説明

遷移金属触媒作用を用いてハロゲン化アリール、ハロゲン化ヘテロアリール、ハロゲン化アルキル、およびハロゲン化アルケンをアリル化およびビニル化する方法

一般式(I)
R−R’ (I)
の有機化合物を調製する方法であって、
一般式(II)
R−X (II)
(式中、
Xは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である)
の対応する化合物を、一般式(III)
[M[RMgX] (III)
の有機マグネシウム化合物に変換し、
ここで、式(III)の化合物は、一般式(IV)


の化合物と反応させる方法において、
(III)と(IV)との反応が、
a)一般式(II)の化合物に基づいて、触媒量の鉄化合物
の存在下で、および場合により、
b)一般式(II)の化合物に基づいて、触媒量または化学量論的量の窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物
の存在下で行われることを特徴とする方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合により置換されたアリール、ヘテロアリール、アルケニルまたはアルキルのマグネシウム化合物と、場合により置換されたアリルカルボキシレート、アリルカーボネート、ビニルカルボキシレートまたはビニルカーボネートとの遷移金属に触媒されるクロスカップリング反応によって、官能基化されたアリール、ヘテロアリール、アルケニルまたはアルキル化合物を調製する方法であって、ハロゲン化物からの有機マグネシウム化合物の形成は、カップリング反応と並行して、インサイチューで場合により進行し得る方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属に触媒されるクロスカップリングは、現代有機化学における最も重要な合成ツールの一部である。大部分の公知のクロスカップリング反応は、遷移金属触媒としてパラジウムまたはニッケルの錯体を用いる;カップリング成分としてのアリルエステルと有機マグネシウム化合物とのカップリングの場合、銅錯体が恒常的に選択の触媒であり(例えば、(非特許文献1))、その原型は、Kochi触媒LiCuClである(非特許文献2)。ビニルエステルと有機マグネシウム化合物のカップリングの非常に希な文献の説明は、専らニッケル触媒作用を含む(例えば、(非特許文献3)および(非特許文献4))。通常、これらのカップリングでは、触媒系の許容できる反応性を得るために、ホスフィンまたはN−ヘテロ環式カルベンの形態の有機リガンドが用いられる。経済的理由(パラジウムの高価格およびパラジウムの高い揮発性、回収不能になることが多い費用のかかるリガンド)および毒物学的理由(ニッケル化合物の高い毒性および処理植物における銅イオンの殺菌作用)のために、これらの触媒の使用は、明らかな不利点を有する。したがって、この反応タイプにとって、可能なら調製することが難しい高価なリガンドを用いずに、あまり高価でなく、容易に入手でき、かつ非毒性の金属に基づく触媒を使用することができることが望ましい。
【0003】
特定の反応条件下で、鉄化合物およびコバルト化合物もまた、クロスカップリング反応における触媒としての活性を有する。特に、鉄の化合物は、ベース金属としてその能力において非常に好都合な価格で入手でき、毒性学および廃水法規の点でまったく懸念がない。したがって、これらの化合物は、高価であるパラジウム、環境に対して毒性および有害であるニッケル、および環境に対して有害である銅に対して、触媒系として好ましい。
【0004】
早くも1970年代初期に、鉄塩が、ハロゲン化ビニルとアルキルグリニャール化合物のクロスカップリングを触媒し得ることが示された(非特許文献5)。利用範囲が狭いために、この反応は、Knochel、Fuerstner、CahiezおよびNakamuraが、10年間の始まり以来、窒素含有添加物、例えば、N−メチルピロリドンまたはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を用いて鉄に触媒されるクロスカップリングをより広い範囲の基質に適用することに成功するまで、その後30年間にわたって非常に限られた用途を見出しただけであった(例えば、(非特許文献6);(非特許文献7);(非特許文献8);(非特許文献9))。これらの反応は、特に温和な反応条件(−20℃から+35℃)、高い官能基適合性(例えば、メチルエステル、アミン)および短い反応時間(概して2時間未満)について注目に値する。これらの反応はまた、臭化物またはヨウ化物よりもむしろあまり高価でない塩化物がカップリング相手として機能を果たす場合に特に、それらが、しばしばニッケルおよびパラジウムの場合がそうであるように、高価で不安定なホスフィンまたはカルベンリガンドをまったく必要とすることがない点で工業的利用の点から特に興味深い。
【0005】
これらの反応すべての共通の特徴は、それらが、グリニャール化合物をハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニルまたはハロゲン化アリールにカッルリングさせることであるが、一方、アリル官能基の広範囲に及ぶ構造モチーフをこれらのあまり高価でなく、環境的に優しい触媒とカップリングさせることは今日までできていなかった。これは、グリニャール化合物の分解をもたらす競合性Kharasch反応のために少なくとも部分的であるように思われる((非特許文献6)を参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Karlstroemら、Synlett 2001年、923頁
【非特許文献2】Tamuraら、Synthesis 1971年、303頁
【非特許文献3】Wenkertら、J.Am Chem.Soc.1979年、101、2246頁
【非特許文献4】J.Org.Chem.1984年、49、4894頁
【非特許文献5】Kochiら、J.Am.Chem.Soc.1971年、1487頁
【非特許文献6】Fuerstnerら、Angew.Chem.Int.Ed.2002年、41、609頁
【非特許文献7】Nakamuraら、J.Am.Chem.Soc.2004年、3686頁
【非特許文献8】Knochelら、Synlett 2001年、1901頁
【非特許文献9】Cahiezら、Angew.Chem.Int.Ed.2007年、4364頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、容易に入手できるアリル誘導体およびビニル誘導体をハロゲン化アリール、ハロゲン化ヘテロアリール、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アルケニルにカップリングさせるために、高価でなく環境的に優しい触媒を使用することができるクロスカップリングによって、アリル誘導体およびビニル誘導体を調製する方法を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によって、鉄錯体による触媒作用下で、アリルカップリング成分またはビニルカップリング成分の存在下で場合により調製され得るハロゲン化アリール、ハロゲン化ヘテロアリール、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アルケニル由来の有機マグネシウム化合物を、アリルカルボキシレートおよびビニルカルボキシレートならびにアリルカーボネートおよびビニルカーボネートと、鉄触媒作用の典型的な温和な条件を維持しながら、カップリングさせる方法の提供によって達成される。これは、ビニルエステルがエノール化およびアシル化によりアルデヒドおよびケトンから、ならびにアリルエステルがアリルアルコールから非常に簡単な方法で得られるので、鉄に触媒されるカップリングの基質範囲をかなり広げることができる。
【0009】
したがって、本発明は、一般式(I)
R−R’ (I)
(式中、
Rは、場合により、一置換または多置換されたアリール、ヘテロアリール、アルケニルまたはアルキル基であり、
R’は、一般式II(a)またはII(b)
【化1】

(ここで、jは、0、1、2または3であり、
qは、H以外の同一または異なる基である)
のビニルまたはアリル基である)
の有機化合物を調製する方法であって、一般式(II)
R−X (II)
(式中、
Xは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、
Rは、式(I)について定義されたとおりである)
の化合物を、一般式(III)
[M[RMgX] (III)
(式中、
Rは、式(I)について定義されたとおりであり、
Xは、式(II)について定義されたとおりのアニオンであり、
Mは、一価カチオンであり、
Yは、一価アニオンであり、
nは、0であるか、またはnは、1、2、3,4であり、
mは、1、2、3、4、5または6であり、
kは、0、1、2、3または4であり、
lは、0、1、2、3または4であり、
同時に、以下の関係が適用される:
n+2=m+k+l)
の有機マグネシウム化合物に変換し、
続いて、化合物(III)と一般式(IV)
【化2】

(式中、
R’は、式(I)について定義されたとおりであり、アリルまたはビニル位で酸素原子に結合しており、
R”は、場合により置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基である)
の化合物との反応による方法であって、
(III)と(IV)との反応は、および場合により、(II)から(III)への工程も、
a)一般式(II)の化合物に基づいて、触媒量の鉄化合物
の存在下、および場合により
b)一般式(II)の化合物に基づいて、触媒量または化学量論的量の窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物
の存在下で行われることを特徴とする方法を提供する。
【0010】
有機マグネシウム化合物(III)は、当業者によく知られている方法で、例えば、化合物(II)と元素マグネシウムとのグリニャール反応によって、および適当な条件下、場合により助剤、例えば、塩化リチウムの添加とともに、ハロゲン−金属交換または脱プロトン化によって、または他の有機金属化合物、例えば、有機リチウム化合物の、適当なマグネシウム化合物、例えば、マグネシウム塩もしくはグリニャール化合物によるトランスメタル化によって調製され得る。グリニャール反応によって、この反応、および(III)と(IV)のカップリングの両方を触媒することができる鉄化合物の存在下で、化合物(III)の調製を行うことが特に有利である(ドミノ触媒作用;Jacobi von Wangelinら、Angew.Chem.Int.Ed.2009年、48、607頁参照)。この場合、(II)の(III)を与える反応およびさらには(III)および(IV)の(I)を与える反応を並行に進行させる、すなわち、化合物(IV)の存在下で(III)の調製を行うことも可能であり、その結果として、インサイチューで形成された化合物(III)は、化合物(IV)と直ちに反応して、化合物(I)を与える。この場合、潜在的に自然発火性のグリニャール溶液(したがって、これは工業的条件下で取り扱うことが難しい)の隔離および/または貯蔵なしで済ますことができる。
【0011】
好適な有機マグネシウム化合物(III)の例は、4−トリルマグネシウムクロリド、ウンデシルマグネシウムブロミド、ビス(4−トリル)マグネシウム、ビス(4−メトキシフェニル)マグネシウム−リチウムクロリド錯体、2−メトキシフェニルマグネシウムクロリド−リチウムクロリド錯体、リチウムトリブチルマグネサート、リチウムジブチル−(3−トリル)マグネサートまたはリチウムトリス(チオフェン−2−イル)マグネサートである。
【0012】
式(I)、(II)および(III)中のR基は、場合により置換された(C〜C10)−アルキル、(C〜C10)−アルケニル、(C〜C24)−アリール基またはヘテロアリール基であり、ここで、ヘテロ芳香族基は、環中に1個または複数の窒素、リン、酸素または硫黄原子を有する5員、6員または7員の環である。芳香族、ヘテロ芳香族および/または脂環式環は、場合により環状基に縮合していてもよい。
【0013】
好ましい芳香族R基の例は、場合により一置換または多置換されたフェニル、ナフチル、アントラセニルまたはフェナントリル基である。好ましいヘテロ芳香族基の例は、場合により一置換または多置換されたピリジル、ピリミジル、ピラジニル、フリル、チオフェニル、オキサゾリル、チアゾリルまたはピロリル基である。好ましいアルケニル基は、場合により一置換または多置換されたビニル基である。好ましいアルキル基は、場合により一置換または多置換された開鎖の、環状の、直鎖または分枝のアルキル基、特にC〜C25−アルキル基である。
【0014】
アルケニル、アルキル、芳香族またはヘテロ芳香族のR基は、それぞれ独立して、(C〜C18)−アルキル、(C〜C18)−シクロアルキル、(C〜C18)−アルケニル、(C〜C18)−シクロアルケニル、(C〜C18)−アルキニル、(C〜C18)−アリール、O−[(C〜C18)−アルキル]、O−[(C〜C18)−アリール]、O−Si[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n、OC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C18)−アリール]、NH、NH[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]、NH[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アリール]、NHC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)-[(C〜C18)アルキル]、NHC(O)−[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)−アリール]、NO、NO、S−[(C〜C18)−アリール]、S−[(C〜C18)−アルキル]、フッ素、塩素、臭素、CF、CN、COOM、COO−[(C〜C18)−アルキル]、COO−[(C〜C18)−アリール]、C(O)NH−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)NH−[(C〜C18)−アリール]、C(O)N−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)N−[(C〜C18)−アリール]、CHO、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]、SO−[(C〜C18)−アリール]、OSO−[(C〜C18)−アルキル]、OSO−[(C〜C18)−アリール]、PO−[(C〜C18)−アルキル]、PO−[(C〜C18)−アリール]、SOM、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]またはSi[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n(ここで、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、nは、0から3の範囲の自然数である)であってもよい1個または複数の置換基を場合により持っていてもよい。さらに、これらの置換基の2個以上が、互いに結合して、環または環系を形成してもよい。
【0015】
好ましい芳香族R基の例は、2−トリル、4−アニシル、2−ナフチル、4,4’−ビフェニル、3−tert−ブトキシカルボニルフェニル、3,4−(2,2−ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、ペンタフルオロフェニルまたは2−デカリニル基である。好ましいヘテロ芳香族R基の例は、4−トリフルオロメチルピリジル、4−キノリニル、3−メトキシチオフェン−2−イル、4−(2,2−エチレンジオキシ)メチルフリル基である。好ましいビニルR基の例は、2−メチルプロパ−2−エニル、□−スチリル、シクロヘキサ−1−エニル、2−クロロブタ−1−エニル、3−スクアレニルまたはブタ−2−エン−2−イル基である。アルキル基の例は、イソプロピル、1−ブチル、2−ブチル、シクロヘキシル、4−メトキシシクロヘキシルまたはペルフルオロブチル基である。
【0016】
式(I)および式(IV)中のアリルR’基またはビニルR’基は、それぞれ独立して、(C〜C18)−アルキル、(C〜C18)−シクロアルキル、(C〜C18)−アルケニル、(C〜C18)−シクロアルケニル、(C〜C18)−アルキニル、(C〜C18)−アリール、O−[(C〜C18)−アルキル]、O−[(C〜C18)−アリール]、O−Si[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n、OC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C18)−アリール]、NH、NH[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]、NH[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アリール]、NHC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)-[(C〜C18)アルキル]、NHC(O)−[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)−アリール]、NO、NO、S−[(C〜C18)−アリール]、S−[(C〜C18)−アルキル]、フッ素、塩素、臭素、CF、CN、COOM、COO−[(C〜C18)−アルキル]、COO−[(C〜C18)−アリール]、C(O)NH−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)NH−[(C〜C18)−アリール]、C(O)N−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)N−[(C〜C18)−アリール]、CHO、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]、SO−[(C〜C18)−アリール]、OSO−[(C〜C18)−アルキル]、OSO−[(C〜C18)−アリール]、PO−[(C〜C18)−アルキル]、PO−[(C〜C18)−アリール]、SOM、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]またはSi[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n(ここで、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、nは、0から3の範囲の自然数である)であってもよい1個または複数の置換基を場合により持っていてもよい。さらに、これらの置換基の2個以上が互いに結合して、環または環系を形成してもよい。
【0017】
好ましいアリルR’基の例は、アリル、クロチル、メタリル、1−メチルアリル、シクロペンタ−1−エン−3−イルおよびシクロヘキサ−1−エン−3−イルの群由来の直鎖、分枝および環状の、場合により置換された(C〜C18)−1−アルケン−3−イルである。好ましいビニルR’基の例は、ビニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、シクロペンタ−1−エン−1−イルまたはシクロヘキサ−1−エン−1−イルの群由来の直鎖、分枝および環状の、場合により置換された(C〜C18)−1−アルケン−1−イルである。
【0018】
典型的には、本方法は、式(II)のハロゲン化合物をマグネシウム削り屑と反応させて、グリニャール化合物を与え、次いで、触媒量の鉄またはコバルト化合物を添加し、次いで、式(IV)のアリルまたはビニル化合物をゆっくり滴下し、次いで、この反応混合物を2から4時間の期間撹拌し続けることによって行われる。形成された生成物の精製は、典型的にはシリカゲル上カラムクロマトグラフィーによって続行する。
【0019】
式(IV)の化合物が、アリルアセテートである場合、反応は、好ましくは4−ブロモアニソール、ブロモベンゼン、4−ブロモベラトロール、4−ブロモトルエン、4−ブロモアニソール、2−ブロモトルエンおよび4−tert−ブチルブロモベンゼンの群由来の式(II)の化合物によって行われる。
【0020】
式(IV)の化合物としてクロチルアセテートは、好ましくは4−ブロモアニソールおよび1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼンの群由来の式(II)の化合物と反応させることができる。
【0021】
式(IV)の化合物が3−ビニルアリルアセテートである場合、反応は、好ましくは1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−4−フルオロベンゼン、1−ブロモ−2,4−ジフルオロベンゼン、2−ブロモアニソール、メチル4−ブロモベンゾエート、4−ブロモアニソール、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロミン、4−ブロモベラトロール、4−ブロモアニソール、4−ブロモトルエン、4−tert−ブチルブロモベンゼンの群由来の式(II)の化合物によって行われる。
【0022】
式(IV)中のR”基は、それぞれ独立して、(C〜C18)−アルキル、(C〜C18)−シクロアルキル、(C〜C18)−アルケニル、(C〜C18)−シクロアルケニル、(C〜C18)−アルキニル、(C〜C18)−アリール、O−[(C〜C18)−アルキル]、O−[(C〜C18)−アリール]、O−Si[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n、OC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C18)−アリール]、NH、NH[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]、NH[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アリール]、NHC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)-[(C〜C18)アルキル]、NHC(O)−[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)−アリール]、NO、NO、S−[(C〜C18)−アリール]、S−[(C〜C18)−アルキル]、フッ素、塩素、臭素、CF、CN、COOM、COO−[(C〜C18)−アルキル]、COO−[(C〜C18)−アリール]、C(O)NH−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)NH−[(C〜C18)−アリール]、C(O)N−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)N−[(C〜C18)−アリール]、CHO、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]、SO−[(C〜C18)−アリール]、OSO−[(C〜C18)−アルキル]、OSO−[(C〜C18)−アリール]、PO−[(C〜C18)−アルキル]、PO−[(C〜C18)−アリール]、SOM、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]またはSi[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n(ここで、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、nは、0から3の範囲の自然数である)であってもよい1個または複数の置換基を場合により持っていてもよい。さらに、これらの置換基の2個以上が、互いに結合して、環または環系を形成してもよい。
【0023】
式(IV)中のR”基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはフェニル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシまたはフェノキシ基である。
【0024】
式(IV)の例は、アリルアセテート、クロチルプロピオネート、メタリルドデカノエート、シクロヘキサ−1−エン−3−イルブタノエート、アリルメチルカーボネート、(ヘキサ−1−エン−3−イル)フェニルカーボネート、およびまたビニルアセテート、1−プロペニルアセテート、2−プロペニルメチルカーボネート、シクロヘキサ−1−エン−1−イルプロピオネートである。
【0025】
用いられる触媒は、好ましくは周期律表の第VIIIB族の遷移金属化合物である。鉄またはコバルト化合物を用いることが特に好ましく、任意の酸化状態、好ましくは+2および+3酸化状態の鉄化合物、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、アセチルアセトン酸鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(II)、トリフルオロ酢酸鉄(II)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(II)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、塩化鉄(III)−TMEDA錯体が極めて特に好ましい。
【0026】
用いられる触媒の量は、好ましくは、一般式(II)の化合物に基づいて、0.01から100モル%、より好ましくは0.1から10モル%である。
【0027】
本発明による方法において、窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物を添加することが場合により可能である。
【0028】
これらの添加物は、好ましくはアルキルアミン、シクロアルキルアミン、アルキルジアミン、シクロアルキルジアミン、N−含有ヘテロ環、アルキルアミド、環状アルキルアミド、アルキルイミン、アニリン誘導体、尿素、ウレタン、窒素含有ヘテロ芳香族、ジアルキルエーテル、アルキルアリールエーテル、ジアリールエーテル、環状エーテル、オリゴエーテル、ポリエーテル、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、アリールジアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィンおよび架橋ビスホスフィンである。
【0029】
用いられる添加物は、より好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、スパルテイン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン(DACH)、N−メチル−2−ピロリジン(NMP)、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、フェナントロリン、PEG(ポリエチレングリコール)、DME(1,2−ジメトキシエタン)、ビナフチルジメチルエーテル、18−クラウン−6、トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、dppf(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dppe(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppp(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)またはdpppe(1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン)である。
【0030】
適用できる場合、カップリング反応においてキラル導入を達成するために、キラル添加物を用いることも可能である。
【0031】
本発明による方法において、窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物は、化合物(II)に基づいて、0から200モル%、より好ましくは0から150モル%の量で用いられる。
【0032】
本発明による方法は、典型的には、好ましくは乾燥形態で用いられる、乾燥非プロトン極性溶媒中で行われる。溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−メチル−THF)、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、1,2−ジメオキシエタン(DME、グリム)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメチルカーボネートまたはN−メチエル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが特に好ましい。
【0033】
本発明による方法における反応温度は、典型的には−80℃から+100℃、好ましくは−40から+60℃、より好ましくは−15から+45℃である。
【0034】
本発明よる方法において、多数の置換および非置換のハロゲン化アリール、ハロゲン化ヘテロアリール、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アルケニルを、置換および非置換のカルボン酸および炭酸の、置換および非置換のアリルエステルおよびビニルエステルと反応させることが可能である。カップリングは、大部分の場合に、エステル官能基をもっているアリルエステルまたはビニルエステルの炭素原子で主に行われ、これは、異性化およびアリル基移動が、あったとしても、わずかな程度だけ起こることを意味する。
【0035】
本発明による方法により調製される化合物は、従来の方法によって効率的に単離および精製され得る。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0036】
実施例1:アリルアセテートと2−メトキシフェニルマグネシウムブロミドのカップリング
【化3】

保護ガス下で、63mgのマグネシウム削り屑、126mgの無水塩化リチウム、4mlの乾燥テトラヒドロフランおよび2.4ミリモルの2−ブロモアニソールを室温で反応させて、グリニャール化合物を得た。次いで、形成された浅黒い溶液を0℃に冷却し、35.3mgのアセチルアセトン酸鉄(III)(5モル%)の乾燥テトラヒドロフラン2ml中溶液を添加し、この混合物を5分間撹拌した。次いで、2ミリモルのアリルアセテートを滴下し、反応混合物を2時間撹拌した。後処理として、5mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液で加水分解を行い、この混合物を毎回10mlの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲル上カラムクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン−酢酸エチル)によって精製した。理論の95%の2−アリルアニソールを単離した。
【0037】
実施例2から実施例17:アリールグリニャール化合物とアリルアセテートのさらなるカップリング
表1に記載したハロアレーンを2−ブロモアニソールの代わりに用いた以外は、手順は、実施例1におけるとおりであった。個々の収率は、最適化されていない。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例18:アルキルグリニャール化合物とアリルアセテートのカップリング
【化4】

n−ドデシルブロミドを実施例1と同様にそのグリニャール化合物に変換し、記載した方法で後者をアリルアセテートと反応させた。1−ペンタデセンを32%収率で得た。
【0040】
実施例19から実施例23:アリールグリニャール化合物とアリルカーボネートのカップリング
【化5】

実験は実施例1と同様に行った;アリルアセテートに代えて、アリルメチルカーボネートを用いた。実験は表2に記載する。個々の収率は最適化されていない。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例24から実施例37:アリールグリニャール化合物と置換アリルアセテートのカップリング
【化6】

実験は、実施例1と同様に行った;アリルアセテートの代わりに、表3に記載した置換アリルアセテートを、記載したアリールグリニャール化合物と反応させた。個々の収率は最適化されていない。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例38から実施例40:アリルアセテートカップリングのカップリング温度の変化
カップリング反応を表4に記載した温度で行った以外は、アリルアセテートおよび4−tert−ブチルフェニルマグネシウムブロミドを実施例10に記載したとおりに反応させた。
【0045】
【表4】

【0046】
実施例41から実施例43:アリルアセテートカップリングにおける触媒の変化
カップリング反応を表5に特定した触媒(5モル%)によって行った以外は、アリルアセテートおよび4−tert−ブチルフェニルマグネシウムブロミドを実施例10に記載したとおりに反応させた。
【0047】
【表5】

【0048】
実施例44から実施例47:アリルアセテートカップリングにおける化学量論の変化
化学量論比を表6に記載したとおりに変化させた以外は、アリルアセテートおよび4−tert−ブチルフェニルマグネシウムブロミドを実施例10に記載したとおりに反応させた。
【0049】
【表6】

【0050】
実施例48から実施例52:アリルアセテートカップリングにおける添加物の変化
表7に記載した添加物を各場合に特定した量で添加した以外は、アリルアセテートおよび4−tert−ブチルフェニルマグネシウムを実施例10に記載したとおりに反応させた。
【0051】
【表7】

【0052】
実施例53:4−トリルマグネシウムブロミドとビニルアセテートのカップリング
【化7】

保護ガス下で、96mgのマグネシウム削り屑を最初に、塩化リチウムのテトラヒドロフラン中0.5M溶液6mlの下に投入した。20℃で、2.6ミリモルの4−ブロモトルエンを添加し、混合物を2時間撹拌した。16.2mgの塩化鉄(III)(5モル%)および292μlのTMEDA(1.3当量)のテトラヒドロフラン1ml中溶液を、形成されたグリニャール溶液に添加した。次いで、混合物を0℃に冷却し、2mmolのビニルアセテートを添加し、混合物を0℃で3時間、20℃で1時間撹拌した。後処理として、4mlの飽和炭酸ナトリウム溶液を添加し、混合物を毎回5mlの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、シリカゲル上カラムクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン−酢酸エチル)により精製した。これにより、4−メチルスチレンが理論の99%の収率で得られた。
【0053】
実施例54:4−ブロモアニソールとビニルアセテートのカップリング
4−ブロモトルエンの代わりに4−ブロモアニソールを用いた以外は、実施例53と同様に反応を行った。これにより、4−メトキシスチレンが100%収率で得られた。
【0054】
実施例55:ドミノ鉄触媒作用下でのブロモトルエンとビニルアセテートのカップリング
【化8】

保護ガス下で、62mgのマグネシウム削り屑を、最初に16.2mg(5モル%)の塩化鉄(III)の無水テトラヒドロフラン6ml中溶液下に投入し、60μlのTMEDA(20モル%)を添加した。混合物を0℃に冷却し、さらに10分間撹拌し、次いで、2.6ミリモルのブロモベンゼンを添加し、混合物を0℃で90分間撹拌し、次いで、2ミリモルのビニルアセテートを添加し、混合物を0℃で90分間再度撹拌した。後処理として、2mlの飽和炭酸ナトリウム溶液を反応混合物に添加し、これを毎回5mlの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲル上カラムクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン−酢酸エチル)により精製した。これにより、スチレンが理論の42%の収率で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
R−R’ (I)
(式中、
Rは、場合により一置換または多置換されたアリール、ヘテロアリール、アルケニルまたはアルキル基であり、
R’は、一般式II(a)またはII(b)
【化1】

(ここで、jは、0、1、2または3であり、
qは、H以外の同一または異なる基である)
のビニルまたはアリル基である)
の有機化合物を調製する方法であって、一般式(II)
R−X (II)
(式中、
Xは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、
Rは、式(I)について定義されたとおりである)
の化合物を、一般式(III)
[M[RMgX] (III)
(式中、
Rは、式(I)について定義されたとおりであり、
Xは、式(II)について定義されたとおりのアニオンであり、
Mは、一価カチオンであり、
Yは、一価アニオンであり、
nは、0であるか、またはnは、1、2、3,4であり、
mは、1、2、3、4、5または6であり、
kは、0、1、2、3または4であり、
lは、0、1、2、3または4であり、
同時に、以下の関係が適用される:
n+2=m+k+l)
の有機マグネシウム化合物に変換し、
続いて、化合物(III)と一般式(IV)
【化2】

(式中、
R’は、式(I)について定義されたとおりであり、アリルまたはビニル位で酸素原子に結合しており、
R”は、場合により置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基である)
の化合物が反応する方法において、
(III)と(IV)との反応は、および場合により、(II)から(III)への工程も、
a)一般式(II)の化合物に基づいて、触媒量の鉄化合物
の存在下、および場合により
b)一般式(II)の化合物に基づいて、触媒量または化学量論的量の窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物
の存在下で行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
Rが、場合により置換されたアルケニル、アルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり、ここで、前記ヘテロアリール基は、環中に1個または複数の窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を有する5員、6員または7員の環であり、任意のさらなる場合により置換された芳香族、ヘテロ芳香族および/または脂環式基は、環状R基に縮合していてもよく、前記R基は、それぞれ独立して、(C〜C18)−アルキル、(C〜C18)−シクロアルキル、(C〜C18)−アルケニル、(C〜C18)−シクロアルケニル、(C〜C18)−アルキニル、(C〜C18)−アリール、O−[(C〜C18)−アルキル]、O−[(C〜C18)−アリール]、O−Si[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n、OC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C18)−アリール]、NH、NH[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]、NH[C〜C)−アリール]、N「」C〜C18−アリール]、NHC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)-[(C〜C18)アルキル]、NHC(O)−[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)−アリール]、NO、NO、S−[(C〜C18)−アリール]、S−[(C〜C18)−アルキル]、フッ素、塩素、臭素、ペンタフルオロスルフラニル、CF、CN、COOM、COO−[(C〜C18)−アルキル]、COO−[(C〜C18)−アリール]、C(O)NH−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)NH−[(C〜C18)−アリール]、C(O)N−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)N−[(C〜C18)−アリール]、CHO、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]、SO−[(C〜C18)−アリール]、OSO−[(C〜C18)−アルキル]、OSO−[(C〜C18)−アリール]、PO−[(C〜C18)−アルキル]、PO−[(C〜C18)−アリール]、SOM、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]またはSi[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n(ここで、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、nは、0から3の範囲の自然数である)であってもよい1個または複数の置換基を場合により持っていてもよく、ここで、これらの置換基の少なくとも2個は、互いと環系を形成してもよいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アリルR’基またはビニルのR’基が、それぞれ独立して、(C〜C18)−アルキル、(C〜C18)−シクロアルキル、(C〜C18)−アルケニル、(C〜C18)−シクロアルケニル、(C〜C18)−アルキニル、(C〜C18)−アリール、O−[(C〜C18)−アルキル]、O−[(C〜C18)−アリール]、O−Si[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n、OC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C18)−アリール]、NH、NH[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]、NH[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アリール]、NHC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)アルキル]、NHC(O)−[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)−アリール]、NO、NO、S−[(C〜C18)−アリール]、S−[(C〜C18)−アルキル]、フッ素、塩素、臭素、ペンタフルオロスルフラニル、CF、CN、COOM、COO−[(C〜C18)−アルキル]、COO−[(C〜C18)−アリール]、C(O)NH−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)NH−[(C〜C18)−アリール]、C(O)N−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)N−[(C〜C18)−アリール]、CHO、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]、SO−[(C〜C18)−アリール]、OSO−[(C〜C18)−アルキル]、OSO−[(C〜C18)−アリール]、PO−[(C〜C18)−アルキル]、PO−[(C〜C18)−アリール]、SOM、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]またはSi[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n(ここで、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、nは、0から3の範囲の自然数である)であってもよい1個または複数の置換基Qを場合により持っていてもよく、これらの置換基の少なくとも2個が、互いと環系を形成してもよいことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R”基が、場合により分枝の、場合により環状アルキル基またはアリールもしくはヘテロアリール基であり、これらのすべてが、それぞれ独立して、(C〜C18)−アルキル、(C〜C18)−シクロアルキル、(C〜C18)−アルケニル、(C〜C18)−シクロアルケニル、(C〜C18)−アルキニル、(C〜C18)−アリール、O−[(C〜C18)−アルキル]、O−[(C〜C18)−アリール]、O−Si[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n、OC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C18)−アリール]、NH、NH[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]、NH[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アリール]、NHC(O)−[(C〜C18)−アルキル]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)-[(C〜C18)アルキル]、NHC(O)−[(C〜C18)−アリール]、N[(C〜C18)−アルキル]C(O)−[(C〜C18)−アリール]、NO、NO、S−[(C〜C18)−アリール]、S−[(C〜C18)−アルキル]、フッ素、塩素、臭素、ペンタフルオロスルフラニル、CF、CN、COOM、COO−[(C〜C18)−アリール]、COO−[(C〜C18)−アリール]、C(O)NH−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)NH−[(C〜C18)−アリール]、C(O)N−[(C〜C18)−アルキル]、C(O)N−[(C〜C18)−アリール]、CHO、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]、SO−[(C〜C18)−アリール]、OSO−[(C〜C18)−アルキル]、OSO−[(C〜C18)−アリール]、PO−[(C〜C18)−アルキル]、PO−[(C〜C18)−アリール]、SOM、SO−[(C〜C18)−アルキル]、SO−[(C〜C18)−アリール]またはSi[(C〜C18)−アルキル][(C〜C18)−アリール]3−n(ここで、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、nは、0から3の範囲の自然数である)であってもよい1個または複数の置換基を場合により持っていてもよく、これらの置換基の少なくとも2個が、互いと環系を形成してもよいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
用いられた前記鉄化合物が、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、アセチルアセトン酸鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、ヨウ化鉄(I)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(II)、トリフルオロ酢酸鉄(II)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(II)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、または塩化鉄(III)−TMEDA錯体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記鉄化合物が、前記一般式(II)の化合物に基づいて、0.01から50モル%の量で用いられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1個または複数の窒素原子、酸素原子および/またはリン原子を有する、場合により添加される前記窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物が、場合により置換されたアルキルアミン、N−含有ヘテロ環、アルキルアミド、環状アルキルアミド、シクロアルキルアミン、シクロアルキルジアミン、アルキルイミン、シクロアルキルイミン、アニリン、アニリン誘導体、窒素含有ヘテロ芳香族、ジアルキルエーテル、アルキルアリールエーテル、ジアリールエーテル、環状エーテル、オリゴエーテル、ポリエーテル、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、アリールジアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィンおよび架橋ビスホスフィンを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
用いられる前記窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物が、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、スパルテイン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン(DACH)、N−メチル−2−ピロリジン(NMP)、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、フェナントロリン、PEG−DME(ポリエチレングリコールジメチルエーテル)、DME(1,2−ジメトキシエタン)、ビナフチルジメチルエーテル、18−クラウン−6、トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、dppf(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dppe(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppp(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)またはdpppe(1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン)であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記窒素含有添加物、酸素含有添加物および/またはリン含有添加物が、前記一般式(II)の化合物に基づいて、0から200モル%の量で用いられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記(III)を与える(II)の反応が、(IV)の存在下で行われ、その結果、形成される前記有機マグネシウム化合物(III)が、IVとインサイチューでさらに反応して、(I)を与えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記式(I)中のR基が、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントリルの群由来のアリール基、またはピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ジオキシニル、フリル、(チオフェン)イル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリルおよびピロリルの群由来のヘテロアリール基であり、前記式(I)中のR’基が、アリル、クロチル、メタリル、1−メチルアリル、シクロペンタ−1−エン−3−イルおよびシクロヘキサ−1−エン−3−イルの群由来のアリル基、またはビニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、シクロペンタ−1−エン−1−イルおよびシクロヘキサ−1−エン−1−イルの群由来のビニル基であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518919(P2013−518919A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552337(P2012−552337)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051390
【国際公開番号】WO2011/098375
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(506207853)サルティゴ・ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】