説明

遮断機

【課題】遮断かんの長さや重さの違いによる自重降下時トルクの大小に関わらず、遮断かんを安全な速度で自重降下し得、しかも、工具を使用することなく、かつ、習熟度を必要とすることなく、自重降下速度を簡単、かつ、確実に調整し得る遮断かん制御装置及びそれを用いた遮断機を提供すること。
【手段】発電制動制御回路3は、選択可能な抵抗値R1、R2の異なる複数の抵抗器311、312を備え、モータ1に対する給電が停止されたとき、選択された抵抗器311又は312によって、モータ1に対し、遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさに応じて区分された複数段階の発電制動を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用電気踏切遮断機、更に、駐車場、有料道路における料金徴収所などのゲートに用いられる電気遮断機用遮断かん制御装置及び電気遮断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気式遮断機は、遮断かんがゆっくりと自重降下するように、遮断かんと釣り合うようにウェイトが設けられていた。しかし、このウェイト付きの電気式遮断機は、ウェイトによる下降特性の調整に時間がかかり、また、雪国ではウェイト部に防雪カバーを設ける必要があるといった問題がある。そこで、ウェイトを設けない、いわゆるウェイトレスの電気式遮断機が提案されている。
【0003】
しかしながら、ウェイトレスの場合、遮断かん側の負荷トルクが大きいために、自重降下速度が極端に大きくなる傾向がある。すなわち、遮断かんは、下降の始めはゆっくりと下降するが、下降するにしたがって速度が大きくなり、通行人や車輌に対し危険であると共に、下降位置で停止した時の衝撃力が大きく、電気式遮断機本体の機構部に悪影響を与える。
【0004】
このような問題点を解決する手段として、特許文献1は、停電または故障を検出した場合に、電気式遮断機をその駆動電源から切り離し、遮断かんが自重降下により設定位置に達したとき、電気式遮断機のモータに発電制動をかける技術を開示している。
【0005】
ところが、踏切道の幅や、交通量の多少等に応じて、長さや重さの異なる様々なタイプの遮断かんが用いられる。遮断かんのモータに対する負荷トルクは、遮断かんの長さや、重さによって大幅に異なる。特許文献1に記載された技術は、そのような遮断かんの長さや重さの違いによる負荷トルクの変動までは考慮にいれていない。
【0006】
そこで、自重降下調整機構及びカムを備え、遮断かんの長さや重さの違いによる負荷トルクの変動を考慮して、自重降下速度及び自重降下時間を調整する技術が提案されている。この自重降下調整機構は、調整ボルトを備え、調整ボルトの位置を、工具を用いて差し替え、遮断かんの長さ及び重さに応じて、「重」、「中」、「軽」の3段階で切り替え、負荷トルクを調整するようになっている。そして、調整ボルトの位置を決めてから、カムによって駆動されるカム・スイッチの構成位置を調整することにより、発電制動の加わる位置を調整し、自重降下時間を調整していた。
【0007】
しかし、調整ボルトの差し替え作業のために。専用の工具が必要である上に、その調整作業に習熟度を要するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−291911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、遮断かんの長さや重さの違いによる自重降下時トルクの大小に関わらず、遮断かんを安全な速度で自重降下し得る遮断かん制御装置及びそれを用いた遮断機を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの課題は、工具を使用することなく、しかも習熟度を必要とすることなく、自重降下速度を簡単、かつ、確実に調整し得る遮断かん制御装置及びそれを用いた遮断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明に係る遮断かん制御装置は、モータと、発電制動制御回路とを含む。前記モータは、遮断かんを駆動するものであり、前記発電制動制御回路は、選択可能な抵抗値の異なる複数の抵抗器を備え、前記モータに対する給電が停止されたとき、選択された前記抵抗器によって、前記モータに対し、前記遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさに応じて区分された複数段階の発電制動を与える。この遮断かん制御装置は、遮断かんと組み合わされて遮断機を構成する。前記遮断かんは、前記遮断かん制御装置によって駆動される。
【0012】
既に指摘したように、遮断機において使用される遮断かんは、踏切道の幅、交通量の多少等によって、その長さ及び重さが変化し、それに伴って、遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさも変化する。そこで、本発明に係る遮断かん制御装置は、遮断かんを駆動するモータに対する給電が停止されたとき、選択された抵抗器によって、モータに対し、遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさに応じて区分された複数段階の発電制動を与える。
【0013】
即ち、使用される遮断かんの長さ及び重さによって定まる自重降下時トルクの大きさを考慮し、遮断かんを、例えば、「重量」遮断かん、「中量」遮断かん、「軽量」遮断かんのように区分し、モータに対する給電が停止されたとき、選択された抵抗器によって、区分に応じた複数段階の発電制動を与える。これにより、遮断かんの長さや重さの違いによる自重降下時トルクの大小に関わらず、遮断かんを安全な速度で自重降下し得るようになる。
【0014】
遮断機においては、通常、三相モータが用いられる。この場合には、発電制動制御回路は、モータの三相の全てを通して発電制動を与えてもよいし、二相(単相)を通して発電制動を与えてもよい。
【0015】
発電制動制御回路は、具体的には、抵抗選択回路を含んで構成される。抵抗選択回路は、複数の抵抗器と、スイッチとを含んで構成することができる。複数の抵抗器のそれぞれは、抵抗値が互いに異なっている。スイッチは、切り替え操作により、複数の抵抗器の中から、少なくとも一つの抵抗器を選択し、選択された抵抗器の抵抗値に応じた発電制動を、モータに与える。
【0016】
したがって、遮断かんの長さや重さの違いによる自重降下時トルクの大小に関わらず、スイッチの操作という簡単な手法で、遮断かんを安全な速度で自重降下し得る遮断かん制御装置及びそれを用いた遮断機を提供することができる。
【0017】
また、発電制動制御回路における抵抗器の選択という手法によって、遮断かんの自重降下を制御するので、専用の工具を必要としないし、作業員の習熟度も必要としない。
【0018】
また、遮断かん制御装置は、従来と同様に、カム・スイッチを含み、前記カム・スイッチは、前記発電制動の開始時期及び停止時期を制御する。カム・スイッチによる発電制動の開始時期及び停止時期は、カムの作用角を調整することによって、容易に設定することができる。したがって、発電制動の開始時期及び停止時期の設定に当たっても、工具を必要としないし、作業員の習熟度も必要としない。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)遮断かんの長さや重さの違いによる自重降下時トルクの大小に関わらず、遮断かんを安全な速度で自重降下し得る遮断かん制御装置及びそれを用いた遮断機を提供することができる。
(b)工具を使用することなく、しかも習熟度を必要とすることなく、自重降下速度を簡単、かつ、確実に調整し得る遮断かん制御装置及びそれを用いた遮断機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る遮断かん制御装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1の遮断かん制御装置を用いた遮断機の発電制動動作を説明する図である。
【図3】図1の遮断かん制御装置を用いた遮断機の別の発電制動動作を説明する図である。
【図4】図1の遮断かん制御装置を用いた遮断機の更に別の発電制動動作を説明する図である。
【図5】図1に示した遮断かん制御装置を用いた遮断機の更に別の発電制動動作を説明する図である。
【図6】図1に示した遮断かん制御装置を用いた遮断機の更に別の発電制動動作を説明する図である。
【図7】図1に示した遮断かん制御装置を用いた遮断機の上昇動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、遮断かん制御装置は、モータ1と、発電制動制御回路3とを含んでいる。モータ1は、遮断かんを駆動するものであって、この実施の形態では、Um相、Vm相及びWm相の界磁コイルを有する三相ACモータとして示されている。その他、遮断機において知られているタイプのモータ、例えば、ロータに永久磁石があるものを用いることができる。モータ1の回転軸には、図示しないが、遮断かんの回転軸が、回転調整機構(一般には減速歯車列)等を介して結合されている。
【0022】
発電制動制御回路3は、第1抵抗選択回路31、第2抵抗選択回路32及び第3抵抗選択回路33を含んでいる。第1抵抗選択回路31〜第3抵抗選択回路33のそれぞれは、複数の抵抗器(311、312)、(321、322)、(331、332)と、スイッチSuv、Svw又はSwuとを含んでいる。
【0023】
第1抵抗選択回路31に含まれる第1抵抗器311及び第2抵抗器312は、抵抗値R1、R2が、例えば、R1<R2のように、互いに異なっている。第2抵抗選択回路32に含まれる第1抵抗器321及び第2抵抗器322、並びに、第3抵抗選択回路33に含まれる第1抵抗器331及び第2抵抗器332においても、抵抗値R1、R2が互いに異なっている。第1抵抗選択回路31〜第3抵抗選択回路33のそれぞれにおいて、抵抗器の個数は、2個に限定されない。3個以上であってもよい。
【0024】
第1抵抗選択回路31、第2抵抗選択回路32及び第3抵抗選択回路33は、モータ1に対する給電が停止されたとき、選択された抵抗器によって、モータ1に対し、遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさに応じて区分された複数段階の発電制動を与える。
【0025】
この実施の形態では、第1抵抗選択回路31、第2抵抗選択回路32及び第3抵抗選択回路33の3つの抵抗選択回路を備えている。もっとも、抵抗選択回路の個数は、モータ1のコイル構造によって変化する。実施の形態では、遮断かんを駆動するモータ1として、三相モータ1を用いていることから、3つの第1抵抗選択回路31〜第3抵抗選択回路33を用い、これを、Δ結線してある。図示は省略するが、Δ結線が、スター結線に等価的に置き換え得ることは、この技術分野では周知である。また、当然のことであるが、Δ結線は、電気回路上、等価的にΔ結線になっていればよいことを意味し、回路基板上で3角形状に配置されていることを意味するものではない。
【0026】
スイッチSuv、Svw、Swuのうち、第1スイッチSuvは、切り替え操作により、複数の抵抗器311、312の中から、一つを選択する。このようなスイッチSuvは、第1選択可動接点313が、第1接点314及び第2接点315の間で切り替わり、しかも、第1接点314及び第2接点315の間では、両接点から離れた中立位置を採りえるタイプの機械点接点であることが好ましい。
【0027】
第2スイッチSvwは、切り替え操作により、抵抗器321、322の中から、一つを選択する。第3スイッチSwuは、切り替え操作により、複数の抵抗器331、332の中から一つを選択する。スイッチSuv、Svw、Swuは、好ましくは、スイッチ操作と、接点切替えとが同時に実行される三位一体型のものを用いる。
【0028】
第1抵抗選択回路31〜第3抵抗選択回路33のそれぞれについて、更に具体的に説明する。まず、第1抵抗選択回路31は、抵抗値R1の第1抵抗器311と、抵抗値R2の第2抵抗器312の一端を共通に接続して、モータ1のUm相接続点aに接続するとともに、第1抵抗器311の他端を、第1スイッチSuvの第1接点314に接続し、第2抵抗器312の他端を、第1スイッチSuvの第2接点315に接続してある。第1スイッチSuvの第1選択可動接点313は、Vm相接続点bに接続されている。
【0029】
次に、第2抵抗選択回路32は、第1抵抗器321と第2抵抗器322の一端を共通に接続して、モータ1のVm相接続点bに接続するとともに、第1抵抗器321の他端を、第2スイッチSvwの第1接点324に接続し、第2抵抗器322の他端を第2スイッチSvwの第2接点325に接続してある。第2スイッチSvwの第2選択可動接点323は、Wm相接続点cに接続されている。
【0030】
第3抵抗選択回路33は、第1抵抗器331と第2抵抗器332の一端を共通に接続して、Wm相接続点cに接続するとともに、第1抵抗器331の他端を、第3スイッチSwuの第1接点334に接続し、第2抵抗器332の他端を第3スイッチSwuの第2接点335に接続してある。第3スイッチSwuの第3選択可動接点333は、Um相接続点aに接続されている。
【0031】
遮断機において使用される遮断かんは、踏切道の幅、交通量の多少等によって、その長さ及び重さが変化し、それに伴って、遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさも変化する。
【0032】
そこで、使用される遮断かんの自重降下時トルクの大きさ、即ち、長さ及び重さを考慮し、遮断かんを、例えば、「重量」遮断かん、「中量」遮断かん、「軽量」遮断かんのように区分し、モータ1に対する給電が停止されたとき、選択された抵抗器によって、区分に応じた複数段階の発電制動を与える。
【0033】
実施例の場合、第1抵抗器の抵抗値R1を第2抵抗器の抵抗値R2よりも小さい値に設定し、第1抵抗器を「重量」遮断かんに対応させ、第2抵抗器を「中量」遮断かんに対応させてある。「軽量」遮断かんに対しては、第1抵抗器及び第2抵抗器を回路上から排除(回路オープン)し、発電機として動作するモータ1を、無負荷の状態にする。三相モータ1の場合、発電制動は、三相のそれぞれに対して、均等に電流が流れるようにするのが基本であるが、例えば、「中量」遮断かんに対しては、モータ1の3相のうちの2相に対してのみ発電制動を加えるような構成であってもよい。
【0034】
本発明に係る遮断かん制御装置は、更に、モータ遮断リレー(図示しない)のリレー接点回路5、カム・スイッチ7、電源接続端子91及びモータ接続端子92等を備える。リレー接点回路5は、第1リレー接点回路51及び第2リレー接点回路52を有する。第1リレー接点回路51は、第1可動接点511、第1落下接点512及び第1扛上接点513を含んでいる。第2リレー接点回路52は、第2可動接点521、第2落下接点522及び第2扛上接点523を含んでいる。第1可動接点511及び第2可動接点521は、遮断機に供給され電源がOFFになったときや、制御系が何らかの故障を検知したときに落下し、第1落下接点512及び第2落下接点522にコンタクトする。これは遮断かんの自重降下動作に対応する。
【0035】
モータ遮断リレーのコイルが励磁されると、第1可動接点511及び第2可動接点521が扛上し、第1扛上接点513及び第2扛上接点523とコンタクトする。モータ遮断リレーのコイルが励磁されるのは、モータ1に対して、Us相、Vs相及びWs相の電源が供給された場合であり、モータ1の電動による遮断かんの上昇・降下動作に対応する。
【0036】
第1落下接点512は、カム・スイッチ7を経て、第1抵抗選択回路31及び第3抵抗選択回路33の接続点aに導かれている。また、第1可動接点511は、モータ接続端子92において、モータ1のUm相に接続されている。一方、第2落下接点522は、カム・スイッチ7を経ずに、第1抵抗選択回路31及び第2抵抗選択回路32の接続点bに導かれている。また、第2可動接点521は、モータ接続端子92において、モータ1のVm相に接続されている。モータ1のWm相は、モータ接続端子92を経て、第3抵抗選択回路33及び第2抵抗選択回路32の接続点cに導かれている。
【0037】
第1扛上接点513は、電源接続端子91上で、電源から供給されるUs相に接続され、第2扛上接点523は、電源接続端子91上で、電源から供給されるVs相に接続される。
【0038】
カム・スイッチ7は、遮断かんの回転に連動するカムによってオン・オフされるスイッチ(リミットスイッチ)であって、スイッチに対するカムの作用角θによって、発電制動の開始時期及び停止時期を制御する。カムの作用角θは、用いられる遮断かんの長さや重さに応じて、90°〜0°の範囲で任意に選定できる。カムの作用角θ=90°と言った場合、遮断かんに対する発電制動が、遮断かんの上昇停止位置(例えば、85°)から開始され、ほぼ0°まで継続することを意味している。
【0039】
次に、動作について、図2〜図7を参照して説明する。まず、図2は、「重量」遮断かんに対する発電制動を示す図である。図において、図1に現れた構成部分に対応する部分については、同一の参照符号を付してある。まず、停電時の踏切遮断動作について説明する。この場合、Us相、Vs相及びWs相がOFFとなり、モータ遮断リレーが無励磁の状態になる。この結果、第1リレー接点回路51及び第2リレー接点回路52では、第1可動接点511及び第2可動接点521が落下し、それぞれ、第1落下接点512及び第2落下接点522にコンタクトする。
【0040】
Us相、Vs相及びWs相がOFFになると、モータ1に対する動作電源もOFFになり、遮断かんが自重降下を開始する。遮断かんの自重降下時は、モータ1が、発電機として働く。第1リレー接点回路51及び第2リレー接点回路52では、第1可動接点511及び第2可動接点521が、それぞれ、第1落下接点512及び第2落下接点522にコンタクトし、発電機として動作しているモータ1のUm相及びVm相が、第1リレー接点回路51及び第2リレー接点回路52を経由して、発電制動制御回路3に接続される。モータ1のWm相は、カム・スイッチ7を経由して、発電制動制御回路3に接続される。
【0041】
発電制動制御回路3では、第1抵抗選択回路31の第1選択可動接点313が第1選択接点314にコンタクトし、第2抵抗選択回路32の第2選択可動接点323が第1選択接点324にコンタクトし、第3抵抗選択回路33の第3選択可動接点333が第1選択接点334にコンタクトする。この結果、第1抵抗選択回路31、第2抵抗選択回路32及び第3抵抗選択回路33の何れにおいても、抵抗値R1を持つ第1抵抗器311、321、331が選択される。
【0042】
第1抵抗器311、321、331の抵抗値R1は、第2抵抗器312、322、332の抵抗値R2よりも小さい(R1<R2)。よって、第2抵抗器312、322、332が選択された場合と比較して、発電制動制御回路3に、より大きな電流が流れ、モータ1に対して、より大きな発電制動が加わることになり、自重落下トルクの大きな「重量」遮断かんに対して、その重量に応じた適切な制動が働くことになる。この結果、「重量」遮断かんが安全な速度で自重降下することになる。
【0043】
また、発電制動制御回路3における抵抗器の選択という手法によって、遮断かんの自重降下を制御するので、工具を必要としないし、作業員の習熟度も必要としない。
カム・スイッチ7は、発電制動の開始時期及び停止時期を制御する。カム・スイッチ7による発電制動の開始時期及び停止時期は、カムの作用角θを調整設定することによって、容易に設定することができる。発電制動の開始時期及び停止時期の設定に当たって、カムの作用角θを調整すればよく、その調整には、工具を必要としないし、作業員の習熟度も必要としない。作用角θの設定に当たっては、実際に遮断かんを取り付けた状態で、上昇停止位置から水平停止位置(遮断位置)に至るまでの自重降下時間、自重降下速度等を勘案して定める。この例では、カムの作用角θは90°に設定されており、ほぼ、遮断かんの上昇上限位置(90°)でカム・スイッチ7が構成され、水平停止位置(0°)まで継続する。従って、遮断かんは、上昇上限位置から水平停止位置まで、発電制動制御回路3の時間制御を受ける。
【0044】
次に、フェールセーフ動作について説明する。モータ1に供給される電源のUs相、Vs相及びWs相が、停電、妨害又は電源異常等によってOFFとなった場合、遮断かんを降下させて、踏切道の交通に対して安全側(フェールセーフ側)となる方向に制御しなければならないし、遮断かんの自重降下速度を、交通の安全を害するような速度とならないように制御しなければならない。
【0045】
本発明では、モータ1に供給される電源が、停電、妨害又は電源異常等によってOFFとなった場合、第1リレー接点回路51及び第2リレー接点回路52では、第1可動接点511及び第2可動接点521が落下し、それぞれ、第1落下接点512及び第2落下接点522にコンタクトすることになるから、上に述べた停電時の遮断動作の場合と同様に、遮断かんの自重降下動作に対する発電制動制御が加わることになる。
【0046】
よって、停電、妨害又は電源異常等によって、電源がOFFとなった場合、それをモータ遮断リレーで検知して、遮断かんをフェールセーフ側となるように自重降下させるとともに、発電制動制御回路3の働きによって、遮断かんの自重降下速度を、交通の安全を害するような速度とならないように、適切に制御することができる。
【0047】
図3は、「重量」遮断かんにおける別の発電制動を説明する図である。この実施の形態は、2相(単相)による発電制動に関わるものである。図を参照するに、第1抵抗選択回路31の第1選択可動接点313、第2抵抗選択回路32の第2選択可動接点323及び第3抵抗選択回路33の第3選択可動接点333は、何れも、第1選択接点314、324及び第1選択接点334にコンタクトする。一方、カムの作用角θは、0°に設定されている。つまり、カム・スイッチ7は、OFFであるから、第1リレー接点回路51から接続点aに至る回路が遮断されている。したがって、第2抵抗選択回路32においてのみ、抵抗値R1を持つ第1抵抗器321が選択される。
【0048】
抵抗値R1を持つ第1抵抗器321は、モータ1のVm相及びWm相に生じた起電力によって流れる電流に対する制限抵抗として働く。Um相、Vm相及びWm相の全てに対して発電制動を加える場合と比較して、制動力は低下するが、「重量」遮断かんに制動を与えるのには適している。
【0049】
次に、図4は、「中量」遮断かんにおける発電制動を説明する図である。図において、図1〜図3に現れた構成部分に対応する部分については、同一の参照符号を付してある。発電制動制御回路3では、第1抵抗選択回路31の第1選択可動接点313が第2選択接点315にコンタクトし、第2抵抗選択回路32の第2選択可動接点323が第2選択接点325にコンタクトし、第3抵抗選択回路33の第3選択可動接点333が第2選択接点335にコンタクトする。この結果、第1抵抗選択回路31、第2抵抗選択回路32及び第3抵抗選択回路33の何れにおいても、抵抗値R2を持つ第2抵抗器312、322、332が選択される。カムの作用角θは、90°に設定されている。
【0050】
第2抵抗器312、322、332の抵抗値R2は、第1抵抗器311、321、331の抵抗値R1よりも大きい(R2>R1)。よって、第1抵抗器311、321、331が選択された場合と比較して、発電制動制御回路3の第2抵抗器312、322、332に流れる電流が小さくなり、モータ1に対して、「中量」遮断かんに応じた適切な制動が働くことになる。この結果、遮断かんを、その重さに応じた安全な速度で自重降下し得る。
【0051】
図5は、「中量」遮断かんに対する発電制動の別の例を示している。この実施の形態は、2相(単層)による発電制動という点で、図3の実施の形態と類似しているが、第3抵抗選択回路33において、抵抗値R2を持つ第2抵抗器332が選択されている点で異なる。抵抗値R2は抵抗値R1よりも大きいから、図3との対比では、更に軽量化された「中量」遮断かんの制動に適していると言える。カムの作用角θは、0°である。
【0052】
図6は、軽量遮断かんに対する発電制動の例を示している。図を参照すると、第1抵抗選択回路31〜第3抵抗選択回路33の何れにおいても、第1選択スイッチSuv〜第3選択スイッチSwuの可動接点313,323,333は、中立位置にあり、第1抵抗器311、321、331及び第2抵抗器312、322、332は、回路から切り離されている。したがって、モータ1に対しては無負荷発電制動となるが、「軽量」遮断かんに制動を与えるのには適している。なお、モータ1は、カム・スイッチ7とは無関係になる。
【0053】
自重降下の最初から終わりまで、図2〜図6の発電制動を遂行することは、必ずしも必須ではない。発電機として動作するモータ1に対する遮断かんの負荷トルクを考慮し、図2〜図6の発電制動を、適宜に組み合わせてもよい。例えば、「重量」遮断かんであっても、負荷トルクの小さい降下初期(作用角θの大きい領域)には、図6の軽量遮断かんに対する発電制動を適用し、負荷トルクの増大に合わせて、図5、図4、図3及び図2の発電制動を適宜に組み合わせる。
【0054】
図7は、遮断かんを上昇させる場合を示しており、モータ遮断リレーが励磁されたことにより、リレー接点回路51、52の可動接点511,521が扛上接点513、523に切り替わっている。したがって、発電制動制御回路3は、モータ1から切り離された状態になる。
【0055】
本発明は、主として、鉄道用電気踏切遮断機を提供するものであるが、これに限定されず、駐車場、有料道路の料金徴収所などのゲートに用いられる電気遮断機にも適用することができる。
【0056】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0057】
1 モータ
3 発電制動制御回路
31 第1抵抗選択回路
32 第2抵抗選択回路
33 第3抵抗選択回路
5 昇降切替回路
7 カム・スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、発電制動制御回路とを含む遮断かん制御装置であって、
前記モータは、遮断かんを駆動するものであり、
前記発電制動制御回路は、選択可能な抵抗値の異なる複数の抵抗器を備え、前記モータに対する給電が停止されたとき、選択された前記抵抗器によって、前記モータに対し、前記遮断かんの有する自重降下時トルクの大きさに応じて区分された複数段階の発電制動を与える、
遮断かん制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された遮断かん制御装置であって、
前記モータは、三相モータであり、
前記発電制動制御回路は、前記モータの三相の全て又は二相を通して前記発電制動を与える、
遮断かん制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された遮断かん制御装置であって、
前記発電制動制御回路は、少なくとも一つの抵抗選択回路を備えており、
前記抵抗選択回路は、複数の抵抗器と、スイッチとを含み、
前記複数の抵抗器のそれぞれは、抵抗値が互いに異なっており、
前記スイッチは、切り替え操作により、前記複数の抵抗器の中から、少なくとも一つの抵抗器を選択する、
遮断かん制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された遮断かん制御装置であって、
カム・スイッチを含み、前記カム・スイッチは、遮断かん回転軸の回転に連動し、前記発電制動の開始時期及び停止時期を制御する、
遮断かん制御装置。
【請求項5】
遮断かん制御装置と、遮断かんとを含む遮断機であって、
前記遮断かん制御装置は、請求項1乃至4の何れかに記載されたものであり、
前記遮断かんは、前記遮断かん制御装置によって駆動される、
遮断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28255(P2013−28255A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165335(P2011−165335)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】