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遮熱発熱性透光膜材および膜屋根構造物
説明

遮熱発熱性透光膜材および膜屋根構造物

【課題】低温時は近赤外線を吸収して発熱作用し、高温時は近赤外線を反射して遮熱作用する遮熱発熱性透光膜材、および、結露発生を防止し、冬は屋根上の着雪状態を逐次コントロール可能で、かつ、夏は内部温度の上昇を抑制する事が出来る膜屋根構造物の提供。
【解決手段】本発明の遮熱発熱性透光膜材は、熱制御層を含む可撓性シートであって、前記熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性無機化合物微粒子及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた、少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で遮熱発熱特性が変化する樹脂層であることによって得られる。さらに、その遮熱発熱性透光膜材により膜構造物を構築することで、内部の結露を防止し、冬は屋根上の着雪状態を逐次コントロール可能で、夏は内部温度の上昇を抑制する、膜屋根構造物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性(可視光領域波長の光の透過性)が高く、低温時は近赤外線を吸収して発熱作用し、高温時には近赤外線を散乱して遮熱作用する膜材と、それを用いた膜屋根構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テント倉庫、イベント向けテント、作業用テント、農園芸ハウス、アミューズメントスペース、イベントスペース、雨天運動場など、繊維織物と合成樹脂による複合膜材で覆われた膜構造物は、フレキシブルで組立や施工が容易であり、屋外での耐久性が高い理由で広く用いられている。しかし、特にこれらの用途で、密閉空間を構築する膜構造物においては、季節によって膜材の内側表面に結露を発生することがある。この結露の滴下は、テント倉庫であれば保管中の商品を濡らしたり、農園芸ハウスにおいては葉や果実を変色させたり病害を発生させるなどの問題を有している。また、これらの膜構造物への降雪により、屋根部が雪の重みで変形したり、積雪により太陽光の透過が遮られて内部環境を暗くすることがしばしばあった。更に、これらの膜材は、太陽輻射に含まれる近赤外線を遮蔽する能力(遮熱性)が低いため、例えばテント倉庫や作業用テントなどの膜構造物においては、夏季に内部の温度が極度に上昇して、作業環境を過酷なものとしている。
【0003】
結露に関しては、膜材に断熱層、例えば発泡樹脂層を設けることで、膜材内側表面温度の低下が少なくなり、結露を抑えることが可能となるが、十分な効果を得るためには数ミリ〜1センチ程度の発泡樹脂層が必要であり、膜構造物を形成する膜材としては実用性に欠けるものであった。また、膜材内側に吸水能力を有する層を設けることで結露水を吸収し、結露を防止する試みも開示されている。(例えば特許文献1および2参照)しかし、その吸水能力には限界があり、一定量の水分しか吸収できず、これにより膜材が重くなり、更にはカビが生え易いという問題があった。また、膜材内側表面を親水性にし、水滴の発生を抑制する試みも開示されている。(例えば特許文献3参照)この方法によれば、付着した水分が濡れ拡がり、水滴を形成しにくくはなるが、結露水を地面に逃がすための誘導構造が必要となり、膜構造物内部の外観を悪くする。
【0004】
積雪に関しては、足場の無い膜構造物上に人が登って直接人力で雪を下ろすことは危険であり現実的ではない。積雪地帯では屋根を急角度にして重力落下させるなどの対策も可能であるが、雪が滅多に降らない地域でこの様な設計の実施は困難である。またフッ素樹脂の滑り易さを利用して雪を落下させる試みも行われているが(例えば特許文献4参照)、使用経過に伴いフッ素樹脂コーティング表面に煤塵汚れが付いた状態では初期のような落雪効果が得られなくなることがあった。また、赤外線吸収層を有する膜材を用い、太陽光線を受けて膜材の温度を上げ、積雪を溶かしながら落として除去する方法も提案されている。(例えば特許文献5参照)しかし、夜間の降雪や長時間にわたる降雪では、太陽光線による温度上昇効果を利用することは困難であり、一方、夏季においては膜材の温度が過度に上昇し、接合部分が破損する恐れがあった。膜材に面状発熱体を組み合わせることで着雪を防止する方法も提案されているが(例えば特許文献6参照)、装置や費用が大掛かりとなるとともに、透光性を損なう問題を有していた。
【0005】
遮熱性に関しては、酸化チタン等の無機白色顔料を含有する白色の膜材を用いることによって、太陽輻射に含まれる近赤外線を散乱させてその透過を防ぎ、遮熱性を示すことが知られている。しかし、十分な遮熱効果を得るためには、多量の白色顔料を用いる必要があり、この様な膜材を用いた膜構造体の内部環境が暗くなり、日中でも照明が必要となる問題があった。これに対して、近年、高温時に近赤外線を散乱して遮熱性を示し、低温時には近赤外線を透過して太陽輻射に含まれる熱を取り入れる事ができる、サーモクロミック材料に関する技術が検討されている(例えば特許文献7および8参照)。この技術によって得られたサーモクロミック材料は、塗料あるいは樹脂フィルム中に粒子として分散して用いることにより、透光性を有しつつ、夏季の遮熱性を得る事ができる。しかしながら、単にサーモクロミック材料を含むだけでは、透光性と夏季の遮熱性は得られるものの、結露発生を防止し、冬季に屋根上の着雪状態をコントロールすることはできなかった。
【0006】
以上の様に、結露発生を防止し、冬季は屋根上の着雪状態をコントロールすることが出来、高い透光性を得られる膜材、および膜屋根構造物であって、しかも夏季の遮熱性を有するものは現在まで存在していなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−024439号公報
【特許文献2】特開平05−336846号公報
【特許文献3】特開平07−102094号公報
【特許文献4】特開平04−085369号公報
【特許文献5】特開2006−009452号公報
【特許文献6】特開2008−266962号公報
【特許文献7】特開2004−346261号公報
【特許文献8】特開2010−031235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温時は近赤外線を吸収して昇温する発熱性を有し、高温時は近赤外線を散乱して遮熱性を有し、高い透光性を有する膜材と、その膜材を用いることで、内部の結露発生を防止し、冬季は屋根上の降雪を逐次融解除去して着雪状態をコントロールすることが出来、夏季は内部温度の上昇を抑制する事が出来、日中は照明無しで作業する事が可能な、膜屋根構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱制御層を有する可撓性シートにおいて、前記熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成されることで、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の遮熱発熱性透光膜材は、熱制御層を含む可撓性シートであって、前記熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で遮熱発熱特性が変化する樹脂層であることを特徴とする。本発明の遮熱発熱性透光膜材は、前記海島分散構造において、海成分が前記サーモクロミック材料を含み、島成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいてもよい。本発明の遮熱発熱性透光膜材は、前記海島分散構造において、島成分が前記サーモクロミック材料を含み、海成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいてもよい。本発明の遮熱発熱性透光膜材において、前記サーモクロミック材料が、以下の(1)〜(3)の金属酸化物から選ばれた1種または2種以上を含むことが好ましい。
(1)二酸化バナジウム。
(2)二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、スズ、レニウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、クロム、鉄、ガリウム、亜鉛、アルミニウム、インジウム、およびチタンから選ばれた1種または2種以上の原子により置換率0.3〜10原子%で置換された二酸化バナジウム。
(3)TiOx(1.8≦x<2)で表される不定比酸化チタン。
本発明の遮熱発熱性透光膜材において、前記近赤外線吸収性物質が、以下の(1)〜(2)の材料から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
(1)タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)、及び、ハイドロタルサイト類から選ばれた無機化合物微粒子。
(2)フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた有機色素。
本発明の遮熱発熱性透光膜材は、前記可撓性シートが表裏面を有し、そのおもて面側に、蒸留水との静止接触角が、15〜50°である防汚層が設けられていることが好ましい。本発明の遮熱発熱性透光膜材はまた、前記可撓性シートが表裏面を有し、そのおもて面側に、蒸留水との静止接触角が、80〜110°である防汚層が設けられていることも好ましい。本発明の遮熱発熱性透光膜材において、前記可撓性シートが、繊維基布を含む積層体であることが好ましい。本発明の膜屋根構造物は、熱制御層を有する膜材を屋根材とする膜構造物であって、前記熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で遮熱発熱特性が変化し、前記膜材が近赤外線照射を受けた時に、前記膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも低い場合は前記熱制御層が前記近赤外線を熱エネルギーに変換して発熱作用し、前記膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも高い場合は近赤外線を散乱して遮熱作用するものである。本発明の膜屋根構造物は、前記海島分散構造において、海成分が前記サーモクロミック材料を含み、島成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいてもよい。本発明の膜屋根構造物は、前記海島分散構造において、島成分が前記サーモクロミック材料を含み、海成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遮熱発熱性透光膜材は、熱制御層を含む可撓性シートであって、その熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成されることで、高い透光性を有し、膜材の温度が低い時には、太陽輻射、赤外線ヒーター、および屋内照明に含まれる近赤外線領域波長の光を熱エネルギーに変換して発熱する特性を有し、膜材の温度が高い時には太陽輻射に含まれる近赤外線を散乱して遮熱性を示す。この膜材を用いた膜屋根構造物は、日中は照明無しで作業することができる明るい環境を提供し、膜材の温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも低い時には、太陽輻射、赤外線ヒーター、および屋内照明に含まれる近赤外線を熱エネルギーに変換して発熱作用することで、内部の結露発生を防止し、さらに屋根上の降雪を逐次融解除去することが出来る。また、冬季の日中は、太陽輻射に含まれる近赤外線を一部透過して膜屋根構造物内部の温度を上昇させ、しかも、日中取り込んだ太陽熱が日没後に遠赤外線として輻射される際に、その遠赤外線を吸収して保温性を与える効果も得られる。更に、熱により膜材の温度が上昇する夏季に、膜材の温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも高くなると、太陽輻射に含まれる近赤外線を散乱して遮熱作用し、膜屋根構造物内部の居住性を改善し、冷房などにかかるエネルギーコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の遮熱発熱性透光膜材の一例を示す断面図
【図2】本発明の遮熱発熱性透光膜材の一例を示す断面図
【図3】本発明の熱制御層の遮熱発熱特性変化を説明する図
【図4】本発明の膜屋根構造物の一例として、テント倉庫を示す図
【図5】本発明の膜屋根構造物の一例として、イベント向けテントを示す図
【図6】本発明の膜屋根構造物の一例として、農園芸ハウスを示す図
【図7】実施例・比較例において発熱性を評価した構成を示す図
【図8】実施例・比較例において結露発生防止性を評価した構成を示す図
【図9】実施例・比較例において滑雪性を評価した構成を示す図
【図10】実施例・比較例において遮熱性を評価した構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の遮熱発熱性透光膜材は、熱制御層を含む可撓性シートであって、その形態は、樹脂シート(樹脂フィルム)、ターポリン、または帆布等の防水性膜材である。このうち樹脂シートは、カレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法により製造することができ、熱制御層単体であっても良く、熱制御層を含む複数の樹脂シートを積層した積層体であっても良い。ターポリン、および帆布等の防水性膜材は、熱制御層と繊維基布とを含む積層体であり、熱制御層は繊維基布の一方の面のみに形成されても良く、両面に形成されても良い。帆布は、有機溶剤に可溶化した可撓性樹脂、水中で乳化重合された可撓性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは可撓性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、等を用いるディッピング加工(繊維基布への両面加工)、及びコーティング加工(繊維基布への片面加工、または両面加工)等によって製造することができる。ターポリンはカレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された樹脂フィルム又は樹脂シートを、繊維基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは粗目状の繊維基布の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することが好ましく、さらにディッピング加工、またはコーティング加工と、樹脂フィルム積層の組み合わせによっても実施可能である。
【0014】
本発明の遮熱発熱性透光膜材は、強度、耐久性、寸法安定性などを付与するために、繊維基布を含む積層体、具体的には上述のターポリン、または帆布である事が好ましい。繊維基布に用いられる繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよい。その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用される繊維基布は、織布、編布、不織布のいずれでもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる膜材の経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大90%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。不織布としてはスパンボンド不織布などが使用できる。繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
【0015】
本発明においてサーモクロミック材料とは、780〜2500nmの波長領域の近赤外線に対して、転移温度を境に可逆的に、低温側では散乱性が低く、高温側では散乱性が高くなる特性(以下、サーモクロミック特性と記すことがある)を有する物質からなる粒子、あるいは、無機粒子基材上に上述のサーモクロミック特性を有する物質を担持させた粒子(以下、担持粒子と記すことがある)を示す。本発明の熱制御層は、このサーモクロミック材料を海成分または島成分に含み、熱により膜材の温度が上下することで、近赤外線散乱特性が変化する。本発明において、サーモクロミック材料の転移温度は25〜70℃の範囲にある事が好ましく、30〜45℃がより好ましい。サーモクロミック材料の転移温度が25℃未満では、冬季であっても、太陽熱により膜材の温度が転移温度を超えて近赤外線散乱特性が高くなり、得られる膜材の発熱作用が不十分となることがある。70℃を超える場合は、太陽熱を受けても膜材の温度がなかなかサーモクロミック材料の転移温度に達さず、夏季の遮熱作用が得られない事がある。
【0016】
本発明で用いるサーモクロミック材料は、上述のサーモクロミック特性を有する限り特に限定されないが、下記(1)〜(3)に例示する金属酸化物がサーモクロミック特性に優れており、これらの化合物からなる粒子、あるいは、これらの化合物を含む担持粒子から、1種または2種以上選択して用いることが好ましい。
(1)二酸化バナジウム(VO)。
(2)二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部が、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、およびチタン(Ti)から選ばれた1種または2種以上の原子により置換率0.3〜10原子%で置換された二酸化バナジウム。
(3)TiOx(1.8≦x<2)で表される不定比酸化チタン。
なお、上記(2)において原子%とは、二酸化バナジウムのバナジウムに対する置換成分の置換率を原子の個数のパーセンテージで表したものである。例えばバナジウムの一部をモリブデンで置換した化合物V0.95Mo0.05であれば、バナジウムとモリブデンを合わせて1であり、その内モリブデンが0.05であるから、モリブデンの置換率は5原子%となる。また、バナジウムの一部をタングステンとクロムで置換した化合物V0.9650.030Cr0.005の場合、置き換えたタングステン原子が3原子%、クロム原子が0.5原子%となり、合わせて3.5原子%の置換率となる。バナジウムの一部をこれらの元素で置換することで、サーモクロミック材料の転移温度を自在に調整することが可能となる。また、上記(2)において、バナジウムの一部が上記元素で置換されるとともに、酸素の一部がフッ素で置換されていてもよく、その場合酸素に対するフッ素の置換割合は0.01〜2%である事が好ましい。酸素の一部をフッ素で置換することで、サーモクロミック材料の可視光透過性が向上し、得られる膜材の透光性が向上する。
【0017】
サーモクロミック材料として担持粒子を用いる場合、基材となる無機粒子としては、酸化ケイ素、シリカゲル、酸化チタン、ガラス、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト類化合物、ハイドロタルサイト類化合物の焼成物、層状珪酸塩、および炭酸カルシウムなどから適宜選択して用いる事ができる。担持粒子を用いることで、上述のサーモクロミック化合物からなる粒子を用いるのに比べ、得られる膜材の透光性が向上する。サーモクロミック特性を有する化合物の担持量は、担持粒子全体の質量に対して0.1〜50質量%が好ましい。担持量が0.1質量%未満ではサーモクロミック特性を示さないことがあり、50質量%を超えると担持粒子であっても透光性が向上しないことがある。
【0018】
本発明において、サーモクロミック材料の添加量は、海成分あるいは島成分を構成する合成樹脂組成物の質量全体に対して0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。0.1質量%未満では添加による効果が不足し、夏季の遮熱性が充分に得られないことがある。30質量%を超えて添加すると、加工性や樹脂強度が低下することがあり、また、サーモクロミック材料に由来する着色により、得られる膜材の透光性が低下することがある。サーモクロミック材料の平均粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmがより好ましい。平均粒子径が1nm未満では凝集により樹脂中への均一分散が困難となり、得られる膜材の外観に斑を生じる事がある。平均粒子径が500nmを超えると、サーモクロミック特性を十分に示さないことがあり、また、得られる膜材の透光性が低下することがある。
【0019】
本発明で用いるサーモクロミック材料は、酸化を防止するため、或いは、光触媒活性を抑制するために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる1種または2種以上の金属を含有する酸化物で被覆したものであることが好ましい。
【0020】
本発明において、近赤外線吸収性物質としては、以下のタングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物、及び、ハイドロタルサイト類から選ばれる近赤外線吸収性無機化合物微粒子、近赤外線吸収性有機色素から選択して用いられる。
【0021】
本発明において用いられるタングステン酸化物は、WyOzで表記したとき(ただしW:タングステン、O:酸素)、2.2≦z/y<3.0である事が好ましい。三酸化タングステン(WO)中には有効な自由電子が存在しないため近赤外線領域の吸収特性が少なく、近赤外線吸収性物質としてはあまり有効ではない。z/yが2.2以上であれば、タングステン酸化物中にWOの結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来る。
【0022】
本発明において用いられる複合タングステン酸化物は、式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Csの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表され、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3であることが好ましい。タングステン酸化物へ、元素Mを添加して複合タングステン酸化物とすることで、複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、近赤外線吸収性物質として有効となる。ここで、元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする近赤外線吸収性を得ることが出来る。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、近赤外線吸収性も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該近赤外線吸収性物質中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。一方酸素量の制御を示すz/yの値については、上述したタングステン酸化物同様2.2≦z/y<3.0である事が好ましいが、複合タングステン酸化物の場合、z/y=3.0であっても、元素Mが加えられた事による自由電子の供給があるため、近赤外線吸収性物質として有効である。
【0023】
タングステン酸化物または複合タングステン酸化物の平均粒子径は、1〜1000nmである事が好ましく、2〜200nmであることがより好ましい。平均粒子径が1000nmを越えると、粒子を含む樹脂の隠蔽性が高くなり、膜材の透光性が低下することがある。平均粒子径が小さいほど隠蔽性が低くなり、200nm以下であれば透光性の高い樹脂層を得ることができるが、1nm未満の粒子は入手が困難であり、また樹脂中への分散が困難である。海成分または島成分に含まれるタングステン酸化物または複合タングステン酸化物は、海成分または島成分を構成する合成樹脂組成物の質量全体に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜3質量%がより好ましい。0.001質量%未満では添加による近赤外線吸収効果が不足し、十分な発熱作用が得られないことがある。5質量%を超えて添加しても近赤外線吸収効果の向上はわずかであり、添加量が多くなることで透過色が濃い青色または緑色を示し、膜材の透光性が低下し、かつ、経済的にも不利となる。
【0024】
本発明において用いられる6ホウ化物は、一般式XBで表される化合物であることが好ましい。(但し、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素、Bはホウ素)6ホウ化物は、近赤外線領域に吸収を有するため、添加することで発熱性を付与することができる。6ホウ化物粒子の平均粒子径は1〜800nmであることが好ましく、2〜200nmであることがより好ましい。平均粒子径が800nmを越えると、粒子を含む樹脂の隠蔽性が高くなり、膜材の透光性が低下することがある。平均粒子径が小さいほど隠蔽性が低くなり、200nm以下であれば、より高い透光性の膜材を得ることができるが、1nm未満の粒子は入手が困難であり、また樹脂中への分散が困難である。海成分または島成分を構成する合成樹脂組成物の質量全体に対して6ホウ化物の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜3質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満では添加による近赤外線吸収効果が不十分となって、十分な近赤外線吸収性が得られないことがある。5質量%を超えて添加しても近赤外線の吸収性向上効果はわずかであり、添加量が多くなることで透過色が濃い緑色を示し、膜材の透光性が低下し、かつ、経済的にも不利となる。
【0025】
本発明において用いられるハイドロタルサイト類化合物は、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表される層構造を有する複水酸化物である。(式中M2+はMg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+等の2価の金属イオンを表し、M3+はAl3+、Fe3+、Mn3+、In3+、Ce3+等の3価の金属イオンを表し、An−はOH、F、Cl、Br、NO3−、CO2−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCOO、シュウ酸イオン、サリチン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン等のn価の層間陰イオンを表し、x及びmはそれぞれ0<x<0.5、0≦m、の範囲にある)ハイドロタルサイト類化合物は、屈折率が1.5程度と一般的な樹脂の屈折率に近いため、ハイドロタルサイト類化合物と樹脂との界面での可視光散乱がほとんど無く、かつ、可視光領域での光の吸収がほとんど無いので、樹脂に添加しても色相の変化や透光性の低下がほとんど無い。しかも赤外線領域に吸収を有するため、これを加えることで、色相や透光性への影響を最小限に抑えながら、近赤外線の吸収性を向上させることができる。海成分または島成分を構成する合成樹脂組成物の質量全体に対するハイドロタルサイト類化合物の添加量は、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。添加量が0.1質量部未満では添加の効果が得られないことがあり、15質量%を超えて添加しても近赤外線の吸収性向上効果はわずかであり、また、樹脂層が硬くなり柔軟性が損なわれる事がある。ハイドロタルサイト類化合物粒子の平均粒子径は0.01〜10μmであることが樹脂への分散性の観点から好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。
【0026】
本発明において、上記タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物、およびハイドロタルサイト類化合物は、樹脂への分散性を向上させるために、表面をシリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、及び高級脂肪酸等で被覆されたものを用いても良い。
【0027】
本発明において用いられる近赤外線吸収性有機色素としては、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を用いることが好ましく、これらは特開昭51−135886号公報、特開昭56−143242号公報、特開昭58−13676号公報、特開昭60−23451号公報、特開昭61−115958号公報、特開昭63−295578号公報、特開平4−174402号公報、特開平5−93160号公報、特開平5−222302号公報、及び特開平6−264050号公報などに記されている公知の色素から選んで用いることができる。海成分及び島成分に含む近赤外線吸収性有機色素は、海成分または島成分を構成する合成樹脂全体に対する添加量は0.01〜3.0質量%である事が好ましく、特に好ましくは0.1〜2.0質量%である。添加量が0.01質量%未満では近赤外線吸収効果が不十分となって、十分な発熱性が得られないことがある。3.0質量%を超えて添加しても近赤外線の吸収性向上効果はわずかであり、また、透光性が低下することがある。
【0028】
本発明の熱制御層において、近赤外線吸収性物質として上記タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物、ハイドロタルサイト類、及び、近赤外線吸収性有機色素近赤外線吸収性の中から選んだ1種のみを用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上を組み合わせて用いる場合、樹脂に含まれる近赤外線吸収性物質の量は、それぞれの特性に応じて決定する事が出来るが、海成分または島成分を構成する合成樹脂組成物の質量全体に対し、個々の添加量が上記の範囲内であり、かつ、合計で0.01〜15質量%であることが好ましく、0.1〜6質量%がより好ましい。
【0029】
本発明において、熱制御層は、合成樹脂ブレンドの溶融、または合成樹脂ブレンドの液状合成樹脂の攪拌混合物により公知の加工方法によって成型される。本発明で好ましく用いられる合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、可視光の透過性が高く可撓性のある熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
本発明の熱制御層は、合成樹脂の非相溶混合体からなる海島分散構造を有し、混合する合成樹脂の組み合わせについて、非相溶であれば特に制限はない。非相溶の組合せとしては、塩化ビニル樹脂とポリエチレン、塩化ビニル樹脂とポリプロピレン、塩化ビニル樹脂とスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂とスチレン系共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂とフッ素含有共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とビニルエステル樹脂、スチレン樹脂とポリエチレン、スチレン樹脂とポリプロピレン、ウレタン樹脂とポリエチレン、ウレタン樹脂とポリプロピレン、ポリエステル樹脂とポリエチレン、ポリエステル樹脂とポリプロピレン、ポリアミドとポリカーボネート、アクリル樹脂とスチレン樹脂、アクリル樹脂とポリカーボネート、ポリアミドとスチレン樹脂、ポリアミドとポリプロピレンなど、非相溶の可撓性樹脂対が例示される。また、これらの非相溶の可撓性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の可撓性樹脂Cを含有することもできる。
【0031】
これらの非相溶樹脂層は相分離構造を示す白濁概観の海島分散構造であることが好ましい。この海島分散構造において海成分と島成分は種類の異なる樹脂で構成され、例えば合成樹脂Aと合成樹脂Bからなる非相溶混合物において、合成樹脂Aと合成樹脂Bとの比率設定により、海成分を合成樹脂Aで構成し、島成分を合成樹脂Bで構成することができ、また海成分を合成樹脂Bで構成し、島成分を合成樹脂Aで構成することもできる。
【0032】
ここで、海島分散構造の島成分、もしくは海成分のいずれか一方が、サーモクロミック材料を含み、もう一方が近赤外線吸収性物質を含むことで、熱で遮熱発熱特性が変化する非相溶樹脂層を得る事ができる。遮熱発熱特性の変化について、図3を例に挙げて説明する。図3の遮熱発熱性透光膜材(1)は、熱制御層(2)単層からなり、熱制御層は、近赤外線吸収性物質を含む島成分(3−2)と、サーモクロミック材料を含む海成分(4−1)とからなる海島分散構造を有している。この遮熱発熱性透光膜材(1)に太陽輻射に含まれる近赤外線(10)が照射されると、膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度より低い時(図3左側(A))には、海成分での近赤外線散乱(10−2)は少なく、島成分で吸収される近赤外線(10−3)が多いため熱制御層は発熱作用を示し、近赤外線の一部は透過(10−1)する。一方、発熱作用により膜材の温度が高くなり、サーモクロミック材料の転移温度を超えると(図3右側(B))、海成分での近赤外線散乱(10−2)が多くなり、吸収・透過する近赤外線が少なくなって遮熱作用を示す。この遮熱発熱性透光膜材で膜構造物を構成すれば、低温時には太陽光を受けて、膜材の発熱作用により結露が防止され、更に近赤外線の一部が透過して膜構造物内部の温度を上昇させることができ、高温時には近赤外線を散乱して遮熱作用し、膜構造物内部の温度が過度に上昇するのを防ぐことができる。また、島成分に含まれる近赤外線吸収性物質は、遠赤外線に対しても吸収性を有し、日没後に、日中取り込んだ太陽熱が遠赤外線として輻射される際に、その遠赤外線を吸収することで外部に漏らし難くし、保温性を与える効果も得られる。
【0033】
島成分を構成する合成樹脂組成物の比率は、海成分を構成する合成樹脂組成物の体積に対して3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましい。海島分散構造を有する熱制御層に対する島成分含有率は2.9〜33.3体積%が好ましく、4.7〜28.6体積%がより好ましい。海島分散構造を有する熱制御層全体に対する島成分含有率が2.9体積%未満では、海島分散構造を有さない場合との差が無くなり、本発明の効果を十分に得る事が出来ないことがある。熱制御層全体に対する島成分含有率が33.3体積%を超えると、熱制御層の樹脂強度が低下し、得られる膜材の強度や耐久性が低くなることがある。また、本発明において、海島分散構造における島成分の平均粒子径は0.4〜20μmであることが好ましい。島成分の平均粒子径がこの範囲にあることで、海成分と島成分の界面において近赤外線の屈折散乱現象を生じ、熱制御層中での近赤外線の散乱が増大し、サーモクロミック材料による高温時の近赤外線散乱が効率よく行われ、夏季に高い遮熱性が得られる。また、近赤外線吸収性物質による低温時の近赤外線吸収も効率よく行われ、発熱性が向上する。島成分の平均粒子径が0.4μm未満であると、界面における屈折散乱現象により可視光領域の一部で光の散乱が大きくなり、着色を生じたり、透光性が低下したりすることがある。島成分の平均粒子径が20μmを超えると、可視光領域全域に亘る散乱を起こし、透光性が低下することがある。また非相溶の可撓性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の可撓性樹脂Cを含有する場合、海島分散構造において島成分が可撓性樹脂Bによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよく、同様に島成分が可撓性樹脂Aによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよい。本発明において海島分散構造を有する熱制御層の厚さは、0.03〜1.0mmが好ましく、0.05〜0.5mmがさらに好ましい。熱制御層の厚さが0.03mm未満では、低温時の発熱作用び高温時の遮熱作用が不十分となることがあり、1.0mmを超えると、透光性が低下したり、柔軟な膜材が得られなくなることがある。
【0034】
本発明の熱制御層はまた、海成分および島成分にそれぞれ独立して、この他に公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、抗菌剤、防黴剤などが例示される。
【0035】
本発明の遮熱発熱性透光膜材において、経時的な汚れの付着による透光性の低下を防止し、美観を維持し、かつ着雪状態をコントロールするために、可撓性シートが表裏面を有し、その少なくともおもて面側に防汚層を設けた膜材とすることが好ましい。防汚層の、蒸留水に対する静止接触角は15〜50°であることが好ましく、15〜30°がより好ましい。静止接触角が50°以下であることで、防汚層に汚れが付着した場合でも雨などによって洗い流されやすく、更に、汚れを含んだ雨が防汚層上を流れる際に濡れ拡がりやすいため、筋状の汚れが残りにくい。また、降り始めの雪による溶水が防汚層上に水膜を形成し、後からの降雪を効率的に溶かすことができる。静止接触角が15°〜50°であると、膜屋根構造物において近赤外線が照射されていない時に降雪があった場合、雪が付着しやすく積雪を生じやすいが、近赤外線を遮熱発熱性透光膜材に照射して、防汚層に触れている部分の雪を融かすことで、防汚層と雪との間に水膜が形成され、雪を容易に滑落させることができる。静止接触角が15°未満であると更に雪が付着しやすく、積雪をより生じやすくなり、近赤外線を照射して防汚層に触れた雪を融かしても、溶水が速やかにぬれ拡がってしまい、膜材おもて面の防汚層と雪との間に水膜が形成されにくく、雪が滑落するまでに時間を要する事がある。おもて面側に設けられる防汚層の、蒸留水に対する静止接触角はまた、80〜110°であることも好ましく、95〜110°がより好ましい。静止接触角が80°以上であることで、防汚層に汚れが付着しにくく、汚れが付着しても落としやすい特性が得られる。更に、静止接触角が80°以上であることで雪が付着しにくく、膜屋根構造物において近赤外線が照射されていない時に降雪があっても、初期的に積雪を生じにくく、また、多少の降雪があっても、近赤外線を遮熱発熱性透光膜材照射して、防汚層に触れている部分の雪を融かすことで、雪を滑落除去することができる。静止接触角が110°を超える防汚層を得ることは、フッ素系樹脂を用いても、溶液のコーティングやフィルムのラミネートなど通常の加工方法では困難であり、スパッタリングやメッキ法など特殊な加工方法を必要とするため汎用性が無く、また、たとえ静止接触角が110°を超えても、上記の効果はさほど向上しない。なお、防汚層の蒸留水に対する静止接触角が50°を超えて80°未満では、汚れが付着しやすく、付着した汚れは落ちにくく、雨などによっても洗い流されにくいことがある。また、初期的に雪の付着を防止する効果が低く、近赤外線を照射して雪を融かしても、雪の滑り性が不十分で、滑落するまでに時間を要する事がある
【0036】
本発明の防汚層について、蒸留水に対する静止接触角が上述の範囲であり、遮熱発熱性透光膜材の透光性を損なわず、極度の隠蔽性を伴わないものである限り、形成方法及び素材については特に限定はない。このような防汚層は例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗布して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択することができる。可撓性シートと防汚層との間には、必要に応じて、可撓性シート表面と防汚層の接着性を向上するための接着層、防汚層が光触媒性物質を含む場合に光触媒によって樹脂が分解するのを妨げるための保護層、遮熱発熱性透光膜材を構成する樹脂に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等を形成してもよい。また、必要に応じて、可撓性シートの裏面(防汚層を形成した面とは反対の面)にも防汚層を形成しても良く、その他、膜材の傷つきを防ぐための傷つき防止層、膜材をロール状に巻き取って保管している間に反対面側の樹脂層に含まれる添加剤が防汚層上に移行するのを防ぐための添加剤移行防止層、等を従来公知の方法で形成しても良い。
【0037】
本発明の遮熱発熱性透光膜材の少なくともおもて面側は平滑であることが好ましく、その凹凸は十点平均粗さRz値(JIS B0601−1994)が30μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましい。外部に面する表面が平滑であることで、近赤外線の照射によって上昇した熱が雪に伝わりやすくなり、融雪の効率が向上する。更に、降雪初期において雪が屋根上に留まり難くなり、着雪を生じにくくなる。この様な平滑な表面を得る方法としては、例えば、膜材の一方の面を鏡面エンボスによって平滑にしたり、平滑な工程フィルム(例えばポリエステルフィルム)上に、カレンダー成型法、Tダイス押出法、キャスティング法等などによりシートを形成した後に、工程フィルムを剥離除去する方法などを例示することができる。
【0038】
本発明の膜屋根構造物は、熱制御層を有する膜材を屋根材とする膜構造物であり、熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で遮熱発熱特性が変化することで、膜材が近赤外線の照射を受けた時に、膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも低い場合は近赤外線を熱エネルギーに変換して発熱作用し、膜材内部表面の結露発生を防止し、屋根上に降った雪を逐次融解除去することが出来、膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも高い場合は近赤外線を散乱して遮熱作用することができるものである。
【0039】
本発明の膜屋根構造物において膜材が照射を受ける近赤外線とは、太陽輻射に含まれる近赤外線のほか、膜屋根構造物内部に設置される近赤外線照射装置から照射されるものも包含する。近赤外線照射装置としては特に限定は無いが、灯油、油、ガス、石炭等の燃焼を伴うランプ、ヒーター及びバーナーよりは、防災的な見地から電気的に近赤外線を放射する装置が好ましく、具体的には、ハロゲンヒーター、カーボンヒーターの様な加熱装置や、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯等の照明器具から適宜選択して用いることができる。これらの近赤外線照射装置の放射のピークは必ずしも近赤外線領域に無くても良く、近赤外線領域(波長780〜2500nm)の波長の光を含んで放射する装置であれば良い。
【0040】
近赤外線は、空気にはほとんど吸収されず、熱制御層で吸収されて熱エネルギーに変換され、膜材の温度が上昇する。膜屋根構造物内側の膜材表面温度を露点温度(水蒸気を含む空気を冷却したとき、水の凝結が始まる温度)よりも高く維持できれば結露発生を防ぐことができ、膜屋根構造物屋根部外側の膜材表面温度を2℃よりも高く維持すれば、屋根上に降った雪を逐次融解除去して着雪状態をコントロールすることができる。露点温度は膜屋根構造物内部の温度と相対湿度を測定して、計算から求めることが出来るが、露点計を用いれば直接測定することも出来る。膜材の表面温度は、接触式の熱伝対を用いた温度センサーや、非接触式の放射温度計等により測定することが出来、露点温度と膜材の(おもて側あるいは内側)表面温度の測定結果に連動して、近赤外線照射装置のオンオフや出力の上げ下げを自動的に調整可能にする事で、常に最適の状態を保ち、かつ、電力の無駄を省くことができる。露点温度を具体的に示すと、例えば、冬季、内部が20℃に暖房された膜屋根構造物において、内部の相対湿度が50%である場合の露点温度は約9℃であり、結露発生を防止するためには、膜材の内側表面温度が9℃を超える様維持する必要がある。また、梅雨の時期、例えば膜屋根構造物内の温度が25℃、相対湿度が90%である場合の露点温度は約23℃であり、結露発生を防止するためには、膜材の内側表面温度が23℃を超えるよう維持する必要がある。従来の高透光性の膜材を用いた場合、膜材が近赤外線を十分に吸収しないため、この様な膜材表面温度を得るためには、近赤外線照射装置を高い密度で配置して高出力の近赤外線を照射する必要があった。一方、濃色に着色した膜材であれば近赤外線を十分に吸収して温度を上げることができるため、少ない近赤外線照射で、高い膜材表面温度を得る事ができるが、その様な膜材を膜構造物に用いると透光性が低いため、膜構造物内部では、晴れた日の昼間でも照明を点灯する必要があった。それに対して、本発明の遮熱発熱性透光膜材は、太陽輻射に含まれる近赤外線を吸収して温度が上昇するため、この膜材を用いた膜構造物は、晴れた日の昼間であれば、結露発生防止の為に近赤外線照射装置を作動させる必要はほとんど無く、膜材の透光性も高いため、照明を点灯する必要も無い。晴天でなくても日中は照明なしで十分な明るさを得ることができ、膜材が露点温度を下回る場合や降雪時には、近赤外線照射装置を適宜作動させることで、内部の結露発生を防止し、さらに屋根上の降雪を逐次融解除去して着雪状態をコントロールすることが出来る。
【0041】
以下、本発明の膜屋根構造物について図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
図4は本発明の膜屋根構造物(11)として、テント倉庫(11−1)の例を示したものである。屋根部及び壁部には、熱制御層を有し編織物を基布として含む帆布タイプの膜材(1)が用いられており、屋根部の内側には、近赤外線を照射するための反射板が付属した複数の直管ハロゲンヒーター(12−1)が、屋根側に向けて間隔を置いて設置されている。膜材は編織物を基布として含む事で、テント倉庫に用いる膜材として十分な強度を有するものである。テント倉庫内には露点温度計(図示しない)が設置され、膜材内側表面には接触式熱電対温度センサー(図示しない)が複数箇所取り付けられ、各温度センサーの測定値が常に露点温度を超える様に、ハロゲンヒーターの出力を制御することで、結露発生が防止される。テント倉庫内を特に暖房していない場合、露点温度が2℃を下回る状況があると、露点温度を基準とした設定では、結露発生は防止できても着雪状態のコントロールができない事があるため、露点温度にかかわり無く、例えば膜材の内側表面温度の下限が2℃となる様に制御することで、結露発生防止とともに降雪時に逐次雪を融解除去することも可能となる。冬季など膜材の温度が熱制御層に含まれるサーモクロミック材料の転移温度より低い状況では、晴天時の昼間には太陽光に含まれる近赤外線を吸収して膜材の温度が上昇するため、日中はハロゲンヒーターは作動させないか、あるいは低出力で作動させるだけで結露発生を防止することができる。また、夏季の炎天下においては、膜材の温度がサーモクロミック材料の転移温度より高くなって、熱制御層が近赤外線を散乱し、テント倉庫内の温度が過度に上昇することを防ぐことができる。本発明の膜屋根構造物に用いる膜材は可視領域の光を良く通すので、日中であれば晴天でなくても、照明なしで内部での作業が可能な明るさを得ることが出来、降雪時であっても雪を逐次融解除去することが出来るため、膜材上への積雪によって光が遮られることがない。なお図4では、ハロゲンヒーター(12−1)は固定されているが、テント倉庫を支える骨材(図示しない)にレールを設置するなどして、主棟(13)から軒先(14)までの間を自在に行き来出来る様にしても良い。また、夜間等外部からの光が不足する際の作業用光源として、ハロゲンヒーター(12−1)とは別に照明装置を設置しても良く、ハロゲンヒーター(12−1)の代わりに近赤外線照射装置を兼ねる照明装置(例えばハロゲンランプ)を設置しても良い。
【0043】
図5は、本発明の膜屋根構造物としてイベント向けテント(11−2)の例を示したものである。このテントはドーム状の屋根部と、円筒状の壁部を有しており、壁部上端の円周に沿って、近赤外線照射装置としてハロゲンランプ(12−2)が屋根側に向けて複数配置されている。屋根部には、熱制御層を有し粗目編織物を基布として含むターポリンタイプの膜材(1)が用いられている。膜材は粗目編織物を基布として含む事で、イベント向けテントに用いる膜材として十分な強度を有する。膜材が熱制御層を有することで、冬季など膜材の温度が熱制御層に含まれるサーモクロミック材料の転移温度より低い状況では、晴天時の昼間には太陽光に含まれる近赤外線を吸収して膜材の温度が上昇するため、日中はハロゲンランプは点灯しないか、あるいは低出力で点灯するだけで結露発生を防止することができる。また、夏季の炎天下においては、膜材の温度がサーモクロミック材料の転移温度より高くなって、熱制御層が近赤外線を散乱し、イベント向けテント内の温度の上昇を防ぎ、冷房にかかるコストを軽減することができる。本発明の膜屋根構造物に用いる膜材は可視光領域の光を良く通すために、昼間であれば晴天でなくても、イベント会場の設営作業が可能な程度の明るさを、照明なしで得ることが出来る。ハロゲンランプを点灯すれば、その放射に含まれる近赤外線が膜材の温度を上げて結露発生を防止し、着雪状態をコントロールし、ランプの光源に含まれる可視光がテント内部を照らす照明として機能する。上記のテント倉庫同様、露点温度計と温度センサーを用いて膜材の温度を管理することも可能であり、その場合、内部の明るさと膜材温度を適切に制御するために、別の照明装置や近赤外線照射装置を併用することもできる。
【0044】
図6は本発明の膜屋根構造物として、農園芸ハウス(11−3)の例を示すものである。このハウスはアーチ状の屋根部と垂直な裾部を有しており、屋根部内側には近赤外線照射装置として反射板のついた複数の直管ハロゲンヒーター(12−1)が間隔を置いて屋根側に向けて配置されている。屋根部および裾部には、熱制御層を有し粗目編織物を基布として含むターポリンタイプの膜材(1)が用いられている。農園芸ハウス内には露点温度計(図示しない)が設置され、膜材内側表面には接触式熱電対温度センサー(図示しない)が複数箇所取り付けられ、各温度センサーの測定値が常に露点温度を超える様に、ハロゲンヒーターの出力を制御することで、結露発生が防止される。また、膜材の内側表面温度の下限が2℃となる様に制御することで、降雪にも備えることができる。膜材に基布が含まれることで、耐久性や強度(特に耐引裂性)を付与することが出来、含まれる基布の空隙率を高くすることで、膜材の透光性を作物の育成に十分な光を取り入れられる程度まで高めることが出来る。また、従来の農園芸ハウスにおいては、太陽光に含まれる近赤外線により、ハウス内の作物や土壌の温度が過度に上昇するのを防ぐために、夏場に遮光シートを用いる事があり、その着け外し作業が大きな負担となっているが、本発明の膜屋根構造物は、夏季に膜材の温度が上昇すると近赤外線を散乱して遮蔽し、ハウス内の作物や土壌に到達する近赤外線を大幅に減じる効果があるため、着け外し作業の負担を軽減することが出来る。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
下記実施例及び比較例で作成した膜材について、以下の評価を行った。
(1)発熱性(図7参照)
試験環境:実施例・比較例で作成した膜材(15)を、50cm四方に裁断して、20℃
×65%の恒温恒湿室内に24時間以上静置してから、図7の様に垂直に設置し、その
裏面側50cmの位置に、ハロゲンランプ(100V、85Wのレフランプ型、ウシオ
ライティング(株)製)(12−2)を、ランプの中心点と膜材の中心点とを結ぶ直線
の方向が垂直方向に重なる様に固定した。
測定方法:ハロゲンランプを100Vの電圧で10分間点灯してから消灯し、その後速や
かに膜材おもて面側中心部の温度を熱伝対センサを用いた接触式の表面温度計により測
定した。
(2)結露発生防止性(図8参照)
試験環境:内側のサイズが高さ50cm×幅50cm×長さ50cmで、外気温遮断性と気密性
を有し、内部を冷却可能な温調装置が付属し、一つの側面の中央に20cm四方の孔を
有する箱型構造体(16)を作成した。箱型構造体の孔部に、実施例・比較例で作成し
た膜材(15)を30cm四方に裁断して、膜材のおもて面側を、箱型構造体内部に向
け、箱の内部と外部の空気の流通が無い様に密着させて貼り付け、箱型構造体の膜材を
貼り付けた側面を垂直にして20℃×65%の恒温恒湿室内に設置した。膜材の裏面側
から50cmの位置に、発熱性試験で用いたのと同じハロゲンランプ(12−2)を、
ランプの中心点と膜材の中心点とを結ぶ直線の方向が垂直方向に重なる様に固定した。
なおハロゲンランプは電圧を無段階に調節可能な電源(図示しない)に接続した。
測定方法:箱型構造体内部の温度が20℃である状態で、100Vの電圧でハロゲンラン
プを点灯し、その1分後に箱型構造体に付属した温調装置を作動させ、箱型構造体内部
の温度を5℃に調整した。箱型構造体内部の温度が5℃で安定した段階で、膜材裏面を
観察し、結露が生じていなければ、ハロゲンランプに供給する電圧を5V下げ、10分
後に膜材裏面を観察する。この操作を繰り返して、最小50Vまで電圧を下げ、以下の
様に評価した。
1:50Vでも結露が発生しなかった。
2:50〜70Vで結露が発生した。
3:75〜90Vで結露が発生した。
4:95〜100Vで結露が発生した。
*20℃×65%における露点温度は13.2℃であり、膜材のおもて面側が5℃雰
囲気に曝された状態において、膜材の裏側表面が13.2℃を下回ると結露を生じ
る。より低い電圧で13.2℃を超える状態に維持できる膜材が、近赤外線照射に
より結露発生を防止する効果の高い膜材である。
(3)滑雪性(図9参照)
試験環境:幅60cm、長さ100cmのアルミフレーム(17)を用意し、実施例・
比較例で作成した膜材(15)の4辺を固定して展張した。次に、膜材のおもて面側中
中心部分に幅20cm、長さ20cm、厚さ5cmの雪塊(18)を配置し、膜材を固
定したアルミフレームごと15°の傾斜をつけて周辺を覆う板や天板の無い架台
(19)に固定した。膜材の裏面側には、発熱性試験で用いたのと同じハロゲンランプ
(12−2)を、ランプの中心点と膜材の中心点とを結ぶ直線の方向が垂直方向に重な
り、ランプと膜材の距離が50cmになる様に固定した。なお、一連の作業は、評価も
含めて全て−5℃の保冷倉庫内にて行った。
雪塊作成方法:アルミフレームに固定した状態で、−5℃保冷倉庫内で水平に置いた膜材
(15)上に底の無い型枠(内側のサイズ:長さ20cm、幅20cm、深さ30cm
)を直接乗せ、型枠内に−5℃の屋外で採取した200gの新雪を入れ、5cmの均一
な厚さになる様に圧縮成型し、型枠を取り除いた。膜材上への雪塊の配置は、同保冷倉
庫内に膜材を1時間静置してから行い、雪塊の配置後に更に1時間静置してから架台に
固定した。
評価方法:100Vの電圧でハロゲンランプを点灯し、雪塊の状態を1時間毎に観察し、
雪塊が滑り落ちて、膜材上の雪が無くなるまでの時間を測定して、以下の様に評価し
た。
1:1時間以内に、膜材上の雪が無くなった。
2:1時間を超えて2時間以内に膜材上の雪が無くなった。
3:2時間を過ぎても雪が残っていた。
(4)遮熱性・昇温性(図10)
試験環境:実施例および比較例で作成した膜材(15)それぞれについて、おもて面を
外側として、屋根部および側壁部を覆った小型テント(20)を作成し、周辺に高い
建物の無い3階建てのビル屋上(コンクリート床面)に、テント屋根部の傾斜面の一
方を真南に向けて、外部との空気の流通が無い状態に設置し、冬季(1月)および夏
季(8月)のテント内温度変化を継続的に測定し、得られた測定データから、快晴が
二日続いた二日目の日の出前(5時)、日中(12時)、日没後(20時)の温度を
抽出した。日中の温度により、冬季の昇温性(太陽熱を取り入れて内部を暖める効
果)と夏季の遮熱性を評価し、日没後と日の出前の温度より、冬季の保温性を評価し
た。なお、テントを設置したのと同じビルの屋上において、床面から1.2mの高さ
に百葉箱を設置し、上記測定時の外気温も継続的に測定した。
テント形状:
床面から軒先までの高さ 50cm
底面 たて×よこ 50cm×50cm
屋根部 傾斜角20° 床面から主棟までの高さ 59cm
温度測定位置 テント内中央部床面から、高さ30cmの位置で測定
(5)可視光透過率(透光性)
JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミノルタ分光測色計CM−3600dを用いて測定
した。
(6)静止接触角
膜材のおもて面側について、接触角計(CA−D型、協和科学(株)製)を用いて、2
0℃・65%の恒温恒湿室内において、液滴法により、蒸留水に対する静止接触角を測
定した。測定は蒸留水の滴下30秒後に行った。
(7)十点平均粗さRz値(JISB601-1994)
膜材の断面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、最高から5番
目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との和の値を
求めた。
【0047】
[実施例1]
下記配合1のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合2の近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物1を得た。配合1のサーモクロミック材料として、バナジウムの一部をタングステンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.990.01粒子(置換割合:1原子%、転移温度:41℃)を用い、配合2の近赤外線吸収性物質として、平均粒子径80nmの複合タングステン酸化物(Na0.33WO)粒子を用いた。この非相溶樹脂混合物1を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱制御層用フィルム1−1を成型した。一方、下記配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム1−2を成型した。次いで、得られたフィルム1−1とフィルム1−2の中間に下記基布1を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が熱制御層であるターポリン状の膜材を得た。フィルム1−1からなる熱制御層を顕微鏡観察すると、近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、サーモクロミック材料含有塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.1μmであった。次いで、フィルム1−1を積層した側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、表裏両面に下記配合4からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して5g/mの添加剤移行防止層を形成した。次いで、鏡面エンボスを施した側の添加剤移行防止層上に下記配合5からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して1.5g/mの接着・保護層を形成し、更に、その上に下記配合6からなる加工液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して、1.5g/mの光触媒含有防汚層を形成して、実施例1の膜材を得た。この膜材について、光触媒含有防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合1>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
0.990.012:平均粒子径100nm 1質量部

<配合2>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
複合タングステン酸化物微粒子(Na0.33WO:平均粒子径80nm)
1.5質量部

<配合3>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部

<配合4>
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商品名:カイナー7201)
MEK(溶剤) 80質量部

<配合5>
シリコーン含有量3mol%のアクリルシリコーン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株)製)の
20%エタノール溶液(ポリシロキサン) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤) 1質量部

<配合6>
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスO)67質量部
メチルトリメトキシシラン 33質量部
光触媒:酸化チタンを10質量%含有する水分散液
(住友化学(株)製、商品名:TS-S4420) 10質量部
希釈溶剤(エチルアルコール) 30質量部

(基布1)
ポリエステル833dtexマルチフィラメントを用いた粗目状平織り布
密度 たて(経糸) 18本/インチ よこ(緯糸) 19本/インチ

【0048】
[実施例2]
配合1のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合7の近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物2を得た。配合7の近赤外線吸収性物質として、平均粒子径80nmのタングステン酸化物(WO2.72)を用いた。この非相溶樹脂混合物2を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱制御層用フィルム2を成型し、基布1の両面に熱圧着により積層して両面が熱制御層であるターポリン状の膜材を得た。フィルム2からなる熱制御層を顕微鏡観察すると、近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、サーモクロミック材料含有塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.2μmであった。次に一方の側の熱制御層の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、実施例1と同様にして表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、更に鏡面エンボスを施した側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、実施例2の膜材を得た。この膜材について、光触媒防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合7>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
タングステン酸化物微粒子(WO2.72:平均粒子径80nm) 1質量部

【0049】
[実施例3]
下記配合8の近赤外線吸収性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合9のサーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、サーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物3を得た。配合8の近赤外線吸収性物質として、平均粒子径80nmの複合タングステン酸化物粒子(Na0.33WO)を用い、配合9のサーモクロミック材料として、バナジウムの一部をタングステンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.990.01粒子(置換割合:1原子%、転移温度:41℃)を用いた。この非相溶樹脂混合物3を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱制御層用フィルム3−1を成型した。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム3−2を成型した。次いで、得られたフィルム3−1とフィルム3−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が熱制御層であるターポリン状の膜材を得た。フィルム3−1からなる熱制御層を顕微鏡観察すると、サーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、近赤外線吸収性物質含有塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.1μmであった。次いで、実施例1と同様にしてフィルム3−1を積層した側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、更にフィルム比3−1の側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、実施例3の膜材を得た。この膜材について、光触媒含有防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合8>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
複合タングステン酸化物微粒子(Na0.33WO:平均粒子径80nm)
0.3質量部

<配合9>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
0.990.012:平均粒子径100nm 5質量部

【0050】
[実施例4]
配合1の代わりに下記配合10を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の膜材を得た。配合10にはサーモクロミック材料として、バナジウムの一部をモリブデンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.965Mo0.035粒子(置換割合:3.5原子%、転移温度:30℃)を用いた。この膜材について、光触媒防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合10>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
0.965Mo0.0352:平均粒子径100nm 1質量部

【0051】
[実施例5]
配合1のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合2の近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物5を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱制御層用フィルム5−1を成型した。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム5−2を成型した。次いで、得られたフィルム5−1とフィルム5−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が熱制御層であるターポリン状の膜材を得た。フィルム5−1からなる熱制御層を顕微鏡観察すると、近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、サーモクロミック材料含有塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.1μmであった。次いで、フィルム5−1を積層した側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、フィルム5−1上に下記配合11からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥後冷却して、5g/mのフッ素樹脂含有防汚層を形成して、実施例5の膜材を得た。この膜材について、フッ素樹脂含有防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。

<配合11>
フルオロオレフィンビニルエーテル樹脂 100質量部
(旭硝子(株)製、商品名:フロロトップ1053、固形分50質量%)
イソホロン系イソシアネート硬化剤 10質量部
(武田薬品工業(株)製、商品名:タケネートD−140N、固形分75質量%)
シリカ((株)トクヤマ製、商品名:ファインシールX37) 5質量部
メチルエチルケトン(溶剤) 100質量部
【0052】
[実施例6]
配合2の代わりに下記配合12を用いた以外は実施例5と同様にして、熱制御層上にフッ素樹脂含有防汚層を有する、実施例6の膜材を得た。配合12の近赤外線吸収性物質として、平均粒子径80nmのCs0.33WOと、平均粒子径2.8μmの水澤化学工業(株)製「MIZUKALAC(商品名)」(ハイドロタルサイト類化合物)を、併せて使用した。この膜材について、フッ素樹脂含有防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合12>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
複合タングステン酸化物微粒子(Cs0.33WO:平均粒子径80nm)
0.7質量部
ハイドロタルサイト類化合物 5質量部

【0053】
実施例1〜6の膜材は何れも、海島分散構造を有し、海成分または島成分の何れか一方がサーモクロミック材料を含有し、もう一方(サーモクロミック材料非含有)が近赤外線吸収性物質を含有する熱制御層を有しており、近赤外線を照射することで発熱し、結露の発生を防止することができ、夏季の遮熱性に優れ、冬季はテント内の温度を上昇させ、かつ保温性を有し、しかも高い透光性を示す膜材であった。これらの膜材のおもて面側表面の蒸留水に対する静止接触角はそれぞれ15〜50°または80〜110°を満たし、Rz値も30μm以下であり、滑雪性の評価では、すべての膜材において1時間以内に雪塊が完全に滑り落ちていた。
【0054】
[比較例1]
配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルムを成型し、基布1の両面に熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。次に、膜材の一方の側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、実施例1と同様にして表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、鏡面エンボスを施した側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、比較例1の膜材を得た。この膜材について、光触媒防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
比較例1の膜材は透光性に優れるものの、熱制御層を有さないため、近赤外線を照射しても発熱は僅かであり、結露の発生を防止することができず、夏季の遮熱性を示さず、冬季も保温性を有さない膜材であった。また、滑雪性の評価では、2時間を過ぎても雪が残っていた。
【0056】
[比較例2]
配合1のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比2−1を成型した。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比2−2を成型した。次いで、得られたフィルム比2−1とフィルム比2−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状の膜材を得た。次に、フィルム比2−1を積層した側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、実施例1と同様にして表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、鏡面エンボスを施した側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、比較例2の膜材を得た。この膜材について、光触媒防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
比較例2の膜材は、フィルム比2−1にサーモクロミック材料を含み、夏季の遮熱性を有し、冬季はテント内の温度を上昇させる膜材であった。しかし、フィルム比2−1が海島分散構造を有さないため、遮熱性が同程度であった実施例6よりも透光性が劣り、フィルム比2−1が近赤外線吸収性物質を含まないため、各実施例と比べて、発熱性、結露発生防止性、滑雪性が劣っていた。
【0058】
[比較例3]
下記配合13の近赤外線吸収性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比3−1を成型した。配合13の近赤外線吸収性物質として、平均粒子径80nmの複合タングステン酸化物(Na0.33WO)を用いた。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比3−2を成型した。次いで、得られたフィルム比3−1とフィルム比3−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状の比較例3の膜材を得た。この膜材について、フィルム比3−1を積層した側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合13>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
複合タングステン酸化物微粒子(Na0.33WO:平均粒子径80nm)
0.3質量部
【0059】
比較例3の膜材は近赤外線吸収性物質として複合タングステン酸化物微粒子を含むフィルム比3−1からなる層を有し、面積あたりの複合タングステン酸化物微粒子の含有量は実施例1と同等であったが、フィルム比3−1が海島分散構造を有さないため、実施例1と比べて、発熱性および結露発生防止性が及ばず、また、静止接触角が15〜50°または80〜110°を満たさず、Rz値も30μmを超えており、滑雪性も劣っていた。更に、サーモクロミック材料を含まないため、実施例1と比べて夏季の遮熱性が劣っていた。
【0060】
[比較例4]
配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合2の近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物比4を得た。この非相溶樹脂混合物比4を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比4−1を成型した。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比4−2を成型した。次いで、得られたフィルム比4−1とフィルム比4−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状の比較例4の膜材を得た。フィルム比4−1を顕微鏡観察すると、近赤外線吸収性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成しており、海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.0μmであった。この膜材について、フィルム比4−1を積層した面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
比較例4の膜材において、フィルム比4−1は実施例1の熱制御層の海成分からサーモクロミック材料を省略した構成であり、発熱性および結露発生防止性は実施例1と同等であった。しかし、海成分にサーモクロミック材料を含まないため、実施例1に比べて夏季の遮熱性が大きく劣っていた。また、静止接触角が15〜50°または80〜110°を満たさず、Rz値も30μmを超えており、滑雪性の評価では、膜材上の雪がなくなるまでに1時間以上を要した。
【0062】
[比較例5]
配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合7のサーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物比5を得た。この非相溶樹脂混合物比5を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比5−1を成型した。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比5−2を成型した。次いで、得られたフィルム比5−1とフィルム比5−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状の比較例5の膜材を得た。フィルム比5−1を顕微鏡観察すると、サーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成しており、海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.1μmであった。この膜材について、フィルム比5−1を積層した面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
比較例5の膜材において、フィルム比5−1は実施例3の熱制御層の海成分から近赤外線吸収性物質を省略した構成であり、夏季の遮熱性は実施例3と同等であり、冬季はテント内の温度を上昇させる膜材であった。しかし、海成分に近赤外線吸収性物質を含まないため、実施例3に比べて、発熱性および結露発生防止性が大きく劣っていた。また、静止接触角が15〜50°または80〜110°を満たさず、Rz値も50μmを超えており、滑雪性も劣っていた。
【0064】
[比較例6]
下記配合14の酸化チタン(平均粒子径200nm)含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比6−1を成型した。一方、配合3の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比6−2を成型した。次いで、得られたフィルム比6−1とフィルム比6−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状の比較例6の膜材を得た。この膜材について、フィルム比6−1を積層した側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合13>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
酸化チタン:平均粒子径200nm 15質量部

【0065】
比較例6の膜材は、フィルム比6−1に酸化チタンを多量に含み、酸化チタンが近赤外線を散乱することで夏季の遮熱性は優れていたが、透光性が劣っていた。また、フィルム比6−1が近赤外線吸収性物質を含まないため、各実施例と比べて、発熱性、結露発生防止性、滑雪性が劣っていた。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の遮熱発熱性透光膜材は、高い透光性を有し、膜材の温度が低い時には、太陽輻射、赤外線ヒーター、および屋内照明に含まれる近赤外線領域波長の光を熱エネルギーに変換して発熱作用し、膜材の温度が高い時には太陽輻射に含まれる近赤外線を散乱して遮熱作用するため、この膜材を用いることで、内部の結露発生を防止し、冬季は屋根上の降雪を逐次融解除去して着雪状態をコントロールすることが出来、夏季は内部温度の上昇を抑制する事が出来、日中は照明無しで作業する事が可能な、テント倉庫、イベント向けテント、作業用テント、農園芸ハウス、アミューズメントスペース、イベントスペース、雨天運動場などの膜屋根構造物を得る事ができる。
【符号の説明】
【0069】
1:遮熱発熱性透光膜材
2:海島構造を有する熱制御層
3:島成分
3−1:サーモクロミック材料を含む島成分
3−2:近赤外線吸収性物質を含む島成分
4:海成分
4−1:サーモクロミック材料を含む海成分
4−2:近赤外線吸収性物質を含む海成分
5:防汚層
6:繊維基布
7:海島構造を有さない樹脂層
8:サーモクロミック材料
9:近赤外線吸収性物質
10:近赤外線
10−1:膜材を透過した近赤外線
10−2:膜材で散乱された近赤外線
10−3:膜材で吸収された近赤外線
11:発熱性透光膜屋根構造物
11−1:テント倉庫
11−2:イベント向けテント
11−3:農園芸ハウス
12:近赤外線照射装置
12−1:ハロゲンヒーター
12−2:ハロゲンランプ
13:主棟
14:軒先
15:実施例・比較例で作成した膜材
16:箱型構造体
17:アルミフレーム
18:雪塊
19:架台
20:小型テント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱制御層を含む可撓性シートであって、前記熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で遮熱発熱特性が変化する樹脂層であることを特徴とする、遮熱発熱性透光膜材。
【請求項2】
前記海島分散構造において、海成分が前記サーモクロミック材料を含み、島成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいる、請求項1に記載の遮熱発熱性透光膜材。
【請求項3】
前記海島分散構造において、島成分が前記サーモクロミック材料を含み、海成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいる、請求項1に記載の遮熱発熱性透光膜材。
【請求項4】
前記サーモクロミック材料が、以下の(1)〜(3)の金属酸化物から選ばれた1種または2種以上を含む、請求項1から3いずれか1項に記載の遮熱発熱性透光膜材。
(1)二酸化バナジウム。
(2)二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、スズ、レニウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、クロム、鉄、ガリウム、亜鉛、アルミニウム、インジウム、およびチタンから選ばれた1種または2種以上の原子により置換率0.3〜10原子%で置換された二酸化バナジウム。
(3)TiOx(1.8≦x<2)で表される不定比酸化チタン。
【請求項5】
前記近赤外線吸収性物質が、以下の(1)〜(2)の材料から選ばれた1種以上を含む、請求項1から4いずれか1項に記載の遮熱発熱性透光膜材。
(1)タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)、及び、ハイドロタルサイト類から選ばれた無機化合物微粒子。
(2)フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた有機色素。
【請求項6】
前記可撓性シートが表裏面を有し、そのおもて面側に、蒸留水との静止接触角が、15〜50°である防汚層が設けられている、請求項1から5いずれか1項に記載の遮熱発熱性透光膜材。
【請求項7】
前記可撓性シートが表裏面を有し、そのおもて面側に、蒸留水との静止接触角が、80〜110°である防汚層が設けられている、請求項1から5いずれか1項に記載の遮熱発熱性透光膜材。
【請求項8】
前記可撓性シートが、繊維基布を含む積層体である、請求項1から7いずれか1項に記載の遮熱発熱性透光膜材。
【請求項9】
熱制御層を有する膜材を屋根材とする膜構造物であって、前記熱制御層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、近赤外線吸収性物質を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で遮熱発熱特性が変化し、前記膜材が近赤外線照射を受けた時に、前記膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも低い場合は前記熱制御層が前記近赤外線を熱エネルギーに変換して発熱作用し、前記膜材温度がサーモクロミック材料の転移温度よりも高い場合は近赤外線を散乱して遮熱作用することを特徴とする、遮熱発熱性及び透光性を有する膜屋根構造物。
【請求項10】
前記海島分散構造において、海成分が前記サーモクロミック材料を含み、島成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいる、請求項9に記載の膜屋根構造物。
【請求項11】
前記海島分散構造において、島成分が前記サーモクロミック材料を含み、海成分が前記近赤外線吸収性物質を含んでいる、請求項9に記載の膜屋根構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−140753(P2012−140753A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292221(P2010−292221)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】