説明

遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法

【課題】紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲の光に対して優れた応答性を有し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、強い酸化作用を発揮することができる遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法は、反応温度100℃〜220℃、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中でチタン化合物に2〜48時間水熱処理を施すことにより酸化チタンを生成させる酸化チタン生成工程、及び生成した酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物の担持を行う遷移金属化合物担持工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、高い触媒活性を発揮することができる遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応とは、光触媒能を有する固体化合物に紫外線を照射すると励起電子と電子が出たあとの穴(正孔:ホール)が生成し、該励起電子が還元作用を、該ホールが強い酸化作用を有し、これらにより反応物を酸化、或いは還元する反応である。代表的な光触媒能を有する固体化合物としては酸化チタンが知られている。酸化チタンは紫外線を吸収すると、強い酸化作用を発揮することができ、例えば、大気浄化、水質浄化、汚染防止、脱臭、抗菌、院内感染防止、曇り防止等幅広い用途に応用されている。
【0003】
しかしながら、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光源に含まれる紫外線量は4%程度と少なく、大部分が可視光線と赤外線で構成されていることから、このような光源下では、酸化チタンの光触媒能を十分発揮させることが困難であった。
【0004】
その解決方法としては、酸化チタンに特定の金属を担持することにより、バンドギャップを小さくし、可視光応答性を付与する方法が挙げられる(特許文献1参照)。しかし、未だ、生活空間における光の下で十分に満足のできる光触媒能を発揮できる酸化チタンを得ることができていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−154824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲の光に対して優れた応答性を有し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、強い酸化作用を発揮することができる遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、チタン化合物に、特定の温度、圧力下で特定の時間水熱処理を施して得られる酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物担持工程に付すと、安定的、且つ効率よく遷移金属化合物を酸化チタン表面に担持することができ、単位容積当たりの光触媒能に優れる遷移金属化合物担持酸化チタンが得られることを見出した。
【0008】
更に、チタン化合物に上記水熱処理を施して得られる湿状態の酸化チタンに、水洗及び/又は中和処理を施すと、酸化チタンに含有する不純物を容易に除去することができ、水洗及び/又は中和処理を経て得られる精製された酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物担持工程に付すと、より一層単位容積当たりの光触媒能に優れる遷移金属化合物担持酸化チタンが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、反応温度100℃〜220℃、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中でチタン化合物に2〜48時間水熱処理を施すことにより酸化チタンを生成させる酸化チタン生成工程、及び生成した酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物の担持を行う遷移金属化合物担持工程を有する遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法を提供する。
【0010】
前記遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法は、酸化チタン生成工程を経て得られた湿状態の酸化チタンに対して、水洗及び/又は塩基による中和処理を施す工程を有することが好ましく、酸化チタン水分散液のpHが1〜7となるまで、水洗及び/又は塩基による中和処理を行うことが好ましい。
【0011】
中和処理に使用する塩基としては、アンモニアが好ましい。
【0012】
遷移金属化合物としては、三価の鉄化合物が好ましい。
【0013】
遷移金属化合物を、酸化チタンの酸化反応面に選択的に担持することが好ましく、励起光照射下で、酸化チタンに遷移金属化合物を担持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法によれば、酸化チタン生成工程と遷移金属化合物担持工程との間に、乾燥固化する工程を設けないため作業性に優れ、且つ経済的であり、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲の光に対して優れた応答性を有し、光を照射することにより極めて強い酸化作用を発揮することができる遷移金属化合物担持酸化チタンを効率よく得ることができる。本発明に係る遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法により得られた遷移金属化合物担持酸化チタンは、光触媒として使用すると、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、有機物質を効率よく酸化することができるため、大気の浄化、脱臭、浄水、抗菌、防汚等の目的に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法は、反応温度100℃〜220℃、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中でチタン化合物に2〜48時間水熱処理を施すことにより酸化チタンを生成させる酸化チタン生成工程、及び生成した酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物の担持を行う遷移金属化合物担持工程を有することを特徴とする。
【0016】
[酸化チタン生成工程]
本発明の酸化チタン生成工程は、反応温度100℃〜220℃、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中でチタン化合物に2〜48時間水熱処理を施すことにより酸化チタンを得る工程である。
【0017】
(チタン化合物)
本発明におけるチタン化合物としては、例えば、3価のチタン化合物、4価のチタン化合物等を挙げることができる。
【0018】
3価のチタン化合物としては、例えば、三塩化チタンや三臭化チタンなどのトリハロゲン化チタン等を挙げることができる。
【0019】
4価のチタン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
Ti(OR)t4-t (1)
(式中、Rは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。tは0〜3の整数を示す)
【0020】
Rにおける炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等のC1-4脂肪族炭化水素基等を挙げることができる。
【0021】
Xにおけるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0022】
このような4価のチタン化合物としては、例えば、TiCl4、TiBr4、TiI4等のテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(OC49)Br3等のトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2、Ti(OC492Cl2、Ti(OC252Br2等のジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH33Cl、Ti(OC253Cl、Ti(OC493Cl、Ti(OC253Br等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン等を挙げることができる。
【0023】
本発明におけるチタン化合物としては、なかでも、より強い酸化作用を発揮することができる点で、4価のチタン化合物[なかでも、安価、且つ、入手が容易な点で、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタン(TiCl4)が好ましい]が好ましい。
【0024】
(水性媒体)
水熱処理の際に用いる水性媒体としては、例えば、水、又は水と水溶性有機溶媒との混合液等を挙げることができる。前記水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール;エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;アセトン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;酢酸等のカルボン酸等を挙げることができる。水と水溶性有機溶媒との混合比率は、前者/後者(重量比)=10/90〜99.9/0.1、好ましくは50/50〜99/1程度である。
【0025】
本発明においては、なかでも水溶性有機溶媒の回収作業が不要な点で水を使用することが好ましい。
【0026】
また、水性媒体にはハロゲン化物(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム等のアルカリ金属ハロゲン化物等)を添加してもよい。しかし、本発明においては、特にハロゲン化物を添加しなくとも、結晶化度が高く、粒子径の揃った酸化チタンを得ることができる。
【0027】
水性媒体中のチタン化合物濃度(チタン換算)としては、1.5〜17.0重量%(好ましくは2.5〜15.0重量%、特に好ましくは2.5〜8.0重量%)程度が好ましい。水性媒体中のチタン化合物濃度(チタン換算)が上記範囲を上回ると、例えば塩素等が副生することにより反応器が腐食し易くなる場合がある。一方、水性媒体中のチタン化合物濃度(チタン換算)が上記範囲を下回ると、反応により得られる酸化チタンに結晶型の異なるものが混在し、結晶型の均一性が低下する傾向がある。
【0028】
水熱処理時の反応温度は100℃〜220℃(好ましくは110℃〜210℃、特に好ましくは110℃〜200℃)である。水熱処理時の反応温度が上記範囲を上回ると、例えば塩素等が副生することにより反応器が腐食し易くなる場合がある。一方、水熱処理時の反応温度が上記範囲を下回ると結晶型の均一性が低下する。
【0029】
水熱処理は反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下(すなわち、密閉系)で行われる。
【0030】
また、水熱処理を施す時間は2〜48時間、好ましくは2〜15時間、特に好ましくは5〜15時間である。水熱処理を施す時間が長すぎると生産性が低下する傾向がある。一方、水熱処理を施す時間が短すぎると結晶型の均一性が低下する傾向がある。
【0031】
水熱処理は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方法により行うことができ、例えば、オートクレーブ等の密閉系反応容器を使用して、反応温度、反応圧力、反応時間、及び必要に応じて水性媒体中のチタン化合物濃度(チタン換算)を上記範囲に調整することにより行うことができる。
【0032】
酸化チタン生成工程により得られる酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンが好ましく、より好ましくはロッド状ルチル型酸化チタン、特に好ましくは(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン及び/又は(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタンである。また、前記酸化チタンの比表面積としては、例えば10〜200m2/g、好ましくは10〜100m2/gである。酸化チタンの比表面積が上記範囲を下回ると、反応物質の吸着能力が低下して光触媒能が低下する傾向があり、一方、酸化チタンの比表面積が上記範囲を上回ると、励起電子とホールの分離性が低下し、励起電子とホールとの再結合や逆反応の進行により光触媒能が低下する傾向がある。
【0033】
[遷移金属化合物担持工程]
本発明の遷移金属化合物担持工程は、上記工程を経て生成した酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物の担持を行う工程である。水分の蒸発には多くのエネルギーを要するところ、本発明では蒸発・乾燥工程を省くため省エネである。その上、乾燥固化すると酸化チタンが凝集するため、一旦凝集した酸化チタンを粉砕する工程に付し、その後に遷移金属化合物担持工程に付す必要があるが、本発明では、乾燥固化することなく、湿状態のまま、遷移金属化合物担持工程に付すため、酸化チタンが高い分散性を維持することができ、粉砕工程を設ける必要がなく、作業性に優れる。その上、酸化チタンが凝集することなく、その比表面積が極めて広いので、遷移金属化合物の担持をより安定的、且つ、効率よく行うことができ、遷移金属化合物の担持量を向上させることができる。遷移金属化合物は、例えば、遷移金属イオン、遷移金属単体、遷移金属塩、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物又は遷移金属錯体の状態で担持される。
【0034】
遷移金属化合物としては、可視光領域に吸収スペクトルを有し、可視光照射により励起状態となり伝導帯に電子を注入することができるものが好ましく、例えば、周期表第3〜第11族元素化合物、なかでも周期表第8〜第11族元素化合物が好ましく、特に、三価の鉄化合物(Fe3+)が好ましい。
【0035】
遷移金属化合物の担持量としては、例えば、0ppmを超え、5000ppm以下(なかでも10〜5000ppm程度、好ましくは20〜4000ppm、より好ましくは50〜4000ppm、特に好ましくは70〜3000ppm、最も好ましくは100〜2000ppm)である。遷移金属化合物の担持量が上記範囲を上回ると、励起電子が有効に作用せず、光触媒能が低下する傾向があり、一方、遷移金属化合物の担持量が少なすぎると、可視光応答性が低下する傾向がある。
【0036】
酸化チタンへの遷移金属化合物の担持は、例えば、酸化チタンに遷移金属化合物を含浸する含浸法により行うことができる。具体的には、上記酸化チタン生成工程を経て得られた酸化チタンの水分散液中に、撹拌しながら、遷移金属化合物を添加することにより行うことができ、例えば、遷移金属化合物として三価の鉄化合物(Fe3+)を使用する場合は、例えば、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等を添加することにより行うことができる。
【0037】
遷移金属化合物の添加量としては、例えば、酸化チタンに対して0.01〜10.0重量%程度、好ましくは0.05〜5.0重量%である。遷移金属化合物の添加量が上記範囲を下回ると、酸化チタン表面への遷移金属化合物の担持量が低下し、光触媒活性が低下する傾向があり、一方、遷移金属化合物の添加量が上記範囲を上回ると、注入電子の逆電子移動等により励起電子が有効に作用せず、光触媒活性が低下する傾向がある。含浸時間としては、例えば1分から48時間程度、好ましくは5分から24時間である。
【0038】
遷移金属化合物の担持は、酸化チタンの2面以上の露出結晶面のうち、全ての面でなく特定の面(例えば、特定の1面又は2面等)に選択的に行われることが好ましい。遷移金属化合物を特定の面に選択的に担持することにより、酸化反応と還元反応の反応場の分離性を高め、励起電子とホールとの再結合を抑制し、逆反応の進行を抑制して、光触媒活性を飛躍的に向上させることができるからである。
【0039】
本発明において、「遷移金属化合物を特定の面に選択的に担持」とは、露出結晶面を有する酸化チタンに担持する遷移金属化合物の50%を超える量(好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)が2面以上の露出結晶面のうち、全ての面でなく特定の面(例えば、特定の1面又は2面等)に担持されていることをいう。尚、面選択率の上限は100%である。面選択性は、透過型電子顕微鏡(TEM)やエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を使用し、遷移金属化合物由来のシグナルを確認することで判定できる。
【0040】
そして、本発明においては、酸化チタンに遷移金属化合物を含浸する際に励起光を照射することが、大掛かりな設備などを要することなく容易に、且つ効率よく、2面以上の露出結晶面のうち、特定の面に選択的に遷移金属化合物を担持することができる点で好ましい。励起光を照射すると、酸化チタンの価電子帯の電子が伝導帯に励起し、価電子帯にホール、伝導帯に励起電子が生成し、これらは粒子表面へ拡散し、各露出結晶面の特性に従って励起電子とホールとが分離されて酸化反応面と還元反応面とを形成する。この状態で遷移金属化合物として、例えば三価の鉄化合物の含浸を行うと、酸化反応面では三価の鉄化合物(Fe3+)が吸着するが、還元反応面では三価の鉄化合物(Fe3+)は二価の鉄化合物(Fe2+)に還元され、二価の鉄化合物(Fe2+)は吸着しにくい特性を有するため、吸着せずに溶液中に溶出する。結果として酸化反応面に選択的に鉄化合物(Fe3+)が担持された鉄担持酸化チタンを得ることができる。
【0041】
励起光の照射方法としては、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光を照射することができればよく、例えば、紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射手段としては、例えば、中・高圧水銀灯、UVレーザー、UV−LED、ブラックライト等の紫外線を効率よく発生させる光源を有する紫外線露光装置等を使用することができる。励起光の照射量としては、例えば0.1〜300mW/cm2程度、好ましくは0.5〜100mW/cm2である。励起光の照射時間としては、例えば1分から72時間程度、好ましくは30分から48時間である。
【0042】
さらに、本発明においては、含浸の際に犠牲剤を添加することが好ましい。犠牲剤を添加することにより、酸化チタンの2面以上の露出結晶面のうち、全ての面でなく特定の面に高い選択率で遷移金属化合物を担持させることができる。犠牲剤としては、それ自体が電子を放出しやすい有機化合物を使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸等のカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン等を挙げることができる。
【0043】
犠牲剤の添加量としては、適宜調整することができ、例えば、酸化チタン水分散液の0.5〜20.0重量%程度、好ましくは1.0〜5.0重量%である。犠牲剤は過剰量を使用してもよい。
【0044】
遷移金属化合物担持工程を経て得られた遷移金属化合物担持酸化チタンは、周知慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等や、これらを組み合わせた方法により精製することができる。
【0045】
本発明においては、遷移金属化合物担持工程を経て得られた遷移金属化合物担持酸化チタンを、遷移金属化合物担持酸化チタン水分散液の電気伝導度が500μS/cm以下(好ましくは、10〜400μS/cm、特に好ましくは、20〜300μS/cm)となるまで繰り返し水洗することが好ましい。遷移金属化合物担持酸化チタン水分散液の電気伝導度が上記範囲となるまで水洗することにより、遷移金属化合物担持酸化チタンに含まれる不純物[例えば、酸化チタンに含有する未反応原料(チタン化合物)、遷移金属化合物(例えば、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄等(III)の3価の鉄化合物等)、反応中間体(例えば、2価の鉄化合物等)]を分離・除去することができ、更に一層、単位容積当たりの光触媒能を向上させることができる。
【0046】
上記水洗に使用する水としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等を挙げることができる。
【0047】
水洗処理方法としては、例えば、水に分散−水洗−遠心分離を、遠心分離後の上澄み液の電気伝導度が上記範囲となるまで繰り返し行ってもよく、濾過膜を使用し濾過液(若しくは透過液)の電気伝導度が上記範囲になるまで繰り返し膜濾過してもよい。膜濾過には、全量ろ過方式とクロスフロー方式(濾過膜面に平行に被処理水を流し、流れの側方で濾過する方式)が含まれる。
【0048】
遷移金属化合物担持酸化チタンを水洗した後は、乾燥処理等に付すことにより、優れた純度を有し、極めて高い光触媒能を発揮することができる遷移金属化合物担持酸化チタンを得ることができる。
【0049】
[精製工程]
本発明においては、上記遷移金属化合物担持工程前に、酸化チタン生成工程を経て得られた湿状態の酸化チタンに対して、水洗及び/又は塩基による中和処理を施す工程(精製工程)を設けることが好ましく、前記精製工程において、酸化チタン水分散液のpHが1〜7となるまで、水洗及び/又は塩基による中和処理を施すことが好ましい。水洗及び/又は塩基による中和処理を施すことにより、酸化チタンに含有する不純物を除去することができ、得られる遷移金属化合物担持酸化チタンの純度を向上し、単位容積当たりの光触媒能を著しく向上することができる。
【0050】
上記不純物としては、例えば、酸化チタンに含有する未反応原料(チタン化合物)等が挙げられる。酸化チタン生成工程で得られた酸化チタンを上記水洗及び/又は塩基による中和処理に付すと、不純物を洗い流し、及び/又は、不純物を沈殿させて酸化チタンから分離・除去し、酸化チタン中の不純物の含有量を、例えば、10ppm〜3000ppm程度(好ましくは10ppm〜2000ppm程度)にまで低減することができる。それにより、酸化チタンの純度を向上させることができ、遷移金属化合物の酸化チタン表面への接触の機会を増加させることにより、酸化チタン表面に遷移金属化合物が担持し易い状態を形成することができ、極めて優れた可視光応答性及び単位容積当たりの光触媒能を有する遷移金属化合物担持酸化チタンを効率よく製造することができる。
【0051】
上記水洗に使用する水としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等を挙げることができる。水洗は、酸化チタン水分散液のpHが1〜7(好ましくは2〜7、特に好ましくは3〜7、最も好ましくは3〜5)となるまで繰り返すことが好ましい。酸化チタン水分散液のpHが上記範囲を外れる場合は、不純物の除去処理が不十分である場合がある。
【0052】
水洗処理方法としては、例えば、水に分散−水洗−遠心分離を、遠心分離後の上澄み液のpHが上記範囲となるまで繰り返し行ってもよく、濾過膜を使用し濾過液(若しくは透過液)のpHが上記範囲になるまで繰り返し膜濾過してもよい。膜濾過には、全量ろ過方式とクロスフロー方式(濾過膜面に平行に被処理水を流し、流れの側方で濾過する方式)が含まれる。
【0053】
濾過膜としては、例えば、孔サイズが1〜20nm(好ましくは、1〜10nm)であり、分子量1000〜300000の物質、好ましくは、分子量1000〜50000(分子サイズとして1〜10nm)の物質を分離対象とする限外濾過膜を使用することが好ましい。
【0054】
また、濾過膜の膜形状としては、例えば、中空糸型濾過膜、チューブラー膜、スパイラル膜、平膜等の何れであっても良いが、逆洗浄が比較的容易に行える点から、中空糸型濾過膜、又はチューブラー膜を使用することが好ましい。
【0055】
濾過膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セラミックなどの一般的な材質を特に制限されることなく使用することができる。本発明においては、なかでも、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミドが好ましい。
【0056】
濾過圧力は、例えば0.001〜5.0MPa程度であり、好ましくは0.005〜3MPa、特に好ましくは0.01〜2.0MPaである。
【0057】
また、膜濾過する場合、濾過膜面への付着物質の堆積を防止して濾過膜への負担を軽減し、長期間膜濾過運転を行うため、濾過膜に対し洗浄水により間欠的な逆洗浄を施すことが好ましい。逆洗浄は圧力及び流速を制御しつつ予め定められた周期で行うことが好ましい。
【0058】
中和処理に使用する塩基としては、例えば、ヒドロキシルアミン、アンモニアやその塩、第1級から第4級のアミン類やその塩、水酸化バリウム等の金属水酸化物、ナトリウムメトキサイド、カリウムメトキサイド等の金属アルコキサイド、リチウムアンモニア溶液、塩基性イオン交換樹脂、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類、リン酸水素2ナトリウム等のリン酸塩類、酢酸ナトリウム等の酢酸塩類等の弱塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、弱塩基を使用することが好ましく、特に、アンモニア、アンモニア水等が、工業的に入手し易く、pHの調整が容易な点で好ましい。
【0059】
塩基は、酸化チタンに含まれる不純物を酸化チタンから分離・除去するのに十分な量を添加することが好ましく、例えば、酸化チタン水分散液のpHが、1〜7程度(好ましくは2〜7、特に好ましくは3〜7、最も好ましくは3〜5)となるまで添加することが好ましい。酸化チタン水分散液のpHが上記範囲を外れる場合は、不純物の除去処理が不十分となる場合がある。
【0060】
上記水洗、及び塩基による中和処理は一方のみを行ってもよく、両方行ってもよい。水洗と塩基による中和処理とを両方行う場合、水洗−塩基による中和処理の順で行ってもよく、塩基による中和処理−水洗の順で行ってもよい。上記水洗、及び塩基による中和処理を両方行った後の酸化チタン水分散液のpHとしては、例えば、1〜7程度(好ましくは2〜7、特に好ましくは3〜7、最も好ましくは3〜5)が好ましい。
【0061】
本発明に係る遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法により得られる遷移金属化合物担持酸化チタンは、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲の光に対し優れた応答性を有す。光触媒能は、例えば、気相にてアセトアルデヒドを酸化し、生成するCO2量(ppm)を測定することにより評価することができ(アセトアルデヒド酸化法)、100ppm以上、好ましくは400ppm以上、特に好ましくは440ppm以上、最も好ましくは450ppm以上である。また、気相にてメタノールを酸化した際に生成するCO2量(ppm)を測定することによっても評価することができ(メタノール酸化法)、例えば300ppm以上、好ましくは360ppm以上、さらに好ましくは600ppm以上、特に好ましくは750ppm以上である。
【0062】
本発明に係る遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法により得られる遷移金属化合物担持酸化チタンは、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することが可能である。そのため、抗菌防カビ、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚等さまざまに応用することができ、室内の壁紙や家具をはじめ家庭内や病院、学校等の公共施設内での環境浄化、家電製品の高機能化等、広範囲への応用が可能である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、pHはpHメータ(商品名「B−212」、HORIBA製)、又はpH試験紙を使用して測定した。
【0064】
また、鉄担持酸化チタンにおける鉄含有量は下記方法により分析した。
<鉄含有量分析方法:ICP−AES分析方法>
分析機器としては、ICP発光分光分析装置(商品名「CIROS120」、リガク社製)を使用した。
実施例及び比較例で得られた鉄担持酸化チタン20mgを予め洗浄したビーカーに精秤し、硫酸1mLを加えた後、砂浴上で加熱溶解した。試料溶解後、少量の超純水を加えてリフラックスした後、これをIWAKI製PP容器にて20mLにメスアップし、ICP発光分析に供した。検量線用の標準液はSPEX社製ICP−MS用混合標準液「XSTC−22」を硫酸水溶液にて適宜、希釈調製したものを使用した。内部標準元素としては、Y(イットリウム)を用いた。
【0065】
実施例1
(酸化チタン生成工程)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(和光純薬工業(株)製試薬化学用、約16.5重量%Ti含有希塩酸溶液)をTi濃度が5.4重量%になるように水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液284gをテフロン(登録商標)カップが装着された容量500mLのオートクレーブに入れ密閉した。
上記オートクレーブをオイルバスに投入し、1時間かけてオートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、140℃、その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、オートクレーブを氷水につけて冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認した後、オートクレーブを開封して粗酸化チタン水分散液(1)を取出した。
【0066】
(水洗処理(1))
粗酸化チタン水分散液(1)について、遠心分離後の上澄み液がpH4になるまで水分散−水洗−遠心分離を繰り返し、精製酸化チタン水分散液(1-1)を得た。
【0067】
(鉄担持工程)
精製酸化チタン水分散液(1-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)0.2gを添加し、室温(25℃)にて1時間撹拌した。その後、メタノール 6mLを添加し、100Wの高圧水銀ランプを使用して紫外線を3時間照射して、粗鉄担持酸化チタン水分散液(1-1)を得た。
【0068】
(水洗処理(2))
得られた粗鉄担持酸化チタン水分散液(1-1)について、遠心分離後の上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで水分散−水洗−遠心分離を繰り返して、精製鉄担持酸化チタン水分散液(1-1)を得た。その後、精製鉄担持酸化チタン水分散液(1-1)を減圧下、60℃で15時間乾燥して25.0gの鉄担持酸化チタン(1-1)を得た。得られた鉄担持酸化チタン(1-1)の鉄の含有量は350ppmであった。また下記光触媒活性評価方法(アセトアルデヒド酸化法)にて測定した光触媒能は477ppmであった。
【0069】
実施例2
粗酸化チタン水分散液(1)を遠心分離して水分散し、水洗を行った後、アンモニア水溶液(28重量%)でpH3.5になるまで中和して、精製酸化チタン水分散液(1-2)を得た。
【0070】
精製酸化チタン水分散液(1-1)に代えて、精製酸化チタン水分散液(1-2)を使用した以外は実施例1と同様にして、24.9gの鉄担持酸化チタン(1-2)を得た。得られた鉄担持酸化チタン(1-2)の鉄の含有量は340ppmであった。また、下記光触媒活性評価方法(アセトアルデヒド酸化法)にて測定した光触媒能は452ppmであった。
【0071】
実施例3
粗酸化チタン水分散液(1)を遠心分離して水分散し、アンモニア水溶液(28重量%)でpH2.5になるまで中和して、精製酸化チタン水分散液(1-3)を得た。
【0072】
精製酸化チタン水分散液(1-1)に代えて、精製酸化チタン水分散液(1-3)を使用した以外は実施例1と同様にして、24.8gの鉄担持酸化チタン(1-3)を得た。得られた鉄担持酸化チタン(1-3)の鉄の含有量は340ppmであった。また、下記光触媒活性評価方法(アセトアルデヒド酸化法)にて測定した光触媒能は448ppmであった。
【0073】
実施例4
精製酸化チタン水分散液(1-1)に代えて、粗酸化チタン水分散液(1)に塩化鉄水溶液(35重量%)を添加し処理した以外は実施例1と同様にして、25.3gの鉄担持酸化チタン(1-4)を得た。得られた鉄担持酸化チタン(1-4)の鉄の含有量は100ppmであった。下記光触媒活性評価方法(アセトアルデヒド酸化法)にて測定した光触媒能は430ppmであった。
【0074】
比較例1
粗酸化チタン水分散液(1)を遠心分離し、水分散、水洗を行い、乾燥を行って、酸化チタン(1-5)を得た。得られた酸化チタン(1-5)は凝集していた。
【0075】
得られた酸化チタン(1-5)25gを、すり鉢を使わずに、マグネティックスターラで10時間撹拌して水分散したが、完全には分散できず、凝集体が残存した精製酸化チタン水分散液(1-5)が得られた。
【0076】
精製酸化チタン水分散液(1-1)に代えて、凝集体が残存した精製酸化チタン水分散液(1-5)を使用した以外は実施例1と同様にして、鉄担持酸化チタン(1-5)(一部凝集体が残存)を得た。得られた鉄担持酸化チタン(1-5)の鉄の含有量は50ppmであった。また、下記光触媒活性評価方法(アセトアルデヒド酸化法)にて測定した光触媒能は80ppmであった。
【0077】
実施例5
(酸化チタン生成工程)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、粗酸化チタン水分散液(2)5650gを取り出した。
【0078】
(水洗処理(1):クロスフロー方式による膜濾過)
粗酸化チタン水分散液(2)を純水で3倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。これにより、精製酸化チタン水分散液(2-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0079】
(鉄担持工程)
上記で得られた精製酸化チタン水分散液(2-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール95gを添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm2)、粗鉄担持酸化チタン水分散液(2-1)を得た。
【0080】
(水洗処理(2):クロスフロー方式による膜濾過)
粗鉄担持酸化チタン水分散液(2-1)を純水で3倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付し、精製鉄担持酸化チタン水分散液(2-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0081】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、鉄担持酸化チタン(2-1)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン(2-1)の鉄の含有量は830ppmであった。また、下記光触媒活性評価方法(メタノール酸化法)にて測定した光触媒能は775ppmであった。
【0082】
更に、鉄担持酸化チタン(2-1)を光触媒として使用し、光照射によるアセトアルデヒド分解率を算出することで、光触媒性能を評価した。
すなわち、JIS R 1701−2(ファインセラミックス−光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第2部:アセトアルデヒドの除去性能)に準じる流通式の性能評価装置を用い、幅50mm、長さ100mmのガラス板に鉄担持酸化チタン(2-1)100mgを広げ、光照射容器の中に入れた。室温(25℃)で3ppmのアセトアルデヒドガスを0.2L/minで流し、暗条件における鉄担持酸化チタン(2-1)へのアセトアルデヒドの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(蛍光灯6000ルクス)を行った。光照射容器出口のアセトアルデヒド濃度を水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。
光照射前のアセトアルデヒド濃度をA、光照射から15分以上経過し、かつ安定したときのアセトアルデヒド濃度をBとし、前記アセトアルデヒド濃度Aと前記アセトアルデヒド濃度Bから[式:(A−B)/A×100]に基づいて算出したアセトアルデヒド分解率(%)は60%であった。
【0083】
実施例6
上記(鉄担持工程)において、塩化鉄水溶液(35重量%)の使用量を7.5gから15.0gに変更した以外は実施例5と同様にして、粗鉄担持酸化チタン水分散液(2-2)を得、鉄担持酸化チタン(2-2)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン(2-2)の鉄の含有量は2000ppmであった。また、下記光触媒活性評価方法(メタノール酸化法)にて測定した光触媒能は753ppmであった。
【0084】
実施例7
上記(水洗処理(1):クロスフロー方式による膜濾過)において透過液のpHが5になるまで繰り返し濾過処理に付し、(水洗処理(2):クロスフロー方式による膜濾過)において、透過液の電気伝導度が100μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付した以外は実施例5と同様にして、鉄担持酸化チタン(2-3)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン(2-3)の鉄の含有量は900ppmであった。また、下記光触媒活性評価方法(メタノール酸化法)にて測定した光触媒能は780ppmであった。
【0085】
<光触媒活性評価方法(アセトアルデヒド酸化法)>
気相にてアセトアルデヒドを酸化し、生成するCO2量を測定することにより光触媒活性を評価した。
テドラーバッグ(アズワン(株)製)500mLを反応容器として使用した。鉄担持酸化チタン100mgをガラス製皿に広げ、反応容器の中に入れ、500ppmのアセトアルデヒド飽和ガスを反応容器に吹き込んだ。ガスとアセトアルデヒドが平衡に達した後、室温(25℃)で光照射を行った。光源には500Wのキセノンランプ用光源装置(商品名「SX−UI501XQ」、ウシオ電機(株)製)を使用し、UV−35フィルターを使用して350nmより短い波長の光線を遮断した。さらに、ファインステンレス製のメッシュを光量調節用フィルターとして使用して光量を30mW/cm2に調整した。
光照射開始から150分後のCO2の生成量(反応容器内のCO2濃度)をメタナイザーが付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−8A」、「GC−14A」、島津製作所製)を使用して測定した。
【0086】
<光触媒活性評価方法(メタノール酸化法)>
気相にてメタノールを酸化し、生成するCO2量を測定することにより光触媒活性を評価した。
鉄担持酸化チタン200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、800ppmのメタノールガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。メタノールガスの鉄担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/m2、光の波長:455nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO2の生成量(反応容器内のCO2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)が付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応温度100℃〜220℃、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中でチタン化合物に2〜48時間水熱処理を施すことにより酸化チタンを生成させる酸化チタン生成工程、及び生成した酸化チタンを乾燥固化することなく湿状態のまま遷移金属化合物の担持を行う遷移金属化合物担持工程を有する遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
酸化チタン生成工程を経て得られた湿状態の酸化チタンに対して、水洗及び/又は塩基による中和処理を施す工程を有する請求項1に記載の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。
【請求項3】
水洗及び/又は塩基による中和処理を、酸化チタン水分散液のpHが1〜7となるまで行う請求項2に記載の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。
【請求項4】
中和処理に使用する塩基がアンモニアである請求項2又は3に記載の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。
【請求項5】
遷移金属化合物が三価の鉄化合物である請求項1〜4の何れか1項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
遷移金属化合物を、酸化チタンの酸化反応面に選択的に担持する請求項1〜5の何れか1項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。
【請求項7】
励起光照射下で、酸化チタンに遷移金属化合物を担持する請求項1〜6の何れか1項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタンの製造方法。

【公開番号】特開2012−254922(P2012−254922A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114097(P2012−114097)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】