説明

遮熱部材

【課題】遮熱性能の高い遮熱部材を提供する。
【解決手段】700nm以上の波長域の光を反射する、コレステリック液晶相を固定してなる少なくとも1層の光反射層を含み、前記波長域の波長の光が層面に対して角度θ°(0°<θ<90°、以下「実入射角θ」という)から少なくとも入射する環境で使用される遮熱部材であって、下記式から算出されるλdが850〜1100nmとなる入射角θ1d(但し、θ1dは0°ではない)が、(実入射角θ−20)°以上(実入射角θ+20)°以下であることを特徴とする遮熱部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコレステリック液晶相を利用した光反射層を有する遮熱部材に関する。特に、使用される環境に適した遮熱性を示す遮熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く、その一つとして住宅、自動車の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のあるガラス、フィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるのには、太陽光スペクトルの可視光領域または赤外領域のいずれかの太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
断熱・遮熱性の高いエコガラスとしてよく用いられるのが「Low−Eペアガラス」と呼ばれる熱放射を遮断する特殊な金属膜をコーティングした複層ガラスである。この特殊な金属膜は、例えば、特許文献1に開示されている真空成膜法により複数層を積層することで作製できる。真空成膜よって作製される、これらの特殊な金属膜のコーティングは反射性能に非常に優れるものの、真空プロセスは生産性が低くコストが高くなってしまう。また、金属膜を使うと、電磁波を同時に遮蔽してしまうために携帯などの電波障害を引き起こしたり、自動車に使用した場合にはETCが使えないなどの問題があった。
【0003】
この電波障害の対策として、例えば、特許文献2には、金属微粒子を含有する層を利用した基材が開示されている。しかし金属微粒子を含有する膜は、可視光の透過性能は優れるものの、遮熱効果の高い700〜1200nmの波長域の反射率が低いために遮熱性能を高くできないという問題があった。また特許文献3には、赤外線吸収色素を含有する熱線遮断シートが開示されている。赤外線吸収色素を使用した場合、日射透過率を下げることができるものの、日射の吸収による膜面温度上昇と、その熱の再放出によって遮熱性能が低下するという問題がある。
また、電波障害を発生させず、かつ700nm以上の波長域の反射性能が高いことを両立させる方法として、複屈折性の多層誘電膜を用いる方法がある。例えば、特許文献4には、この方法を利用した光学体が開示されている。しかし、この方法では正面の反射帯域1000nmの近赤外を超えて調整しようとすると、400nm近辺の反射が同時に強くなり、着色の問題で波長の調整が難しいという問題があった。
【0004】
また、コレステリック液晶層を利用する方法がある。例えば、特許文献5に開示されているように、一方の方向の円偏光の光を1つのコレステリック液晶層をλ/2板の両面に形成することで、700〜1200nm領域の光を選択的に効率よく反射させることができる。
また、特許文献6には、コレステリック液晶層を有する赤外光反射物品が開示されている。コレステリック層を複数層積層する例としては、液晶表示装置への利用に対する試みが多く、具体的には可視光領域の光を効率的に反射させる試みが多く、例えば、特許文献7にはコレステリック層を多数重ねた例が開示されている。
【0005】
コレステリック層を複数積層する際には、塗布したコレステリック液晶材料を含むウエット膜を乾燥・加熱配向・紫外線硬化させて1層ずつ上に塗り重ねていく方法が用いられる。コレステリック液晶層を硬化させる方法については、例えば特許文献8に例示されるように、重合性液晶に紫外線を照射することによって硬化させる方法が一般的に用いられ、照射照度を一定範囲内に調整することで、広領域のコレステリック液晶フィルムを作製する方法が開示されている。また、特許文献9には積層して多層化する際に液晶分子の旋回方向が同一になるようにすることで、連続した波長域の偏光子を作製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−263486号公報
【特許文献2】特開2002−131531号公報
【特許文献3】特開平6−194517号公報
【特許文献4】特表2002−509279号公報
【特許文献5】特許第4109914号公報
【特許文献6】特表2009−514022号公報
【特許文献7】特許第3500127号公報
【特許文献8】特許第4008358号公報
【特許文献9】特許第3745221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、コレステリック液晶相を光反射層に利用した遮熱部材については、その反射特性の入射角依存性についてはほとんど議論されておらず、反射特性の最適化は、ほとんどが層面に対して法線方向の入射光に対してなされてきた。しかし、実際には使用される環境によって、光の入射方向は種々異なるため、該コレステリック液晶相の光反射特性を十分に活用できていなかった。
本発明は、電波障害を起こさず、着色の問題もなく、且つ遮熱性能の高い遮熱部材を提供することを課題とする。
また、特に、本発明は、使用される環境の日射条件に適した遮熱性能を示す遮熱部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 700nm以上の波長域の光を反射する、コレステリック液晶相を固定してなる少なくとも1層の光反射層を含み、前記波長域の波長の光が層面に対して角度θ°(0°<θ<90°、以下「実入射角θ」という)から少なくとも入射する環境で使用される遮熱部材であって、下記式(1)
【数1】

から算出されるλdが850〜1100nmとなる入射角θ1d(但し、θ1dは0°ではない)が、(実入射角θ−20)°以上(実入射角θ+20)°以下であることを特徴とする遮熱部材。
【0009】
[2] 入射角θ1dが、(実入射角θ−10)°以上(実入射角θ+10)°以下であることを特徴とする[1]の遮熱部材。
[3] 前記光反射層を2層以上有することを特徴とする[1]又は[2]の遮熱部材。
[4] 螺旋ピッチが互いに等しく、且つ旋光性が互いに逆向きである、隣接する2層の前記光反射層を有することを特徴とする[3]の遮熱部材。
[5] 前記実入射角が、日射角であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの遮熱部材。
[6] 前記実入射角が、夏季(6月〜8月)の日射平均角であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの遮熱部材。
[7] 前記実入射角が、50〜80°であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの遮熱部材。
[8] 光透過性支持体をさらに有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの遮熱部材。
[9] 前記光透過性支持体がガラス板であり、前記少なくとも1層の光反射層を該ガラス板の表面に有することを特徴とする[8]の遮熱部材。
[10] 前記光透過性支持体が合わせガラスであり、前記少なくとも1層の光反射層を該合わせガラスの内部に有することを特徴とする[8]の遮熱部材。
[11] 車載用窓材又は建物用窓材であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかの遮熱部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電波障害を起こさず、着色の問題もなく、且つ遮熱性能の高い遮熱部材を提供することができる。
また、本発明によれば、使用される環境の日射条件に適した遮熱性能を示す遮熱部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例において実施した評価方法を説明するために用いた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を少なくとも1層有する遮熱部材に関する。該光反射層は、コレステリック液晶相を固定してなるので、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射特性を示す。よって、コレステリック液晶相の螺旋ピッチを調整して、波長700nm以上の波長域の光のみを遮断すれば、電波障害を発生させずに、着色もなく、高い遮熱効果を得ることができる。しかし、コレステリック液晶相の光反射特性には、入射角度依存性があり、層面に対して法線方向(以下、「正面方向」という場合がある)からの入射光に対して最大の反射率となる波長と、該法線方向から傾斜した方向(以下、「斜め方向」という場合がある)からの入射光に対して最大の反射率となる波長とではズレが生じている。具体的には、正面方向で最大の反射率となる波長よりも、斜め方向で最大の反射率となる波長は、短波長側にシフトしている。遮熱部材は建物や車両などの窓に利用されることが多く、かかる態様では、遮熱部材には、斜め方向から太陽光が入射することがほとんどであり、実際の日射に対して最大の反射率となる光が、遮熱効果の高い波長域の光とならない場合があり、コレステリック液晶相の優れた光選択反射特性を十分に活用できていなかった。本発明者が鋭意検討した結果、遮熱効果の高い波長850〜110nmに対して選択反射特性を示す入射角度が、実際の使用環境における実入射角度θに対して、θ±20°の範囲内であると、高い遮熱効果(即ち700nm以上の波長域の光に対する選択反射特性)が得られるとともに、電波障害や着色が生じないことを見出した。
【0013】
具体的には、本発明の遮熱部材は、700nm以上の波長域の光を反射する、コレステリック液晶相を固定してなる少なくとも1層の光反射層を含み、前記波長域中の波長の光が層面に対して角度θ°(0°<θ<90°、以下「実入射角θ」という)から少なくとも入射する環境で使用される遮熱部材であって、下記式(1)
【数2】

から算出されるλdが850〜1100nmとなる入射角θ1d(但し、θ1dは0°ではない)が、(実入射角θ−20)°以上(実入射角θ+20)°以下であることを特徴とする。好ましくは、入射角θ1d(但し、θ1dは0°ではない)が、(実入射角θ−20)°以上(実入射角θ+20)°以下であることを特徴とする。好ましくは、入射角θ1dが、(実入射角θ−10)°以上(実入射角θ+10)°以下の遮熱部材である。
ここで、本明細書において「入射角(実入射角も含む)」については、遮熱部材の表面に対して法線方向を入射角0°とし、法線方向を基準としてそこからの傾斜角をいうものとする。
【0014】
本発明の遮熱部材の一実施形態は、太陽光に対して遮熱性を示す部材であり、即ち、本実施形態では、前記実入射角は、日射角である。日射角は、国又は地域によって異なっているので、各国及び各地域における日射角との関係でθ1dを調整することで、その地域において、太陽光の850〜1100nm以上の赤外線を効率よく反射する遮熱部材を提供することができる。遮熱部材は、屋内や車両(自動車等)内の室温上昇の防止の目的で用いられることが多いが、その目的においては、遮熱に対する必要性が高い夏季(6月〜8月)の日射平均角度を、実入射角θとして利用することが好ましい。日本の場合は、日射角θは、50〜80°である。よって、日本で使用される、太陽光の700nm以上の赤外線を効率よく反射する遮熱部材を提供するためには、θ1dを、30°〜100°とするのが好ましく、40°〜90°とするのがより好ましく、50°〜80°とするのがさらに好ましい。
また、夏季の最大の日射角に基づいて、実入射角θを決定するのも好ましい。夏季の最大日射角は、国、地域によって異なる。例えば、夏至の(最大)日射角は、東京(日本)では約78.4°、ワシントン(米国)では約68.4°、ベルリン(ドイツ)では約61.4°などであり、使用される国、又は地域の実入射角θに応じて、θ1dを設定するとよい。
【0015】
また、同一の国もしくは地域であっても、建物の窓のように、地面に対して垂直に置かれる部材と、自動車のフロントガラスの様に、地面に対して垂直ではなく、ある程度の角度で傾斜した状態に置かれる部材とでは、実入射角は異なってくるであろう。地面に対して垂直に置かれる部材では、上記した通り、使用される国もしくは地域の日射角をそのまま実入射角として用いてもよいが、斜めに置かれる部材では、その傾斜角度も加味して、実入射角を決めるのが好ましい。
【0016】
本発明の遮熱部材の一例は、隣接する2層の光反射層を有し、該2層の光反射層が同程度の螺旋ピッチを有するとともに、互いに逆向きの旋光性を示している態様である。この態様では、同程度の波長の左及び右円偏光のいずれも反射することができるので好ましい。例えば、一方の光反射層が右旋回性のキラル剤を含有する液晶組成物からなり、他方の光反射層が左旋回性のキラル剤を含有する液晶組成物からなり、これらの光反射層の螺旋ピッチが同程度である例が挙げられる。また、この隣接する2層の光反射層の組を、2組以上有し、組間で螺旋ピッチが互いに異なっていると、反射される光の波長帯域が拡張し、広帯域の光反射性を示す。
【0017】
本発明の遮熱部材は、反射する最大波長のピーク(極大値)が、700nm以上である、いわゆる赤外線反射特性の光反射層を有する。反射する光の波長のピークが、800〜1300nmの範囲に1つ以上あるのが好ましい。波長700nm以上の光に対する選択反射性は、一般的には、螺旋ピッチが500〜1350nm程度(好ましくは500〜900nm程度、より好ましくは550〜800nm程度)であり、及び厚みが1μm〜8μm程度(好ましくは3〜8μm程度)のコレステリック液晶相によって達成される。層の形成に用いる材料(主には液晶材料及びキラル剤)の種類及びその濃度等を調整することで、所望の螺旋ピッチの光反射層を形成することができ、また、キラル剤又は液晶材料そのものを選択することで、所望の旋光性のコレステリック液晶相とすることができる。また層の厚みは、塗布量を調整することで所望の範囲とすることができる。
【0018】
本発明の遮熱部材は、それ自体が窓材として利用できる自己支持性のある部材であっても、またそれ自体は自己支持性がなく、自己支持性のあるガラス板等の基板に貼合等されて用いられる部材であってもよい。
前者の態様の遮熱部材は、光透過性支持体に支持されているのが好ましい。光透過性支持体としては、ガラス板、及びポリマー基板等が挙げられる。例えば、本発明の遮熱部材は、前記光反射層をガラス板等の光透過性支持体の表面に有する部材であってもよい。また、前記光透過性支持体は、合わせガラスであってもよい。一例は、合わせガラスの内部に、前記光反射層を有する遮熱部材である。
後者の態様の遮熱部材の例には、シート状又はフィルム状の遮熱部材が挙げられる。一例は、ポリマーフィルム等の光透過性支持体の表面に前記光反射層を有する遮熱部材である。本実施形態のシート状又はフィルム状の遮熱部材は、窓などのガラス板の表面に貼り合わせることによって用いられる。本実施形態の遮熱部材は、前記光反射層とともに、粘着層や易接着層等の接着性の層を有していてもよい。前記遮熱部材を保管又は搬送する際は、前記粘着層や易接着層の表面に、剥離性フィルムを一時的に貼付しておいてもよい。勿論、前記粘着層や易接着層がなくても、接着剤などを利用して、シート状及びフィルム状の遮熱部材を窓等に貼合することができる。なお、光反射層を、窓等のガラス基板上に転写する態様では、前記光反射層を支持する支持体は、光透過性でなくてもよい。
なお、本明細書では、「光透過性」とは、可視光に対して透過性があることを意味する。
【0019】
本発明の遮熱部材は、例えば、適する日射条件や地域などを表示する説明書き及び仕様書等のラベルとともに市場に提供されるであろう。
【0020】
また、本発明は、遮熱性窓材の製造方法にも関する。具体的には、日射角度θ°(0°<θ<90°)の環境で使用される遮熱性窓材の製造方法であって、
700nm以上の波長域の光を反射するコレステリック液晶相を固定してなる少なくとも1層の光反射層を含む遮熱材を1以上準備すること(第1の工程)、
該遮熱部材について、下記式(1)
【数3】

から算出されるλdが850〜1100nmとなる入射角θ1dを算出すること、
日射角θと、前記1以上の遮熱部材の入射角θ1dとを比較すること(第2の工程)、及び
入射角θ1dが日射角θ±20°を満足する(但し、θ1dは0°ではない)遮熱部材と透過性部材とを一体化すること(第3の工程)、
を含む遮熱性窓材の製造方法である。
【0021】
本発明の製造方法によれば、使用される環境の日射条件に応じて、その日射条件に適した反射特性を示す遮熱性窓材を提供することができる。例えば、輸出用の遮熱性窓材を製造する態様では、日射角θとして、当該遮熱性窓材又はそれを含む車両等の構造体の輸出先の日射角が用いられるであろう。
前記第3の工程の例は、例えば、シート状又はフィルム状の本発明の遮熱部材を、窓となるガラス板及びプラスチック基板の表面に貼り合せる工程;窓となる合わせガラス内に、シート状又はフィルム状の本発明の遮熱部材を組み込む工程;及び窓となるガラス板及びプラスチック基板の表面又は合わせガラス内部に、液晶性組成物を塗布して、前記光反射層を形成する工程;等が挙げられる。
【0022】
次に、本発明の遮熱部材の作製に利用可能な種々の材料について説明する。
1. 光反射層
本発明の遮熱部材は、700nm以上の波長域の光を反射する特性を示す光反射層を少なくとも1層有する。該光反射層は、コレステリック液晶相を固定して形成された層である。前記光反射層の形成には、硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の一例は、棒状液晶化合物、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を少なくとも含有する。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0023】
(1) 棒状液晶化合物
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0024】
本発明に利用する棒状液晶化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。重合性基を有しない棒状液晶化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23-28)に記載がある。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0025】
(2) 光学活性化合物(キラル剤)
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであり、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0026】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0027】
(3) 重合開始剤
前記光反射層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であるのが好ましく、そのためには、重合開始剤を含有しているのが好ましい。前記重合性液晶組成物の一例は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤を含有する、紫外線硬化性液晶組成物である。前記光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0028】
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
(4) 配向制御剤
前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0030】
以下、配向制御剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)について、順に説明する。
【0031】
【化1】

【0032】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0035】
【化3】

【0036】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0037】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
前記液晶組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、液晶化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0039】
前記光反射層は、塗布方法によって作製されるのが好ましい。製造方法の一例は、
(1) 光透過性支持体の表面に、硬化性の液晶組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2) 前記硬化性の液晶組成物に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して光反射層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1)及び(2)の工程を、光透過性支持体の一方の表面上で2回以上繰り返すことで、;又は(1)及び(2)の工程を、光透過性支持体の双方の表面上で同時にもしくは順次、1回以上づつ実施すること等により、前記光反射層を2層以上有する遮熱部材を作製することができる。
【0040】
前記(1)工程では、まず、光透過性支持体又は下層の光反射層の表面に、前記硬化性液晶組成物を塗布する。前記硬化性の液晶組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0041】
次に、表面に塗布され、塗膜となった硬化性液晶組成物を、コレステリック液晶相の状態にする。前記硬化性液晶組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、光透過性支持体の変形、変質等からも不利になる。
【0042】
次に、(2)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0043】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0044】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0045】
本発明の遮熱部材の反射特性、即ち、λdが850〜1100nmとなる入射角θ1d(但し、θ1dは0°ではない)が、実入射角θ±20°の範囲内である、という反射特性を得るためには、前記光反射層の形成条件を調整するのが好ましい。前記光反射層の選択反射波長は螺旋ピッチで決定され、及び選択波長は光の入射方向が層面に対して法線方向から傾斜すると、低波長側にシフトする傾向がある。よって、例えば、まず法線方向からの入射に対して螺旋ピッチを最適化し、
入射角と選択反射波長の短波長シフトの関係を実測により確認し、
これらのデータから、所望のλdを与えるθ1dが、実際に使用される環境の実入射角θとの関係で、θ±20°の範囲内を満足するように、螺旋ピッチを算出する、
ことができる。算出された所望の螺旋ピッチは、キラル剤の種類、その添加量、及び重合反応率等の要因の少なくとも1つを調整することで達成できる。
【0046】
2. 支持体
本発明の遮熱部材は、前記光反射層を支持する支持体を有していてもよい。支持体は、光透過性であるのが好ましい。光透過性支持体の例には、ガラス板、及びプラスチック基板が含まれる。例えば、窓用のガラス板及びプラスチック基板を支持体として有する態様は、そのまま遮熱性窓として利用することができる。
また、前記光透過性支持体の例には合わせガラスも含まれる。例えば、前記光反射層を、合わせガラス内部に組み込んで、遮熱性窓材として利用することができる。合わせガラスは、一般的には、2枚のガラス板の内面に形成された中間膜を熱接着して作製される。この合わせガラスの内部に、前記光反射層を挟み込むには、該光反射層の表面を中間膜と熱接着させる。中間膜は、一般的には、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)又はエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を主原料として含有する。中間膜の厚みは、一般的には、380〜760μm程度である。
【0047】
本実施形態において光透過性支持体として用いられるガラス板等の厚みについては特に制限はなく、用途に応じて好ましい範囲が変動する。例えば、輸送車両のフロントガラス(ウインドウシールド)の用途では、一般的には、2.0〜2.3mmの厚みのガラス板を用いるのが好ましい。また、家屋やビル等の建物用遮熱性窓材のガラス板等の光透過性支持体の厚みは、一般的には、40〜300μm程度である。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0048】
また光透過性支持体の例には、ポリマーフィルムが含まれる。支持体として用いるポリマーフィルムについては特に制限はない。用途によっては、可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムが好ましく用いられるであろう。可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。
【0049】
光透過性支持体としてポリマーフィルム等を有するフィルム状又はシート状の遮熱部材は、ガラス板やプラスチック基板等の表面に貼合されて用いられてもよい。この態様では、前記遮熱部材のガラス板等との貼合面は、粘着性であるのが好ましい。本実施形態では、遮熱性部材は、ガラス板等の基板表面に貼合可能な、粘着層、易接着層等を有しているのが好ましい。勿論、非粘着性の遮熱性部材を、接着剤を利用してガラス板の表面に貼合してもよい。
【0050】
本発明の遮熱部材は、車両用又は建物用の遮熱性窓そのものとして、又は遮熱性付与を目的として、車両用又は建物用の窓に貼合されるシート又はフィルムとして、利用することができる。その他、フリーザーショーケース、農業用ハウス用材料、農業用反射シート、太陽電池用フィルム等として用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0052】
1.遮熱部材の作製
(1)光反射層形成用塗布液(A)及び(B)の調製
下記表に示す組成の塗布液(A)及び(B)をそれぞれ調製した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
(2)光反射層の形成
調製した塗布液(A)又は(B)を、ワイヤーバーを用いて、富士フイルム製PETフィルム上に、室温にて塗布した。乾燥後の膜の厚みは6μmとした。
次に、室温にて30秒間乾燥させた後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、コレステリック液晶相とし、その後95℃でフュージョン製Dバルブ(ランプ90mW/cm)にて出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を硬化させた。この様にして、光反射層を形成し、遮熱部材を作製した。
なお、光反射層を2以上積層した遮熱部材を作製する場合には、1層目の光反射層を形成した後、室温まで冷却し、その後、上記操作を繰り返した。
上記製造方法において、キラル剤LC−756及び/又はキラル剤化合物2の濃度を変えることで、反射特性、即ち、所望のλdを与えるθ1dが異なる、種々の遮熱部材を作製した。
【0058】
2.遮熱部材の
作製した各遮熱部材について、θ1dとして種々の値を上記式(1)に代入し、極大となる波長λdを算出した。結果を下記表に示す。
【0059】
3.遮熱部材の評価
一方の面に開口部を持つ箱状構造物の開口部に各遮熱部材を貼った。この構造物に、図1に示す通り、日射角θ°の方向から太陽光を照射し、箱内部に設置した黒体パネルの温度を測定した。箱状構造物を傾けることで、日射角θ°を種々変化させた。さらに、遮熱部材を貼合しなかった以外は同様にして測定した黒体パネルの温度を基準温度とし、該基準温度との差を算出した。温度差を下記表に示す。
基準温度と比較して2.0℃を超える温度の低下が認められたものについて、「◎」の評価;基準温度と比較して1.0℃を超える温度の低下が認められたものについて、「○」の評価;並びに基準温度と比較して1.0℃以下の温度の低下しか認められなかったものについて、「×」の評価;とした。
【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
700nm以上の波長域の光を反射する、コレステリック液晶相を固定してなる少なくとも1層の光反射層を含み、前記波長域の波長の光が層面に対して角度θ°(0°<θ<90°、以下「実入射角θ」という)から少なくとも入射する環境で使用される遮熱部材であって、下記式(1)
【数1】

から算出されるλdが850〜1100nmとなる入射角θ1d(但し、θ1dは0°ではない)が、(実入射角θ−20)°以上(実入射角θ+20)°以下であることを特徴とする遮熱部材。
【請求項2】
入射角θ1dが、(実入射角θ−10)°以上(実入射角θ+10)°以下であることを特徴とする請求項1に記載の遮熱部材。
【請求項3】
前記光反射層を2層以上有することを特徴とする請求項1又は2に記載の遮熱部材。
【請求項4】
螺旋ピッチが互いに等しく、且つ旋光性が互いに逆向きである、隣接する2層の前記光反射層を有することを特徴とする請求項3に記載の遮熱部材。
【請求項5】
前記実入射角が、日射角であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮熱部材。
【請求項6】
前記実入射角が、夏季(6月〜8月)の日射平均角であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮熱部材。
【請求項7】
前記実入射角が、50〜80°であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮熱部材。
【請求項8】
光透過性支持体をさらに有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の遮熱部材。
【請求項9】
前記光透過性支持体がガラス板であり、前記少なくとも1層の光反射層を該ガラス板の表面に有することを特徴とする請求項8に記載の遮熱部材。
【請求項10】
前記光透過性支持体が合わせガラスであり、前記少なくとも1層の光反射層を該合わせガラスの内部に有することを特徴とする請求項8に記載の遮熱部材。
【請求項11】
車載用窓材又は建物用窓材であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の遮熱部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−107178(P2011−107178A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258866(P2009−258866)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】