説明

遮熱性防汚膜材

【課題】遮熱・防汚効果に優れ、長期間の屋外使用に耐え、屋外用テントに有用な遮熱性防汚膜材の提供。
【解決手段】シート状基材の表裏面の少なくとも1面上に、セラミックス粉末を含む樹脂発泡層を介して形成され、1〜30質量%の金属粉及び/又はセラミックス粉を含む熱制御性樹脂層(その表面上に樹脂用添加物の揮散を防止する樹脂を含む添加物揮散防止が形成されていてもよい)と、その上に形成された金属酸化物透明層及び/又は金属薄膜層を介して、又は介さずに、光触媒作用遮断用保護層と、その上に形成された光触媒含有層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用途において、太陽光熱を効率良く減衰させる効果を持続する遮熱機能と防汚機能とを有する膜材に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、人間や動物に快適な空間を提供する日除けテント、シートハウスなど、また、物流中の商品や食品などの過度の温度上昇を防ぐことができるトラック幌、荷台カバーなどに好適に用いられる遮熱性防汚膜材に関するものである。特に本発明の膜材は、遮熱機能の減衰を招く原因となる煤塵付着汚れを防ぐ機能を有し、遮熱機能を効率的に持続させることができ、従って産業資材として有効なものである。
【背景技術】
【0002】
日除テント、中大型テント、テント倉庫などの建築構造物に使用される膜材、及びトラック幌や荷台カバーなどに使用される従来の防水帆布としては、繊維織物を基布として用い、その表面に軟質配合のポリ塩化ビニル樹脂を被覆加工して得られた繊維複合膜材が主に使用されている。これらの膜材は柔軟かつ強靭で、かつ耐候性にも優れているため、屋外での長期使用に耐えることが可能である。これらの繊維複合膜材は、その用途上、高度の遮熱性を有することが理想的であるが、現状のポリ塩化ビニル樹脂製の繊維複合膜材では遮熱性が低いため、特に夏期においては、直射日光を遮断しているにもかかわらず、テント倉庫やトラック幌の内部の温度が上昇し、その結果、特に夏季において、倉庫内に保管している荷物や資材、輸送中の荷物などが外気温度並の高温に上昇することがある。これはポリ塩化ビニル樹脂製繊維複合膜材のみに限られたことではなく、例えばポリ塩化ビニル樹脂を、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂に置き換えてみたとしても結果は前記と同様である。従って、従来の産業資材用の繊維複合膜材では十分な遮熱効果が得られていなかったのである。
【0003】
一般に、密閉された空間を形成する材料、例えば建物や容器などにおいて、内部から外部へ、また、外部から内部への熱の伝達を効果的に遮断するには、無機質または有機質遮熱材層が、それ相応の厚さで形成されていることが必要である。無機質遮熱材としては、例えば、グラスウール、泡ガラスのようなガラス質断熱材、石綿、鉱滓綿、パーライト、バーミキュライトのような鉱物質遮熱材、多孔質シリカ、多孔質アルミナ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、耐火煉瓦などのセラミックス系遮熱材、黒鉛、炭素繊維などの炭素系遮熱材などが用いられている。また、有機質遮熱材としては、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタンなどの気泡痕含有樹脂、木質ボード、コルク、植物繊維などの天然物質系遮熱材なども用いられている。その他、空気、窒素、ヘリウムなどの気体の低熱伝導性を利用し、これらをアルミニウム、紙、プラスチックなどに封入した空気セル含有断熱材も効果的に用いられている。これらの遮熱材は、それ自体を熱伝導性の低い材料により形成して、熱の伝達を抑制したり、気体のような熱伝導性の低い物質を細孔や空隙に封入して熱の移動を減衰するものである。一般に、多孔質遮熱材などでは、遮熱材自体の厚さを増加させて、遮熱効果を高めることも可能であるが、遮熱だけのための体積増大は実用面で大きな不利を伴う。
【0004】
これに対して上記テント構造物やトラック幌などに用いられる繊維複合膜材には、遮熱層を有する設計が援用されていないため、その遮熱性が極めて低いという問題点を有している。そこで、この問題を解決するために1).繊維複合膜材の層構造中に発泡層を挿入した膜材、2).繊維複合膜材の樹脂被覆層中に無機金属化合物粉末を練り込んだ膜材、及び、3).これらを組み合わせた膜材などが提案されている。しかし、発泡層を含む膜材では遮熱効果を高めるために発泡セル数を増大させたり、空隙サイズを大きくするなどして膜材自体の密度を小さくすることが必要である。しかし、このようにすると、発泡層の厚さが増大して取り扱い性が不良となるだけでなく、膜材の機械的強度も不十分となるという不都合を伴う。また、無機金属化合物粉末を練り込んだだけの膜材では、長時間の遮熱効果が得られないものであった。
【0005】
また一方で、特に直射日光による温度上昇を防ぐ手段として、4).膜材の表面に光反射性の金属箔層を設ける方法、及び、5).樹脂被覆層中に金属粉末を練り込んだ膜材、6).さらに金属箔層と無機金属化合物粉末含有層との併用による多層構造膜材、7).また金属箔層と無機金属化合物粉末含有層との併用と、さらに発泡層との併用による多層構造膜材などが提案されている。確かに4〜7)などの態様の膜材では直射日光を効率良く反射して、膜材自体の蓄熱と膜材内部への熱伝導を抑制することができるものである。
【0006】
しかし、金属箔層を用いた膜材では膜材の伸びに対する金属箔層の追従性と屈曲耐久性とに劣り、また、4〜7)の態様の膜材では、使用の経過に伴って膜材の表面が大気中を浮遊する排気ガスや煤塵などの付着によって汚れ、それによって、直射日光の反射率が低下し、その結果、初期の遮熱効果を保持することができなくなるという問題を有している。
【0007】
また、遮熱性材料として8).金属蒸着フィルムを積層した膜材、9).樹脂被覆層中に近赤外線吸収化合物を添加した膜材、10).樹脂被覆層中に有機系顔料、色素などを添加した膜材などが提案されているが、これらの膜材でも使用の経過に伴い、膜材の表面に汚れが蓄積することによって、遮熱効果が減衰することが問題となっていた。
【0008】
従って、特に日除テント、中大型テント、テント倉庫などの建築構造物用途において、遮熱機能を有し、かつ、煤塵などの環境汚れの影響を受けずに遮熱効果を安定して持続することが可能である産業資材用の繊維複合膜材の開発が希求されていたのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、屋外使用時において遮熱効果の妨げとなる煤塵付着汚れ(環境汚れ)を長期間効果的に防止することが可能である遮熱性防汚膜材を提供しようとするものであり、特に日除テント、中大型テント、テント倉庫などの建築構造物用途に適した産業資材用遮熱性防汚膜材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の現状に鑑みて研究、検討を重ねた結果、特定の物質と光触媒性物質とを併用すること、さらに特定の金属薄膜層の併用、特定の金属酸化物透明層の併用、さらに特定の発泡層の併用などによって得られる光触媒層を最外層として有する複合膜材が、上記従来技術では達成が困難とされていた、優れた遮熱機能を安定的に得るという課題を解決できることを見い出して、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
本発明の遮熱性防汚膜材は、シート状基材と、このシート状基材の表・裏面の少なくとも1面上に形成され、少なくとも1種の重合体からなる樹脂成分と、金属粉及びセラミックス粉の少なくとも1種からなる粉体成分とを、99:1〜70:30含有する熱制御性樹脂層と、前記少なくとも1層の熱制御性樹脂層上に形成され、光触媒性物質と、バインダーとを含む光触媒含有層とを有し、
前記シート状基材と、前記熱制御性樹脂層との間に、セラミックス粉末を含む樹脂マトリックスとこの樹脂マトリックス中に分布している多数の気泡とからなる樹脂発泡層が形成されており、また
前記熱制御性樹脂層と、前記光触媒含有層との間に、前記熱制御性樹脂層を、前記光触媒含有層の光触媒作用を遮断する樹脂材料を主成分として含む保護層が形成されていることを特徴とするものである。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記熱制御性樹脂層が、前記樹脂成分及び粉体成分に加えて揮散性及び/又は移行性を有する添加物を含み、かつ、その前記保護層側表面上に形成され、かつ、前記揮散性及び/又は移行性添加物の揮散及び/又は移行を阻止するための樹脂材料を主成分として含む添加物揮散防止層をさらに有していることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記添加物揮散防止層に含まれる樹脂材料が、アクリル樹脂、エネルギー線硬化型アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記熱制御性樹脂層に含まれる金属粉が、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、銅、及びスズから選ばれた少なくとも1種の粉末から選ばれることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記熱制御性樹脂層に含まれるセラミックス粉が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた少なくとも1種の微粒子から選ばれることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記セラミックス粉の粒子が、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、スズ、クロム、亜鉛、金、銀、銅から選ばれた1種以上の金属によって表面被覆されていることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記シート状基材が、繊維布帛、可撓性樹脂フィルム又はシート、及び可撓性樹脂により表面被覆された繊維布帛から選ばれることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記シート状基材用繊維布帛が、目合い空隙率6〜40%のフィラメント織物、及び目合い空隙率0〜10%の短繊維紡績織物から選ばれることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記シート状基材が、その質量に対して1〜10質量%のセラミックス粉を含有していることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記シート状基材に含有されるセラミックス粉が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ酸から選ばれた少なくとも1種の微粒子からなることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記保護層に含まれる樹脂材料が、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フォスファーゼン系樹脂から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記保護層が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカから選ばれた少なくとも1種を含むケイ素含有物質をさらに含有することが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記光触媒含有層が、10〜70質量%の光触媒性物質と、25〜95質量%の金属酸化物ゲル及び金属水酸化ゲルから選ばれた少なくとも1種と、1〜20質量%のケイ素含有物質を含有することが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記光触媒性物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23)、酸化鉄(Fe23)から選ばれた1種以上の金属酸化物を含有することが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記光触媒性物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23)、酸化鉄(Fe23)から選ばれた1種以上の金属酸化物と、それを担持する無機系多孔質微粒子とを含有することが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記熱制御性樹脂層と、前記保護層との間に、金属及び無機金属化合物からなる金属薄膜層、及び金属酸化物を含む金属酸化物透明層の少なくとも1層が形成されていることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記金属薄膜層及び金属酸化物透明層の両層を含むとき、前記熱制御性樹脂層上に、前記金属薄膜層が形成され、その上に前記金属酸化物透明層が形成され、その上に前記保護層が形成されていることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記金属薄膜層が、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、銅、スズの金属、及び、これらの酸化物、窒化物、炭化物から選ばれた1種以上の金属蒸着層であることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記金属酸化物透明層が、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上の金属酸化物によるスタッパリング層又は蒸着層であることが好ましい。
本発明の遮熱性防汚膜材において、前記樹脂発泡層に含有されるセラミックス粉末が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた1種以上の微粒子であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の遮熱性防汚膜材は図1〜4に示された積層構造を有する態様を包含する。
図1において、本発明の遮熱性防汚膜材1は、シート状基材2と、このシート状基材の表・裏面の少なくとも1面上に形成され、少なくとも1種の重合体からなる樹脂成分と、金属粉及びセラミックス粉の少なくとも1種からなる粉体成分とを、99:1〜70:30含有する表・裏面側熱制御性樹脂層3a,3bと、前記表面側熱制御性樹脂層3a上に形成され、光触媒性物質と、バインダーとを含む光触媒含有層5とを有し、さらに前記シート状基材2と、その表裏面の少なくとも1面上に形成された熱制御性樹脂層、図1においては、裏面側熱制御性樹脂層3bとの間に形成され、かつセラミックス粉末を含む樹脂マトリックスと、この樹脂マトリックス中に分布している多数の気泡とからなる樹脂発泡層9と、前記表面側熱制御性樹脂層3aと、前記光触媒含有層5との間に形成され、前記熱制御性樹脂層を、前記光触媒含有層の光触媒作用を遮断する樹脂材料を主成分として含む保護層4とを含むものである。前記表面側熱制御性樹脂層3a、前記樹脂成分及び粉体成分に加えて揮散性及び/又は移行性を有する添加物を含む場合、図1に示されているように、この熱制御性樹脂層3aは、その前記保護層4側の表面上に形成され、かつ、前記揮散性及び/又は移行性添加物の揮散及び/又は移行を阻止するための樹脂材料を主成分として含む添加物揮散防止層6をさらに有していて、これらにより添加物揮散防止層付き熱制御性樹脂層3cが構成されていてもよい。
【0013】
図2に示されている本発明の遮熱性防汚膜材1においては、図1に示されているものと同様の積層構造を有し、但し、添加物揮散防止層6付き表面側熱制御性樹脂層3cの添加物揮散防止層6と保護層4との間に、金属酸化物透明層7が更に形成されている。この場合、添加物揮散防止層6の配置を省略してもよい。また図3に示されている本発明の遮熱性防汚膜材1において、図2に示されているものと同様の積層構造を有しているが、但し、図2における金属酸化物透明層7の代りに、金属及び無機金属化合物からなる金属薄膜層8が形成されており、その上に保護層4が形成されている。
図4に示された本発明の遮熱性防汚膜材1において、図3と同様の積層構造を有しているが、但し、図3における金属薄膜層の8上に、さらに金属酸化物透明層7が形成され、その上に保護層4が形成されている。
【0014】
本発明の遮熱性防汚膜材に使用されるシート状基材としてはその形状、寸法、材質に格別の制限はないが、好ましくは、可撓性樹脂フィルム、又はシート、繊維布帛物、及び可撓性樹脂によって表面被覆された繊維布帛などから選ばれる。本発明の遮熱性防汚膜材用シート状基材として用いられる繊維布帛は、織布、編布、不織布などの何れの態様のものであってもよいが、織布又は編布が特に好ましい。織布としては、平織物(経糸・緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、綾織物(経糸・緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文など)、朱子織物(経糸・緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛びなどの正則朱子)などを使用することができ、特に目抜け平織物を用いることが好ましい。編布としてはラッセル編を用いることが特に好ましい。
【0015】
また、繊維織物の縦糸と緯糸又は編物を形成する糸条には、合成繊維、天然繊維(綿、麻など)、半合成繊維(レーヨン、アセテートなど)、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混用繊維などが適しているが、特に本発明に使用する繊維織物には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、及び、これらの混用繊維が好ましく使用される。これらの繊維糸条としては、モノフィラメント糸条、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、スプリット糸条、テープ糸条などの態様が挙げられる。また、無機繊維では、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などのマルチフィラメント糸条なども好ましく使用することができる。
【0016】
本発明においては、これらの繊維糸条のなかでも、汎用性が高く、引張強力、引裂強力、耐熱クリープ特性などの物性バランスに優れているポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、及びこれらの混合繊維や、混用繊維などから製織されたマルチフィラメント平織織布または、短繊維紡績(スパン)平織布帛を用いることが好ましい。これらの繊維織物は、シャットル織機、シャットルレス織機(レピア方式、グリッパ方式、ウオータージェット方式、エアジェット方式)などの従来公知の織機を用いて製織することができる。また、上記の繊維織物には公知の繊維処理加工、例えば、精練処理、漂白処理、染色処理、柔軟化処理、撥水処理、防水処理、防カビ処理、防炎処理、毛焼き処理、カレンダー処理、及びバインダー樹脂処理などを施したものを使用することもできる。
【0017】
本発明に使用する繊維織物としては、目合い空隙率6〜40%のフィラメント織物、または目合い空隙率0〜10%の短繊維紡績織物であることが好ましい。本発明に使用する繊維織物がフィラメント織物の場合、その目合い空隙率は6〜40%、特に10〜30%であることが、後述の熱制御性樹脂層を形成するフィルムの積層性、すなわち表裏フィルム層のブリッジ融着性の観点において好ましい。目合い空隙率が40%を越えると、得られる膜材の寸法安定性に劣るだけでなく、強度が弱くなり、産業資材用途に使用することが困難となる。また、フィラメント織物はマルチフィラメント糸条からなる織布であることが好ましく、このマルチフィラメント糸条は、繊維形成性熱可塑性樹脂紡糸原料を熱溶融して粘調液化して、あるいは特定の溶媒中に溶解して、これを特定の口径の細孔を多数有する紡糸口金を通過させて押出して紡糸して冷却、または脱溶媒して得られる。このマルチフィラメント糸条としては、111〜2222dtexの範囲、特に138〜1111dtexの繊度の長繊維糸条が好ましく用いられる。糸条の繊度が111dtexよりも小さいと、得られる膜材の引裂強力が不十分であることがあり、また2222dtexよりも大きいと、得られる膜材の破断強力と引裂強力には優れるが、織交点の凹凸度を増して煤塵汚れが蓄積し易くなるため、遮熱効果が不十分となることがある。織布の経糸と緯糸の打込み密度は、上記糸条を経糸、及び緯糸として1インチ間4〜30本、特に8〜20本打込んで織られた織布が好ましく使用できる。この糸条は無撚であっても、撚りが掛けられたものであってもよい。これら織布の目付量は、35〜300g/m2 のものが本発明に適している。
【0018】
また、本発明に使用する繊維織物が短繊維紡績織物の場合、その目合い空隙率は0〜10%、特に0〜5%であることが、後述の熱制御性樹脂層を形成する樹脂液の塗工性の観点において好ましい。目合い空隙率が10%を越えると、熱制御性樹脂層を形成する樹脂液の塗工が困難となる。しかし、例外として、短繊維紡績織物に熱制御性樹脂層を形成するフィルムを積層する場合においては、これらの目合い空隙率は10%を越えてもよく、その上限を40%とすることができる。また、短繊維紡績織物は短繊維紡績糸条からなる織布であることが好ましく、短繊維紡績糸条は、繊維形成性熱可塑性樹脂紡糸原料を熱溶融して粘調液化して、あるいは特定の溶媒中に可溶化して、これを特定の口径の細孔を多数有する紡糸口金を通過させて押出して紡糸して冷却、または脱溶媒して得られた、長繊維紡糸束(トウ)を2〜6cmの長さに切断して得られるステープルを開繊し、ダブリングドラフト・練条したスライバを引き伸ばして繊維平行度を一定に揃えてロービング(粗糸)として、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績されたものであることが好ましい。
【0019】
これらは、単糸または2本以上の単糸を引き揃えてS(右)撚もしくはZ(左)撚によって加撚された片撚糸、単糸または2本以上の単糸を引き揃えて下撚りされた加撚糸を2本以上引き揃えて上撚りを掛けた諸撚糸、その他強撚糸などであることができる。短繊維紡績糸条の番手としては591dtex(10番手)、295dtex(20番手)、197dtex(30番手)、148dtex(40番手)、97dtex(60番手)の範囲のもの、特に591dtex(10番手)、422dtex(14番手)、370dtex(16番手)、295dtex(20番手)、246dtex(24番手)、197dtex(30番手)などの範囲の短繊維紡績糸条が使用できる。(これらの番手数は10の倍数に限定されるものではない。)短繊維紡績糸条が97dtex(60番手)より小さいと得られる膜材の引裂強力に劣り、また591dtex(10番手)を越えて大きくなると、得られる膜材の破断強力と引裂強力には優れるが、織交点の凹凸度を増して煤塵汚れが蓄積し易くなるため、遮熱効果が不十分となることがある。これらの短繊維紡績糸条は単糸及び、双糸、さらには単糸3本以上の撚糸、またはこれらの2本合糸、あるいは2本合撚糸などの糸条を経糸及び緯糸として25.4mm(1インチ)間30〜160本打込んで得られるスパン平織織布が本発明に好ましく用いられる。特に好ましくは295dtex(20番手)単糸、または295dtex(20番手)双糸を用いて25.4mm(1インチ)間経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で糸を打込んで得られるスパン平織織布などが適している。
【0020】
その他、マルチフィラメント糸条を芯層として、これに短繊維糸条を鞘層として巻き付けて紡績したコアスパン糸条から得られるスパン平織織布を使用することもできる。これら織布の目付量は、100〜500g/m2 のものが本発明に適している。その他、必要に応じて、モノフィラメント糸条、テープ糸条、及びスプリット糸条なども本発明に用いることができ、モノフィラメント糸条は、上記マルチフィラメントの製造機において、紡糸口金の口径を太くして製造されたものであり、テープ糸条は、繊維形成性熱可塑性樹脂紡糸原料(特にポリプロピレン、ポリエチレン)をT−ダイ押出機で押し出して得られた50〜300μm厚のフィルムを、2〜50mm幅で流れ方向にスリットし、これを1軸延伸して得られる1〜30mm幅の扁平糸条(フラットヤーン)であり、また、スプリット糸条は、これらの1軸延伸フラットヤーンを針刃ロールでさらに割裂して機械的にマルチフィラメント化したものである。
【0021】
上記繊維織物の目合い空隙率は、織布の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。目合い空隙率は経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として求めることが簡便である。本発明に使用するフィラメント織物、及び短繊維紡績織物には、汎用性の観点から特にポリエステル繊維織物であることが好ましく、ポリエステル繊維としては、具体的に、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート樹脂から溶融紡糸されるポリエステル繊維であることが、強力及び、紡糸性の観点で好ましい。
【0022】
また、本発明の膜材に用いる繊維織物を構成する繊維糸条には、セラミックス粉を含むことが遮熱性の観点で好ましく、セラミックス粉は、繊維形成性熱可塑性樹脂紡糸原料に対して0.1〜10質量%、特に1〜5質量%含有することが好ましい。セラミックス粉の含有量が0.1質量%未満だと、得られる膜材の遮熱効果が不十分となることがあり、また、含有量が10質量%を越えると曳糸性に劣り、繊維の紡糸が困難となることがある。セラミックス粉を含有する、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、及び、その他繊維糸条(モノフィラメント糸条、テープ糸条、スプリット糸条)は、上記繊維糸条の製造工程において、繊維形成性熱可塑性樹脂を熱溶融する工程、あるいは特定の溶媒中に可溶化する工程で、セラミックス粉を加えることによって得ることができる。
【0023】
繊維形成性熱可塑性樹脂原料に配合するセラミックス粉としては具体的に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた1種以上の微粒子であることが好ましく、これらは平均粒子径が1μm以下、特に0.1〜0.6μm、さらに0.05〜0.35μmの範囲のものが好ましい。平均粒子径が1μmを越えると、繊維が切れやすくなり紡糸が困難となることがある。
【0024】
これらの微粒子の表面には繊維形成性熱可塑性樹脂原料に対する分散性改善の目的で、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸によって潤滑処理されたもの、あるいはシランカップリング剤処理、有機チタネートカップリング剤処理によって繊維形成性熱可塑性樹脂原料との密着性を改善したものなどを使用することが、紡糸時の曳糸性の観点において好ましい。
【0025】
上記繊維織物(織布)、及びセラミックス粉を含有する繊維織物(織布)には、熱制御性樹脂層によって表面被覆されていることが好ましく、本発明の膜材においては特に目抜け平織り織布の両面が熱制御性樹脂層によって表面被覆されていることが遮熱効果と耐久性、及び膜材の熱融着接合の観点で好ましい。熱制御性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、汎用的には、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が最も好ましく、長期耐久性の観点ではフッ素系共重合体樹脂が最も好ましい。また、特に環境問題に配慮して、焼却廃棄時にハロゲン化水素ガスを排出しない、ハロゲン非含有設計の膜材が所望される場合においては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系共重合体樹脂:〔エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂〕、ポリプロピレン系樹脂、及びスチレン系共重合体樹脂、その他、アイオノマー樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂から選ばれた1種以上の、単層構造体、または多層構造体などが好適に使用できる。
【0026】
本発明において、熱制御性樹脂層の厚さに特に制限はないが、厚さが50〜500μmであることが好ましく、100〜350μmに形成されることがより好ましい。熱制御性樹脂層は、1).金属粉、及び/又はセラミックス粉を配合した上記熱可塑性樹脂をカレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルム成型する方法、2).金属粉、及び/又はセラミックス粉を配合した上記熱可塑性樹脂を有機溶剤に可溶化した樹脂溶液をコーティング法、またはディッピング法などの公知の塗工方法によって均一塗布して乾燥する方法、3).金属粉、及び/又はセラミックス粉を配合した上記熱可塑性樹脂の水分散樹脂溶液(エマルジョン、ディスパージョン)をコーティング法、またはディッピング法などの公知の塗工方法によって均一塗布して乾燥する方法、4).金属粉、及び/又はセラミックス粉を配合したペースト塩化ビニル樹脂をコーティング法、またはディッピング法などの公知の塗工方法によって均一塗布してゲル化する方法、などの何れかの方法によって得ることができる。
【0027】
本発明の膜材の熱制御性樹脂層に用いられる金属粉としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅、スズから選ばれた1種以上を用いることが好ましい。これらの粉末は、湿式ボールミル法、振動ボールミル法、アトライター法によって金属チップ、金属箔を粉砕して得られ、平滑磨砕面を有し、粒度5〜150μmの鱗片状粉末である。これらの粉末の表面には表面保護と分散性付与の目的で、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸によって潤滑処理されたもの、あるいはシランカップリング剤処理、有機チタネートカップリング剤処理によって熱可塑性樹脂との密着性を付与したもの、また、あるいはアクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂などで表面保護被覆したものであってもよい。このようにすると、耐久性を向上させることが好ましい。熱制御性樹脂層に用いる金属粉には、直射日光の反射性の観点においてアルミニウム粉末、ステンレス粉末が特に好ましく、特にアルミニウム粉末は、ミネラルスピリットで湿潤したペースト状形態、熱可塑性樹脂をバインダーとしてアルミニウム粉末を高濃度で練り込んだマスターバッチ形態、アルミニウム粉末を熱可塑性樹脂溶液中に分散した塗料形態のものも使用できる。上記金属粉は熱可塑性樹脂に対して1〜30質量%、特に5〜20質量%含有することが得られる膜材の遮熱性の観点で好ましく、さらに上記金属粉は下記セラミックス粉とを併用して、熱可塑性樹脂に対し、金属粉とセラミックス粉との総和量1〜30質量%、特に5〜20質量%を含有することが、得られる膜材の遮熱性向上の観点においてより好ましい。この場合、金属粉とセラミックス粉の総和量に対するセラミックス粉の併用量に特に制限はない。金属粉の含有量、又は、金属粉とセラミックス粉の含有量が30質量%を超えると、得られる膜材の熱制御樹脂層の強度を低下させて疲労耐久性を悪くすることがある。
【0028】
また、本発明の膜材の熱制御性樹脂層に用いるセラミックス粉としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた1種以上の微粒子であることが好ましく、これらは平均粒子径1μm以下、特に0.1〜0.6μm、さらに0.05〜0.35μmの範囲であるものが好ましい。これらの微粒子の表面には分散性付与の目的で、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸によって潤滑処理されたもの、あるいはシランカップリング剤処理、有機チタネートカップリング剤処理によって熱可塑性樹脂との密着性を改善したものを使用することが、耐久性の観点において好ましい。また、上記セラミックス粉には、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、スズ、クロム、亜鉛、金、銀、銅などの金属によって表面被覆されたセラミックス粉なども好ましく使用することができる。セラミックス粉の金属被覆法としては、公知の蒸着法、スパッタリング法、電解めっき法(特に銅−ニッケル−クロムめっき、ニッケル−クロムめっき)などによって実施することができる。上記セラミックス粉の配合量は、熱可塑性樹脂に対して1〜30質量%、特に5〜20質量%であることが得られる膜材の遮熱性の観点で好ましい。さらにこれらのセラミックス粉には、上記金属粉を併用して用いることが遮熱効果向上の観点においてより好ましく、熱可塑性樹脂に対し、セラミックス粉と金属粉の総和量1〜30質量%、特に5〜20質量%含有することが好ましい。この場合、セラミックス粉と金属粉の総和量に対する金属粉の併用量に特に制限はない。セラミックス粉の含有量、又はセラミックス粉と金属粉の含有量が30質量%を超えると、得られる膜材の熱制御樹脂層の強度を低下させて疲労耐久性を悪くすることがある。
【0029】
本発明の膜材において熱制御性樹脂層を構成するポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル系共重合体樹脂を包含し、具体的に、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−ウレタン共重合体樹脂などであり、これらの樹脂は2種以上併用することもできる。
【0030】
上記ポリ塩化ビニル樹脂は、数平均分子量、P=700〜3800、好ましくは1000〜2000のストレート塩化ビニルポリマーであることが好ましく、また、上記塩化ビニル系共重合体樹脂中に含まれる共重合成分は2〜30質量%であることが好ましい。本発明において、目抜け平織り織布を被覆する熱制御性樹脂層にポリ塩化ビニル樹脂を用いる場合、公知の軟質配合を用いることが好ましく、特に軟質配合に使用する可塑剤としてはフタル酸エステル系可塑剤に代表される公知の汎用可塑剤のほか、可塑剤揮散防止効果の観点から平均分子量が900〜6000、特に1000〜3200のポリエステル系可塑剤を使用すること、さらに可塑剤揮散防止効果の観点から平均分子量が10000以上、特に20000以上のエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素3元共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素3元共重合体樹脂などの高分子可塑剤を含む可塑剤を使用することが好ましい。ポリエステル系可塑剤は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどから任意に合成されたものが使用できる。
【0031】
具体的に熱制御性樹脂層は、i).ストレート塩化ビニルポリマー100質量部に対し、可塑剤の総和量として50〜100質量部用い、さらに可塑剤の30〜100質量%としてポリエステル系可塑剤を用い、これらを含むコンパウンドを、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルムに成型する。また、ii).ストレート塩化ビニルポリマー100質量部に対し、可塑剤の総和量として60〜140質量部用い、可塑剤の30〜100質量%として、高分子可塑剤を含むコンパウンドを、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルムに成型する。これらの軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物において、安定剤は公知のものから適宜選定して使用すればよく、必要に応じて、着色剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、HALS系耐候安定剤など公知の添加剤を使用できる。
【0032】
熱制御性樹脂層が、軟質配合によるポリ塩化ビニル樹脂である場合には、可塑剤、添加物などの揮発、揮散による膜材の環境汚れを防止する目的で、熱制御性樹脂層の表面には添加物揮散防止層を設けることが好ましい。添加物揮散防止層は、アクリル系樹脂(特に紫外線硬化型が好ましい)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂などが適し、これらは塗布して形成してもよく、あるいはそれからなるフィルムを積層して形成してもよい。
【0033】
本発明の膜材において、熱制御性樹脂層を構成するフッ素系共重合体樹脂としては、フルオロオレフィン共重合体樹脂が好ましく、フルオロオレフィン単位としては、例えば、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などフッ素原子を構成単位中に1個以上含有するエチレン、プロピレン、及びα−オレフィンなどのオレフィン骨格のモノマーであれば特に限定はない。フルオロオレフィン共重合体樹脂は樹脂フルオロオレフィン単位から選ばれた2種以上を共重合して得られるものであり、これらは具体的に、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、VdF−HFP共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、TFE−HFP共重合体樹脂、CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−HFP共重合体樹脂、TFE−CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE−HFP共重合体樹脂などである。また、これらは2種以上を併用することもできる。
【0034】
本発明の膜材において熱制御性樹脂層を構成するアクリル系樹脂としては、i).アルキル基の炭素原子数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類のラジカル重合体樹脂で、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどをモノマーとして得られる重合体である。ii).また上記アクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素原子数が1〜18のメタアクリル酸アルキルエステル類のラジカル重合体樹脂で、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸i−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシルなどをモノマーとして得られる重合体である。 iii).本発明に用いるアクリル系樹脂は上記2種以上のモノマーからなる共重合体樹脂であってもよく、また、これらのアクリル系樹脂には、アクリル系モノマーと反応性を有する下記共重合モノマーをアクリル系モノマーと置換して含むものであってもよい。これらの共重合モノマーは、例えば、a).マレイン酸、無水イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸類、b).アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアミド化合物類、c).アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸類、d).アクリル酸グリシジル、メタアクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、e).エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1などのα−オレフィン類、f).エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、g).ポリオキシエチレンアリルエーテル、エチルアリルエーテルなどのアルケニル類、h).酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、i).スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類などから選ぶことができる。
【0035】
本発明の膜材において、熱制御性樹脂層を構成するエチレン共重合体樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂などの共重合体樹脂であり、i).エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、あるいはメタロセン系触媒の存在下、気相法、スラリー液相法、または高圧法によってエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂が挙げられ、α−オレフィンモノマーとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1などである。ii).また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレンと酢酸ビニルとをラジカル共重合して製造される、酢酸ビニル成分量を5〜35質量%含有するエチレン共重合体樹脂であり、 iii).また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸とのラジカル共重合によって製造される。(メタ)アクリル酸成分量を5〜35質量%含有するエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、及びエチレンと(メタ)アクリル酸エステルとのラジカル共重合によって製造された、(メタ)アクリル酸エステル成分を5〜35質量%含有するエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとは、具体的に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどである。
【0036】
本発明の膜材において熱制御性樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、i).プロピレンの単独重合によって得られるホモポリマー、ii).及びプロピレンとエチレンとを共重合して得られるエチレン−プロピレン共重合体樹脂、 iii).プロピレンとα−オレフィンとを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィン共重合体樹脂、iv).及び、予備重合で得られたエチレン−プロピレン共重合体に連続してプロピレンモノマーを共重合させる多段階重合によって得られるプロピレン・エチレン−プロピレン系共重合体エラストマー、及び予備重合で得られたエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体に連続してプロピレンを共重合させる多段階重合によって得られるプロピレン−エチレン・プロピレン・非共役ジエン系共重合体エラストマーなどである。プロピレン−α−オレフィン共重合体樹脂のコモノマーとして使用されるα−オレフィンとしては、炭素原子数4〜10のα−オレフィンモノマー、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ヘプテン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1などが挙げられ、得られるプロピレン系共重合体は、ランダム共重合体であっても、あるいはブロック共重合体の何れの共重合体であってもよい。このうちポリプロピレン系樹脂としては、特にメタロセン系触媒の存在下で気相法、スラリー液相法、または高圧法の何れかの方法によって重合されたシンジオタクティック立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂、またはアイソタクティック立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂などであることが熱制御性樹脂層の柔軟性の観点で好ましい。また、プロピレン−エチレン・プロピレン系共重合体エラストマー及び、プロピレン−エチレン・プロピレン・非共役ジエン系共重合体エラストマーは、具体的に、第1段階として、チタン化合物触媒及び、アルミニウム化合物触媒、またはメタロセン系触媒の存在下において、プロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外のα−オレフィンを用いて重合を行い、第1のプロピレン系ポリオレフィンを得る。このポリオレフィンはプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などであり、第2段階として、前記触媒を含有したままで、次のオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、非共役ジエンなどのモノマー)とを共重合することによって得るものである。
【0037】
上記エチレン系共重合体樹脂、及びポリプロピレン系樹脂には、柔軟性、及び加工性を改良する目的で、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−共役ジエン系ゴムなどのソフト成分と上記ポリオレフィン系樹脂との架橋、加硫アロイ体であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などをブレンド使用することもできる。特に、テント膜材の柔軟化の目的で、上記エチレン系共重合体樹脂、及びポリプロピレン系樹脂に、スチレン系共重合体樹脂をブレンドすることが好ましく、スチレン系共重合体樹脂としては、i).A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン共重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックである。)、ii).A−B型スチレンブロック共重合体樹脂(AとBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合体樹脂、 iii).及び、これらのスチレン系共重合体樹脂の水素添加樹脂(二重結合を水素置換したもの)などである。これらの市販品としては、具体的に、シェル.ケミカル社のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:クレイトンG)、旭化成工業(株)のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:タフテック)、(株)クラレのスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:ハイブラー、商標:セプトン)、日本合成ゴム(株)のスチレン系ランダム共重合体樹脂(商標:ダイナロン)などが挙げられる。これらのスチレン系共重合体樹脂は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、5〜80質量部をブレンドして使用することができる。
【0038】
本発明の膜材において熱制御性樹脂層を構成するポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート化合物と、分子構造内に2個以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物の中から選ばれた1種以上と、イソシアネート基と反応する官能基を含有する化合物との付加重合反応によって得られ、場合によってはアミン系化合物との併用によって得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂である。ポリウレタン系樹脂は、用いられるポリオール化合物の種類によって、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂などから選択できる。ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)のジイソシアネート化合物が用いられ、これらは例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明においては、耐候性の観点から脂肪族または脂環式ジイソシアネート化合物を用いて重合されたものが好ましく、また、ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジヒドロキシポリエチレンアジペート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを用いて重合されたものが好ましい。
【0039】
本発明の膜材において熱制御性樹脂層を構成するポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)など、さらにエラストマーとして、高融点結晶性ポリエステルセグメント(A)と、脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(B)とからなるブロック共重合体樹脂が挙げられる。この(A)セグメントはジカルボン酸と、ジオールとの重合によって得られるポリエステルであり、ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、及びアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。またジオール成分としては、炭素数2〜12の脂肪族、または脂環族ジオールが挙げられ、これらは例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどである。また、(B)セグメントを構成する脂肪族ポリエーテル単位としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール、及びこれらの共重合体のグリコールなどである。一方、(B)セグメントを構成する脂肪族ポリエステル単位としては、ポリε−カプロラクトン、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
【0040】
上記説明の熱制御性樹脂層には、必要に応じて、近赤外線吸収性物質、及び/又は有機系顔料を含んで着色されていてもよい。近赤外線吸収性物質としては、例えば、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アルミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物などを用いることができ、これらは特開昭51−135886号公報、特開昭56−143242号公報、特開昭58−13676号公報、特開昭60−23451号公報、特開昭61−115958号公報、特開昭63−295578号公報、特開平4−174402号公報、特開平5−93160号公報、特開平5−222302号公報、及び特開平6−264050号公報などに記されている公知の色素から選んで用いることができる。近赤外線吸収性物質の添加量は、熱制御性樹脂層に対して、0.01〜3.0質量%、特に0.1〜1.0質量%であることが好ましい。また、着色に適した有機系顔料としては、アゾ系顔料、(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料)、縮合多環系顔料(アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料)、その他ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリン系顔料などの有機系顔料が挙げられる。顔料の添加量に特に制限はない。
【0041】
また、上記熱制御性樹脂層には、さらに必要に応じて、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、HALS系耐候安定剤など公知の添加剤を使用することができる。特に熱制御性樹脂層には、熱可塑性樹脂に対して、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系)を0.1〜3.0質量%、及びポリマー型紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系)を1〜5質量%含むことによって、得られる膜材の遮熱効率がさらに向上することがある。
【0042】
本発明の遮熱性防汚膜材において、シート状基材上の熱制御性樹脂層と光触媒含有層との間には、保護層が形成されている。保護層は、光触媒含有層の光触媒作用を、熱制御性樹脂層から遮断する樹脂材料を主成分として含むものである。この保護層に用いる樹脂材料としては、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フォスファーゼン系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、熱または紫外線によって塗膜形成能を有するものであることが好ましい。このうちシリコン系樹脂としては、アルキル基、アルケニル基、アリル基、水素を1〜3個結合したクロロシランまたはアルコキシシランを単独ないし、複数種を無溶剤または有機系溶剤中で加水分解して重合した直鎖シリコーン樹脂、共重合シリコン樹脂、シリコンゴムなど、特に共重合シリコン樹脂としてSi−OH基、Si−OMe基を有する2官能以上の変性シリコン(例えば、シラノール基あるいはアルコキシ基を有するメチルメチルフェニルシリコン樹脂)とアルコール性水酸基含有樹脂とをアルキルチタネート触媒の存在下で反応させて得られるシリコン変性体類、例えばアクリル変性シリコン樹脂、アクリル−ウレタン変性シリコン樹脂、ウレタン変性シリコン樹脂、ウレタン変性シリコン−フッ素共重合体樹脂、エポキシ変性シリコン樹脂、ポリエステル変性シリコン樹脂、アルキッド変性シリコン樹脂、フェノール変性シリコン樹脂が挙げられる。また、シロキサン架橋可能なシリコン変性共重合体、シロキサン架橋可能なシリコン変性オリゴマー、イソシアネート架橋可能なシリコン変性共重合体、イソシアネート架橋可能なシリコン変性オリゴマーなどを使用することもできる。
【0043】
保護層用フッ素系樹脂としては、ビニルエーテル−フルオロオレフィン共重合体樹脂、ビニルエステル−フルオロオレフィン共重合体樹脂及び、これらのフッ素系樹脂(水酸基含有)とイソシアネート化合物の併用組成物などが挙げられる。特にフルオロオレフィン共重合体樹脂としては、ビニリデンフルオライド(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)成分を含有する共重合体樹脂が好ましく、これらは、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂などである。これらの共重合体樹脂には、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのフルオロオレフィンモノマーをさらに共重合して含むものであってもよい。また、メラミン系樹脂としては、シアヌルアミド、シアヌル酸トリアミド、シアヌル酸アミド、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン及びこれらの誘導体から選ばれた1種以上のメラミン化合物とホルマリンを反応させ、メチロール化メラミンの初期縮合物をブタノールで変性しブチル化メチロールメラミンとして有機系溶剤に可溶化させたもの、さらにブチル化メチロールメラミンをアルキッド樹脂とともに有機系溶剤に溶解させたものなどが挙げられる。
【0044】
保護層用エポキシ系樹脂としては、エピクロルヒドリンと多価フェノール類との開環付加反応によって得られるもの、汎用的にはエピクロルヒドリンとビスフェノールA、またはレゾールとの反応によって得られる重縮合物が使用でき、有機系溶剤中にアミン類、有機酸、酸無水物及びポリイソシアネート化合物などの硬化剤を併用して使用できる。さらにアルキッド樹脂、メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂などと併用したものが挙げられる。保護層用フォスファーゼン系樹脂としては、(PNCl2n (n=1,2,3,4)などの塩化ホスファーゼン及び、直鎖状塩化ホスファーゼンオリゴマー、または(PNCl2n (n=2,3,4)の4員環、6員環、8員環の環状塩化ホスファーゼンを原料として塩素をアクリル酸化合物に置換した反応性ホスファーゼン化合物の紫外線硬化物が挙げられる。ホスファーゼン化合物に付加して置換されるアクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0045】
本発明において、保護層はケイ素化合物を含有する樹脂層であることが、最外面に形成する光触媒含有層との密着性の観点で好ましく、保護層に含有させて用いるケイ素化合物としては、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカが挙げられる。ポリシロキサンとしては、ゾル−ゲル法によりアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合して得られるものが好ましい。例えばアルコキシシランとして、一般式:YnSiX4-n(n=1〜3)で表されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解化合物が適している。前記一般式においてYは例えば、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基またはエポキシ基であることができ、Xは例えば、ハロゲン、メトキシル基、エトキシル基、またはアセチル基であることができる。前記一般式のケイ素化合物は、具体的には、アルキル基置換トリクロルシラン、アルキル基置換トリブロムシラン、アルキル基置換トリメトキシシラン、アルキル基置換トリエトキシシラン、アルキル基置換トリイソプロポキシシラン、アルキル基置換トリ−t−ブトキシシランなどが挙げられ、アルキル基としては、それぞれメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、n−オクタデシル基、フェニル基である。また、具体的には、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をトリフルオロプロピル基に改変したもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をビニル基に改変したもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−メタアクリロキシプロピル基に改変したもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−アミノプロピル基に改変したもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−メルカプトプロピル基に改変したものなどが挙げられる。
【0046】
また、保護層用コロイダルシリカとしてはケイ酸ナトリウム溶液を陽イオン交換することによって得られる水分散媒のシリカゾル(SiO2 )が挙げられるが、保護層に使用するコロイダルシリカとしては有機系溶剤としてメタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、及び酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、その他テトラヒドロフランなどの1種以上から選ばれた有機系溶剤の何れか1種以上を分散媒とするBET平均粒子径10〜20nmものが適している。また、シリカ(SiO2 )としては、ケイ酸ナトリウムと鉱酸(硫酸)及び塩類を水溶液中で反応させる湿式法によって得られる合成非晶質シリカが挙げられる。合成非晶質シリカは、表面のシラノール基(Si−OH基)に水素結合で結合する水分と、シラノール基自体が含有する水酸基として存在する水分を結合水分として有する含水シリカである。非晶質含水シリカの平均凝集粒径としては、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、特に2〜10μmの非晶質含水シリカを用いることが好ましく、含水率としては3〜15質量%、特に5〜10質量%の含水シリカを用いることが好ましい。これらのシリカはシランカップリング剤で表面処理して用いることもできる。
【0047】
上記保護層に含まれるケイ素化合物の添加量としては、上記ポリシロキサン、コロイダルシリカ、及びシリカから選ばれた1種以上を、保護層を構成する樹脂の固形分総和量に対して5〜35質量%であることが好ましい。保護層のケイ素化合物含有量が5質量%未満であると保護層と光触媒含有層との密着性が不十分になることがあり、またそれが35質量%を越えると保護層と光触媒含有層との密着性は向上するが、保護層の摩耗強度が不十分になることがある。保護層を形成する方法には、特別に限定はないが、ケイ素化合物を含有する上記バインダー樹脂の塗工溶液を熱制御性樹脂層に均一、かつ均質に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法などが好適である。上記塗工溶液によって形成される保護層の塗布量に特に制限はないが、上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって、固形分付着量で2〜20g/m2 、特に3〜10g/m2 に形成されることが好ましい。固形分付着量が2g/m2 よりも少ないと、本発明の膜材の屋外耐久性が不十分となることがあり、また、20g/m2 を超えると保護層の屈曲強さを低下させることがある。保護層の塗布量、すなわち膜厚の設定は、上記塗工剤の有機系溶剤量をコントロールすることによって実施できる。保護基の厚さは、0.3〜20μmであることが遮熱性と屈曲強さの観点において望ましい。塗工剤に含まれる有機系溶剤としては、例えば、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、及び酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、その他テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0048】
また、本発明の遮熱性防汚膜材において、熱制御性樹脂層と保護層との間には、金属薄膜層が設けられていてもよい。この金属薄膜層は、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、銅、スズの金属、及び、これらの酸化物、窒化物、炭化物から選ばれた1種以上の金属をターゲット材に用いて、熱制御性樹脂層上に蒸着して形成された直射日光反射性の金属光沢を有するハーフミラー層であり、特にアルミニウム蒸着によって得られたハーフミラー層であることが金属光沢(直射日光反射性)の観点において好ましい。蒸着方法としては、各種公知の蒸着方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(化学的蒸着)法などの何れであってもよい。金属薄膜層(ハーフミラー層)の厚さは、5〜60nm(50〜600Å)、特に10〜30nm(100〜300Å)であることが遮熱効果の観点で好ましい。金属薄膜層の厚さが、5nm(50Å)未満だと、得られる膜材の遮熱効果が不十分となり、また、60nm(600Å)を越えるものでも本発明に使用するのに支障はないが、遮熱効果は頭打ちとなることが多い。
【0049】
本発明において、特に熱制御性樹脂層が軟質配合によるポリ塩化ビニル樹脂である場合、蒸着中の可塑剤、添加物などの揮発、揮散による蒸着阻害を防止する目的で、熱制御性樹脂層の表面には添加物揮散防止層を設けることが好ましい。添加物揮散防止層は、アクリル系樹脂、(エネルギー線硬化型アクリル樹脂が好ましく、特に紫外線硬化型アクリル樹脂がより好ましい。)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂などが適し、これらは塗布して形成しても、あるいはフィルムを積層して形成してもよい。
【0050】
金属薄膜層(ハーフミラー層)を含む本発明の遮熱性防汚膜材の態様には、1).金属粉、及び/又はセラミックス粉を含有する熱制御性樹脂層を有する基材において、熱制御性樹脂層の表面上に、(添加物揮散防止層を必要に応じて設け、その表面に)金属薄膜層を設け、この上に保護層と、さらに保護層の表面に設けられた光触媒含有層を有する膜材、2).上記1)の膜材において、金属薄膜層と保護層との間に、金属酸化物透明層が形成された膜材、3).上記1)または上記2)の膜材において、基材を構成する熱制御性樹脂層と繊維織物との間の少なくとも一方に樹脂発泡層を有する膜材である。また、金属酸化物透明層を含む本発明の遮熱性防汚膜材の態様は、4).金属粉、及び/又はセラミックス粉を含有する熱制御性樹脂層を有する基材において、熱制御性樹脂層の表面上に、(添加物揮散防止層を必要に応じて設け、その表面に)金属酸化物透明層を設け、この上に保護層と、さらに保護層の表面に設けられた光触媒含有層を有する膜材、並びに5).上記4)の膜材において、基材を構成する熱制御性樹脂層と繊維織物との間の少なくとも一方に脂肪発泡層を有する膜材などがある。
【0051】
本発明の膜材において、熱制御性樹脂層と保護層との間には、金属薄膜層、もしくは、金属酸化物透明層が設けられていること、あるいは金属薄膜層と金属酸化物透明層が同時に設けられていると、遮熱効果をさらに向上させることができる。金属酸化物透明層の形成は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化インジウム(In2O 、In23)、スズドープ酸化インジウム(TIO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)から選ばれた1種以上の金属酸化物をターゲット材に用いて、これを熱制御性樹脂層上あるいは金属薄膜層上に蒸着することによって形成することができる。蒸着方法としては、各種公知の蒸着方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(化学的蒸着)法などの何れであってもよいが、特にスパッタリング法が好ましい。金属酸化物透明層の厚さは、3〜30nm(30〜300Å)であること、特に5〜15nm(50〜150Å)であることが、透明性と遮熱効果の観点で好ましい。金属酸化物透明層の厚さが、30Å未満であると、得られる膜材の遮熱効果が不十分となり、また、300Åを越えると、得られる膜材の透明性が不十分になることがある。特に本発明の膜材の態様2)、及び3)において、金属薄膜層上に金属酸化物を蒸着した時に、下層の金属薄膜層の光反射効果を効果的に得ることができなくなることがある。本発明において、金属酸化物透明層の形成には、スズドープ酸化インジウム(TIO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)から選ばれた1種以上の金属酸化物をターゲット材に用いて蒸着することが、透明性と遮熱効率との観点で好ましい。また本発明において、特に熱制御性樹脂層が軟質配合によるポリ塩化ビニル樹脂である場合、蒸着中の可塑剤の揮発、揮散による蒸着阻害を防止する目的で、熱制御性樹脂層には可塑剤移行防止層を設けることが好ましい。可塑剤移行防止層は、アクリル系樹脂(エネルギー線硬化型アクリル樹脂であることが好ましく、特に紫外線硬化型アクリル樹脂であることがより好ましい。)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂などが適し、これらは塗布して形成しても、あるいはフィルムを積層して形成してもよい。
【0052】
本発明の膜材において光触媒含有層には、光触媒含有層の全質量に対して光触媒性物質10〜70質量%と、金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲル25〜90質量%と、ケイ素化合物1〜20質量%とを含有することが好ましい。光触媒含有層は、光触媒性物質、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲル、ケイ素化合物を含有する塗工液を上記保護(ケイ素化合物含有樹脂)層の表面に塗布、乾燥して形成される。光触媒含有層中に含まれる金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルは、光触媒性物質を固着し、また保護層の表面と強固に密着させ、さらにこれらの金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルが多孔質であることから表面積を大きく有し、このため光触媒活性を有効に発揮させることができる。光触媒含有層に含まれる金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルの含有量は光触媒含有層に対して25〜90質量%であることが好ましい。含有量が25質量%未満では保護層との密着性が不十分となることがあり、また90質量%を越えると光触媒性物質の含有量が少なくなり光触媒活性が十分に発揮させることができないことがある。さらに金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルの乾燥物の比表面積は100m2 /g以上であることが好ましく、それによって保護層との密着性と、光触媒活性効率を向上させることができる。
【0053】
前記光触媒含有層用金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルとしては、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫の金属から選ばれた1種または2種以上の金属の酸化物ゲル、もしくは水酸化物ゲルであることが好ましく、具体的にはシリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、酸化ニオブゾルなどが例示できる。また、これらの混合ゲルとして、共沈法で得られる複合酸化物ゲルとしても使用できる。これらの金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルと光触媒性物質との混合には、これらのゲルとなる前のゾルの状態で混合するか、もしくはゾルを調整する前の原料の段階で混合するのが好ましい。金属酸化物ゲル、及び/又は金属水酸化物ゲルを調整する方法には、金属塩を加水分解する方法、中和分解する方法、イオン交換する方法などがあるが、ゲルの中に光触媒性物質が均一に分散可能であれば何れの方法でも使用できる。本発明の膜材の光触媒含有層に用いられる酸化物ゾルとしては、特にジルコニウム及び、アルミニウムの酸化物ゾルが耐久性の面で好ましく使用できる。
【0054】
本発明の膜材において、光触媒含有層に用いる光触媒性物質としては、TiO2 、ZnO、SrTiO、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3 、K2 NbO3 、Fe23、Ta25、WO3 、SnO2 、Bi23、NiO、Cu2O 、SiC、SiO2 、MoS2 、InPb、RuO2 、CeO2 などを例示することができ、またこれらの光触媒性物質にPt、Rh、RuO2 、Nb、Cu、Sn、NiOなどの金属、及び金属酸化物を添加した公知のものが全て使用できる。これらの光触媒性物質のうち、特に酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、(酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23)、酸化鉄(Fe23)などが好ましく、さらに、これら光触媒性物質を担持する無機系多孔質微粒子などを使用することもできる。上記光触媒性物質を担持する無機系多孔質微粒子に用いる無機系多孔質微粒子としては、シリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土などであり、これらの無機系多孔質微粒子の平均一次粒子径は0.01〜10μm、特に0.05〜5μmであるものが好ましい。光触媒性物質を無機系多孔質微粒子に担持させるには、光触媒性物質を含有する金属アルコラートによるゾル−ゲル薄膜製造工程を応用した表面処理が好ましい。
【0055】
本発明の光触媒含有層に含まれる光触媒性物質としては、これらの中でバンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で、しかも汎用性の金属酸化物である酸化チタンを使用することが好ましい。光触媒性物質として用いられる酸化チタンにおいては、硫酸チタニル、塩化チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を熱加水分解して得られる酸化チタンゾル、及び酸化チタンゾルのアルカリ中和物として得られる酸化チタンなど、また水酸化チタン及び、チタン酸化物の超微粒子を過酸化水素などの過酸化物でペルオキソ化して水中に分散したアナターゼ型ペルオキソチタン酸分散液であることが好ましい。酸化チタンはアナターゼ型とルチル型の何れも使用できるが、アナターゼ型の酸化チタンが光触媒活性の大きさの観点で好ましい。具体的には、平均結晶子径5〜20nmの塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾルなどが好ましく使用できる。光触媒性物質の粒径は小さい方が光触媒活性に優れるため、平均粒子径50nm以下、より好ましくは20nm以下の光触媒性物質が適している。また、酸化チタンとしては含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンなども含まれる。光触媒含有層中の光触媒性物質の含有量は、多くなるほど光触媒活性が高くなるが、保護層との密着性の観点から70重量%以下であることが好ましく、10〜70質量%がより好ましい。光触媒性物質の配合量が10質量%未満であると光触媒活性が不十分となることがあり、また光触媒性物質の配合量が70質量%を越えると光触媒活性は高くなるが保護層との密着性が不十分になることがあり、さらに光触媒含有層の表面摩耗強さが不十分になるため、屋外耐久性が不十分に得られないことがある。
【0056】
光触媒含有層に使用するケイ素化合物としてはポリシロキサンが好ましく使用でき、ゾル−ゲル法によりアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合して得られるものが特に好ましい。これらのアルコキシシラン化合物としては、本発明の膜材の保護層に使用できるアルコキシシラン化合物として例示したものが使用できる。これらのケイ素化合物は光触媒含有層に対して1〜20質量%使用することが好ましい。光触媒性物質を含有する塗工液の塗布の方法としては、特別に限定される物ではないが、これらの光触媒性物質を含有する塗工液を保護層の表面上に均一、かつ均質に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法などが好適である。上記コーティング剤による光触媒含有層の厚さは上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって0.1〜10μmの厚さに形成させる事が望ましい。光触媒含有層の厚みが0.1μmよりも少ないと、得られる膜材の防汚性が満足に得られず、また、10μmを超えると光触媒含有層の屈曲耐久性に劣り亀裂を生じることがある。
【0057】
本発明の膜材において、より遮熱効果を効果的に得るために、表・裏面側熱制御性樹脂層の少なくとも1層とシート状基材との間には、セラミックス粉末を含む樹脂マトリックスと、この樹脂マトリックス中に分布している手段の気泡とからなる樹脂発泡層を設けられている。この樹脂発泡層は、密度0.3〜0.9g/cm3 の気泡痕含有熱可塑性樹脂であることが好ましい。本発明の膜材において樹脂発泡層を有する態様として、1).金属粉、及び/又はセラミックス粉を含有する熱制御性樹脂層の少なくとも1層とシート状基材との間に樹脂発泡層を有し、熱制御性樹脂層の表面上に保護層と、さらに保護層の表面に設けられた光触媒含有層を有する膜材、2).上記1)の膜材において、熱制御性樹脂層の表面に添加物揮散防止層を必要に応じて設け、この表面上(熱制御性樹脂層、または添加物揮散防止層)に金属薄膜層を設け、さらにこの表面上に保護層と、保護層の表面上に形成された光触媒含有層とを有する膜材、3).上記2)の膜材において、金属薄膜層と保護層との間に金属酸化物透明層がさらに設けられた膜材などの態様がある。本発明の膜材に用いる樹脂発泡層の形成方法は、樹脂発泡シートを接着して積層してもよく、あるいは未発泡の樹脂発泡層前駆体シート(化学発泡剤含有)を接着して積層した後に、後処理加熱によって発泡させて樹脂発泡層を形成してもよい。
前記樹脂発泡層の樹脂マトリックスは、セラミックス粉末を含む。この樹脂発泡層に含有されるセラミックス粉末は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた1種以上の微粒子であることが好ましい。
【0058】
また、樹脂発泡層を形成する熱可塑性樹脂には特に制限はないが、熱制御性樹脂層との接着性の観点において、熱制御性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂(前述)と同質であることが好ましく、これらの熱可塑性樹脂には前述のセラミックス粉を、熱可塑性樹脂に対して1〜30質量%含むことが得られる膜材の遮熱性向上の観点において好ましい。また、樹脂発泡層前駆体シートには公知の化学発泡剤を含み、これを化学発泡剤の熱分解温度に一定時間曝すことによって樹脂発泡層を得ることができ、発泡倍率は用いる化学発泡剤の種類とその配合量によって決定される。この樹脂発泡層は、0.3〜0.9g/cm3 の密度を有することが、遮熱効果の観点で好ましい。樹脂発泡層の密度が0.9g/cm3 よりも大きいと、得られる膜材の遮熱効果が不十分となることがあり、また、密度が0.3g/cm3 よりも小さくなると、遮熱効果は十分なものとなるが、反面、樹脂発泡層の強度の低下が原因して膜材の屈曲強度が不十分になることがある。また、樹脂発泡層の厚さには特に制限はないが、好ましい厚み範囲としては、1〜5mmである。樹脂発泡層の厚さが1mm未満であると、得られる膜材に効果的な遮熱効果を付与するに不十分であることがあり、また、樹脂発泡層の厚さが5mmを越えると、膜材が厚くなり取り扱い性が困難となることがある。樹脂発泡層の形成に用いる化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、(A.D.C.A)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(D.P.T)、4,4’オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(O.B.S.H)の1種、または2種以上を熱可塑性樹脂に対して1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0059】
本発明の膜材の接合(重ね合わせ接着)は、熱制御性樹脂層の露出部において、高周波ウエルダー機を用いての熱融着によって容易に接合を行うことができる。高周波融着法としては、2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバーである)間にシート置き、ウエルドバーで加圧しながら高周波(1〜200MHz )で発振する電位差を印加することで膜材の樹脂層を分子摩擦熱で溶融させて接着するものである。また、別の接合方法として、膜材の熱制御性樹脂層の露出部において、超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16〜30KHz )の振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して熱融着を行う超音波ウエルダー融着法、またはヒーターの電気制御によって、20〜700℃に無段階設定された熱風を、ノズルを通じて膜材間に吹き込み、膜材の表面を瞬時に熱溶融させ、直後膜材を圧着して接着を行う熱風融着法、あるいは熱制御性樹脂層の溶融温度以上にヒーター内臓加熱された金型(こて)を用いて被着体を圧着し接着する熱板融着法などによっても接合が可能である。
【実施例】
【0060】
本発明を下記実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
下記実施例及び比較例において、試験膜材の遮熱性、防汚性などの性能は下記の試験方法により測定し、評価した。
【0061】
(I)遮熱性
〈試験環境〉
たて・よこ0.5cmの正方形の断面積を有するアクリル樹脂製角材棒を梁として、外径が、高さ5cm×幅10cm×長さ15cmの箱型フレームを瞬間接着剤で組み立て、箱型フレームの4側面と上面部、及び底面部に、供試膜材を、その表面が外向きとなるように両面テープで貼り付けて固定し、気密性の箱を準備した。また、この試験箱内部の底面部の中央には熱流量計(Shothrm HFM熱流量計:昭和電工(株)製)のセンサーを取り付けて固定した。次に箱型内径が、高さ45cm×幅35cm×長さ35cmの外気温遮断性と気密性を有する箱型構造体の天井部中央に白熱ランプ(100V、500Wのフォトリフレクタランプ:デイライトカラー用:東芝(株))を取り付けて固定したものを遮熱性評価の試験環境として、試験膜材で被覆した試験箱(比較時には試験膜材の装着がないものを使用)を、この箱型構造体の底面部の中央に取り付けて、ランプの中心部と試験箱の中心部が鉛直方向に重なるように固定した。この箱型構造体内部におけるランプ先端から試験箱の天井部までの距離は35cmであった。
〈試験〉
A).
供試膜材を装着しない試験箱を箱型構造体に入れて密閉状態に置き、ランプを点灯し、試験箱内部温度と熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の温度と熱流量qn(kcal/m2h)を測定した。箱型構造体内の温度を外気温度まで戻した後、膜材を装着した試験箱を箱型構造体に入れて密閉状態に置き、ランプを点灯し、試験箱内部温度と熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の温度と熱流量qc(kcal/m2h)を測定し、下記式により遮熱率を求めた。尚、外気温度は20℃の恒温環境とした。
遮熱率pfは、数値が大きい程、遮熱性が高いものと判断した。
遮熱率pf(%)=〔(qn−qc)/qn〕×100
B).
A)の試験において、試験箱内部温度が30℃に到達するまでの時間T30を測定した。T30は、数値が大きい程、遮熱性が高いものと判断した。
【0062】
(II)屋外展張による防汚性
幅20cm×長さ2mの供試膜材を、光触媒含有層形成面を表側にして、陽当たりの良い南向きに設置した曝露台の傾斜30°方向と垂直方向にそれぞれ1mずつ連続して展張し、屋外汚れ試験を12ヶ月間行った。展張6ヶ月後、12ヶ月後にサンプル小片を採取し、未展張膜材との色差ΔE(JIS Z−8729)を求め、下記の判定基準にて防汚性の評価を行った。
※屋外展張は、埼玉県草加市内において3月より開始した。
ΔE=0〜1.9 :◎=汚れがなく良好。初期の状態を維持している。
ΔE=2〜3.5 :○=うすく汚れているが実用に支障はない。
ΔE=3.6〜5.0:△=汚れと雨筋が、目立つ。
ΔE=5.1〜 :×=汚れと雨筋が酷く、実用的に問題がある。
【0063】
(III)屋外展張膜材の遮熱性
(II)の展張6ヶ月、及び12ヶ月の屋外展張サンプルを採取し、(I)−Aと同様の遮熱試験を行い、遮熱率pf6 、及びpf12を求め、未展張膜材の遮熱率pf0 との比較(遮熱率差)を行った。
※6ヶ月遮熱率差=pf0 −pf6
※12ヶ月遮熱率差=pf0 −pf12
○:遮熱率の低下は4%未満である。
△:遮熱率の低下が4〜8%未満である。
×:遮熱率の低下が8%以上である。
【0064】
参考例1
−(i)短繊維紡績糸条の作製−
極限粘度0.69、融点256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を押出機で溶融混練し、溶融紡糸機を使用して270℃で溶融紡糸した収束粗糸を温度60℃で倍率3倍に延伸し、これに撚りを掛けてマルチフィラメント原糸を得た。次にこの紡糸原糸を6cmに切断して得られたステープルを開繊し、ダブリングドラフトを掛けながら練条したスライバを引き伸ばして繊維平行度を一定に揃えてロービング(粗糸)として、これに16回/2.54cmの撚りとドラフトを掛けてトウ紡績した粗糸(295dtex)2本を、撚数12回/2.54cmで合撚し、これを160℃で熱セットして295dtex/×2の20番双糸(590dtex)を得た。
−(ii)短繊維紡績糸織物(スパン)の作製−
得られたPET20番双糸を経糸、及び緯糸に用いてシャットルレス織機でエアジェット製織した5号平織短繊維紡績糸織物(経糸密度:48本/2.54cm×緯糸密度:44本/2.54cm:空隙率:1%以下:布帛質量:245g/m2 )を繊維布帛(基布)として用いた。
【0065】
−(iii)スパン繊維布帛上に熱可塑性樹脂層(接着下処理層)の形成−
(ii)で得た繊維布帛を基材として、先ず繊維布帛の接着下処理として、下記ペースト塩化ビニル樹脂組成物:PVC(1)を溶剤で希釈したオルガノゾル浴中にディップ(浸漬)し、PVC(1)を含浸させた繊維布帛を引き上げると同時にマングルローラーでニップ(圧搾)し、繊維布帛に対して、145g/m2 のPVC(1)を繊維布帛の両面全面に均等に含浸付着させた。次に、150℃の熱風炉中で1分間、半ゲル化させて乾燥させた後、175℃の熱風炉中で1分間熱処理を行い、樹脂をゲル化させ、直後180℃の熱ロール(押圧:0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基材に熱プレスを施し、PVC(1)により表面被覆された、厚さ0.36mm、質量390g/m2 の基材を得た。
〈接着下処理用塩化ビニル樹脂組成物:PVC(1)〉
ペースト塩化ビニル樹脂(P=1600) 100質量部
DINP(可塑剤) 25質量部
アジピン酸ポリエステル(可塑剤) 40質量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ルチル型酸化チタン 5質量部
有機系防カビ剤(OBPA) 0.2質量部
イソシアネート3量体(硬化剤) 5質量部
溶剤(トルエン) 20質量部
〔註〕※塩化ビニル樹脂:商標:ZEST−P21(新第一塩ビ(株))
※DINP:商標:サンソサイザーDINP(新日本理化(株))
※アジピン酸ポリエステル:
商標:アデカサイザーPN−446(旭電化工業(株))
※エポキシ化大豆油:
商標:アデカサイザーO−130P(旭電化工業(株))
※Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
※ルチル型酸化チタン:商標:酸化チタンCR:(石原産業(株))
※有機系防カビ剤:商標:バイナジンBP−5−2:
(10,10′−オキシビスフェノキシアルシン:
モートン・チオコール社)
※イソシアネート3量体(商標:Vulcabond VP:AKCROS CHEMICALS社)
−(iv)スパン繊維布帛への熱制御性樹脂層の形成−
次に、(iii)の工程で得た、PVC(1)接着下処理基材の両面に、熱制御性樹脂層形成用の下記ストレート塩化ビニル樹脂組成物コンパウンド(塩化ビニル樹脂に対してアルミニウム粉5質量%と酸化ジルコニウム粉5質量%とを含有する):PVC(3)を、140℃のバンバリミキサー混練した組成物を170℃のカレンダーロールを通過させて圧延して得られた0.2mmのフィルムを熱制御性樹脂層として、160℃に温度設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネーターを用いて、熱圧着法で基材の両面に積層し、基材の両面に熱制御性樹脂層が設けられた厚さ0.70mm、質量880g/m2 の基材熱制御性樹脂層積層体を得た。
〈熱制御性樹脂層形成用塩化ビニル樹脂組成物:PVC(3)〉
ストレート塩化ビニル樹脂(P=1050) 100質量部
高分子可塑剤 55質量部
アジピン酸ポリエステル 35質量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4質量部
アルミニウム粉 5質量部
酸化ジルコニウム粉 5質量部
Ba−Zn系複合安定剤 2質量部
ルチル型酸化チタン 5質量部
有機系防カビ剤(TBZ) 0.2質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化防止剤 0.2質量部
〔註〕※アルミニウム粉(商標:アルペースト・リーフィングメディアム
P0100 45μmメッシュパス:東洋アルムニウム(株))
※酸化ジルコニウム粉
(商標:ジルコニアパウダー3YA:東洋曹達工業(株))
【0066】
−(v)添加物揮散防止層の形成−
次に、(iv)の基材の表面側熱制御性樹脂層面に、80メッシュ線にピラミッド彫刻されたグラビアロールを有するロールコーター機を用いて、添加物揮散防止層(アクリル系樹脂層)を形成するための下記塗工液を12g/m2 (wet)均一に全面塗布し、100℃の熱風炉で乾燥し、添加物揮散防止層を形成して、基材/添加物揮散防止層付き熱制御性樹脂層積層体を作製した。(固形分付着量3.6g/m2
〈添加物揮散防止層形成用塗工液〉
商標:ソニーボンドSC−474:ソニーケミカル(株):
アクリル系共重合樹脂(固形分30質量%) 100質量部
【0067】
−(vi)保護層(ケイ素化合物含有樹脂層)の形成−
次に、(ii)で得た基材の添加物揮散防止層形成面に、80メッシュ線にピラミッド彫刻されたグラビアロールを有するロールコーター機を用いて、保護層(ケイ素化合物含有樹脂層)を形成するための下記の塗工液を12g/m2 塗布(wet)し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて熱制御性樹脂層全面に保護層を形成した。(固形分付着量3g/m2
〈ケイ素化合物(ポリシロキサン)含有樹脂層塗工液
:アクリル−シリコン系樹脂ベース〉
(1)a)アクリル−シリコン樹脂(シリコン含有量3mol %) 100質量部
b)エタノール/酢酸エチル(質量比1:1) 900質量部
(2)a)エチルシリケート40:コルコート(株)
:SiO2 換算40質量%多量化度6のポリシロキサン 100質量部
b)加水分解触媒:2%塩酸 3質量部
c)エタノール/脱イオン水(質量比1:1) 400質量部
(3)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株):SH6062) 6重量部
〔註〕※(1)のa)+b)成分、(2)のa)+b)+c)成分(2時間撹拌して加水分解を実施)、及び(3)の成分をそれぞれに調製後、(1)〜(3)成分を混合して2時間撹拌(加水分解)したものを用いた。
【0068】
−(vii)光触媒性物質含有層の形成−
次に、(vi)で形成した保護層の全面に、100メッシュ線にピラミッド彫刻されたグラビアロールを有するロールコーター機を用いて、光触媒含有層を形成するための下記の塗工液を12g/m2 塗布(wet)し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて、光触媒含有層が最外層全面に形成された、質量888g/m2 の膜材を得た。(光触媒含有層付着量1g/m2
〈光触媒含有層形成用の光触媒性物質分散溶液〉
a)光触媒性物質:硝酸酸性酸化チタンゾル(結晶粒子径10nm)
10質量部
b)金属酸化物ゾル:シリカゾル
(商標:カタロイドSI−30:触媒化成(株)) 10質量部
c)シランカップリング剤(商標:SZ6300:東レ・ダウコーニング
シリコーン(株):ビニルトリメトキシシラン) 2質量部
d)希釈剤:脱イオン水−エタノール(質量比1:1)溶液 200質量部
〔註〕※この光触媒性物質分散溶液の固形分に含有される光触媒性物質量は45質量%である。
【0069】
参考例2
参考例1(iii)と同一の工程で得られたPVC(1)接着下処理基材の両面に、熱制御性樹脂層形成用の下記ストレート塩化ビニル樹脂組成物コンパウンド(塩化ビニル樹脂に対してステンレス粉5質量%と酸化ジルコニウム粉5質量%とを含有する):PVC(4)を、140℃のバンバリミキサー混練して得られた組成物を、170℃のカレンダーロールを通過させて圧延して得られた0.2mmのフィルムを、熱制御性樹脂層として、160℃に温度設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネーターを用いて、熱圧着法でシート状基材の両面に積層し、シート状基材の両面に厚さ0.70mm、質量880g/m2 熱制御性樹脂層を形成した。
〈熱制御性樹脂層形成用塩化ビニル樹脂組成物:PVC(4)〉
ストレート塩化ビニル樹脂(P=1050) 100質量部
高分子可塑剤 55質量部
アジピン酸ポリエステル 35質量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4質量部
ステンレス粉 5質量部
酸化ジルコニウム粉 5質量部
Ba−Zn系複合安定剤 2質量部
ルチル型酸化チタン 5質量部
有機系防カビ剤(TBZ) 0.2質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化防止剤 0.2質量部
〔註〕※ステンレス粉(商標:NOVAMET Stainless Flake Powder Standard:
日興ファインプロダクツ(株))
※酸化ジルコニウム粉
(商標:ジルコニアパウダー3YA:東洋曹達工業(株))
得られた熱制御性樹脂層のうち表面側熱制御性樹脂層上に、実施例1(v)と同一の添加物揮散防止層を形成し、その全面上に膜厚約16nm(約160Å)の金属酸化物透明層を形成した。金属酸化物透明層の形成は真空蒸着によって行い、金属酸化物にはインジウムドープ酸化スズ(ITO:住友大阪セメント(株))をターゲット材に用いた。次に、金属酸化物透明層の表面に、参考例1(vi)と同一の保護層を設け、さらに保護層の表面に参考例1(vii)と同一の光触媒含有層を形成し、光触媒含有層が最外層全面に形成された、質量888g/m2 の膜材を得た。
【0070】
参考例3
参考例1と同一の積層体(実施例i〜v)を用い、この積層体上に形成された添加物揮散防止層の全面上に膜厚約16nm(約160Å)の金属薄膜層を形成した。金属薄膜層の形成は真空蒸着によって行い、ターゲット金属にはアルムニウムを用いた。次に、金属薄膜層の表面に、参考例1(vi)と同一の保護層を設け、さらに保護層の表面に参考例1(vii)と同一の光触媒含有層を形成し、光触媒含有層が最外層全面に形成されている、質量:888g/m2 の膜材を得た。
【0071】
参考例4
参考例1と同一の積層体(i)〜(v)上に形成された添加物揮散防止層の全面上に、膜厚約16nm(約160Å)の金属薄膜層を形成した。金属薄膜層の形成は真空蒸着によって行い、ターゲット金属にはアルムニウムを用いた。次に、金属薄膜層の全面に、膜厚約12nm(約120Å)の金属酸化物透明層を形成した。金属酸化物透明層の形成は真空蒸着によって行い、金属酸化物にはアンチモンドープ酸化スズ(ATO:住友大阪セメント(株))をターゲット材に用いた。次に、金属酸化物透明層の表面に、参考例1(vi)と同一の保護層を熱制御性樹脂層の全面に設け、さらに保護層の全面に参考例1(vii)と同一の光触媒含有層を形成し、光触媒含有層が最外層全面に形成されている、質量:888g/m2 の膜材を得た。
【0072】
実施例1
−(i)樹脂発泡層の形成−
参考例1(iii)と同一の接着下処理層付積層体を用い、この片面上に、樹脂発泡層形成用の下記化学発泡剤含有ペースト塩化ビニル樹脂組成物(PVC(5)ゾル)をクリアランスコート法により0.35mm厚(160g/m2 付着質量)、接着下処理積層体の全面に均一に塗布し、150℃の熱風炉中で1分間、半ゲル化させて乾燥させた後、160℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、PVC(5)被覆基材に熱プレスを施し、厚さ0.71mm、質量550g/m2 の樹脂発泡層付積層体を作製した。
〈樹脂発泡層形成用塩化ビニル樹脂組成物:PVC(5)〉
ペースト塩化ビニル樹脂(P=800) 100質量部
DINP(可塑剤) 25質量部
アジピン酸ポリエステル(可塑剤) 40質量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4質量部
酸化ジルコニウム粉 5質量部
化学発泡剤(ADCA) 3質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ルチル型酸化チタン 5質量部
有機系防カビ剤(OBPA) 0.2質量部
イソシアネート3量体(硬化剤) 5質量部
溶剤(トルエン) 20質量部
〔註〕※塩化ビニル樹脂:商標:ZEST−P66(新第一塩ビ(株))
※DINP:商標:サンソサイザーDINP(新日本理化(株))
※アジピン酸ポリエステル:
商標:アデカサイザーPN−446(旭電化工業(株))
※エポキシ化大豆油:
商標:アデカサイザーO−130P(旭電化工業(株))
※酸化ジルコニウム粉
(商標:ジルコニアパウダー3YA:東洋曹達工業(株))
※化学発泡剤ADCA(商標:ユニホームAZ L−10:
アゾジカルボンアミド:大塚化学(株))
※Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
※ルチル型酸化チタン:商標:酸化チタンCR:(石原産業(株))
※有機系防カビ剤:商標:バイナジンBP−5−2:
(10,10′−オキシビスフェノキシアルシン:
モートン・チオコール社)
※イソシアネート3量体(商標:Vulcabond VP:AKCROS CHEMICALS社)
この化学発泡剤を含有する樹脂発泡層(未発泡)を有する積層体の両面に、参考例1(iv)と同一の熱制御性樹脂層を積層し、次にこの積層体を220℃の熱風乾燥炉に3分間通し、樹脂発泡層(未発泡)を密度0.7g/cm3 に発泡させた。この樹脂発泡層形成面の反対側に位置する熱制御性樹脂層全面に参考例1(v)と同一の添加物揮散防止層と、この添加物揮散防止層の全面に参考例1(vi)と同一の保護層(ケイ素化合物含有樹脂層)を設け、さらにこの保護層の全面に参考例1(vii)と同一の光触媒含有層を形成し、厚さ:1.06mm、質量:1078g/m2 の膜材(図1)を得た。
【0073】
実施例2
参考例2同様の膜材の、光触媒含有層形成面に対して反対面側に位置する、短繊維紡績糸織物と熱制御性樹脂層との間に、実施例1と同一の樹脂発泡層を同様の工程により設けて、厚さ:1.06mm、質量:1078g/m2 の膜材(図2)を得た。
【0074】
実施例3
参考例3と同様の膜材の、光触媒含有層形成面に対して反対面側に位置する、短繊維紡績糸織物と熱制御性樹脂層との間に、実施例1と同一の樹脂発泡層を同様の工程により設けて、厚さ:1.06mm、質量:1078g/m2 の膜材(図3)を得た。
【0075】
実施例4
参考例4と同様の膜材の、光触媒含有層形成面に対して反対面側に位置する、短繊維紡績糸織物と熱制御性樹脂層との間に、実施例1と同一の樹脂発泡層を同様の工程により設けて、厚さ:1.06mm、質量:1078g/m2 の膜材(図4)を得た。
【0076】
参考例1〜4,実施例1〜4の遮熱性防汚膜材の積層構造、遮熱率、その効果持続性、防汚性などの性能をそれぞれ表1,2及び3に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
参考例1〜4及び実施例1〜4
参考例1は、熱可塑性樹脂層中に、金属粉、及び/又はセラミックス粉を含む膜材であり、参考例2は、参考例1の熱制御性樹脂層と保護層との間に金属酸化物透明層を設けた膜材であり、参考例8は、参考例1の熱制御性樹脂層と保護層との間に金属薄膜層を設けた膜材であり、参考例4は、参考例1の熱制御性樹脂層と保護層との間に、金属薄膜層と、その表面に設けられた金属酸化物透明層とを設けた膜材であり、実施例1〜4(図1〜4)は、それぞれ参考例1,2,3及び4の膜材の光触媒含有層形成面に対して反対面側に位置する、短繊維紡績糸織物と熱制御性樹脂層との間に、樹脂発泡層を設けた膜材である。また、実施例1〜4の樹脂発泡には、セラミックス粉を含有する樹脂発泡層を用いて熱制御性樹脂層と組み合わせた。これらの膜材は、それぞれ高い遮熱性(試験I)を有するものであり、膜材の層構造中に、金属薄膜層、金属酸化物透明層、及び樹脂発泡層の何れか1種以上を有するものが特に遮熱効果に優れていた。これら実施例の膜材は何れも最外面に光触媒含有層を有する膜材であるため、屋外展張時(試験II)には膜材表面に自然付着する煤塵汚れ(環境汚れ)が極めて少なく、膜材の外観が初期状態に近い美麗さを保つことのできるものであった。これら膜材の1ヶ月ごとの詳細な観察によると、膜材表面に付着した煤塵汚れは、降雨によって、付着汚れが効果的に洗い流され、これらの膜材においては表面に蓄積した煤塵汚れが、光触媒性物質によって逐次分解され、常時、膜体の表面から脱離し易い状態に置かれていることが明らかとなった。従来の遮熱性膜材では、初期的に効果的な遮熱効果が得られても、このような煤塵汚れの付着によって、例えば、金属粉含有層での光反射効果や、セラミックス粉含有層への光進入を妨げるようになるため、これらの煤塵汚れの蓄積を除去しない限り、経時的に機能的な遮熱効果が失効する事実は不可避なものであった。しかし、本発明の膜材によると、膜材の表面が常時初期に近い状態を保つ機能を有するため、継続的に安定した遮熱効果を発現可能であることが、試験III より明らかである。
【0081】
比較例1
参考例2と同様の膜材を作製した。但し、光触媒含有層を形成せず、また、保護層の形成に際し、これを参考例2の添加物揮散防止層の形成に用いたアクリル樹脂(商標:ソニーボンドSC−474:ソニーケミカル(株))によって形成した。得られた膜材は、初期的には十分な遮熱効果を有するものであったが、屋外展張の12ヶ月間に煤塵汚れが徐々に膜材の表面に蓄積、固着してしまうことによって、本来の遮熱効果が煤塵汚れの進行に伴って失効することが明かとなった。従って、この膜材では屋外で遮熱効果を期待して長期間使用するには不適切なものであった。
【0082】
比較例2
参考例1と同様の膜材を作製した。但し、熱可塑性樹脂層形成用の軟質塩化ビニル樹脂組成物から、アルミニウム粉(商標:アルペーストP0100:東洋アルミニウム(株))5質量部と酸化ジルコニウム粉(商標:ジルコニアパウダー3YA:東洋曹達工業(株))5質量部とを除き、その代わりに、カーボンブラック顔料(商標:HSM5078Kスタンダードカラー:カーボンブラック含有量35質量%:日弘ビックス(株))3質量部を配合した。得られた黒色の膜材は、屋外展張12ヶ月間、煤塵汚れの付着が目立たないものであったが、初期段階から遮熱効果に乏しく、遮熱効果を期待する用途には不適切なものであった。
【0083】
比較例1及び2の膜材の積層構造及び試験結果を表4に示す。
【0084】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0085】
上記、参考例、実施例、及び比較例から明らかな様に、本発明の遮熱性防汚膜材は、光触媒含有層を膜材の最外面に配置することによって、遮熱機能の減衰を招く原因となる煤塵付着汚れ(環境汚れ)の付着を効果的に防止し、それと同時に、長期に渡り安定した高い遮熱効果を持続することが可能である。従って本発明の遮熱性防汚膜材は、日除けテント、シートハウスなどに利用して保管資材の過度の温度上昇を防ぐ目的に適し、また同様に、物流中の商品、食品などに対しての過度の温度上昇を防ぐ目的で、トラック幌、荷台カバーなどにも好適に用いることのできる繊維複合膜材である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の遮熱性防汚膜材の一態様の積層構造を示す断面説明図。
【図2】本発明の遮熱性防汚膜材の他の態様の積層構造を示す断面説明図。
【図3】本発明の遮熱性防汚膜材のさらに他の態様の積層構造を示す断面説明図。
【図4】本発明の遮熱性防汚膜材のさらに他の態様の積層構造を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0087】
1 遮光性防汚膜材
2 シート状基材
3a,3b 熱制御性樹脂層
3c 添付物揮散防止層付き熱制御性樹脂層
4 保護層
5 光触媒含有層
6 添加物揮散防止層
7 金属酸化物透明層
8 金属薄膜層
9 樹脂発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材と、このシート状基材の表・裏面の少なくとも1面上に形成され、少なくとも1種の重合体からなる樹脂成分と、金属粉及びセラミックス粉の少なくとも1種からなる粉体成分とを、99:1〜70:30含有する熱制御性樹脂層と、前記少なくとも1層の熱制御性樹脂層上に形成され、光触媒性物質と、バインダーとを含む光触媒含有層とを有し、
前記シート状基材と、前記熱制御性樹脂層との間に、セラミックス粉末を含む樹脂マトリックスとこの樹脂マトリックス中に分布している多数の気泡とからなる樹脂発泡層が形成されており、また前記熱制御性樹脂層と、前記光触媒含有層との間に、前記熱制御性樹脂層を、前記光触媒含有層の光触媒作用を遮断する樹脂材料を主成分として含む保護層が形成されていることを特徴とする遮熱性防汚膜材。
【請求項2】
前記熱制御性樹脂層が、前記樹脂成分及び粉体成分に加えて揮散性及び/又は移行性を有する添加物を含み、かつ、その前記保護層側表面上に形成され、かつ、前記揮散性及び/又は移行性添加物の揮散及び/又は移行を阻止するための樹脂材料を主成分として含む添加物揮散防止層をさらに有している、請求項1に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項3】
前記添加物揮散防止層に含まれる樹脂材料が、アクリル樹脂、エネルギー線硬化型アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項2に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項4】
前記熱制御性樹脂層に含まれる金属粉が、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、銅、及びスズから選ばれた少なくとも1種の粉末から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項5】
前記熱制御性樹脂層に含まれるセラミックス粉が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた少なくとも1種の微粒子から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項6】
前記セラミックス粉の粒子が、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、スズ、クロム、亜鉛、金、銀、銅から選ばれた1種以上の金属によって表面被覆されている、請求項5に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項7】
前記シート状基材が、繊維布帛、可撓性樹脂フィルム又はシート、及び可撓性樹脂により表面被覆された繊維布帛から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項8】
前記シート状基材用繊維布帛が、目合い空隙率6〜40%のフィラメント織物、及び目合い空隙率0〜10%の短繊維紡績織物から選ばれる、請求項7に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項9】
前記シート状基材が、その質量に対して1〜10質量%のセラミックス粉を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項10】
前記シート状基材に含有されるセラミックス粉が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ酸から選ばれた少なくとも1種の微粒子からなる、請求項9に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項11】
前記保護層に含まれる樹脂材料が、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フォスファーゼン系樹脂から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項12】
前記保護層が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカから選ばれた少なくとも1種を含むケイ素含有物質をさらに含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項13】
前記光触媒含有層が、10〜70質量%の光触媒性物質と、25〜95質量%の金属酸化物ゲル及び金属水酸化ゲルから選ばれた少なくとも1種と、1〜20質量%のケイ素含有物質を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項14】
前記光触媒性物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23)、酸化鉄(Fe23)から選ばれた1種以上の金属酸化物を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項15】
前記光触媒性物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23)、酸化鉄(Fe23)から選ばれた1種以上の金属酸化物と、それを担持する無機系多孔質微粒子とを含有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項16】
前記熱制御性樹脂層と、前記保護層との間に、金属及び無機金属化合物からなる金属薄膜層、及び金属酸化物を含む金属酸化物透明層の少なくとも1層が形成されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項17】
前記金属薄膜層及び金属酸化物透明層の両層を含むとき、前記熱制御性樹脂層上に、前記金属薄膜層が形成され、その上に前記金属酸化物透明層が形成され、その上に前記保護層が形成されている、請求項16に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項18】
前記金属薄膜層が、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、銅、スズの金属、及び、これらの酸化物、窒化物、炭化物から選ばれた1種以上の金属蒸着層である、請求項16又は17に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項19】
前記金属酸化物透明層が、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上の金属酸化物によるスタッパリング層又は蒸着層である、請求項16又は17に記載の遮熱性防汚膜材。
【請求項20】
前記樹脂発泡層に含有されるセラミックス粉末が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素から選ばれた1種以上の微粒子である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の遮熱性防汚膜材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−131004(P2007−131004A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333327(P2006−333327)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【分割の表示】特願2002−72823(P2002−72823)の分割
【原出願日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】