説明

遮熱性採光膜材及びその製造方法

【課題】光線透過性があり、透明、着色透明、着色半透明、着色不透明等、色相面の自由度が高く、しかも優れた遮熱効果を有する、採光膜材の提供。
【解決手段】本発明の遮熱性採光膜材(1)は、繊維基布(2)及びその少なくとも1面上に形成された可撓性樹脂被覆層(3)を含み、光線透過率(JIS Z8722.5.4(条件g)により測定)が3〜70%の可撓性膜材であり、前記可撓性樹脂被覆層の少なくとも1層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分(4)または島成分(5)のいずれか一方が熱制御性着色剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮熱性を有する採光膜材に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、光線透過性があり、透明、着色透明、着色半透明、着色不透明等、色相面の自由度が高く、しかも優れた遮熱性を有し、特に日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、テント倉庫、イベント向けテント、トラック幌、ブラインド、間仕切り、シートシャッター、農園芸用シート等に好適に用いられる、遮熱性採光膜材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維基布に可撓性樹脂をコーティング法、ディッピング法、カレンダー法やTダイ押出し法などの方法により被覆した膜材は、組立及び施工が容易であり、色相及び構造等のデザインの自由度が高い等の理由から、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、テント倉庫、イベント向けテント、トラック幌、ブラインド等広い分野で利用されている。しかしながら、従来の膜材は、太陽輻射線に含まれる近赤外線に対する透過性又は吸収性が高く、このため膜材の表面側から透過又は吸収された赤外線が膜材の裏面側の空間を直接暖め、また吸収された赤外線は膜材の温度を上昇させて輻射熱として膜材裏面側からも放出される。このため、例えば上記膜材をテント倉庫に用いた場合、夏場の強い太陽光線の下では内部の温度が極度に高くなるため、人が長時間作業することが困難であり、またそれを日除けテントに用いた場合は、まぶしさを防ぎ、紫外線を減少させる効果はあるけれども、冷涼効果に関してはほとんど認められないのが実情であった。テント倉庫の場合、通常の建築物同様冷房を用いれば内部の温度を下げることも可能であるが、冷房の効率が非常に低く、エネルギーコストやそれに伴う環境面への負担を考えると、従来のテント倉庫は、実用上好ましいものではなかった。
【0003】
上記の問題に対して、白色の膜材、例えば酸化チタン等の白色顔料を可撓性樹脂層に練り込んだ膜材を用いた場合、太陽輻射に含まれる赤外線を散乱させ、遮熱性を示すことが知られている。このような白色膜材の実用化において、特別な附帯加工を必要としないので安価に遮熱性を得ることができるが、白色顔料を多量に必要とすることにより、光線透過率が低くなり、例えばこの様な膜材を用いたテント倉庫内部では、日中でも照明が必要となるという問題があった。この他の遮熱性膜材としては、可撓性樹脂層に金属粉末を練り込む方法(例えば、特許文献1および2参照)も行われているが、これらも前記白色顔料を用いた膜材と同様に、採光性及び色相選択の自由度が低いものであった。また顔料を用いる遮熱技術は、例えば、白色顔料を、近赤外線反射性および/または近赤外線透過性色素により被覆した有彩色及び黒色の複合顔料(例えば、特許文献3参照)が知られている。この顔料は、近赤外線に対して反射性を有する白色顔料を、近赤外線に対して吸収のない有機色素で被覆する事により、可視光線領域における着色と近赤外線領域の反射とを両立させたものである。これによれば、膜材の色相をある程度自由に選択でき、さらに所望の遮熱性も得ることができるが、これらの顔料を膜材の可撓性樹脂被覆層にそのまま練りこむのでは、白色顔料を用いた場合同様遮光性が大きいため、所望の採光性を得ることができないという問題点があった。この他、平均粒子径300nm〜2000nm、屈折率1.3〜3.0の白色顔料に、有機の赤外線反射性顔料、又はSi、Zr、Mg、Ca、Fe、Mn等の元素の酸化物、複酸化物、炭化物及び窒化物等を被覆した、遮熱性顔料を含む遮熱塗料(例えば、特許文献4参照)も提案されている。この遮熱塗料に含まれる顔料は300nm〜2000nmの粒子径を有することで、可視光線の散乱が低下し近赤外線が効果的に散乱され、塗料に用いた場合色相にあまり影響を与えずに遮熱性が得られるものであるが、少量の添加では遮熱性が不充分であり、大量に加えると遮光性が大きくなるため、テント等の膜材に用いたとき、遮熱性と採光性を共に得ることは困難であった。
【0004】
また、遮熱性を向上させるために、膜材の構成の中に発泡層を設けることも知られているが、このような膜材は太陽輻射線に含まれる近赤外線を、膜材がその表面側で吸収し、それにより上昇した膜材表面側の熱の裏面側への伝播を発泡層によって防止するというものである。この場合、若し赤外線が透過してしまうと充分な遮熱効果が得られないので、遮熱効果を高めるためには、膜材中に顔料、充填剤などを多量に添加したり、或は発泡層を厚くする必要があり、このようにすると採光性が低くなるという問題があった。また発泡層を部分的に圧縮して、この圧縮部分で透光性を高めるという方法も提案されているが(例えば、特許文献5参照)、圧縮部分の面積が多すぎれば結果的に遮熱効果が低下してしまい、少なければ透光性が不足するという問題があった。さらに、発泡層を有する膜材は、その厚さが厚いために取り扱い性が悪く、また、機械的強度も不充分となるため、テントなどの膜構造物には不適切な材料であった。金属薄膜や金属酸化物薄膜の赤外線反射性を応用することなどについても検討もなされており、例えば、粗目編織物に金属箔を転写させることにより、金属充実部(粗目編織物の糸部分)と金属欠如部(粗目編織物の目あき部分)を設け、この粗目編織物の金属転写側に透明フィルム層を貼り、その反対側に基体シートを形成することにより、遮熱効果と採光効果の両方を高めることが知られている(例えば、特許文献6参照)。この構成の膜材においては、透明フィルム層及び/又は基体シートに着色することにより色相をある程度自由に設定する事が可能となるが、金属を転写した側では金属光沢を伴う光輝性の高い色調しか選択する事ができず、色相の自由度としては不充分なものであり、それに加えて、耐候性が不充分であるという問題があった。その他の遮熱膜材として、真空蒸着又はスパッタリング法等によりインジウム/スズ酸化物(ITO)やアンチモン/スズ酸化物(ATO)等金属酸化物薄膜、金属薄膜、もしくは金属薄膜を透明高屈折率物質薄膜で挟んで形成された遮熱層を有する透明遮熱薄膜(例えば、特許文献7〜9参照)が知られており、この遮熱層は、可視光線を透過し赤外線は反射するという機能を持っているため、これらを膜材表面に形成すれば、膜材の色相を自由に選択でき、可視光線透過率にもさほど影響を与えることなく遮熱性を付与する事が可能となる。さらに、金属薄膜または金属酸化物薄膜と、金属酸化物の微細粒子または近赤外線吸収性色素を含む可撓性樹脂層を組み合わせた採光性遮熱膜材(例えば、特許文献10参照)も提案されており、この構成によれば、それぞれの遮熱性を合わせた効果が期待される。しかし、真空蒸着又はスパッタリング法を用いる遮熱層の形成には、大がかりな減圧設備を必要とするので汎用性に乏しく、しかも可塑剤や添加物を多量に含む肉厚の膜材に、前記遮熱層を含ませるという技術応用は困難なものであった。よって現在までのところ、遮熱効果と採光性とを兼ね備え、しかも彩色の自由度が高い実用的テント構造物用の膜材はまだ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−49171号公報
【特許文献2】特開平6−146166号公報
【特許文献3】特開2002−249676号公報
【特許文献4】特開2005−97462号公報
【特許文献5】特公昭57−55066号公報
【特許文献6】特公平4−60428号公報
【特許文献7】特開昭51−66841号公報
【特許文献8】特公昭63−5263号公報
【特許文献9】特公平6−28938号公報
【特許文献10】特開2003−251728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、透明、着色透明、着色半透明、着色不透明等、色相面の自由度が高く、透光性があり、優れた近赤外線遮蔽性を有し、特に日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、テント倉庫、イベント向けテント、トラック幌、ブラインド、間仕切り、シートシャッター、農園芸用シート等に好適に用いられる、遮熱性に優れた採光膜材を、提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討の結果、少なくとも1層の可撓性樹脂被覆層が合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含む事により、光線透過性があり、色相の自由度が高く、かつ遮熱性に優れた膜材が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の遮熱性採光膜材は、繊維基布及びその少なくとも1面上に形成された可撓性樹脂被覆層を含み、光線透過率(JIS Z8722.5.4(条件g)により測定)が3〜70%の可撓性膜材であって、前記可撓性樹脂被覆層の少なくとも1層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含むものである。本発明の遮熱性採光膜材は、前記海島構造において、海成分を構成する合成樹脂の屈折率と島成分を構成する合成樹脂の屈折率に差を有し、その屈折率差が0.05以上であり、かつ、前記海成分中に分散する前記島成分の平均粒子径が0.5〜20.0μmであることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材は、前記熱制御性着色剤として、金属酸化物微粒子、金属複合酸化物微粒子、及び近赤外線吸収性物質から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材において、前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、三酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材において、前記金属複合酸化物微粒子が、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物から選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材において、前記近赤外線吸収性物質が、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材は、前記可撓性樹脂被覆層上に防汚層が設けられ、サンシャインウエザオメーター耐候促進試験(JIS K7350-4)による、1000時間後の光沢度(JIS K7105.5.2)保持率が、80〜100%であることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材は、前記可撓性樹脂被覆層上に防汚層が設けられ、屋外曝露前と1年後との色差ΔE(JIS K7105.5.4)が、0.1〜5.0であることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材は、前記防汚層が、光触媒性物質を含むことが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材の製造方法は、繊維基布と、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含む海島構造を有する可撓性樹脂被覆層と、を含む遮熱性採光膜材において、前記海島構造を合成樹脂非相溶対により構成し、この合成樹脂非相溶対を成す一方を熱制御性着色剤含有合成樹脂として、この熱制御性着色剤含有合成樹脂と、前記合成樹脂非相溶対を成すもう一方の合成樹脂とを混合して、前記海成分中に分散する前記島成分の平均粒子径を0.5〜20.0μmとすることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材の製造方法は、前記海島構造において、海成分を構成する合成樹脂の屈折率と島成分を構成する合成樹脂の屈折率に差を有し、その屈折率差が0.05以上であることが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材の製造方法は、前記熱制御性着色剤が、金属酸化物微粒子、金属複合酸化物微粒子、及び近赤外線吸収性物質から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材の製造方法において、前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、三酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材の製造方法において、前記金属複合酸化物微粒子が、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の遮熱性採光膜材の製造方法において、前記近赤外線吸収性物質が、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光線透過性があり、透明、着色透明、着色半透明、着色不透明等、色相面の自由度が高く、優れた遮熱性を有する採光膜材を、特別な生産設備を必要とせず、生産性良く、製造して提供することが可能となる。本発明の遮熱性採光膜材は、可視光線を透過し、赤外線を遮蔽する効果を有するため、明るくて涼しい環境を提供することが可能であり、特に日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、テント倉庫、イベント向けテント、トラック幌、ブラインド、間仕切り、シートシャッター、農園芸用シート等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の遮熱性採光膜材の一例を示し、熱可塑性樹脂被覆層が海島構造を有 し、島成分が熱制御性着色剤を含む状態を示す図
【図2】本発明の遮熱性採光膜材の一例を示し、熱可塑性樹脂被覆層が海島構造を有 し、海成分が熱制御性着色剤を含む状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の遮熱性採光膜材は、繊維基布と、その少なくとも1面上に形成された可撓性樹脂被覆層とを有する可撓性膜材であって、前記可撓性樹脂被覆層の少なくとも1層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含むものである。また、本発明の遮熱性採光膜材の製造方法は、繊維基布と、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含む海島構造を有する可撓性樹脂被覆層と、を含む遮熱性採光膜材において、前記海島構造を合成樹脂非相溶対により構成し、この合成樹脂非相溶対を成す一方を熱制御性着色剤含有合成樹脂として、この熱制御性着色剤含有合成樹脂と、前記合成樹脂非相溶対を成すもう一方の合成樹脂とを混合して、前記海成分中に分散する前記島成分の平均粒子径を0.5〜20.0μmとするものである。
【0012】
本発明の遮熱性採光膜材の形態は、ターポリン、帆布等の防水性膜材、またはメッシュシートである。このうち帆布やメッシュシートは、有機溶剤に可溶化した可撓性樹脂、水中で乳化重合された可撓性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは可撓性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、等を用いるディッピング加工(繊維布帛への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)等によって製造することができる。ターポリンはカレンダー成型法、またはTダイス押出法により成型されたフィルム又はシートを、繊維基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは繊維布帛の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することが好ましく、さらにディッピング加工、またはコーティング加工と、フィルム積層の組み合わせ方法によっても実施可能である。本発明の採光膜材は不透明着色もしくは透明着色ターポリン、および帆布の場合、その光線透過率(JIS Z8722.5.4(条件g))は3〜35%、メッシュシート、透明ターポリンの場合10〜70%であることが好ましい。
【0013】
本発明において、可撓性樹脂被覆層は、合成樹脂ブレンドの溶融、または合成樹脂ブレンドの液状合成樹脂の攪拌混合物により公知の加工方法によって成型される。本発明で好ましく用いられる合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、光線透過率が高く可撓性のある熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
本発明において少なくとも1層の可撓性樹脂被覆層は、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、この合成樹脂ブレンドの組み合わせについて、非相溶であれば特に制限はない。非相溶の組合せ例としては、塩化ビニル樹脂とポリエチレン、塩化ビニル樹脂とポリプロピレン、塩化ビニル樹脂とスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂とスチレン系共重合樹脂、塩化ビニル樹脂とシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂とフッ素含有共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とビニルエステル樹脂、ポリスチレンとポリエチレン、ポリスチレンとポリプロピレン、ウレタン樹脂とポリエチレン、ウレタン樹脂とポリプロピレン、ポリエステル樹脂とポリエチレン、ポリエステル樹脂とポリプロピレン、ポリアミドとポリカーボネート、アクリル樹脂とポリスチレン、アクリル樹脂とポリカーボネート、ポリアミドとスチレン樹脂、ポリアミドとポリプロピレンなど2種類の合成樹脂のブレンドが好ましい。これらの非相溶の可撓性樹脂対に対して、さらに別種の可撓性樹脂を含有することもできる。
【0015】
これらの非相溶混合物は相分離構造を示す白濁概観の海島構造であることが好ましい。この海島構造において海成分と島成分は種類の異なる樹脂で構成され、例えば合成樹脂Aと合成樹脂Bからなる非相溶混合物において、合成樹脂Aと合成樹脂Bとの比率設定により、海成分を合成樹脂Aで構成し、島成分を合成樹脂Bで構成することができ、また海成分を合成樹脂Bで構成し、島成分を合成樹脂Aで構成することもできる。島成分を構成する合成樹脂の比率は、海成分を構成する合成樹脂の体積に対して3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましい。海島構造を有する可撓性樹脂被覆層全体に対する島成分含有率は2.9〜33.3体積%が好ましく、4.7〜28.6体積%がより好ましい。また非相溶の可撓性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の可撓性樹脂Cを含有する場合、海島構造において島成分が可撓性樹脂Bによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよく、同様に島成分が可撓性樹脂Aによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよい。本発明において海島構造を有する可撓性樹脂被覆層の厚さは、0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0016】
本発明の海島構造を有する可撓性樹脂被覆層において、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含んで着色されている。海成分または島成分のいずれか一方を着色した可撓性樹脂被覆層を形成するには、例えば、非相溶混合物を構成する2種類の合成樹脂を含むゾル、溶液、分散液、未硬化液等の樹脂混合液のいずれか一方をあらかじめ着色し、この着色樹脂混合液と非着色樹脂混合液を合わせて撹拌混合して、島成分の平均粒子径を0.5〜20.0μmに調製した非相溶樹脂混合物液を、繊維基布に対してディッピング加工あるいはコーティング加工により被覆する方法や、非相溶混合物を構成する2種類の合成樹脂のいずれか一方をあらかじめ着色し、非着色合成樹脂と着色合成樹脂とを溶融混合して、島成分の平均粒子径を0.5〜20.0μmに調製した非相溶樹脂混合物を、カレンダー成型法、またはTダイス押出法によりフィルム又はシートに成型し、繊維基布に積層する方法などを採ることができる。これらの方法により、着色海成分と非着色島成分による構成、または非着色海成分と着色島成分による構成の可撓性樹脂被覆層を得ることができる。本発明の混合物では着色合成樹脂成分は非相溶対の非着色合成樹脂成分と交じり合うことは無いから、非着色合成樹脂成分が着色合成樹脂成分に含まれる着色剤によって着色されることはない。本発明において海島構造は、海成分と島成分が各々異なる着色剤により着色されていてもよい。海成分または島成分を着色する着色剤は、少なくとも1種が熱制御性を有する。また本発明の採光膜材において可撓性樹脂被覆層は、海成分または島成分のいずれか一方が着色されていることで、被覆層全体が着色されているのに比べて、光線透過性を向上させると同時に、良好な遮熱性を確保することができる。本発明の採光膜材において可撓性樹脂被覆層は島成分が着色されていることが好ましい。
【0017】
本発明の海島構造を有する可撓性樹脂被覆層において、可視光領域の光380〜780nmをあまり散乱させず、780nmを超える赤外線をより多く散乱させることができれば、光線透過率が向上し、遮熱性も向上する効果が期待できる。その様な効果を得るためには、島成分の平均粒子径が0.5〜20μmであり、かつ、海成分と島成分の屈折率差が0.05以上であることが好ましい。海成分と島成分の屈折率が異なることで、界面における屈折散乱現象により光が散乱される。海成分と島成分の屈折率は、いずれの側が高くてもかまわないが、海成分よりも島成分の屈折率が高いことが好ましい。海成分と島成分の屈折率差が0.05未満であると、界面における屈折散乱現象が充分に起こらず、充分な赤外線散乱効果が得られず、遮熱性が向上しないことがある。島成分の好ましい平均粒子径は、海成分と島成分の屈折率差によって異なり、例えば屈折率差が0.05であれば、島成分の平均粒子径は5〜19μmである事が好ましく、屈折率差が0.2であれば、島成分の平均粒子径は1〜5μmであることが好ましい。島成分の平均粒子径が0.5μm未満であると、界面における屈折散乱現象により可視光領域の一部で光の散乱が大きくなり、光線透過率が低下したり、可視領域の光を部分的に散乱することにより、可撓性樹脂被覆層が着色されているように見えることがある。島成分の平均粒子径が20μmを超えると、可視光線全域に亘る散乱を起こし、光線透過率が低下することがある。島成分の形状は球状、歪んだ球状、碁石状、ラグビーボール状などである。なお、屈折率はD線を光源とするアッベ屈折率計により求めることができる。また、島成分の平均粒子径は、顕微鏡拡大写真から一定面積中に分布する島成分の径を測定し、平均する事で求められる。
【0018】
本発明の海成分または島成分の着色に用いる熱制御性着色剤としては、金属酸化物微粒子、金属複合酸化物微粒子、及び近赤外線吸収性物質から選ばれた1種以上を含むことが遮熱性を得るために効果的である。
【0019】
本発明に用いられる金属酸化物微粒子としては、赤外線を反射する金属酸化物からなる粒子であれば特に制限はなく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、三酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ケイ素、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズなどが例示され、中でも酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、三酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズが好ましく用いられる。これらの金属酸化物微粒子は単独で用いても良く、2種以上を併用して用いることもできる。また、これらの内、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン等の光触媒活性を示す物質については、光触媒活性を抑制するために、表面が例えば二酸化珪素(シリカ)や酸化アルミニウム(アルミナ)などでコーティングされていても良い。金属酸化物微粒子の粒子径には特に制限は無く、通常入手可能な平均粒子径1〜10000nmの粒子から適宜選択して用いることができ、平均粒子径20〜5000nmの粒子がより好ましく用いられる。特に可視光線の透過性を高めて高い光線透過率を得、かつ近赤外線を選択的に散乱させて高い遮熱性を得るためには、金属酸化物微粒子の屈折率にもよるが、平均粒子径350〜2000nmの粒子が好ましく、また、光線透過率を高め、かつ透視性のある可撓性樹脂層を得るには、平均粒子径20〜100nmの粒子が好ましく用いられる。海成分及び島成分に含む金属酸化物微粒子は、海成分または島成分を構成する合成樹脂に対して0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。添加量が0.1質量%未満では赤外線反射効果が不充分となって、充分な遮熱性が得られないことがある。また添加量が30質量部を超えると光線透過率が低下して、充分な採光性が得られなくなることがある。
【0020】
本発明に用いられる金属複合酸化物微粒子としては、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、及びケイ素(Si)の内2種以上の成分を含む無機着色顔料から選択して用いることができ、また、これらを2種以上含むものであれば、上記以外の成分を更に含む金属複合酸化物微粒子を用いることができる。具体的には、例えばCo−Al、Co−Al−Cr、Co−Al−Cr−Ti、Co−Mg−Sn、Co−Ni−Ti、Co−Zn−Ni−Ti、Co−Zn−Cr−Ti、Co−Sb−Ni−Ti、Co−Nb−Ni−Ti、Nb−Ni−Ti、Co−Si、Sn−Cr−Ti、Zn−Cr−Ti、Zn−Cr−Fe、Co−Zn−Cr−Fe、Co−Ni−Cr−Fe−Si、Co−Cr−Mg−Zn−Al、Co−Mn−Cr−Fe、Co−Fe−Cr、Co−Cr−Ni、Co−Cr、Cu−Mn−Cr、Cu−Mn−Fe、Cu−Cr、Mn−Fe、Zn−Fe、Cr−Fe、Cr−Fe−Zn−Ti、Pb−Sb−Fe、Pb−Sb−Al、Ni−Sb、Ni−W、Ni−W−Ti、Fe−W−Ti、Fe−Zn−Ti、Fe−Al−Ti、Fe−Ti、Fe−Mo、Cr−Sb、Cr−Sb−Ti、Mn−Sb−Ti、Ti−Sb−Ni、Cr−Sn、Fe−Co−Mn−Ni、Ti−Sb−CrおよびZr−Feなどの成分からなる複合酸化物を例示することができ、これらの内所望の色相を有する粒子を単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。特に、Co−Al、Co−Al−Cr、Co−Zn−Ni−Ti、Co−Zn−Cr−Ti、Co−Cr−Mg−Zn−Al、Co−Fe−Cr、Cr−Fe、Cr−Fe−Zn−Ti、Fe−Zn−Ti、Fe−Al−Ti、Cr−Sb−Ti、Mn−Sb−Ti、およびTi−Sb−Niの成分からなる金属複合酸化物は、赤外線反射性に優れ、本発明に好ましく用いることができる。金属複合酸化物微粒子の粒子径には特に制限は無く、平均粒子径が1〜10000nmの粒子から適宜選択して用いることができ、平均粒子径が20〜5000nmの粒子がより好ましく用いられる。特に可視光線の透過性を高めて、遮熱性とともに高い光線透過率を得るためには、平均粒子径350〜2000nmの粒子が好ましく、また、光線透過率を高め、かつ透視性のある可撓性樹脂層を得るには、平均粒子径20〜100nmの粒子が好ましく用いられる。海成分及び島成分に含む金属複合酸化物微粒子は、海成分または島成分を構成する合成樹脂に対して0.05〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。金属複合酸化物微粒子の添加量が0.05質量%未満では着色が不充分になることがある。また添加量が30質量部を超えると光線透過率が低下して、充分な採光性が得られなくなることがある。
【0021】
本発明に用いられる近赤外線吸収性物質としては、例えば、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アルミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物などを用いることができ、これらは特開昭51−135886号公報、特開昭56−143242号公報、特開昭58−13676号公報、特開昭60−23451号公報、特開昭61−115958号公報、特開昭63−295578号公報、特開平4−174402号公報、特開平5−93160号公報、特開平5−222302号公報、及び特開平6−264050号公報などに記されている公知の色素から選んで用いることができる。海成分及び島成分に含む近赤外線吸収性物質は、海成分または島成分を構成する合成樹脂に対して0.01〜3.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜1.0質量%である。添加量が0.01質量%未満では赤外線吸収効果が不充分となって、充分な遮熱性が得られないことがある。また添加量が3.0質量部を超えると光線透過率が低下して、充分な採光性が得られなくなることがある。
【0022】
本発明の採光膜材において、可撓性樹脂被覆層には、この他に必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、有機顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0023】
本発明の採光膜材において、経時的な汚れの付着による遮熱効果及び、光線透過性の低下を防止し、且つ美観を維持するために、可撓性樹脂被覆層上に少なくとも1層の防汚層が設けられていることが好ましい。防汚層は採光膜材の遮熱性及び光線透過性を損なわず、極度の隠蔽性を伴わないものである限り、その形成方法及び素材に特に限定はない。このような防汚層は例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗布して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択することができる。
【0024】
前記防汚層上に汚れが堆積したり、防汚層が劣化して着色を生じたりすると、汚れ及び/又は着色により、可視光線および赤外線の吸収が増大し、それによって採光性と遮熱効果が低下することがある。このため防汚層は、初期の光沢と色相を維持可能なことが好ましい。具体的には、サンシャインウエザオメーター耐候促進試験(JIS K7350-4)1000時間後の光沢度(JIS K7105.5.2)保持率が、80〜100%、特に90〜100%であることが好ましく、屋外曝露1年後の色差ΔE(JIS K7105.5.4)が、0.1〜5.0であることが好ましい。防汚層と可撓性樹脂被覆層との間には、必要に応じて、防汚層と可撓性樹脂被覆層との接着性を向上させるための接着層、光触媒による樹脂の分解を妨げるための保護層、樹脂被覆層に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等が形成されていてもよい。また、本発明の採光膜材の、防汚層が形成された面とは反対の面に、防汚層との高周波加熱融着性及び熱風融着性を付与するための裏面接着層が形成されていてもよい。あるいは、採光膜材をロール状に巻き取って保管している間に、裏面側の接着層もしくは可撓性樹脂被覆層に含まれる添加剤が、防汚層上に移行して防汚性が低下するのを防ぐために、裏面側(防汚層とは反対の面)に添加剤移行防止層が形成されていても良い。
【0025】
本発明の防汚層は、特に光触媒性物質を含む事が好ましい。本発明に用いる光触媒性物質としては、(1).酸化チタン(特にアナターゼ型)、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化ビスマス、鉄−タングステン酸化物等の光触媒性金属酸化物、(2).(1)の金属酸化物に銀、プラチナ、金、銅、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの金属およびそれらの金属の化合物を助触媒として添加(担持)した助触媒添加(担持)型光触媒、(3).(1)の光触媒性金属酸化物に窒素、炭素、硫黄、リン、ホウ素、フッ素等をドープしたアニオンドープ型光触媒、(4).(1)の光触媒性金属酸化物にクロム、ニオブ、マンガン、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル等の遷移金属イオンをドープしたカチオンドープ型光触媒、(5).(1)の光触媒性金属酸化物にアニオンとカチオンの両方をドープした共ドープ型光触媒、(6).(1)の光触媒性金属酸化物に白金、パラジウム、ロジウムなど貴金属のハロゲン化物を担持させた金属ハロゲン化物担持型光触媒、(7).(1)の光触媒性金属酸化物から部分的に酸素を引き抜いた酸素欠損型光触媒、等を好ましく用いることができる。光触媒は、上記から1種、または2種以上を組み合わせて選択して用いることができる。
【0026】
光触媒性物質を含有する防汚層の形成方法としては、例えば光触媒の粒子またはゾルと結着剤とを含む塗布剤を塗布して光触媒性物質を含有する防汚層を形成する方法、光触媒性物質の溶液からゾルゲル法により光触媒性物質を含有する防汚層を形成する方法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などにより光触媒性物質を含有する防汚層を形成する方法、等従来公知の方法で形成することができる。結着剤としては、光触媒によって分解され難く、かつ皮膜形成能を有する、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリルフッ素共重合樹脂、アクリルシリコーン共重合樹脂、などの有機系バインダーや、ポリシラザン、有機シリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)の何れか1種以上によるケイ素化合物縮合層であることが好ましく、これらに更にシリカゾル、アルミナゾル、チタンゾルの何れか1種以上を含んでいてもよい。光触媒性物質を含有する防汚層には、光触媒性物質の粒子またはゾルを10〜70質量%、特に20〜60質量%含有することが好ましい。
【0027】
本発明の採光膜材に使用する繊維基布に用いられる繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよく、その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用される繊維基布は、織布、編布、不織布のいずれでもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる採光膜材の縦緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大80%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。不織布としてはスパンボンド不織布などが使用できる。繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
【実施例】
【0028】
本発明を下記実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
下記実施例において、光線透過率、遮熱率、光沢保持率、屋外曝露1年後の色差評価のための試験方法は下記の通りである。
(I)光線透過率
JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミノルタ分光測色計CM−3600dを用いて測定した。
(II)遮熱率
試験環境:内径が、高さ45cm×幅35cm×長さ35cmの外気温遮断性と気密性とを有する箱型構造体の天井部中央に白熱ランプ(100V,500Wのフォトリフレクタランプ:デイライトカラー用:東芝(株))を取り付けて、遮熱性評価の試験環境を構成した。次に、たて・よこともに0.5cmの正方形の断面積を有するアクリル樹脂製角材棒を梁として、外径が、高さ5cm×幅10cm×長さ15cmの箱型フレームを瞬間接着剤で組み立て、箱型フレームの4側面、上面部、及び底面部に、試験膜材を、その表面が外向きとなるように、両面テープで貼り付けて固定し、気密性の試験箱を準備した。また、この試験箱内部の底面部の中央には熱流量計(Shothrm HFM熱流量計:昭和電工(株)製)のセンサーを取り付けて固定した。試験膜材で被覆した試験箱(比較時には試験膜材の装着がないものを使用)を、箱型構造体の底面部の中央に取り付けて、ランプの中心点と試験箱の中心点とを結ぶ直線の方向が鉛直方向に重なるように固定した。この箱型構造体内部におけるランプ先端から試験箱の天井部までの距離は35cmであった。尚、箱形構造体は20℃の恒温室内に設置した。
試験:試験膜材を装着しない試験箱を箱型構造体に入れて密閉状態に置き、ランプを点灯し、熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の熱流量qn(kcal/m2h)を測定した。箱型構造体内の温度を恒温室内と同じ20℃まで戻した後、試験膜材を装着した試験箱を箱型構造体に入れて密閉状態に置き、ランプを点灯し、熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の熱流量qc(kcal/m2h)を測定し、下記式により遮熱率を求めた。遮熱率は、数値が大きい程、遮熱性が高いものと判断した。
遮熱率(%)=〔(qn−qc)/qn〕×100
(III )光沢保持率
JIS K7105.5.2の光沢度試験方法により、試験膜材の表面側の初期の光沢度GSb(60°)と、サンシャインウエザオメーター耐候促進試験(JIS K7350-4)1000時間後の光沢度GSa(60°)とを測定し、下記式より光沢保持率を求めた。
光沢保持率(%)=〔GSa(60°)/GSb(60°)〕×100
(IV)屋外曝露1年後の色差
屋外曝露台上に、試験膜材の表面を上にして南向きに傾斜角30度に設置して屋外曝露試験を行い、初期の試験膜材表面の色を基準とし、曝露12ケ月後の試験膜材表面の色との色差ΔE(JIS K7105.5.4)を測定した。
【0030】
下記実施例において、繊維基布として以下の基布を用いた。
基布1:下記組織で質量230g/m2のポリエステル短繊維紡績糸非粗目状長尺平織物
295.3dtex(20番手)/2×295.3dtex(20番手)/2
───────────────────────
55 × 48(本/25.4mm)
基布2:下記組織で質量210g/m2のポリエステルマルチフィラメント粗目状長尺
平織物
833dtex(750d)/3×833dtex(750d)/3
───────────────────────
11 × 11(本/25.4mm)
基布3:下記組織で質量140g/m2のポリエステルマルチフィラメント粗目状長尺
平織物
833dtex(750d)×833dtex(750d)
───────────────────────
19 × 20(本/25.4mm)
基布4:下記組織で質量85g/m2のポリエステルマルチフィラメント粗目状長尺
平織物
1111dtex(1000d)×1111dtex(1000d)
───────────────────────
10 × 10(本/25.4mm)
【0031】
[実施例1]
下記配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して35質量%加えて撹拌し、白着色ビニルエステル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液1を得た。配合2において、熱制御性着色剤としては平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子を用いた。この樹脂混合物液1の液バス中に基布1を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにその片面に鏡面エンボス処理を施した。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、非相溶樹脂混合物液1が300g/m付着して、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層が形成された採光膜材を得た。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。この採光膜材について、鏡面エンボス処理を施した側を表(おもて)面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合1>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部

<配合2>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(商標:ネオポール8319:日本ユピカ(株) )
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
熱制御性着色剤(酸化チタン:平均粒子径1000nm) 5質量部
【0032】
[実施例2]
実施例1と同様にして得た膜材の、鏡面エンボス処理を施した側の可撓性樹脂被覆層上に、下記配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって片面に塗布量:5g/mの防汚層が形成された採光膜材を得た。この採光膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合3>
フルオロオレフィンビニルエーテル樹脂 100質量部
(商標:フロロトップ1053:旭硝子(株):固形分50質量%)
イソホロン系イソシアネート硬化剤 10質量部
(商標:タケネートD−140N:武田薬品工業(株):固形分75質量%)
シリカ(商標:ファインシールX37:(株)トクヤマ) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
【0033】
[実施例3]
下記配合4の白着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合5のビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して35質量%加えて撹拌し、ビニルエステル樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液3を用いて、実施例1と同様にして、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層を形成した。配合4において、熱制御性着色剤としては平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子を用いた。基布1に対する非相溶樹脂混合物液3の付着は300g/mであった。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が無色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が白色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。次いで、実施例2と同様にして、鏡面エンボス処理を施した側の可撓性樹脂被覆層上に塗布量:5g/mの防汚層を形成し、採光膜材を得た。この採光膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合4>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
熱制御性着色剤(酸化チタン:平均粒子径1000nm) 2質量部

<配合5>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(商標:ネオポール8319:日本ユピカ(株) )
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
【0034】
[実施例4]
下記配合6の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合7の白着色シリコーン樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して13質量%加えて撹拌し、白着色シリコーン樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液4を得た。配合7の熱制御性着色剤として平均粒子径600nmの酸化亜鉛粒子を用いた。この非相溶樹脂混合物液4の液バス中に基布1を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、シートを得た。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、非相溶樹脂混合物液4が270g/m付着して、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層が形成された。次にPETフィルムの1面上に非相溶樹脂混合物液4を0.05mm厚でコートし、これを先に作成したシートの片面に重ね、電気炉で180℃×5分間加熱して非相溶樹脂混合物液4を固化させてからPETフィルムを除去して、65g/mの平滑な可撓性樹脂被覆層を形成した。これらの可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、シリコーン樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は3.4μmであった。次いで、可撓性樹脂被覆層に下記配合8の組成物液をグラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/mの樹脂中間層を両面に形成した。さらに前記樹脂中間層の上に、配合8の樹脂組成物からシリカを除いた溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して追加樹脂層を形成し、それによって、前記樹脂中間層と追加樹脂層とからなる、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成した。次に、下記配合9の接着・保護層形成用塗布液を平滑な可撓性樹脂被覆層側に形成された添加剤移行防止層上にグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を形成し、さらに、その接着・保護層上に下記配合10の防汚層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層が平滑面側に形成された採光膜材を得た。この採光膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合6>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部

<配合7>
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーン樹脂)
A液 50質量部
B液 50質量部
熱制御性着色剤(酸化亜鉛粒子:平均粒子径600nm) 7質量部

<配合8>
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(商標:カイナー7201:エルフ・アトケム・ジャパン(株))
シリカ:(商標:ニップシールE−75:東ソー・シリカ(株)) 5質量部
MEK(溶剤) 80質量部
<配合9>
シリコン含有量3mol%のアクリルシリコン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株))の
20%エタノール溶液(ポリシロキサン) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤) 1質量部
<配合10>
酸化チタン含有量10質量%に相当する硝酸酸性酸化チタンゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
酸化珪素含有量10質量%に相当する硝酸酸性シリカゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
【0035】
[実施例5]
下記配合11のシリコーン樹脂攪拌混合物の攪拌混合物に、下記配合12の白着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストを、シリコーン樹脂単体の質量に対して15質量%加えて撹拌し、白着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストを均一分散させた非相溶樹脂混合物液5を用いて、実施例4と同様にして、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層を形成した。配合12の熱制御性着色剤として平均粒子径600nmの酸化亜鉛粒子を用いた。基布1の両面への付着、および内部含浸した非相溶樹脂混合物液5は225g/mであり、片面に形成された平滑な可撓性樹脂被覆層は55g/mであった。これらの可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、塩化ビニル樹脂が白色の島成分を構成しており、シリコーン樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は3.4μmであった。次いで、実施例4と同様にして、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成し、平滑な可撓性樹脂被覆層側に形成された添加剤移行防止層上に1.5g/mの接着・保護層を形成し、接着・保護層上に更に1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層を形成して、採光膜材を得た。この採光膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合11>
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーン樹脂)
A液 50質量部
B液 50質量部

<配合12>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
熱制御性着色剤(酸化亜鉛粒子:平均粒子径600nm) 9質量部
【0036】
[実施例6]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合13の黄着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して35質量%加えて撹拌し、黄着色ビニルエステル樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液6を用いて、実施例1と同様にして、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層を形成した。配合13の熱制御性着色剤として平均粒子径600nmのCr−Sb−Tiの複合酸化物(黄色)を用いた。基布1に対する非相溶樹脂混合物液6の付着は300g/mであった。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が黄色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。次いで、実施例4と同様にして、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成し、鏡面エンボスを施した側に形成された添加剤移行防止層上に1.5g/mの接着・保護層を形成し、接着・保護層上に更に1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層を形成して、採光膜材を得た。この採光膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合13>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(商標:ネオポール8319:日本ユピカ(株) )
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
熱制御性着色剤(Cr−Sb−Ti複合酸化物:平均粒子径600nm) 5質量部
【0037】
[実施例7]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合14の黒着色ビニルエステル樹脂を、塩ビ樹脂単体の質量に対して35質量%加えて撹拌し、黒着色ビニルエステル樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液7を用いて、実施例2と同様にして、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層を形成した。配合14の熱制御性着色剤として、フタロシアニン系の色素(黒色:最大吸収波長880nm)を用いた。基布1の両面への付着、および内部含浸した非相溶樹脂混合物液7は300g/mであった。これらの可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が黒色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。次いで、実施例4と同様にして、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成し、平滑な可撓性樹脂被覆層側に形成された添加剤移行防止層上に1.5g/mの接着・保護層を形成し、接着・保護層上に更に1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層を形成して、採光膜材を得た。この採光膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合14>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(商標:ネオポール8319:日本ユピカ(株) )
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
熱制御性着色剤(商標:イーエクスカラーHA−1:(株)日本触媒) 0.1質量部
【0038】
[比較例1]
非相溶樹脂混合物液1の代わりに、配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物を用いた以外は、実施例2と同様にして膜材を得た。この膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0039】
[比較例2]
非相溶樹脂混合物液3の代わりに、配合4の白着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物を用いた以外は、実施例3と同様にして膜材を得た。この膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0040】
[比較例3]
配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物から酸化チタンを省略した以外は、実施例2と同様にして膜材を得た。この膜材について、防汚層が形成された側を表面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
実施例1〜7の採光膜材は、可撓性樹脂被覆層が合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、かつ、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含んでおり、初期の遮熱率及び光線透過率が高い値を示していた。また、実施例2〜7については可撓性樹脂被覆層上に少なくとも1層の防汚層が設けられおり、防汚層のサンシャインウエザオメーター耐候促進試験(JIS K7350-4)1000時間後の光沢保持率が80%以上で、屋外曝露1年後の防汚層色差が5以下を満たしており、屋外曝露1年後の遮熱率び光線透過率がほとんど低下する事無く維持されていた。特に防汚層が光触媒性物質を含む実施例4〜7については、屋外曝露1年後でも色相および光沢度の変化はほとんどみられず、遮熱率び光線透過率もほとんど変化が見られなかった。実施例2と実施例3は、それぞれ島成分に着色した例と海成分に着色した例であり、何れの場合でも高い遮熱率を示していた。光線透過率については、実施例3の方が低い値を示しているが、これは可撓性樹脂被覆層に占める体積比の大きな海成分に着色したため、可視光線が多く散乱されたためであると考えられる。ただし、実施例3と比較例2(可撓性樹脂被覆層が海島構造を有さず、可撓性樹脂被覆層全体に着色)との比較においては、実施例3の遮熱率が大きく上回っており、しかも光線透過率もわずかに優れていた。実施例4と実施例5は、何れも島成分に着色した例であるが、それぞれ海成分と島成分のベースとなる樹脂が逆であり、実施例4は島成分の屈折率よりも海成分の屈折率が高く、実施例5は海成分の屈折率よりも島成分の屈折率が高い構成である。これらは、光線透過率に関しては同等であったが、遮熱率に関しては海成分の屈折率よりも島成分の屈折率が高い実施例5の方が僅かに優れた結果であった。この結果より、海成分の屈折率よりも島成分の屈折率が高い方が、海成分と島成分の界面での屈折散乱現象による遮熱性向上効果が高いことがわかる。実施例6は、島成分を赤外線反射性の金属複合酸化物で着色した例であり、遮熱性は島成分に金属酸化物により白着色した実施例2に比べてやや劣るものの、有彩色に着色された採光膜材が得られ、しかも島成分に熱制御性着色剤を含まない比較例3に比べて高い遮熱率を示していた。実施例7は、島成分に赤外線吸収性物質を含んで着色した例であり、遮熱率および光線透過率ともに島成分に金属酸化物により白着色した実施例2に比べてやや劣るものの、島成分に熱制御性着色剤を含まない比較例3に比べて高い遮熱率を示していた。比較例1の膜材は、可撓性樹脂被覆層が海島構造を有さず、熱制御性着色剤も含まないため、実施例2に比べて光線透過率は高いものの、遮熱性を有さない膜材であった。比較例2の膜材は、可撓性樹脂被覆層全体に含まれる熱制御性着色剤により比較例1の膜材に比べて遮熱率は高いものの、可撓性樹脂層が海島構造を有さないため、光線透過率は大幅に低い値であった。比較例3の膜材は、熱制御性着色剤を含まないため、光線透過率は比較例1と同程度に高く、海島構造を有しているため、海成分と島成分の界面での屈折散乱現象により、比較例1よりは高い遮熱率を示したが、海成分、島成分共に熱制御性着色剤を含有しないため、遮熱性向上効果は不充分であった。
【0044】
[実施例8]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して80質量%加えて撹拌し、白着色ビニルエステル樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液8を得た。この非相溶樹脂混合物液8の液バス中に基布2を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより非相溶樹脂混合物液8が250g/m2含浸付着して、海島構造を有する可撓性樹脂被覆層が形成されたメッシュ状の膜材を得た。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩ビ樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.4μmであった。次いで、前記メッシュ状膜材を、配合9の接着・保護層処理液に浸漬後、マングルロールで圧搾し、100℃で1分間乾燥した後冷却して、1.0g/mの接着保護層を形成した。更に接着保護層付メッシュ状膜材を配合10の防汚層形成用塗布液に浸漬後、マングルロールで圧搾し、100℃で1分間乾燥した後冷却して、1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層を形成し、メッシュ状の採光膜材を形成した。このメッシュ状採光膜材については、表裏の構造上の差が無いため、膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0045】
[比較例4]
非相溶樹脂混合物液8の代わりに、配合4の白着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物を用いた以外は、実施例8と同様にしてメッシュ状の膜材を得た。このメッシュ状膜材については、表裏の構造上の差が無いため、膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例8は粗目状の基布に海島状の可撓性樹脂を含浸被覆したメッシュ状の採光膜材である。メッシュの目を通して赤外線が透過するため、実施例1〜7に比べて遮熱率は低いが、光線透過率では大きく上回っており、更に、メッシュの目を通して膜材の向こう側を透視できる採光膜材であった。また、比較例4(可撓性樹脂被覆層が海島構造を有さず白に着色)との比較においては、表3に示したとおり、実施例8が光線透過率、遮熱率ともに優れていた。
【0048】
[実施例9]
下記配合15の軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物に、下記配合16の白着色塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を軟質フッ素樹脂単体の質量に対して10質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、白着色塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物9を得た。この樹脂混合物9を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム9−1を成型した。一方、下記配合15の軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルム9−2を成型した。次いで、得られたフィルム9−1とフィルム9−2の中間に基布3を挿入し、熱圧着により積層して採光膜材を得た。フィルム9−1からなる可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、塩化ビニル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質フッ素樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は2.8μmであった。この採光膜材について、フィルム9−1を積層した側を表面として各種評価を行った。結果を表4に示す。
<配合15>
軟質フッ素樹脂 100質量部
(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン三元共重合体樹脂)

<配合16>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
熱制御性着色剤(酸化チタン粒子:平均粒子径1000nm) 5質量部
【0049】
[実施例10]
下記配合17の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合18の白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物10を得た。熱制御性着色剤として平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子を用いた。この非相溶樹脂混合物10を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム10−1を成型した。一方、下記配合17の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルム10−2を成型した。次いで、得られたフィルム10−1とフィルム10−2の中間に基布3を挿入し、熱圧着により積層してシートを得た。フィルム10−1からなる可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、スチレンブタジエンブロックコポリマーが白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は10.5μmであった。次に、実施例3と同様にしてシート両面に添加剤移行防止層を形成し、フィルム10−1側の添加剤移行防止層上に接着・保護層を形成し、さらに接着・保護層上に1.5g/mの防汚層を形成して採光膜材を得た。この採光膜材について、フィルム10−1を積層した側を表面として各種評価を行った。結果を表4に示す。
<配合17>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部

<配合18>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
熱制御性着色剤(酸化チタン粒子:平均粒子径1000nm) 5質量部
【0050】
[実施例11]
下記配合19の黄着色軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合18の白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物11を得た。配合19の熱制御性着色剤として平均粒子径50nmのCr−Sb−Tiの複合酸化物(黄色)を用いた。この非相溶樹脂混合物11を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム11−1を成型した。一方、配合17の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルム11−2を成型した。次いで、得られたフィルム11−1とフィルム11−2の中間に基布3を挿入し、熱圧着により積層してシートを得た。フィルム11−1からなる可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、スチレンブタジエンブロックコポリマーが白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が黄色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は10.5μmであった。次に、実施例3と同様にしてシート両面に添加剤移行防止層を形成し、フィルム11−1側の添加剤移行防止層上に接着・保護層を形成し、さらに接着・保護層上に1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層を形成して採光膜材を得た。この採光膜材について、フィルム11−1を積層した側を表面として各種評価を行った。結果を表4に示す。
<配合19>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
熱制御性着色剤(Cr−Sb−Tiの複合酸化物:平均粒子径50nm) 2質量部
【0051】
[実施例12]
実施例11と同様にして、採光膜材を得た。ただし、配合19における熱制御性着色剤を、平均粒子径50nmのCo−Al複合酸化物(青色)2質量部とし、青色着色軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合18の白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて均一分散させた非相溶樹脂混合物12から、厚さ0.25mmのフィルム12−1を成型し、フィルム11−1の代わりに用いた。フィルム12−1からなる可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、スチレンブタジエンブロックコポリマーが白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が青色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は10.5μmであった。この採光膜材の、フィルム12−1を積層した側を表面として各種評価を行った。結果を表4に示す。
【0052】
[比較例5]
非相溶樹脂混合物11から成型したフィルム11−1の代わりに、配合19の黄色着色軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した、厚さ0.25mmの黄色着色軟質塩化ビニル樹脂フィルムを用いた以外は実施例8と同様にして膜材を得た。この膜材の、黄色着色軟質塩化ビニル樹脂フィルムを積層した側を表面として各種評価を行った。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例9および10は、可撓性樹脂被覆層としてカレンダーフィルムを基布の両面に積層した採光膜材である。一方の面に、島成分に金属酸化物を含む可撓性樹脂層が積層され、もう一方の面には透明なフィルムが積層されており、どちらも実施例1〜5と同等の高い光線透過率と遮熱率を示していた。実施例9と実施例10を比較すると、島成分体積比において実施例9の方が大きく、そのため実施例10よりも遮熱率が高く、透光率は低い値を示していた。実施例11及び12は、実施例10における可撓性樹脂被覆層の海成分に更に金属複合酸化物からなる有彩色の熱制御性着色剤を加えた構成であり、ある程度の光線透過率を維持しつつ、高い遮熱性を示す、有彩色の遮熱性採光膜材が得られた。実施例10よりも実施例11及び12の光線透過率が低いのは、有彩色の熱制御性着色剤により可視光線の一部が吸収あるいは反射されたことによるものだが、海成分への着色にも熱制御性の金属複合酸化物を用いることで遮熱率は同等かあるいはむしろ高い値を示していた。また、実施例11と比較例5(可撓性樹脂被覆層全体が熱制御性着色剤により黄色に着色されており、海島構造を有さない)との比較によれば、実施例11は可撓性樹脂層が海島構造を有し、島成分に金属酸化物を含有することでことで、遮熱率が大幅に高い値を示していた。
【0055】
[実施例13]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、配合2の白着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して60質量%加えて撹拌し、白着色ビニルエステル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液13を得た。得られた非相溶樹脂混合物液13の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより非相溶樹脂混合物液13が70g/m含浸付着し、可撓性樹脂被覆層が形成されたメッシュ状の繊維基布を得た。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。次いで、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルムに成型し、先に得たメッシュ状の繊維基布の両面に熱圧着により積層して、透視性のあるシートを得た。次いで、積層したカレンダーフィルム上に配合8の組成物液をグラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/mの樹脂中間層を両面に形成した。さらに前記樹脂中間層の上に、配合8の樹脂組成物からシリカを除いた溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して追加樹脂層を形成し、それによって、前記樹脂中間層と追加樹脂層とからなる、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成した。次に、配合9の接着・保護層形成用塗布液を添加剤移行防止層上にグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を両面に形成し、さらに、その接着・保護層上に配合10の防汚層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層が両面に形成された採光膜材を得た。この採光膜材については、表裏の構造上の差が無いため、採光膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0056】
[実施例14]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより軟質塩化ビニル樹脂ペースト撹拌混合物が70g/m含浸付着し、可撓性樹脂被覆層が形成されたメッシュ状の繊維基布を得た。一方、実施例10と同様にして得た非相溶樹脂混合物10を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム14−1を成型し、また、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルム14−2を成型した。次いで、得られたフィルム14−1とフィルム14−2の中間に、先に得たメッシュ状の繊維基布を挿入し、熱圧着により積層してシートを得た。フィルム14−1からなる可撓性樹脂層を顕微鏡観察すると、スチレンブタジエンブロックコポリマーが白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は10.5μmであった。次いで、実施例13と同様にして積層したカレンダーフィルム上に配合8の組成物液をグラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/m2の樹脂中間層を両面に形成した。さらに前記樹脂中間層の上に、配合8の樹脂組成物からシリカを除いた溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して追加樹脂層を形成し、それによって、前記樹脂中間層と追加樹脂層とからなる、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成した。次に、配合9の接着・保護層形成用塗布液を添加剤移行防止層上にグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を両面に形成し、さらに、その接着・保護層上に配合10の防汚層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの防汚層が両面に形成された採光膜材を得た。この採光膜材について、フィルム14−1を積層した側を表面として各種評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0057】
[実施例15]
実施例1と同様にして得た非相溶樹脂混合物液1の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより非相溶樹脂混合物液1が70g/m含浸付着して可撓性樹脂被覆層が形成されたメッシュ状の繊維基布を得た。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。一方、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合19の白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して17質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、白着色スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物15を得た。この非相溶樹脂混合物15を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム15−1を成型した。また、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルム15−2を成型した。次いで、得られたフィルム15−1とフィルム15−2の中間に、先に得たメッシュ状の繊維基布を挿入し、熱圧着により積層してシートを得た。フィルム15−1からなる可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、スチレンブタジエンブロックコポリマーが白色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は10.5μmであった。次いで、積層したカレンダーフィルム上に配合8の組成物液をグラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/mの樹脂中間層を両面に形成した。さらに前記樹脂中間層の上に、配合8の樹脂組成物からシリカを除いた溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して追加樹脂層を形成し、それによって、前記樹脂中間層と追加樹脂層とからなる、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成した。次に、配合9の接着・保護層形成用塗布液を添加剤移行防止層上にグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を両面に形成し、さらに、その接着・保護層上に配合10の防汚層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層が両面に形成された採光膜材を得た。この採光膜材について、フィルム15−1を積層した側を表面として各種評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0058】
[実施例16]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、配合14の黒着色ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して60質量%加えて撹拌し、黒着色ビニルエステル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液16を得た。得られた非相溶樹脂混合物液16の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより非相溶樹脂混合物液16が70g/m含浸付着し、可撓性樹脂被覆層が形成されたメッシュ状の繊維基布を得た。この可撓性樹脂被覆層を顕微鏡観察すると、ビニルエステル樹脂が黒色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が無色の海成分を構成していた。島成分の平均粒子径は6.7μmであった。次いで、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルムに成型し、先に得たメッシュ状の繊維基布の両面に熱圧着により積層して、透視性のあるシートを得た。次いで、積層したカレンダーフィルム上に配合8の組成物液をグラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/mの樹脂中間層を両面に形成した。さらに前記樹脂中間層の上に、配合8の樹脂組成物からシリカを除いた溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して追加樹脂層を形成し、それによって、前記樹脂中間層と追加樹脂層とからなる、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成した。次に、配合9の接着・保護層形成用塗布液を添加剤移行防止層上にグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を両面に形成し、さらに、その接着・保護層上に配合10の防汚層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層が両面に形成された採光膜材を得た。この採光膜材については、表裏の構造上の差が無いため、採光膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0059】
[比較例6]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより配合1の軟質塩化ビニル樹脂が70g/m含浸付着したメッシュ状の繊維基布が形成された。次いで、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルムに成型し、先に形成したメッシュ状の繊維基布の両面に積層して透視性のあるシートを得た。次いで実施例13と同様に、シートの両面に添加剤移行防止層、接着・保護層、さらに光触媒性物質含有防汚層を形成して膜材を得た。この膜材については、表裏の構造上の差が無いため、膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表6に示す。
【0060】
[比較例7]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより配合1の軟質塩化ビニル樹脂が70g/m含浸付着したメッシュ状の繊維基布が形成された。次いで、下記配合21の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルムに成型し比7−1を形成した。また、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルム比7−2を成型した。次いで、得られたフィルム(比)7−1とフィルム(比)7−2の中間に、先に得たメッシュ状の繊維基布を挿入し、熱圧着により積層してシートを得た。次いで実施例13と同様に、シートの両面に添加剤移行防止層、接着・保護層、さらに光触媒性物質含有防汚層を形成して膜材を得た。この膜材についてフィルム(比)7−1を積層した側を表面として評価した。結果を表6に示す。
<配合21>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
熱制御性着色剤(酸化チタン粒子:平均粒子径1000nm) 2質量部
【0061】
[比較例8]
配合4の白着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物の液バス中に基布4を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行うことで、配合4の白着色軟質塩化ビニル樹脂を70g/m含浸付着したメッシュ状の繊維基布が形成された。次いで、配合18の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの透明なフィルムに成型し、先に形成したメッシュ状の繊維基布の両面に熱圧着により積層して透視性のあるシートを得た。次いで実施例13と同様に、シートの両面に添加剤移行防止層、接着・保護層、さらに光触媒性物質含有防汚層を形成して膜材を得た。この膜材については、表裏の構造上の差が無いため、膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表6に示す。
【0062】
[比較例9]
非相溶樹脂混合物液16の代わりに下記配合21の黒着色軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物を用いた以外は、実施例16と同様にして膜材を得た。この膜材については、表裏の構造上の差が無いため、膜材形成後に一方の面にしるしをつけ、しるしのある側を表面として各種評価を行った。結果を表6に示す。
<配合22>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
着色剤(カーボンブラック) 2質量部
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
実施例13は基布に含浸付着した可撓性樹脂被覆層が海島構造を有し(島成分が金属酸化物粒子により白着色)、可撓性樹脂が含浸付着したメッシュ状の繊維基布の両面に透明なカレンダーフィルムが積層された構成であり、透視性を有する採光膜材である。メッシュ状の繊維基布の目を通して赤外線が透過するため、その他の実施例に比べて遮熱率はやや低いが、光線透過率は非常に高い採光膜材であった。また、比較例6(含浸付着した可撓性樹脂被覆層とカレンダーフィルムがいずれも海島構造を有さず着色もされていない)との比較において、遮熱率が大きく上回っていることから、実施例13の基布に含浸付着した海島状の可撓性樹脂被覆層が、遮熱性向上に大きく寄与していることが確認できた。更に、比較例9(白く着色した海島構造を有さない可撓性樹脂を基布に含浸付着し、両面に透明なカレンダーフィルムを積層)との比較においては、ともに透視性を有する膜材であり、外観上の差は無いものの、光線透過率、遮熱率ともに上回っており、基布に含浸付着した可撓性樹脂被覆層が海島構造を有し、島成分が金属酸化物粒子を含んで白着色されていることにより、光線透過率が向上し、かつ、遮熱性も向上することが確認された。実施例14は、透明な可撓性樹脂を含浸被覆した基布の一方の側に海島構造を有するカレンダーフィルムを、もう一方の側に透明なカレンダーフィルムをそれぞれ積層した構成である。一方のカレンダーフィルムが透明ではなく、海島構造を有し島成分が白着色されていることにより、実施例13に比べて光線透過率は低いが、メッシュ状の繊維基布の目を通して赤外線が透過するのを遮るため、遮熱率は向上している。更に、比較例7(基布に無着色の可撓性樹脂を含浸付着し、片面に海島構造を有さない白着色カレンダーフィルムを積層)との比較においては、光線透過率、遮熱率ともに上回っていた。実施例15は基布に含浸付着した可撓性樹脂被覆層とカレンダーフィルムの両方が海島構造を有し、島成分が白着色されている構成であるが、それぞれの島成分の体積比を実施例13および14よりも低くすることで、光線透過率を低下させずに遮熱率を向上することができた。実施例16は、基布に含浸付着した可撓性樹脂被覆層が海島構造を有し、島成分が赤外線吸収性物質により黒着色されており、樹脂が含浸付着したメッシュ状の繊維基布の両面に透明なカレンダーフィルムが積層された構成であり、透視性を有する採光膜材である。実施例13に比べて遮熱性はやや劣るものの、光線透過率は同等であった。また、メッシュ状の繊維基布が黒く着色され、繊維基布部分での可視光線の乱反射が抑えられるため、実施例13よりも透視性に優れ、膜材の向こう側が鮮明に視認できる採光膜材であった。一方、比較例9は、メッシュ状繊維基布に含浸付着した軟質塩ビ樹脂に含まれるカーボンブラックの効果で、繊維基布部分での可視光線の乱反射が抑えられ、実施例16同様透視性に優れた膜材であったものの、可撓性樹脂層が海島構造を有していないため、遮熱性に劣る膜材であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によって得られる遮熱姓採光膜材は、光線透過性があり、透明、着色透明、着色半透明、着色不透明等、色相面の自由度が高く、優れた遮熱性を有するため、明るく、且つ涼しい、という従来両立が困難であった環境を提供することができ、しかもデザイン面においてもカラフルな色彩を選択することができるものである。そのため、特に日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、テント倉庫、イベント向けテント、トラック幌、ブラインド、間仕切り、シートシャッター、農園芸用シート等に使用した場合、カラフルな色彩はそのままに、夏場の作業環境を改善し、照明、冷房などに費やすエネルギーを削減する事が可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1:遮熱性採光膜材
2:繊維基布
3:可撓性樹脂被覆層(海島構造)
4:海成分
4−1:熱制御性着色剤を含む海成分
4−2:熱制御性着色剤を含まない海成分
5:島成分
5−1:熱制御性着色剤を含む島成分
5−2:熱制御性着色剤を含まない島成分
6:防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基布及びその少なくとも1面上に形成された可撓性樹脂被覆層を含み、光線透過率(JIS Z8722.5.4(条件g)により測定)が3〜70%の可撓性膜材であって、前記可撓性樹脂被覆層の少なくとも1層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島構造を有し、さらに前記海島構造において、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含むことを特徴とする、遮熱性採光膜材。
【請求項2】
前記海島構造において、海成分を構成する合成樹脂の屈折率と島成分を構成する合成樹脂の屈折率に差を有し、その屈折率差が0.05以上であり、かつ、前記海成分中に分散する前記島成分の平均粒子径が0.5〜20.0μmである、請求項1に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項3】
前記熱制御性着色剤が、金属酸化物微粒子、金属複合酸化物微粒子、及び近赤外線吸収性物質から選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、三酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上を含む、請求項3に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項5】
前記金属複合酸化物微粒子が、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物から選ばれた1種以上を含む、請求項3に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項6】
前記近赤外線吸収性物質が、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を含む、請求項3に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項7】
前記可撓性樹脂被覆層上に防汚層が設けられ、サンシャインウエザオメーター耐候促進試験(JIS K7350-4)による、1000時間後の光沢度(JIS K7105.5.2)保持率が、80〜100%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項8】
前記可撓性樹脂被覆層上に防汚層が設けられ、屋外曝露前と1年後との色差ΔE(JIS K7105.5.4)が、0.1〜5.0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項9】
前記防汚層が、光触媒性物質を含む、請求項7または8に記載の遮熱性採光膜材。
【請求項10】
繊維基布と、海成分または島成分のいずれか一方が熱制御性着色剤を含む海島構造を有する可撓性樹脂被覆層と、を含む遮熱性採光膜材において、前記海島構造を合成樹脂非相溶対により構成し、この合成樹脂非相溶対を成す一方を熱制御性着色剤含有合成樹脂として、この熱制御性着色剤含有合成樹脂と、前記合成樹脂非相溶対を成すもう一方の合成樹脂とを混合して、前記海成分中に分散する前記島成分の平均粒子径を0.5〜20.0μmとすることを特徴とする遮熱性採光膜材の製造方法。
【請求項11】
前記海島構造において、海成分を構成する合成樹脂の屈折率と島成分を構成する合成樹脂の屈折率に差を有し、その屈折率差が0.05以上である、請求項10に記載の遮熱性採光膜材の製造方法。
【請求項12】
前記熱制御性着色剤が、金属酸化物微粒子、金属複合酸化物微粒子、及び近赤外線吸収性物質から選ばれた1種以上を含む、請求項10に記載の遮熱性採光膜材の製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、三酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上を含む、請求項12に記載の遮熱性採光膜材の製造方法。
【請求項14】
前記金属複合酸化物微粒子が、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物から選ばれた1種以上を含む、請求項12に記載の遮熱性採光膜材の製造方法。
【請求項15】
前記近赤外線吸収性物質が、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を含む、請求項12に記載の遮熱性採光膜材の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−52357(P2011−52357A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204496(P2009−204496)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】