004】
そこで、例えばガスバリア性付与のために透明蒸着フィルム、遮光性付与のために白色シーラントを構成成分とする包装材料が用いられることがある。
【0005】
ところが、透明蒸着フィルムは印刷、ラミネート時等に受けるストレスに弱く、蒸着層にクラックが入りバリア性が低下するという問題がある。
【0006】
また、白色シーラントは多くの場合、白色顔料である酸化チタンを配合したものであるが、シーラント層は多くの場合、食品と直接接するため、シーラント層に配合されている酸化チタンが、食品油を吸収し、結果として、袋の内面を構成するシーラント部分が柚子肌のように盛り上がるいわゆる「柚子肌化」が発生して包装材としての品位を損ねるという問題がある。
【0007】
一方、内容物に直接触れるシーラント層にチタンを使用しないものとしては、印刷インキによる連続印刷膜を設けた遮光性積層体(特許文献1)、また、印刷層とともに着色樹脂層を設けた包材(特許文献2)などが提案されているが、特許文献1においては、印刷膜上に点状にインキを載せるために十分な隠蔽性を得にくい。多色刷りすることにより、ある程度の隠蔽性は得られるが、十分ではなく、製造工程が煩雑で、製品コストも高くなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、着色樹脂層を設けることにより隠蔽性は得られるが、印刷層とともに遮光性付与のために樹脂層を1層設ける必要があるため、製造工程面や価格面において問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−305513号公報
【特許文献2】特開平11−34205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、先に、上記包装用袋の構成材料であるポリアミドフィルムに白色顔料を添加し遮光性を高めることで、金属探知機の使用が可能であり、柚子肌化といった外観不良も解決できる積層体を提案した(PCT/JP2010/050517)。しかしながら、前記積層体では柚子肌化を防ぐことは出来たが、ガスバリア性の改善には依然別のバリア性フィルム、例えば透明蒸着PETなどを積層する必要があった。
【0011】
以上述べたように、遮光性に優れるフィルムにおいては、その用途を鑑みるとガスバリア性も兼備することが必要となる。特にボイル・レトルト食品用包装材料の構成成分となる二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムにおいては、遮光性と高湿度環境下でのバリア性が実用上重要となってくる。しかしながら、遮光性と高湿度環境下のバリア性を兼ね備える二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは実質的に存在しない。
【0012】
本発明は、前記問題点を解決し、遮光性に優れると共に、高温高湿度下に長期保存されても優れたガスバリア性を供することができる二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、基材となる二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに白色の顔料を添加し遮光性を高め、さらに少なくとも片面に特定の樹脂組成のガスバリア性塗料を塗布、加熱処理して形成したガスバリア層と、特定の金属化合物を含有するオーバーコート層と、トップコート層とを順次積層することにより、上記課題を解決した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1) 白色顔料を5〜40質量%含有した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム基材と、
ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを含有するガスバリア層形成用塗料にて形成されたガスバリア層と、
1価の金属化合物と2価以上の金属化合物との少なくとも一方を含有するオーバーコート層形成用塗料にて形成されたオーバーコート層と、
トップコート層形成用塗料にて形成されたトップコート層とを含み、
前記ガスバリア層が前記基材の少なくとも一方の面に、直接に、またはアンカーコート層を介して積層され、前記オーバーコート層が前記ガスバリア層に積層され、前記トップコート層が前記オーバーコート層に積層されたものであることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(2)(1)記載の白色顔料が酸化チタンであることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(3)(1)または(2)記載の基材フィルムが、白色顔料を含有するポリアミド樹脂層と白色顔料を含有しないポリアミド樹脂層から構成された複層構造を有していることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(4)フィルムの光学濃度が0.3以上でありかつ白色度が60〜100%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(5)トップコート層形成用塗料が水溶液または水分散液であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(6)オーバーコート層形成用塗料が有機溶剤系塗液であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(7)ポリアルコール系ポリマーが、ポリビニルアルコールと、エチレンおよびビニルアルコールの共重合体とから選ばれるポリマーを含むものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを少なくとも1層に使用したものであることを特徴とする積層体。
(9)(8)に記載の積層体を製袋したものであることを特徴とする包装袋。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽光等による内容物の変質を防止する優れた遮光性と、ボイル・レトルトといった熱水処理後も高いバリア性とを兼備した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム得られる。このような本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、包装材料、電気絶縁材料、一般工業材料等として好適に使用することができるが、ボイル・レトルト処理を行うことが多い食品包装分野の資材に特に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
<基材フィルム>
【0017】
基材として用いるポリアミド樹脂フィルムは、二軸延伸されていれば特に限定されず、公知の製造方法を採用できる。具体的には、フラット式同時二軸延伸法、フラット式逐次二軸延伸法或いはチューブラ法等を採用できる。また、基材フィルムは、単一の層から構成されるものであってもよいし、同時溶融押出しやラミネーションによって形成された、複数の層から構成されるフィルムであってもよい。
【0018】
基材フィルムに用いられるポリアミド樹脂は、特に限定されないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、およびそれらの混合物、共重合体、複合体等が挙げられる。特に、コストパフォーマンスに優れるナイロン6が、生産性や性能の面で好ましい。
【0019】
ポリアミド樹脂は、溶融時のモノマー生成を抑制する等の目的で、末端封鎖されていてもよい。末端封鎖剤としては、有機グリシジルエステル、無水ジカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸、ジアミンなどが用いられる。
【0020】
ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されるものではないが、溶媒として96%硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dLの条件で測定した相対粘度が1.5〜5.0であることが好ましい。さらに好ましくは、2.5〜4.5、いっそう好ましくは3.0〜4.0の範囲である。この相対粘度が1.5未満のものは、フィルムの力学的特性が著しく低下しやすくなる。また、5.0を超えるものは、フィルムの製膜性に支障をきたしやすくなる。
【0021】
ポリアミド樹脂フィルムには必要に応じて、フィルムの性能に悪影響を与えない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、無機微粒子等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上添加することができる。これらの添加剤の配合量は、フィルム中に0.001〜5.0質量%の範囲が適当である。
【0022】
ポリアミド樹脂フィルム基材には、フィルムのスリップ性を向上させるなどの目的で、滑剤が配合されていてもよい。基材フィルムが単層の場合や、複層の場合で白色顔料を含有するポリアミド樹脂層を外層に配する場合には、白色顔料がポリアミド樹脂フィルムの表層に存在するので、滑剤を添加しなくても白色顔料が滑剤としての役割を担う。このため特に滑剤を添加する必要はない。しかし複層の場合で酸化チタンを含有していないポリアミド樹脂層を外層に設ける時には、この層に滑剤を添加することが好ましい。滑剤としては、無機系滑剤、有機系滑剤いずれも用いることができる。滑剤の具体例としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、層状ケイ酸塩、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。中でも、シリカが好ましい。滑剤の含有量はポリアミド樹脂中に0.01〜0.3質量%の範囲が適当である。
【0023】
ポリアミド樹脂フィルム基材には、白色顔料が含有されている。白色顔料の含有量は、フィルム中において、5〜40質量%の範囲であることが必要であり、好ましくは15〜30質量%の範囲である。白色顔料の含有量が5質量%未満であると、積層体の光学濃度が0.3未満となってしまい、十分な遮光性を得ることができず、結果として、食品を包装した時に内容物が経時的な酸化劣化を起こしやすくなる。また、内容物が透けて見えてしまうこともあり好ましくない。一方、40質量%を超えると、単層フィルムの場合はポリアミド樹脂フィルムの強度が著しく低下し、ラミネート強力測定時にフィルム表面のへき開が発生しラミネート強力が低下する。複層フィルムの場合はフィルムの層間強力が低下し、単層フィルム同様にラミネート強力が低下する。
【0024】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの光学濃度は0.3以上であることが必要であり、好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの光学濃度を0.3以上と範囲にするためには、基材フィルム中の白色顔料の含有量を本発明で規定する範囲で調整する必要がある。
【0025】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、その白色度が60%〜100%であることが好ましく、より好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは80%〜100%である。白色度が60%未満では、白色性が不十分であるために、包装材料のような意匠性が要求される用途では商品価値が低下するおそれがある。本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの白色度を60〜100%の範囲にするためには、基材フィルム中の白色顔料の含有量を本発明で規定する範囲で調整する必要がある。
【0026】
本発明で用いる白色顔料の種類は特に限定されず、公知のものを広く使用することでき、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられるが、光学濃度の点から酸化チタンが好ましい。
【0027】
本発明で用いる白色顔料の粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.4μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満であるとポリアミド樹脂フィルム中での分散性が悪く、粗大凝集物がフィルム中に散在して、フィルム中にピンホールが発生し、製品価値を低下させることがある。一方、平均粒径が0.5μmを超えるとポリアミド樹脂フィルムを製膜する時にフィルムが破断する頻度が高くなり生産性が低下する。
【0028】
本発明において、基材のポリアミド樹脂フィルムは、単層構造であってもよいし、ポリアミド樹脂の種類や白色顔料の含有量の異なる2層以上のポリアミド樹脂層が積層されてなる多層構造であってもよい。
【0029】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムが白色顔料を含有するポリアミド層(以下、『白色層』と略す)と白色顔料を含有していないポリアミド層(以下、『透明層』と略す。)から構成された複層構造であると、ポリアミド樹脂フィルムの機械強度が向上するため好ましい。特に、透明層/白色層/透明層のように、表層に白色顔料を含有していない層を配し、内層が白色顔料を含有する層を配した3層以上の多層構造を採ると、機械強度に優れかつ、製膜や積層加工時に白色顔料粒子が欠落しないためにより好ましい。白色顔料の配合量は、本発明で規定したフィルム中の白色顔料の配合量を維持しつつ、白色層の含有量が10〜60質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。白色層の白色顔料含有量が10質量%未満であると、ポリアミド樹脂フィルム全体の平均の白色顔料含有量を5質量%以上の範囲とすることが難しく、積層体としたときに十分な光学濃度が得られない。一方、60質量%を超えると、フィルムの層間強力が低下し、ラミネート強力が低下する。
【0030】
白色顔料をガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中に配合する方法は特に限定されるものではなく、製造工程の任意の時点で配合することができる。例えば、ポリアミド樹脂の重合時に白色顔料を添加する方法、ポリアミド樹脂中に白色顔料を高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造しこれをポリアミド樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)、ポリアミド樹脂と白色顔料とを押出機にて溶融混合する方法などが挙げられる。本発明においてはマスターバッチ法を用いて、フィルム化前に所望の白色顔料濃度に調整する方法が好ましく採用される。
【0031】
<ガスバリア層>
ガスバリア層は、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを含有するガスバリア層形成用塗料にて形成される。このガスバリア層形成用塗料を、基材の表面に塗布した後に熱処理することによって、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの両者がエステル結合によって架橋して、緻密な架橋構造を有するガスバリア層を形成する。
【0032】
ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの配合割合は、ポリアルコール系ポリマーのOH基とポリカルボン酸系ポリマーのCOOH基とのモル比(OH基/COOH基)が0.01〜20となる量であることが好ましく、このモル比が0.01〜10となるように含有することがより好ましく、0.02〜5となるように含有することがさらに好ましく、0.04〜2となるように含有することが最も好ましい。OH基の割合が上記範囲よりも少ないと、被膜形成能が低下するおそれがある。一方、COOH基の割合が上記範囲よりも少ないと、ポリアルコール系ポリマーとの間に充分な架橋密度をもって架橋構造を形成することができず、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性を充分に発現することができないおそれがある。
【0033】
ガスバリア層形成用塗料は、作業性の面から、水溶液または水分散液であることが好ましく、水溶液であることがより好ましい。したがって、ポリアルコール系ポリマーは水溶性であることが好ましく、ポリカルボン酸系ポリマーも水溶性のものが好ましい。
【0034】
ポリアルコール系ポリマーは、分子内に2個以上の水酸基を有するアルコール系重合体であり、ポリビニルアルコール、エチレンとビニルアルコールの共重合体などが好例として挙げられる。
【0035】
ポリビニルアルコール、エチレンとビニルアルコールの共重合体は、ケン化度が95モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは98モル%以上である。また平均重合度が50〜4000であることが好ましく、200〜3000であることがより好ましい。
【0036】
上記のポリアルコール系ポリマーは、それぞれ単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。
【0037】
ポリカルボン酸系ポリマーは、カルボキシル基または酸無水物基とエチレン性不飽和二重結合とを有するモノマーを重合して得られる、カルボキシル基または酸無水物基を含有するポリマーである。モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合としてアクリロイル基またはメタクリロイル基(以下、両者を合わせて「(メタ)アクリロイル基」という。)を有するものが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、および無水イタコン酸が好ましい。
【0038】
これらのモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、これら以外のモノマーと組み合わせて使用することもできる。すなわち、モノマーを重合して成るポリマーとしては、これらモノマーをそれぞれ単独で重合して成るホモポリマー(H)や、モノマー同士を複数共重合してなるコポリマー(C1)や、モノマーを他のモノマーと共重合して成るコポリマー(C2)などを挙げることができる。
【0039】
モノマーと共重合し得る他のモノマーとしては、カルボキシル基や水酸基を有しない他のモノマーであって、上記モノマーと共重合し得るモノマーを適宜用いることができる。例えば、クロトン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸のエステル化物であって水酸基やカルボキシル基を有しないモノマー;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエン、エチレンなどの炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの他のモノマーも、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
ポリカルボン酸系ポリマーは、上述のホモポリマー(H)、モノマー同士のコポリマー(C1)、モノマーと他モノマーとのコポリマー(C2)を任意に組み合わせて用いることができる。たとえばホモポリマー(H)を2種以上、モノマー同士のコポリマー(C1)を2種以上、またはモノマーと他モノマーとのコポリマー(C2)を2種以上、それぞれ用いることができる。あるいは、ホモポリマー(H)とコポリマー(C1)、ホモポリマー(H)とコポリマー(C2)、コポリマー(C1)とコポリマー(C2)、ホモポリマー(H)とコポリマー(C2)とコポリマー(C3)のような組み合わせを用いることができる。
【0041】
このようなポリマーの1つとして、オレフィン−マレイン酸共重合体を好適に用いることができ、特にエチレン−マレイン酸共重合体(以下、「EMA」と略記する。)を好ましく用いることができる。このEMAは、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で共重合することにより得られる。
【0042】
EMA中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。したがって、本明細書においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が最も好ましい。
【0043】
EMAの重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000がより好ましく、7000〜300000がさらに好ましく、10000〜200000が特に好ましい。
【0044】
上記のポリカルボン酸系ポリマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
ガスバリア層形成用塗料には、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの架橋反応を促進させてガスバリア性を向上させるために、架橋剤を添加することもできる。
【0046】
架橋剤の添加量は、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの合計質量100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。架橋剤の添加量が0.1質量部未満では、架橋剤を添加しても架橋剤を添加しない場合に比べて顕著な架橋効果を得ることができず、一方、30質量部を超えると、逆に架橋剤がガスバリア性の発現を阻害することがある。
【0047】
架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよいし、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、または多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物等が、優れたガスバリア性を発現させることができることから好ましい。これらの架橋剤は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
あるいは、架橋反応を促進させてガスバリア性を向上させるために、ガスバリア層形成用塗料に触媒を添加することもできる。
【0049】
架橋剤または触媒を添加すると、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの間にエステル結合による架橋反応が促進されて、得られるガスバリア層のガスバリア性をよりいっそう向上させることができる。
【0050】
さらに、ガスバリア層形成用塗料には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。
【0051】
上記熱安定剤、酸化防止剤および劣化防止剤としては、例えばヒンダートフェノール類、リン化合物、ヒンダートアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
強化材としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0053】
さらに、ガスバリア層形成用塗料には、ガスバリア性をより高めるために、その特性を大きく損なわない限りにおいて、無機層状化合物を添加することもできる。ここにいう無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物のことを指す。具体的には、燐酸ジルコニウム(燐酸塩系誘導体型化合物)、カルコゲン化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、グラファイト、粘土鉱物などを例示できる。特に、溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
【0054】
ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを混合してそれらを含有する水溶液である塗料を調製するに際しては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。
【0055】
ポリカルボン酸系ポリマーは、それに含まれるカルボン酸単位が多いと、それ自身の親水性が高いので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができるが、アルカリ化合物を適正量添加することにより、ガスバリア層形成用塗料を塗布して得られるフィルムのガスバリア性が格段に向上される。
【0056】
アルカリ化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマー中のカルボキシル基を中和できるものであればよく、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、有機水酸化アンモニウム化合物等が挙げられる。このうち、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
【0057】
上記水溶液の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて公知の方法で行えばよい。例えば、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを別々に水溶液とし、使用前に混合して用いる方法が好ましい。このとき、上記アルカリ化合物をポリカルボン酸系ポリマーの水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
【0058】
ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを同時に溶解釜中の水に加えてもよいが、アルカリ化合物を最初に水に添加しておく方が、ポリカルボン酸系ポリマーの溶解性がよい。
【0059】
水に対するポリカルボン酸系ポリマーの溶解性を高める目的や、乾燥工程の短縮の目的や、水溶液の安定性改善の目的などのために、水にアルコールや有機溶媒を少量添加することもできる。
【0060】
ガスバリア層形成用塗料の濃度、すなわち固形分は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものである。ただし、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層を形成することが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。この様な観点から、塗料の濃度(固形分)は、5〜50質量%の範囲とすることが好ましい。
【0061】
ガスバリア層形成用塗料からガスバリア層を形成する際には、まず、塗料を基材、または基材上に形成されたアンカーコート層上に塗布する。この塗料の塗布方法は、特に限定されず、たとえば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0062】
塗料を塗布した後は、直ちに加熱処理を行うことで、塗料の乾燥皮膜の形成と加熱処理を同時に行ってもよいし、または塗布後ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。工程の短縮化等を考慮すると、ガスバリア層の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、塗布後直ちに加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理方法は、特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行うことが一般的に考えられるが、例えば熱ロールと接触させて加熱処理を行ってもよい。
【0063】
基材が延伸フィルムである場合において、ガスバリア層形成用塗料にてガスバリア層を形成させる際には、延伸された基材に塗料を塗工してもよいし、延伸前の基材に塗料を塗工した後にフィルムの延伸を行ってもよい。
【0064】
上記のいずれの場合においても、ガスバリア層形成用塗料が塗布された基材に、100℃以上の加熱雰囲気中で熱処理を施すことによって、ガスバリア層形成用塗料中に含有するポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとが架橋反応してエステル結合が形成され、それによって水不溶性のガスバリア層が形成される。
【0065】
ガスバリア層を形成するための好ましい加熱処理温度は、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの比や、その他の添加成分の含有の有無、そして添加成分を含有する場合にはその含有量等によっても影響を受け得るので、一概には言えない。しかし、100〜300℃の温度で行うことが好ましく、120〜250℃がより好ましく、140〜240℃がさらに好ましく、160〜220℃が特に好ましい。熱処理温度が低すぎると、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有するガスバリア層を得ることが困難になることがある。一方、熱処理温度が高すぎると、被膜が脆化するおそれなどがある。
【0066】
熱処理時間は5分間以下であることが好ましく、通常1秒間〜5分間、好ましくは3秒間〜2分間、より好ましくは5秒間〜1分間である。熱処理時間が短すぎると、上記した架橋反応を充分に進行させることができず、ガスバリア性を有するガスバリア層を得ることが困難になる。一方、長すぎると生産性が低下する。
【0067】
本発明においては、上記のような比較的短時間の熱処理によって、ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとの間にエステル結合による架橋構造が形成されて、ガスバリア層を形成することができる。
【0068】
形成されるガスバリア層の厚みは、ガスバリア性を充分高めるために、0.05μmより厚いことが望ましい。一方、ガスバリア層は、後述するオーバーコート層中の1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物と反応し、架橋構造を形成することによって、高温高湿度下において優れたガスバリア性を発現する。このため、ガスバリア層の厚みが厚すぎると、ガスバリア層の金属架橋率が低下し、高温高湿度下でのガスバリア性が劣化しやすくなる。
【0069】
そのため、塗工条件によっても異なるので一概に言えないが、ガスバリア層の厚みは、0.05〜3μmであることが好ましく、0.05〜2μmがより好ましく、0.08〜1μmが特に好ましい。ガスバリア層の厚みが0.05μm未満では、均一な膜厚の層を形成することが難しくなる。一方、この厚みが3μmを超えると、加熱処理時間が長くなって、生産性が低下する恐れがある。
【0070】
<アンカーコート層>
アンカーコート層は、必要に応じて用いられ、基材とガスバリア層との間に位置し、基材に対するガスバリア層の密着性向上の役割を主として担う。
【0071】
アンカーコート層に使用されるコート剤としては、公知のものを特に制限されずに使用できる。例えばイソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のアンカーコート剤が挙げられる。これらの中で本発明の効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のアンカーコート剤が好ましい。さらには、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物;ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物;またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。
【0072】
アンカーコート剤も、ガスバリア層形成用塗料の塗布方法と同様な方法で、基材に塗布することができる。
【0073】
<オーバーコート層>
オーバーコート層は、1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物を含有するオーバーコート層形成用塗料を用いて、ガスバリア層の表面上に形成される樹脂層である。
【0074】
このオーバーコート層は、オーバーコート層形成用塗料をガスバリア層の表面に塗布した後に熱処理することによって、好ましく形成できる。
オーバーコート層中の1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物が、ガスバリア層中のポリアルコール系ポリマーまたはポリカルボン酸系ポリマーと反応し、架橋構造を形成することによって、ガスバリア性を著しく向上させる。なお、1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物と、ポリアルコール系ポリマーまたはポリカルボン酸ポリマーとの反応によって生じる架橋構造は、イオン結合、共有結合であってよいことはもちろん、配位的な結合であってもよい。
【0075】
本発明では、これらの金属化合物を樹脂に含有させ、樹脂塗料として塗布し、その後に熱処理を行う。こうすることにより、金属化合物を水溶液として塗布し熱処理する場合に比べて、工業的により効率的に、かつ容易に、優れたガスバリア性と透明性を付与することができる。
【0076】
1価の金属化合物に用いる金属種としては、Li、Na、K、Rb、Se等が挙げられる。これらのうちLi、Na、Kが好ましく、特にその中でもLiが好ましい。使用する金属化合物の形態は、金属単体を含み、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機塩や、カルボン酸塩、スルホン酸等の有機酸塩が挙げられる。なかでも、水酸化物、炭酸塩であることが好ましい。
【0077】
2価以上の金属化合物の金属種としては、Mg、Ca、Zn、Cu、Co、Fe、Ni、Al、Zrなどが挙げられる。これらのうちMg、Ca、Znが好ましく、特にMg、Caが好ましい。使用する金属化合物の形態は、金属単体を含み、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機塩や、カルボン酸塩、スルホン酸等の有機酸塩が挙げられる。なかでも、酸化物、水酸化物、炭酸塩の形態が好ましい。
【0078】
これらの金属化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。たとえば、複数種の1価の金属化合物、および/または、複数種の2価以上の金属化合物を用いることもできる。
【0079】
オーバーコート層形成用塗料中の金属化合物の配合割合は、用いる金属種、化合物の形態、オーバーコート層形成用塗料を構成する樹脂の種類などによって大きく異なる。しかし、その配合割合は、オーバーコート層形成用塗料を構成する樹脂の固形分(架橋剤が含まれる場合は樹脂と架橋剤との合計固形分)100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、0.5〜80質量部がより好ましく、0.75〜75質量部がさらに好ましく、1〜65質量部が最も好ましい。金属化合物の配合量が0.1質量部未満であると、ガスバリア層中のポリアルコール系ポリマーまたはポリカルボン酸系ポリマーと反応して形成される架橋構造が少なくなり、ガスバリア性が低下するおそれがある。一方、金属化合物が100質量部を超えると、形成されるオーバーコート層の密着性、耐熱性、耐水性が損なわれるおそれがある。
【0080】
オーバーコート層形成用塗料は、有機溶剤系塗液(溶液)、水溶液、水分散液のいずれでもよい。ガスバリア性という観点では、金属のイオン化を促進するためにも、オーバーコート層形成用塗料は水溶液または水分散液であることが好ましい。
【0081】
しかし一方で、水への溶解性が比較的高い1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物を用いる場合は、水溶液または水分散液であると、オーバーコート層形成用塗料から形成されるオーバーコート層の耐水性を低下させる恐れがある。さらに、塩基性の1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物を用いた場合は、オーバーコート層形成用塗料が水溶液または水分散液であると、オーバーコート層形成用塗料の安定性やポットライフを低下させる恐れがある。
【0082】
以上のことから、オーバーコート層形成用塗料は有機溶剤系塗液であることが好ましい。ここで、「有機溶剤系塗液」であるということは、水以外の溶媒が、塗液中の溶剤全体の90質量%以上ということであり、さらに好ましくは、95質量%以上ということである。
【0083】
このような水以外の溶媒としては、公知の有機溶剤を用いることができる。例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、公知の有機溶媒を単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0084】
1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物は、塗膜形成後の透明性に優れるという観点から、混合の際にできるだけ微粒子状のものを使用するのが好ましい。具体的には、平均粒子径10μm以下であるものが好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
【0085】
さらに、いかに微粒子状であっても、懸濁液として用いた場合は乾燥時の析出や外観不良を引き起こす可能性があるため、分散剤を併用した微粒子分散体として用いることが好ましい。
【0086】
特に、2価以上の金属化合物として有効な、MgまたはCaの酸化物、水酸化物、炭酸塩は、分散剤を用いて分散することにより、オーバーコート層形成用塗料に含まれる樹脂固形分(および架橋剤が含まれる場合は樹脂と架橋剤との合計固形分)100質量部に対して金属化合物を65質量部添加しても、透明な塗膜を形成することができる。分散剤としては既知のものを使用できる。
【0087】
金属化合物(またはその微粒子分散体)をオーバーコート層形成用塗料中に混合させる方法は、特に限定はない。例えば、塗料を形成する樹脂と金属化合物とを混合させた後に、分散機を用いて分散してもよいし、あらかじめ金属化合物を分散機を用いて分散したのちに、塗料を形成する樹脂と混合してもよい。
【0088】
より具体的には、たとえば、塗料に含まれる樹脂成分が有機溶媒等の溶媒に溶解された溶液に、金属化合物が溶解および/または分散された溶液を混合する方法;オーバーコート層形成用塗料に含まれる樹脂成分が溶媒に分散されたエマルションに、金属化合物の粉末および/または金属化合物が溶解された溶液を混合する方法;熱による可塑化混合により樹脂と金属化合物を混合した後、塗料とする方法;オーバーコート層形成用塗料に含まれる樹脂成分が溶媒に溶解された溶液または分散されたエマルションに、金属化合物の粉末を混合し、分散機を用いて金属化合物を分散する方法;あらかじめ金属化合物を任意の溶媒中に分散機を用いて分散し、オーバーコート層形成用塗料に含まれる樹脂成分が溶媒に溶解された溶液または分散されたエマルションを混合する方法;などが挙げられる。
【0089】
なかでも、オーバーコート層形成用塗料を構成する樹脂成分が溶媒に分散されたエマルション状態で、金属化合物の粉末および/または金属化合物が溶解された溶液を混合する方法、およびあらかじめ金属化合物を溶媒中に分散機を用いて分散し、オーバーコート層形成用塗料に含まれる樹脂成分が溶媒に溶解された溶液または分散されたエマルションを混合する方法が、金属化合物の分散を比較的均一にするうえで好ましい。
【0090】
オーバーコート層形成用塗料を構成する樹脂としては、公知のウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等種々の樹脂が挙げられる。これらのうち,耐水性、耐溶剤性、耐熱性、硬化温度の観点から,ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましく、ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0091】
ウレタン樹脂は、例えば多官能イソシアネートと水酸基含有化合物との反応により得られるポリマーである。具体的には、トリレンジイソイアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール等の水酸基含有化合物との反応により得られるウレタン樹脂を使用することができる。
【0092】
これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
ポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリオールが好ましい。具体的には、多価カルボン酸、それらのジアルキルエステル、またはそれらの混合物と、グリコール類またはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0094】
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0095】
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0096】
これらのポリエステルポリオールは、ガラス転移温度(以下、「Tg」という。)が120℃以下であるものが好ましく、100℃以下であるものがより好ましく、80℃以下であるものがさらに好ましく、70℃以下であるものが特に好ましい。
【0097】
さらに、これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は、1000〜10万であることが好ましく、2000〜5万であることがより好ましく、3000〜4万であることがさらに好ましい。
【0098】
形成されるオーバーコート層の耐水性、耐溶剤性等を向上させるために、オーバーコート層形成用塗料に架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよいし、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、または、多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、特にイソシアネート化合物が好ましい。
【0099】
具体的には、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物;あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0100】
架橋剤の添加量は、塗料に含まれる樹脂固形分100質量部に対して0.1〜300質量部であることが好ましく、1〜100質量部がより好ましく、3〜50質量部がさらに好ましい。架橋剤の添加量が0.1質量部未満では、架橋剤を添加しても架橋剤を添加しない場合に比べて顕著な架橋効果を得ることができず、一方、300質量部を超えると、逆に架橋剤がガスバリア性の発現を阻害することがある。
【0101】
オーバーコート層形成用塗料は、水または有機溶媒を媒体とする溶液または分散液である。上述したように、オーバーコート層形成用塗料は、塗液安定性、ポットライフ、耐水性の観点から、有機溶剤系塗液であることが好ましい。したがって、オーバーコート層形成用の塗料を構成する樹脂や架橋剤は、有機溶剤に可溶であることが好ましく、特に、Tgが70℃以下のポリエステルポリオールとポリイソシアネートの組み合わせが、塗工性、生産性や必要物性から好ましい。
【0102】
オーバーコート層形成用塗料には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが含まれていてもよい。
【0103】
上記熱安定剤、酸化防止剤および劣化防止剤としては、例えばヒンダートフェノール類、リン化合物、ヒンダートアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0104】
強化材としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0105】
オーバーコート層形成用塗料の濃度(固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものである。しかし、あまりに希薄な溶液では、ガスバリア層と反応してしまって、ガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層を形成することが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。このような観点から、塗料の濃度(固形分)は、5〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0106】
オーバーコート層形成用塗料からオーバーコート層を形成する際には、基材上に形成されたガスバリア層上に塗料を塗布後、直ちに加熱処理を行って、乾燥皮膜の形成と加熱処理とを同時に行ってもよいし、あるいは塗布後ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層およびオーバーコート層の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、工程の短縮化等を考慮すると、塗布後直ちに加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理方法としては、特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行うことが一般的に考えられるが、例えば熱ロールと接触させて加熱処理を行ってもよい。
【0107】
ガスバリア層上に形成するオーバーコート層の厚みは、ガスバリア層の厚みにもよるが、ガスバリア層との反応でガスバリア性を発現するためには、少なくとも0.1μmよりも厚くすることが望ましく、また生産性やコストなどの観点から3μm以下であることが好ましい。さらに、0.1〜2μmがより好ましく、0.15〜1.5μmが特に好ましい。
【0108】
オーバーコート層形成用塗料を塗布する方法も、特に限定されず、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0109】
オーバーコート層を形成するときの好ましい加熱処理温度は、金属化合物と樹脂との配合割合や、その他の添加成分の含有の有無、そして添加成分を含有する場合にはその含有量等によっても影響を受け得るので、一概には言えないが、50〜300℃であることが好ましく、70〜250℃がより好ましく、100〜200℃が特に好ましい。熱処理温度が低すぎると、オーバーコート層形成用塗料中の樹脂と架橋剤との熱架橋反応を充分に進行させることができず、充分な密着性、耐水性、耐熱性を得ることが困難となったり、金属化合物と、ガスバリア層のポリアルコール系ポリマーおよびポリカルボン酸系ポリマーとの作用を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を付与することが困難になることがある。一方、熱処理温度が高すぎると、フィルムの収縮によるしわの発生や被膜の脆化などのおそれがある。
【0110】
熱処理時間は、生産性の観点から5分間以下であることが好ましく、通常1秒間〜5分間、好ましくは3秒間〜2分間、より好ましくは5秒間〜1分間である。熱処理時間が短すぎると、上記作用を充分に進行させることができず、密着性、耐熱性、耐水性、ガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になる。
【0111】
<トップコート層>
トップコート層は、トップコート層形成用塗料を用いて、オーバーコート層の表面上に形成される樹脂層である。このトップコート層は、トップコート層形成用塗料をオーバーコート層の表面に塗布した後に熱処理することによって、好ましく形成できる。
【0112】
トップコート層形成用塗料の塗布とその後の熱処理によって、オーバーコート層内の1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物の、ガスバリア層中のポリアルコール系ポリマーおよび/またはポリカルボン酸系ポリマーへの反応を促進することができ、それによってガスバリア性を飛躍的に向上させることができる。
【0113】
トップコート層形成用塗料は、有機溶剤系塗液、水溶液、水分散液のいずれでもよい。しかし、オーバーコート層に含まれる1価の金属化合物および/または2価以上の金属化合物をイオン化させ、ガスバリア層中のポリアルコール系ポリマーおよび/またはポリカルボン酸系ポリマーと反応させ、ガスバリア層に金属架橋を導入するためには、この塗料は、水溶液または水分散液であることが好ましい。
【0114】
塗工条件によっても異なるので一概には言えないが、水溶液または水分散液のトップコート層形成用塗料を塗布し、その後熱処理することによって、酸素ガス透過度を、トップコート層が無い場合と比較して1/2〜1/4程度にまで小さくし、ガスバリア性を向上させることができる。例えば、20℃、相対湿度85%RHの条件下で測定した酸素ガス透過度が、トップコート層無しでは102〜110ml/m・24h・MPa程度だったものを、トップコート層を設けることによって、50ml/m・24h・MPa以下程度に、好条件下ではさらに25ml/m・24h・MPa程度にまで、下げることができる。
【0115】
さらに、トップコート層は、オーバーコート層を保護する役割も有している。
【0116】
トップコート層形成用塗料に含まれる樹脂としては、公知のウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等種々の樹脂が挙げられる。これらのうち、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、硬化温度の観点から、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0117】
ウレタン樹脂としては、例えば多官能イソシアネートと水酸基含有化合物との反応により得られるポリマーを挙げることができる。具体的には、トリレンジイソイアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、または、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等の多官能イソシアネートと;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール等の水酸基含有化合物と;の反応により得られるウレタン樹脂を挙げることができる。
【0118】
ポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリオールが好ましく、多価カルボン酸、それらのジアルキルエステル、またはそれらの混合物と、グリコール類またはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0119】
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0120】
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0121】
形成されるトップコート層の耐水性、耐溶剤性等を向上させるために、トップコート層形成用塗料に架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよいし、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物でもよいし、多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、イソシアネート化合物が特に好ましい。
【0122】
具体的には、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物;あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0123】
架橋剤の添加量は、トップコート層形成用塗料に含まれる樹脂固形分100質量部に対して0.1〜300質量部であることが好ましく、1〜100質量部がより好ましく、3〜50質量部がさらに好ましい。
【0124】
トップコート層形成用塗料にも、上述したオーバーコート層形成用塗料に添加可能な添加剤を、同様に任意に添加することができる。
トップコート層形成用塗料の濃度(固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、5〜50質量%の範囲にすることが好ましい。トップコート層形成用塗料からトップコート層を形成する際には、塗料を塗布後、直ちに加熱処理を行うことが好ましい。
【0125】
工程の短縮化や生産性の向上等を考慮すると、オーバーコート層の形成と連続してトップコート層の形成を行うことが好ましい。すなわち、オーバーコート層の形成に続いてトップコート層を形成したのち、両層を同時に熱処理することが好ましい。
【0126】
トップコート層の加熱処理方法は、特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行うことが一般的に考えられる。あるいは、例えば熱ロールと接触させて加熱処理を行ってもよい。
【0127】
トップコート層を形成するときの好ましい加熱処理温度は、一概には言えないが、50〜300℃であることが好ましく、70〜250℃がより好ましく、100〜200℃が特に好ましい。熱処理温度が低すぎると、塗料を構成する樹脂と架橋剤との熱架橋反応を充分に進行させることができず、充分な密着性、耐水性、耐熱性を得ることが困難となる。一方、高過ぎると、フィルムの収縮によるしわの発生や被膜の脆化などのおそれがある。
【0128】
熱処理時間は、5分間以下であることが好ましく、通常1秒間〜5分間、好ましくは3秒間〜2分間、より好ましくは5秒間〜1分間である。熱処理時間が短すぎると、上記作用を充分に進行させることができず、密着性、耐熱性、耐水性、ガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になる。一方、長すぎると生産性が低下する。
【0129】
トップコート層の厚みは、少なくとも0.1μmよりも厚くすることが望ましい。ただし、生産性やコストなどの点から3μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmがより好ましく、0.15〜1.5μmが特に好ましい。
【0130】
トップコート形成用塗料を塗布する方法も特に限定されず、上述したオーバーコート層形成用塗料の塗布方法と同様の、通常の方法を用いることができる。
オーバーコート層に含まれる金属化合物が、ガスバリア層に含まれるポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとに有効に作用するためには、ガスバリア層とオーバーコート層とトップコート層とが互いに直接接触していることが重要である。したがって、基材、ガスバリア層、オーバーコート層、トップコート層は、この順に積層されていることが必要である。基材、ガスバリア層との間にアンカーコート層が含まれていてもよいことは、上述のとおりである。
【0131】
<積層体>
本発明に係るガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、(i)そのトップコート層の表面上に直接に、または印刷インキ層を介して、ラミネート接着剤層を積層し、さらにその表面上にヒートシール層を順に積層した積層体とすることができる。
【0132】
あるいは、(ii)基材におけるガスバリア層を積層した面とは反対側の表面上に直接に、または印刷インキ層を介して、ラミネート接着剤層を積層し、さらにその表面上にヒートシール層を順に積層した積層体とすることもできる。
【0133】
ただし、積層体の擦傷性、磨耗性の観点より、上記の(i)の積層体が好ましい。さらに場合によっては、(i)におけるトップコート層とラミネート接着剤層との間、または(ii)における基材とラミネート接着剤層との間に、プライマー層、帯電防止層などの機能性層が形成されてもよい。あるいは、上記の(i)におけるトップコート層とラミネート接着剤層との互いに接する面、または(ii)における基材とラミネート接着剤層との互いに接する面に、密着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理などの表面処理が施されてもよい。
【0134】
<印刷インキ層>
印刷インキ層は、インキの印刷層であり、インキにより形成される文字、絵柄等である。インキとしては、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等のインキバインダー樹脂に、各種顔料、体質顔料、および可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加された任意のインキを用いることができる。
【0135】
印刷インキ層の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0136】
<ラミネート接着剤層>
ラミネート接着剤層は、上記の(i)におけるトップコート層や(ii)における基材と、ヒートシール層との密着性を向上させるための層である。
【0137】
ラミネート接着剤層を形成するために使用されるコート剤としては、公知のものを使用できる。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のコート剤を挙げることができる。これらの中で、密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、およびポリエステル系のコート剤が好ましい。さらには、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物;ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物;またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。
【0138】
ラミネート接着剤層の厚みは、ヒートシール層の密着性を充分高めるために0.1μmよりも厚くすることが好ましく、生産性の観点から10μm以下程度であることが好ましい。
【0139】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、袋状包装袋などを形成する際に熱接着層として設けられるものであり、熱シール、高周波シールなどが可能な材料が使用される。このような材料としては、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、エチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。その厚みは、目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmである。
【0140】
ラミネート接着剤層とヒートシール層との形成法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法などのラミネーション法;二つ以上の樹脂層を同時に押出し積層する共押し出し法;コーターなどで膜を生成するコーティング法などが挙げられる。密着性、耐熱性、耐水性などを勘案すると、ドライラミネーション法が好ましい。
【0141】
ガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムまたはこれを用いた積層体のガスバリア性を高める目的で、これらを加湿された雰囲気下で処理することもできる。加湿処理により、オーバーコート層における金属化合物と、ガスバリア層のポリアルコール系ポリマーおよびポリカルボン酸系ポリマーとの作用を、より促進することができる。このような加湿処理として、高温、高湿度下の雰囲気にこれらを放置してもよいし、高温の水に直接これらを接触させてもよい。加湿処理の条件は、目的などにより異なるが、高温高湿の雰囲気下で放置する場合は、温度30〜130℃、相対湿度50〜100%が好ましい。高温の水に接触させる場合も、温度30〜130℃程度(100℃以上は加圧下)が好ましい。温度が低すぎると加湿処理効果が十分でなく、温度が高すぎると基材に熱的ダメージを与えるおそれがある。加湿処理時間は、処理条件により異なるが、一般に数秒から数百時間の範囲が選ばれる。
【0142】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、ガスバリア性や内容物保護を目的とする遮光性を必要とする様々な分野に適用することができる。たとえば、各種の包装材料として好ましく使用でき、特に食品包装用分野に好適である。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例により詳述する。なお、本発明において各種の物性の測定方法および効果の評価方法は以下の通りである。
【0144】
<フィルムの光学濃度>
マクベス社製光学濃度計TR932により、3mmΦの透過ノズルを使用して光学濃度(O.D.)を測定した。
【0145】
<フィルムの白色度>
分光式色差計SE−6000(日本電色工業社製)を用いて色調L*として求めた。
【0146】
<積層体の酸素ガスバリア性>
モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下における酸素透過度を測定して、評価した。なお、測定はレトルト処理(120℃×30分間)前後で行なった。
酸素透過度としては、100ml/(m2・d・MPa)以下であれば、酸素バリア性が必要な包装材料等に使用する際に実用上好ましく、更にハイバリアが必要な包材や酸化劣化の激しい内容物に使用する包材には20ml/(m2・d・MPa)以下が好ましい。
【0147】
<積層体のラミネート強力>
得られた積層体を温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下において、MD100mm×TD15mmに裁断し、基材とシーラントの間でピンセットを用いてMD方向に30mm剥離しラミネート強力試験片を作成した。50N測定用のロードセルとサンプルチャックを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AG−100E)を用い、剥離したそれぞれの端部を固定した後、試験片がT型に保たれるようにしながら、剥離速度300mm/分でMDに50mm剥離し、その際の平均値を読み取った。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値をラミネート強力とした。
【0148】
[実施例1]
<白色顔料マスターの作成>
ナイロン6樹脂40質量部に、チタン工業社製の酸化チタン「KRONOS酸化チタンKR−310(ルチル型、平均粒径0.4μm)」60質量部ドライブレンドした後、これをシリンダー温度設定250℃の30mm径2軸押出機で溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却、固化後、切断して、それぞれペレット形状の、酸化チタンマスターを作成した。
【0149】
<二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの製造>
ナイロン6樹脂と酸化チタンマスターをブレンドし、酸化チタンの配合割合が30質量%となるようにして、Tダイを備えた押出機(75mm径、L/D=45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)から、260℃の条件でTダイオリフィスよりシート状に押し出した。続いて、これを表面温度18℃に調節されたキャスティングロール上に密着させて急冷し、厚み180μmの未延伸ポリアミド樹脂フィルムを得た。次に、この未延伸フィルムを水槽に導き、吸水率4.0%に調整した。続いて、未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に導き、予熱温度200℃、予熱時間5秒、延伸温度180℃、延伸時間3秒の条件で、縦方向3.3倍、横方向3.0倍に同時二軸延伸し、さらに熱固定温度215℃、熱固定時間5秒の条件で熱処理を施し、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの厚みは18μmであった。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの光学濃度は0.7で白色度は90%であった。
【0150】
<バリア層の作成>
PVA(クラレ社製、ポバール105(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約500))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、固形分15質量%のPVA水溶液を得た。
【0151】
EMA(重量平均分子量60000、マレイン酸単位45〜50%)と水酸化ナトリウムとを熱水に溶解後、室温に冷却することにより、カルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のEMA水溶液を調製した。
【0152】
ポリエステル(東洋紡績社製、バイロンGK130、皮膜伸度1000%、Tg15℃、数平均分子量7000)をトルエン/酢酸エチル/MEK混合溶媒(質量比3/2/1)に溶解し、固形分15質量%のバイロンGK130ポリエステル溶液を得た。
【0153】
酸化マグネシウム粉体(平均粒子径3.5μm、結晶粒子径0.01μm、BET比表面積145m2/g)の懸濁トルエン溶液に、酸化マグネシウム100質量部に対して25質量部となる量の分散剤(デカグリセリンオレイン酸エステル、HLB=7)を加え、撹拌機で撹拌後、ビーズミルを用いて分散し、固形分20質量%の酸化マグネシウム分散体溶液(1)を得た。
【0154】
酸化マグネシウム粉体(平均粒子径3.5μm、結晶粒子径0.01μm、BET比表面積145m2/g)の懸濁水溶液に、酸化マグネシウム100質量部に対して35質量部となる量の分散剤(サンノプコ社製、ポリアクリル酸ナトリウム中和物、ノプコスパース44C)を加え、撹拌機で撹拌後、ビーズミルを用いて分散し、固形分20質量%の酸化マグネシウム分散体水溶液(2)を得た。
【0155】
<バリア性の付与>
PVAとEMAが質量比(固形分)で30/70になるように、製造例1のPVA水溶液とEMA水溶液とを混合し、固形分10質量%の混合液(ガスバリア層形成用塗料)を得た。前記二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム(厚み18μm)上に、上記混合液をバーコーターNo.4を用いて塗工し、電気オーブンを用いて80℃で2分間乾燥した後、電気オーブンを用いて200℃で20秒間の乾燥および熱処理を行い、厚さ0.5μmのガスバリア層を形成した。
【0156】
また、酸化マグネシウム分散体溶液(1)に、バイロンGK130ポリエステル溶液と、ポリイソシアネート化合物(東洋インキ製造社製、BX4773)を、酸化マグネシウム/ポリエステル/ポリイソシアネートの質量比が20/83.3/16.7になるように加え、さらに触媒としてのジオクチル錫ラウレート(三共有機合成社製、STANN SNT−1F)の1質量%酢酸エチル溶液と、トルエンとを混合し、固形分10質量%の混合液(オーバーコート層形成用塗料)を得た。
【0157】
上述のガスバリア層上に、上記オーバーコート層形成用塗料をバーコーターNo.4で塗工し、電気オーブンを用いて80で30秒間の乾燥および熱処理を行い、厚さ0.7μmのオーバーコート層を形成した。
【0158】
また、水性ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、WS5100、30質量%水溶液)を用いて、固形分7.5質量%の混合液(トップコート層形成用塗料)を得た。
上述のオーバーコート層上に、上記トップコート層形成用塗料をバーコーターNo.6で塗工し、電気オーブンを用いて100℃で2分間の乾燥および熱処理を行い、厚さ0.7μmのトップコート層を形成した。
【0159】
以上により得られた積層体に40℃で3日間エージング処理を行い、基材、ガスバリア層、オーバーコート層、トップコート層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを得た。
【0160】
<ラミネートフィルムの作製>
得られたガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムのトップコート層の表面上に、主剤(ポリウレタン樹脂)/硬化剤(ポリイソシアネート樹脂)の組合せからなるコート剤(DIC社製ディックドライLX500/KR−90S)を、乾燥膜厚3μmになるようにドライラミネーターにより塗布し、ラミネート接着剤層を形成した。さらに、この接着剤層の表面上に、ヒートシール層(東セロ社製、無延伸ポリプロピレン、RXC−21、厚み50μm)を貼り合わせ、40℃で3日間養生して接着剤層を硬化させることで、基材、ガスバリア層、オーバーコート層、トップコート層、ラミネート接着剤層、ヒートシール層の順に各層が積層された積層体を得た。この積層体の酸素透過度は23.7ml/(m2・d・MPa)、ラミネート強力は3.8N/cmであった。
【0161】
<レトルト処理後の酸素透過度測定>
上記、積層体を用い製袋した後に水を適量充填し120℃×30分間のレトルト処理を行なった。その後の酸素透過度は3.8ml/(m2・d・MPa)であった。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
[実施例2〜4]
二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中の酸化チタンの配合割合を7質量%(実施例2)、15質量%(実施例3)、38質量%(実施例4)とした以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0165】
[実施例5〜6]
使用している白色顔料を堺化学工業社製の酸化亜鉛(平均粒子径0.29μm)に変更し、酸化チタンマスターと同様の方法で60質量%の酸化亜鉛マスターを作成し、ポリアミド樹脂フィルム中の酸化亜鉛の配合割合を30質量%(実施例5)、10質量%(実施例6)とした以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0166】
[実施例7]
使用している白色顔料を竹原化学工業社製の炭酸カルシウム「ネオライトSP-300(平均粒子径0.15μm)」に変更し、酸化チタンマスターと同様の方法で60質量%の炭酸カルシウムマスターを作成し、使用した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0167】
[実施例8]
ナイロン6樹脂と酸化チタンマスターをブレンドし、酸化チタンの配合割合が20質量%となるようにして、Tダイを備えた押出機(75mm径、L/D=45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)から、260℃の条件でTダイオリフィスよりシート状に押し出した。続いて、これを表面温度18℃に調節されたキャスティングロール上に密着させて急冷し、厚み180μmの未延伸ポリアミド樹脂フィルムを得た。次にこのフィルムを周速の異なる加熱ローラー群を備え、ローラー温度を55℃とした縦延伸機によりフィルムを2.7倍縦延伸した。この縦方向に一軸延伸したフィルムを横延伸きに導き、予熱温度60℃、予熱時間3.5秒でフィルムの昇温を行い、延伸温度90℃、延伸時間3秒で横方向に3.7倍延伸した後、更に熱固定温度215℃、熱固定時間5秒の条件で熱処理を施し、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの厚みは18μmであった。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの光学濃度は0.6で白色度は83%であった。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに実施例1と同様方法でラミネートフィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0168】
[実施例9]
平均粒径1.0μmのシリカを0.1質量%含有するナイロン6樹脂を押出機Aに投入し260℃で溶融押出した。一方、ナイロン6樹脂とチタンマスターを酸化チタンの配合割合が40質量%となるように押出機Bに投入し260℃で溶融押出した。押出機A、押出機Bでそれぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、押出機A由来の酸化チタンを含有しないポリアミド樹脂をA層、押出機B由来の酸化チタンを含有するポリアミド樹脂をB層として、A(透明)/B(白色)/A(透明)の三層構成のシートをTダイから押し出し、表面温度20℃の冷却ロールに密着させて、A/B/A=20/140/20μmとなる厚み180μmの未延伸シ−トを得た。次に、この未延伸フィルムを水槽に導き、吸水率4.0%に調整した。次に、コートされた未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に導き、予熱温度200℃、予熱時間5秒、延伸温度180℃、延伸時間3秒の条件で、縦方向3.3倍、横方向3.0倍に同時二軸延伸し、さらに熱固定温度215℃、熱固定時間5秒の条件で熱処理を施し、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの厚みはA/B/A=2/14/2μmであった。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの光学濃度は0.7で白色度は92%であった。この二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに実施例1と同様方法でラミネートフィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0169】
[実施例10〜11]
押出機Bの酸化チタン配合割合を10質量%(実施例10)、20質量%(実施例11)に変更した以外は、実施例9と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0170】
[実施例12〜14]
押出機A、Bから押出す各層の厚みを調整し、延伸後の各層のフィルム厚み(A/B/A)が6/6/6(実施例12)、3/12/3(実施例13)、7/4/7(実施例14)に変更した以外は実施例9と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0171】
[実施例15][
実施例1に比べ、オーバーコート層を形成する酸化マグネシウム分散体溶液(1)とバイロンGK130ポリエステル溶液とポリイソシアネート化合物BX4773との質量比を、酸化マグネシウム/ポリエステル/ポリイソシアネート=50/83.3/16.7に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0172】
[実施例16]
酸化マグネシウム分散体水溶液(2)に、水性ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、W635)と、ポリイソシアネート化合物(日本化薬社製、アクアネート100)の水分散溶液とを、酸化マグネシウム/ポリウレタン/ポリイソシアネートの質量比が20/83.3/16.7になるように加えて、固形分10質量%の混合液(オーバーコート層形成用塗料)を作成した。
【0173】
実施例1に比べ、上記オーバーコート層形成用塗料を用いたことと、オーバーコート層形成時の乾燥および熱処理条件を120℃、2分としたこととを相違させた。それ以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0174】
[実施例17]
実施例1に比べ、塗料の固形分を調整することで、ガスバリア層/オーバーコート層/トップコート層の膜厚を、0.3μm/0.4μm/0.4μmに変更した。それ以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0175】
[実施例18]
実施例15に比べ、塗料の固形分を調整することで、ガスバリア層/オーバーコート層/トップコート層の膜厚を、0.3μm/0.4μm/0.4μmに変更した。それ以外は、実施例2と同様にして、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0176】
[比較例1〜2]
二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中の酸化チタンの配合割合を3質量%(比較例1)、50%(実施例2)とした以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0177】
[比較例3〜4]
押出機Bの酸化チタン配合割合を60質量%(実施例3)、5質量%(実施例4)に変更した以外は、実施例9と同様の方法で二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0178】
[比較例5]
実施例1に比べ製造例4の酸化マグネシウム分散体溶液(1)を含まず、製造例3のバイロンGK130ポリエステル溶液とポリイソシアネート化合物とを、質量比で、ポリエステル/ポリイソシアネート=83.3/16.7となるように混合して、混合液を得た。それ以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作製した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0179】
[比較例6]
実施例1に比べ、トップコート層を設けないものとした。それ以外は実施例1と同様にして、基材、ガスバリア層、オーバーコート層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム、および基材、ガスバリア層、オーバーコート層、ラミネート接着剤層、ヒートシール層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0180】
[比較例7]
比較例6に比べ、酸化マグネシウムの分散体溶液(1)を酸化マグネシウム粉体のみに変更した。それ以外は比較例6と同様にして、基材、ガスバリア層、オーバーコート層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム、および基材、ガスバリア層、オーバーコート層、ラミネート接着剤層、ヒートシール層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0181】
[比較例8]
実施例1に比べ、オーバーコート層およびトップコート層を設けないものとした。それ以外は実施例1と同様にして、基材、ガスバリア層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム、および、基材、ガスバリア層、ラミネート接着剤層、ヒートシール層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0182】
[比較例9]
実施例1に比べ、オーバーコート層を設けないものとした。それ以外は実施例1と同様にして、基材、ガスバリア層、トップコート層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム、および、基材、ガスバリア層、トップコート層、ラミネート接着剤層、ヒートシール層の順に各層が積層された二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを作成した。各種測定の結果を表1および表2に示す。
【0183】
表1および表2の各実施例では、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中に含有する白色顔料の割合と、層構成が本発明で規定する範囲を満たしたことによって、遮光性・バリア性ともに優れる二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムが作成できた。
【0184】
これに対し、各比較例では、次のような問題があった。
【0185】
比較例1では二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中の白色顔料の割合が本発明で規定する範囲より低かった。このため、フィルムの光学濃度・白色度がともに低かった。
【0186】
比較例2では二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中の白色顔料の割合が本発明で規定する範囲より高かった。このため、ラミネート強力測定の際に基材フィルムで凝集破壊が発生しラミネート強力が低下した。
【0187】
比較例3では、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中の白色顔料の割合が本発明で規定する範囲より低かった。このため、フィルムの光学濃度・白色度がともに低かった。
【0188】
比較例4では、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム中の白色顔料の割合が本発明で規定する範囲より高かった。このため、複層フィルムの層間強力が低下しラミネート強力測定の際に層間剥離が発生したためラミネート強力が低下した。
【0189】
比較例5〜9は、所定のオーバーコート層および/またはトップコート層が存在しなかったため、充分なガスバリア性が得られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料を5〜40質量%含有した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム基材と、
ポリアルコール系ポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとを含有するガスバリア層形成用塗料にて形成されたガスバリア層と、
1価の金属化合物と2価以上の金属化合物との少なくとも一方を含有するオーバーコート層形成用塗料にて形成されたオーバーコート層と、
トップコート層形成用塗料にて形成されたトップコート層とを含み、
前記ガスバリア層が前記基材の少なくとも一方の面に、直接に、またはアンカーコート層を介して積層され、前記オーバーコート層が前記ガスバリア層に積層され、前記トップコート層が前記オーバーコート層に積層されたものであることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の白色顔料が酸化チタンであることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1または2記載の基材フィルムが、白色顔料を含有するポリアミド樹脂層と白色顔料を含有しないポリアミド樹脂層から構成された複層構造を有していることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項4】
フィルムの光学濃度が0.3以上でありかつ白色度が60〜100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項5】
トップコート層形成用塗料が水溶液または水分散液であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項6】
オーバーコート層形成用塗料が有機溶剤系塗液であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項7】
ポリアルコール系ポリマーが、ポリビニルアルコールと、エチレンおよびビニルアルコールの共重合体とから選ばれるポリマーを含むものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを少なくとも1層に使用したものであることを特徴とする積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を製袋したものであることを特徴とする包装袋。


【公開番号】特開2012−16925(P2012−16925A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156820(P2010−156820)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】