説明

遮水シートの構造

【課題】廃棄物処分場などの漏水検知領域の漏水を容易に検知できる遮水シートを提供する。
【解決手段】不透水性の材料である上シート11と下シート12によって構成した袋状シート1、漏水検知センサー2、および、当該センサーから引き出した光ファイバー21とによって遮水シートを構成し、かつ、当該遮水シートの内部を大気圧より低くして使用し、センサーとしては、乾燥時と湿潤時の相違を検知できる、または、膨張体の作用による光ファイバーの曲げ損失を測定できる構成とする。
【効果】遮水シートが破損した時、直ちに漏水を検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水位置を検知することができる遮水シートの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来廃棄物処分場などにおいて使用される遮水シートの漏水検知装置は、大別して物理的検知法、電気的検知法が知られている。
物理的検知法は、下水集排水管法、区画集排水法、真空吸引法があり、また、電気的検知法は、電位測定法、電位・比抵抗法、電流測定法、インピーダンス(交流抵抗)法がある。
また、この他に、光ファイバを使用して温度分布を測定し、漏水を検知する方法がある。
【特許文献1】特開2004−45218号公報。
【特許文献2】特開2004−45226号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した物理的検知法は、いずれにおいても地下水集排水設備を利用したもので、処分場などの構造を大きく変更せずに漏水を検知することができる。
しかし、漏水を把握するまでに時間がかかり、また、漏水位置の特定ができない欠点がある。
【0004】
電気的検知法は、遮水シートの絶縁性を利用したもので、遮水シートが破損したときに生じるシートを挟んだ2電極間の電位、電流などの分布を測定し、その漏水位置を検知する。
この方法は、遮水シート材が絶縁性でないと検知できない。
また、廃棄物処分場に導電性電極を敷設するので、落雷や誘導電流などの電気的な影響を受け易い欠点がある。
また、検知のための電極の位置を設置時に測量しておく必要がある。
また、電極からのケーブルは、一電極に一本以上必要とするため、電極の数が多い場合には、ケーブルの本数が多大となり、測定装置に近い部分では、ケーブルを集積するスペースが非常に大きくなる欠点がある。
【0005】
光ファイバによる温度分布測定法は、漏水に基づく温度変化を測定し、また、漏水個所が地下のため、局部的に温度が変化し難く、正確な検知が困難となる。

【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本発明の遮水シートの構造は、不透水性の材料である上シートと下シートとによって構成した袋状シートと、この袋状シートの内部に配置した、乾燥時と湿潤時の相違を判定できる検知センサーと、この検知センサーから引き出した光ファイバとによって構成した、遮水シートの構造を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遮水シートの構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ> 廃棄物処分場などの漏水検知領域の漏水を容易に検知できる。
<ロ> 落雷、誘導電流などの外部環境の影響を受けることがない。
<ハ> 導電率の高い遮水シートでも設置可能である。
<ニ> 遮水シートの内部が大気圧よりも低圧に設定しておけば、一箇所が破損すると、外部の液体が急激に遮水シートの内部に吸引される。そのために広い遮水シートの一部に配置してある小型のセンサーの周囲にもただちに液体で満たされるので、破損の直後にその状況を検知して表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>袋状シート1。
不透水性の材料である上シート11と下シート12とによって袋状シート1を構成する。
そのために例えば不透水性の材料を矩形に切断して上シート11と下シート12を形成する。
そして上シート11と下シート12の周囲を溶着、接着、縫合して中空の袋体を形成する。
上シートと下シートとの間に保護層として、例えば不織布の材料を組み込むことも可能である。
なおこの明細書において、上下のシート11、12を接着して袋状に形成したものを「袋状シート」と称し、この袋状シートに漏水検知センサー2を収納したものを「遮水シート」と称する。
【0010】
<2>センサーの配置。
この袋状シート1の内部に1個、または複数個の漏水検知センサー2を収納して配置する。
この漏水検知センサー2は、乾燥時と湿潤時の相違を判定できるセンサー、すなわち水の存在を検知できるセンサーを利用する。
【0011】
<3>センサーの構造。
水の存在を検知できるセンサーとして、例えば光ファイバ21内を伝搬してきた光を先端で反射するように構成したセンサーを利用する。
このようなセンサーでは、光ファイバ21の先端に接している媒質の屈折率の変化を、反射量の変化として検知することができる。
光は、光ファイバの先端で入射光の一部が反射する。
この反射を一般に「フレネル反射」と称するが、先端に接している媒質が変化すると、この反射量が変化することから、媒質が空気の場合と水の場合とを識別することができる。
【0012】
<4>センサーの他の構造。(図5、6)
水を検知できるセンサー2として、例えば水を検知して光ファイバ21に曲げを発生する水検知センサー2を使用することもできる。
このセンサーは、水に接すると膨張する膨張体22と、凸部を有する曲げ治具23とで構成する。
そして光ファイバ21を、膨張体22と曲げ治具23の間に配置する。
膨張体22が水に接すると膨張して、光ファイバ21を曲げ治具23の側へ押しつける。
曲げ治具23には先端に凸部が形成してあるから、光ファイバ21はこの凸部に沿って曲げられる。
その結果、光ファイバ21に曲げ損失が発生する。
その損失は曲げ損失を測定できる装置24によって測定することができるから、これにより漏水の有無とその位置を特定することができる。
【0013】
<5>光ファイバ21の引き出し。
上記のような各種の構成の漏水検知センサー2を袋状シート1の内部に収納して位置を固定する。
実際には、上下のシートの周囲を溶着、接着する前に漏水検知センサー2および引き出し用の光ファイバ21を下シート12の面に固定し、その後に上下のシートの周囲を溶着して袋状に形成する。
そして漏水検知センサー2から引き出した光ファイバ21を、袋状シート1の外部に延長する。
したがって図の実施例のように袋状シート1の内部に3個の漏水検知センサー2を配置した場合には、袋状シート1からは3本の光ファイバ21が外部に向けて延長することになる。
【0014】
<6>負圧の設定。
上シート11と下シート12によって構成した袋状シート1の内部の気圧は、大気圧よりも低く設定する。
そのために袋状シート1の一部だけに吸引口13を設け、この吸引口13に負圧ポンプを接続して内部の空気を吸引する。
ただし袋状シート1の内部は必ずしも真空にする必要はなく、大気圧よりも低い圧力に設定すればよい。
【0015】
<7>遮水シート3の敷設。
例えば廃棄物処分場の底面または側面に本発明の遮水シート3、すなわち袋状シート1の内部に検知センサー2を配置したシートを展開して敷設する。
その場合に1枚の遮水シート3の面積には限界があるから、隣接する遮水シート3の間は重ね合わせて溶着、接着して遮水の弱点とならないように構成することは当然である。
各遮水シート3からは漏水検知センサー2の数に応じた光ファイバ21が外部に向けて延長しているから、その光ファイバ21を廃棄物処分場の外部まで引き出す。
そして各光ファイバ21は接続ボックスに連結する。
さらに複数の接続ボックス22から延長した光ファイバ21を計測装置に接続し、制御、監視できるように構成する。
【0016】
<8>破損が生じた場合。
本発明の遮水シート3は、文字の通り「遮水」を目的としたものであり、その一部が破損した場合に漏水を検知する機能を備えている。
そのために前記したように袋状シート1の内部に漏水検知センサー2を配置して遮水シート3を構成するが、経済性から考えて1枚の遮水シート3に配置できる漏水検知センサー2の数には限界がある。
例えば遮水シート3は幅2m、長さ20mの寸法に形成しても、その内部に配置する漏水検知センサー2は2、3箇であり、その寸法もせいぜい5cm程度の長さのものである。
そうであると、漏水検知センサー2から遠く離れた位置で遮水シート3が破損して漏水が生じたとしてもその水分が漏水検知センサー2に到着するには相当の時間がかかることも考えられる
また、破損部の位置が漏水検知センサー2の設置高さよりも低い位置である場合には、水分が漏水検知センサー2まで到着しない状況も考えられる。
【0017】
<9>低圧にする理由。
そのような問題に対処するために本発明の遮水シート3では、遮水シート3を構成する袋状シート1の内部の気圧を大気圧よりも低く設定してある。
すると、図3に示すように、一箇所に破損部4が生じると、その周囲の水は袋状シート1の負圧によって急速に袋状シート1の内部に吸引される。
したがって、漏水検知センサー2の位置が破損部4から遠く離れていても、あるいは破損部4の位置よりも高い位置に設置してあっても、漏水検知センサー2の周囲にただちに水分が到着する。
漏水検知センサー2は乾燥時と湿潤時の相違を判別できる機能を備えているから、ただちにある袋状シート1において破損が生じた状況を検知することができる。
漏水検知センサー2の検知信号は、光ファイバ21を通して接続ボックス22から監視装置へ入力し、破損部4が属する遮水シート3の位置、破損部4の位置にもっとも近い漏水検知センサー2の位置を表示し、警報を発するなどの作動を行う。
【0018】
<10>他の用途。
以上の実施例では廃棄物処分場における使用状態について説明した。
しかしそれ以外にも建物の屋上、トンネルや地下鉄などの地下構造物などに広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】検知センサーを収納した袋状シートの実施例の説明図。
【図2】破損前の遮水シートの説明図。
【図3】遮水シートに破損が生じた状態の説明図。
【図4】遮水シートを処分場に敷設した状態の説明図。
【図5】検知センサーの他の例の説明図。
【図6】検知センサーの膨張体が膨張した状態の説明図。
【符号の説明】
【0020】
1:袋状シート
2:検知センサー
3:遮水シート
4:破損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性の材料である上シートと下シートとによって構成した袋状シートと、
この袋状シートの内部に配置した、乾燥時と湿潤時の相違を判定できる検知センサーと、
この検知センサーから引き出した光ファイバとによって構成した、
遮水シートの構造。
【請求項2】
上シートと下シートとの間に保護層を設けた、
請求項1記載の遮水シートの構造。
【請求項3】
上シートと下シートによって構成した袋状シートの内部の気圧は、
大気圧よりも低く設定してある、
請求項1記載の遮水シートの構造
【請求項4】
検知センサーは、
光ファイバ内を伝搬してきた光を、フレネル反射によって先端で反射するように構成し、
光ファイバの先端に接している媒質の屈折率の変化を、反射量の変化として検知する検知センサーである、
請求項1記載の遮水シートの構造。
【請求項5】
検知センサーは、
水に接すると膨張する膨張体と、
凸部を有する曲げ治具とで構成し、
光ファイバを、膨張体と曲げ治具の間に配置し、
膨張体が水に接すると膨張して、
光ファイバを曲げ治具の凸部に沿って曲げ,
光ファイバに曲げを発生させる検知センサーである、
請求項1記載の遮水シートの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−307499(P2007−307499A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140366(P2006−140366)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(501198039)国土交通省国土技術政策総合研究所長 (23)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(500140127)エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社 (61)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】