説明

遮光性組成物及びカラーフィルター

【課題】遮光性が高く、絶縁性や分散安定性に優れた遮光性組成物及びこれを用いて形成されるカラーフィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を必須成分とする着色材を固形分中40重量%以上含有する遮光性組成物において、その硬化膜の光学濃度が膜厚1μmにおいて2.0以上である。


(但し、R1、及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を示し、Xは水素原子又はハロゲン原子を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性組成物及びこれを用いて形成されるカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーフィルターは液晶ディスプレイ等のカラー化の目的に広く用いられており、一般に赤、緑、青の三原色の画素がモザイク様に配置された形態で使用されている。これらの画素の間には、表示コントラストを高めるために遮光性を持つ領域を設けることが通常行われ、これは黒色の格子様に見えることからブラックマトリクスと称されている。
【0003】
ブラックマトリクスの製造方法は、(A)クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属薄膜を蒸着等により形成し、これをエッチングして製造する方法、(B)カーボンブラック、チタンブラック等の高遮光性の着色材を分散させた感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーによって製造する方法、に大別される。(A)の方法は、コストが比較的高く、また大型の基板での製造が困難であるため、近年(B)の方法への転換が進んでいる。(B)の方法は広く用いられているが、着色材としてカーボンブラックを用いる場合は、IPS駆動方式やSTN駆動方式の液晶ディスプレイにおいて必要とされる絶縁性を維持することが困難であるという課題がある。また、着色材としてチタンブラックを用いる場合は、比重の大きなチタンブラックの分散安定化が困難であり、かつコストが高いという問題も生じている。
【0004】
そこで、絶縁性が高く、分散安定性やコストに優れる着色材として、有機顔料を適用することが検討されている。例えば、特許文献1(特許第2552391号公報)や特許文献2(特許第3700398号公報)には、黒色有機顔料の使用や、複数の有機顔料の組み合わせにより擬似黒色化した混色有機顔料の使用が開示されている。しかし、一般的な有機顔料を着色材として用いた場合は、ブラックマトリクスとしての使用には不十分な遮光性しか得られないため、これらの文献に記載の発明では、遮光性を担保するためにカーボンブラックやチタンブラック等を併用することが実質的に必要とされている。そのため、上記の課題はいまだ解決に至っていない。
【0005】
一方、有機顔料のひとつとして、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料が知られている。ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は、高い着色力と鮮明な色相を特徴としており、特許文献3(特開2005−49636号公報)、特許文献4(特開2005−242123号公報)及び特許文献5(特開2006−53329号公報)には、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料をカラーフィルター用の着色材として適用することが開示されている。しかし、これらの文献に記載の発明では、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は青色画素の色特性(明度、彩度等)を向上させるための着色材として使用されていることから、着色材の配合量は実質的に固形分中40重量%より少ない含有量を好ましい範囲として例示しており、本発明とは目的や実施の形態が異なっている。さらに、特許文献1〜5に記載のいずれの発明においても、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料の遮光性着色材としての利用は何ら示唆されておらず、ブラックマトリクスの着色材としてのベンズイミダゾロンジオキサジン顔料の使用についても何も示されていない。
【特許文献1】特許第2552391号公報
【特許文献2】特許第3700398号公報
【特許文献3】特開2005−49636号公報
【特許文献4】特開2005−242123号公報
【特許文献5】特開2006−53329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、遮光性が高く、絶縁性や分散安定性に優れた遮光性組成物及びこれを用いて形成されたカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために検討した結果、本発明者等は、特定の有機顔料が目的の遮光性組成物の着色材として適しており、この有機顔料を所定量含有させた遮光性組成物がブラックマトリクスの形成に好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を必須成分とする着色材を固形分中40重量%以上含有する遮光性組成物において、遮光性組成物を硬化させた硬化膜の光学濃度が膜厚1μmにおいて2.0以上であることを特徴とする遮光性組成物である。
【化1】

(但し、R1、及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を示し、Xは水素原子又はハロゲン原子を示す)
【0009】
ここで、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は、着色材中30重量%以上含まれることが好ましく、さらに、黄色、橙色、赤色又は茶色から選ばれた少なくとも1種の有機顔料を着色材中1〜70重量%含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記遮光性組成物において、固形分中、感光性樹脂を5〜50重量%及び光重合開始剤を1〜10重量%含有した、フォトリソグラフィーによって画像形成が可能なカラーフィルター用遮光性組成物である。ここで、カラーフィルター用遮光性組成物を硬化させた硬化膜の体積抵抗率は1014Ω・cm以上であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、上記のカラーフィルター用遮光性組成物の硬化膜を有するカラーフィルターである。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の遮光性組成物は、一般式(1)で示されるベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を必須成分とする着色材を固形分中40重量%以上含有してなる。ここで、着色材とは、顔料、染料等をいう。また、固形分とは、遮光性組成物中の溶剤以外の成分をいい、遮光性組成物の硬化膜の形成に寄与する成分を意味する。本発明の遮光性組成物は、着色材を固形分中40重量%以上含有することが必要であるが、遮光性を高める点で50重量%以上含有することが好ましく、60重量%以上含有することがより好ましい。なお、本発明の遮光性組成物は必要に応じて着色材や溶剤以外の成分を含むことができ、例えば樹脂類や分散剤等を配合することができる。
【0013】
本発明の遮光性組成物は、その硬化膜の光学濃度が膜厚1μmにおいて2.0以上であることを特徴とする。光学濃度は、一般に透過率の逆数の常用対数で定義される数値であるが、市販の光学濃度計(グレタグマクベス社製「D200−II」等)によって容易に測定値を得ることもできる。本発明の遮光性組成物は、その硬化膜の光学濃度が膜厚1μmにおいて2.0以上であることが必要であるが、2.2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。光学濃度は遮光性の指標であり、単位膜厚当たりの光学濃度が高いほど遮光性は高いといえる。また、硬化膜の膜厚を高めることでより高い光学濃度を得ることもでき、本発明の遮光性組成物においては、1.5μmの膜厚を形成した場合は光学濃度3.0以上を、2.0μmの膜厚を形成した場合は光学濃度4.0以上を実現することが可能である。
【0014】
本発明の遮光性組成物は、光学濃度の評価のため、膜厚1μmの硬化膜を形成できるものであることが要請される。その硬化膜の最も標準的な製法としては、遮光性組成物を基板等に塗布し、100mJ/cm2の紫外光照射、及び230℃で20分の加熱焼成を行って硬化させる方法が挙げられ、こうして得られた硬化膜を光学濃度計で測定すれば、目的の光学濃度を求めることができる。遮光性組成物を塗布する方法としては公知の方法が利用でき、例えば、スピンコーター、バーコーター、スリットコーター等による塗布を挙げることができる。ここで、遮光性組成物が溶剤を含む場合、塗布後にホットプレートや減圧乾燥機等を用いて遮光性組成物の乾燥を行うことが好ましい。次に、硬化の方法も公知の方法が利用でき、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯等を光源とする紫外光照射、及びホットプレート、熱風オーブン等による加熱焼成を挙げることができる。なお、前述の100mJ/cm2の紫外光照射、及び230℃で20分の加熱焼成は最も標準的な硬化条件であるが、遮光性組成物の実際の使用においては、これらの条件は用いる基板の性状や遮光性組成物の硬化膜の利用形態に合わせて適宜調整されたものであってもよい。例えば、光硬化については10〜1000mJ/cm2の紫外光照射、熱硬化については200〜250℃で20〜60分の加熱焼成を行ってもよく、もちろん両方の硬化方法を併用してもよいし、場合によっては片方の硬化方法のみであってもよい。
【0015】
本発明で使用するベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は、一般式(1)で示される構造を有し、7つの縮環構造に由来する特徴的な可視光中波長領域の吸収を示す。ここで、R1、及びR2は水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではないが、水素原子または炭素数4以下のアルキル基であることが好ましい。1価の炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基等を挙げることができ、置換基の具体的な例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、Xは水素原子又はハロゲン原子を示すが、ハロゲン原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。これらベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。遮光性を高めるため、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は着色材中30重量%以上含まれることが好ましく、50重量%以上含まれることがより好ましい。
【0016】
上記の構造を有するベンズイミダゾロンジオキサジン顔料のうち、特に好ましいものとしては、R1が水素原子、R2がエチル基、及びXが塩素原子であるピグメント・ブルー80が挙げられる。ピグメント・ブルー80の市販品の例としては、クラリアント社製「Hostaperm Blue R5R VP2548」、「Hostaperm Blue R5R 01 VP3317」、「Hostaperm Blue R5R−WD」がある。
【0017】
本発明の遮光性組成物には、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料以外の着色材(以下「その他の着色材」という)を配合することもできる。その他の着色材としては、公知の顔料、染料等を用いることができるが、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、カルバゾールジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料等に代表される絶縁性の有機顔料が好ましく、特に、黄色、橙色、赤色又は茶色から選ばれた少なくとも1種の有機顔料を着色材中70重量%以下、より好ましくは着色材中50重量%以下の範囲で含有することが有利である。黄色、橙色、赤色ならびに茶色の有機顔料としては、例えば、ピグメント・イエロー1、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同55、同73、同74、同81、同83、同93、同95、同97、同109、同110、同111、同117、同120、同126、同127、同128、同129、同130、同136、同138、同139、同150、同151、同153、同154、同155、同173、同174、同175、同176、同180、同181、同183、同185、同191、同194、同199、同213、同214、ピグメント・オレンジ5、同13、同16、同34、同36、同38、同43、同61、同62、同64、同67、同68、同71、同72、同73、同74、同81、ピグメント・レッド2、同3、同4、同5、同9、同12、同14、同22、同23、同31、同38、同112、同122、同144、同146、同147、同149、同166、同168、同170、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同188、同202、同207、同208、同209、同210、同213、同214、同220、同221、同242、同247、同253、同254、同255、同256、同257、同262、同264、同266、同272、同279、ピグメント・ブラウン23、同25、同41等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、その他の着色材を配合する場合、その目的を実質的に果たすための下限は着色材中1重量%である。
【0018】
本発明の遮光性組成物において、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料が着色材の必須成分として選ばれる理由は、特徴的な可視光中波長領域の吸収に基づく高い着色力により、有機顔料として際立った遮光性が得られることによる。また、その他の着色材として、黄色、橙色、赤色又は茶色から選ばれた少なくとも1種の有機顔料を併用することにより、吸収波長領域の分布を最適化して一層遮光性を高めることができる。なお、着色材にベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を使用せずに、それ以外の有機顔料を用いて遮光性組成物を構成した場合は、一般に遮光性が不足し、膜厚1μmにおける硬化膜の光学濃度は2.0に達しない。
【0019】
本発明の遮光性組成物には、遮光性をさらに向上させるため、その他の着色材としてカーボンブラックやチタンブラックを配合することもできる。ただし、カーボンブラックを含有させた場合はその量に応じて絶縁性の維持が難しくなり、チタンブラックを含有させた場合は同様に分散安定性の維持が問題となる。
【0020】
本発明の遮光性組成物は、その硬化膜の光学濃度が膜厚1μmにおいて2.0以上であることを特徴とするが、これを安定的に達成するために、その他の着色材として黄色、橙色、赤色又は茶色から選ばれた少なくとも1種の有機顔料を使用する場合、固形分中の着色材の配合量P(重量%)と、着色材中のベンズイミダゾロンジオキサジン顔料の配合量Q(重量%)は、次の(2)〜(4)の3式をともに満足すべく設定されることが好ましい。
Q≧30 (2)
P+Q≧90 (3)
5P−2Q≧100 (4)
【0021】
ここで、上記式(2)及び(3)はQの好ましい下限を意味し、上記式(4)はQの好ましい上限を意味する。上記3式からは、少なくともP≧40が必要であること、及びPの増加に伴ってQの自由度が増加し、特にP≧60の領域で有利であることが示される。また、黄色、橙色、赤色又は茶色から選ばれた少なくとも1種の有機顔料を、着色材中(100−Q)重量%含有することが好ましいことが示される。
【0022】
本発明で使用する顔料は、整粒化処理により粒径が整えられたものであることが有利である。整粒化処理としては公知の方法が利用でき、例えば、ソルトミリング法、ソルベントソルトミリング法、アシッドペースティング法、アシッドスラリー法等を挙げることができるが、これらに限定されない。こうして整粒化された顔料の平均粒径は10〜500nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。ここで、顔料の平均粒径が小さすぎる場合は、隠蔽力が低下するために十分な遮光性を得ることが困難となり、逆に大きすぎる場合は、顔料粒子が障害となって表面が平滑な硬化膜を得ることが困難となる。また、顔料の平均粒径を示す指標として比表面積が知られているが、本発明で使用する顔料の比表面積は10〜150m2/gであることが好ましく、30〜100m2/gであることがより好ましい。なお、本発明で使用する顔料とは、一般式(1)で示されるベンズイミダゾロンジオキサジン顔料のほか、必要に応じてその他の着色材を配合する場合には、それに用いる顔料も含めて考えるものとする(以下についても同様)。
【0023】
また、本発明で使用する顔料は、分散安定性を向上させるため、表面処理がなされたものであることが好ましい。表面処理としては公知の方法が利用でき、例えば、ロジン処理、顔料誘導体処理、酸・塩基処理、プラズマ処理、カプセル化処理等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の遮光性組成物には、硬化膜の形成を容易にさせるため、樹脂類を配合することができる。使用できる樹脂類は、公知の高分子化合物や高粘度化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばビニル樹脂(アクリル酸(共)重合体、メタクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体、スチレン(共)重合体等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができるが、構造中にカルボキシル基やフェノール性水酸基等のアルカリ溶解性官能基を有してアルカリ現像性を持つものや、グリシジル基やイソシアネート基等の反応性官能基を有して熱硬化性を持つものが好ましい。これら樹脂類の配合量は特に限定されるものではないが、固形分中5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。なお、ここでいう樹脂類には、後述する感光性樹脂も含まれる。
【0025】
本発明の遮光性組成物には、上記顔料等の着色材を安定して分散させるため、分散剤を配合することができる。使用できる分散剤は、公知の分散剤や分散促進剤等であれば特に限定されるものではなく、例えば、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)等を挙げることができるが、特に、顔料への吸着点として、イミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級又は三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、平均分子量が1千〜10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤が好ましい。このようなカチオン性高分子系分散剤の例は、特開平9−169821号公報に開示されている。これら分散剤の配合量は特に限定されるものではないが、固形分中1〜25重量%であることが好ましく、2〜15重量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は一般に分散を安定させる作用をも有するが、分散促進能を有しないものは分散剤とは扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。また、上記顔料誘導体型分散剤が顔料骨格に由来する着色を有する場合は、該顔料誘導体型分散剤は着色材の一部としても機能する。
【0026】
本発明の遮光性組成物には、着色材の分散安定性や遮光性組成物の塗布性を向上させるため、溶剤を配合することができる。溶剤としては、公知の溶剤を特に制限なく用いることができ、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、モノグライム、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエーテルエステル類、グリコール酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアルコールエステル類、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族系溶剤、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素系溶剤等を挙げることができる。これら溶剤の配合量は特に限定されるものではないが、固形分に対して100〜1900重量%(遮光性組成物中50〜95重量%)であることが好ましく、150〜900重量%(遮光性組成物中60〜90重量%)であることがより好ましい。
【0027】
また、本発明の遮光性組成物は、必要に応じてさらに任意の成分を含むことができ、例えば、フィラーや添加剤等を配合することもできる。なお、添加剤としては、硬化剤、架橋剤、界面活性剤、シランカップリング剤、粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の遮光性組成物の製法は特に限定されるものではないが、例えば顔料等の着色材を(好ましくは分散剤を用いて)樹脂類や溶剤等に分散させることにより作製する方法を挙げることができる。なお、着色材を分散させる方法としては公知の方法が利用でき、例えば、ニーダー、アトライター、ロールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ディスパーザー等による分散加工処理を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明のカラーフィルター用遮光性組成物は、感光性樹脂を固形分中に5〜50重量%含有すると共に、光重合開始剤を固形分中に1〜10重量%含有することで、フォトリソグラフィーによって画像形成が可能であることを特徴とする。ここで、フォトリソグラフィーとは、遮光性組成物を塗布、乾燥して得た塗布膜にフォトマスク等を介して選択的に光照射(画像露光)を行い、光照射部を光エネルギーによって硬化せしめた後、現像によって光照射されない部分を除去することにより画像を得る方法をいい、特にネガ型のフォトリソグラフィーと呼ばれる方法を指す。
【0030】
本発明で使用する、一般式(1)で示されるベンズイミダゾロンジオキサジン顔料は、380nm未満の紫外光波長領域に透過性を有する。そのため、本発明のカラーフィルター用遮光性組成物は、紫外光照射によるフォトリソグラフィーに非常に適している。カーボンブラックを着色材とするカラーフィルター用遮光性組成物は広く用いられているが、カーボンブラックは紫外光をほとんど透過しないため、紫外光照射によるフォトリソグラフィーは本質的に困難である。とりわけ、1.5μm以上といった比較的高い膜厚での画像形成は、カーボンブラックを着色材とする場合には塗布膜の深部を光硬化させることができないために大きな障害となる。ところが、本発明のカラーフィルター用遮光性組成物は、そのような高い膜厚においても塗布膜の深部まで十分に光硬化するために画像形成はきわめて容易であり、厚膜のブラックマトリクスの形成にも適して用いることができる。このような厚膜のブラックマトリクスの例としては、インクジェット法によるカラーフィルターの形成において、画素の隔壁の機能を持たせるために必要とされるものがある。
【0031】
本発明で使用する感光性樹脂は、光重合性樹脂、光重合性モノマー又は光重合性オリゴマーのうちの少なくとも1種から選ばれるものであればよいが、硬化した状態で樹脂となるものであればよく、未硬化の状態ではモノマーやオリゴマーのような樹脂化していない成分のみを含むものであってもよい。感光性樹脂としては、公知の光重合性樹脂、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーをいずれも好ましく用いることができるが、特にアクリル酸及びメタクリル酸(以下、両者をあわせて「(メタ)アクリル酸」等という)の誘導体が好ましく、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシポリ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エポキシエステル類等を挙げることができる。また、上記の(メタ)アクリル酸化合物類と、構造中に(好ましくは複数の)イソシアネート基や酸無水物基等を有する化合物との反応生成物等も好適である。さらに、公知の樹脂類であるビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂等の主鎖又は側鎖に、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等により(メタ)アクリロイル基を導入した樹脂類等も例示することができる。なお、(メタ)アクリル酸誘導体以外では、マレイン酸誘導体、マレイミド誘導体、クロトン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ビニルアルコール誘導体等も用いることができる。これらの感光性樹脂は、カラーフィルター用遮光性組成物の露光感度等に応じて適宜選ばれればよく、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、構造中にカルボキシル基やフェノール性水酸基等のアルカリ溶解性官能基を有してアルカリ現像性を持つものであることが好ましい。これら感光性樹脂の配合量は固形分中5〜50重量%であることが必要であるが、7〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。ここで、感光性樹脂の配合量が少なすぎる場合は、遮光性組成物の感光性が低く、フォトリソグラフィーによって画像を得ることが困難となる。一方、感光性樹脂の配合量が多すぎる場合は、相対的に着色材の配合量が少なくなって遮光性が不十分となる。
【0032】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤をいずれも好ましく用いることができ、例えば、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4′−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−tert−ブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2−メチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン類、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[3,4−(メチレンジオキシ)フェニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン類、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の有機過酸化物類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等の硫黄化合物類、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のリン化合物類、1−[4−(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン−1,2−ジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)エタノン−1−O−アセチルオキシム等のオキシムエステル類、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール等のビイミダゾール類等を挙げることができるが、高い感光性が得られる点でトリアジン類やオキシムエステル類が特に好ましい。これらの光重合開始剤はカラーフィルター用遮光性組成物の露光感度等に応じて適宜選ばれればよく、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これら光重合開始剤の配合量は固形分中1〜10重量%であることが必要であるが、2〜8重量%であることが好ましく、3〜6重量%であることがより好ましい。ここで、光重合開始剤の配合量が少なすぎる場合は、遮光性組成物の感光性が低く、フォトリソグラフィーによって画像を得ることが困難となる。一方、光重合開始剤の配合量が多すぎる場合は、相対的に着色材の配合量が少なくなって遮光性が不十分となる。
【0033】
本発明のカラーフィルター用遮光性組成物の硬化膜は、体積抵抗率が1014Ω・cm以上であることが好ましい。体積抵抗率は絶縁性の指標であり、体積抵抗率が高いほど絶縁性は高いといえる。体積抵抗率の測定は公知の方法により行えばよいが、硬化膜を導電性の金属蒸着膜で挟み、各金属蒸着膜に電極をそれぞれ接続し、微少電流計(アドバンテスト社製「R8340A」等)によって測定を行う方法が好ましい。なお、着色材にベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を使用せずに、カーボンブラックを用いてカラーフィルター用遮光性組成物を構成した場合は、一般に絶縁性が低下し、硬化膜の体積抵抗率は1014Ω・cmに達しない。
【0034】
本発明のカラーフィルター用遮光性組成物の製法は特に限定されるものではないが、顔料等の着色材を(好ましくは分散剤を用いて)溶剤等に分散させた分散液をあらかじめ調製し、これに感光性樹脂や光重合開始剤を配合してカラーフィルター用遮光性組成物を作製する方法が有利である。また、感光性樹脂等を溶剤に溶解させた感光性樹脂組成物中に着色材を分散させてカラーフィルター用遮光性組成物を作製する方法もあるが、得られるカラーフィルター用遮光性組成物の安定性の点で前者の方法が好ましい。
【0035】
本発明のカラーフィルター用遮光性組成物は、基板等に塗布し、紫外光照射、加熱焼成等で硬化させることによって硬化膜を得ることができる。カラーフィルター用遮光性組成物を塗布する方法としては公知の方法が利用でき、例えば、スピンコーター、バーコーター、スリットコーター等による塗布を挙げることができる。また、塗布後は、ホットプレートや減圧乾燥機等を用いてカラーフィルター用遮光性組成物の乾燥を行うことが好ましい。但し、塗布及び乾燥の方法は上記に限定されない。
【0036】
紫外光照射による硬化の方法も公知の方法が利用でき、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯等を光源とする紫外光照射を挙げることができる。かかる紫外光照射を行う際、フォトマスク等を用いて画像露光を行い、さらに現像液で処理することにより基板上に画像を形成することができる。現像液としては、未露光部分を溶解し露光部分を溶解しない現像液であれば特に制限はないが、種々の添加剤を含むアルカリ水溶液であることが好ましい。ここで、現像液のアルカリ成分としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、四級アンモニウムの水酸化物等を、添加剤としては、例えば、有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、防カビ剤等を挙げることができる。現像方法についても公知の方法が利用でき、例えば、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等を挙げることができる。紫外光照射及び現像の方法も特に限定されるものではない。
【0037】
さらに、硬化膜の強度を高めるため、紫外光照射後に加熱焼成を行うことが好ましい。加熱焼成の方法も公知の方法が利用でき、例えば、ホットプレート、熱風オーブン等による処理を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
カラーフィルター用遮光性組成物の硬化条件については特に制約はないが、光硬化については10〜1000mJ/cm2の紫外光照射、熱硬化については200〜250℃で20〜60分の加熱焼成を行うことが好ましい。
【0039】
なお、上記のカラーフィルター用遮光性組成物の硬化膜を用いてカラーフィルターを作製する方法としては、公知の方法を利用できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の遮光性組成物は、ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を着色材の必須成分とすることで高い遮光性を実現し、さらに絶縁性や分散安定性に優れる点で極めて有用である。また、本発明のカラーフィルター用遮光性組成物を用いて形成されるカラーフィルターは、高い遮光性と高い絶縁性を特徴とするブラックマトリクスを有するため、特にIPS駆動方式やSTN駆動方式における高品位な液晶ディスプレイの製造を可能にする点で極めて有用である。さらに、本発明のカラーフィルター用遮光性組成物は、1.5μm以上といった比較的高い膜厚でも画像形成が容易であるため、インクジェット法等で要求される厚膜のブラックマトリクスの形成にも適して用いることができる。加えて、本発明のカラーフィルター用遮光性組成物は誘電率が非常に低い特徴をも有するため、アレイ基板上へのカラーフィルター形成(カラーフィルター・オン・アレイ)にも好適である。
【0041】
また、本発明の遮光性組成物は、カラーフィルター用以外にも、塗料用、印刷インキ用、筆記具インキ用、プラスチック用の着色成分等としても有用であり、絶縁性材料として回路配線等の用途や、可視光選択吸収性材料として光学フィルター等の用途にも用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、以下における「部」はいずれも重量部を示す。
【0043】
[実施例1]
(遮光性組成物の作製)
ピグメント・ブルー80(クラリアント社製「Hostaperm Blue R5R VP2548」、着色材)60.0部、カチオン性高分子系分散剤(味の素ファインテクノ社製「アジスパー PB821」)20.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)320.0部を配合し、ペイントシェーカーを用いて3時間の分散加工処理を行い、分散液を調製した。ここで、ペイントシェーカーのメディアには、0.4mmφジルコニアビーズを充填率20%で用いた。次に、ビスフェノールフルオレン型エポキシジアクリレート構造を有するアルカリ現像型感光性樹脂の56.5重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(新日鐵化学社製「V−259ME」)11.9部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(感光性樹脂)6.8部、1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)エタノン−1−O−アセチルオキシム(光重合開始剤)5.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)14.8部、プロピレングリコールジアセテート(溶剤)60.0部、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」)0.5部、及び3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)1.0部を配合し、十分に攪拌して感光性樹脂組成物を調製した。これに、上記の分散液を混合し、さらに十分に攪拌して、着色材を固形分中60重量%有するカラーフィルター用遮光性組成物500.0部を作製した。
【0044】
(モデルカラーフィルターの作製)
上記のカラーフィルター用遮光性組成物を、5インチ角、厚さ1mmのガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、試験片を作成した。このとき、スピン回転数を調節して、作製される硬化膜の膜厚が1.0μmとなるように塗布条件を制御した。次に、この試験片を80℃のホットプレート上で3分間処理し、カラーフィルター用遮光性組成物を乾燥させてその塗布膜を得た。塗布膜にフォトマスクを被せて、高圧水銀灯により100mJ/cm2の紫外光を照射し画像露光を行い、さらにアルカリ現像液(新日鐵化学社製「V−2401ID」の10倍希釈液)で処理し、水洗して画像を現像させた。最後に試験片を230℃の熱風オーブン中で20分間焼成して硬化膜を得て、種々の線幅で構成されたブラックマトリクスやライン&スペースの画像等を有したモデルカラーフィルターを作製した。
【0045】
こうして得られた硬化膜の光学濃度をグレタグマクベス社製「D200−II」により測定したところ、その値は2.0であった。また、得られた硬化膜を光学顕微鏡により観察し、形成された最小のライン&スペースの画像から画像形成能を評価したところ、その値は5μmであった(値が小さいほうが優れる)。さらに、ガラス基板に替えてアルミニウム蒸着基板を使用して同様に硬化膜を作製し、その上にさらにアルミニウムを蒸着させ、アドバンテスト社製「R8340A」により印加電圧5Vで体積抵抗率の測定を行ったところ、その値は2×1015Ω・cmであった。着色材の種類等と共に、これらの結果をまとめて表1に示す。
【0046】
[実施例2〜4]
実施例1で用いた着色材を表1に示すように変更し、その他は実施例1と同様にして、カラーフィルター用遮光性組成物及びモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、いずれも遮光性や絶縁性に優れる高品質なモデルカラーフィルターが得られた。結果を表1に示す。なお、例えば実施例2で用いた着色材について、表1で示す「PB80/PY139=70/30」とは、着色材中PB80が70重量%、PY139が30重量%含まれることを意味し、これ以外についても同様の趣旨である。
【0047】
【表1】

【0048】
[実施例5]
ピグメント・ブルー80(クラリアント社製「Hostaperm Blue R5R VP2548」、着色材)35.0部、ピグメント・イエロー139(BASF社製「Paliotol Yellow D 1819」、着色材)15.0部、カチオン性高分子系分散剤(味の素ファインテクノ社製「アジスパー PB821」)16.7部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)266.7部を配合し、実施例1と同様に分散加工処理を行い、分散液を調製した。次に、ビスフェノールフルオレン型エポキシジアクリレート構造を有するアルカリ現像型感光性樹脂の56.5重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(新日鐵化学社製「V−259ME」)22.4部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(感光性樹脂)12.6部、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「ESF−300」)2.5部、1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)エタノン−1−O−アセチルオキシム(光重合開始剤)4.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)63.6部、プロピレングリコールジアセテート(溶剤)60.0部、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」)0.5部、及び3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)1.0部を配合し、十分に攪拌して感光性樹脂組成物を調製した。これに、上記の分散液を混合し、さらに十分に攪拌して、着色材を固形分中50重量%有するカラーフィルター用遮光性組成物500.0部を作製した。
【0049】
上記のカラーフィルター用遮光性組成物を用い、実施例1と同様にモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、遮光性や絶縁性に優れる高品質なモデルカラーフィルターが得られた。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例6〜8]
実施例5で用いた着色材を表1に示すように変更し、その他は実施例5と同様にして、カラーフィルター用遮光性組成物及びモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、いずれも遮光性や絶縁性に優れる高品質なモデルカラーフィルターが得られた。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例9]
ピグメント・ブルー80(クラリアント社製「Hostaperm Blue R5R VP2548」、着色材)20.0部、ピグメント・イエロー139(BASF社製「Paliotol Yellow D 1819」、着色材)20.0部、カチオン性高分子系分散剤(味の素ファインテクノ社製「アジスパー PB821」)13.3部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)213.3部を配合し、実施例1と同様に分散加工処理を行い、分散液を調製した。次に、ビスフェノールフルオレン型エポキシジアクリレート構造を有するアルカリ現像型感光性樹脂の56.5重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(新日鐵化学社製「V−259ME」)34.3部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(感光性樹脂)19.4部、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「ESF−300」)3.9部、1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)エタノン−1−O−アセチルオキシム(光重合開始剤)2.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)111.8部、プロピレングリコールジアセテート(溶剤)60.0部、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」)0.5部、及び3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)1.0部を配合し、十分に攪拌して感光性樹脂組成物を調製した。これに、上記の分散液を混合し、さらに十分に攪拌して、着色材を固形分中40重量%有するカラーフィルター用遮光性組成物500.0部を作製した。
【0052】
上記のカラーフィルター用遮光性組成物を用い、実施例1と同様にモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、遮光性や絶縁性に優れる高品質なモデルカラーフィルターが得られた。結果を表1に示す。
【0053】
[参考例1]
実施例7のカラーフィルター用遮光性組成物を用い、作製される硬化膜の膜厚が1.5、2.0、2.5、及び3.0μmとなるように塗布条件を変更した以外は実施例1と同様にして、それぞれの膜厚のモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度及び画像形成能を実施例1と同様にして測定したところ、光学濃度は3.3(膜厚1.5μm)、4.2(膜厚2.0μm)、5.1(膜厚2.5μm)、5.9(膜厚3.0μm)、画像形成能は3μm(膜厚1.5μm)、3μm(膜厚2.0μm)、5μm(膜厚2.5μm)、及び5μm(膜厚3.0μm)であり、いずれも高品質な厚膜のブラックマトリクスを有するモデルカラーフィルターが得られた。
【0054】
[参考例2]
実施例7のカラーフィルター用遮光性組成物を銅箔上に塗布し、実施例1と同様の操作によって膜厚2.0μmの硬化膜を作製した。この硬化膜について、LCRメータ(アジレント・テクノロジー社製「4284A」)による静電容量測定を行って比誘電率を算出したところ、その値は20Hzから1MHzの範囲において3.7から2.7と非常に低いものであった。
【0055】
[比較例1〜4]
実施例1で用いた着色材を表1に示すように変更し、その他は実施例1と同様にして、カラーフィルター用遮光性組成物及びモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、硬化膜の遮光性は低く、モデルカラーフィルターの性能は不十分なものであった。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例5]
ピグメント・ブルー80(クラリアント社製「Hostaperm Blue R5R VP2548」、着色材)15.0部、ピグメント・イエロー139(BASF社製「Paliotol Yellow D 1819」、着色材)15.0部、カチオン性高分子系分散剤(味の素ファインテクノ社製「アジスパー PB821」)10.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)160.0部を配合し、実施例1と同様に分散加工処理を行い、分散液を調製した。次に、ビスフェノールフルオレン型エポキシジアクリレート構造を有するアルカリ現像型感光性樹脂の56.5重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(新日鐵化学社製「V−259ME」)45.5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(感光性樹脂)25.7部、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「ESF−300」)5.1部、1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)エタノン−1−O−アセチルオキシム(光重合開始剤)2.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)160.2部、プロピレングリコールジアセテート(溶剤)60.0部、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」)0.5部、及び3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)1.0部を配合し、十分に攪拌して感光性樹脂組成物を調製した。これに、上記の分散液を混合し、さらに十分に攪拌して、着色材を固形分中30重量%有するカラーフィルター用遮光性組成物500.0部を作製した。
【0057】
上記のカラーフィルター用遮光性組成物を用い、実施例1と同様にモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、硬化膜の遮光性は低く、モデルカラーフィルターの性能は不十分なものであった。結果を表1に示す。
【0058】
[比較例6]
比較例5で用いた着色材をカーボンブラック(三菱化学社製「MA100」)に変更し、その他は比較例5と同様にして、カラーフィルター用遮光性組成物及びモデルカラーフィルターを作製した。そして、得られた硬化膜について、光学濃度、画像形成能、及び体積抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、硬化膜の遮光性は良好であったが、絶縁性は不十分なものであった。結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の遮光性組成物は、カラーフィルターの形成に適して用いることができ、特にブラックマトリックスの形成に好適である。また、本発明の遮光性組成物は、カラーフィルター用以外にも、例えば、塗料用、印刷インキ用、筆記具インキ用、プラスチック用の着色成分等として有用であり、絶縁性材料として回路配線等の用途や、可視光選択吸収性材料として光学フィルター等の用途にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を必須成分とする着色材を固形分中40重量%以上含有する遮光性組成物において、遮光性組成物を硬化させた硬化膜の光学濃度が膜厚1μmにおいて2.0以上であることを特徴とする遮光性組成物。
【化1】

(但し、R1、及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を示し、Xは水素原子又はハロゲン原子を示す)
【請求項2】
ベンズイミダゾロンジオキサジン顔料を着色材中30重量%以上含有する請求項1記載の遮光性組成物。
【請求項3】
黄色、橙色、赤色又は茶色から選ばれた少なくとも1種の有機顔料を着色材中1〜70重量%含有する請求項1又は2記載の遮光性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の遮光性組成物において、固形分中、感光性樹脂を5〜50重量%及び光重合開始剤を1〜10重量%含有し、フォトリソグラフィーによって画像形成が可能であることを特徴とするカラーフィルター用遮光性組成物。
【請求項5】
カラーフィルター用遮光性組成物を硬化させた硬化膜の体積抵抗率が1014Ω・cm以上であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルター用遮光性組成物。
【請求項6】
請求項4又は5記載のカラーフィルター用遮光性組成物の硬化膜を有するカラーフィルター。

【公開番号】特開2008−257204(P2008−257204A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37267(P2008−37267)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】