説明

遮光性を有する光硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】光によって効果的に硬化し、そのため厚い膜厚の樹脂でも硬化が可能で、得られる硬化樹脂の光透過率が低い、光硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】光硬化性樹脂及び該光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差が0.01以上となる屈折率を有し、該光硬化性樹脂に対して非相溶性で分散性を有する化合物を含む光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性を有する光硬化性樹脂組成物、より詳しくは、光硬化性樹脂及び該光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差が一定以上の大きさの屈折率を有し、該光硬化性樹脂に対して非相溶性で分散性を有する化合物を含む光硬化性樹脂組成物に関する。本発明の樹脂組成物は、隠ぺい力、遮光性、硬化性、接着性に優れ、光学機器、特にCCDカメラや光ピックなどの光学材料部品の固定や、パッケージ等の成形用樹脂として好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、種々のディスプレイや光学レンズ、光ピック、センサーなどの電子光学機器の高性能化に伴い、高感度を実現・維持するために、部材や固定樹脂層からの透過光や隙間からの漏光による損失を低下させることが必要不可欠となっている(図1参照)。特に、固定部などのように強度・耐久性・耐湿性など種々の特性を求められる部分では、同一の樹脂でこれらの特性と光損失の低下防止を両立することが必要である。
【0003】
上記課題に対して、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にカーボンブラック又はチタンブラックといった無機顔料や種々の有機顔料(染料)のどちらか一方もしくは両方を添加し、これら添加物による透過光の表面反射や吸収を高めるといった方法が提案され、その高い効果から、光学機器の部材ではこの方法が一般的に利用されている。
【0004】
一方、近年、生産性の向上と操作の簡便さから固定用接着剤や封止用樹脂として光硬化性樹脂が一般的に使用されるようになり、光硬化性樹脂にも、強度・耐久性・耐湿性など種々の特性に加えて、遮光性が求められている。
【0005】
この要求に伴い、無機又は有機顔料を用いる上記の従来法をそのまま光硬化性に応用した報告もいくつかあり、一応の遮光性を得ている(特許文献1及び2)。しかしながら、従来法を光硬化性樹脂に応用した場合には、顔料を完全遮光に近い添加量で使用すると、硬化に必要な光も遮光してしまうため硬化不良になりやすく、樹脂厚さを厚くすることができず、厚さの範囲が限られてしまうといった問題点がある。また、光損失を低下させるためには、樹脂に対して顔料を多量に添加する必要があるため、ベース樹脂の特性を著しく変化させてしまうという問題点とともに顔料の分散が困難であるという問題点を抱えている。このため、現在では、遮光と固定の際の強度・耐久性・耐湿性など種々の特性とを両立するための手段として、固定用樹脂で部材を固定した後、遮光樹脂で固定用樹脂の外装を被覆するか(図2参照)、あるいは、遮光用樹脂から遮光スペーサを作製し、これを固定用樹脂とセンサー等の間に設置することで樹脂部からの光損失を低下させて高感度を実現・維持している(特許文献3;図3参照)。しかし、この方法では、生産性が低下するなどの問題が発生している。
【特許文献1】特開2004−361736号公報
【特許文献2】特開2005−128483号公報
【特許文献3】特開平6−222369号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ベース樹脂の光硬化性樹脂の硬化物とそれに添加する化合物との間の屈折率差を利用することにより、光によって効果的に硬化し、そのため厚い膜厚の樹脂でも硬化が可能で、得られる硬化樹脂の光透過率が低い、光硬化性樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)光硬化性樹脂及び該光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差が0.01以上となる屈折率を有し、該光硬化性樹脂に対して非相溶性で分散性を有する化合物を含む光硬化性樹脂組成物;
(2)屈折率の差が0.1以上である、上記(1)記載の光硬化性樹脂組成物;
(3)光硬化性樹脂がアクリル変性樹脂又はエポキシ樹脂である、上記(1)又は(2)記載の光硬化性樹脂組成物;
(4)さらに、光重合開始剤を含む、上記(1)〜(3)のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物;
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項記載の光重合性樹脂組成物の硬化物;
(6)上記(5)記載の硬化物を含む光学機器部材;
(7)上記(6)記載の光学機器部材を含む光学機器
である。
【0008】
本発明の光学機器部材の概念を図4に示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光で効率よく硬化するので厚膜硬化が可能であり、得られる硬化物は、内外からの光透過性が低く、かつ、強度・耐久性・耐湿性など種々の特性に優れている。また、固定(封止)用樹脂と遮光用樹脂を同一の樹脂で行うことができるので生産性を大きく向上できる。
【0010】
これらのため、本発明の光硬化性樹脂組成物は、種々の光学機器部材や成形樹脂等の製造用樹脂として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ベース樹脂である光硬化性樹脂及び該光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差が0.01以上となる屈折率を有し、該光硬化性樹脂に対して非相溶性で分散性を有する化合物を含む光硬化性樹脂組成物である。
【0012】
本発明におけるベース樹脂とは、本発明の光硬化性樹脂組成物の連続相を形成する樹脂を意味し、したがって、光硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物においても連続相を形成し得る。
【0013】
本発明における光硬化性樹脂は、可視光、紫外線等の光によって硬化する樹脂であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、好ましくは、アクリル変性樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。
【0014】
アクリル変性樹脂は、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する単官能性および多官能性の(メタ)アクリレート化合物と定義され、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールアクリレート、1,4−ブタンジオールアクリレート、アクリロイルモルフォリン、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)−5、5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオールアクリレート、α,ω−ジアクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリットアクリレート、ペンタエリトリットヘキサアクリレート、ジペンタエリトリットモノヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びこれらのEO及び/又はPO付加物、α,ω−テトラアリルビストリメチロールプロパンテトラヒドロフタレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、N−ビニルピロリドン及びこれらの光反応性官能基を有するオリゴマーが例示できる。
【0015】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を1個以上有する分子構造を有する化合物と定義され、例えば、ビフェノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等の脂環式エポキシ化合物及びこれらの光反応性官能基を有するオリゴマーが例示できる。
【0016】
本発明における光硬化性樹脂は、硬化後の屈折率により特に限定されるものではなく、任意の屈折率を有する硬化物を与える光硬化性樹脂が使用可能である。
【0017】
光硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ株式会社製)を使用しD線により測定する。
【0018】
本発明において、光硬化性樹脂は、上記の樹脂から、使用する部位において求められる性能を考慮して1種又は2種以上の混合物として選択される。
【0019】
本発明における、光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差が0.01以上となる屈折率を有し、該光硬化性樹脂に対して非相溶性で分散性を有する化合物は、該光硬化性樹脂の硬化物の屈折率、及び該光硬化性樹脂に対する非相溶性、分散性によって選択され、光硬化性樹脂の硬化物の屈折率よりも0.01以上大きい屈折率を有する化合物(高屈折率化合物)及び光硬化性樹脂の硬化物の屈折率よりも0.01以上小さい屈折率を有する化合物(低屈折率化合物)に大別される。屈折率が異なる化合物は、有機化合物又は無機化合物である。
【0020】
光硬化性樹脂に対して「非相溶性」であるとは、光硬化性樹脂と均一に混和しないことを意味し、光硬化性樹脂に対して「分散性」であるとは、撹拌直後に二層に分離しないこと意味する。
【0021】
本発明で使用できるベース樹脂と屈折率が0.01以上異なる無機化合物には、例えばZnO、TiO2、CeO2、Sb2 5、SnO2 、ITO、Y2 3、La2 3、ZrO2、Al2 3、シリカ、オパール、ガラス、ホワイトカーボンが包含され、好ましくは、屈折率が1.60以上のアルミナ、チタン化合物、ジルコニア化合物が挙げられる。無機化合物は、その表面を種々の無機・有機化合物によって被覆されていてもよい。また、無機化合物の形状は、球状、針状、板状などの任意の形状であってよく、その粒子径も限定されないが、粒子径が小さいほうがより好ましい。粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜10μm、特に0.1〜1μmである。
【0022】
本発明で使用できるベース樹脂と屈折率が0.01以上異なる有機化合物は、液状又は固体のモノマー、オリゴマー又はポリマー化合物のいずれであってもよく、また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであっても問題はないが、ベース樹脂である光硬化性樹脂に対して、非相溶性でありかつ分散性が良好なものでなければならない。例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルカルバゾール、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリビスフェノールSグリシジルエーテル、ポリビニルピリジン、チオウレタン樹脂、チオエポキシ樹脂、フッ素含有(メタ)アクリレート類、フッ化アルキレンエーテル・オリゴマー類(平均分子量:4000以下)の一官能および二官能以上の多官能(メタ)アクリレート類、シリコン含有(メタ)アクリレート類、ポリエチレンやポリテトラフルオロエチレンといった結晶性高分子が包含される。また、有機化合物が固形である場合、その形状は、球状、針状、板状などの任意の形状であってよく、その粒子径も限定されないが、粒子径が小さいほうが好ましい。その粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜10μm、特に0.1〜1μmである。有機化合物が液状である場合、該化合物は、光硬化性樹脂に分散させる。分散粒子の粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜10μm、特に0.1〜1μmである。
【0023】
本発明において使用し得る化合物の幾つかについて、その屈折率を以下に例示する。
ZnO(屈折率1.90)、TiO2 (屈折率2.3〜2.7)、CeO2 (屈折率1.95)、Sb2 5 (屈折率1.71)、SnO2 、ITO(屈折率1.95)、Y2 3 (屈折率1.87)、La2 3 (屈折率1.95)、ZrO2 (屈折率2.05)、Al2 3 (屈折率1.63)、メラミン樹脂(1.6)、ナイロン(1.53)、ポリスチレン(1.6)、ポリエチレン(1.53)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、メタクリル酸メチル樹脂(1.49)、塩化ビニル樹脂(1.54)、シリコーン油(1.4)
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、有機及び無機の高屈折率化合物並びに有機及び無機の低屈折率化合物の1つ又はこれらの2以上の組み合わせを含み得る。
【0025】
本発明の光硬化性樹脂組成物において、高屈折率化合物及び/又は低屈折率化合物は、光硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部、特に好ましくは1〜10重量部の量で使用される。
【0026】
本発明において、光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差は、好ましくは0.1以上であり、特に好ましくは0.15以上である。
【0027】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤として、一般的に市販されているラジカルもしくはカチオン系開始剤が包含され、例えば、カルボニル基系:ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N’−ジメチルアセトフェノン類;スルフィド系:ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド;キノン系:ベンゾキノン、アントラキノン;アゾ系:アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロパンを例示できる。光重合開始剤は、一般的に使用される量、例えば、光硬化性樹脂100重量部に対して1〜10重量部の量で使用することができる。照射光は可視光線、紫外線のいずれであってもよい。
【0028】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、目的に応じて、さらに、その他の公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、離型剤等を添加することができる。また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、樹脂の光透過性や反射率を低下させるために、有機・無機着色顔料を、本発明の効果を損なわない範囲で(光硬化性樹脂100重量部に対して例えば数重量部以下、特に1重量%以下)添加することができる。
【0029】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、前記各成分を常法により混合して製造することができる。各成分の添加の順番は特に限定されない。高屈折率又は低屈折率化合物が液状である場合には、該化合物を光硬化性樹脂に細かい粒径で分散させることが好ましい。
【0030】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、可視光、紫外線等の光により効果的に硬化することができ、広い範囲の膜厚、例えば0.5μm以上の範囲の膜厚において硬化が可能である。光硬化の条件は、樹脂組成物の組成や膜厚等によって変化し得るが、例えば、ベース樹脂;ウレタンアクリレート、高屈折率化合物;アルミナ、膜厚;500μmの場合、紫外線照射量は1500〜3000mJ/cm2である。
【0031】
本発明は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。この硬化物は、強度・耐久性・耐湿性など種々の特性と遮光性に優れているので、固定(封止)用樹脂と遮光用樹脂の特性を同時に満足する。本発明の硬化物は、0.5μm〜3mmの範囲の膜厚において、300〜800nmにおける光透過率を1%以下、例えば0.5%以下、好ましくは、0.1%以下、特に0.05%以下、さらには0.01%以下とすることができる。
【0032】
本発明は、上記の硬化物を含む光学機器部材も含む。光学機器部材としては、例えばセンサー、光ピック、光学レンズ、LEDが挙げられる。
【0033】
本発明は、さらに、上記の光学機器部材を含む光学機器にも関係する。光学機器としては、例えば、デジタルカメラ、各種ディスプレイ、各種記録メディアプレイヤーなどが挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、「部」は重量基準である。
【0035】
(実施例1)
表1に示す割合で、ウレタンアクリレート樹脂(U-4HA、新中村化学社製)と光重合開始剤(I-184、CIBA CHWMICALS社製)を常法に従って混合しアクリル系ベース樹脂Aを、また、エポキシ樹脂(EP-830S、大日本インキ化学社製)と光重合開始剤(SP150、サンアプロ社製)を常法に従って混合しエポキシ系ベース樹脂Bを得た。さらに表2に示す割合で、作製したベース樹脂と各種材料を常法に従って混合し、光硬化性遮光樹脂組成物を得た。具体的には、室温のアクリル系ベース樹脂Aの100重量部を容器に装入した後、20重量部の球状アルミナを添加し500rpmの撹拌条件下、23℃で15分撹拌した。
【0036】
【表1】

【0037】
得られた光硬化性樹脂組成物の光硬化性および硬化物の光透過性は、次のような試験で評価し、それらの結果を表3に示す。
【0038】
〔深部硬化性〕;上部以外を密閉した容器(大きさ;内径=6mm深さ=15mm)に光硬化性樹脂組成物を充填し、上部から6000mJ/cm2の紫外線を照射した後、硬化した樹脂の厚みをマイクロメーターにより測定し、この厚みをもって深部硬化性の評価とした。
【0039】
〔硬化物の光透過性〕:ガラス基板上に直径が1cmで厚さが50μm、500μm又は1mmにそれぞれ成形した光硬化性遮光樹脂組成物を1500〜12000mJ/cm2の紫外線照射によって光硬化させた後、UV分光器を用いて波長300〜800nmにおける硬化物の光透過性を評価した。その結果を表3に示す。
【0040】
(実施例2〜12)
表2に示すような割合で、実施例1と同様にして、混合し光硬化性樹脂組成物を得た。ベース樹脂A及びBのみからなる光硬化性樹脂組成物を参考例1及び2とした。
【0041】
得られた樹脂組成物の光硬化性および硬化物の光透過性は、実施例1と同様な試験で評価し、それらの結果を表3及び表4に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
(比較例1〜3)
高屈折率化合物及び低屈折率化合物の代わりにカーボンブラックを加える以外は、実施例1と全く同様に操作し、表5に示すような割合で光硬化性樹脂組成物を得た。これらを実施例1と同様に評価し、その結果を表6に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、厚膜硬化が可能であり、光透過性が低く、かつ、強度・耐久性・耐湿性など種々の特性に優れており、固定(封止)用樹脂と遮光用樹脂を同一の樹脂で行うことができるので生産性が大きく向上し、遮光性を必要とする種々の光学機器部材や成形樹脂等の製造用樹脂として適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来のセンサー部材(遮光層なし)を示す図である。
【図2】従来のセンサー部材(被覆遮光層)を示す図である。
【図3】従来のセンサー部材(遮光スペーサ)を示す図である。
【図4】本発明のセンサー部材を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
A:レンズ、B:固定(封止)樹脂、C:センサー、D:被覆遮光層、
E:遮光スペーサ、F:遮光性固定(封止)樹脂
1:入射光、2:外部透過光、3:内部透過光(損失光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂及び該光硬化性樹脂の硬化物の屈折率との屈折率の差が0.01以上となる屈折率を有し、該光硬化性樹脂に対して非相溶性で分散性を有する化合物を含む光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
屈折率の差が0.1以上である、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光硬化性樹脂がアクリル変性樹脂又はエポキシ樹脂である、請求項1又は2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、光重合開始剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の光重合性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物を含む光学機器部材。
【請求項7】
請求項6記載の光学機器部材を含む光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−119684(P2007−119684A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316651(P2005−316651)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】