説明

遮熱性屋外設置用ポリカーボネート樹脂筐体

【課題】遮熱性に優れた屋外で使用する樹脂筐体を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70〜97重量部、および(B)有機物で表面処理された、平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタン(B成分)3〜30重量部よりなることを特徴とする樹脂組成物を成形して得られる近赤外領域の日射反射率が80%以上である屋外設置用樹脂筐体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる屋外設置用ポリカーボネート樹脂筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、その製造、成形の容易さのため、あらゆる産業において広く用いられている。特に、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、一般に優れた耐熱性や耐衝撃性を有し、電子機器、機械、自動車などに幅広く使用されている。特に近年、スマートグリッドに代表される屋外で使用される樹脂筐体においては、内部の精密機器を保護する観点から、太陽光に由来する熱を抑制する遮熱対策が非常に重要な課題となっている。
【0003】
樹脂成形品の遮熱性を向上させる方法として、近赤外領域の日射反射率を向上させる方法が挙げられる。一般的に反射率を向上させる方法としては、酸化チタンを添加する方法(特許文献1〜6参照)が公知であるが、500nmを超える粒径の酸化チタンを検討している事例はなく、遮熱性能としては不充分であった。また、赤外線遮蔽機能を付与する方法として、熱可塑性樹脂に500nmを超える酸化チタンを添加する方法(特許文献7参照)が公知であるが、ポリカーボネート樹脂に適応する場合には、成形品外観が不十分といった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−144165号公報
【特許文献2】特開2009−062418号公報
【特許文献3】特開2007−270076号公報
【特許文献4】特開2002−363302号公報
【特許文献5】特許第3458897号公報
【特許文献6】特許第3424696号公報
【特許文献7】特開2006−341628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遮熱性に優れた屋外で使用する樹脂筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に有機物で表面処理された、平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタンを配合した樹脂組成物を成形して得られる近赤外領域の日射反射率が80%以上である樹脂筐体が、遮熱性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明は、(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70〜97重量部、および(B)有機物で表面処理された平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタン(B成分)3〜30重量部よりなることを特徴とする樹脂組成物を成形して得られる遮熱性に優れた、近赤外領域の日射反射率が80%以上である樹脂筐体を提供するものである。
【0008】
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは13,000〜40,000、より好ましくは15,000〜38,000である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。かかるポリカーボネート樹脂の詳細については、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0009】
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0010】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
【0011】
(B成分:有機物で表面処理された平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタン)
本発明でB成分として使用されるのは、有機物で表面処理された平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタンである。(尚、本発明においては酸化チタン顔料の酸化チタン成分を“TiO”と表記し、表面処理剤を含む顔料全体について“酸化チタン”と表記する)
【0012】
B成分におけるTiOは結晶形がアナタース型、ルチル型のいずれのものでもよく、それらは必要に応じて混合して使用することもできる。初期の機械特性や長期耐候性の点でより好ましいのはルチル型である。尚、ルチル型結晶中にアナタース型結晶を含有するものでもよい。更にTiOの製法は硫酸法、塩素法、その他種々の方法によって製造された物を使用できるが、塩素法がより好ましい。また本発明の酸化チタンは、特に、その形状を限定するものではないが粒子状のものがより好適である。酸化チタンは、通常各種着色用途に使用されているが、一般的には0.2μm程度のものが広く使用されている。これに対し、本願発明のB成分として使用される酸化チタンの平均粒子径は、0.5〜5.0μmであり、0.5〜2.0μmが好ましく、0.5〜1.5μmがより好ましい。平均粒子径が0.5μmより小さい場合、高充填した場合にシルバー等の外観や難燃性が悪化し、また近赤外領域の充分な日射反射率をえられず遮熱性が不十分となり、5.0μmより大きい場合、外観の悪化や遮熱性能の低下が起こる。なお、かかる平均粒子径は電子顕微鏡観察から、個々の単一粒子径を測定しその数平均により算出される。
【0013】
B成分の酸化チタンは有機化合物で表面処理されている。有機処理されていない酸化チタンを使用した場合、黄変により、外観が悪化し、また成形体の反射率が著しく低下し、充分な日射反射率が得られないため、屋外での使用には適さない。かかる表面処理剤としては、ポリオール系、アミン系、およびシリコーン系などの各種処理剤を使用することができる。ポリオール系表面処理剤としては、例えばペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパンなどが挙げられ、アミン系表面処理剤としては、例えばトリエタノールアミンの酢酸塩、およびトリメチロールアミンの酢酸塩などが挙げられ、シリコーン系表面処理剤としては、例えばアルキルクロロシラン(トリメチルクロロシランなど)、アルキルアルコキシシラン( メチルトリメトキシシランなど)、およびハイドロジェンポリシロキサンなどを挙げることができる。ハイドロジェンポリシロキサンとしては、アルキルハイドロジェンポリシロキサン、およびアルキルフェニルハイドロジェンポリシロキサンなどが例示される。かかるアルキル基としてはメチル基およびエチル基が好適である。かかるアルキルアルコキシシランおよび/ またはハイドロジェンポリシロキサンで表面処理された酸化チタンは、本発明の樹脂組成物により良好な光反射性を与える。表面処理に使用される有機化合物の量は、B成分100重量部当り、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部、更に好ましくは1.5〜2.5重量部の範囲である。表面処理量が0.05重量部未満では充分な日射反射率が得がたく、5重量部を超えるとシルバーなどの成形不良や難燃性の悪化の点から好ましくない。有機化合物の表面処理剤は、予め酸化チタン(より好適には他の金属酸化物で被覆された酸化チタン) になされることが好ましい。しかしながら、樹脂組成物の原材料を溶融混練する際に該表面処理剤を別途添加し、その溶融混練工程において酸化チタンの表面処理が行われる方法であってもよい。
【0014】
B成分の含有量は、A成分とB成分の合計100重量部中、3〜30重量部であり、5〜25重量部が好ましく、より好ましくは5〜20重量部である。B成分の含有量が3重量部未満であると充分な日射反射率が得られず、遮熱性の効果が得がたく、30重量部を超えると、シルバーなどの成形不良や物性の著しい低下の点から好ましくない。
【0015】
(C成分:紫外線吸収剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、塗装などを施すことなく使用される場合がある。かかる場合には良好な耐光性を要求される場合があり、かかる場合に紫外線吸収剤の配合が効果的である。
【0016】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0017】
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0018】
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0019】
環状イミノエステル系では、例えば2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
【0020】
シアノアクリレート系では、例えば1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0021】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0022】
C成分の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜2重量部、さらに好ましくは0.03〜1重量部、最も好ましくは0.05〜0.5重量部である。C成分の含有量が0.01重量部未満であると、充分な耐候性の効果が得られず、2重量部より多いとガス発生による外観不良や物性低下、難燃性の低下などの点から好ましくない。
【0023】
(D成分:難燃剤)
本発明でD成分として使用される難燃剤としては、本発明の効果の範囲で燃焼性を向上させる効果のあるものであれば特に制限はないが、好ましくは、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、含フッ素有機金属塩が好適に例示される。
ハロゲン系難燃剤としては、芳香族ハロゲン化合物、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化ポリカーボネート樹脂、ハロゲン化芳香族ビニル系重合体、ハロゲン化シアヌレート樹脂、ハロゲン化ポリフェニルエーテル、ハロゲン化ポリフェニルチオエーテル等があげられ、好ましくはデカブロモジフェニルオキサイド、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ブロム化ポリスチレン樹脂、ブロム化架橋ポリスチレン樹脂、ブロム化ビスフェノールシアヌレート樹脂、ブロム化ポリフェニレンオキサイド、ポリジブロムフェニレンオキサイド、デカブロモジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物(テトラブロムビスフェノールA、そのオリゴマーなど)である。
【0024】
本発明のリン系難燃剤としては、ホスフェート化合物が好適である。かかるホスフェート化合物は概して色相に優れるためである。またホスフェート化合物は可塑化効果があるため本発明の樹脂組成物の成形加工性を高められる点で有利である。かかるホスフェート化合物は、従来難燃剤として公知の各種ホスフェート化合物が使用できるが、より好適には特に下記一般式(I)で表される1種または2種以上のホスフェート化合物を挙げることができる。
【0025】
【化1】

【0026】
[式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0〜5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値である。R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp−クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
【0027】
更に好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基であり、R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、およびキシレノールからなる群より選ばれる化合物から誘導される一価の基であり、nが1〜3の整数である成分を主成分として含む化合物が挙げられる。D成分のリン系難燃剤の含有量はA成分とB成分との合計100重量部に対し、1〜25重量部が好ましく、より好ましくは2〜22重量部であり、3〜20重量部がさらに好ましい。D成分のリン系難燃剤配合量が1重量部未満であると難燃化の効果が得がたく、25重量部を超えると樹脂の耐熱性が著しく低下するため好ましくない。
【0028】
本発明における含フッ素有機金属塩とは、フッ素置換された炭化水素基を有する有機酸からなるアニオン成分と金属イオンからなるカチオン成分からなる金属塩化合物をいうが、より好適な具体例としては、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩、フッ素置換有機硫酸エステルの金属塩、およびフッ素置換有機リン酸エステルの金属塩が例示される。含フッ素有機金属塩は1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。その中でも好ましいのはフッ素置換有機スルホン酸の金属塩であり、とくに好ましいのはパーフルオロアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である。ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18の範囲が好ましく、1〜10の範囲がより好ましく、更に好ましくは1〜8の範囲である。
【0029】
本発明の金属塩を構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。したがって本発明の好適なB成分は、パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である。
【0030】
かかる含フッ素有機金属塩の具体例、殊に好適なパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
【0031】
本発明におけるD成分の含フッ素有機金属塩の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して0.005〜0.6重量部が好ましく、より好ましくは0.005〜0.2重量部であり、さらに好ましくは0.008〜0.13重量部である。かかる好ましい範囲であるほどより遮熱性に優れると共に、難燃性が必要とされる場合には難燃性も良好な材料となる。
【0032】
(E成分:含フッ素滴下防止剤)
本発明のE成分である含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0033】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0034】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPA FA500およびF−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1およびD−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
【0035】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い、共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3750」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0036】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。なお、上記F成分の割合は正味の含フッ素滴下防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
【0037】
E成分の含有量はA成分とB成分との合計100重量部に対し、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.8重量部であり、0.1〜0.5重量部がさらに好ましい。E成分の含有量が0.01重量部未満であると、充分な難燃補助効果が発現せず、1重量部より多いとノンハロゲンの範疇から外れるため、好ましくない。
【0038】
(F成分:スチレン系樹脂)
本発明でF成分として使用されるのは、スチレン系樹脂であり、具体的にはアクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等が挙げられ、その中でもアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましい。さらに、ゴム成分量が0.1〜80重量部、好ましくは0.2〜50重量部、更に好ましくは0.3〜30重量部であるジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物をグラフトした熱可塑性グラフト共重合体がより好ましい。以下、F成分で好ましいABS樹脂について説明する。
【0039】
ABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン等のガラス転移点が10℃以下のゴムが用いられる。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等を挙げることができ、またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等の核置換スチレンを挙げることができる。
【0040】
本発明で使用するABS樹脂においては、ABS樹脂成分100重量部中ジエンゴム成分の割合が0.1〜80重量部であるのが好ましく、より好ましくは0.2〜50重量部、特に好ましくは0.3〜30重量部である。
ABS樹脂においては、ゴム粒子径は重量平均粒子径において0.05〜5.0μmが好ましく、0.1〜2.0μmがより好ましく、0.2〜0.5μmが更に好ましい。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0041】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体を含有することは従来からよく知られているところである。本発明のABS樹脂は、上記のとおりかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有してよく、また芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものでもよい。尚、かかるフリーのAS樹脂の割合は、アセトンなどのかかるAS樹脂の良溶媒にABS樹脂を溶解し、その可溶分から採取することが可能である。一方その不溶分(ゲル)が正味のABS樹脂となる。
【0042】
ABS樹脂においてジエン系ゴム成分にグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合(ジエン系ゴム成分の重量に対するかかるグラフト成分の重量の割合)、すなわちグラフト率(重量%)は20〜200%が好ましく、より好ましくは20〜80%である。かかるABS樹脂は塊状重合、溶液重合、懸濁重合、および乳化重合などのいずれの方法で製造されたものでもよい。
【0043】
E成分の含有量はA成分とB成分との合計100重量部に対し、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは5〜28重量部であり、10〜25重量部がさらに好ましい。F成分の含有量が0.1重量部未満であると、成形性が著しく悪く、30重量部より多いと難燃性の著しい低下や耐光性の低下の点から好ましくない。
【0044】
(その他の添加剤)
(リン系安定剤)
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を含有することにより、例えば成形加工時の色相悪化や長期間の使用における色相の悪化などの効果が更に発揮される。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。
【0045】
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0046】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0047】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0048】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0049】
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。
リン系安定剤の含有量は、A成分とB成分の合計100重量部に対し、0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.3重量部、さらに好ましくは0.1〜0.2重量部である。リン系安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には湿熱性の低下の点で好ましくなく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、物性低下を起こす場合がある。
【0050】
(ヒンダードフェノール系安定剤)
本発明の樹脂組成物は、更にヒンダードフェノール系安定剤を含有することにより、例えば成形加工時の色相悪化や長期間の使用における色相の悪化などの効果が更に発揮される。ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0051】
ヒンダードフェノール系安定剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対し、0.0001〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.001〜0.5重量部、さらに好ましくは0.005〜0.3重量部である。ヒンダードフェノール系安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下を起こす場合がある。
【0052】
(無機充填剤)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲において、無機充填剤を使用することができる。無機充填剤を添加することにより、更に良好な難燃性や湿熱安定性、剛性を得ることができる。無機充填剤としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、異形断面ガラス繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等の繊維状充填剤、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトフレーク等の板状充填剤、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、カオリン、クレー、炭酸カルシウム等の粒子状充填剤を挙げることができる。
【0053】
(他の樹脂やエラストマー)
本発明の樹脂組成物には、エラストマーを本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。
かかるエラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、シリコーン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
【0054】
(着色剤)
本発明の樹脂組成物には、着色剤を本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。
かかる着色剤としては、有機染料、無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、その中でも780〜2500nmの日射反射率が10%を超えるものが好ましい。
その他、本発明の樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、光拡散剤(例えばアクリル架橋粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子)、蛍光染料、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、蛍光増白剤、帯電防止剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
【0055】
(熱可塑性樹脂組成物の製造)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分、B成分、および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0056】
各成分の溶融混練機への供給方法としては、(i)A成分、B成分および他の成分はそれぞれ独立に溶融混練機に供給する方法、(ii)A成分、B成分および他の成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法などが例示される。尚、配合する成分に液状のものがある場合、溶融混練機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0057】
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
【0058】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0059】
上記の方法で得られた樹脂組成物の日射反射率は80%以上であり、81%以上がより好ましく、83%以上がさらに好ましく、85%以上が特に好ましい。日射反射率が80%未満では充分な遮熱性能が付与できない。
さらに、上記で得られた樹脂組成物はUL94試験において1.8mmV−0であることが好ましく、1.5mmV−0となることがより好ましく、1.2mmV−0がさらに好ましい。
【0060】
(樹脂筐体)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる樹脂筐体は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形(RHCM成形、ヒートアンドクール成形やアクティブ温調成形など)、ヒートアンドヒート成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また本発明によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を押出成形し、各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形とすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。さらに本発明によれば、熱可塑性樹脂組成物をプレス成形などにより成形品とすることも可能である。
【0061】
(表面処理)
さらに本発明の樹脂筐体には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線反射コートなどの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法および溶射法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。特に本発明の樹脂組成物は、屋外に設置し、使用することから、紫外線吸収コート、撥水・撥油コート又は親水・親油コートが施されることが好ましい。
【発明の効果】
【0062】
本発明の樹脂筐体は、(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70〜97重量部、および(B)有機物で表面処理された、平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタン(B成分)3〜30重量部の合計100重量部よりなることを特徴とする樹脂組成物を成形して得られる近赤外領域の日射反射率が80%以上である屋外設置用樹脂筐体で、優れた遮熱性を付与した樹脂筐体である。
【0063】
本発明はかかる構成により従来公知の成形体にはない上記特性を有する樹脂筐体を提供するものである。本発明の樹脂筐体は、通信モジュールやLSI、CPUなどの内部にある精密機器を太陽光の熱から保護する観点から、屋外に設置する筐体に有用である。具体的には太陽電池モジュール、パワーコンディショナー、電力量計、スマートメーター、スマートグリッドコンセントレーター、公衆無線LAN、電気自動車充電装置、監視カメラ、エアコンの室外機等の成形体において好適であり、太陽光発電関連、次世代送電網関連などの各種工業用途に極めて有用である。なお、本発明における次世代送電網(スマートグリッド)とは、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網のことであり、専用の機器やソフトウェアが、送電網の一部に組み込まれている。専用機器のひとつとしてスマートメーターや無線基地局(コンセントレーター)が挙げられ、スマートメーターと無線基地局は無線通信によりデータを送受信している。本発明の屋外設置用樹脂筐体は、金属では困難な無線の通信性、太陽光の遮熱性を有することから次世代送電網の専用機器の筐体として特に最適である。以上から明らかなように本発明の奏する工業的効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例において成形した屋外設置用樹脂筐体の成形品を示す。図示されるとおり該筐体は箱型の形状の成形体と平板を組み合わせた形状である。[1−A]は斜視概要図である(外形寸法:縦178mm×横245mm×厚み2mm)。[1−B]はA−A線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
【0067】
(1)樹脂組成物の評価
(i)難燃性(UL94試験1.8mm)
米国アンダーライターラボラトリー社の定める方法(UL94)により、試験片厚さ1.8mmにおける垂直燃焼試験を実施して評価した。なお、V−0、V−1、V−2 のいずれの判定にもあてはまらないものについてはnot Vと表記した。
【0068】
(2)屋外設置用樹脂筐体の評価
(i)製品外観
図1に示す屋外設置用樹脂筐体について、実施例記載の条件で成形し、成形品の状態を目視にて確認し、不良が見られないものを○、シルバー、黄変、表面外観の荒れおよびその他成形不良が見られるものについては×と表記した。
(ii)日射反射率
実施例記載の条件で成形した、図1に示す屋外設置用樹脂筐体における平板成形品(肉厚2mmt)をJIS K5602に準拠し、サンプルの分光光線反射率(300〜2500nm、波長0.5nm毎)を日立(株)製分光光度計U−3400型で測定し、日射反射率を近赤外領域(780nm〜2,500nm)で算出した。
(iii)遮熱性
図1に示す屋外設置用樹脂筐体について、実施例記載の条件で成形し、以下に示すような条件で、照射光源であるハロゲンランプを照射し、その際の内部温度を、箱型筐体内部の下部に設置した接触型熱電対を使用して、測定することにより遮熱特性の測定を行った。内部に実装する精密機器保護の観点から、内部温度を50℃以下に抑制することが好ましい。
照射光源:ハロゲンランプ(ウシオライティング製JDR110V 40WLM/K 50W−type)
光源と筐体との距離:切断したスプルーランナー(図1の符号4)より直上15cm
外気温度:23℃
照射時間:30分間
【0069】
原料としては、以下のものを用いた。
(A成分)
A:ビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WS(商品名)、粘度平均分子量20,900)
(B成分)
B−1:酸化チタン1(レジノカラー(株)製:DCF−T−17053(商品名)、平均粒径1.0μm、有機表面処理有り(表面処理量2.0重量%))
B−2:酸化チタン2(レジノカラー(株)製:DCF−T−17054(商品名)、平均粒径0.5μm、有機表面処理有り(表面処理量2.0重量%))
B−3:酸化チタン3(レジノカラー(株)製:DCF−T−17007(商品名)、平均粒径0.2μm、有機表面処理有り(表面処理量2.0重量%))
B−4:酸化チタン4(テイカ(株)製:J R − 1 0 0 0(商品名)、平均粒径1.0μm、有機表面処理無し)
B−5:酸化チタン5(レジノカラー(株)製:平均粒径6.0μm、有機表面処理有り(表面処理量2.0重量%))
(C成分)
C:紫外線吸収剤(BASF製:TINUVIN 234(商品名))
(D成分)
D−1:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学工業(株)製:CR−741(商品名))
D−2:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックF−144P(商品名))
(E成分)
E:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製:ポリフロンMPA FA500)
(F成分)
F:ABS(日本エイアンドエル(株)製:SHX−330(商品名))
(その他の成分)
G−1:離型剤(理研ビタミン(株)製:EW400(商品名))
G−2:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社性IRGANOX1076)
G−3:タルク((株)勝光山鉱業所製:TK−RC(商品名))
【0070】
[実施例1〜10、比較例1〜11]
(ポリカーボネート樹脂組成物の製造)
A成分、B成分および任意に他の添加剤を、表1および表2に記載された各配合量でV型ブレンダーを用いて充分に予備混合(いわゆるドライブレンド)した。その際、配合するD成分及びE成分などの単独ではブレンドし難い添加剤は、A成分の一部をドライブレンドして、パウダーで希釈された添加剤のマスターバッチを作成し、その後、A成分、B成分および他の添加剤とのブレンドを行った。このブレンド物をベント式二軸押出機で溶融混練し、溶融混練後の組成物をペレタイザーを使用しペレット化した。また、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給に液注装置を使用した。特に本発明のC成分に含まれるリン酸エステルオリゴマーは縮合度nの分布によっては固体状でなく液状となる。したがって押出機への供給に温調装置が設置されている液注装置を使用した。そのため、本発明で使用される押出機は、液体注入用の原料供給口を持つものを使用し、かかるリン酸エステルオリゴマーは、通常の押出機のバレルに設けたフィード口から、80℃の温度に加熱されたものを液体運搬装置で押出機内の吐出圧以上の圧力で供給した。ベント式二軸押出機としては、径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]を用いた。また、押出条件は、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、およびベント減圧度3kPaでとし、押出を行った。押出された樹脂は、ストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化した。
次に得られたペレットを80℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥し、乾燥後、射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度240℃、金型温度60℃で各種評価用の試験片を成形した。これらの試験片を用いて各特性を評価した。それらの結果を表1および表2に示す。
【0071】
(屋外設置用樹脂筐体の製造)
乾燥後のペレットを用いて射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)を使用し、図1に示す屋外設置用樹脂筐体(箱型成形品及び平板)を、シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件で成形した。この筐体を用いて各特性を評価した。それらの評価を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
上記表から本発明のポリカーボネート樹脂および有機物で表面処理された、平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタンを含有した熱可塑性樹脂組成物よりなる屋外設置用筐体は製品内部の温度上昇を低減していることがわかる。
【符号の説明】
【0075】
1 箱型成形品(肉厚2mmt)
2 平板成形品(肉厚2mmt)
3 箱型成形品高さ(30mm)
4 切断済みのスプルー(ゲート部の直径7mmφ)
5 箱型成形品縦長さ(99mm)
6 箱型成形品横長さ(149mm)
7 接触式熱電対(RKC製ADHENSIVE TYPE THERMOCOUPLE K、ST−50)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70〜97重量部、および(B)有機物で表面処理された、平均粒子径が0.5〜5.0μmの酸化チタン(B成分)3〜30重量部よりなることを特徴とする樹脂組成物を成形して得られる近赤外領域の日射反射率が80%以上である屋外設置用樹脂筐体。
【請求項2】
樹脂組成物が、A成分とB成分との合計100重量部に対し、(C)紫外線吸収剤(C成分)0.01〜2重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の屋外設置用樹脂筐体。
【請求項3】
樹脂組成物が、A成分とB成分との合計100重量部に対し、(D)難燃剤(D成分)0.005〜25重量部および(E)含フッ素滴下防止剤(E成分)0.01〜1重量部を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の屋外設置用樹脂筐体。
【請求項4】
樹脂組成物が、UL94試験において1.8mmV−0である請求項3に記載の屋外設置用樹脂筐体。
【請求項5】
D成分が、リン系難燃剤又は含フッ素有機金属塩であることを特徴とする請求項3または4に記載の屋外設置用樹脂筐体。
【請求項6】
樹脂組成物が、A成分とB成分の合計100重量部に対し、(F)スチレン系樹脂(F成分)0.1〜30重量部を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の屋外設置用樹脂筐体。
【請求項7】
通信機器を内装することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の屋外設置用樹脂筐体。
【請求項8】
次世代送電網の無線基地局の筐体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の屋外設置用樹脂筐体。

【図1】
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【公開番号】特開2013−89866(P2013−89866A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230864(P2011−230864)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】