説明

遮熱断熱舗装材およびその施工方法

【課題】遮熱性および断熱性に優れる遮熱断熱舗装材およびその施工方法を提供する。
【解決手段】遮熱断熱舗装材1を構成する基材層2の表面に、水溶性樹脂遮熱バインダー12により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子11と、水溶性樹脂遮熱バインダー12をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子11および比重1超の遮熱顔料13が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体16を含む混練水溶液10を塗布し、乾燥させて遮熱断熱塗膜層3を形成する。なお、混錬水溶液10は、比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子11に、水14および水溶性樹脂遮熱バインダー12を混錬して一次混錬物15を得、得られた一次混錬物15に比重1超の遮熱顔料13を混錬して得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性および断熱性に優れる遮熱断熱舗装材とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般の舗装材、たとえばアスファルト舗装道路は、夏季のヒートアイランド現象による熱帯夜など舗装表面温度が非常に高く(例えば舗装表面温度が50℃を越える場合がある)、アスファルトやセメントは蓄熱作用があるために夏場の消費エネルギーの増大や地球温暖化などの環境に対する負荷が非常に高くなってきている。また、アスファルト舗装は道路だけでなく、工場や事務所の敷地などにも用いられ、敷地の温度上昇により、車輪の轍などによって道路や舗道の修繕費や補修費などの莫大な経費が掛かっており国家予算などの財源を浪費している。一方、従来一般の道路や舗道の舗装材料は、冬季の保温効果が特に期待されておらず、冬季は氷点下になると舗装表面が凍結してスリップ事故が生じる、また凍上と言って地表面が冷却され、土質によっては毛管作用によって連続的に地下水が吸い上げられて厚くレンズ状の氷層(アイスレンズ)が発生し、それが成長することによって地表が隆起して道路や舗道を破壊してしまう現象が生じ、その改善が必要とされていた。
【0003】
ヒートアイランド現象を解決する試みとして、特開2006−283381号に開示された遮熱性・保水性舗装の例や、特開2005−180166号に開示された舗装構造の例、特開2005−61133号に開示された遮熱性舗装構造の例がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283381号公報
【特許文献2】特開2005−180166号公報
【特許文献3】特開2005−61133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの例も遮熱断熱効果は一定の効果にとどまるもので、また、施工の点でも改善の余地が大きいものである。
【0006】
本発明は、表層部に遮熱顔料を内層部にバルーン粒子をそれぞれ配列した遮熱断熱塗膜層を表面に備えることにより、従来よりも遮熱性および断熱性に優れた舗装材を提供すること、また、かかる遮熱断熱舗装材を容易に施工することができる施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る遮熱断熱舗装材は、舗装材を構成する基材層の表面に、水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体を多数配列した表層部と、水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子を多数配列した内層部を有する遮熱断熱塗膜層を形成したことを主要な特徴とする。
【0008】
バルーン粒子は比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子からなり、断熱性および保温性に優れる。また、ガラス、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム、スズなどの遮熱顔料は赤外線反射効果があり、遮熱性に優れる。舗装材は舗装後の補修材を含む広い概念で用いられる。遮熱顔料の成分としては、銅、コバルト、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、シリカ、クロム、チタン、ニッケル、アンチモン、マンガン、ビスマス、イットリア、鉄等がある。
【0009】
本発明に係る遮熱断熱舗装材は、遮熱断熱塗膜層の乾燥厚さを100〜3000μとしたことを第2の特徴とする。
【0010】
乾燥厚さが100μ未満であると、断熱性の点で問題があり、3000μを超えると、圧縮強度の点で問題がある。100〜3000μの範囲が、断熱性と強度上の理由から、より好ましい。
【0011】
本発明に係る遮熱断熱舗装材は、基材層をブロック体としたことを第3の特徴とする。
【0012】
本発明に係る遮熱断熱舗装材の施工方法は、舗装材を構成する基材層の表面に、水溶性樹脂により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子と、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布し、乾燥させて、前記基材層の表面に、表層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体を多数配列し、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子を多数配列した遮熱断熱塗膜層を形成したことを主要な特徴とする。
【0013】
舗装材を構成する基材層の表面に、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布することにより、バルーン粒子の浮力によって、バルーン粒子に結合された比重1超の遮熱顔料が塗膜層の表層部に浮上する。
【0014】
比重が1を超える遮熱顔料は、その重さによって沈降し、単体では塗膜層の表層部に浮上しないのに対し、バルーン粒子の浮力を利用して塗膜層の表層部に浮上させ遮熱顔料を表面に並べて露出させることができる。これにより、乾燥後の舗装材の表層部に遮熱顔料が並ぶことにより、舗装材に遮熱効果を発揮させることができる。同時に、表層部およびその内部に分散配置されたバルーン粒子により舗装材に断熱効果を発揮させることができる。
【0015】
夏季においては、舗装表面温度が50℃を超える場合があるが、塗膜層の表層部に並ぶ遮熱顔料と遮熱バインダーによる遮熱効果と、塗膜層の表層部およびその内部に分散配置されたバルーン粒子の断熱効果により、舗装表面温度の上昇を効果的に抑制することができる。また、冬季においては、主として塗膜層の表層部およびその内部に分散配置されたバルーン粒子が高い保温機能を発揮し、舗装表面の凍結と凍上を抑制することができる。
【0016】
塗膜層の乾燥後は、遮熱バインダーがバルーン粒子と遮熱顔料の結合状態を強固に保持し、塗膜層の耐久性を発揮する。さらには、水溶性樹脂を用い有機溶剤を使用しないから、作業環境や安全衛生にも最適である。
【0017】
遮熱顔料を表層に並べることができるから、表層で確実に遮熱することができる。したがって、特にアスファルトなどの黒色の色相および色調は赤外線成分を吸収しやすいが色相、色調が黒色系でも表層で遮熱することができる。
【0018】
基材層はアスファルト混合物又はコンクリートであることが望ましい。基材層がアスファルト混合物又はコンクリートであることにより、現場での大量施工が可能であり、製造コストを低減できる。
【0019】
アスファルトの軟化点温度は50℃であり、また、夏季は舗装表面温度が50℃を超える場合がある。しかしながら、塗膜層の遮熱および断熱効果により、舗装表面温度の上昇を効果的に抑制し、夏季の舗装表面温度を50℃未満に抑制して、舗装表面の耐久性を向上させ、補修費用の低減を図ることができる。
【0020】
本発明に係る遮熱断熱舗装材の施工方法は、混練水溶液を得るにあたり、バルーン粒子100重量%に対し、水10〜55重量%、水溶性樹脂10〜80を混錬して一次混練水溶液を得、一次混練水溶液100重量%に対し、遮熱顔料1〜80重量%を混錬して最終の混練水溶液を得ることを第2の特徴とする。
【0021】
ここで、一次混練水溶液を得るにあたり、比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に、水および水溶性樹脂遮熱バインダーを混錬することによって、バルーン粒子が水溶液中に攪拌分散し、個々のバルーン粒子の周囲に水溶性樹脂遮熱バインダーがコーティングされる。そして、一次混練水溶液に遮熱顔料を混錬することによって、個々のバルーン粒子の周囲にコーティングされた水溶性樹脂遮熱バインダーを介して個々のバルーン粒子に遮熱顔料が均等かつ確実に結合する。
【0022】
本発明に係る遮熱断熱舗装材の施工方法は、比重1超の遮熱顔料として、酸化チタン(TiO)または鉄クロム(Fe-Cr)を用いることを第3の特徴とする。酸化チタンは白色顔料として用いる。また、鉄クロムは黒色顔料である。
【0023】
本発明に係る遮熱断熱舗装材の施工方法は、バルーン粒子の平均空孔率を5%以上とすることを第4の特徴とする。
【0024】
バルーン粒子の平均空孔率が5%以上であることにより、熱伝導性が低くなり、高断熱性を発揮する。平均空孔率は10%以上であることがより望ましい。従来のガラス系等のバルーン粒子が平均空孔率5%未満で、高断熱性を得るためには4〜8層重ね塗りする必要があるが、1〜2層の塗膜層を塗布するだけで、十分な遮熱性、断熱性を発揮でき、施工コストの低減化を図ることができる。
【0025】
バルーン粒子は球状体を含むことが望ましい。バルーン粒子が球状体を含むことにより、混錬水溶液を伸延しやすく、したがって、現場の基材層の表面に塗膜層を施工しやすい。また、塗膜層を薄く形成し得て、施工コストを低減できる。
【0026】
バルーン粒子は非結晶シリカであることが望ましい。非結晶シリカのバルーン粒子は約1400℃の高温下で非結晶シリカを焼成して得られ、空孔率5%以上の球状のバルーン粒子が安定して得られる。
【0027】
本発明に係る遮熱断熱舗装材は、基材がブロック体であることを第3の特徴とする。基材がブロック体であることにより、工場での大量生産が可能であり、製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る遮熱断熱舗装材によると、道路、歩道、敷地に施工することにより、また、それらの補修材として施工することにより、遮熱および断熱効果を十分に発揮して、夏季の舗装表面温度の上昇を抑制し、また断熱保温効果により冬季の舗装表面の凍結を防ぐという優れた効果を奏する。
【0029】
また、本発明に係る遮熱断熱舗装材の施工方法によると、基材層の表面に、水溶性樹脂により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子と、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布し、乾燥させて遮熱断熱塗膜層を形成するようにしたから、舗装材の表面に形成した塗膜層の表層部に遮熱顔料粒子が並びかつ、表層部およびその内部にバルーン粒子が分散配置され、これにより従来よりも遮熱性および断熱性ともに優れた舗装材が容易に得られ、施工コストも安いという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態を示すもので、基材層の表面に塗膜層が形成された遮熱断熱舗装材を示す断面図、
【図2】図1に示す舗装材の塗膜層を示す拡大断面図、
【図3】塗膜層に用いる混錬水溶液の製造手順を示すフローチャート図、
【図4】塗膜層に用いる混錬水溶液の製造手順を示すもので、(A)は一次混練物を示す図、(B)は二次混練物(混練水溶液)を示す図、
【図5】第2の実施形態を示すもので、ブロック状の遮熱断熱舗装材を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施するための第1の実施形態を図1ないし図4を参照して説明する。図1において、符号1は遮熱断熱舗装材を示している。
【0032】
遮熱断熱舗装材1は、図1に示すように、開粒度アスファルト混合物から構成される基材層2の表面に遮熱断熱塗膜層3が積層された断面構造となっている。開粒度アスファルト混合物から構成される基材層2は車道、歩道、工場内敷地等の舗装材に用いられる。なお、基材層2はセメントコンクリートから構成される場合もある。また、図1中、符号4は基材層1の直下の下層を示している。
【0033】
遮熱断熱塗膜層3は、図2に示すように、表層部3Aに水溶性樹脂12を遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料(酸化チタン)13が結合したバルーン粒子・遮熱顔料結合体16が多数配列され、内層部3Bに水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11が多数配列されている。かかる遮熱断熱途塗膜層3は、基材層2の表面に、混練水溶液10、すなわち水溶性樹脂12により被覆された多数のバルーン粒子11と、水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11および遮熱顔料13が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体16を含む混練水溶液10が塗布および乾燥されて形成されている。
【0034】
遮熱断熱塗膜層3の乾燥厚さtは、混練水溶液10の1回または数回の重ね塗りによって、50〜1000μに設定されている。図2に示すように、遮熱断熱塗膜層3の表層部3Aは内層部3Bよりも遮熱顔料13の占める割合が高く、内層部3Bは表層部3Aよりもバルーン粒子11の占める割合が高くなっている。バルーン粒子11には比重が1未満のセラミック系またはガラス系が用いられ、遮熱顔料13には比重が1を超える酸化チタンまたは鉄クロムが用いられる。
【0035】
かかる遮熱断熱塗膜層3内の配置により、遮熱断熱舗装材1の表面に照射された太陽光は、表層部3Aの遮熱顔料13と水溶性樹脂遮熱バインダー12により反射されて遮熱効果が発揮され、また、表層部3Aおよび内層部3Bのバルーン粒子11により断熱されて断熱効果が発揮される。
【0036】
上記構成の遮熱断熱舗装材1は以下のようにして施工・製造される。
【0037】
まず、開粒度アスファルト混合物からなる基材層2の表面に塗布する混錬水溶液10を準備する。図3のフローチャートに示すように、混練装置の容器内にバルーン粒子11、水14、水溶性樹脂12の各材料を投入し、攪拌および混練して、一次混錬物15を得る。各材料の配合割合はバルーン粒子100重量部に対し、水50重量部、水溶性樹脂50重量部とする。なお、バルーン粒子100重量部に対し、水は10〜55重量部のうちから、水溶性樹脂は10〜80重量部のうちから、それぞれ適宜選択できる。容器内で攪拌板を回転させることにより、個々のバルーン粒子11の周囲に水溶性樹脂12がコーティングされる。バルーン粒子11はセラミック系またはガラス系を用い、ここでは粒径20ミクロン〜60ミクロン、平均空孔率5%以上、比重0.8以下のシラスバルーンを用いる。シラスバルーンは、約800〜1000℃の高温で焼成されることによって球体形状で平均空孔率5%以上のバルーン粒子が安定して得られる。水溶性樹脂12にはアクリル樹脂等を用いる。
【0038】
容器内で一次混練物15を攪拌することにより、図4(A)に示すように、バルーン粒子11が水溶液中に攪拌分散し、個々のバルーン粒子11の周囲に水溶性樹脂12がコーティングされる。
【0039】
次に、容器中の一次混練物15に遮熱顔料(酸化チタン)13を投入し、攪拌および混練し、最終の混練水溶液(二次混練物)10を得る。このときの配合割合は、一次混練物100重量部に対し、遮熱顔料30重量部である。なお、一次混錬物100重量部に対し、遮熱顔料は1〜80重量部のうちから適宜選択することができる。
【0040】
遮熱顔料13を後から投入することによって、図4(B)に示すように、個々のバルーン粒子11の周囲に水溶性樹脂12が遮熱バインダーとなって遮熱顔料13が結合し、バルーン粒子・遮熱顔料結合体16を形成する。また、バルーン粒子・遮熱顔料結合体16が互いに結合し、複合ユニットUを構成する場合もある。そして、個々のバルーン粒子11の浮力の合計が、遮熱顔料13の沈降力を上回ることにより、個々のバルーン粒子・遮熱顔料結合体16(あるいはそれらの複合ユニットU)が混練水溶物10の表層部に浮上する。
【0041】
そして、かかる混練水溶物10を基材層2の表面に塗布することにより、図2に示すように、乾燥前の塗膜層3の表層部3Aにバルーン粒子・遮熱顔料結合体16が浮上して多数配列され、また、内層部3Bにバルーン粒子11が多数配列され、乾燥後、遮熱顔料13が表層部3Aに並ぶように定着する。
【0042】
塗膜層3の乾燥後は、水溶性樹脂12が遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料13の結合状態を強固に保持し、塗膜層3の耐久性を発揮する。さらには、水溶性樹脂12を用い、有機溶剤を使用しないから、有機溶剤を使用する場合に有機溶剤が表層に表出して、遮熱顔料のもつ本来の機能を阻害するような事態を防止できる。
【0043】
遮熱顔料(酸化チタン)は、比重が1を超える(比重3.0〜3.9)ので、その重さによって混練後に沈降し、従来では混練物の表層部に浮上しなかったのに対し、個々のバルーン粒子11の浮力を利用して混錬水溶液10の表層部に浮上させることができる。これにより、図2に示すように、表層部3Aに遮熱顔料13が並んで表面に露出する舗装材1を施工・製造することができる。
【0044】
施工・製造された舗装材1によれば、夏季においては、舗装表面温度が50℃を超える場合があるが、塗膜層3の表層部3Aに並ぶ遮熱顔料13による遮熱効果と、塗膜層3の表層部3Aおよび内部3Bに分散配置されたバルーン粒子11の断熱効果により、舗装表面温度の上昇を抑制できる。したがって、夏季のヒートアイラインド現象の減少、電力使用の抑制、省エネルギーの促進を図ることができる。特にアスファルトの軟化点温度は50℃であり、また、夏季は舗装表面温度が50℃を超える場合がある。しかしながら、塗膜層3の遮熱および断熱効果により、舗装表面温度の上昇を効果的に抑制し、夏季の舗装表面温度を50℃未満に抑制して、舗装表面の耐久性を向上させ、補修費用の低減を図ることができる。
【0045】
また、冬季においては、主として塗膜層3の表層部3Aおよびその内部3Bに分散配置されたバルーン粒子11が高い保温機能を発揮し、舗装表面の凍結を抑制できる。したがって、冬季のスリップ事故や転倒事故を防止できる。
【0046】
図5は、本発明の第2の実施形態を示すもので、ブロック状の舗装材を示している。
【0047】
ブロック状の遮熱断熱舗装材20は、基板層21がコンクリート製のブロック体からなっている。基板層21としては、レンガやタイル、インターロッキングブロック等であってもよい。同舗装材20は、基板層21の表面に第1実施形態で得られた混錬水溶液(二次混錬物)10を塗布し乾燥させて遮熱断熱塗膜層22が形成されている。
【0048】
ブロック状の舗装材20は、工場で大量生産可能であり、歩道、公園、工場や家庭の敷地内に多数敷設できる。太陽光に対する遮熱効果、断熱効果を発揮する。また、冬季は保温効果によって舗装材の表面凍結を防ぎ、凍上現象を改善防止できる。
【実施例】
【0049】
本発明者は、図1に示す舗装材1の試料を製作し、比較品と本発明品の断熱評価試験を行った。比較品は密粒アスファルト混合物を用いた。本発明品は密粒度アスファルト混合物(基材層)の表面に混練水溶液を1回塗布し乾燥させて、乾燥厚さ100μの塗膜層3を設けた。混練水溶液は、まず、セラミック系バルーン粒子100重量部に対し、水50重量部、水溶性樹脂50重量部の割合で攪拌し一次混練物を得、一次混練物100重量部に遮熱顔料30重量部の割合で攪拌し混練水溶液(二次混練物)とした。
【0050】
得られた比較品(密粒)と本発明品を室内に設置し、ランプを3時間照射させて、試料の表面温度を測定したところ、比較品(密粒)は表面温度が30℃から60℃付近まで上昇したのに対し、本発明品は30℃から44℃付近までにとどまり、比較品に比べ本発明品の遮熱および断熱効果が高いことが確認できた。また、温度上昇の推移結果から、本発明品は日中の太陽照射下でも、表面温度がアスファルトの軟化点(50℃)より低いことが推定される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る遮熱断熱舗装材は、遮熱断熱に優れる舗装材として利用可能である。舗装材は、道路、歩道、公園、公共施設・病院・工場・鳥舎・畜舎・一般住宅などの敷地に施工可能である。また、補修材として利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,20 遮熱断熱舗装材
2,21 基材層
3,22 遮熱断熱塗膜層
3A 表層部
3B 内部
10 混練水溶液
11 バルーン粒子
12 水溶性樹脂遮熱バインダー
13 遮熱顔料
14 水
15 一次混錬物
16 バルーン粒子・遮熱顔料結合体
U バルーン粒子・遮熱顔料結合体の複合ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装材を構成する基材層の表面に、水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体が多数配列された表層部と、水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された内層部を有する遮熱断熱塗膜層が形成されていることを特徴とする遮熱断熱舗装材。
【請求項2】
遮熱断熱塗膜層の乾燥厚さが100〜3000μであることを特徴とする請求項1記載の遮熱断熱舗装材。
【請求項3】
基材層がブロック体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の遮熱断熱舗装材。
【請求項4】
舗装材を構成する基材層の表面に、水溶性樹脂により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子と、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布し、乾燥させて、前記基材層の表面に、表層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体が多数配列され、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された遮熱断熱塗膜層を形成したことを特徴とする遮熱断熱舗装材の施工方法。
【請求項5】
混練水溶液を得るにあたり、バルーン粒子100重量%に対し、水10〜55重量%、水溶性樹脂10〜80を混錬して一次混練水溶液を得、一次混練水溶液100重量%に対し、遮熱顔料1〜80重量%を混錬して最終の混練水溶液を得ることを特徴とする請求項4記載の遮熱断熱舗装材の施工方法。
【請求項6】
比重1超の遮熱顔料として、酸化チタンまたは鉄クロムを用いることを特徴とする、請求項4または請求項5記載の遮熱断熱舗装材の施工方法。
【請求項7】
バルーン粒子の平均空孔率が5%以上であることを特徴とする、請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の遮熱断熱舗装材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14889(P2013−14889A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146943(P2011−146943)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(508130661)スターハード株式会社 (7)
【Fターム(参考)】