遮蔽されたサンドイッチ構造を有する熱放射の検知用素子とその使用
本発明は、熱放射の検知用素子に関し、該素子は、基板と、基板上に取り付けられると共に、導電性材料を有し、開口部のある基板から離れて対向した上面を有する保護ハウジングと、基板上の保護ハウジング内に取り付けられ、熱放射を電気信号に変換するための少なくとも1つの熱検知素子を備える少なくとも1つの検知キャリア、電気信号を読み出すための少なくとも1つの読出回路を備える少なくとも1つの回路キャリア、及び検知素子をカバーするための少なくとも1つのカバーを有する積層部とを備え、検知キャリアは、回路キャリアとカバーとの間に配置され、検知キャリア及びカバーは、検知キャリアとカバーによって画成される、積層部の第1の積層空間が、検知キャリアの検知素子とカバーの間に形成されるように配置され、回路キャリア及び検知キャリアは、回路キャリアと検知キャリアに画成される、積層部の少なくとも1つの第2の積層空間が検知キャリアと回路キャリアの間に形成されるように配置され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間は真空化され、あるいは真空化することができ、積層部は、基板から離れて対向する積層上面を有し、積層部の積層上面は、保護ハウジングの外側から積層上面に対してアクセスできるように、開口部に嵌合してある。この素子は、運動センサ、存在センサおよび熱画像カメラなどにおいて使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱放射を電気信号に変換するための、少なくとも1つの遮蔽された熱検知素子を備える、熱放射の検知用素子に関する。該素子に加え、その使用についても提示する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱放射の検知用素子300は図7において示されている。この素子300は、基板310と、この基板310上にシーリング材312を介して固定されているセンサ320を有する。さらに、この素子300は、センサ320上を覆うようにして気密シール性を有するボンディング結合333によって基板310に固定されて配される保護ハウジング330を有する。保護ハウジング330は、保護ハウジング330がセンサ320に直接接触しないような寸法を有するため、センサ320と保護ハウジング330との間に内部空間335が形成されている。保護ハウジング330は、センサ320と反対側に向くように設けられた上面332を有する。この上面332には、保護ハウジング330の外部からの光がセンサ320上に当たるように窓開口部334がセンサ320の上部において設けられている。この開口部334にはガラス窓331が気密シール性を有するように嵌め込まれている。
【0003】
保護ハウジング330は、金属製であるため、センサ320は保護ハウジング330によって電磁的に遮断されている。さらに、内部空間335が真空であるか、あるいは不活性ガスまたは水素によって充填されるようにガラス窓331は気密性を有するように窓開口部334が嵌め込まれ、ボンディング結合333は気密性を有するように構成されている。これによってセンサ320は、大気の影響から保護される。しかしながら、この素子300は保護ハウジング330の設置高さによって大きな設置面積を必要とするという欠点がある。さらに、素子300の製造あるいはガラス窓331の窓開口部334への嵌め込みあるいは気密性を有するボンディング結合333の形成が複雑でありコストがかかる。
【0004】
熱放射の検知用素子が、例えば特許文献1(DE10004216A1)において開示されている。この素子は、焦電検知器と称される。検知素子は、焦電気性の検知素子である。2つの電極層と、これら電極層の間に配置された、焦電感受性を有する素材からなる焦電層と、からなる層構造を有する。このような素材は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である。電極は、例えばプラチナあるいは熱放射を吸収するクロム・ニッケル合金である。熱検知素子は、シリコンからなる検知キャリア(シリコンウェハ)と連結されている。検知素子と検知キャリアとの間には、この検知素子と検知キャリアとを互いに電気的且つ熱的に絶縁するための絶縁層が設けられている。この場合、絶縁層は検知素子の表面積に亘って延伸する、真空状の空間を介してこの空間の保護層と、保護層および空間のカバーとを備えている。この保護層は、ポリシリコンからなる。このカバーは、ホウリンケイ酸塩ガラス(BPSG)からなる。検知素子によって生成された電気信号の読出、加工および/または伝達のために、検知キャリアにおいて読出回路が一体化されている。この読出回路は、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)技術によって実現されている。
【0005】
これと比較可能である熱放射の検知用素子は、特許文献2(DE19525071A1)によって公知である。この熱検知素子は、上述と同様の焦電式検知素子である。この検知素子は、多層性の検知キャリア上に配置されている。検知素子は検知キャリアのシリコン層上に自身の電極層のうち1つによって取り付けられている。このシリコン層は、検知キャリアの電気絶縁性膜上に設けられる。この膜は、例えばSi3N4/SiO2/Si3N4の三重層からなる。この膜もまた検知キャリアのシリコン基板上に設けられている。このシリコン基板は、焦電性検知素子の表面積に実質的に相当する表面積を有する照射窓(検知窓)を備える。この照射窓は、シリコン基板の切り欠きである。その際、基板の基材(シリコン)が膜に至るまで除去されている。この照射窓を介して熱放射が検知素子へと到達して分析可能な電気信号を生成させる。この場合、膜は良好な熱放射の伝達性を有することを特徴とする。シリコン層において、検知素子に向かって横方向に変位したところに電気信号用の読出回路が一体化されている。検知キャリアは、さらに読出回路の回路キャリアとしても機能する。
【0006】
これらの公知である素子において、複数の検知素子が設けられることも可能である(検知素子アレイ)。この場合、各検知素子の電気信号は、個別に読み出される。通常、そのために各検知素子の電極層は、ボンドワイヤを介して電気的に接触している。しかしながらこれによって検知素子の配線のために相当な設置面積が必要となり、その結果として検知素子密度(検知キャリアの表断面当たりの検知素子の数)が制限されて比較的低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE10004216A1
【特許文献2】DE19525071A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術に比して設置面積が小さく、簡単且つ安価に製造可能である熱放射の検知用素子を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、熱放射の検知用素子が提示されており、該素子は、基板と、該基板上に取り付けられると共に、導電性素材を含み、基板から離れて対向している上面を有し、上面に開口部が設けられている保護ハウジングと、保護ハウジング内の基板上に実装された積層部とを備え、前記積層部が、熱放射を電気信号に変換する少なくとも1つの熱検知素子を有する少なくとも1つの検知キャリアと、前記電気信号を読み出す少なくとも1つの読出回路を有する少なくとも1つの回路キャリアと、検知素子を被覆する少なくとも1つのカバーとを有し、検知キャリアは、回路キャリアとカバーとの間に配置されており、検知キャリアおよびカバーは、検知キャリアとカバーによって画成される、積層部の少なくとも1つの第1の積層空間が、検知キャリアの検知素子とカバーとの間に存在するよう、互いに配置されており、回路キャリアおよび検知キャリアは、回路キャリアと検知キャリアによって画成される、積層部の少なくとも1つの第2の積層空間が、検知キャリアと回路キャリアとの間に存在するように配置され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間は、真空化され、あるいは真空化することができ、積層部は基板から離れて対向している積層上面を有し、前記積層部の積層上面を、保護ハウジングの外部から積層上面にアクセスできるよう、開口部に嵌合する。本発明において、この素子は、運動センサ、存在センサおよび熱画像カメラなどに使用され得る。
【0010】
積層部は、検知キャリア、回路キャリアおよびカバーからなる、コンパクトであってスペース節約型の「サンドイッチ」構造として実現されている。カバーによって検知素子が有害な環境影響から保護される。このような環境影響とは、例えば埃、湿気あるいは検知素子の構成要素を腐食させるかあるいは検知素子の機能に影響を及ぼすような腐食性化学物質などである。
【0011】
保護ハウジングは、導電性を有する素材からなるため、積層部が保護ハウジングによって外部に対して電磁的に遮蔽される。積層部は、自身のサンドイッチ構造によって有害な環境影響に対して感受性を有しないため、保護ハウジング自体が積層部を埃、湿気あるいは腐食性化学物質などから保護するための構造を有する必要がない。これにより、本発明において保護ハウジングは、単に上面に積層部が係止する開口部を有する。積層部は、開口部に入るだけで開口部を部分的にのみ通過していても、完全に開口部に挿入されていることによって保護ハウジングの上面の外側に対して同一平面上にぴったり重なっていても、あるいは開口部を通って延伸されて保護ハウジングの上面の外側において外側に突出していてもよい。
【0012】
これによって保護ハウジングの設置高さが実質的に積層部の設置高さと同じとなるため、素子の設置高さが有利な形で小さくなる。さらに、積層部が保護ハウジングによって気密性を有するような形で閉鎖される必要がないため、保護ハウジングを簡単に構成することが可能となる。したがって、保護ハウジングには、これを介して保護ハウジングの外から積層部にアクセス可能である開口部が単に設けられるだけで、保護ハウジングの基板への固定の際には、何らかの封止要件を満たす必要がない。
【0013】
分析回路は、例えばCMOS技術を用いて直接回路キャリアにおいて一体化されていてもよい。さらに、回路キャリアが単に検知素子の配線を提供するものであることも考えられる。配線によって検知素子が回路キャリアに設けられた、内部ASIC(特定用途向け集積回路)あるいは外部ASICに対して電気的に連結されている。外部ASICは、ボンディングされていてもよい。外部ASICは、「フリップチップ」技術(下記を参照のこと)によって接触されていることが好ましい。積層空間によって、検知素子が回路キャリアとカバーとから大幅に熱的に分離されていることが確保される。
【0014】
検知すべき熱放射は、1μm以上の波長を有する。波長は、5乃至15μmの範囲内で選択されることが好ましい。熱検知素子は、例えばゼーベック効果に基づいているものであり得る。熱検知素子は、焦電性検知素子であることが好ましい。焦電性検知素子は、冒頭に記載したとおり、焦電感受性を有する素材からなる焦電層と両側に設けられた電極層とからなる。焦電感受性を有する素材とは、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはジルコン酸チタン酸鉛などのセラミックである。さらにポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの強誘電性ポリマーなども考えられる。電極層の電極素材としては、例えばプラチナやプラチナ合金などが使用可能である。さらにクロム・ニッケル電極あるいは導電性を有する酸化物からなる電極も考え得る。検知素子は、例えば辺長が25μm乃至200μmであるような四角形状の表面積を有する。
【0015】
熱放射の検知のために利用される効果に関係なく、検知素子の相当する効果を誘発する、熱感受性を有する各素材によって熱放射の吸収が必要となる。吸収は、熱感受性を有する素材によって直接実施される。さらに、熱放射を検知素子の電極または電極層によって吸収することも可能である。加えて、熱放射を検知素子のごく近傍における吸収体によって吸収し、これによって得られた熱量を滞留あるいは熱伝達によって熱感受性を有する素材に対して供給するようにすることも可能である。吸収体は、エネルギー伝達手段として機能する。この吸収体は、例えば、検知素子上に直接層として設けられる。
【0016】
熱放射の検知用素子における積層部は、熱放射が直接検知素子に到達するように構成されていることが好ましい。そのため、特別な実施例において検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーが、検知素子に対して熱放射を照射するために少なくとも1つの、所定の熱放射伝達率を有する照射窓を備える。照射窓は、カバー、検知キャリアさらに/または回路キャリアに対して一体的に設けられる。検知素子と照射窓とは、検知素子の照射が検知キャリアとは反対に向いた検知素子の前面(前面照射)および/あるいは検知キャリアに対向した検知素子の背面(背面照射)から実施されるように互いに対して配置される。照射窓は、検知素子の方向において所定の伝達率を有する。伝達率は、可能な限り高く、例えば50%以上、特には70%以上で95%に近いものである。
【0017】
検知キャリア、回路キャリアおよびカバーの素材としては、任意の素材を用いることが可能である。例えば元素状ゲルマニウムなどの半導体素材や異なる半導体の組み合わせなどは電気回路や構成要素を集積化することが可能となるため特に適している。特別な実施例において、検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーはシリコンを有する。それぞれ1つのシリコン基板がカバー、回路キャリアおよび検知キャリアとして使用される。CMOS技術によって任意の構造および機能性を基板に一体化させることが可能である。それに加えてシリコンは、熱放射に対して低い吸収係数を有するため、照射窓を極めて容易にシリコン基板に一体化することが可能である:シリコン基板そのものが照明窓を構成する。シリコン基板における対応する機能性を適切に設けることによって、熱放射が妨げられることなく、すなわち遮られることなく検知素子上に到達することが可能となる。
【0018】
伝達率は、照射窓の素材の吸収係数のみに左右されるものではない。照射窓の厚さもまた重要である。照射窓は、検知キャリアあるいは回路キャリアにおける薄くした領域によって形成されることが好ましい。特別な実施例において、検知素子は、回路キャリアにおける回路キャリアの凹部あるいはカバーにおけるカバーの凹部に対向して配置される。回路キャリアの凹部およびカバーの凹部は、それぞれ回路キャリアあるいはカバーの領域において比較的低い厚みを有する。これらの領域において回路キャリアとカバーとが例えば材料除去によって薄くなっている。これらの凹部が回路キャリアあるいはカバーに一体化されており、自身を介して熱放射が検知素子上に到達するための照射窓を形成する。検知素子は、それぞれの凹部に対して隙間を有することが好ましい。カバーの凹部は、検知キャリアとカバーとの間における第1の積層空間の構成部分である。回路キャリアの凹部は、検知キャリアと回路キャリアとの間における第2の積層空間の構成部分である。
【0019】
特別な実施例において、検知キャリアと回路キャリアおよび/または検知キャリアとカバーが接着剤、具体的には気密性を有する接着剤によって互いに固着されている。検知キャリアと回路キャリアとの固着および/または検知キャリアとカバーとの固着のためには接着剤が形成される。接着剤は、真空化が可能である積層空間が形成されるように構成される。例えば検知素子などの積層空間に存在する積層部の構成要素は、気密性を有する接着剤によって周囲から遮断されている。周囲との物質交換は生じない。したがって、本素子を侵食環境においても導入することが可能となる。気密性を有する接着剤によって積層空間を真空化することが可能となる。これによって検知すべき熱放射に対する感度が改善される。
【0020】
検知キャリアとカバーとの間および検知キャリアと回路キャリアとの間における接着剤は、順次あるいは同時に形成され得る。それぞれの接着剤は、例えば接着剤など、任意の素材を用いて形成され得る。特に好ましいのは、接着剤と同時に検知素子の電極層と読出回路との間において電気的接触を形成することである。その場合、特別な実施例において接着剤が導電性を有する素材を含んでいる。このことは特に回路キャリアと検知キャリアとの間における接着剤について当てはまる。しかしながら、カバーにおいて検知素子における配線のための構成要素が一体化されている場合、カバーと検知キャリアとの間においても導電性を有する素材を含む接着剤が有利であり得る。
【0021】
接着剤の形成のために予め決められているのが、いわゆる「フリップチップ」技術である。これは、特に半導体マイクロチップやハウジングを有しない集積回路における接触のためにマイクロエレクトロニクスにおいて功を奏した、構造および結合技術(AVT)の領域における取り付け方法である。フリップチップ技術において、その他の配線を必要とすることなく、直接チップがその活性接触面が下向きになるように基板(回路キャリア)に対して取り付けられる。取り付けは、導電性を有する素材からなる、いわゆる「バンプ」によって実行される。これによって極めて短いリード長さが得られる。そのことは、コンパクトな構成を得るために利用される。極めて短いリード長さによって、所望されない、読み出されるべき電気信号を妨害する漏れインダクタンスおよび漏れ容量が最小限に減少される。この影響は、特に接触すべき検知素子の数が比較的小さい場合に有利となる。さらに、フリップチップ技術を用いると複数の電気接続を同時に形成することが可能となるため、膨大な時間的および費用的利点を得ることになる。
【0022】
「フリップチップ」技術を実現することによって接着剤を形成するためには、異なる技術を用いることが可能である。特別な実施例において、接着剤を得るために、接着剤、半田付けおよび/あるいはボンディングのグループから選択される1つの方法を実施する。その場合、接着による結合あるいは共晶結合などが考えられる。半田付けのためには半田(半田球)からなるバンプを互いに結合するキャリアあるいは素子の構成要素のうち一方あるいは両方に付ける。前述の方法が接着よりも有利なのは、接着剤を用いた場合、有機的な構成要素(溶剤、接着剤成分など)のガス放出が生じる可能性があるからである。これは特に積層空間の真空化を鑑みた場合、重要となる。しかしながら接着に立ち戻ることが必要な場合も有利な場合もある。
【0023】
接着の場合、様々な形に立ち戻ることが可能である:非導電性接着剤を用いて接着することが可能である。そのためには対応するキャリアの接触面にバンプが設けられる。これらバンプは、例えばアルミニウムまたは金からなる。その後、キャリア上に接着剤の接着層を貼り付けて該当する対応物が接着層上に設置される。乾燥時、接着剤が収縮して電気接触が形成される。
【0024】
さらに、接着の場合、等方性導電接着剤を用いてもよい。キャリアの接着面に導電性を有する接着剤を塗布する。その後、対応物が自身の接着面において接着点の上に配置される。接着剤は、熱あるいは紫外線照射によって硬化することができ、これにより導電性を有する接着剤を形成する。
【0025】
これに代えて異方性導電接着剤を用いることもできる。異方性導電接着剤は、導電性を有しない接着剤とこれに微量な充填量において含まれる導電性を有する粒子とからなる複合材料である。異方性導電接着剤は、キャリアの接触面に塗布される。充填量が微量であるため、塗布後における導電性を有する粒子は、互いに接続していない。導電性接続が形成されない。対応物を配置する際に、これら粒子がキャリアの接触面と対応物の接触面との間に挟まれてこれら接触面間において導電性接続が形成されるまで非導電性接着剤が押し退けられる。
【0026】
本方法の特別な実施例において、固着の間および/または後に第1の積層空間および/または第2の積層空間が真空化される。例えば、積層部の構成要素間において接着剤を製造する作業が真空下において実施される。接着剤の形成によって各積層空間が真空化される。さらに、先に積層空間を形成した後に真空化を行うことも可能である。ここでも当てはまるのは、積層空間を順次あるいは同時に真空化することが可能ということである。同時に真空化を実施する場合、積層空間を等圧において互いに連結することが可能である。これは、両方の積層空間における圧力が等しいということを意味する。
【0027】
本素子は、単一の検知素子を有することが可能である。しかしながら、本素子を存在センサあるいは特に熱画像カメラとして使用するような場合を鑑みた場合、複数の検知素子が存在することが有利あるいは必要である。したがって、特別な実施例においては、複数の検知素子を備える検知アレイが設けられる。その場合、1つの検知素子はこの検知アレイの1つのピクセルである。検知アレイは、例えば検知素子を列毎および/または行毎に配列したものを特徴とする。行毎あるいは列毎の配列において、検知素子は、一方向において一次元的に配分される。行毎および列毎の配列においては、二次元的な配分となる。検知アレイは、例えば240×320個の個々の素子からなる。これは比較的低い解像度基準QVGAに相当する。さらに、検知素子をランダム且つ平面的に配分することも考えられる。各検知素子について独自の照射窓を設けることが可能である。しかしながら、複数あるいは全ての検知素子について単一の照射窓を有することが好ましい。これによって本素子の製造が簡素化される。
【0028】
更に別の実施例において、積層部はケーシングを有する。積層部は、ケーシング内に配置される。このケーシングは、構成要素を含む積層部を例えば湿気や機械的な破壊などの有害な環境影響から保護するものである。その際に注意すべきなのは、ケーシングによって検知素子の照射が害されないようにするということである。そのために、ケーシングに対して熱放射に対して高い伝達率を有する照射窓を一体化する。
【0029】
ケーシングは、任意の素材からなるハウジングであり得る。このケーシングは、シーリング材からなることが好ましい。そのためケーシングを設けるのに射出成形方法あるいは成形方法のグループからなる1つから選択される方法が実施される。これらの方法は、費用面の観点からは特に有利である。その場合、積層部に対して未架橋あるいは部分架橋した樹脂が塗布される。塗布後、樹脂が熱誘導あるいは紫外線光を照射することによって硬化される。照射窓の一体化のためには例えば樹脂の配置あるいは樹脂の硬化後に除去されるマスクを使用する。これは、例えばスプリングインサートを用いたトランスファー形成によって得られる。さらに、樹脂の塗布および硬化後もケーシングに残る、熱放射に対して高い伝達率を有する素材からなる照射窓を利用することも考えられ得る。
【0030】
保護ハウジングの導電性を有する素材が金属を含むことが好ましい。
【0031】
これによって保護ハウジングが安価な製造コストであっても十分な強度を有することが有利な形で得られる。
【0032】
さらに、積層部が開口部に嵌め込められるように保護ハウジングの開口部が構成されていること、さらには/あるいは保護ハウジングの上面が積層部の上面と同一平面においてぴったり重なるようにが好ましい。
【0033】
これによって積層部が開口部内において包まれた形で配置されるため、本素子の設置高さが有利な形で小さくなる。これによって本素子の設置面積が小さくなる。さらに、開口部を介して積層部に良好な形でアクセス可能であるため、本素子における熱放射の検知の機能性が高くなる。さらに、構造上の必要性から積層部と保護ハウジングとの間において設けられる隙間が有利な形で小さい。これによって積層部が保護ハウジングによって効果的に保護および遮蔽される。
【0034】
保護ハウジングは、保護ハウジングを基板に対して固定するためのベースを有することが好ましい。このようなベースと基板との間の連結は、その連結が通常の強度要件を満たすだけで十分であるような強度のみを必要とすることが好ましい。この連結を気密シール性を有する程の構成にすることは必要ではない。
【0035】
さらに、保護ハウジング内において保護ハウジングと積層部との間において空間が形成されるように保護ハウジングが積層部に対して隙間を開けて配置されることが好ましい。これによって保護ハウジングの内部、よって電磁的に遮蔽された状態において内部空間にさらなる電子的な構成要素や電子的な回路を設けることが可能となる。
【0036】
本発明の別の態様において、本発明は運動センサ、存在センサあるいは熱画像カメラとして用いられる。運動センサについては、単一の検知素子であっても十分であり得る。存在センサの場合、本発明は複数の検知素子を備えることが可能である。熱画像カメラの場合、本発明は、例えば240×320個(QVGA基準)以上の検知素子など、複数の検知素子を備える。このことは、検知素子を簡単且つコンパクトに配線することによって達成することが可能である。
【0037】
要約すれば、本発明には以下の利点が強調されるべきである:
- 熱放射の検知用素子は、コンパクトである。
- 積層部は、電磁的に遮蔽されており、外部から良好な形でアクセス可能である。
- さらに、電子的な構成要素や回路を電磁的に遮蔽して設けることが可能である。
- 保護ハウジングと基板との間に気密シール性を有するような連結も、保護ハウジングの開口部に対してガラス窓を気密シール性を有するような形で挿入することも、さらには保護ハウジングの内部空間を真空化したり不活性ガスで充填したりする必要もないため、本素子の製造が簡単且つ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下において、複数の実施例および付随する図面に基づいて熱放射の検知用素子を紹介する。これら図面は概略的であり、原寸に比例した図示ではない。
【0039】
【図1】横断面から見た積層部を示す。
【図2】図1における断面B−Bに沿ってカバーを上から見た積層部を示す。
【図3】図1における断面A−Aに沿って検知キャリアを上から見た積層部を示す。
【図4】図1における断面A−Aに沿って回路キャリアを上から見た積層部を示す。
【図5】横断面から見た検知キャリア上における検知素子を示す。
【図6】横断面から見た本発明の熱放射の検知用素子を示す。
【図7】横断面から見た従来の熱放射の検知用素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1乃至6において見受けられるように、熱放射の検知用素子は、基板210を有し、その上に積層部10が配置される。この積層部10は、基板210とは反対側に向く積層部上面225を有し、基板210に対してシーリング材20によって固定されている。
【0041】
さらに、本素子1は、保護ハウジング220を有し、その内部に積層部10が収容されている。保護ハウジング220は金属製であるため、積層部10は保護ハウジング220によって外部に対して電磁的に遮蔽されている。
【0042】
保護ハウジング220は、基板210とは反対側に向く上面223を有する。この上面223には開口部221が設けられ、これに対して積層部10が自身の上面225において係止することによって、保護ハウジング220の上面223と積層部10の上面225とが同一平面においてぴったり重なる。さらに、開口部221の周囲輪郭は、積層部10の積層部上面225が保護ハウジング220の上面223に対して小さな隙間をおいて隣接するように構成される。
【0043】
さらに、保護ハウジング220は、上面225とは反対側を向き、基板210に対向する、フランジとして形成されているベース222を備える。このベース222は、例えば半田付けなどの結合材によって基板210に対して固定されている。
【0044】
保護ハウジング220の内部において、積層部10の周りにおいて保護ハウジング220によって電磁的に遮蔽されている内部空間224が設けられている。
【0045】
積層部10は、熱放射を電気信号に変換するための熱検知素子111からなる検知アレイ110を有する検知キャリア11と、電気信号を読み出すための読出回路121を有する回路キャリア12と、検知素子をカバーするための少なくとも1つのカバー13とを備え、検知キャリアとカバーとは、検知キャリアの検知素子とカバーとの間において検知キャリアとカバーとによって区切られた、積層部の第1の積層空間14が形成されるように配置され、回路キャリアと検知キャリアとは、検知キャリアと回路キャリアとの間において回路キャリアと検知キャリアとによって区切られた、少なくとも1つの積層部の第2の積層空間15が形成され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間とが真空化されるように配置される。
【0046】
検知素子は、薄膜構造の焦電性検知素子であって、2つの電極層112とこれら電極層の間において設けられる焦電層113とを有する(図5)。焦電層は、焦電感受性を有する素材としてPZTからなる、約1μmの厚みを有する層である。電極層は、プラチナとクロム・ニッケル合金からなり、層の厚みが約20nmである。
【0047】
読出回路は、ASICの形で回路キャリア上に設けられる読出素子122を有する。図示されない実施例において、この読出素子は回路キャリアに対して一体化されている。
【0048】
検知キャリア、回路キャリアおよびカバーは、それぞれシリコン基板である。検知素子は、第2の積層空間内において回路キャリアの回路キャリア凹部124に対向して配置される。この回路キャリア凹部の領域において、共通の照射窓17が設けられており、これを通って熱放射が検知素子上に到達する。照射は、前面から実施される。図示されない実施変形例において、照射は背面から実施される。そのためにカバーと検知キャリアにおいてそれぞれ適した照射窓が形成されている。
【0049】
カバー14においてカバー凹部131が設けられる。しかしながら、図1において点線にて示されているようにこのカバー凹部を省略することも可能である。
【0050】
検知キャリアとカバーだけではなく、検知キャリアと回路キャリアも気密性を有する接着剤16によって互いに対して固着されている。第1の実施例において、この接着剤は半田によって得られる。各キャリア(シリコン基板)は互いに対して半田付けされている。それに代えて接着剤は接着剤であることも可能である。各キャリアは互いに接着される。
【0051】
回路キャリアと検知キャリアとの間における接着剤により、検知素子のための電気的配線123が得られる。配線または読出回路を介して検知素子の電気信号が読み出しされる。これに代えて配線をフリップチップを用いて構成することも可能である。
【0052】
接着剤を得る間に真空が付与されるため、形成される積層空間には低圧が生じる。積層空間は、この低圧の形成時において真空化する。これに代えて接着剤を形成した後に真空化することも可能である。
【0053】
積層部の形成後、この積層部に対してケーシング20が設けられる。そのために未架橋樹脂が射出成形方法によって積層部上に塗布されてその後架橋される。これに代えて成形方法を実施してもよい。この場合、カバーの照射窓がフリーであるよう、すなわち覆われないようにする。
【0054】
積層部を製造する場合、検知アレイを含む検知キャリア、読出回路を含む回路キャリアおよびカバーが用意されて前述のように互いに対して固着される。その製造は、ウェハ面上で実施される。そのため、シリコンウェハには複数の対応する機能性(検知アレイ、読出回路、カバー凹部)が与えられる。ウェハ表面上に検知キャリア、回路キャリアおよびカバーが設けられる。このように機能性を与えられたシリコンウェハは、前述のように互いに対して固く連結される。複数の個々の積層部を含むウェハ積層部を形成する。連結後、個々の積層部はウェハ積層部をカットすることによって分離され、それぞれにケーシングが設けられる。
【0055】
本素子は、運動センサあるいは存在センサにおいて利用され得る。熱画像カメラにおける利用については、複数の積層部またはそれぞれ1つの積層部を有する複数の素子が設けられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱放射を電気信号に変換するための、少なくとも1つの遮蔽された熱検知素子を備える、熱放射の検知用素子に関する。該素子に加え、その使用についても提示する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱放射の検知用素子300は図7において示されている。この素子300は、基板310と、この基板310上にシーリング材312を介して固定されているセンサ320を有する。さらに、この素子300は、センサ320上を覆うようにして気密シール性を有するボンディング結合333によって基板310に固定されて配される保護ハウジング330を有する。保護ハウジング330は、保護ハウジング330がセンサ320に直接接触しないような寸法を有するため、センサ320と保護ハウジング330との間に内部空間335が形成されている。保護ハウジング330は、センサ320と反対側に向くように設けられた上面332を有する。この上面332には、保護ハウジング330の外部からの光がセンサ320上に当たるように窓開口部334がセンサ320の上部において設けられている。この開口部334にはガラス窓331が気密シール性を有するように嵌め込まれている。
【0003】
保護ハウジング330は、金属製であるため、センサ320は保護ハウジング330によって電磁的に遮断されている。さらに、内部空間335が真空であるか、あるいは不活性ガスまたは水素によって充填されるようにガラス窓331は気密性を有するように窓開口部334が嵌め込まれ、ボンディング結合333は気密性を有するように構成されている。これによってセンサ320は、大気の影響から保護される。しかしながら、この素子300は保護ハウジング330の設置高さによって大きな設置面積を必要とするという欠点がある。さらに、素子300の製造あるいはガラス窓331の窓開口部334への嵌め込みあるいは気密性を有するボンディング結合333の形成が複雑でありコストがかかる。
【0004】
熱放射の検知用素子が、例えば特許文献1(DE10004216A1)において開示されている。この素子は、焦電検知器と称される。検知素子は、焦電気性の検知素子である。2つの電極層と、これら電極層の間に配置された、焦電感受性を有する素材からなる焦電層と、からなる層構造を有する。このような素材は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である。電極は、例えばプラチナあるいは熱放射を吸収するクロム・ニッケル合金である。熱検知素子は、シリコンからなる検知キャリア(シリコンウェハ)と連結されている。検知素子と検知キャリアとの間には、この検知素子と検知キャリアとを互いに電気的且つ熱的に絶縁するための絶縁層が設けられている。この場合、絶縁層は検知素子の表面積に亘って延伸する、真空状の空間を介してこの空間の保護層と、保護層および空間のカバーとを備えている。この保護層は、ポリシリコンからなる。このカバーは、ホウリンケイ酸塩ガラス(BPSG)からなる。検知素子によって生成された電気信号の読出、加工および/または伝達のために、検知キャリアにおいて読出回路が一体化されている。この読出回路は、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)技術によって実現されている。
【0005】
これと比較可能である熱放射の検知用素子は、特許文献2(DE19525071A1)によって公知である。この熱検知素子は、上述と同様の焦電式検知素子である。この検知素子は、多層性の検知キャリア上に配置されている。検知素子は検知キャリアのシリコン層上に自身の電極層のうち1つによって取り付けられている。このシリコン層は、検知キャリアの電気絶縁性膜上に設けられる。この膜は、例えばSi3N4/SiO2/Si3N4の三重層からなる。この膜もまた検知キャリアのシリコン基板上に設けられている。このシリコン基板は、焦電性検知素子の表面積に実質的に相当する表面積を有する照射窓(検知窓)を備える。この照射窓は、シリコン基板の切り欠きである。その際、基板の基材(シリコン)が膜に至るまで除去されている。この照射窓を介して熱放射が検知素子へと到達して分析可能な電気信号を生成させる。この場合、膜は良好な熱放射の伝達性を有することを特徴とする。シリコン層において、検知素子に向かって横方向に変位したところに電気信号用の読出回路が一体化されている。検知キャリアは、さらに読出回路の回路キャリアとしても機能する。
【0006】
これらの公知である素子において、複数の検知素子が設けられることも可能である(検知素子アレイ)。この場合、各検知素子の電気信号は、個別に読み出される。通常、そのために各検知素子の電極層は、ボンドワイヤを介して電気的に接触している。しかしながらこれによって検知素子の配線のために相当な設置面積が必要となり、その結果として検知素子密度(検知キャリアの表断面当たりの検知素子の数)が制限されて比較的低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE10004216A1
【特許文献2】DE19525071A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術に比して設置面積が小さく、簡単且つ安価に製造可能である熱放射の検知用素子を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、熱放射の検知用素子が提示されており、該素子は、基板と、該基板上に取り付けられると共に、導電性素材を含み、基板から離れて対向している上面を有し、上面に開口部が設けられている保護ハウジングと、保護ハウジング内の基板上に実装された積層部とを備え、前記積層部が、熱放射を電気信号に変換する少なくとも1つの熱検知素子を有する少なくとも1つの検知キャリアと、前記電気信号を読み出す少なくとも1つの読出回路を有する少なくとも1つの回路キャリアと、検知素子を被覆する少なくとも1つのカバーとを有し、検知キャリアは、回路キャリアとカバーとの間に配置されており、検知キャリアおよびカバーは、検知キャリアとカバーによって画成される、積層部の少なくとも1つの第1の積層空間が、検知キャリアの検知素子とカバーとの間に存在するよう、互いに配置されており、回路キャリアおよび検知キャリアは、回路キャリアと検知キャリアによって画成される、積層部の少なくとも1つの第2の積層空間が、検知キャリアと回路キャリアとの間に存在するように配置され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間は、真空化され、あるいは真空化することができ、積層部は基板から離れて対向している積層上面を有し、前記積層部の積層上面を、保護ハウジングの外部から積層上面にアクセスできるよう、開口部に嵌合する。本発明において、この素子は、運動センサ、存在センサおよび熱画像カメラなどに使用され得る。
【0010】
積層部は、検知キャリア、回路キャリアおよびカバーからなる、コンパクトであってスペース節約型の「サンドイッチ」構造として実現されている。カバーによって検知素子が有害な環境影響から保護される。このような環境影響とは、例えば埃、湿気あるいは検知素子の構成要素を腐食させるかあるいは検知素子の機能に影響を及ぼすような腐食性化学物質などである。
【0011】
保護ハウジングは、導電性を有する素材からなるため、積層部が保護ハウジングによって外部に対して電磁的に遮蔽される。積層部は、自身のサンドイッチ構造によって有害な環境影響に対して感受性を有しないため、保護ハウジング自体が積層部を埃、湿気あるいは腐食性化学物質などから保護するための構造を有する必要がない。これにより、本発明において保護ハウジングは、単に上面に積層部が係止する開口部を有する。積層部は、開口部に入るだけで開口部を部分的にのみ通過していても、完全に開口部に挿入されていることによって保護ハウジングの上面の外側に対して同一平面上にぴったり重なっていても、あるいは開口部を通って延伸されて保護ハウジングの上面の外側において外側に突出していてもよい。
【0012】
これによって保護ハウジングの設置高さが実質的に積層部の設置高さと同じとなるため、素子の設置高さが有利な形で小さくなる。さらに、積層部が保護ハウジングによって気密性を有するような形で閉鎖される必要がないため、保護ハウジングを簡単に構成することが可能となる。したがって、保護ハウジングには、これを介して保護ハウジングの外から積層部にアクセス可能である開口部が単に設けられるだけで、保護ハウジングの基板への固定の際には、何らかの封止要件を満たす必要がない。
【0013】
分析回路は、例えばCMOS技術を用いて直接回路キャリアにおいて一体化されていてもよい。さらに、回路キャリアが単に検知素子の配線を提供するものであることも考えられる。配線によって検知素子が回路キャリアに設けられた、内部ASIC(特定用途向け集積回路)あるいは外部ASICに対して電気的に連結されている。外部ASICは、ボンディングされていてもよい。外部ASICは、「フリップチップ」技術(下記を参照のこと)によって接触されていることが好ましい。積層空間によって、検知素子が回路キャリアとカバーとから大幅に熱的に分離されていることが確保される。
【0014】
検知すべき熱放射は、1μm以上の波長を有する。波長は、5乃至15μmの範囲内で選択されることが好ましい。熱検知素子は、例えばゼーベック効果に基づいているものであり得る。熱検知素子は、焦電性検知素子であることが好ましい。焦電性検知素子は、冒頭に記載したとおり、焦電感受性を有する素材からなる焦電層と両側に設けられた電極層とからなる。焦電感受性を有する素材とは、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはジルコン酸チタン酸鉛などのセラミックである。さらにポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの強誘電性ポリマーなども考えられる。電極層の電極素材としては、例えばプラチナやプラチナ合金などが使用可能である。さらにクロム・ニッケル電極あるいは導電性を有する酸化物からなる電極も考え得る。検知素子は、例えば辺長が25μm乃至200μmであるような四角形状の表面積を有する。
【0015】
熱放射の検知のために利用される効果に関係なく、検知素子の相当する効果を誘発する、熱感受性を有する各素材によって熱放射の吸収が必要となる。吸収は、熱感受性を有する素材によって直接実施される。さらに、熱放射を検知素子の電極または電極層によって吸収することも可能である。加えて、熱放射を検知素子のごく近傍における吸収体によって吸収し、これによって得られた熱量を滞留あるいは熱伝達によって熱感受性を有する素材に対して供給するようにすることも可能である。吸収体は、エネルギー伝達手段として機能する。この吸収体は、例えば、検知素子上に直接層として設けられる。
【0016】
熱放射の検知用素子における積層部は、熱放射が直接検知素子に到達するように構成されていることが好ましい。そのため、特別な実施例において検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーが、検知素子に対して熱放射を照射するために少なくとも1つの、所定の熱放射伝達率を有する照射窓を備える。照射窓は、カバー、検知キャリアさらに/または回路キャリアに対して一体的に設けられる。検知素子と照射窓とは、検知素子の照射が検知キャリアとは反対に向いた検知素子の前面(前面照射)および/あるいは検知キャリアに対向した検知素子の背面(背面照射)から実施されるように互いに対して配置される。照射窓は、検知素子の方向において所定の伝達率を有する。伝達率は、可能な限り高く、例えば50%以上、特には70%以上で95%に近いものである。
【0017】
検知キャリア、回路キャリアおよびカバーの素材としては、任意の素材を用いることが可能である。例えば元素状ゲルマニウムなどの半導体素材や異なる半導体の組み合わせなどは電気回路や構成要素を集積化することが可能となるため特に適している。特別な実施例において、検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーはシリコンを有する。それぞれ1つのシリコン基板がカバー、回路キャリアおよび検知キャリアとして使用される。CMOS技術によって任意の構造および機能性を基板に一体化させることが可能である。それに加えてシリコンは、熱放射に対して低い吸収係数を有するため、照射窓を極めて容易にシリコン基板に一体化することが可能である:シリコン基板そのものが照明窓を構成する。シリコン基板における対応する機能性を適切に設けることによって、熱放射が妨げられることなく、すなわち遮られることなく検知素子上に到達することが可能となる。
【0018】
伝達率は、照射窓の素材の吸収係数のみに左右されるものではない。照射窓の厚さもまた重要である。照射窓は、検知キャリアあるいは回路キャリアにおける薄くした領域によって形成されることが好ましい。特別な実施例において、検知素子は、回路キャリアにおける回路キャリアの凹部あるいはカバーにおけるカバーの凹部に対向して配置される。回路キャリアの凹部およびカバーの凹部は、それぞれ回路キャリアあるいはカバーの領域において比較的低い厚みを有する。これらの領域において回路キャリアとカバーとが例えば材料除去によって薄くなっている。これらの凹部が回路キャリアあるいはカバーに一体化されており、自身を介して熱放射が検知素子上に到達するための照射窓を形成する。検知素子は、それぞれの凹部に対して隙間を有することが好ましい。カバーの凹部は、検知キャリアとカバーとの間における第1の積層空間の構成部分である。回路キャリアの凹部は、検知キャリアと回路キャリアとの間における第2の積層空間の構成部分である。
【0019】
特別な実施例において、検知キャリアと回路キャリアおよび/または検知キャリアとカバーが接着剤、具体的には気密性を有する接着剤によって互いに固着されている。検知キャリアと回路キャリアとの固着および/または検知キャリアとカバーとの固着のためには接着剤が形成される。接着剤は、真空化が可能である積層空間が形成されるように構成される。例えば検知素子などの積層空間に存在する積層部の構成要素は、気密性を有する接着剤によって周囲から遮断されている。周囲との物質交換は生じない。したがって、本素子を侵食環境においても導入することが可能となる。気密性を有する接着剤によって積層空間を真空化することが可能となる。これによって検知すべき熱放射に対する感度が改善される。
【0020】
検知キャリアとカバーとの間および検知キャリアと回路キャリアとの間における接着剤は、順次あるいは同時に形成され得る。それぞれの接着剤は、例えば接着剤など、任意の素材を用いて形成され得る。特に好ましいのは、接着剤と同時に検知素子の電極層と読出回路との間において電気的接触を形成することである。その場合、特別な実施例において接着剤が導電性を有する素材を含んでいる。このことは特に回路キャリアと検知キャリアとの間における接着剤について当てはまる。しかしながら、カバーにおいて検知素子における配線のための構成要素が一体化されている場合、カバーと検知キャリアとの間においても導電性を有する素材を含む接着剤が有利であり得る。
【0021】
接着剤の形成のために予め決められているのが、いわゆる「フリップチップ」技術である。これは、特に半導体マイクロチップやハウジングを有しない集積回路における接触のためにマイクロエレクトロニクスにおいて功を奏した、構造および結合技術(AVT)の領域における取り付け方法である。フリップチップ技術において、その他の配線を必要とすることなく、直接チップがその活性接触面が下向きになるように基板(回路キャリア)に対して取り付けられる。取り付けは、導電性を有する素材からなる、いわゆる「バンプ」によって実行される。これによって極めて短いリード長さが得られる。そのことは、コンパクトな構成を得るために利用される。極めて短いリード長さによって、所望されない、読み出されるべき電気信号を妨害する漏れインダクタンスおよび漏れ容量が最小限に減少される。この影響は、特に接触すべき検知素子の数が比較的小さい場合に有利となる。さらに、フリップチップ技術を用いると複数の電気接続を同時に形成することが可能となるため、膨大な時間的および費用的利点を得ることになる。
【0022】
「フリップチップ」技術を実現することによって接着剤を形成するためには、異なる技術を用いることが可能である。特別な実施例において、接着剤を得るために、接着剤、半田付けおよび/あるいはボンディングのグループから選択される1つの方法を実施する。その場合、接着による結合あるいは共晶結合などが考えられる。半田付けのためには半田(半田球)からなるバンプを互いに結合するキャリアあるいは素子の構成要素のうち一方あるいは両方に付ける。前述の方法が接着よりも有利なのは、接着剤を用いた場合、有機的な構成要素(溶剤、接着剤成分など)のガス放出が生じる可能性があるからである。これは特に積層空間の真空化を鑑みた場合、重要となる。しかしながら接着に立ち戻ることが必要な場合も有利な場合もある。
【0023】
接着の場合、様々な形に立ち戻ることが可能である:非導電性接着剤を用いて接着することが可能である。そのためには対応するキャリアの接触面にバンプが設けられる。これらバンプは、例えばアルミニウムまたは金からなる。その後、キャリア上に接着剤の接着層を貼り付けて該当する対応物が接着層上に設置される。乾燥時、接着剤が収縮して電気接触が形成される。
【0024】
さらに、接着の場合、等方性導電接着剤を用いてもよい。キャリアの接着面に導電性を有する接着剤を塗布する。その後、対応物が自身の接着面において接着点の上に配置される。接着剤は、熱あるいは紫外線照射によって硬化することができ、これにより導電性を有する接着剤を形成する。
【0025】
これに代えて異方性導電接着剤を用いることもできる。異方性導電接着剤は、導電性を有しない接着剤とこれに微量な充填量において含まれる導電性を有する粒子とからなる複合材料である。異方性導電接着剤は、キャリアの接触面に塗布される。充填量が微量であるため、塗布後における導電性を有する粒子は、互いに接続していない。導電性接続が形成されない。対応物を配置する際に、これら粒子がキャリアの接触面と対応物の接触面との間に挟まれてこれら接触面間において導電性接続が形成されるまで非導電性接着剤が押し退けられる。
【0026】
本方法の特別な実施例において、固着の間および/または後に第1の積層空間および/または第2の積層空間が真空化される。例えば、積層部の構成要素間において接着剤を製造する作業が真空下において実施される。接着剤の形成によって各積層空間が真空化される。さらに、先に積層空間を形成した後に真空化を行うことも可能である。ここでも当てはまるのは、積層空間を順次あるいは同時に真空化することが可能ということである。同時に真空化を実施する場合、積層空間を等圧において互いに連結することが可能である。これは、両方の積層空間における圧力が等しいということを意味する。
【0027】
本素子は、単一の検知素子を有することが可能である。しかしながら、本素子を存在センサあるいは特に熱画像カメラとして使用するような場合を鑑みた場合、複数の検知素子が存在することが有利あるいは必要である。したがって、特別な実施例においては、複数の検知素子を備える検知アレイが設けられる。その場合、1つの検知素子はこの検知アレイの1つのピクセルである。検知アレイは、例えば検知素子を列毎および/または行毎に配列したものを特徴とする。行毎あるいは列毎の配列において、検知素子は、一方向において一次元的に配分される。行毎および列毎の配列においては、二次元的な配分となる。検知アレイは、例えば240×320個の個々の素子からなる。これは比較的低い解像度基準QVGAに相当する。さらに、検知素子をランダム且つ平面的に配分することも考えられる。各検知素子について独自の照射窓を設けることが可能である。しかしながら、複数あるいは全ての検知素子について単一の照射窓を有することが好ましい。これによって本素子の製造が簡素化される。
【0028】
更に別の実施例において、積層部はケーシングを有する。積層部は、ケーシング内に配置される。このケーシングは、構成要素を含む積層部を例えば湿気や機械的な破壊などの有害な環境影響から保護するものである。その際に注意すべきなのは、ケーシングによって検知素子の照射が害されないようにするということである。そのために、ケーシングに対して熱放射に対して高い伝達率を有する照射窓を一体化する。
【0029】
ケーシングは、任意の素材からなるハウジングであり得る。このケーシングは、シーリング材からなることが好ましい。そのためケーシングを設けるのに射出成形方法あるいは成形方法のグループからなる1つから選択される方法が実施される。これらの方法は、費用面の観点からは特に有利である。その場合、積層部に対して未架橋あるいは部分架橋した樹脂が塗布される。塗布後、樹脂が熱誘導あるいは紫外線光を照射することによって硬化される。照射窓の一体化のためには例えば樹脂の配置あるいは樹脂の硬化後に除去されるマスクを使用する。これは、例えばスプリングインサートを用いたトランスファー形成によって得られる。さらに、樹脂の塗布および硬化後もケーシングに残る、熱放射に対して高い伝達率を有する素材からなる照射窓を利用することも考えられ得る。
【0030】
保護ハウジングの導電性を有する素材が金属を含むことが好ましい。
【0031】
これによって保護ハウジングが安価な製造コストであっても十分な強度を有することが有利な形で得られる。
【0032】
さらに、積層部が開口部に嵌め込められるように保護ハウジングの開口部が構成されていること、さらには/あるいは保護ハウジングの上面が積層部の上面と同一平面においてぴったり重なるようにが好ましい。
【0033】
これによって積層部が開口部内において包まれた形で配置されるため、本素子の設置高さが有利な形で小さくなる。これによって本素子の設置面積が小さくなる。さらに、開口部を介して積層部に良好な形でアクセス可能であるため、本素子における熱放射の検知の機能性が高くなる。さらに、構造上の必要性から積層部と保護ハウジングとの間において設けられる隙間が有利な形で小さい。これによって積層部が保護ハウジングによって効果的に保護および遮蔽される。
【0034】
保護ハウジングは、保護ハウジングを基板に対して固定するためのベースを有することが好ましい。このようなベースと基板との間の連結は、その連結が通常の強度要件を満たすだけで十分であるような強度のみを必要とすることが好ましい。この連結を気密シール性を有する程の構成にすることは必要ではない。
【0035】
さらに、保護ハウジング内において保護ハウジングと積層部との間において空間が形成されるように保護ハウジングが積層部に対して隙間を開けて配置されることが好ましい。これによって保護ハウジングの内部、よって電磁的に遮蔽された状態において内部空間にさらなる電子的な構成要素や電子的な回路を設けることが可能となる。
【0036】
本発明の別の態様において、本発明は運動センサ、存在センサあるいは熱画像カメラとして用いられる。運動センサについては、単一の検知素子であっても十分であり得る。存在センサの場合、本発明は複数の検知素子を備えることが可能である。熱画像カメラの場合、本発明は、例えば240×320個(QVGA基準)以上の検知素子など、複数の検知素子を備える。このことは、検知素子を簡単且つコンパクトに配線することによって達成することが可能である。
【0037】
要約すれば、本発明には以下の利点が強調されるべきである:
- 熱放射の検知用素子は、コンパクトである。
- 積層部は、電磁的に遮蔽されており、外部から良好な形でアクセス可能である。
- さらに、電子的な構成要素や回路を電磁的に遮蔽して設けることが可能である。
- 保護ハウジングと基板との間に気密シール性を有するような連結も、保護ハウジングの開口部に対してガラス窓を気密シール性を有するような形で挿入することも、さらには保護ハウジングの内部空間を真空化したり不活性ガスで充填したりする必要もないため、本素子の製造が簡単且つ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下において、複数の実施例および付随する図面に基づいて熱放射の検知用素子を紹介する。これら図面は概略的であり、原寸に比例した図示ではない。
【0039】
【図1】横断面から見た積層部を示す。
【図2】図1における断面B−Bに沿ってカバーを上から見た積層部を示す。
【図3】図1における断面A−Aに沿って検知キャリアを上から見た積層部を示す。
【図4】図1における断面A−Aに沿って回路キャリアを上から見た積層部を示す。
【図5】横断面から見た検知キャリア上における検知素子を示す。
【図6】横断面から見た本発明の熱放射の検知用素子を示す。
【図7】横断面から見た従来の熱放射の検知用素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1乃至6において見受けられるように、熱放射の検知用素子は、基板210を有し、その上に積層部10が配置される。この積層部10は、基板210とは反対側に向く積層部上面225を有し、基板210に対してシーリング材20によって固定されている。
【0041】
さらに、本素子1は、保護ハウジング220を有し、その内部に積層部10が収容されている。保護ハウジング220は金属製であるため、積層部10は保護ハウジング220によって外部に対して電磁的に遮蔽されている。
【0042】
保護ハウジング220は、基板210とは反対側に向く上面223を有する。この上面223には開口部221が設けられ、これに対して積層部10が自身の上面225において係止することによって、保護ハウジング220の上面223と積層部10の上面225とが同一平面においてぴったり重なる。さらに、開口部221の周囲輪郭は、積層部10の積層部上面225が保護ハウジング220の上面223に対して小さな隙間をおいて隣接するように構成される。
【0043】
さらに、保護ハウジング220は、上面225とは反対側を向き、基板210に対向する、フランジとして形成されているベース222を備える。このベース222は、例えば半田付けなどの結合材によって基板210に対して固定されている。
【0044】
保護ハウジング220の内部において、積層部10の周りにおいて保護ハウジング220によって電磁的に遮蔽されている内部空間224が設けられている。
【0045】
積層部10は、熱放射を電気信号に変換するための熱検知素子111からなる検知アレイ110を有する検知キャリア11と、電気信号を読み出すための読出回路121を有する回路キャリア12と、検知素子をカバーするための少なくとも1つのカバー13とを備え、検知キャリアとカバーとは、検知キャリアの検知素子とカバーとの間において検知キャリアとカバーとによって区切られた、積層部の第1の積層空間14が形成されるように配置され、回路キャリアと検知キャリアとは、検知キャリアと回路キャリアとの間において回路キャリアと検知キャリアとによって区切られた、少なくとも1つの積層部の第2の積層空間15が形成され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間とが真空化されるように配置される。
【0046】
検知素子は、薄膜構造の焦電性検知素子であって、2つの電極層112とこれら電極層の間において設けられる焦電層113とを有する(図5)。焦電層は、焦電感受性を有する素材としてPZTからなる、約1μmの厚みを有する層である。電極層は、プラチナとクロム・ニッケル合金からなり、層の厚みが約20nmである。
【0047】
読出回路は、ASICの形で回路キャリア上に設けられる読出素子122を有する。図示されない実施例において、この読出素子は回路キャリアに対して一体化されている。
【0048】
検知キャリア、回路キャリアおよびカバーは、それぞれシリコン基板である。検知素子は、第2の積層空間内において回路キャリアの回路キャリア凹部124に対向して配置される。この回路キャリア凹部の領域において、共通の照射窓17が設けられており、これを通って熱放射が検知素子上に到達する。照射は、前面から実施される。図示されない実施変形例において、照射は背面から実施される。そのためにカバーと検知キャリアにおいてそれぞれ適した照射窓が形成されている。
【0049】
カバー14においてカバー凹部131が設けられる。しかしながら、図1において点線にて示されているようにこのカバー凹部を省略することも可能である。
【0050】
検知キャリアとカバーだけではなく、検知キャリアと回路キャリアも気密性を有する接着剤16によって互いに対して固着されている。第1の実施例において、この接着剤は半田によって得られる。各キャリア(シリコン基板)は互いに対して半田付けされている。それに代えて接着剤は接着剤であることも可能である。各キャリアは互いに接着される。
【0051】
回路キャリアと検知キャリアとの間における接着剤により、検知素子のための電気的配線123が得られる。配線または読出回路を介して検知素子の電気信号が読み出しされる。これに代えて配線をフリップチップを用いて構成することも可能である。
【0052】
接着剤を得る間に真空が付与されるため、形成される積層空間には低圧が生じる。積層空間は、この低圧の形成時において真空化する。これに代えて接着剤を形成した後に真空化することも可能である。
【0053】
積層部の形成後、この積層部に対してケーシング20が設けられる。そのために未架橋樹脂が射出成形方法によって積層部上に塗布されてその後架橋される。これに代えて成形方法を実施してもよい。この場合、カバーの照射窓がフリーであるよう、すなわち覆われないようにする。
【0054】
積層部を製造する場合、検知アレイを含む検知キャリア、読出回路を含む回路キャリアおよびカバーが用意されて前述のように互いに対して固着される。その製造は、ウェハ面上で実施される。そのため、シリコンウェハには複数の対応する機能性(検知アレイ、読出回路、カバー凹部)が与えられる。ウェハ表面上に検知キャリア、回路キャリアおよびカバーが設けられる。このように機能性を与えられたシリコンウェハは、前述のように互いに対して固く連結される。複数の個々の積層部を含むウェハ積層部を形成する。連結後、個々の積層部はウェハ積層部をカットすることによって分離され、それぞれにケーシングが設けられる。
【0055】
本素子は、運動センサあるいは存在センサにおいて利用され得る。熱画像カメラにおける利用については、複数の積層部またはそれぞれ1つの積層部を有する複数の素子が設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱放射の検知用素子(1)であって、基板(210)と、基板に取り付けられると共に、導電性材料を含み、基板から離れて対向している上面(223)を有し、上面(223)に開口部(221)が設けられている保護ハウジング(220)と、保護ハウジング内の基板上に実装された積層部(10)とを備え、前記積層部(10)が、熱放射を電気信号に変換する少なくとも1つの熱検知素子(111)を有する少なくとも1つの検知キャリア(11)と、前記電気信号を読み出す少なくとも1つの読出回路(121、122)を有する少なくとも1つの回路キャリア(12)と、検知素子を被覆する少なくとも1つのカバー(13)とを有し、検知キャリアは、回路キャリアとカバーとの間に配置されており、検知キャリアおよびカバーは、検知キャリアとカバーによって画成される、積層部の少なくとも1つの第1の積層空間(14)が、検知キャリアの検知素子とカバーとの間に存在するよう、互いに配置されており、回路キャリアおよび検知キャリアは、回路キャリアと検知キャリアによって画成される、積層部の少なくとも1つの第2の積層空間(15)が、検知キャリアと回路キャリアとの間に存在するように配置され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間は、真空化され、あるいは真空化することができ、積層部は基板から離れて対向している積層上面(225)を有し、前記積層部の積層上面を、保護ハウジングの外部から積層上面にアクセスできるよう、開口部に嵌合した、素子。
【請求項2】
検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーは、検知素子の熱放射に対する曝露のために熱放射に適した所定の伝達率を有する少なくとも1つの照射窓(17)を有する、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーは、シリコンを含む、請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
前記検知素子は、前記回路キャリアの前記回路キャリア凹部(124)に対向して、または前記カバーの前記カバー凹部(131)に対向して配置される、請求項1乃至3のいずれかに記載の素子。
【請求項5】
前記検知キャリアと前記回路キャリアおよび/または前記検知キャリアと前記カバーは、接着剤(16)、具体的には気密性を有する接着剤によって互いに固着されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の素子。
【請求項6】
前記接着剤は、導電性を有する素材を含む、請求項5に記載の素子。
【請求項7】
複数の検知素子を有する少なくとも1つの検知アレイ(110)が設けられた、請求項1乃至6のいずれかに記載の素子。
【請求項8】
前記積層部は、ケーシング(20)を備え、このケーシングを介して積層部が基板に対して固定されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の素子。
【請求項9】
前記ケーシングは、シーリング材を含む、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
前記保護ハウジングにおける電導性を有する素材は金属を含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の素子。
【請求項11】
開口部は、積層部がこの開口部に嵌め込まれるように構成されている、請求項1乃至10のいずれかに記載の素子。
【請求項12】
保護ハウジングは、自身の上面が積層部の上面に対して同一平面においてぴったり重なるように構成される、請求項1乃至11のいずれかに記載の素子。
【請求項13】
保護ハウジングは、ベース(222)を有し、このベースを介して保護ハウジングが基板に対して固定される、請求項1乃至12のいずれかに記載の素子。
【請求項14】
保護ハウジングは、前記保護ハウジングの内部において前記保護ハウジングと前記積層部との間に空間(224)が形成されるように、前記積層部に対して隙間をおいて配置される、請求項1乃至13のいずれかに記載の素子。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の素子の、運動センサ、存在センサおよび/または熱画像カメラとしての使用。
【請求項1】
熱放射の検知用素子(1)であって、基板(210)と、基板に取り付けられると共に、導電性材料を含み、基板から離れて対向している上面(223)を有し、上面(223)に開口部(221)が設けられている保護ハウジング(220)と、保護ハウジング内の基板上に実装された積層部(10)とを備え、前記積層部(10)が、熱放射を電気信号に変換する少なくとも1つの熱検知素子(111)を有する少なくとも1つの検知キャリア(11)と、前記電気信号を読み出す少なくとも1つの読出回路(121、122)を有する少なくとも1つの回路キャリア(12)と、検知素子を被覆する少なくとも1つのカバー(13)とを有し、検知キャリアは、回路キャリアとカバーとの間に配置されており、検知キャリアおよびカバーは、検知キャリアとカバーによって画成される、積層部の少なくとも1つの第1の積層空間(14)が、検知キャリアの検知素子とカバーとの間に存在するよう、互いに配置されており、回路キャリアおよび検知キャリアは、回路キャリアと検知キャリアによって画成される、積層部の少なくとも1つの第2の積層空間(15)が、検知キャリアと回路キャリアとの間に存在するように配置され、さらに第1の積層空間および/または第2の積層空間は、真空化され、あるいは真空化することができ、積層部は基板から離れて対向している積層上面(225)を有し、前記積層部の積層上面を、保護ハウジングの外部から積層上面にアクセスできるよう、開口部に嵌合した、素子。
【請求項2】
検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーは、検知素子の熱放射に対する曝露のために熱放射に適した所定の伝達率を有する少なくとも1つの照射窓(17)を有する、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
検知キャリア、回路キャリアおよび/またはカバーは、シリコンを含む、請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
前記検知素子は、前記回路キャリアの前記回路キャリア凹部(124)に対向して、または前記カバーの前記カバー凹部(131)に対向して配置される、請求項1乃至3のいずれかに記載の素子。
【請求項5】
前記検知キャリアと前記回路キャリアおよび/または前記検知キャリアと前記カバーは、接着剤(16)、具体的には気密性を有する接着剤によって互いに固着されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の素子。
【請求項6】
前記接着剤は、導電性を有する素材を含む、請求項5に記載の素子。
【請求項7】
複数の検知素子を有する少なくとも1つの検知アレイ(110)が設けられた、請求項1乃至6のいずれかに記載の素子。
【請求項8】
前記積層部は、ケーシング(20)を備え、このケーシングを介して積層部が基板に対して固定されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の素子。
【請求項9】
前記ケーシングは、シーリング材を含む、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
前記保護ハウジングにおける電導性を有する素材は金属を含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の素子。
【請求項11】
開口部は、積層部がこの開口部に嵌め込まれるように構成されている、請求項1乃至10のいずれかに記載の素子。
【請求項12】
保護ハウジングは、自身の上面が積層部の上面に対して同一平面においてぴったり重なるように構成される、請求項1乃至11のいずれかに記載の素子。
【請求項13】
保護ハウジングは、ベース(222)を有し、このベースを介して保護ハウジングが基板に対して固定される、請求項1乃至12のいずれかに記載の素子。
【請求項14】
保護ハウジングは、前記保護ハウジングの内部において前記保護ハウジングと前記積層部との間に空間(224)が形成されるように、前記積層部に対して隙間をおいて配置される、請求項1乃至13のいずれかに記載の素子。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の素子の、運動センサ、存在センサおよび/または熱画像カメラとしての使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−511264(P2011−511264A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537261(P2010−537261)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006289
【国際公開番号】WO2009/077016
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(509328283)
【氏名又は名称原語表記】PYREOS LTD.
【住所又は居所原語表記】West Mains Road EH9 3JF,Edinburgh United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006289
【国際公開番号】WO2009/077016
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(509328283)
【氏名又は名称原語表記】PYREOS LTD.
【住所又は居所原語表記】West Mains Road EH9 3JF,Edinburgh United Kingdom
【Fターム(参考)】
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