説明

遮水シート用連結部材及び二重遮水シートの連結構造と連結方法

【課題】 二重遮水シート同士の接合部分を確実に接合させるとともに、緩衝効果を備えて二重遮水シートとして、略均一な厚さで敷設を行うことを可能とする。
【解決手段】 隣り合う二重遮水シート100の下面側遮水シート13の端縁部13a同士と、上面側遮水シート11の端縁部11a同士とをを加熱して溶融接合するとともに、それぞれ接合された下面側遮水シート13の端縁部13aと、上面側遮水シート11の端縁部11aとの空間部25に、凹凸シート17の上下両面に補助シート16がそれぞれ接合された連結部材15を介設させ、かつ上下補助シート16を上下遮水シート11,13の端縁部11a,13aにそれぞれ接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場の地面、貯水池の底面、建物の屋上面等の被覆に用いられる遮水シートの連結部材及び二重遮水シートの連結構造とその連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば廃棄物を埋め立てて処分する廃棄物処分場は、埋め立てた廃棄物からの有毒な汚染水が地面に漏出しないように遮水シートを敷設する。従来、この種の遮水シートには、例えば断面波形の凹凸シートの表裏を基材シートで挟んだ積層構造のものがある。この遮水シートは、例えば、表裏の基材シートのそれぞれに、加熱溶融接着剤を塗布し、凹凸シートを挟んだ状態で加熱することで、凹凸シートの表裏面に基材シートを接合していた。すなわち、凹凸シートは、凸部先端が加熱溶融接着剤によって基材シートに接合される。したがって、遮水シートは、凹凸シートを挟んで二枚の基材シートを有することとなり、仮に一方の基材シートに穿孔が生じても、他方の基材シートによって漏水が阻止され、二重に防水効果が得られるようになっていた。
【0003】
上述した構造の遮水シートは、凹凸により所定の厚みを有することとなる凹凸シートを二枚の基材シートで挟んだ構成であることから、上面(表面)となる基材シートと下面(裏面)となる基材シートとに凹凸シートの厚み分の間隔を備えた構造となる。そして、この遮水シートは、所定の幅長及び長さよりなり、敷設現場にて複数の遮水シートを幅方向及び長さ方向に連結することで上記したような処分場の地面を覆うように構成され、すなわち、遮水シートは、その端縁同士を接合することとなる。この遮水シート同士の接合は、凹凸シートよりも基材シートの周縁を長く延出させて形成し、この周縁を接合代とし、隣り合う遮水シート同士の接合代同士を接合することで行っている。この接合の構造としては、接合代の延出長さを、上下いずれかの基材シートの延出長さを大きく設定し、上下基材シートの延出させた片側同士を接合することで、段差の生じない平坦な連結構造とする方法や、或いは、それぞれ同等の長さに延出された周縁部分(接合代)を、下面基材シート同士で重合して接合し、その後上面基材シート同士で重合して接合することで遮水シート同士の接合としていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遮水シート同士の連結構造を上述のような構造としていることで、遮水シート同士の連結部分は、凹凸シートが存在しない部分となり、上記したような処分場に敷設された状態で、厚みが上下の基材シートのみとなって、遮水シートの表面として矩形枠状の凹み部分が形成されてしまう不具合がある。そして、このことから、凹凸シートによる緩衝効果を得ることができないこととなる。
この凹凸シートを配置することができない原因としては、遮水シート同士の連結を行うために、基材シート同士を互いに重合等するための接合代を確保するためであるとともに、互いの加熱溶融接合を行う自動溶接機が移動するための空間も兼ねており、このことから隣り合う遮水シートの凹凸シートの存在しない空間部分が数十cmの幅を有して残存することとなる。
【0005】
また、この遮水シート同士の接合部分において、上面側の基材シートと下面側の基材シートとがそれぞれで接合され上下間で接合されない場合に、上下基材シート間に液状物などの充填材を注入した場合、この接合部分において液状物が移動してしまい、例えばこの遮水シートを傾斜面(法面)に敷設した場合に、液状物自体の重みにより、法面の下方側に移動し、接地面側である下面側基材シートに対して上面側の基材シートを膨らませ、上下の基材シート間で液状物が均等にならなくなるという不具合もある。
【0006】
このような不具合に対し、遮水シート同士の端縁接合部分に、凹凸シートを上下基材シート間に挟み込み、例えば加熱溶融接着剤などを用いることで積層構造として構成させることも考えられるが、凹凸シートの凹凸面と平滑な基材シートとの接着は、現場施工であることからも均等な接着状態を得ることができず、確実に互いを接着させることが困難であることから、剥離などを起こすことがあり、上記同様の液状物の移動等の不具合が避けられない。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、二重遮水シート同士の接合部分を、確実に接合させるとともに、緩衝効果を備えて互いを接合できる遮水シート用連結部材を得ることを目的とするとともに、この連結部材を用いて、二重遮水シートとして、略均一な厚さで敷設を行うことを可能とする二重遮水シートの連結構造とその連結方法を提供し、もって、二重遮水シートの性能向上、及び経済性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の遮水シート用連結部材は、表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部19の端面が間隔をあけられた面上に存在する凹凸シート17の上下両面に、補助シート16がそれぞれ接合されており、遮水シート同士の連結部分に配置され、各遮水シートの縁部にわたって接合されることを特徴とする。
【0009】
この遮水シート用連結部材15では、隣り合う遮水シートの連結部分に、各遮水シートのそれぞれの縁部にわたるよう接合され、各縁部同士の接合を補強することとなる。特に各遮水シートの構造が、上面側遮水シートと下面側遮水シートとで構成されて、これら上下各遮水シート間に凹凸シートなどを介設した所定の厚みのある二重遮水シートの場合に、上面側遮水シートの縁部と下面側遮水シートの縁部とを隣り合う遮水シートのそれぞれに接合し、かつこれら上下の縁部の間に形成される空間部に、この連結部材15を収容するようにそれぞれに接合されることとなり、上下各縁部にわたって接合されて、両遮水シートの連結の補強となり、かつ上下遮水シート間の凹凸シートによる間隔(厚み)の支持を行えることが可能となる。
【0010】
本発明の請求項2記載の二重遮水シートの連結構造は、表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部19の端面が間隔をあけられた面上に存在する凹凸シート17の上下両面に前記凹凸シート17より大面積の遮水シート11,13をそれぞれ接合してなる二重遮水シート100であって、前記上下各遮水シート11,13の端縁と、他の二重遮水シートの上下各遮水シート100の端縁とをそれぞれに接合して連結する二重遮水シートの連結構造において、
隣り合う二重遮水シート100の下面側遮水シート13の端縁部13a同士と、上面側遮水シート11の端縁部11a同士とをを加熱して溶融接合するとともに、それぞれ接合された下面側遮水シート13の端縁部13aと、上面側遮水シート11の端縁部11aとの空間部25に、凹凸シート17の上下両面に補助シート16がそれぞれ接合された連結部材15を介設させ、かつ上下補助シート16を上下遮水シート11,13の端縁部11a,13aにそれぞれ接合したことを特徴とする。
【0011】
この二重遮水シート100の連結構造では、隣り合う二重遮水シート100の連結部分における空間部25に、凹凸シート17と補助シート16で構成される連結部材15を介設させたので、この連結部分での二重遮水シート100の上下遮水シート11,13間に厚みを形成でき、各シート11,13の間隔が支持されることとなる。これにより、二重遮水シート100が多数連結され、処分場などに敷設された状態では、その互いの連結部分が凹むことなく、一様な表面となって敷設された状態となる。そして、各二重遮水シート100の連結部分においては、この連結部材15によって緩衝効果を得ることができることとなる。また、この連結構造によれば下面側遮水シート13,13同士の連結、及び上面側遮水シート11,11同士の連結に、さらに連結部材15が跨がるように接合されることから、各シート11,13間の連結方向の強度、すなわち二重遮水シート同士の連結強度が向上することとなる。さらに、上下各遮水シート11,13の端縁部11a,13a、連結部材15とが加熱での溶融接合であることで、互いが確実に接合されることとなり、剥離することがない。
【0012】
請求項3記載の二重遮水シートの連結構造は、前記補助シート16は、帯状に形成されることを特徴とする。
【0013】
この二重遮水シート100の連結構造では、上面側遮水シート11と下面側遮水シート13とに、連続して接合させることが可能となり、すなわち長手方向に連続した作業で互いの接合が行えることとなる。また、長手方向に連続して同じ構造となることで製作が容易となる。
【0014】
請求項4記載の二重遮水シートの連結方法は、表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部19の端面が間隔をあけられた面上に存在する凹凸シート17の上下両面に前記凹凸シート17より大面積の遮水シート11,13をそれぞれ接合してなる二重遮水シート100であって、前記上下各遮水シート11,13の端縁部11a,13aと、他の二重遮水シート100の上下各遮水シート11,13の端縁部11a,13aとをそれぞれに接合して連結する二重遮水シートの連結方法において、
隣り合う二重遮水シート100の下面側遮水シート13の端縁部13a同士を加熱して溶融接合し、
凹凸シート17の上下両面17a,17bにそれぞれ補助シート16を接合した連結部材15を、前記下面側遮水シート13同士の接合部分に載置して、前記連結部材15の下面側補助シート16と、前記接合部分における互いに接合済みの下面側遮水シート13とを加熱して溶融接合し、
前記接合部分における隣り合う二重遮水シート100の上面側遮水シート11の各端縁部11aと前記連結部材15の上面側補助シート16を加熱して溶融接合し、
前記二重遮水シート100の上面側遮水シート11の各端縁部11a同士を加熱して溶融接合する
ことを特徴とする。
【0015】
この二重遮水シートの連結方法では、上面側遮水シート11、下面側遮水シート13の各端縁部11a,13aが、加熱での溶融接合であり、また連結部材15とも加熱での溶融接合であることで、互いの接触面が確実に接合され、これら上下各遮水シート11,13と連結部材15との接合強度を高めることができる。また、各遮水シート11,13と連結部材15とを加熱溶融接合することで二重遮水シート100の連結部分が構成されることとしたので、従来方法のような加熱溶融接着剤を不要とすることができ、経済性を向上させることができるとともに、接着剤を使用する工程を省くことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載の二重遮水シート用連結部材によれば、隣り合う遮水シートの連結部分に、各遮水シートのそれぞれの縁部にわたるよう接合され、各縁部同士の接合を補強することとなり、これら遮水シート同士の連結を確実に行えることとなる。特に各遮水シートの構造が、上面側遮水シートと下面側遮水シートとで構成されて、これら上下各遮水シート間に凹凸シートなどを介設した所定の厚みのある二重遮水シートの場合に、上面側遮水シートの縁部と下面側遮水シートの縁部とを隣り合う遮水シートのそれぞれに接合し、かつこれら上下の縁部の間に形成される空間部に、この連結部材を収容するようにそれぞれに接合されることとなり、上下各縁部にわたって接合されて、両遮水シートの連結の補強となり、かつ上下遮水シート間の凹凸シートによる間隔(厚み)の支持を行えることが可能となる。
【0017】
本発明に係る請求項2記載の二重遮水シートの連結構造によれば、隣り合う二重遮水シートの連結部分における空間部に、凹凸シートと補助シートで構成される連結部材を介設させたので、この連結部分での二重遮水シートの上面側遮水シートと下面側遮水シートとの間に厚みを形成でき、各遮水シートの間隔が支持されることとなる。これにより、二重遮水シートが多数連結され、処分場などに敷設された状態では、その互いの連結部分が凹むことなく、略均一な厚さとなって敷設された状態となる。そして、各二重遮水シートの連結部分においては、この連結部材によって緩衝効果を得ることができることとなる。
また、この連結構造によれば下面側遮水シート同士の連結、及び上面側遮水シート同士の連結に、さらに連結部材が跨がるように接合されることから、各遮水シート間の連結方向の強度、すなわち二重遮水シート同士の連結強度が向上することとなる。
さらに、上下各遮水シートの端縁部と、連結部材とが加熱での溶融接合であることで、互いが確実に接合されることとなり、剥離することがない。
【0018】
本発明に係る請求項3記載の二重遮水シートの連結構造によれば、補助シートを帯状に形成することで、上面側遮水シートと下面側遮水シートとに、連続して接合させることが可能となり、すなわち長手方向に連続した作業で互いの接合が行えることとなる。
また、長手方向に連続する構造となることで製作が容易となる。
【0019】
本発明に係る請求項4記載の二重遮水シートの連結方法によれば、上面側遮水シート、下面側遮水シートの各端縁部が、加熱での溶融接合であり、また連結部材とも加熱での溶融接合であることで、互いの接触面が確実に接合され、これら上下各遮水シートと連結部材との接合強度を高めることができる。特に、互いを接合するための端縁部の部分に、自動溶接機を搬入することが可能であり、このことからも、互いの確実な接合を行え、遮水シートの連結部分としての信頼性を向上させることが可能となる。
また、各遮水シートと連結部材とを加熱溶融接合することで二重遮水シートの連結部分が構成されることとしたので、従来方法のような加熱溶融接着剤を不要とすることができ、経済性を向上させることができるとともに、接着剤を使用する工程を省くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る遮水シート用連結部材および二重遮水シートの連結構造とその連結方法の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
まずはじめに、二重遮水シートの構造について説明する。
二重遮水シート100は、上面側遮水シート11と、下面側遮水シート13と、凹凸シート17とを接合した積層構造を有する。上面側遮水シート11及び下面側遮水シート13は、表裏面が平滑なシート状部材とされる。凹凸シート17は、表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部19の端面が間隔をあけられた面上に存在する構成とされ、別言すると、一方の面17aに、複数の凸部19が縦横所定間隔で形成されるとともに、この凸部19同士の間が凹部21となり、他方の面17bでは凸部19が凹部21となり、凹部21同士の間が凸部19となる構造となっている。
各遮水シート11,13及び凹凸シート17には、例えばオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エラストマー等からなるシートを用いることができる。
【0022】
そして、凹凸シート17の一方の面17aに上面側遮水シート11を接合し、他方の面17bに下面側遮水シート13を接合して構成される。
【0023】
上面側,下面側遮水シート11,13及び凹凸シート17は、例えば方形に形成される。上面側,下面側遮水シート11,13は、凹凸シート17より大外形で形成される。したがって、上面側遮水シート11と下面側遮水シート13とが凹凸シート17に接合された状態で、各遮水シート11,13は、四辺の縁部(周縁部)が、凹凸シート17より外方へ延出され、端縁部としての接合代11a,13aとされる。
【0024】
二重遮水シート100は、この延出した上下に位置する上面側,下面側遮水シート11,13の各周縁の接合代11a,13a間における凹凸シート17の端縁部分に、図示しないが、加熱溶融等によって、例えば超音波溶着や高周波溶着、加熱鏝などの方法にて端部固定材が接合される。この端部固定材は、凹凸シート17に対して上下遮水シート11,13が過度に捲れないように互いの間隙を固定するとともに、上下の遮水シート11,13の間に、凹凸シート17を収容した中空部23が形成されるようになる。そして、二重遮水シート100は、厚み方向に加わる荷重が、凹凸シート17によって支持されるようになっている。
【0025】
二重遮水シート100は、この中空部23に、液状物、ガス等が封入されてもよい。例えば、着色液状物を封入すれば、遮水シート11,13に穿孔や亀裂が生じた際にこの着色液状物が洩れ、これをマーカとして穿孔等の容易な発見が可能となる。また、液状物、ガス等を封入することにより、凹凸シート17による支持構造に加え、厚み方向の耐荷重をさらに高めることもできる。
【0026】
次に、上記の二重遮水シートの製造方法を説明する。
凹凸シート17は、円周面に多数の突起を有する一対の成形型の間に、シート状基材を導入して塑性変形させることにより得られる。この凹凸シート17の連続成形装置(図示は省略する)は、円周面に多数の突起を備えた成形型である一対の回転ロールを備える。一方の回転ロールの突起は他方の回転ロールの突起と接触しない状態で、一方の回転ロールの突起の先端がなす仮想円筒面内に他方の回転ロールの突起の先端が嵌入するように構成されている。したがって、これら一対の回転ロールの間にシート状基材を導入することで、シート状基材の表裏に複数の凹凸を所定間隔で形成した凹凸シート17が連続的に繰り出されて成形されるようになっている。
【0027】
このように形成される凹凸シート17と、上面側遮水シート11,下面側遮水シート13との接合には、加熱溶融接着剤、或いは、連続加熱溶融接合装置(図示は省略する)等が用いられる。
【0028】
例えば、加熱溶融接着剤を用いて接合を行う方法は、図8に示すように、凹凸シート17の一方の面17aに上面側遮水シート11を、他方の面17bに下面側遮水シート13を、それぞれ接合し積層形成する際に、互いを加熱溶融接着剤にて接合を行う。この加熱溶融接着剤は、凹凸シート17側に塗布されることとしてもよく、或いは遮水シート11,13側に塗布されることとしてもよい。そして凹凸シート17を挟んだ状態で上下遮水シート11,13から加熱を行って、互いを接合させ、二重遮水シート100を得る。
【0029】
また、連続加熱溶融接合装置を用いて接合を行う方法は、図9に示すような構造の二重遮水シート100となる。すなわち、凹凸シート17を2枚で構成し、一方の凹凸シート17には、その一方の面に遮水シート例えば上面側遮水シート11を連続加熱溶融接合装置を用いて接合し、他方の凹凸シート17の一方の面に遮水シート例えば下面側遮水シート13を連続加熱溶融接合装置を用いて接合し、その後それぞれの凹凸シート17,17同士を対向して凹凸を互いに嵌め合せるとともに、加熱溶融接着剤で接合させ、凹凸シート17が二重とされて遮水シート11,13が表裏面(上下面)となる構成とする。
【0030】
このような凹凸シート17を二重とする二重遮水シート100の製法を詳述すると、連続加熱溶融接合装置は、円周面に多数の棒状の加熱手段、例えば棒形状の溶接部としての加熱ヒータを凹部21の間隔と同間隔で突設させた加熱回転ロールと、凹凸のない円周面を有する押さえ回転ロールとを備える。遮水シート11(13)と凹凸シート17とを接合するには、押さえ回転ロール側に遮水シート11(13)を配置し、加熱回転ロール側に凹凸シート17を配置させて、両ロール間に遮水シート11(13)と凹凸シート17とを重ねて導入する。この際、凹凸シート17は、凹部21に加熱ヒータが一致するように導入する。これにより、加熱ヒータの先端が凹凸シート17の凹部21に順次挿入されるとともに、凹部21の底面21aと、遮水シート11(13)とが棒状加熱ヒータと押さえ回転ロールとに加熱圧接され、全ての凸部先端19aが遮水シート11(13)と加熱溶融接合される。なお、加熱ヒータは、好ましくは先端が略球面形状とされた円柱体とされ、凹部21に対して曲面で加熱が行われる。また、凹凸シート17と遮水シート11(13)とが接合された状態では、それぞれが容易に剥離などを起こさないことから、巻回状態として搬送などを行うことが可能となる。
【0031】
このようにして得られた上面側シートと下面側シートとは、両シート間に接着剤としての加熱溶融接着剤を塗布し、例えば、一方のシートに点状や線状などの所定のパターンに位置して塗布を行い、相互の凹21,凸19を嵌め合わせて、凹凸シート17,17同士を加熱溶融接着剤にて接合する。これにより、図9に示すように上面側遮水シート11と下面側遮水シート13とが2枚の凹凸シート17,17を介在させて接合され、二重遮水シート100の製造が完了する。
【0032】
次に、上記した二重遮水シートを連結する際に用いる連結部材について説明する。
図1は本発明に係る二重遮水シートの連結構造の一部分解斜視図、図2は図1に示した二重遮水シートの連結構造の断面図である。
この連結部材15は、上記した凹凸シート17と同等の凹凸シート17を用い、上下両面に補助シート16を接合して構成される。この連結部材15は、上述した二重遮水シート100同士を連結するために上下各遮水シート11,13の周縁に延出形成された接合代11a,13aに対応させた幅長で、各接合代11a,13aを接合した際に形成される空間部25の幅長とされ、また、この接合代11a,13aに沿って所定長さの帯状に形成される。本実施の形態では、凹凸シート17の幅長を、上記した接合代11a,13aに対応した幅長として略帯状とし、補助シート16はさらに小幅な帯形状として複数で構成し、凹凸シート17の一方の面17aには、補助シート16を2カ所、他方の面17bには3カ所として凹凸シート17の長手方向に沿って接合され、図2に示すように、断面視で各補助シート16が千鳥配置されるよう構成される。
【0033】
この連結部材15を構成する凹凸シート17と各補助シート16との接合には、上記同様の連続加熱溶融接合装置が用いられる。すなわち、円周面に多数の棒状の加熱手段、例えば棒形状の溶接部としての加熱ヒータを凹部21の間隔と同間隔で突設させた加熱回転ロールと、凹凸のない円周面を有する押さえ回転ロールとを備えた装置である。
【0034】
そして、凹凸シート17と補助シート16との接合は、押さえ回転ロール側に補助シート16を配置し、加熱回転ロール側に凹凸シート17を配置させて、両ロール間に補助シート16と凹凸シート17とを重ねて導入する。この際、凹凸シート17は、凹部21に加熱ヒータが一致するように導入する。これにより、加熱ヒータの先端が凹凸シート17の凹部21に順次挿入されるとともに、凹部21の底面21aと、補助シート16とが棒状加熱ヒータと押さえ回転ロールとに加熱圧接され、反対の面の凸部先端19aが補助シート16と加熱溶融接合される。
【0035】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、補助シート16が略帯状に形成され、所定間隔ごと、例えば補助シート16と略同幅の間隔ごとに配置されることから、加熱ヒータの配設位置も同様に所定間隔ごとに略帯状の集合部分と間隙部分とが交互に配置形成とされる。すなわち、凹凸シート17に対して、補助シート16の存在しない個所においては加熱が行われないこととなる。
【0036】
このことから、例えば、これら加熱回転ロールと、押さえ回転ロールとを補助シート16の幅長と同幅な形状として、並設状態としたロール、すなわち、加熱ヒータを備える凸部分と凹凸のない面部分とを交互に配置したロールを、凸部分と面部分とが対向するように、2つのロールで構成させれば、凹凸シート17に対して、両面に各補助シート16を一度の導入で接合して、連結部材15を得ることも可能である。
【0037】
なお、凹凸シート17と補助シート16、及び、上述した凹凸シート17と上下の遮水シート11,13との接合において、連続加熱溶融接合装置を用いた接合方法では、加熱ヒータの形状を先端が略球面形状とされた円柱体としたことで、接合時における凹凸シート17の凹部21内への挿入がスムースになり、また、角部分を有さない略球面状であることから略中央が膨らんだ形状でこの中央に向けて圧力がかかることとなり、確実に凹凸シート17と補助シート16、及び凹凸シート17と上下遮水シート11,13とを密着させることが可能となって、確実な加熱が行われて溶融接合させることが可能となる。そして、このことから、凹凸シート17と補助シート16、及び凹凸シート17と上下の遮水シート11,13との剥離強度を大きくすることが可能となる。
【0038】
そして、この連結部材15は、上記した二重遮水シート100,100同士を連結する際に、その連結部分に形成される空間部25に収容された状態となって、この空間部25における、下面側遮水シート13,13の接合代13a,13a同士の接合部分と、上面側遮水シート11,11の接合代11a,11a同士の接合部分との間にて、それぞれに接合されて配置され、すなわち介設されることとなる。
【0039】
したがって、この連結部材15を用いられる二重遮水シート100の連結構造は、図2に示すように、下面側遮水シート13,13の接合代13a,13a同士の接合部分と、上面側遮水シート11,11の接合代11a,11a同士の接合部分との間となる空間部25に介設されて隣り合う二重遮水シート100,100同士の連結部分に、上面側の各遮水シート11,11と下面側の各遮水シート13,13とにわたるように接合されて、これらの接合を補強するようになり、また、これら上下遮水シート11,13間を、凹凸シート17で構成されるその厚みで支持し、すなわち上下遮水シート11,13の間隔距離を維持することができ、そして、緩衝効果等を得ることが可能となる。
【0040】
次に、上記した二重遮水シート100の連結方法について説明する。
図3は隣り合う二重遮水シートの下面側遮水シート同士の接合説明図、図4は連結部材と下面側遮水シートとの接合説明図、図5は連結部材と上面側遮水シートとの接合説明図、図6は上面側遮水シート同士の接合説明図である。
処分場などに敷設される二重遮水シート100は、隣り合う二重遮水シート100と一部が重合するように、すなわち、二重遮水シート100の端縁部同士を所定幅長で重ねてそれぞれ配置される。それぞれが重なり合った状態で、まず、図3に示すように、これら隣り合う二重遮水シート100,100の下面側遮水シート13,13の端縁部同士である接合代13a,13a同士を加熱して溶融接合する。この接合には、上面側遮水シート11,11の端縁部(接合代11a)を捲った状態として、互いの凹凸シート17,17の端縁間である空間部25に、自動溶接機(図示せず)を搬入させ、下面側遮水シート13,13同士を加熱し溶融接合する。
【0041】
次に、図4に示すように、連結部材15を、上記空間部25内に収容し、接合済みの下面側遮水シート13の接合部分(接合代13a)上に載置する。そして、図5に示すように、連結部材15の下面側の各補助シート16と下面側遮水シート13の接合代13a部分とを加熱し溶融接合を行う。
【0042】
次に、図6に示すように、捲られている各上面側遮水シート11,11をそれぞれ略半部戻し、これら上面側遮水シート11のそれぞれの接合代11aの中途部分と、連結部材15の上面側の補助シート16とを加熱し溶融接合を行う。
そして、上面側遮水シート11,11の接合代11a,11a同士を重ね、これらを加熱し溶融接合を行い、以上で二重遮水シート100,100同士の連結が完了する(図2参照)。
【0043】
上記した連結部材15と下面側遮水シート13及び上面側遮水シート11との接合は、連結部材15の補助シート16と各遮水シート11,13の接合代11a,13aとの接合となり、図示のように、面同士の接合となるので、確実に互いが溶融接合される。これらの接合には、熱風、或いは熱鏝等によって行われるが、連結部材15と下面側遮水シート13、及び連結部材15と上面側遮水シート11との接合は、連続的に接合を行うこととしてもよく、非連続、例えば点状に接合でもよい。また、上面側遮水シート11の接合代11a同士の接合は自動溶接機、或いは手動溶接機を用いて連続溶接を行って互いを接合する。
【0044】
したがって、上記の二重遮水シート100の連結構造によれば、隣り合う二重遮水シート100の連結部分における空間部25に、凹凸シート17と補助シート16で構成される連結部材15を介設させたので、この連結部分での二重遮水シート100の上下遮水シート11,13間に厚みを形成でき、各シート11,13の間隔が支持されることとなる。これにより、二重遮水シート100が多数連結され、処分場などに敷設された状態では、その互いの連結部分が凹むことなく、略均一な厚さとなり、一様な表面となって敷設された状態となる。そして、各二重遮水シート100の連結部分においては、この連結部材15によって緩衝効果を得ることができることとなる。
【0045】
また、この連結構造によれば下面側遮水シート13,13同士の連結、及び上面側遮水シート11,11同士の連結に、さらに連結部材15が跨がるように接合されることから、各シート11,13間の連結方向の強度、すなわち二重遮水シート同士の連結強度を向上することができる。
【0046】
さらに、上下各遮水シート11,13の端縁部である接合代11a,13aが、加熱での溶融接合であり、また連結部材15とも加熱での溶融接合であることで、互いが確実に接合されることとなり、剥離してしまうような不具合がなくなる。
【0047】
特に、二重遮水シート100の構造として、凹凸シート17を二重とした構造(図9参照)では、凹凸シート17同士の接合以外での互いの接合が接着剤を使用しない接合となり、すなわち、上面側遮水シート11、下面側遮水シート13、凹凸シート17、及び連結部材15とがそれぞれ加熱溶融接合で構成されることから、十分な剥離強度を備えることとなり、上面側遮水シート11と下面側遮水シート13のそれぞれに作用するずれ方向の力に対する強度を高めることができる。また二重遮水シート100の連結部分においても十分な強度を得られるものとなる。
【0048】
その結果、図7に示すように、斜面31に二重遮水シート100が敷設され、その上面に堆積物からの荷重が作用した場合であっても、強固な接合構造によって上面側,下面側遮水シート11,13間のずれを防止することができるとともに、二重遮水シート100のそれぞれの連結部分においても同様の性能を得ることができる。
【0049】
さらに、凹凸シート17により各遮水シート11,13間に連結部分も含めて中空部23が形成されるので、穿孔や亀裂等の破損が生じた場合であっても、中空部23に充填材を注入することが可能となり、穿孔等をこの充填材によって閉塞させる応急修理を可能にすることができる。
【0050】
また、上述した二重遮水シート100の連結方法によれば、上面側遮水シート11、下面側遮水シート13の端縁部である各接合代11a,13aが、加熱での溶融接合であり、また連結部材15とも加熱での溶融接合であることで、互いの接触面が確実に接合され、これら上下各遮水シート11,13と連結部材15との接合強度を高めることができる。また、各遮水シート11,13と連結部材15とを加熱溶融接合することで二重遮水シート100の連結部分が構成されることとしたので、従来方法のような加熱溶融接着剤を不要とすることができ、経済性を向上させることができるとともに、接着剤を使用する工程を省くことが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、凹凸シート17の製造方法として、円周面に多数の突起を備えた成形型である一対の回転ロールを用いてシート状基材の表裏に複数の凹凸を所定間隔で形成して得る例を示したが、平板状のシート状基材に対して、平板なまま表裏面からプレス加工を行うように成形する方法としてもよく、すなわち平板状で一方の面に凹凸面を備える一方の型枠と、これに対向して凹凸面を備える他方の型枠、或いは、棒状突起を対向する両面に備えるような成形型などとの間に挟み込み、所定の圧力にて成形するような方法で得られることとしてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態では、連結部材15を構成する凹凸シート17に接合される補助シート16を小幅な帯形状とし、この補助シート16と略同幅の間隔を有するように、凹凸シート17の上下両面に接合した例を示したが、この補助シート16の形状については、上述の帯形状に限定されることなく、例えば矩形小片状に形成して、凹凸シート17に対して千鳥状、或いはその他のパターンで配置し接合することとしてもよい。この場合、凹凸シート17と補助シート16との接合には、上述の加熱ヒータが円周面に配設される加熱回転ロールではなく、平面上に円柱状の加熱ヒータが配設されるような加熱手段とする。
【0053】
さらに、上述した実施の形態では、連結部材15を、二重遮水シート100同士の連結部分に沿って連続した帯状に形成される例について述べたが、この連結部材15は、二重遮水シート100の連結部分の空間部25の幅長であれば、連続した一体に帯状となって形成されていなくとも良く、所定長さの略ブロック状に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る遮水シート用連結部材及び二重遮水シートの連結構造の一部分解斜視図である。
【図2】図1に示した二重遮水シートの連結構造の断面図である。
【図3】隣り合う二重遮水シートの下面側遮水シート同士の接合説明図である。
【図4】連結部材と下面側遮水シートとの接合説明図である。
【図5】連結部材と上面側遮水シートとの接合説明図である。
【図6】上面側遮水シート同士の接合説明図である。
【図7】傾斜面に敷設された本発明に係る二重遮水シートの断面図である。
【図8】本発明に係る二重遮水シートの分解斜視図である。
【図9】本発明に係る二重遮水シートの他の構造の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
11…上面側遮水シート
11a…端縁部(接合代)
13…下面側遮水シート
13a…端縁部(接合代)
15…連結部材
16…補助シート
17…凹凸シート
17a…一方の面
17b…他方の面
19…凸部
21…凹部
100…二重遮水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部の端面が間隔をあけられた面上に存在する凹凸シートの上下両面に、補助シートがそれぞれ接合されており、遮水シート同士の連結部分に配置され、各遮水シートの縁部にわたって接合されることを特徴とする遮水シート用連結部材。
【請求項2】
表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部の端面が間隔をあけられた面上に存在する凹凸シートの上下両面に前記凹凸シートより大面積の遮水シートをそれぞれ接合してなる二重遮水シートであって、前記上下各遮水シートの端縁部と、他の二重遮水シートの上下各遮水シートの端縁部とをそれぞれに接合して連結する二重遮水シートの連結構造において、
隣り合う二重遮水シートの下面側遮水シートの端縁部同士と、上面側遮水シートの端縁部同士とをを加熱して溶融接合するとともに、それぞれ接合された下面側遮水シートの端縁部と、上面側遮水シートの端縁部との空間部に、凹凸シートの上下両面に補助シートがそれぞれ接合された連結部材を介設させ、かつ上下補助シートを上下遮水シートの端縁部にそれぞれ接合したことを特徴とする二重遮水シートの連結構造。
【請求項3】
前記補助シートは、帯状に形成されることを特徴とする請求項2記載の二重遮水シートの連結構造。
【請求項4】
表裏両面に交互に凹凸形成され、その表裏両面の凸部の端面が間隔をあけられた面上に存在する凹凸シートの上下両面に前記凹凸シートより大面積の遮水シートをそれぞれ接合してなる二重遮水シートであって、前記上下各遮水シートの端縁部と、他の二重遮水シートの上下各遮水シートの端縁部とをそれぞれに接合して連結する二重遮水シートの連結方法において、
隣り合う二重遮水シートの下面側遮水シートの端縁部同士を加熱して溶融接合し、
凹凸シートの上下両面にそれぞれ補助シートを接合した連結部材を、前記下面側遮水シート同士の接合部分に載置して、前記連結部材の下面側補助シートと、前記接合部分における互いに接合済みの下面側遮水シートとを加熱して溶融接合し、
前記接合部分における隣り合う二重遮水シートの上面側遮水シートの各端縁部と前記連結部材の上面側補助シートを加熱して溶融接合し、
前記二重遮水シートの上面側遮水シートの各端縁部同士を加熱して溶融接合する
ことを特徴とする二重遮水シートの連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−26585(P2006−26585A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211765(P2004−211765)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【出願人】(000109233)チカミミルテック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】