説明

遮光用コーティング材、基材フィルム、農業ハウス用コーティング材、及び農業ハウス

【課題】 農業用ハウス内果実の保護及び農業ハウス内温度、特に地温の調節に役立つとともに農業ハウス表面の保護にも好適な遮光用コーティング材、基材フィルム、農業用ハウスコーティング材、及び農業ハウスを提供する。
【解決手段】 顔料とアクリレート系ラテックスを主成分とする遮光用コーティング材において、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を顔料として配合することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリレート系ラテックスと二酸化チタン・炭酸カルシウム複合顔料を配合した白色の塗工層を形成させることができ、これによってハウス内果実の保護、ハウス内温度、特に地温の調節及び基材(基材フィルム、ハウスフィルムを含む)の保護に好適に用いることができる遮光用コーティング材・農業ハウス用コーティング材、このようなコーティング材を塗布した基材、及びこのような基材を用いて構築した農業ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
果実栽培において農業ハウスは太陽光を透過するとともに、太陽で温められた熱は逃がさない性質を持つため、作物の成長を促進する効果があり、農家において幅広く用いられている。しかし、果皮が薄く柔らかい果実の場合、春から夏、初秋にかけて強烈な日差しの下では果実に日焼け症、葉焼け症等が発生し、落果・品質低下を招く他、地温の急激な上昇から、土壌乾燥や雑草繁茂、土中微生物の活発化による土中の酸素不足等のために根の活力低下が起こるため、これらの症状を発生させずに発育させるための管理法が必要となってくる。
【0003】
そこで考案されたのが、ハウス表面に均一な遮光皮膜を形成させる方法である。該方法によれば、ハウス内の日射量を抑制し、ハウス内地温を効果的に下げるとともに、人的作業はハウス表面へのコーティング材の散布のみで済むため、作業性の改善が計れる等の利点がある。
【0004】
このコーティング材の顔料としてはクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどが用いられており、この中で炭酸カルシウムは高白色度で製造コストが安い点から多量に使用されている。しかし、炭酸カルシウム自体の屈折率は低く、またバインダーの屈折率とほぼ同じであるため、十分な光散乱力がなく、40%以上の高遮光率を得られなかった。さらに、紫外線をほとんど反射・吸収することがないので、紫外線を頼りに行動するコナジラミ類などの病害虫の発生を促進してしまう。結果としてハウス内は高温となって果実に裂果・病気が発生し、秀品収量率の低下に繋がる。
【0005】
一方、特許文献1(特開2005−34115)に提案されているように二酸化チタンを使用すると、その高い屈折率によって、高遮光率を付与することができるが、他の顔料よりも特に高価であるため、多量に配合すると製造コストが高くなり、使用量が制限される問題がある。
【0006】
また、屋外で二酸化チタンが使用された場合、紫外線の供給により二酸化チタンは光触媒効果として作用して水を分解し、フリーラジカルを生成する、これは極めて強力な酸化剤として働き、二酸化チタン結晶周辺の有機物を酸化分解してしまう。このような酸化分解は、バインダー裂化を促進するため、塗工膜の付着期間が短くなってしまう他、ハウス表面の基材フィルムを腐食し、変色を招く。
【0007】
しかしながら、近年のオゾン層破壊等による光量や紫外線量の増加から遮光性の確保には二酸化チタンの使用は回避できない状況となっているため、上記のような二酸化チタンのチョーキング発生を抑制し、耐候性を向上する手法が求められている。
【特許文献1】特開2005−34115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような状況に鑑み、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を顔料として用い、特に農業ハウス内果実の保護にも好適な遮光用コーティング材、基材フィルム、農業ハウス用コーティング材、及び農業ハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した。
その結果、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を顔料として得られる塗工層を有する基材フィルム(ハウスフィルム)を用いて構築した農業ハウスでは、高い遮光率が得られるとともに農業ハウス内果実の保護と安定成育、農業ハウス内地温の調節に最適であることを見出した。
【0010】
通常、二酸化チタン粒子は50〜100nm程度の小さい粒子であることから、凝集力が強く、塗工層中で十分な分散状態を得られない。
【0011】
したがって、不均一な光散乱状態になってしまい、農業ハウス内に部分的な陰が出来たり、日射量が多くなってしまう難点がある。しかし、本発明に係る農業ハウス用コーティング材では炭酸カルシウム粒子がスペーサーの役割をして二酸化チタン同士の凝集を防ぐため、コーティング液、又はコーティング層中において分散状態を得ることができ、単なる二酸化チタン・炭酸カルシウムの混合系では実現できない光散乱力・紫外線吸収力が発揮されるからである。
【0012】
上記複合粒子を顔料として配合したコーティング材によって得られる塗工層は、基材フィルム(以下ハウスフィルムともいう)の保護にも有効である。二酸化チタンを単独使用又は単に他顔料と混合したのみでハウスフィルムの表面に塗工すると、二酸化チタン粒子が直接ハウスフィルムの表面と直接接するため、その強力な光触媒効果により農業用ハウス表面を傷めてしまう。
【0013】
しかし、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子では炭酸カルシウムが二酸化チタン粒子表面を遮蔽することにより、二酸化チタン粒子が直接ハウスフィルムの表面と接することがなくなり、光触媒効果が発揮されてもハウスフィルムの表面までその効果が及ばなくなるためである。
【0014】
さらに、本発明に係る農業ハウス用コーティング材では、重量平均分子量が10万以上、酸価が10以下であるアクリレート系ラテックスを用いた形態では、紫外線に対してさらに安定で傷が付きにくい皮膜強度の優れた塗工膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特に農業ハウス内果実の保護及び農業ハウス内地温の調節に役立つとともに農業ハウス表面の保護にも好適な遮光用コーティング材、基材フィルム、農業ハウス用コーティング材、及び農業ハウスが提供される。
【0016】
本発明で採用されている複合顔料は、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子が定着したものであり、炭酸カルシウム粒子がスペーサーの役割をして二酸化チタン粒子間の距離を大きくし、二酸化チタンが有する光散乱力を最大限に発揮させ、その結果、農業ハウス上に40%以上の高遮光率を有するコーティング皮膜を形成させることができる。
また、地温の過上昇を抑制できるため、ハウス内作物の出芽や苗立ちが安定する。
【0017】
本発明に係るコーティング材は、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を用いており、二酸化チタン粒子が凝集した状態で存在することがなく、また二酸化チタン特有の光触媒効果が発揮されても二酸化チタン表面に定着している炭酸カルシウムがその触媒効果を遮断するため、基材フィルム(ハウスフィルム)の表面、又は農業ハウス上に形成されたコーティング膜を傷めることがなく、強力な光散乱効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る遮光用コーティング材、基材フィルム、農業ハウス用コーティング材、及び農業ハウスについて、その実施の形態を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る遮光用コーティング材は、農業ハウス用コーティング材として好適に用いることができ、基材フィルム(ハウスフィルム)に塗工層を設けるために用いることができる。このようなコーティング材は、既設の農業ハウスに塗工することもできる他、予め製造工程で基材フィルムに塗工することもできる。
【0020】
本発明に係る農業ハウス用コーティング材は、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウムの白色複合粒子を顔料として配合してなるものである。
【0021】
本発明に係る農業ハウス用コーティング材は、好適には、分子量10万以上、酸価10以下のアクリレート系ラテックスをバインダーとして含有する。そして、好適には、該二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を30重量%以上、アクリレート系ラテックスを固形換算で1〜10重量%含有する。
【0022】
二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子における二酸化チタンと炭酸カルシウムの重量比は、好適には、1:99〜50:50程度である。二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子の平均粒子径は、好適には10μm以下である。
【0023】
本発明において二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子が定着している状態には、二酸化チタン粒子と炭酸カルシウム粒子とがファンデルワールス力により互いに吸着している状態が含まれる。
【0024】
二酸化チタン粒子の結晶型は、特に限定されないが、例えば、アナターゼ型又はルチル型のものを用いることができる。二酸化チタン粒子の粒度は通常50〜500nm程度、特に100〜300nmであることが好ましい。このような範囲内であれば、農業ハウス用コーティング材の顔料として高い光散乱力を持つものが得られる。
【0025】
炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウム及び沈降性炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)のいずれも用いることができるが、沈降性炭酸カルシウムを用いることが好ましい。天然炭酸カルシウムは石灰石を機械的に粉砕、分級することにより生産するため粒度分布が比較的広く、粒子形も不均一になりがちである。これに対して、沈降性炭酸カルシウムは粒度分布が狭く、粒子形が比較的均一である。これにより、沈降性炭酸カルシウムでは、粒子同士が最密充填し難く、粒子間に空間ができるために複合粒子の光散乱力が向上し、その結果40%以上の高遮光率を有するコーティング膜が得られる。
【0026】
炭酸カルシウム粒子の粒度は、通常50〜400nm程度、特に70〜150nm程度であることが好ましい。炭酸カルシウム粒子の粒度が上記範囲より小さいと、二酸化チタン粒子間の距離が小さくなり、コーティング皮膜の白色度・遮光率が低下する。一方、粒度が大きすぎると二酸化チタン粒子表面に付着し難く、二酸化チタンから離れて存在する粒子の比率が高くなり、コーティング皮膜の白色度・遮光率が低下する。上記範囲内であれば、このような問題は生じ難い。
【0027】
上記規定した粒度は、X線回折法又は走査型電子顕微鏡により測定した値である。粒度とは、少なくとも80%以上の粒子が、規定される範囲内に入ることをいう。
【0028】
炭酸カルシウムの粒子形状は特に制限されず、立方体、紡錘形、球形、板状等どのような形状であってもよい。もっとも好ましくは球形又は立方体である。また、粒子形状はできるだけ均一であることが好ましい。
【0029】
沈降性炭酸カルシウムを用いる場合には、水酸化カルシウム懸濁液中に炭酸ガスを吹き込むことにより、このような炭酸カルシウム粒子を作製することができる。
【0030】
また、二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子における二酸化チタンと炭酸カルシウムとの比率は、上記したように、重量比で通常1:99〜50:50程度である。好ましくは1:90〜30:70程度である。二酸化チタンに比して炭酸カルシウムが少なすぎると、二酸化チタンの表面を炭酸カルシウムが遮蔽することができずにハウスフィルムの表面と二酸化チタンが接触する。このため、その光触媒効果による農業ハウス表面を傷めてしまったり、二酸化チタン粒子が凝集して白色度・遮光率が低下する。また、多すぎても二酸化チタン粒子同士が離れすぎて十分な光散乱力が発揮されないため、白色度・遮光率が低下する。上記範囲内であれば、このような問題は生じ難い。
【0031】
二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子は、全体として平均粒子径が10μm以下、好ましくは5μm以下である。平均粒子径が10μmを超えてしまうと、例えばスプレー塗工する際に目詰まりの問題が生じたり、コーティング液中において沈降してしまう。本発明で、平均粒子径は、レーザー回折法により、平均粒子径測定装置を用いて測定した値である。
【0032】
二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子は、例えば、二酸化チタン粒子と炭酸カルシウム粒子とを水相中で混合する方法で作製することができる。
ここで、液体中の粒子間の斥力はゼータ電位に関係する。ゼータ電位は、液体中に固体が存在し、固体と液体とが相対運動するとき、固体に密着して動く液体層の最も外側の面(滑り面)と液体内部との電位差である。ここでは、二酸化チタン粒子のゼータ電位と炭酸カルシウム粒子のゼータ電位との和が最小となるか又は両者のゼータ電位が反対符合となるように、分散媒である水相のpHを調整する。
【0033】
例えば、二酸化チタン粒子と沈降性炭酸カルシウム粒子の組み合わせの場合には、pH6〜11程度の水相中に両粒子を分散させ、混合すればよい。
また、水相中に分散させる二酸化チタン粒子と炭酸カルシウム粒子との重量比は、1:90〜50:50程度とすればよい。
【0034】
また、本発明で使用する二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子以外に使用する顔料については特に規定するものではないが、一般的に無機顔料として使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、チサンホワイト、プラスチックピグメント、二酸化チタン等を1種以上使用することができる。
【0035】
本発明でバインダーに使用するラテックスとしては、耐水性、耐候性の面からアクリレート系ラテックスを用いるのが望ましく、さらにはコーティング皮膜形成後の皮膜安定性、フィルム表面の保護の観点からアクリレート系ラテックスの重量平均分子量は100000以上のものを用いるのが好ましい。
重量平均分子量はGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)で、THF、DMF、クロロホルム等の溶媒を使用し、ポリスチレン換算により測定することができる。
【0036】
また、顔料、アクリレート系ラテックス以外に保水剤、pH調整剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤、減粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、接着助剤等の各種助剤を必要に応じて添加しても良い。
【0037】
調整された本発明に係るコーティング材は一般のスプレー塗工、塗布に用いられている動力式噴霧機等によって農業ハウス上に単層あるいは多層塗工される。その際、塗料固形分濃度は40〜68%であることが好ましい。また、被塗工側の農業ハウス材質としてポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂、あるいは数種の樹脂を複合させた複合樹脂等、一般的に農業ハウスに使用されているものが挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中「部」とあるのは特に断りのない限り、「重量部」を意味する。
平均粒径200nmのアナターゼ型二酸化チタンと平均粒径100nmの立方体形状の沈降性炭酸カルシウムとを、20:80の割合で混合した後、水を加え20重量%スラリーに調整した。この混合スラリーに二酸化炭素を吹き込むことにより、そのpHを7.8に調節した。pHが安定化されたスラリーをコロイドミルに通した。コロイドミルのロータとステータとの間隙は100μmに設定した。また、コロイドミル内での滞留時間は0.1秒未満にした。混合物の温度は20℃であった。生成した100nmの沈降性炭酸カルシウム粒子がファンデルワールス力によって二酸化チタンの表面に付着した。得られた複合粒子は、二酸化チタン:炭酸カルシウムの重量比が20:80であり、その平均粒子径は1μmであった。その後、該スラリーを脱水・乾燥し、二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を得た。
【0039】
次に以下の表1に示す組成で、本発明のコーティング液を調整した。まず、上記で得た二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子に表1に示す所定量の水、増粘剤、ラテックス、接着助剤を加えて攪拌・混合し、本発明のコーティング材を得た。このようにして得られたコーティング材を水で5倍希釈してハウスフィルムに動力式噴霧器にてスプレー塗工した。
【0040】
【表1】

表中の組成は重量部で表したものである。
【0041】
二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子:平均粒子径1.1μm
※アクリレート系ラテックス:アクリル系ポリマーとアンモニア水の混合物
※の組成及び物性は次の通りである。
アクリル系ポリマー49〜51%、アンモニア水0.2%(最大値)、水49〜51%
重量平均分子量10万〜50万、酸価0〜10
増粘剤:ベントナイト
接着助剤:重合ロジンエステル
【0042】
本実施例において測定した各諸物性は次の通り測定した。
i)塗工性:ハウス表面への塗工のしやすさを総合的に評価した。
ii)持続性:ハウスフィルムに塗工したコーティング皮膜が、3/4以上流失した時点までを持続の対象とした。
iii)遮光性:照度計(「LX−1330D/LX−1332D」株式会社カスタム製)
により、ハウス内の照度(ルクス)を測定した。
iv) 地温降下:コーティング皮膜を形成させたハウスフィルム内の地温とコーティング皮膜を形成させないハウスフィルム内の地温との差で算出。
v)基材の状態:被塗工側の基材状態をコーティング皮膜が除去された後に確認した。
【0043】
評価は、A〜Dの4段階で検討した。判定した基準は、次の通りである。
i)塗工性
A:作業性良く塗工でき、液垂れもない。
B:作業性良く塗工できるが、やや液垂れが起こる
C:塗工作業に支障がある、あるいは液垂れが起こる。
D:塗工作業が極めて困難である、液垂れも顕著に起こる。
【0044】
ii)持続性
A:3ヶ月以上の持続性
B:2〜3ヶ月の持続性
C:1〜2ヶ月の持続性
D:0〜1ヶ月の持続性
【0045】
iii)遮光性
ハウス外に対するハウス内の照度比により判定。判定は、遮光率(%)=1−(ハウス内の照度/ハウス外の照度)×100(%)から算出。基準は、次の通りである。
A:遮光率が40%以上
B:遮光率が30〜40%
C:遮光率が20〜30%
D:遮光率が10〜20%
iv)地温降下
A:6〜10℃の降下
B:3〜6℃の降下
C:1〜3℃の降下
D:降下なし
【0046】
v)基材の状態
○:塗工前と比べ変化なし。
×:基材に変色やチョーキングが発生している。
【比較例】
【0047】
実施例4より、顔料を二酸化チタン、炭酸カルシウムを単に混合したもの(比較例1)と炭酸カルシウムのみ(比較例2)とに代え、バインダーをNRラテックス(比較例3)、SBRラテックス(比較例4)に代えた例を以下の表2に示す。コーティング液の調整方法、塗工方法は実施例と同一である。
【0048】
【表2】

表中の組成は重量部で表したものである。
【0049】
二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子:平均粒子径1.1μm
炭酸カルシウム(i):コロイド状炭酸カルシウム、平均粒子径0.2μm
※アクリレート系ラテックス:アクリル系ポリマーとアンモニア水の混合物
※の組成及び物性は次の通りである。
アクリル系ポリマー49〜51%、アンモニア水0.2%(最大値)、水49〜51%
重量平均分子量10万〜50万、酸価0〜10
NRラテックス:天然ゴムラテックス
SBRラテックス:スチレンブタジエンゴムラテックス
増粘剤:ベントナイト
接着助剤:重合ロジンエステル
【0050】
本比較例において測定した各諸物性は実施例と同一である。
【0051】
以上の結果より、単に二酸化チタン、炭酸カルシウムを混合しただけの顔料を用いても所望の遮光性が得られず、さらには二酸化チタンの光触媒作用により被塗工側の基材を損傷させてしまう。一方本発明の二酸化チタン・炭酸カルシウムの複合粒子を顔料として含有するコーティング材は、ハウス表面の基材を傷めることなく、太陽光を強力に遮蔽し、長期間安定なコーティング皮膜を形成できることがわかる。
また、バインダーに関しては重量平均分子量100,000以上、酸価10以下のアクリレート系ラテックスが他種ラテックスと比較して、最も優秀な持続性を示し、良好な耐候性を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によると、農業用ハウス上に白色複合顔料、アクリレート系ラテックスを主成分としたコーティング材を塗工することによって、太陽光を強力に遮蔽することができ、ハウス内果実の保護及びハウス内温度、特に地温の調節に役立つとともにハウス表面の基材保護にも好適なコーティング皮膜を形成させることができる。
【0053】
詳述すれば、本発明の複合顔料は、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子が付着したものであり、炭酸カルシウム粒子がスペーサーの役割をして二酸化チタン粒子間の距離を大きくし、二酸化チタンが有する光散乱力を最大限に発揮させ、その結果農業用ハウス上に40%以上の高遮光率を有するコーティング皮膜を形成させることができる。
【0054】
また、本発明のコーティング材は、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウムの複合粒子であり、二酸化チタン粒子が凝集した状態で存在することがなく、また二酸化チタン特有の光触媒効果が発揮されても二酸化チタン表面に定着している炭酸カルシウムがその光触媒効果を遮断するため、農業用ハウス上に形成されたコーティング膜、あるいは基材を傷めることなく、強力な光散乱効果を発揮させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料とアクリレート系ラテックスを主成分とする遮光用コーティング材において、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子を顔料として配合することを特徴とする遮光用コーティング材。
【請求項2】
請求項1の遮光用コーティング材を塗布してなる基材フィルム。
【請求項3】
請求項1の遮光用コーティング材よりなることを特徴とする農業ハウス用コーティング材。
【請求項4】
上記二酸化チタン・炭酸カルシウム複合粒子の平均粒子径10μm以下で、二酸化チタンと炭酸カルシウムの重量比が、1:99〜50:50であることを特徴とする請求項3に記載の農業ハウス用コーティング材。
【請求項5】
アクリレート系ラテックスの重量平均分子量が100000以上、酸価が10以下である請求項3又は4に記載の農業ハウス用コーティング材。
【請求項6】
農業ハウス外に対する農業ハウス内の照度比を30〜90%、また、ハウス内地温を、農業ハウスを使用しない場合と比較して1〜10℃低下させることができるようにしたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の農業用コーティング材をコーティングした基材フィルムを用いて構築してなる農業ハウス。

【公開番号】特開2007−177240(P2007−177240A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325733(P2006−325733)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(593119527)白石カルシウム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】