説明

遮熱膜及びその形成方法

【課題】遮熱性及び耐久性に優れた遮熱膜200を提供する。
【解決手段】中空粒状体31を内部に分散させたバインダ32からなる遮熱膜200であって、中空粒状体31の殻31bは、バインダ32の弾性率よりも低い弾性率を有する材料で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が高い遮熱膜及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導率の低いセラミックス(例えば、ジルコニア)からなる単一材料の遮熱膜を内燃機関の燃焼室内壁に形成することで、燃焼室内の燃焼ガスからの熱伝達を低下させて熱効率の向上を図る技術が開示されている(非特許文献1,2)。
【0003】
また、熱伝導率が5W/mK以下及び耐熱衝撃性が800K以上で、熱膨張率が金属部品の熱膨張率より小さいセラミック遮熱部材を金属部品に形成する技術が開示されている(特許文献1)。このセラミックス遮熱部材としては、曲げ強度が100MPa以上及び気孔率が30%以上の窒化ケイ素を主成分とする多孔体が好ましいことが開示されている。
【0004】
また、構造体部品の表面に耐熱性材質の被覆層を柱状晶組織,微細結晶粒組織、又は柱状晶組織と微細結晶粒組織で積層させる技術が開示されている(特許文献2)。この耐熱被覆層は熱応力の負荷により膜厚方向に微細なクラックを生じて熱応力と緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−21679号公報
【特許文献2】特開平9−3647号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gerhard Woschni他,"Heat Insulation of Combustion Chamber Walls - A Measure to Decrease the Fuel Combustion of I.C. Engines?",SAE Paper 870339,Society of Automotive Engineers,1987
【非特許文献2】Victor W.Wong他,"Assessment of Thin Thermal Barrier Coatings for I.C. Engines",SAE Paper 950980,Society of Automotive Engineers,1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、遮熱膜の材料として熱伝導率の低いセラミックを使用した場合、金属に比べて熱膨張率が低く、高温のガスに曝されて遮熱膜の温度が上がったときに金属との熱膨張の差によって膜に割れが生じやすいという問題がある。
【0008】
また、耐熱性材質の被覆層を柱状晶組織,微細結晶粒組織又は柱状晶組織と微細結晶粒組織で積層させた場合、被覆層の柱状又は微結晶粒を伝わって熱が伝達するため高い遮熱効果を得ることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑み、遮熱性及び耐久性が高い遮熱膜及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様は、中空粒状体を内部に分散させたバインダからなる遮熱膜であって、前記中空粒状体の殻は、前記バインダの弾性率よりも低い弾性率を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、245GPaより小さいことが好適である。具体的には、前記中空粒状体の殻は、純度が95重量%以上のシリカガラスとすることが好適である。このとき、前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、65GPa以上90GPa以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の別の態様は、基材上に遮熱膜を形成する方法であって、バインダの弾性率よりも低い弾性率を有する殻で囲まれた中空部を有する中空粒状体を含む前記バインダを基材上に塗布する塗布工程と、基材上に塗布された前記中空粒状体及び前記バインダを加熱して焼成する焼成工程と、を含むことで、前記中空粒状体を有する遮熱膜を基材上に形成することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、245GPaより小さいことが好適である。具体的には、前記中空粒状体の殻は、純度が95重量%以上のシリカガラスとすることが好適である。このとき、前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、65GPa以上90GPa以下であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遮熱性及び耐久性が高い遮熱膜及びその形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る製造方法により製造された内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】遮熱膜を形成する方法の一例を説明するフローチャートである。
【図3】遮熱膜を形成する方法の一例を説明する図である。
【図4】遮熱膜を形成する方法の一例を説明する図である。
【図5】遮熱膜を形成する方法の一例を説明する図である。
【図6】遮熱膜のシリカガラスの純度と耐熱性との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る遮熱膜は、図1に示す内燃機関100の構造体部品の表面に形成される。内燃機関(エンジン)100は、シリンダブロック10及びシリンダヘッド12を備える。シリンダブロック10内には、その軸線方向に往復運動するピストン14が収容されている。ピストン14の頂面14a、シリンダブロック10の内壁面10a、及びシリンダヘッド12の下面12aに囲まれた空間は、燃焼室16を形成する。シリンダヘッド12には、燃焼室16に連通する吸気ポート18、及び燃焼室16に連通する排気ポート20が形成されている。さらに、吸気ポート18と燃焼室16との境界を開閉する吸気弁22、及び排気ポート20と燃焼室16との境界を開閉する排気弁24が設けられている。シリンダブロック10には、冷却水ジャケット26が形成されており、冷却水ジャケット26に冷却水が供給されることで、内燃機関100の冷却が行われる。
【0017】
なお、図1では、説明の便宜上、燃料噴射弁や点火栓等の構成の図示を省略しているが、本実施形態に係る内燃機関100は、ディーゼルエンジン等の圧縮自着火式内燃機関であってもよいし、ガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関であってもよい。圧縮自着火式内燃機関の場合は、例えばピストン14が圧縮上死点付近に位置するときに燃料噴射弁から燃焼室16内に燃料を噴射することで、燃焼室16内の燃料が自着火して燃焼する。火花点火式内燃機関の場合は、点火時期にて点火栓の火花放電により燃焼室16内の混合気に点火することで、燃焼室16内の混合気を火炎伝播燃焼させる。燃焼室16内の燃焼ガスは、排気行程にて排気ポート20へ排出される。
【0018】
本実施形態では、燃焼室16を形成する構造体部品の少なくとも一部の、燃焼室16内に臨む(面する)壁面上には、燃焼室16内の燃焼ガスから構造体部品への伝熱を抑制するための遮熱膜200が形成されている。
【0019】
ここでは、燃焼室16を形成する構造体部品として、シリンダブロック(シリンダライナ)10、シリンダヘッド12、ピストン14、吸気弁22及び排気弁24を挙げることができる。そして、燃焼室16内に臨む壁面として、シリンダブロック内壁面(シリンダライナ内壁面)10a、シリンダヘッド下面12a、ピストン頂面14a、吸気弁底面(傘部底面)22a、及び排気弁底面(傘部底面)24aのいずれか1つ以上を挙げることができる。図1では、シリンダブロック内壁面10a、シリンダヘッド下面12a、ピストン頂面14a、吸気弁底面22a、及び排気弁底面24aの各々に遮熱膜200を形成した例を示している。ただし、必ずしもシリンダブロック内壁面10a、シリンダヘッド下面12a、ピストン頂面14a、吸気弁底面22a、及び排気弁底面24aのすべてに遮熱膜200を形成する必要はない。すなわち、遮熱膜200は、シリンダブロック内壁面10a、シリンダヘッド下面12a、ピストン頂面14a、吸気弁底面22a及び排気弁底面24aのいずれか1つ以上に形成することでいくらかの効果は得ることができる。
【0020】
次に、本実施形態に係る内燃機関100の製造方法、特に、遮熱膜200を形成する方法について説明する。なお、遮熱膜200を形成する工程以外の内燃機関100の製造工程については、周知の工程で実現可能である。
【0021】
図2は、遮熱膜200を形成する方法の一例を説明するフローチャートである。まずステップS100の粒子製造工程においては、図3に示すように、遮熱用材料として、周りを殻31bとなる材料で形成した中空部31aを有する粒子31を製造する。ここでの殻31bとなる材料は、後述するバインダよりも弾性率が低い材料とする。
【0022】
粒子31としては、例えば、殻31bとしてシリカ(二酸化珪素、SiO2)を主成分とする微細多孔構造の断熱材を挙げることができる。特に、バインダとしてジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、窒化珪素や炭化珪素やコージェライト等のセラミック材料を用いた場合、殻31bとなる材料はシリカ(二酸化珪素、SiO2)とすることが好適である。ジルコニアの縦弾性係数は245GPa程度であり、炭化ケイ素の縦弾性係数は450GPa程度であるので、縦弾性係数が240GPa以下、より好ましくは65GPa以上90GPa以下であるシリカを殻31bとなる材料として用いることが好適である。
【0023】
また、殻31bとなる材料は、高純度のシリカとすることが好適である。すなわち、純度が95重量%以上のシリカとすることが好適である。また、各粒子31の平均外径は100μm以下、より好ましくは50μm以下とすることが好適である。
【0024】
なお、粒子31の平均径は、例えば、最終的に形成される遮熱膜200の顕微鏡観察の断面図における粒子31の断面積を平均し、その平均値を粒子31の断面が円であると仮定した場合の直径として換算して求めることができる。
【0025】
次に、ステップS102の薄膜塗布工程では、バインダ32に粒子31を多数分散させて基材に塗布する。すなわち、多数の粒子31をバインダ32に混入させ、図4に示すように、構造体部品30の壁面30a上に薄膜状に塗布することで、バインダ32と多数の粒子31とを含む薄膜200を構造体部品30の壁面30a上に形成する。薄膜200の厚さは、例えば約100μm程度とすることが好適である。
【0026】
バインダ32への粒子31の充填率は50%以上90%以下、より好ましくは60%以上70%以下とすることが好適である。
【0027】
なお、薄膜200内の粒子31の充填率は、最終的に形成される遮熱膜200の顕微鏡観察の断面図において、遮熱膜200の全断面積に対する粒子31に相当する領域の面積の割合として求めることができる。
【0028】
バインダ32は、構造体部品30以下の熱伝導率を有し、構造体部品30よりも低いまたは構造体部品30とほぼ同等の単位体積あたりの熱容量を有する材料とすることが好適である。一方、粒子31は、構造体部品30よりも低い熱伝導率及び構造体部品30よりも低い単位体積あたりの熱容量を有することが好適である。
【0029】
バインダ32は、燃焼室内等の高温及び高圧の燃焼ガスに対する耐熱性及び耐圧性を有しており、粒子31よりも高い耐熱温度を有し、且つ粒子31よりも高い強度を有する。
【0030】
一方、多数の粒子31は、バインダ32の内部に混入されていることで、燃焼室16内の燃焼ガスとは接触しない。バインダ32は、燃焼室16内の燃焼ガスから構造体部品30への伝熱を抑制する機能の他に、粒子31を燃焼室16内の高温及び高圧の燃焼ガスから保護する保護材としての機能も有する。バインダ32は、多数の粒子31をつなぐ接着材としての機能も有する。一方、粒子31は、断熱用薄膜200全体での熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を下げる機能を有する。
【0031】
バインダ32の具体例としては、例えばジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、窒化珪素や炭化珪素等のセラミックを挙げることができる。さらに、これらの材料を複数組み合わせてバインダ32に用いることもできる。
【0032】
ジルコニアにおいては、熱伝導率λは2.5[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは2500×103[J/(m3・K)]程度であり、耐熱温度Tmは2700[℃]程度であり、強度(曲げ強度)σは1470[MPa]程度である。ジルコニアの他に、コージェライト(熱伝導率λは4[W/(m・K)]程度、単位体積あたりの熱容量ρCは1900×103[J/(m3・K)]程度)も用いることができ、さらに、アルミナ系や窒化珪素系のセラミックも一部混合して用いることができる。また、例えば、シリコン、チタンまたはジルコニウム、炭素、及び酸素を含んで構成することができ、この場合、熱伝導率λは2.5[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは1600×103[J/(m3・K)]程度であり、耐熱温度Tmは1300[℃]程度であり、強度(引張強度)σは3300[MPa]程度である
【0033】
バインダ32のセラミック材料(例えばジルコニア)は、まだ焼成されておらず、緻密化されていない状態で塗布される。すなわち、セラミック材料は、粗な構造であり、固化されていない。
【0034】
構造体部品30は、シリンダブロック(シリンダライナ)10であってもよいし、シリンダヘッド12であってもよいし、ピストン14であってもよいし、吸気弁22であってもよいし、排気弁24であってもよい。すなわち、構造体部品30の壁面30aは、シリンダブロック内壁面(シリンダライナ内壁面)10aであってもよいし、シリンダヘッド下面12aであってもよいし、ピストン頂面14aであってもよいし、吸気弁底面22aであってもよいし、排気弁底面24aであってもよい。
【0035】
また、構造体部品30の材料の具体例としては、例えば鉄(鋼)、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、またはセラミック等を挙げることができる。鉄においては、熱伝導率λは80.3[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは3500×103[J/(m3・K)]程度である。アルミニウムにおいては、熱伝導率λは193[W/(m・K)]程度であり、単位体積あたりの熱容量ρCは2400×103[J/(m3・K)]程度(ジルコニアとほぼ同等)である。例えば、構造体部品30に鉄(鋼)、バインダ32にセラミック(ジルコニア)、粒子31にシリカビーズを用いる場合は、バインダ32の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量は構造体部品30よりも低くなり、粒子31の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量はバインダ32よりも低くなる。そして、バインダ32の耐熱温度及び強度が粒子31よりも高くなる。
【0036】
次に、ステップS104の焼成用加熱工程では、図5に示すように、薄膜200を加熱して、粒子31の殻31bを緻密化させるとともにバインダ32を焼成する。ここでの薄膜200の加熱では、赤外線による加熱や、レーザによる加熱や、火炎(バーナ)による加熱を用いることが可能である。ここでは、薄膜200の温度が約200℃以上250℃以下の温度で焼成処理を行う。これにより、バインダ32が焼成される。以上の工程により、各粒子31内に中空部31aを有する遮熱膜200が構造体部品30の壁面30a上に形成される。
【0037】
内燃機関のシリンダ内における熱損失Q[W]については、シリンダ内の圧力やガス流に起因する熱伝達係数h[W/(m2・K)]、シリンダ内の表面積A[m2]、シリンダ内のガス温度Tg[K]、及びシリンダ内に面する(シリンダ内の燃焼ガスと接触する)壁面の温度Twall[K]を用いて、以下の(1)式で表すことができる。
【0038】
Q=A×h×(Tg−Twall) (1)
【0039】
内燃機関のサイクルにおいては、シリンダ内ガス温度Tgが時々刻々変化するが、壁面温度Twallをシリンダ内ガス温度Tgに追従させるよう時々刻々変化させることで、(1)式における(Tg−Twall)の値を小さくすることができ、熱損失Qを低減することができる。壁面温度Twallをシリンダ内ガス温度Tgに追従させるよう変化させるためには、燃焼室内に臨む壁面に形成する遮熱膜については、熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量が低いことが望ましい。本実施形態では、遮熱膜200内に中空部31aが多数形成されることで、遮熱膜200の熱伝導率及び単位体積あたりの熱容量を低くすることができる。その結果、燃焼室壁面温度Twallのシリンダ内ガス温度Tgへの追従性を向上させることができ、内燃機関100の熱効率を向上させることができる。
【0040】
また、本実施の形態において形成される遮熱膜200は、バインダ32内にバインダ32よりも低い弾性率を有するシリカガラスの殻31bを有する粒子31を混入させているため、母材となる構造体部品30の壁面30aが加熱された場合であっても母材との界面に生ずるせん断応力を小さくすることができ、大きな歪みにも耐えられるものとなる。
【0041】
すなわち、遮熱膜200の内部で破断が発生しないためには、膜が変形した状態で発生するせん断応力以上の強度があればよく、母材との熱膨張の差によって母材界面に発生するせん断応力は、遮熱膜200の弾性率に比例して低下するので、バインダ32内部にバインダ32よりも低い弾性率を有するシリカガラスの殻31bを有する中空の粒子31を分散させることによってせん断応力を低下させ、より大きな歪みに耐えられるものとしている。
【0042】
なお、バインダ32への粒子31の充填率を50%以上90%以下、より好ましくは60%以上70%以下とすることによって遮熱膜200の上記効果を顕著なものにすることができる。
【0043】
また、粒子31の殻31bに含まれる不純物の濃度を5重量%未満、すなわちシリカガラスの純度を95重量%以上とすることによって、遮熱膜200に対する加熱による粒子31の耐熱性を高めることができる。すなわち、95重量%以上の純度を有するシリカガラスの殻31bとした場合、1000℃以上に加熱したときの遮熱膜200の電子顕微鏡観察では粒子31の殻31bは粒子形状をほとんど崩さず保っており、高い遮熱性及び耐久性を維持することができる。一方、シリカガラスの殻31bの純度を70重量%〜80重量%まで下げた場合、1000℃以上に加熱したときの遮熱膜200の電子顕微鏡観察では粒子31の殻31bは溶解し、粒子31の形状が崩れてしまい、高い遮熱性及び耐久性を維持することができない。
【0044】
図6に粒子31のシリカガラスの純度と耐熱性との関係を示す。シリカガラスの純度を高くするほど遮熱膜200の耐熱温度も高くなり、シリカガラスの純度が95重量%以上で約1000℃の耐熱性を得ることができる。
【0045】
また、ステップS102の薄膜塗布工程では一回に塗布する薄膜200の厚さを目標の厚さよりも薄くしてもよい。例えば、一回に塗布する薄膜200の厚さを目標厚さの1/2〜1/5程度とする。ここでの目標厚さは例えば100μm程度の厚さである。その後、ステップS104の焼成工程を行う。
【0046】
なお、薄膜200を構造体部品30の壁面30a上に形成する際には、バインダ32をキシレン等の有機溶剤(有機化合物)に溶解させた溶液を構造体部品30の壁面30a上に薄膜状に塗布することも可能である。
【0047】
次に、構造体部品30の壁面30a上に形成された薄膜200の合計厚さが目標の厚さに達したか否かを判定し、薄膜200の合計厚さが目標の厚さに達していない場合は、薄膜200の合計厚さが目標の厚さに達するまでステップS102の薄膜塗布工程とステップS104の焼成工程とを交互に繰り返す。一方、薄膜200の合計厚さが目標の厚さに達した場合は、薄膜200の塗布及び加熱(焼成)を終了する。
【0048】
このように、目標の厚さの薄膜200を形成する際に、薄い薄膜200の塗りと焼成とを交互に複数回繰り返して目標の厚さにすることによって、1回あたりに焼成される薄膜200の厚さを薄くすることができ、バインダ32内に粒子31を均等に分散させることができる。
【0049】
なお、遮熱膜200の形成方法はこれらに限定されるものではなく、バインダ32内にバインダ32よりも弾性率が低い殻を有する粒子31を分散できるものであればよい。
【符号の説明】
【0050】
10 シリンダブロック、10a シリンダブロック内壁面、12 シリンダヘッド、12a シリンダヘッド下面、14 ピストン、14a ピストン頂面、16 燃焼室、18 吸気ポート、20 排気ポート、22 吸気弁、22a 吸気弁底面、24 排気弁、24a 排気弁底面、26 冷却水ジャケット、30 構造体部品、30a 壁面、31 粒子、31a 中空部、31b 殻、32 バインダ、200 遮熱膜(薄膜)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空粒状体を内部に分散させたバインダからなる遮熱膜であって、
前記中空粒状体の殻は、前記バインダの弾性率よりも低い弾性率を有する材料で構成されていることを特徴とする遮熱膜。
【請求項2】
請求項1に記載の遮熱膜であって、
前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、245GPaより小さいことを特徴とする遮熱膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遮熱膜であって、
前記中空粒状体の殻は、純度が95重量%以上のシリカガラスであることを特徴とする遮熱膜。
【請求項4】
請求項3に記載の遮熱膜であって、
前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、65GPa以上90GPa以下であることを特徴とする遮熱膜。
【請求項5】
基材上に遮熱膜を形成する方法であって、
バインダの弾性率よりも低い弾性率を有する殻で囲まれた中空部を有する中空粒状体を含む前記バインダを基材上に塗布する塗布工程と、
基材上に塗布された前記中空粒状体及び前記バインダを加熱して焼成する焼成工程と、
を含むことで、
前記中空粒状体を有する遮熱膜を基材上に形成することを特徴とする遮熱膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の遮熱膜の形成方法であって、
前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、245GPaより小さいことを特徴とする遮熱膜の形成方法。
【請求項7】
請求項6又は7に記載の遮熱膜の形成方法であって、
前記中空粒状体の殻は、純度が95重量%以上のシリカガラスであることを特徴とする遮熱膜の形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の遮熱膜の形成方法であって、
前記中空粒状体の殻の縦弾性係数は、65GPa以上90GPa以下であることを特徴とする遮熱膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185290(P2010−185290A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28111(P2009−28111)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】