説明

遮光性積層包装材料

【課題】本発明は、糖、電解質液、アミノ酸、ビタミン類などの液薬剤が充填される輸液バッグの2次包装としての外装袋に関して、充填物の品質を劣化させないための、酸素の進入を防止するバリア性、や紫外線および短波長可視光線に対する遮光性が必要とされており、かつ、それ以外の可視光線領域では、中の輸液バッグの文字が容易に視認できるよう透明性が保持されている遮光性包装材料を提供することを課題とするものである。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルム基材の片面に、透明着色インキ層/紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層/透明着色インキ層よりなる遮光層、接着剤層、酸素バリア層、接着剤層、熱溶着層を設けることで、平行透過光において340nmの透過率が2パーセント未満、480nmの透過率が1パーセント未満、500nm以上の可視光線領域でのヘイズ値(濁度)が35パーセント未満となる遮光性積層包装材料を作成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液薬剤が充填される輸液バッグの2次包装としての外装袋に、充填物の品質を劣化させないための、酸素の進入を防止するバリア性や、紫外線および短波長可視光線に対する遮光性が必要とされており、かつ、それ以外の可視光線領域では、中の輸液バッグの文字が容易に視認できるよう透明性の保持が必要とされており、それらを備えた遮光性包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、糖、電解質液、アミノ酸、ビタミンなどが充填される輸液バッグの1次容器としての包装材料としては、ハンドリング(取り扱い)性の良さや、軽量化、ゴミの減容化などから、柔軟性のあるプラスチックフィルムが用いられているが、そのフィルムは、そのスリップ剤などのフィルム添加剤が、そのフィルムよりブリードし、輸液に溶出し、ひいては人体に注入されないように、それらの添加剤が無添加の形で用いられており、酸素バリア性が、皆無に等しい状態のものとなっている。
【0003】
そのため、輸液バッグに充填されているアミノ酸、糖、電解質液などの液薬剤は、酸素の進入によって著しく変質しやすい状態にあり、その輸液バッグを大気中に放置しておくと、大気中の酸素が輸液バッグを透過し、上記薬剤を変質させてしまうこととなる。
【0004】
そこで、近年は、輸液バッグを酸素バリア性の高い包装材料で2次包装することが行われている。さらに、使用直前にビタミンの混合注入を忘れるのを防止するために、ビタミンの収納部屋を設けたバッグ包装袋構造も増えてきており、この場合、ビタミンが、2次包装バッグ内に充填されており、ビタミンは、紫外線だけばかりではなく、短波長可視光線(400〜500nm)によっても、変質しやすいため、2次包装材料としては、酸素バリア性以外に、紫外線および短波長可視光線に対する遮光性が必要となる。
【0005】
従来、酸素バリア性を満たすために、ポリ塩化ビニリデン樹脂コートを施したプラスチックフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルムや、酸化アルミニウム、酸化珪素などを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを蒸着した延伸ナイロンフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体や6ナイロンを中間層に有するバリアナイロンなどが用いられた積層包装材料が使用される。
【0006】
従来、遮光性を満たすために、アルミニウム箔や、アルミニウム蒸着をしたポリエチレンテレフタレートフィルム、あるいは、アルミニウム蒸着をした延伸ナイロンフィルムが用いられる。
【0007】
しかし、アミノ酸、糖、電解質液などの液薬剤が充填された輸液バッグが上記した輸液外装袋に入れられ、さらにダンボールに積載梱包され輸送される。その輸送工程中の振動により、その輸液外装袋にピンポールが生じることがあり、発生したピンホールの検知と内容物を品質保証するために、酸素の有無で色の変色が起こる錠剤型、あるいはペーパー型の酸素インジケーターが用いられるケースが多いが、上記のアルミニウム箔などでの遮光方法の場合、外から酸素インジケーターの変色を発見することができないため、ビタミンがあらかじめ充填されたタイプの外装袋では、遮光性が必要なため、遮光機能を維持しながらも、輸液バッグの文字が容易に視認可能であり、かつ、酸素インジケーターの変色も簡単に認識可能であることが要望されている。
【0008】
特許文献1に係る輸液容器用遮光カバー(32)としては、図7に示すように、紫外線吸収・遮光性インキ層が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム基材に、視認用の窓部(34)を除いて、茶色の遮光性着色インキ層が設けられた遮光フィルムによって形成されており、該窓部以外の部分は、波長400nm以下の光線透過率が5%以下で且つ波長400〜800nmの光線透過率が50%以下のフィルムであり、該窓部(34)は、波長400nm以下の光線透過率が5%以下で且つ波長600nm以上の光線透過率が50%以上に構成されている。かかる窓部が設けられた従来の遮光カバーは、窓部を介して輸液量を視認することができるというものである。
【0009】
しかしながら、上記遮光カバー(32)に用いられているフィルムは、窓部(34)が比較的狭い面積であるため、フック(35)、取り出し口(36)を有する内袋である輸液袋(33)の輸液量を確認し難く、更に、窓部は可視光線の一部(およそ波長500nm程度まで)の透過率が比較的高い(悪い)ので、該窓部から入り込む光線によって輸液が変質する虞がある。この点、窓部を広面積にすると、視認性は向上するが、遮光性は低下し、一方、窓部を狭くとすると遮光性は向上するが、視認性は更に悪くなるものである。
【0010】
特許文献2に係る輸液容器用遮光カバーとしては、良好な紫外線遮光性と透明性とを具備した医薬液用遮光性容器を提供するもので、無機微粒子を含むプラスチックシートからなり、一次粒子径が、0.1μm以下で、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカおよび炭酸マグネシウムの群より選ばれた一種または二種以上の無機化合物である無機微粒子をプラスチックシートに練りこんだものであり、このプラスチックシートは波長域290〜360nmにおける水中透過率が30%以下で、かつ波長450nmにおける水中透過率が55%以上である医薬液用遮光性容器である。
【0011】
しかし、紫外線によって変質を受けやすい医薬液、特にアミノ酸類を含有する液を貯蔵するのには、有用なフィルム包装材料であるが、短波長可視光線(400〜500nm)にても変質するビタミン類に対する遮光性は有していないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−275280号
【特許文献2】特開平8−243147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたものであり、糖、電解質液、アミノ酸、ビタミン類などの液薬剤が充填される輸液バッグの2次包装としての外装袋に、充填物の品質を劣化させないための、酸素の進入を防止するバリア性や、紫外線および短波長可視光線に対する遮光性が必要とされており、かつ、それ以外の可視光線領域では、中の輸液バッグの文字が容易に視認できるよう透明性が保持されることが必要とされており、それらを備えた遮光性包装材料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、紫外線領域および短波長可視光線領域の光線を遮光する遮光性積層包装材料であって、
熱可塑性樹脂フィルムと熱溶着層との間に、遮光層と酸素バリア層とを、任意の順序で介在させて構成されており、
前記遮光層が、2層の透明着色インキ層の間に紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層をはさんだサンドイッチ構造の層であり、
かつ、波長340nmの平行透過光の透過率が2パーセント未満、波長480nmの平行透過光の透過率が1パーセント未満、ヘイズ値が35%未満であることを特徴とする遮光性積層包装材料である。
【0015】
請求項2の発明は、前記紫外線遮光インキ層中の紫外線吸収剤が、平均粒径が0.4μm以上の無機金属微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の遮光性積層包装材料である。
【0016】
請求項3の発明は、前記透明着色インキ層が、透明黄色インキ、透明オレンジ色インキ、透明赤色インキのいずれかひとつ、または、これらの混色であることを特徴とする請求項1または2に記載の遮光性積層包装材料である。
【0017】
請求項4の発明は、前記遮光層が接着剤層に隣接して積層されており、この遮光層に隣接する接着剤層の乾燥時塗布量が3g/m未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮光性積層包装材料である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、輸液バッグの2次包装としての外装袋用積層包装材料における、紫外線領域および短波長可視光線領域の光線を遮光する積層包装材料であって、
熱可塑性樹脂フィルムと熱溶着層との間に、遮光層と酸素バリア層とを、任意の順序で介在させて構成されており、
前記遮光層が、2層の透明着色インキ層の間に紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層をはさんだサンドイッチ構造の層にすることによって、
波長340nmの平行透過光の透過率が2パーセント未満、波長480nmの平行透過光の透過率が1パーセント未満、ヘイズ値が35%未満となり、
紫外線領域、および短波長可視光線領域を遮光でき、それ以外の可視光線領域では、透明性が保持されており、中の輸液バッグの文字が容易に視認できるようという効果を有するものである。
【0019】
すなわち、請求項1の発明は、糖、電解質液、アミノ酸、ビタミン類などの液薬剤が充填される輸液バッグの2次包装としての外装袋用積層包装材料であって、上記層構成にすることによって、酸素の進入を防止でき、充填物である液薬剤の品質を劣化させない効果を有するものであり、上記層構成にすることによって、紫外線および短波長可視光線を遮光でき、ビタミン類などの変質を防止することができる効果を有するものであり、上記層構成にすることによって、それ以外の可視光線領域において、透明性が保持でき、中の輸液バッグの文字が容易に視認でき、かつ、輸液の残量も容易に認識でき、さらに、酸素インジケーターの変色も容易に認識可能であるという効果も有するものである。
【0020】
請求項2の発明は、前記紫外線遮光インキ層中の紫外線吸収剤を、平均粒径が0.4μm以上の無機金属顔料微粒子とすることによって、前記紫外線遮光インキ中での分散を行い易くすることができ、均一に塗布が可能となるという効果を有するものである。
【0021】
すなわち、前記紫外線吸収剤として、0.1μm以下の無機金属顔料の超微粒子を用いた場合には、凝集し易すく、粒子が巨大化したり、分散が悪くなり、加工性が著しく低下するものである。
【0022】
請求項3の発明は、前記遮光層における、前記透明着色インキ層が、透明黄色インキ、透明オレンジ色インキ、透明赤色インキのいずれかひとつ、または、これらの混色であることにすることによって、短波長可視光線領域(400〜500nm)における、光線透過率が1パーセント未満とすることができる効果を有するものであり、かつ、ビタミン類
などの変質を防止することができる効果を有するものである。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1の発明によって、前記接着剤層の接着剤塗布量を、3g/m(乾燥時ドライ塗布量)未満の塗布量において、接着剤塗布表面を平滑にすることができるので、エージング後の外観不良を改善できるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1の(a)は、本発明の請求項1の遮光性積層包装材料の構成の内の一つ目である。図1の(b)は、本発明の請求項1の遮光性積層包装材料の構成の内の二つ目である。
【図2】図2の(a)は、本発明の請求項1の遮光性積層包装材料の構成の内の三つ目である。図2の(b)は、本発明の請求項1の遮光性積層包装材料の構成の内の四つ目である。
【図3】図3の(a)は、本発明の実施例1の遮光性積層包装材料の層構成である。図3の(b)は、本発明の実施例2の遮光性積層包装材料の層構成である。
【図4】図4(a)は、本発明の比較例1の遮光性積層包装材料の層構成である。図4の(b)は、本発明の比較例2の遮光性積層包装材料の層構成である。
【図5】図5の(a)は、本発明の遮光性積層包装材料の層構成の仲の遮光層が(4)のみよりなる遮光層(11)の場合の層構成を示したものである。図5の(b)は、本発明の遮光性積層包装材料の層構成の中の遮光層が(3)/(4)/(3)よりなる遮光層(5)の場合の層構成を示したものである。
【図6】図6は、本発明の遮光性積層包装材料の層構成が、図5の(a)の場合の、各波長に対する光線透過率を示したグラフ(12)と本発明の遮光性積層包装材料の層構成が、図5の(b)の場合の、各波長に対する光線透過率を示したグラフ(13)を示したものである。
【図7】図7は、特許文献1に係る輸液容器用遮光カバー付で視認用窓部を有する輸液容器の正面略図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、輸液バッグの2次包装としての遮光性積層包装材料における、紫外線領域および短波長可視光線領域の光線を遮光する積層包装材料であって、
熱可塑性樹脂フィルムと熱溶着層との間に、遮光層と酸素バリア層とを、任意の順序で介在させて構成されており、
前記遮光層が、2層の透明着色インキ層の間に紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層をはさんだサンドイッチ構造の層にすることによって、
平行透過光において340nmの透過率が2パーセント未満、480nmの透過率が1パーセント未満、ヘイズ値(透明性)が35パーセント未満となる遮光性積層包装材料である。
【0026】
前記遮光性積層包装材料の層構成としては、代表的には、図1の(a)、(b)や図2の(a)、(b)に示すように、熱可塑性樹脂フィルム基材(2)の片面に、四通りの層構成を設けることが考えられる、すなわち、その第一番目は、まず透明着色インキ層(3)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(4)と透明着色インキ層(3)をこの順に積層した遮光層(5)を設け、その上に接着剤層(6)、酸素バリア層(7)、接着剤層(6)、熱溶着層(8)をこの順に設けた図1の(a)に示すような層構成である。
【0027】
その第二番目は、熱可塑性樹脂フィルム基材(2)の片面に、まず接着剤層(6)を設け、その上に酸素バリア層(7)、透明着色インキ層(3)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(4)と透明着色インキ層(3)をこの順に積層した遮光層(5)、接着剤層(6)、熱溶着層(8)をこの順に設けた図1の(b)に示すような層構成である。
【0028】
その第三番目は、熱可塑性樹脂フィルム基材(2)の片面に、まず接着剤層(6)を設け、その上に透明着色インキ層(3)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(4)と透明着色インキ層(3)をこの順に積層した遮光層(5)、接着剤層(6)、酸素バリア層(7)、接着剤層(6)、熱溶着層(8)をこの順に設けた図2の(a)に示すような層構成である。
【0029】
その第四番目は、熱可塑性樹脂フィルム基材(2)の片面に、まず接着剤層(6)を設け、その上に酸素バリア層(7)、接着剤層(6)、透明着色インキ層(3)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(4)と透明着色インキ層(3)をこの順に積層した遮光層(5)、接着剤層(6)、熱溶着層(8)をこの順に設けた図2の(b)に示すような層構成である。
【0030】
前記遮光層の層構成において、図3の(a)や(b)の透明黄色インキ層(14)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(15)と透明黄色インキ層(14)をこの順に積層してなる層構成の遮光層(19)は、図4の(a)や(b)の透明黄色インキ層(14)と透明黄色インキ層(14)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(15)をこの順に積層してなる層構成の遮光層(20)と比較すると、500nm以上の可視光線領域でのヘイズ値(透明性)において、低く、透明性において優れているものである。
【0031】
また、前記遮光層の層構成において、図5の(a)の紫外線遮光インキ層(4)のみの層構成の遮光層(11)は、紫外線領域のみの遮光性を有しているものであるが、図5の(b)の透明着色インキ層(3)と紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層(4)と透明着色インキ層(3)をこの順に積層してなる層構成の遮光層(5)は、紫外線領域のみならず、短波長可視光線領域をも遮光でき、かつ、それ以外の可視光線領域では、優れた透明性を保持できているものである。
【0032】
前記熱可塑性樹脂フィルム基材(2)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレンなどのポリスチレン系、環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物などからなる透明なフィルム、及びこれらの積層フィルムなどを用いることができ、汎用的であること、耐熱性があり又強度的に優れること、透明性も良好であることからポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルムを用いることが好ましい。
【0033】
前記熱可塑性樹脂フィルム基材(2)は、紫外線吸収又は遮断剤を練り込んだ樹脂組成物にて製膜されたフィルムや、紫外線吸収又は遮断剤を浸透させたフィルムなどの紫外線吸収遮断処理が施されたものを用いることもできる。熱可塑性樹脂フィルム基材(2)は、波長600〜800nmで光線透過率が80%以上の透明性に優れるものが用いられる。熱可塑性樹脂フィルム基材(2)の厚さは、概ね10〜70μm程度である。
【0034】
前記紫外線遮光インキ層(4)の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物などの有機系紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線遮断剤などを用いることができる。
【0035】
しかし、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物などの有機系紫外線吸収剤などは、内袋医薬液中に溶出して、最終てきには、人体内に入り込む危険性は否定できないため、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線遮断剤などを好ましく用いることができる。
【0036】
前記透明着色インキ層(3)としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の慣用の印刷法により印刷インキであれば、使用できるものであるが、本発明に用いるには、透明性が要求されるので、着色剤としては、有機顔料、有機染料(油溶性染料、分散染料を含む)などの内、昇華性が低く、耐光性に優れ、突然変異原性を示さないものが使用できる。
【0037】
前記透明着色インキ層(3)は、前記熱可塑性樹脂フイルム基材(2)の内面全体に形成される。適当なバインダーに分散・溶解させ、グラビアコーティング法などの印刷法などによって塗布することにより、また、前記透明着色インキ層(3)の厚みは、遮光性と視認性を考慮して適宜設計されるものであり、余りに薄いと遮光性に劣り、逆に厚すぎると視認性が低下するため、例えば乾燥厚約0.5〜5μm程度が好ましい。
【0038】
尚、各インキ層を形成する際には、塗布するインキに、必要に応じて、透明メジウムインキなどの着色剤成分を含まない透明インキを混合することにより、上記インキ層の厚みを調整することができる。
【0039】
前記接着剤層(6)の接着剤としては、ドライラミネート用の一般的なものが使用でき、二液硬化型ウレタン系接着剤や二液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤などが用いることができる。
【0040】
前記酸素バリア層(7)としては、酸素バリア性を満たすために、ポリ塩化ビニリデン樹脂コートを施したプラスチックフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルムや、酸化アルミニウム酸化珪素などを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化アルミニウム酸化珪素などを蒸着した延伸ナイロンフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体や6ナイロンを中間層に有するバリアナイロンなどが用いられる。
【0041】
前記熱溶着層(8)としては、熱溶着可能なものであれば特に限定されず、例えば、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。前記熱溶着層(8)は、例えば前記熱可塑性樹脂フイルム基材(2)の最内面側に、公知のラミネート法、例えば押出ラミネート法や、透明な接着剤を用いるドライラミネート法などによって積層することができる。これらのなかでは、前記熱溶着層(8)表面の凹凸が小さく、より透明な積層フィルムを得ることができる点から、ドライラミネート法で積層することが好ましい。この場合、その接着剤としては、透明性の高いものが用いられる。
【0042】
尚、熱溶着層(8)が設けられた遮光性積層包装材料は、ヒートシール等によって簡易に袋状などに形成することができる。
【0043】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
図3の(a)に示す層構成は、実施例1の層構成であって、基材層(21)の上に、遮光層(19)、接着剤層(16)、酸素バリア層(17)、接着剤層(16)、熱溶着層(18)をこの順に設けたものである。
基材層(21)は、東洋紡績(株)製、PET、ポリエステルテレフタレートフィルム、E5100、12μm、片面コロナ処理。
遮光層(19)は、透明黄色インキ(14)/紫外線遮光インキ層(15)/透明黄色イ
ンキ(14)。
透明黄色インキ(14)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、R403黄。紫外線遮光インキ層(15)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、UVカットメジウム。
接着剤層(16)は、三井化学(株)製、A−525/A−52、ドライ塗布量2.8g/m
酸素バリア層(17)は、凸版印刷(株)製、GX、酸化珪素蒸着PET、12μm、蒸着面が熱溶着層側。
熱溶着層(18)は、タマポリ(株)製、LLDPE、線状低密度ポリエチレン、TTYC、60μm、片面コロナ処理。
【実施例2】
【0045】
図3の(b)に示す層構成は、実施例2の層構成であって、基材層(21)上に、接着剤層(16)、酸素バリア層(17)、遮光層(19)、接着剤層(16)、熱溶着層(18)をこの順に設けたものである。
基材層(21)は、東洋紡績(株)製、PET、ポリエステルテレフタレートフィルム、E5100、12μm、片面コロナ処理。
遮光層(19)は、透明黄色インキ(14)/紫外線遮光インキ層(15)/透明黄色インキ(14)。
透明黄色インキ(14)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、R403黄。紫外線遮光インキ層(15)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、UVカットメジウム。
接着剤層(16)は、三井化学(株)製、A−525/A−52、ドライ塗布量2.8g/m
酸素バリア層(17)は、凸版印刷(株)製、GX、酸化珪素蒸着PET、12μm、蒸着面が熱溶着層側。
熱溶着層(18)は、タマポリ(株)製、LLDPE、線状低密度ポリエチレン、TTYC、60μm、片面コロナ処理。
【0046】
以下に、本発明の具体的比較例について説明する
【0047】
<比較例1>
図4(a)に示す層構成は、比較例1の層構成であって、基材層(21)の上に、遮光層(20)、接着剤層(16)、酸素バリア層(17)、接着剤層(16)、熱溶着層(18)をこの順に設けたものである。
基材層(21)は、東洋紡績(株)製、PET、ポリエステルテレフタレートフイルム、E5100、12μm、片面コロナ処理。
遮光層(20)は、透明黄色インキ(14)/透明黄色インキ(14)/紫外線遮光インキ層(15)。
透明黄色インキ(14)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、R403黄。紫外線遮光インキ層(15)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、UVカットメジウム。
接着剤層(16)は、三井化学(株)製、A−525/A−52、ドライ塗布量2.8g/m
酸素バリア層(17)は、凸版印刷(株)製、GX、酸化珪素蒸着PET、12μm、蒸着面が熱溶着層側。
熱溶着層(18)は、タマポリ(株)製、LLDPE、線状低密度ポリエチレン、TTYC、60μm、片面コロナ処理。
【0048】
<比較例2>
図4(b)に示す層構成は、比較例1の層構成であって、基材層(21)の上に、遮光層(20)、接着剤層(22)、酸素バリア層(17)、接着剤層(22)、熱溶着層(18)をこの順に設けたものである。
基材層(21)は、東洋紡績(株)製、PET、ポリエステルテレフタレートフィルム、E5100、12μm、片面コロナ処理。
遮光層(20)は、透明黄色インキ(14)/透明黄色インキ(14)/紫外線遮光インキ層(15)。
透明黄色インキ(14)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、R403黄。紫外線遮光インキ層(15)は、DICグラフィック(株)製、ユニビアNT、UVカットメジウム。
接着剤層(22)は、三井化学(株)製、A−525/A−52、ドライ塗布量3.8g/m
酸素バリアー層(17)は、凸版印刷(株)製、GX、酸化珪素蒸着PET、12μm、蒸着面が熱溶着層側。
熱溶着層(18)は、タマポリ(株)製、LLDPE、線状低密度ポリエチレン、TTYC、60μm、片面コロナ処理。
【0049】
上記実施例、比較例で得られた遮光性積層包装材料に対して、
遮光性について、波長380nm480nmに於ける光線透過率を測定した。
透明性について、接着剤にてドライラミネート後の遮光性積層包装材料をエージング後にヘイズメーターを用いてヘイズ(濁度)を測定した。
外観について、エージング後、巻き外部の外観を目視で確認した。
その結果を表1に示す。すなわち、実施例1、2では、比較例1、2に比べ、可視光線領域において、透明性が高いため、中の輸液バッグの文字が容易に視認できた。
【0050】
【表1】

【符号の説明】
【0051】
2、熱可塑性樹脂フイルム基材
3、透明着色インキ層
4、紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層
5、(3)、(4)、(3)をこの順に積層してなる遮光層
6、接着剤層
7、酸素バリア層
8、熱溶着層
11、紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層よりなる遮光層
12、図5(a)の層構成の遮光性積層包装材料での各波長に対する光線透過率曲線
13、図5(b)の層構成の遮光性積層包装材料での各波長に対する光線透過率曲線
14、透明黄色インキ層
15、紫外線遮光インキ層
16、本発明の実施例1、2および比較例1の遮光性積層包装材料の接着剤層
17、本発明の実施例1、2および比較例1、2の酸素バリア層
18、本発明の実施例1、2、比較例1、2の熱溶着層
19、本発明の実施例1、2の遮光性積層包装材料の(14)、(15)、(14)をこの順に積層してなる遮光層
20、本発明の比較例1、2の遮光性積層包装材料の(14)、(14)、(15)をこの順に積層してなる遮光層
21、本発明の実施例1、2、比較例1、2の熱可塑性樹脂フィルム基材
22、本発明の比較例1の遮光性積層包装材料の接着剤層
32、特許文献1に係る輸液容器用遮光カバー
33、特許文献1に係る輸液容器
34、特許文献1に係る輸液容器用遮光カバーの視認用窓部
35、特許文献1に係る輸液容器のフック
36、特許文献1に係る輸液容器の液取り出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線領域および短波長可視光線領域の光線を遮光する遮光性積層包装材料であって、
熱可塑性樹脂フィルムと熱溶着層との間に、遮光層と酸素バリア層とを、任意の順序で介在させて構成されており、
前記遮光層が、2層の透明着色インキ層の間に紫外線吸収剤含有の紫外線遮光インキ層をはさんだサンドイッチ構造の層であり、
かつ、波長340nmの平行透過光の透過率が2パーセント未満、波長480nmの平行透過光の透過率が1パーセント未満、ヘイズ値が35%未満であることを特徴とする遮光性積層包装材料。
【請求項2】
前記紫外線遮光インキ層中の紫外線吸収剤が、平均粒径が0.4μm以上の無機金属微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の遮光性積層包装材料。
【請求項3】
前記透明着色インキ層が、透明黄色インキ、透明オレンジ色インキ、透明赤色インキのいずれかひとつ、または、これらの混色であることを特徴とする請求項1または2に記載の遮光性積層包装材料。
【請求項4】
前記遮光層が接着剤層に隣接して積層されており、この遮光層に隣接する接着剤層の乾燥時塗布量が3g/m未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮光性積層包装材料。

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−75453(P2013−75453A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217191(P2011−217191)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】