説明

遷移金属触媒及びα−オレフィン及びビニル化合物重合体の製造方法

【課題】分子量が10,000以下の末端にビニル基を有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー)又は分子量が10,000を超えるポリオレフィンを効率的かつ安価に製造することが出来る触媒を提供すること。
【解決手段】(a)粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物、(b)アミン化合物、そのブレンステッド酸付加体又は四級アンモニウム塩および(c)有機シラン化合物を接触させて得られるビニル化合物重合用助触媒成分と(d)周期律表第4〜6族の遷移金属錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体を含有するビニル化合物重合用触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン製造用触媒及びα−オレフィンの製造方法に関し、さらに詳しくは、α−オレフィンを効率よくかつ安価に製造することのできるα−オレフィン製造用触媒と該触媒を使用したエチレンのオリゴマー化によるα−オレフィンの製造方法に関する。
更に、本発明は、オレフィン重合触媒及びオレフィンの重合方法に関し、詳しくは、助触媒として高価なアルミノキサンを用いること無く高い重合活性を発現するオレフィン重合触媒及び該触媒を用いるオレフィンの重合方法に関する。
更に、本発明は、メタロセン触媒などの成分として有用なビニル化合物重合用助触媒成分、該助触媒成分を用いるビニル化合物重合用触媒及び該触媒を用いるビニル化合物重合体の製造方法に関し、詳しくはビニル化合物重合体を効率よく製造できるビニル化合物重合用助触媒成分、ビニル化合物重合用触媒及びビニル化合物重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンを重合しエチレンオリゴマーを製造する方法として、従来からニッケル錯体を用いたプロセス(Shell Higher Olefin Process:SHOP)が知られており、エチレンオリゴマーの生産が行われているが、活性が低いという欠点がある。
最近、エチレンをオリゴマー化させてα−オレフィンを製造する方法として、主触媒として遷移金属錯体を、助触媒としてアルミノキサン等の含酸素有機アルミニウム化合物やパーフルオロテトラフェニルボレート塩等の硼素系化合物を使用する方法が提案されている。例えば、中心金属がZrからなるメタロセン錯体とアルミノキサンの組合せからなるメタロセン系触媒を用いる方法も提案されている(特許文献1)。しかしながら、アルミノキサンなどの含酸素化合物では、その使用量が主触媒に対して数百倍モル以上必要であり、触媒当たりの活性が低く効率が悪いという問題がある。またパーフルオロボレート等の硼素系化合物は合成が困難であるという問題がある。
また、極めて最近、鉄キレート錯体でエチレンが重合することが見出された(非特許文献1)。これによれば、窒素原子を介して中心金属と結合した三座配位子をもつ鉄キレート錯体は、メチルアルミノキサンを助触媒として用いた場合、エチレン重合活性が高く、かつ得られたエチレンオリゴマーの末端選択性に優れているという。しかしながら、メチルアルミノキサンは高価であり、触媒当たりの効率が悪いという問題がある。
メタロセン錯体とアルミノキサンの組合せからなるメタロセン触媒はオレフィン重合触媒として見出され広く検討がなされているが、アルミノキサンは高価であり、触媒活性を引き出すためにメタロセン錯体に対して過剰量のアルミノキサンが必要とされる欠点がある。上記欠点を改良するため、メチルアルモキサンを粘土鉱物類に担持させて用いる方法が提案されている(特許文献2)。同文献には、メチルアルミノキサンをスメクタイトに担持した例が示されているが、メチルアルモキサンを多量に用いることが必須とされており、アルミニウム成分あたりの重合活性も十分とは言えない。粘土鉱物は、オレフィン重合触媒の助触媒成分として有効に用いられるためには、通常何らかの処理をして用いられる。例えば、処理方法としては、トリアルキルアルミニウムで処理する方法(特許文献3)、有機物によるインターカレーション法(特許文献4)やシラン化合物により処理する方法(特許文献5)等が報告されている。しかしながら、これらの処理した粘土鉱物はスラリーの懸濁安定性が悪く重合活性も低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許366212号公報
【特許文献2】特開平5−25214号公報
【特許文献3】特開平5−301917号公報
【特許文献4】特開平7−224106号公報
【特許文献5】特開平11−106418号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chem.Commun.,1998.849−850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明の目的は、助触媒として高価なアルミノキサンを用いること無く高いエチレンのオリゴマー化活性を発現するα−オレフィン製造用触媒及び該触媒を用いてエチレンをオリゴマー化するα−オレフィンの製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、助触媒として高価なアルミノキサンを用いること無く高い重合活性を発現する新規なオレフィン重合触媒及び該触媒を用いるオレフィンの重合方法を提供することを目的とするものである。
本発明の更に他の目的は、アルミノキサンを用いるメタロセン触媒における上記のような欠点を改良し、ビニル化合物重合体、特に末端にビニル結合を有するビニル化合物重合体を効率よく製造できるビニル化合物重合用触媒、該触媒の成分として有用な新規なビニル化合物重合用助触媒成分、及びビニル化合物重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、(a)周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(b)粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物、(c)アミン化合物もしくはそのブレンステッド酸付加体、及び必要に応じて(d)有機金属化合物からなるる新規な触媒がエチレンをオリゴマー化するα−オレフィンの製造に効果的であることを見出した。
本発明者らは、更に、(a)周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(b)粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物、(c)四級アンモニウム塩及び必要に応じて(d)有機金属化合物からなる新規な触媒がオレフィンの重合に効果的であることを見出した。
更に、本発明者らは(a)粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物、(b)アミン化合物、そのブレンステッド酸付加体又は四級アンモニウム塩および(c)有機シラン化合物を接触させて得られるビニル化合物重合用助触媒成分を含む触媒によりビニル化合物重合体を効率よく製造できることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づきなされた。
【0007】
すなわち、第一の発明は、(a)周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(b)粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物及び(c)アミン化合物若しくはそのブレンステッド酸付加体からなるα−オレフィン製造用触媒である。
第二の発明は、前記α−オレフィン製造用触媒の存在下、エチレンをオリゴマー化させるα−オレフィンの製造方法である。
第三の発明は、(a)周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(b)粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物及び(c)四級アンモニウム塩からなるオレフィン重合触媒である。
第四の発明は、前記オレフィン重合触媒の存在下、エチレンをオリゴマー化させるオレフィンの重合方法である。
第五の発明は、(a)粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物、(b)アミン化合物、そのブレンステッド酸付加体又は四級アンモニウム塩および(c)有機シラン化合物を接触させて得られるビニル化合物重合用助触媒成分である。
第六の発明は、前記ビニル化合物重合用助触媒成分と(d)周期律表第4〜6族の遷移金属錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体を含有するビニル化合物重合用触媒である。
第七の発明は、前記ビニル化合物重合用触媒の存在下、オレフィン類、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸誘導体及び脂肪酸ビニル類から選ばれる1種以上のビニル化合物を重合させるビニル化合物重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のα−オレフィン製造用触媒は、エチレンのオリゴマー化活性が高く、効率的かつ安価にエチレンよりα−オレフィンの製造を行うことができる。また、分子量が10,000以下の末端にビニル基を有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー)又は分子量が10,000を超えるポリオレフィンを効率的かつ安価に製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)第一態様の触媒
本発明の第一態様の触媒は、(1−A)周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(1−B)粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物(以下、粘土等ともいう。)及び(1−C)アミン化合物又はブレンステッド酸付加体からなるα−オレフィン製造用触媒である。
前記α−オレフィン製造用触媒は、さらに、(1−D)有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機リチウム化合物及び有機亜鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物を含んでいてもよい。
本発明でいうα−オレフィン(オリゴマー)とは、分子量が10,000以下の末端にビニル基を有する重合体を指し、高分子本来の特性が現れるそれより高い分子量を有する通常のエチレン重合体とは物性、用途が異なる。したがって、その製造に用いられる触媒に求められる性能は、通常の高分子量体の製造に用いられる触媒の性能とは異なり、従来の高分子量体製造用触媒がそのまま用いられるとは限らない。
これら(1−A)〜(1−D)成分について、以下に具体的に説明する。
【0010】
1−A)成分
一般に主触媒と呼ばれ、広範囲の周期律表第8〜10族の遷移金属錯体から選択することができる。
その周期律表第8〜10族の遷移金属錯体の好ましいものとして下記一般式(1)または(2)で表されるものを挙げることができる。
12MX1m1n (1)
123MX1m1n (2)
上記一般式(1)、(2)において、Mは周期律表第8〜10族の遷移金属であり、好ましくは鉄,コバルト,ニッケル,パラジウム,白金等、更に好ましくは鉄,コバルト、ニッケルである。
1〜L3はヘテロ配位原子を介して遷移金属と結合しうる配位子を示す。式(1)のL1とL2或いは式(2)のL1〜L3はそれぞれ互いに結合してキレート配位子を形成しているのが好ましい。ヘテロ配位原子としては、炭素原子以外の窒素原子、酸素原子、イオウ原子などが挙げられる。なかでも、窒素原子が好ましい。窒素原子は炭素原子と不飽和結合していることが好ましい。なかでも、(−C=N−)構造ユニットを形成していることがより好ましい。
1及びY1は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ共有結合性又はイオン結合性の基を示す。具体的には水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル等の炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ジフェニルホスフィノ基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有基;トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜12の珪素含有基;又は-BF4等のハロゲン含有硼素アニオンを示す。これらの中で、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
m及びnは0または正の整数であり、mとnの和はMの原子価に応じて0,1,2又は3である。
【0011】
上記一般式(1)で表れる遷移金属錯体としては特に制限はないが、ジイミン化合物を配位子とするものが好ましく、このようなものとしては、例えば下記の一般式(3):
【化1】

(式中、Mは周期律表第8〜10族の遷移金属を示す。R1及びR4はそれぞれ独立に炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又は全炭素数7〜20の環上に炭化水素基を有する芳香族基、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R2及びR3は互いに結合して環を形成してもよく、X1及びY1はそれぞれ共有結合性又はイオン結合性の基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。m及びnは0または正の整数であり、mとnの和はMの原子価に応じて0,1,2又は3である。)で表される錯体化合物が挙げられる。
式(3)中、M、X1、Y1、m及びnは式(1)と同様であり、Mは特にニッケルが好ましく、X1及びY1は好ましくはハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、更に好ましくは塩素原子又はメチル基である。
1及びR4の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基など、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。なお、シクロアルキル基の環上には低級アルキル基などの適当な置換基が導入されていてもよい。また、全炭素数7〜20の環上に炭化水素基を有する芳香族基としては、例えばフェニル基やナフチル基などの芳香族環上に、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が1個以上導入された基などが挙げられる。このR1及びR4としては、環上に炭化水素基を有する芳香族基が好ましく、特に2,6−ジイソプロピルフェニル基が好適である。R1及びR4としては、互いに同一であっても異なってもよい。
2及びR3の炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基などが挙げられる。ここで炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基としては前記と同じである。炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。R2及びR3は、互いに同一であっても異なってもよい。また、互いに結合して環を形成してもよい。
【0012】
前記一般式(3)で表される錯体化合物の例としては、下記の式〔1〕〜〔12〕で表される化合物が挙げられる。
【化2】

【化3】

【0013】
上記一般式(2)で表される遷移金属錯体としては、窒素配位原子を含有するニッケルのキレート錯体、鉄のキレート錯体又はコバルトのキレート錯体がより好ましい。このようなものとしては、J.Am.Chem.Soc.,1998,120,4049−4050やChem.Commun.1998,849−850、さらには国際特許98−27124号公報、国際特許99−02472号公報、国際特許99−12981号公報に記載されている遷移金属錯体が挙げられる。
【0014】
例えば下記一般式(4)
【化4】

(式中、Mは周期律表第8〜10族の遷移金属を示す。R5〜R11は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基、又はヘテロ原子を有する炭化水素基を示し、それらは互いに結合して環を形成してもよい。また、X1及びY1はそれぞれ共有結合性又はイオン結合性の基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。m及びnは0または正の整数であり、mとnの和はMの原子価に応じて0,1,2又は3である。)で表される錯体を挙げることができる。
上記一般式(4)において、R5〜R11は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭化水素基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の炭素数1〜30の直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基等の炭素数3〜30の分岐状炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜30の環状脂肪族炭化水素基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基等が挙げられる。置換炭化水素基としては、前記の炭化水素基における1以上の水素原子が置換基で置換されたものであり、例えば、炭素数1〜30の置換炭化水素基が挙げられる。置換基としては、炭化水素基、ハロゲン原子、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。置換基としての炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられる。へテロ原子としては、窒素、酸素、硫黄等が挙げられる。置換炭化水素基としては、ヘテロ芳香族環も含有してもよい。ヘテロ原子含有炭化水素基としては、−ORで表されるアルコキシ基、−NR2で表されるアミノ基又は−SiR3で表されるシリル基等が挙げられる。但し、Rは、前記の炭化水素基が挙げられる。
上記一般式(4)におけるM、X1、Y1、m及びnは、式(2)と同様である。Mとしては、鉄、コバルト、ニッケルが好ましい。X1及びY1としては、ハロゲン原子及び炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、塩素原子及びメチル基がより好ましい。
上記一般式(4)で表される遷移金属錯体としては、具体的には2,6−ジアセチルピリジンビスイミン化合物、2,6−ジホルミルピリジンビスイミン化合物、2,6−ジベンゾイルピリジンビスイミン化合物などを配位子とする鉄又はコバルト錯体が挙げられる。中でも、2,6−ジアセチルピリジンビスイミン化合物を配位子とする鉄錯体が特に好ましく、このような錯体としては、下記一般式(5)で表される金属錯体が挙げられる。
【0015】
【化5】

(式中、Mは周期率表第8〜10族の遷移金属を示し、R5〜R9及びR12〜R21は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基又はヘテロ原子を含有する炭化水素基を示す。R12〜R21のいずれか2つの近接する基は互いに他と結合して環を形成してもよい。X1,Y1はそれぞれ共有結合性又はイオン結合性の基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。m及びnは0または正の整数であり、mとnの和はMの原子価に応じて0,1,2又は3である。)
上記一般式(5)のR5〜R9及びR12〜R21は、上記一般式(4)のR5〜R11と同様である。
また、R12は一級炭素からなる基、二級炭素からなる基或いは三級炭素からなる基であってもよい。R12が一級炭素からなる基のときR16、R17、R21の0〜2個は一級炭素からなる基であり、残りは水素原子であってもよい。R12が二級炭素からなる基のときR16、R17、R21の0〜1個は一級炭素からなる基又は二級炭素からなる基であり、残りは水素原子であってもよい。R12が三級炭素からなる基のときR16、R17、R21は水素原子であってもよい。
好ましくは、R12が一級炭素からなる基のときR16、R17、R21の0〜2個は一級炭素からなる基であり、残りは水素原子である。R12が二級炭素からなる基のときR16、R17、R21の0〜1個は1級炭素からなる基又は二級炭素からなる基であり、残りは水素原子である。R12が三級炭素からなる基のときR16、R17、R21は水素原子である。R12〜R21のいずれか2つの近接する基は互いに他と結合して環を形成してもよい。
前記一般式(5)におけるM、X1、Y1、m及びnは前記と同様である。Mとしては、鉄、コバルト、ニッケルが好ましく、特に鉄が好ましい。X1及びY1としては、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、炭素数1〜20の炭化水素基(好ましくはメチル基)、炭素数1〜20の珪素含有基が好ましい。
前記一般式(5)における好ましい組合せとしては、以下の例が挙げられる。
8とR9はメチル基または水素原子、及び/又はR5、R6及びR7は全て水素原子、及び/又はR13、R14、R15、R18、R19及びR20は全て水素原子、及び/又はR16とR21がそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基或いはイソプロピル基、より好ましくは共にメチル基或いはエチル基、及び/又はX1,Y1が一価のアニオン、より好ましくはハライドとニトリル、炭化水素から選ばれた一価のアニオンである。
また次のような組合せも好ましい。すなわち、R12が一級炭素からなる基である場合は、R16が一級炭素からなる基であり、R17、R21は水素原子である。また、R12が二級炭素からなる基である場合は、R16は一級炭素からなる基又は二級炭素からなる基、より好ましくは二級炭素からなる基であり、R17、R21は水素原子である。R12が三級炭素からなる基である場合は、R16、R17、R21は水素原子である。
前記一般式(5)における特に好ましい組合せとしては、以下の例が挙げられる。
8=R9=メチル基、R13=R14=R15=R18=R19=R20=水素原子、かつR16=R21=メチル基。
8=R9=メチル基、R13=R14=R15=R18=R19=R20=水素原子、かつR16=R21=エチル基。
8=R9=メチル基、R13=R14=R15=R18=R19=R20=水素原子、かつR16=R21=イソプロピル基。
8=R9=メチル基、R13=R14=R15=R18=R19=R20=水素原子、かつR16=R21=n−プロピル基。
8=R9=メチル基、R13=R14=R15=R18=R19=R20=水素原子、かつR16=R21=塩素原子。
8=R9=メチル基、R13=R14=R15=R18=R19=R20=水素原子、かつR16=R21=トリフルオロメチル基。
この場合、いずれもX1,Y1は、塩素、臭素、ニトリル化合物の中から選ばれることが好ましく、特に好ましくは塩素である。
【0016】
前記一般式(5)で表される遷移金属化合物の製造方法の一例を挙げれば、下記一般式(6)で表されるケトン化合物
【化6】

とH2NR22やH2NR23で表されるアミン化合物を反応させる方法が挙げられる。R22及びR23
【化7】

を表す。反応には、蟻酸等の有機酸を触媒として用いてもよい。さらに、上記の製造方法により得られた化合物に遷移金属Mのハロゲン化物等を反応させて一般式(5)の化合物を得ることが出来る。
(1−A)成分としては、前記一般式(1)または(2)で表される遷移金属錯体のいずれであってもよいが、好ましくは一般式(2)で表される遷移金属錯体である。(1−A)成分としては一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(1−B)成分
前記(1−B)成分は、粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物である。粘土は、細かい含水ケイ酸塩鉱物の集合体であって、適当量の水を混ぜてこねると可塑性を生じ、乾かすと剛性を示し、高温度で焼くと焼結するような物質であり、また、粘土鉱物は、粘土の主成分をなす含水ケイ酸塩である。前記α−オレフィン製造用触媒成分の調製には、粘土、粘土鉱物のいずれを用いてもよく、これらは、天然産のものでも、人工合成したものであってもよい。
イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で、平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、これに含有されるイオンが交換可能なものである。粘土鉱物の中には、イオン交換性層状化合物であるものもある。
【0018】
これら(1−B)成分について、その具体例を示すと、例えば粘土鉱物としてフィロ珪酸類を挙げることができる。フィロ珪酸類としては、フィロ珪酸やフィロ珪酸塩がある。フィロ珪酸塩には、天然品として、スメクタイト族に属するモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、雲母族に属するイライト、セリサイト及びスメクタイト族と雲母族または雲母族とバーミクキュライト族との混合層鉱物等を挙げることができる。また、合成品として、フッ素四珪素雲母(コープ化学)、ラポナイト(ラポート工業)、スメクトン(クニミネ工業)等を挙げることができる。この他、α−Zr(HPO42、γ−Zr(HPO42、α−Ti(HPO42及びγ−Ti(HPO42等の粘土鉱物ではない層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物を用いることができる。
また、イオン交換性層状化合物に属さない粘土および粘土鉱物としては、モンモリロナイト含量が低いためベントナイトと呼ばれる粘土、モンモリロナイトに他の成分が多く含まれる木節粘土、ガイロメ粘土、繊維状の形態を示すセピオライト、パリゴルスカイト、また、非結晶質あるいは低結晶質のアロフェン、イモゴライト等がある。
【0019】
さらに(1−B)成分としては、体積平均粒子径が10μm以下である粒子が好ましく、体積平均粒子径が3μm以下である粒子がさらに好ましい。また、一般に粒子の粒子形状は粒径分布を有するが、(1−B)成分としては、体積平均粒子径が10μm以下であって、体積平均粒子径が3.0μm以下の含有割合が10重量%以上である粒径分布を有することが好ましく、体積平均粒子径が10μm以下であって、体積平均粒子径が1.5μm以下の含有割合が10重量%以上である粒径分布を有することがさらに好ましい。体積平均粒子径及び含有割合の測定方法としては、例えば、レーザー光による光透過性で粒径を測定する機器(GALAI Production Ltd.製のCIS−1)を用いる測定方法が挙げられる。
これら(1−B)成分の中でも、後に述べる(1−C)アミン化合物又はそのブレンステッド酸付加体を吸着ないし粘土等と反応し層間化合物を生成(インターカレーションともいう)する能力の高いものが好ましい。例えば、粘土または粘土鉱物が好ましく、具体的には、フィロ珪酸類が好ましく、さらにスメクタイトが好ましく、特に好ましいのはモンモリロナイトである。
【0020】
(1−C)成分
アミン化合物としては、嵩高いことが好ましい。嵩高さを、窒素原子数に対する炭素原子数の割合として表せば、その割合が10以上であることが好ましく、18以上がさらに好ましい。その割合は、窒素原子に結合する炭化水素基の炭素数を増やすことで達成されるが、同じ炭素数の炭化水素基であれば、脂肪族炭化水素基よりも芳香族炭化水素基の方が活性が向上し好ましい。さらに、芳香族炭化水素基としては、一つよりも二つ以上であることがより好ましい。
【0021】
窒素原子数に対する炭素原子数の割合が10以上であるアミン化合物としては、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリドデシルアミン、N,N−ジ−n−オクタデシルメチルアミン等の脂肪族アミン類、4−ベンジルピペラジン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン等のベンジルアミン類、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−1−ナフチルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、カルバゾール、N,N−ジベンジルアニリン等の芳香族アミン類、2−ベンジルピリジン、3−ベンジルピリジン、4−ベンジルピリジン、2−フェニルピリジン、3−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、1−n−オクタデシルピロール等の複素芳香族アミン類が挙げられる。これらの中でベンジルアミン類や芳香族アミン類が優れており、さらに好ましくは、トリベンジルアミン、N,N−ジベンジルアニリンや2−ベンジルピリジンのように分子内に芳香族環ないし複素芳香族環が二つ以上含まれるアミン化合物である。
なお、これらのアミン化合物は、後記する粘土・アミン複合体を調製するに当たり、予めアミン化合物のブレンステッド酸付加体としたものを用いてもよい。アミン化合物のブレンステッド酸付加体としては、前記のアミン化合物に、例えば、塩酸、硫酸などのブレンステッド酸が付加したものが挙げられる。
【0022】
(1−D)成分
(1−D)成分は有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機リチウム化合物及び有機亜鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物であり、安価で入手可能な有機アルミニウム化合物が好ましい。具体的には、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,トリ−tert−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,ジメチルアルミニウムメトキシド,ジエチルアルミニウムエトキシド等のハロゲンあるいはアルコキシ基含有のアルキルアルミニウム、メチルアルモキサン,エチルアルモキサン,イソブチルアルモキサン等のアルモキサンなどを挙げることができる。中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0023】
次に、前記(1−A)成分と(1−B)成分、(1−C)成分及び必要に応じて用いられる(1−D)成分の割合について述べる。
(1−A)成分(遷移金属錯体)と(1−B)成分(粘土等)との割合は、(1−B)成分の単位重量(g)に対し、(1−A)成分の0.1〜1000マイクロモル、好ましくは1〜100マイクロモルの範囲である。(1−C)成分(アミン化合物又はそのブレンステッド酸付加体)は、通常(1−B)成分の単位重量(g)に対し、(1−C)成分0.001〜2ミリモル、好ましくは0.01〜1ミリモルの範囲である。必要に応じて用いられる(1−D)成分(有機金属化合物)は、通常(1−B)成分の単位重量(g)に対し、(1−D)成分0.01〜100ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲であるが、過剰に使用した場合でも、粘土等の懸濁スラリーを溶媒で洗浄し、系外に除去することができる。また、(1−C)成分(アミン化合物又はそのブレンステッド酸付加体)の量としては、(1−B)成分のイオン交換容量以下であることが好ましい。たとえば、モンモリロナイトの場合、イオン交換容量は単位重量(g)当たり0.9ミリ等量であり、(1−C)成分はこの値以下であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明のα−オレフィン製造用触媒の調製方法について述べる。本発明のα−オレフィン製造用触媒の調製方法として、最も好ましい調製方法は、(1−B)成分と(1−C)成分を予め接触させて粘土・アミン複合体を合成し、これに(1−D)成分を接触せしめて複合体に含まれる水等の共雑物を除去した後、該複合体に(1−A)成分を接触させる調製方法である。このように調製して得られる触媒が最も高活性で高選択率である。これらの調製過程をより具体的に説明すると、(1−B)成分を10倍量以上の水に懸濁させ、これに(1−C)成分を添加し、室温、好ましくは室温〜100℃以下の温度範囲で10分以上、好ましくは15分以上、さらに好ましくは1時間以上内容物を攪拌させた後、得られたスラリーをろ過器でろ過し、粘土・アミン複合体を得る。このとき(1−C)成分は水溶液として添加した方が反応場での接触効率が向上し好ましい。(1−C)成分の均一水溶液を得るためには、酸(塩酸、硫酸、燐酸等)を加えればよい。必要に応じて、さらにアルコール(メタノール、エタノール等)を加えてもよい。その後、ろ過物(粘土・アミン複合体)は含まれる水を乾燥し除去しする。微量に残存する水等の不純物を除去するために粘土・アミン複合体に(1−D)成分を接触させ、加熱処理し除去することが好ましい。接触に際しては、重合時に用いる溶媒と同じものを用いて接触させることが好ましい。溶媒としては、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素或いはハロゲン化炭化水素が使用できる。好ましくは、脂肪族炭化水素、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0025】
このような前処理を施した上で粘土・アミン複合体と(1−A)成分を接触させる。接触は10分以上、好ましくは15分以上、さらに好ましくは1時間以上、特に好ましくは12時間以上行なうことが好ましい。接触の温度は、室温〜溶媒の沸点以下であればよい。これらの接触処理は、アルゴンや窒素等の不活性気流中で行うのが好ましい。また、溶媒としては重合時に用いる溶媒と同じものが好ましい。好ましくは、脂肪族炭化水素、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。さらに、触媒にとって有害な水や水酸基、アミノ基等の活性水素を有する化合物の存在しない系で行う方が好ましい。そのためには、(1−D)成分を用いて予め系内から水や活性水素を有する化合物を除去した方がよい。なお、この場合の(1−D)成分は必ずしも触媒調製時に使用する必要はなく、α−オレフィンの製造時に反応系内で使用してもよい。
【0026】
次に、本発明のα−オレフィンの製造方法について説明する。本発明のα−オレフィンの製造法においては、上記の触媒を用いて、必要により前記(1−D)成分の存在下、エチレンのオリゴマー化反応を行う。この反応を行う方法については、特に制限はなく、溶媒を用いる溶液反応法をはじめ、実質上溶媒を用いない液相無溶媒反応法、気相反応法など任意の方法を採用することができる。好ましくは、溶液反応法である。また、連続反応,回分式反応のいずれであってもよい。溶媒を用いる場合には、その溶媒としては、ブタン、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒を挙げることができる。なかでも、シクロヘキサンであるとトルエン等の芳香族炭化水素溶媒に比べ、アルキル化された副生物が生成し、製品の純度が低下するという問題がなく特に好ましい。なおかつ、本発明のα−オレフィン触媒と溶媒としてシクロヘキサンを組み合わせることにより、従来の粘土等をその一成分に用いる触媒における問題(トルエン等の芳香族炭化水素溶媒からシクロヘキサン溶媒に変えると重合活性が経時的に著しく低下する)も解決されるという利点がある。これらの溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。溶媒を用いる場合の触媒の使用量は、溶媒1リットル当たり、(1−A)成分が、触媒に含有される錯体のモル数表示で、通常、0.01〜100マイクロモル、好ましくは0.1〜20マイクロモルの範囲において行うのが反応活性の面から有利である。
【0027】
反応条件については特に限定されないが、反応温度は、通常−78〜200℃、好ましくは常温〜150℃の範囲である。反応系の圧力については、通常常圧〜15MPa(Gauge)、好ましくは常圧〜5MPa(Gauge)の範囲である。また、反応に際しての分子量の調節は、公知の手段、例えば温度や圧力の選定等により行うことができる。
【0028】
(2)第二態様の触媒
第二態様の触媒は(2−A)周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(2−B)粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物(以下、粘土等ともいう)、(2−C)四級アンモニウム塩からなる。更に、(2−D)有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機リチウム化合物及び有機亜鉛化合物からなる化合物の群から選ばれる少なくとも一種の有機金属化合物を任意成分として含んでいてもよい。
これら(2−A)、(2−B)、(2−C)及び(2−D)成分について、以下に具体的に説明する。
【0029】
(2−A)成分
一般に主触媒と呼ばれる(2−A)成分は広範囲の周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体から選択することができる。
【0030】
周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体としては、下記式
【化8】

(式中、M’は周期律表4〜6族の遷移金属を示し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、それらは同一であっても異なってもよく、X1及びY1はそれぞれ独立に共有結合性又はイオン結合性の基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、pは0〜2の整数、qは0〜5の整数を示す)で表される2以上のアニリン基の窒素原子を介して遷移金属と結合するキレート錯体を挙げることができる。
式中、M’は周期律表4〜6族の遷移金属を示し、ハフニウム、ニオブ、モリブテン又はタングステン等が挙げられる。なかでもチタン、ジルコニウムが好ましい。Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。Rとしては、同一であっても異なってもよい。X1及びY1は前記式(1)及び(2)に関して述べたのと同様である。pは0〜2の整数、好ましくは1を示し、qは0〜5、好ましくは0〜3の整数を示す。
【0031】
前記のアニリン基を含有するキレート錯体としては、下記のマッコンビル型チタニウムキレート錯体等が挙げられる。
【化9】

さらには、上記の化合物において、チタニウムをジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、モリブテン又はタングステン等に置換した遷移金属化合物が挙げられる。さらには、これらの化合物の塩素原子を臭素原子,ヨウ素原子,水素原子,メチル基,フェニル基などに置き換えたものなどが挙げられる。
周期律表第8〜10族の遷移金属錯体としては、前記した(1−A)成分と同様の遷移金属錯体が使用できる。
【0032】
(2−A)成分としては、周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体のいずれであってもよいが、好ましくは周期律表第8〜10族の遷移金属錯体である。周期律表第8〜10族の遷移金属錯体としては前記一般式(1)または(2)で表される遷移金属錯体のいずれであってもよいが、好ましくは一般式(2)で表される遷移金属錯体である。なかでも、窒素原子を含有する鉄のキレ−ト錯体、窒素原子を含有するコバルトのキレ−ト錯体及び窒素原子を含有するニッケルのキレ−ト錯体が特に好ましい。なお、(2−A)成分としては一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(2−B)成分
(2−B)成分は、前記した(1−B)成分と同様の粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物である。
これら(2−B)成分の中でも、後に述べる(2−C)四級アンモニウム塩を吸着ないし粘土等と反応し層間化合物を生成(インターカレーションともいう)する能力の高いものが好ましい。例えば、粘土または粘土鉱物が好ましく、具体的には、フィロ珪酸類が好ましく、さらにスメクタイトが好ましく、特に好ましいのはモンモリロナイトである。また、合成品としてはフッ素四珪素雲母が好ましい。
【0034】
(2−C)成分
(2−C)成分の四級アンモニウム塩としては、特に制限はなく四級アルキルアンモニウム塩、四級アリ−ルアンモニウム塩、四級アリ−ルアルキルアンモニウム塩、四級ベンジルアンモニウム塩、複素芳香族アンモニウム塩等が挙げられる。具体的には、四級アルキルアンモニウム塩としては、テトラ−n−プロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ジメチルジシクロヘキシルアンモニウムクロライド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロライド、メチルトリス(2−エチルヘキシル)アンモニウムクロライド、メチルトリ−n−デシルアンモニウムクロライド、メチルトリ−n−ドデシルアンモニウムクロライド、ジメチルジ−n−オクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。四級アリ−ルアンモニウム塩としては、テトラフェニルアンモニウムクロライド等が挙げられる。四級アリ−ルアルキルアンモニウム塩としては、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジフェニルアンモニウムクロライド、メチルトリフェニルアンモニウムクロライド等が挙げられる。四級ベンジルアンモニウム塩としては、ジメチルジベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリベンジルアンモニウムクロライド、ジメチルベンジルアニリニウムクロライド等が挙げられる。複素芳香族アンモニウム塩としては、N−メチル−2−ベンジルピリジニウムクロライド、N−メチル−3−ベンジルピリジニウムクロライド、N−メチル−4−ベンジルピリジニウムクロライド、N−メチル−2−フェニルピリジニウムクロライド、N−メチル−3−フェニルピリジニウムクロライド、N−メチル−4−フェニルピリジニウムクロライド等が挙げられる。さらに以上のクロライドをブロマイド、フルオライド、アイオダイドに置換した四級アンモニウム塩を挙げることができる。四級アンモニウム塩としては、その構成する窒素原子数に対する炭素原子数の割合が8以上であることが好ましい。なかでも、四級ベンジルアンモニウム塩や四級アリ−ルアンモニウム塩や四級アリ−ルアルキルアンモニウム塩のような芳香族環含有基を少なくとも1つ有する四級アンモニウム塩またはジメチルジシクロヘキシルアンモニウムクロライド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロライド、メチルトリス(2−エチルヘキシル)アンモニウムクロライド、メチルトリ−n−デシルアンモニウムクロライド、メチルトリ−n−ドデシルアンモニウムクロライド、ジメチルジ−n−オクタデシルアンモニウムクロライド等の炭素数が6以上のアルキル基を2つ以上有する四級アンモニウム塩がさらに好ましい。
【0035】
(2−D)成分
(2−D)成分は(1−D)成分と同様の有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機リチウム化合物及び有機亜鉛化合物からなる有機金属化合物の群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0036】
第二態様の触媒において、(2−A)成分(遷移金属錯体)と(2−B)成分(粘土等)との割合は、(2−B)成分の単位重量(g)に対し、(2−A)成分が0.1〜1000マイクロモル、好ましくは1〜100マイクロモルの範囲である。(2−C)成分(四級アンモニウム塩)は、通常(2−B)成分の単位重量(g)に対し、0.001〜2ミリモル、好ましくは0.01〜1ミリモルの範囲である。必要に応じて用いられる(2−D)成分(有機金属化合物)は、通常(2−B)成分の単位重量(g)に対し、0.01〜100ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲であるが、過剰に使用した場合でも、粘土等の懸濁スラリーを溶媒で洗浄することによって系外に除去することができる。また、(2−C)成分の量は、(2−B)成分における粘土等のイオン交換容量以下であることが好ましい。たとえば、モンモリロナイトの場合、イオン交換容量は単位重量(g)当たり0.9ミリ等量であり、四級アンモニウム塩はこの値以下であることが好ましい。
第二態様の触媒は、(1−C)成分の代わりに(2−C)成分を用いること以外は第一態様の触媒と同様にして調製される。
【0037】
次に、本発明のオレフィンの重合方法について説明する。本発明のオレフィンの重合法においては、上記の触媒を用いて、必要により前記(2−D)成分の存在下、オレフィンの重合反応を行う。オレフィンとしては、エチレン又はプロピレン、ブテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンが挙げられる。好ましくは、エチレンを重合させる方法である。この反応を行う方法については、特に制限はなく、溶媒を用いる溶液反応法をはじめ、実質上溶媒を用いない液相無溶媒反応法、気相反応法など任意の方法を採用することができる。好ましくは、溶液反応法である。また、連続反応,回分式反応のいずれであってもよい。溶媒を用いる場合には、その溶媒としては、ブタン、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒を挙げることができる。なかでも、シクロヘキサンであるとトルエン等の芳香族炭化水素溶媒に比べ、アルキル化された副生物が生成し、製品の純度が低下するという問題がなく特に好ましい。なおかつ、本発明のオレフィン重合触媒と溶媒としてシクロヘキサンを組み合わせることにより、従来の粘土等をその一成分に用いる触媒における問題(トルエン等の芳香族炭化水素溶媒からシクロヘキサン溶媒に変えると重合活性が経時的に著しく低下する)も解決されるという利点がある。これらの溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。溶媒を用いる場合の触媒の使用量は、溶媒1リットル当たり、(2−A)成分が、触媒に含有される錯体のモル数表示で、通常、0.01〜100マイクロモル、好ましくは0.1〜20マイクロモルの範囲において行うのが反応活性の面から有利である。
【0038】
反応条件については特に限定されないが、反応温度は、通常−78〜200℃、好ましくは常温〜150℃の範囲である。反応系の圧力については、通常常圧〜15MPa(Gauge)、好ましくは常圧〜5MPa(Gauge)の範囲である。また、反応に際しての分子量の調節は、公知の手段、例えば温度や圧力の選定等により行うことができる。
本発明の触媒を用いるオレフィンの重合方法により、分子量が10,000以下の末端にビニル基を有するα−オレフィン(オリゴマー)又は分子量が10,000を超えるポリオレフィンを効率的かつ安価に製造することができる。
【0039】
(3)第三態様の触媒
第三態様のビニル化合物重合用触媒は、(3−A)周期律表第4〜6族の遷移金属錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体、(3−B)新規なビニル化合物重合用助触媒成分さらに必要に応じて(3−C)有機アルミニウム化合物を含有する。
以下、各成分について説明する。
【0040】
(3−A)成分
周期律表第4〜6族の遷移金属錯体としては、前記(2−A)成分と同様の周期律表第4〜6族の遷移金属キレート錯体及び以下の(1)〜(10)に示す化合物が用いられる。
【0041】
(1)ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド等の架橋する結合基を有さず共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、
(2)メチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,メチレンビス(インデニル)チタニウムクロロヒドリド,エチレンビス(インデニル)メチルチタニウムクロリド,エチレンビス(インデニル)メトキシクロロチタニウム,エチレンビス(インデニル)チタニウムジエトキシド,エチレンビス(インデニル)ジメチルチタニウム等のアルキレン基で架橋した共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、
(3)ジメチルシリレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,フェニルメチルシリレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド等のシリレン基架橋共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、
(4)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド,メチルアルミレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,フェニルアルミレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,フェニルホスフィレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,エチルボレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド等のゲルマニウム,アルミニウム,硼素,リン又は窒素を含む炭化水素基で架橋された共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、
(5)ペンタメチルシクロペンタジエニル−ビス(フェニル)アミノチタニウムジクロリド,インデニル−ビス(フェニル)アミノチタニウムジクロリド,ペンタメチルシクロペンタジエニル−ビス(トリメチルシリル)アミノチタニウムジクロリド,ペンタメチルシクロペンタジエニルフェノキシチタニウムジクロリド等の共役五員環配位子を1個有する遷移金属化合物、
(6)(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−イソプロピリデン)−ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)−ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−イソプロピリデン)−ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルチタニウム,(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−イソプロピリデン)−ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルチタニウム等の配位子同士が二重架橋された共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、
(7)シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド,メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド,ジメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド,トリメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド,テトラメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド等の配位子を有する遷移金属化合物、
(8)4,5,6,7−テトラヒドロインデニルチタニウムトリクロリド,2−メチルインデニルチタニウムトリクロリド等の配位子を有する遷移金属化合物、
(9)オクタヒドロフルオレニルチタニウムトリクロリド等の配位子を有する遷移金属化合物、
(10)ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド,ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドなどの共役五員環配位子を1個有する遷移金属化合物。
【0042】
周期律表第8〜10族の遷移金属錯体としては、前記(1−A)成分に使用される遷移金属錯体が使用される。なお、第三態様の触媒においては、下記に示す式(5)のR5〜R9及びR12〜R21の組合せが特に好ましい。
8=R9=R12=R21=メチル基、R5=R6=R7=R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=水素原子;
8=R9=メチル基、R5=R6=R7=R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=水素原子、R12=R21=エチル基;
8=R9=メチル基、R5=R6=R7=R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=水素原子、R12=R21=イソプロピル基;
8=R9=メチル基、R5=R6=R7=R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=水素原子、R12=R21=n−プロピル基;
8=R9=R12=R14=R19=R21=メチル基、R5=R6=R7=R13=R15=R16=R17=R18=R20=水素原子;
8=R9=メチル基、R5=R6=R7=R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=水素原子、R12=R21=塩素原子;
8=R9=メチル基、R5=R6=R7=R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=水素原子、R12=R21=トリフルオロメチル基。
(3−A)成分としては、周期律表第8〜10族の遷移金属錯体が好ましい。周期律表第8〜10族の遷移金属錯体としては前記一般式(1)または(2)で表される遷移金属錯体のいずれであってもよいが、なかでも、窒素配位原子を含有する鉄キレ−ト錯体、コバルトキレ−ト錯体及びニッケルキレ−ト錯体が特に好ましい。なお、遷移金属錯体は一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(3−B)成分
(3−B)成分は新規なビニル化合物重合用助触媒成分であり、
(3−B1)粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物、(3−B2)アミン化合物、そのブレンステッド酸付加体又は四級アンモニウム塩、および(3−B3)有機シラン化合物を接触させて得られる。
【0044】
(3−B1)成分
第一態様の触媒の(1−B)成分として用いられる粘土、粘土鉱物又はイオン交換性化合物が助触媒の(3−B1)成分として用いられる。
(3−B1)成分としては、珪素を含有するイオン交換性層状化合物が好ましい。珪素を含有するイオン交換性層状化合物としては、フィロ珪酸類や雲母族が好ましいものとして挙げられる。フィロ珪酸類としては、スメクタイト族が好ましく、具体的には、モンモリロナイト(成分含量等により、精製ベントナイト、あるいは粗製ベントナイトとも呼ばれることがある)、サポナイト等が挙げられる。雲母族としては、合成雲母として知られているフッ素四珪素雲母等が挙げられる。フッ素四珪素雲母としては、非膨潤性雲母と膨潤性雲母があるが、本発明においては膨潤性雲母が好ましい。(3−B1)成分としては、スメクタイト族又は雲母族がビニル化合物重合体触媒成分として用いると重合活性が向上し特に好ましい。
【0045】
(3−B2)成分
(3−B2)成分は第一級アルキルアミン、第二級アルキルアミン、第三級アルキルアミンなどのアミン化合物、そのブレンステッド酸付加体又は四級アンモニウム塩である。好ましくは、ビニル化合物重合用触媒成分として用いた場合に重合活性が向上する第三級アルキルアミンもしくはそのプレンステッド酸付加体及び第四級アンモニウム塩である。
【0046】
第三級アルキルアミンとしては、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン等のアルキルアミン、ビニルジエチルアミン、アリルジエチルアミン、シクロヘキセニルジメチルアミン、ジビニルエチルアミン、ジアリルメチルアミン、ジシクロヘキセニルメチルアミン等のアルケニルアミン、ジフェニルメチルアミン、フェニルジエチルアミン、フェニルジプロピルアミン、ナフチルジメチルアミン等のアリールアルキルアミン又はトリベンジルアミン等が挙げられる。これらの第三級アルキルアミンのうち好ましいのは、アミン化合物に含まれる総窒素原子数に対する総炭素原子数の割合(以下、C/N比と言うことがある)が8以上[トリエチルアミンのC/N比は6であり、トリ−n−ブチルアミンのC/N比は12と算出できる]のものである。第三級アルキルアミンのブレンステッド酸付加体としては、前記の第三級アルキルアミンに、例えば、塩酸、硫酸等のブレンステッド酸が付加したものが挙げられる。
四級アンモニウム塩としては、(2−C)成分に関して述べたものと同様の塩が使用される。
(3−B2)成分は、通常(3−B1)成分の単位質量[g]に対し、0.001〜2ミリモル、好ましくは0.01〜1ミリモル用いられる。
【0047】
(3−B3)成分
有機シラン化合物としては、特に制限はないが、下記一般式(7)で表される有機シラン化合物が挙げられる。
26rSiX4-r (7)
(置換基R26は、Siと直接結合する置換基部位の原子が炭素若しくは珪素である基または水素であり、置換基Xは、ハロゲン又はSiと直接結合する置換基部位の原子が酸素若しくは窒素である基であって、R26およびXが複数存在するときには、複数のR26またはXは同一でも異なっていてもよい。rは、1〜3の整数である。)
【0048】
また、前記一般式(7)で表わされる有機シラン化合物としては、さらに下記一般式(8)
26t3-tSi(CH2sSiX3-t26t (8)
(式中、sは1〜10の整数を表し、tは1〜3の整数を表し、R26及びXは式(7)と同様である。)
で表されるビスシリル体や、多核のポリシロキサン、ポリシラザンなどが挙げられる。
【0049】
前記一般式(7)で表される有機シラン化合物の具体的な化合物としては、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、t−ブチルジフェニルシリルクロリド、フェネチルジメチルシリルクロリド等のトリアルキルシリルクロリド類、ジメチルシリルジクロリド、ジエチルシリルジクロリド、ジイソプロピルシリルジクロリド、ジ−n−ヘキシルシリルジクロリド、ジシクロヘキシルシリルジクロリド、ドコシルメチルシリルジクロリド、ビス(フェネチル)シリルジクロリド、メチルフェネチルシリルジクロリド、ジフェニルシリルジクロリド、ジメシチルシリルジクロリド、ジトリルシリルジクロリド等のジアルキルシリルジクロリド類、メチルシリルトリクロリド、エチルシリルトリクロリド、イソプロピルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、フェニルシリルトリクロリド、フェネチルシリルトリクロリド等のアルキルシリルトリクロリド類、または、上記化合物におけるクロリドの部分を他のハロゲン元素で置き換えたシリルハライド類等が挙げられる。そして、ジメチルクロロシラン、(N,N−ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ジイソブチルクロロシラン等のヒドリドを有するシラン類や、トリメチルシリルヒドロキシド、トリエチルシリルヒドロキシド、トリイソプロピルシリルヒドロキシド、t−ブチルジメチルシリルヒドロキシド、フェネチルジメチルシリルヒドロキシド、ジシクロヘキシルシリルジヒドロキシド、ジフェニルシリルジヒドロキシド等のアルキルシリルヒドロキシド類や、パーアルキルポリシロキシポリオールの慣用名で称せられるポリシラノール類等が挙げられる。
【0050】
一般式(8)で表わされるものとしては、ビス(メチルジクロロシリル)メタン、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン、ビス(メチルジクロロシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン等のビスシリル類が挙げられる。多核のポリシロキサンとしては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状のポリシロキサン類や1,1,5,5−テトラフェニル−1,3,3,5−テトラメチルトリシロキサン等の直鎖状のポリシロキサン類が挙げられる。ポリシラザンとしては、ビス(トリメチルシリル)アミド、ビス(トリエチルシリル)アミド、ビス(トリイソプロピルシリル)アミド、ビス(ジメチルエチルシリル)アミド、ビス(ジエチルメチルシリル)アミド、ビス(ジメチルフェニルシリル)アミド、ビス(ジメチルトリルシリル)アミド、ビス(ジメチルメンチルシリル)アミド等のジシラザン類等が挙げられる。
なかでも、前記一般式(7)又は(8)において、R26がアルキル基、ベンジル基または芳香族基であって、Xがハロゲンまたは酸素を含有する基である有機シラン化合物が好ましい。これら有機シラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(3−B3)成分(有機シラン化合物)と(3−B1)成分(粘土等)との接触は、水の存在下に行う方が効果的である。その場合、水は粘土等の粗大粒子を微細に分散させるとともに、粘土の積層構造に影響を与え、有機シラン化合物と、粘土等との接触効率を高める作用をするものと推察される。すなわち、その水が粘土等の結晶の層間を拡大させ、粘土と有機シラン化合物の反応を促進させるものと推察される。なお、本発明は、これらの推察により何ら制約されるものではない。
有機シラン化合物の使用割合は、(3−B1)成分の単位質量[g]あたり、珪素原子のミリモル数に基づいて0.001〜1000、好ましくは0.01〜100である。
本発明のビニル化合物重合用助触媒成分としては、(3−B1)成分が、イオン交換性の珪素含有層状化合物であって、スメクタイト族又は雲母族であり、(3−B2)成分が、第3級アルキルアミンもしくはそのブレンステッド酸付加体、又は四級アルキルアンモニウム塩であって、C/N比が8以上であり、(3−B3)成分が、上記一般式(7)又は(8)で表わされる有機シラン化合物であって、前記一般式において、R26がアルキル基、ベンジル基または芳香族基であって、Xがハロゲンまたは酸素含有基であり、かつ、r又はsが1または2の整数であるものを接触させて得られるものが重合活性が向上し特に好ましい。
【0052】
ビニル化合物重合用助触媒成分の調製方法としては、特に制限はないが、大きく分けて2つの方法が挙げられる。一つは、粘土等を水に分散し、得られた粘土コロイド水溶液に有機シラン化合物を添加し、加熱・攪拌処理を行い、その後、第三級アルキルアミンないしそのブレンステッド酸塩、もしくは第四級アルキルアンモニウム塩を添加することにより調製する方法である。このようにして得られたビニル化合物重合用助触媒成分は、スラリー状態となり水と容易に分離することから、簡単なろ過操作で製造できる利点があり、好ましい。また、他の方法は、予め、第三級アルキルアミンないしそのブレンステッド酸塩、もしくは四級アルキルアンモニウム塩で調製した粘土等(アミン処理粘土等の調製は水中で行う)をヘキサン、トルエン等の非プロトン性の溶媒に分散させ、これに有機シラン化合物を作用させて調製する方法である。
いずれの方法を用いても、(3−B2)成分(アミン類等)ないし(3−B3)成分(有機シラン化合物)の配合比は、(3−B1)成分の単位重量[g]に対し、前記の使用割合で行うことができる。
【0053】
(3−C)成分
(3−C)成分の有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(9)
24vAlQ3-v (9)
(式中、R24は炭素数1〜10のアルキル基、Qは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である)で示される化合物が用いられる。
【0054】
前記一般式(9)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0055】
また、他の有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(10)
【化10】

(式中、R25は炭素数1〜20、好ましくは2〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基などの炭化水素基あるいはハロゲン原子を示し、wは平均重合度を示し、通常2〜50、好ましくは2〜40の整数である。なお、各R25は同じでも異なっていてもよい。)で示される鎖状アルミノキサン、及び下記一般式(11)
【化11】

(式中、R25及びwは前記一般式(10)におけるものと同じである。)で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
前記アルミノキサンの具体例としては、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0056】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、(1)有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、(2)重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(3)金属塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法などがある。
なお、アルミノキサンとしては、炭化水素溶媒に不溶性のものであってもよいし、炭化水素溶媒に可溶であってもよい。好ましくは、炭化水素溶媒に可溶であって、かつ1H−NMRより測定した残留有機アルミニウム化合物が10質量%以下の場合である。さらに好ましくは、残留有機アルミニウム化合物が3〜5質量%以下、特に好ましくは、2〜4質量%以下である。このようなアルミノキサンを用いると、アルミノキサンが担体に担持される割合(担持率とも言う)が増加し好ましい。炭化水素溶媒に可溶であるので、担持されなかったアルミノキサンをリサイクルして再使用することができるという利点もある。さらに、アルミノキサンの性状が安定しているので、使用に際して特に処理を必要としないという長所もある。また、重合により得られるポリオレフィンの平均粒径や粒径分布(総称してモルフォロジーとも言われる)が向上し、好ましい。残留有機アルミニウム化合物が10質量%を越えると担持率が低下し、重合活性が低下することがある。
【0057】
このようなアルミノキサンを得る方法としては、例えば、アルミノキサンの溶液を加温減圧により溶媒を留去し乾固させる方法(ドライアップ法とも言う)が挙げられる。ドライアップ法では、加温減圧による溶媒の留去は80℃以下が好ましく、さらに好ましくは、60℃以下である。
また、アルミノキサンから炭化水素溶媒に不溶な成分を除去する方法としては、例えば、炭化水素溶媒に不溶な成分を自然沈降させ、その後デカンテーションにより分離する方法が挙げられる。或いは、遠心分離等の操作により分離する方法でもよい。その後、さらに回収した可溶解成分をG5ガラス製フィルター等を用い、窒素気流下にてろ過した方が不溶な成分が充分除去されるので好ましい。このようにして得られるアルミノキサンは時間の経過とともにゲル成分が増加することがあるが、調製後48時間以内に使用することが好ましく、調製後直ちに使用することが特に好ましい。アルミノキサンと炭化水素溶媒の割合は、特に制限はないが、炭化水素溶媒1リットルに対しアルミノキサン中のアルミニウム原子が0.01〜10モルとなるような濃度で用いることが好ましい。
なお、前記の炭化水素溶媒溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等芳香族炭化水素やペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等脂肪族炭化水素やシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等脂環式炭化水素やナフサ、ケロシン、ライトガスオイル等石油留分等が挙げられる。
【0058】
これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、ビニル化合物重合用触媒の調製方法としては、特に制限はないが、アミン化合物および有機シラン化合物でそれぞれ処理された粘土等、すなわちビニル化合物助触媒成分に対し、必要に応じて、(3−C)成分の有機アルミニウム化合物を添加した後、(3−A)成分の遷移金属錯体を接触させる方法が挙げられる。接触に要する時間は錯体の種類により異なるが、通常10分〜数日、好ましくは、10分〜数時間である。各成分の使用割合は、ビニル化合物重合用助触媒成分の単位質量(g)に対し、(3−A)成分は0.1〜1000マイクロモル、好ましくは1〜50マイクロモルの範囲で用いれば良い。また。(3−C)成分量は、同じくビニル化合物重合用助触媒成分の単位質量(g)に対し、20ミリモル以下とすることが好ましい。
【0059】
本発明のビニル化合物重合体の製造方法は、上記の触媒を用いて、必要により(3−D)有機金属化合物の存在下、ビニル化合物の重合を行なう方法である。(3−D)有機金属化合物としては、(1−D)において述べた有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機リチウム化合物及び有機亜鉛化合物から成る群より選ばれた少なくとも一の化合物が、通常(3−B1)成分(粘土等)の単位質量(g)に対し、0.01〜100ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモル用いられる。
【0060】
ビニル化合物としては、オレフィン類、スチレン、スチレン類、アクリル酸誘導体、脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
該オレフィン類については特に制限はないが、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましい。このα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6−フェニル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等の直鎖又は分岐状α−オレフィン類、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等のジエン類、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2−フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、3−フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4−ジクロロ−1−ブテン等のハロゲン置換α−オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等の環状オレフィン類が挙げられる。スチレン類としては、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−プロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−メチルスチレン、o−エチルスチレン、o−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、m−メチルスチレン、m−エチルスチレン、m−イソプロピルスチレン、m−ブチルスチレン、メシチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン類、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン、更にはトリメチルシリルスチレン、ビニル安息香酸エステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。アクリル酸誘導体としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
脂肪酸ビニル類としては、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、アクリル酸ビニル等が挙げられる。
本発明においては、上記ビニル化合物は一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。二種以上のビニル化合物の共重合を行う場合、上記オレフィン類を任意に組み合わせることができる。
【0061】
また、本発明においては、上記オレフィン類と他の単量体とを共重合させてもよく、この際用いられる他の単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエンなどの鎖状ジオレフィン類、ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ノルボルネン等の多環状オレフィン類、ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジオレフィン類、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和エステル類などを挙げることができる。
ビニル化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレンのいずれかであることが好ましく、なかでもエチレンが特に好適である。また、ビニル化合物を重合させる方法については特に制限はなく、スラリー重合法、溶液重合法、気相重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、任意の重合法を採用することができる。好ましくは、溶液重合法である。また、連続反応,回分式反応のいずれであってもよい。溶媒を用いる場合には、その溶媒としては、各種ブタン、各種ペンタン,各種ヘキサン,各種ヘプタン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒を挙げることができる。なかでも、シクロヘキサンであるとトルエン等の芳香族炭化水素溶媒に比べ、アルキル化された副生物が生成し、製品の純度が低下するという問題がなく特に好ましい。これらの溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。溶媒を用いる場合の触媒の使用量は、溶媒1リットル当たり、(3−A)成分が、触媒に含有される錯体のモル数表示で、通常、0.01〜1,000マイクロモル、好ましくは0.1〜500マイクロモルの範囲において行うのが反応活性の面から有利である。
【0062】
反応条件については特に限定されないが、反応温度は、通常−78〜200℃、好ましくは常温〜150℃の範囲である。反応系の圧力については、通常常圧〜15MPa(gauge)、好ましくは常圧〜5MPa(gauge)の範囲である。また、反応に際しての分子量の調節は、公知の手段、例えば温度や圧力の選定等により行うことができる。本発明のビニル化合物重合用触媒及び該触媒を用いるビニル化合物重合体の製造方法により、数平均分子量が10,000以下の末端にビニル基を有するα−オレフィン(オリゴマー)又は数平均分子量が10,000を超えるポリオレフィンが効率的かつ安価に製造することができる。
【実施例】
【0063】
次に、本発明を具体的に実施例にて説明するが、本発明はこれらの例によってなんら制限されるものではない。
【0064】
実施例1
(1)助触媒液Aの調製
内容積10Lのフラスコに蒸留水4Lを入れ、スターラーで攪拌しながらNa−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)10gを徐々に添加した。添加後、室温で2時間攪拌し粘土・水コロイド液を調製した。次に粘土・水コロイド液を80℃に加温し、これにN,N−ジベンジルアニリン2.19g(8ミリモル)、濃塩酸(35〜37%濃度)4mlおよびエチルアルコール40mlからなる溶液を徐々に添加した。添加後、同温度で2時間攪拌し更に100℃に昇温して2時間攪拌を行った。コロイド溶液が凝集し粘土スラリーが得られたことを確認し、加圧ろ過器を用いて生成物を熱時ろ過した。ろ過物は室温で真空乾燥を行い、粘土・アミン複合体を12.8g得た。
次に内容積2Lのフラスコに粘土・アミン複合体10gを入れ、これに0.5モル/L濃度のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液を室温で250ml添加した後、100℃に昇温し同温度で1時間攪拌を行なった。冷却後、得られた粘土スラリーに乾燥トルエンを1L添加し静置した。上澄みはキャヌラーでろ過し、トルエン洗浄を繰返した。最後にスラリー液を500mlに調整し、助触媒液A(粘土・アミン複合体含量20mg/ml)とした。
【0065】
(2)触媒液Aの調製
J.Am.Chem.Soc.,1998,4049およびChem.Commun.,1998,849に記載された方法に準じて調製したピリジンビスイミン鉄錯体[2,6−[(2,4−C63Me2)N=C(Me)]253N]FeCl2の0.088g(200μモル)をトルエン20mlに懸濁させて錯体スラリーA(錯体量10μモル/ml)を調製した。次にシュレンク管に助触媒液A2.5mlと錯体スラリーA0.05mlをそれぞれ採取して混合した後、室温で一時間攪拌を行ない、触媒液Aを調製した。
【0066】
(3)オリゴマー化反応
脱気し75℃に昇温した内容積1.6Lのオートクレーブに、窒素気流下、乾燥シクロヘキサン400ml、テトライソブチルジアルモキサン[(CH33CHCH22AlOAl[CH2CH(CH322のトルエン溶液1ml(Al含量1.0モル/L)および触媒液A全量を順次添加した。反応液を80℃に昇温した後、エチレンを送入し反応圧を常に0.8MPa・Gに保持した。エチレン送入開始後30分経過した時点で送入を止め冷却水にて反応液を急冷した。冷却後、脱圧し全液量を回収したところ、全収量は49.0gで、そのうちポリマー量は7.9gであった。全重合活性およびオリゴマー活性はそれぞれ3510kg/gFe/hおよび2940kg/gFe/hであった。全収量は、オリゴマー化反応後に回収した反応混合物重量から溶媒の重量を差し引いた値である。回収した反応混合物は、加圧ろ過した。フィルター上の固体を減圧下、80℃で4時間乾燥して求めた量をポリマー量とした。
【0067】
比較例1
(1)助触媒液Bの調製
実施例1の助触媒液Aの調製を以下のように変えたこと以外は実施例1と同様に行い助触媒液Bを調製した。
十分に脱水したNa−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)10gを内容積2Lのフラスコに窒素気流下入れ、更に0.5モル/L濃度のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液を室温で250ml添加した後、混合溶液を100℃に昇温し同温度で1時間攪拌を行なった。冷却後、得られた粘土スラリーに乾燥トルエンを1L添加し静置した。上澄みはキャヌラーでろ過し、トルエン洗浄を繰返した。最後にスラリー液を500mlに調整し、助触媒液B(粘土含量20mg/ml)とした。
【0068】
(2)触媒液Bの調製
助触媒Aを前記で調製した助触媒液Bに変えたこと以外は実施例1の(2)と同様に行い触媒液Bを調製した。
(3)オリゴマー化反応
触媒液Aの代わりに触媒液Bを用いたたこと以外は実施例1の(3)と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行なった。エチレンの送入後30分を経過してもエチレンの吸収は全く起きず、回収液を分析してもオリゴマーとポリマーの生成は確認できなかった。
【0069】
実施例2
重合溶媒をシクロヘキサンの代わりにトルエンとしたこと以外は、実施例1の(3)と同様にしてエチレンのオリゴマー化反応を行なった。全収量は27.1gで、そのうちポリマー量は0.8gであった。全重合活性およびオリゴマー活性はそれぞれ1940kg/gFe/hおよび1880kg/gFe/hであった。
【0070】
実施例3
重合温度を80℃の代わりに50℃としたこと以外は、実施例1の(3)と同様にしてエチレンのオリゴマー化反応を行なった。全収量は111.6gで、そのうちポリマー量は14.2gであった。全重合活性およびオリゴマー活性はそれぞれ7990kg/gFe/hおよび6980kg/gFe/hであった。
【0071】
実施例4
(1)助触媒液Cの調製
N,N−ジベンジルアニリン2.19g(8ミリモル)をトリベンジルアミン2.30g(8ミリモル)としたこと以外は実施例1の(1)と同様に行い助触媒液C(粘土・アミン複合体含量20mg/ml)を調製した。
(2)触媒液Cの調製
助触媒液Aを助触媒液Cに変えたこと以外は実施例1の(2)と同様に行い触媒液Cを調製した。
(3)オリゴマー化反応
触媒液Aを触媒液Cに変えたこと及び重合温度80℃を50℃に変えたこと以外は実施例1の(3)と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行なった。全収量は94gで、そのうちポリマー量は14.2gであった。全重合活性およびオリゴマー活性はそれぞれ6730kg/gFe/hおよび5720kg/gFe/hであった。
【0072】
実施例5
(1)助触媒液Dの調製
実施例1の(1)において、Na−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)を産状の異なるNa−モンモリロナイト(クニミネ工業社製品、クニピアF)とし、粘土・水コロイド液を調製した。次に粘土・水コロイド液を60℃に加温し、これにN,N−ジメチルアニリン0.968g(8ミリモル)、濃塩酸(35〜37%濃度)4mlおよび水40mlからなる溶液を徐々に添加した。添加後、同温度で2時間攪拌を行った。コロイド溶液が凝集し粘土スラリーが得られたことを確認し、加圧ろ過器を用いて生成物を熱時ろ過した。ろ過物は室温で真空乾燥を行い、粘土・アミン複合体を10.2g得た。
次に内容積2Lのフラスコに粘土・アミン複合体10gを入れ、以下、実施例1の(1)で記載の通り、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)処理を行い、助触媒液D(粘土・アミン複合体含量20mg/ml)を調製した。
【0073】
(2)触媒液Dの調製
実施例1の(2)において、助触媒液A2.5mlのところを助触媒液D5.0mlとし、また錯体スラリーA(錯体量10μモル/ml)0.05mlを0.1mlとしたこと以外は、実施例1の(2)と同様にして触媒液Dを調製した。
(3)オリゴマー化反応
触媒液Aを触媒液Dに変えたこと及び重合溶媒シクロヘキサンをトルエンに変えたこと以外は、実施例1の(3)と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行なった。全収量は32.1gで、そのうちポリマー量は7.8gであった。全重合活性およびオリゴマー活性はそれぞれ1150kg/gFe/hおよび870kg/gFe/hであった。
【0074】
実施例6
(1)助触媒液Eの調製
実施例5の(1)において、クニミネ工業社製品のNa−モンモリロナイト(クニピアF)を豊順洋行社製品のNa−モンモリロナイト(ベンゲル)とし、そしてN,N−ジメチルアニリン0.968g(8ミリモル)を2,6−ジメチルピリジン0.129g(1.2ミリモル)に代えたこと以外は、実施例5の(1)と同様に調製した。このようにして得られた粘土・アミン複合体のTIBA処理品を助触媒液E(粘土・アミン複合体含量20mg/ml)とした。
(2)触媒液Eの調製
助触媒液Dを助触媒液Eに代えたこと以外は実施例5の(2)と同様に行ない、触媒液Eを得た。
(3)オリゴマー化反応
触媒液Dを触媒液Eに代えたこと以外は実施例5の(3)と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行なった。全収量は44.4gで、そのうちポリマー量は3.8gであった。全重合活性およびオリゴマー活性はそれぞれ1590kg/gFe/hおよび1450kg/gFe/hであった。
【0075】
実施例7
オリゴマー化反応を重合温度80℃で行なったこと以外は、実施例4(3)と同様にエチレンの反応を行なった。このとき、反応の過程で起きるエチレンの吸収速度を5分、10分および15分の反応経過毎に測定したところ、それぞれ4.3L/分、2.5L/分および1.5L/分であった。これらの結果を5分後の吸収量を基準とした相対吸収量で表わし、表1に示した。
【表1】

【0076】
実施例8
(1)助触媒液Fの調製
内容積2Lのフラスコに蒸留水1Lを入れ、スターラーで攪拌しながらNa−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)2.5gを徐々に添加した。添加後、室温で2時間攪拌し粘土・水コロイド液を調製した。次に粘土・水コロイド液を60℃に加温し、これにベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロリド0.496g(2ミリモル)を水100mlに溶かした水溶液を添加した。添加後、同温度で1時間攪拌を行った。得られた粘土スラリーを加圧ろ過器で熱時ろ過した。ろ過物は室温で真空乾燥を行い、粘土・四級アンモニウム塩複合体を2.9g得た。
次に内容積300mlのフラスコに粘土・四級アンモニウム塩複合体1.0gを入れ、これに0.5モル/L濃度のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液を室温で25ml添加した後、100℃に昇温し同温度で1時間攪拌を行なった。冷却後、得られた粘土スラリーに乾燥トルエンを250ml添加し静置した。上澄みはキャヌラーでろ過し、トルエン洗浄を繰返した。最後にスラリー液を50mlに調整し、助触媒液F(粘土・四級アンモニウム塩複合体含量20mg/ml)とした。
【0077】
(2)触媒液Fの調製
J.Am.Chem.Soc.,1998,4049およびChem.Commun.,1998,849に記載された方法に準じて調製したピリジンビスイミン鉄錯体[2,6−[(2,4−C63Me2)N=C(Me)]253N]FeCl2の0.088g(200μモル)をトルエン20mlに懸濁させて錯体スラリーA(錯体量10μモル/ml)を調製した。次にシュレンク管に助触媒液F5.0mlと錯体スラリーA0.2mlをそれぞれ採取して混合した後、室温で一時間攪拌を行ない、触媒液Fを調製した。
【0078】
(3)エチレンの重合
50℃に保持した内容積1.6Lのオートクレーブに、窒素気流下、乾燥シクロヘキサン400ml、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.5ml(Al含量1.0モル/L)および触媒液F全量を順次添加した。その後、エチレンを送入し反応圧を常に0.8MPa(Gauge)に保持した。エチレン送入開始後30分経過した時点で送入を止め冷却水にて反応液を急冷した。冷却後、脱圧し全生成物量を回収したところ、全収量は100.7gで、そのうちシクロヘキサン不溶の固形分、すなわちポリマー量は1.58gであり、それ以外のシクロヘキサン可溶分、すなわちオリゴマー量は99.12gであった。全重合活性およびシクロヘキサン可溶分についての活性はそれぞれ1800kg/gFe/hおよび1780kg/gFe/hであった。得られたポリマーについて13C−NMRを測定した結果、末端ビニル基を有していた。また、シクロヘキサン可溶分についてガスクロマトグラフィー(オリゴマー量はOV−1,60mを、純度はUltra−2,50mを用いた)を行った結果、末端ビニル基を有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー、炭素数8〜18)が98重量%以上含まれていた。
【0079】
比較例2
(1)助触媒液Gの調製
十分に脱水したNa−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)2.5gを内容積300mlのフラスコに窒素気流下入れ、更に0.5モル/L濃度のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液を室温で25ml添加した後、得られた混合溶液を100℃に昇温し同温度で1時間攪拌を行なった。冷却後、得られた粘土スラリーに乾燥トルエンを250ml添加し静置した。上澄みはキャヌラーでろ過し、トルエン洗浄を繰返した。最後にスラリー液を50mlに調整し、助触媒液G(粘土含量20mg/ml)とした。
(2)触媒液Gの調製
助触媒Fを前記で調製した助触媒液Gに変えたこと以外は実施例8の(2)と同様に行い触媒液Gを調製した。
(3)エチレンの重合
触媒液Fの代わりに触媒液Gを用いたたこと以外は実施例8の(3)と同様にエチレンの重合反応を行なった。エチレンの送入後30分を経過してもエチレンの吸収は全く起きず、回収液を分析してもオリゴマーとポリマーの生成は確認できなかった。
【0080】
実施例9
(1)触媒液Hの調製
J.Am.Chem.Soc.,1998,4049およびChem.Commun.,1998,849に記載された方法に準じて調製したピリジンビスイミン鉄錯体、[2,6−[(2,6−C63(i−C372)N=C(Me)]253N]FeCl20.088g(200μモル)をトルエン20mlに懸濁させて錯体スラリーB(錯体量10μモル/ml)を調製した。次にシュレンク管に実施例8の(1)で得た助触媒液F5.0mlと錯体スラリーB0.2mlをそれぞれ採取して混合した後、室温で一時間攪拌を行ない、触媒液Hを調製した。
【0081】
(2)エチレンの重合
50℃に保持した内容積1.6Lのオートクレーブに、窒素気流下、乾燥シクロヘキサン400ml、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.5ml(Al含量1.0モル/L)および触媒液H全量を順次添加した。その後、エチレンを送入し反応圧を常に0.8MPa(Gauge)に保持した。エチレン送入開始後30分経過した時点で送入を止め冷却水にて反応液を急冷した。冷却後、脱圧し全生成物量を回収しろ過したところ、22.8gのポリマーが得られたが、シクロヘキサン可溶分は得られず、オリゴマーも得られなかった。得られたポリマーについて13C−NMRを測定した結果、末端ビニル基を有していた。ポリエチレン重合活性は410kg/gFe/hであった。
【0082】
実施例10
(1)助触媒液Iの調製
内容積300mlのシュレンク管にエスベン(豊順洋行製品、有機ベントナイト)1.0gを入れ、これに0.5モル/L濃度のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液を室温で25ml添加したこと以外は、実施例8の(1)と同様に行ない、助触媒液I(粘土・四級アンモニウム塩複合体含量20mg/ml)を調製した。
(2)触媒液Iの調製
助触媒液Iと錯体スラリーAを用いたこと以外は、実施例8の(2)と同様にして触媒液を調製し、触媒液Iを得た。
【0083】
(3)エチレンの重合
実施例8の(3)において、触媒液Fの代わりに触媒液Iを用いたこと以外は、同様にしてエチレンの重合反応を行なった。得られた全生成物量は132.8gであった。そのうちポリマー量は1.47g、シクロヘキサン可溶分量は131.33gであった。全重合活性およびシクロヘキサン可溶分についての活性はそれぞれ2380kg/gFe/hとおよび2350kg/gFe/hであった。得られたポリマーについて13C−NMRを測定した結果、末端ビニル基を有していた。シクロヘキサン可溶分についてガスクロマトグラフィー(オリゴマー量はOV−1,60mを、純度はUltra−2,50mを用いた)を行った結果、末端ビニル基を有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー、炭素数6〜18)が98重量%以上含まれていた。
【0084】
実施例11
(1)触媒液Jの調製
Macromolecules,1996,29,5241に記載された方法に準じて、2,6−ジメチルアニリンと1,3−ブロモプロパンの反応物にトリメチルクロロシランを反応させシリル化物を得た。次にシリル化物に四塩化チタンを処理しマッコンビル型のチタニウム錯体[ArNCH2CH2CH2NAr]TiCl2(Ar=2,6−ジメチルフェニル)を合成した。そしてこのチタニウム錯体をヘプタンに懸濁させて錯体スラリーC(錯体量10μモル/ml)を調製した。次にシュレンク管に実施例8の(1)で得た助触媒液F5.0mlと錯体スラリーC1.0mlをそれぞれ採取して混合した後、室温で一時間攪拌を行ない、触媒液Jを調製した。
【0085】
(2)エチレンの重合
80℃に保持した内容積1.6Lのオートクレーブに、窒素気流下、乾燥トルエン400ml、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.5ml(Al含量1.0モル/L)および触媒液J全量を順次添加した。その後、エチレンを送入し反応圧を常に0.8MPa(Gauge)に保持した。エチレン送入開始後1時間経過した時点で送入を止め冷却水にて反応液を急冷した。冷却後、脱圧し全生成物量を回収しろ過したところ、5.3gのポリマーが得られたが、シクロヘキサン可溶分は得られず、オリゴマーも得られなかった。ポリエチレン重合活性は11kg/gTi/hであった。
【0086】
比較例3
(1)エチレンの重合
実施例11の(2)において、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.5ml(Al含量1.0モル/L)および触媒液J全量のところ、メチルアルモキサンのトルエン溶液(Al含量1.98モル/L:アルベマール社製)0.5mlおよびマッコンビル型のチタン錯体[ArNCH2CH2CH2NAr]TiCl2(Ar=2,6−ジメチルフェニル)のヘプタン溶液(錯体量10μモル/ml)1.0mlを用い、その他、実施例11の(2)と全く同様に重合を行った。1時間、エチレン重合して得られたポリマーは0.7gであったが、シクロヘキサン可溶分は得られず、オリゴマーも得られなかった。ポリエチレン重合活性は1.5kg/gTi/hであった。
【0087】
実施例12
(1)アミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Kおよび助触媒液Kの調製
内容積2リットルのフラスコに蒸留水1リットルを入れ、スターラーで攪拌しながらNa−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)2.5gを徐々に添加した。添加後、室温で2時間攪拌しコロイド液を調製した。次にコロイド液を70℃に加温し、これにイソプロパノール10ミリリットルに溶解したジフェニルシリルジクロリド[式(7):R26rSiX4-r、の有機シラン化合物においてR26=フェニル、X=塩素、r=2]1.0gを10分かけて添加し、同温度で2.5時間攪拌を継続した。次にこのシラン処理層状化合物スラリーに対し、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド[四級アルキルアンモニウム塩]0.792g(2ミリモル)を水100ミリリットルに溶かした水溶液を更に添加した。添加後、同温度で30分攪拌を行った。得られたスラリーを加圧ろ過器で熱時ろ過した。ろ過物は室温で真空乾燥を行い、アミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Kを3.5g得た。
次に内容積300ミリリットルのシュレンク管にアミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分K1.0gとトルエン20ミリリットルを入れ、これに0.5モル/リットル濃度のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液を室温で25ミリリットル添加した後、100℃に昇温し同温度で1時間攪拌を行なった。冷却後、得られたTIBA処理スラリーに乾燥トルエンを250ミリリットル添加し静置した。上澄みはキャヌラーでろ過し、トルエン洗浄を繰返した。最後にスラリー液を50ミリリットルに調製し、助触媒液K(ビニル化合物重合用助触媒成分K含量20mg/ミリリットル)とした。
【0088】
(2)触媒液Kの調製
J.Am.Chem.Soc.,1998,4049およびChem.Commun.,1998,849に記載された方法に準じて調製したピリジンビスイミン鉄錯体、[2,6−[(2,4−C63Me2)N=C(Me)]253N]FeCl20.088g(200マイクロモル)をトルエン20ミリリットルに懸濁させて錯体スラリーA(錯体量10マイクロモル/ミリリットル)を調製した。次にシュレンク管に助触媒液K5.0ミリリットルと錯体スラリーA0.2ミリリットルをそれぞれ採取して混合した後、室温で2時間攪拌を行ない、触媒液Kを調製した。
【0089】
(3)エチレンの重合
50℃に保持した内容積1.6リットルのオートクレーブに、窒素気流下、乾燥シクロヘキサン400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.5ミリリットル(Al含量1.0モル/リットル)および触媒液K全量を順次添加した。その後、エチレンを送入し反応圧を常に0.8MPa・Gに保持した。エチレン送入開始後30分経過した時点で送入を止め冷却水にて反応液を急冷した。冷却後、脱圧し生成した全液量、すなわちシクロヘキサン可溶分を、回収したところ、163.3gが得られた。また、シクロヘキサン可溶分についてガスクロマトグラフィー(オリゴマー量はOV−1、60mを、純度はUltra−2、50mを用いた)を測定した結果、末端ビニルを有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー、炭素数6〜18)が、99質量%含まれていた。また、シクロヘキサン不溶の固形分、すなわちポリマーの生成量は、0.96gであり、13C−NMRを測定した結果、末端ビニルの存在が認められた。したがって、全重合活性、オリゴマー活性および全生成物量に対するポリマーの生成量である副生ポリマー率は、それぞれ2920kg/gFe/h、2900kg/gFe/hおよび0.6質量%であった。
【0090】
実施例13
(1)アミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Lおよび助触媒液Lの調製
実施例12の(1)において、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド[第四級アルキルアンモニウム塩]0.792g(2ミリモル)の水溶液を用いるところ、トリベンジルアミン[第三級アルキルアミン]0.574g(2ミリモル)をエタノール20ミリリットルおよび濃塩酸(HCl濃度36質量%)0.2ミリリットルに溶かした液に変えて、その他、実施例12の(1)と全く同様にしてアミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Lを調製した。そして同様にして、ビニル化合物重合用助触媒成分Lから助触媒液L(ビニル化合物重合用助触媒成分L含量20mg/ミリリットル)を調製した。
【0091】
(2)触媒液Lの調製
以下に述べる〔ピリジンビスイミン鉄錯体の合成〕に従い調製したピリジンビスイミン鉄錯体[2,6−[(2−MeC64)N=C(Ph)]253N]FeCl2の0.113g(200マイクロモル)をトルエン20ミリリットルに懸濁させて錯体スラリーD(錯体量10マイクロモル/ミリリットル)を調製した。次にシュレンク管に助触媒液L5.0ミリリットルと錯体スラリーD0.1ミリリットルをそれぞれ採取して混合した後、室温で2時間攪拌を行ない、触媒液Lを調製した。
【0092】
〔ピリジンビスイミン鉄錯体の合成〕
(i)配位子前駆体2,6−ジベンゾイルピリジンの合成
還流冷却器を備えた200ミリリットルの2口丸底フラスコにAlC1312.2g(91.5ミリリットル)を入れ窒素置換を行なう。ここに2,6−ピリジンジカルボニルジクロリド6.12g(30.0ミリモル)のベンゼン溶液(ベンゼン50m1)を加える。攪拌しつつ加熱を行ない5時間還流させる。放冷後、NaHCO3水溶液を徐々に加えてAlC13を失活させる。反応液をトルエンで抽出、有機層を無水MgSO4で乾燥し溶媒を留去する。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル体積比=10/1)を用いて精製すると配位子前駆体2,6−ジベンゾイルピリジンが6.87g得られた(収率80%)。
【0093】
(ii)配位子2,6−ジベンゾイルピリジン−ジ(2−メチルフェニル)イミンの合成
テトラヒドロフラン(THF)10ミリリットルに溶解させたo−トルイジン0.50g(4.7ミリモル)に−78℃で1.6mo1/リットルのn−BuLiヘキサン溶液をl.5ミリリットル(2.4ミリモル)作用させ、o−トルイジンのLi塩を形成させる。室温まで加温した後、(i)で合成した2,6−ジベンゾイルピリジン0.20g(0.67ミリモル)のTHF(10ミリリットル)溶液へゆっくり滴下する。30分攪拌した後、メタノールで過剰なLi塩を失活させ、溶媒を減圧下蒸留留去する。蒸留水とトルエンを加え有機層を抽出し、溶媒を蒸留留去する。更に過剰のトルイジンを、減圧下(lmmHg)、100℃に加熱して留去し、配位子2,6−ジベンゾイルピリジン−ジ(2−メチルフェニル)イミンが0.32g得られた(収率50%)。
【0094】
(iii)鉄錯体の合成
配位子のジクロロメタン溶液に、過剰のFeC12(H20)4のメタノール溶液を加える。直ぐに錯体は生成し、反応溶液は濃青色に変わる。溶媒を留去し、ジクロロメタンで抽出し、以下に示すピリジンビスイミン鉄錯体[2,6−[(2−MeC64)N=C(Ph)]253N]FeCl2を得た。
【化12】

【0095】
(3)エチレンの重合
実施例12の(3)において、触媒液Kを用いるところ、触媒液Lに変え、その他は実施例12の(3)と全く同様に重合を行った。生成した全液量は47.9gで、ポリマー生成量は1.55gであった。したがって全重合活性、オリゴマー活性および副生ポリマー率は、それぞれ1720kg/gFe/h、1660kg/gFe/hおよび3.2質量%であった。
また、シクロヘキサン可溶分についてガスクロマトグラフィー(オリゴマー量はOV−1、60mを、純度はUltra−2、50mを用いた)を測定した結果、末端ビニルを有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー、炭素数6〜18)が、99質量%含まれていた。同様にポリマーについて13C−NMRを測定した結果、末端ビニルの存在が認められた。
【0096】
実施例14
(1)触媒液Mの調製
J.Am.Chem.Soc.,1998,4049およびChem.Commun.,1998,849に記載された方法に準じて調製したピリジンビスイミン鉄錯体、[2,6−[(2,6−(i−C37263)N=C(Me)]253N]FeCl20.088g(200マイクロモル)をトルエン20ミリリットルに懸濁させて錯体スラリーB(錯体量10マイクロモル/ミリリットル)を調製した。次にシュレンク管に実施例12の(1)で調製した助触媒液K5.0ミリリットルと錯体スラリーB0.2ミリリットルをそれぞれ採取して混合した後、室温で一時間攪拌を行ない、触媒液Mを調製した。
【0097】
(2)エチレンの重合
実施例13の(3)において、触媒液Lを用いるところ、触媒液Mに変え、その他は実施例13の(3)と全く同様に30分重合を行った。生成物は全量がポリマーであった。生成物は減圧下、90℃で8時間乾燥したところ、47.9gが得られた。重合活性は、860kg/gFe/hであった。
【0098】
比較例4
(1)シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Nおよび助触媒液Nの調製
内容積2リットルのフラスコに蒸留水1リットルを入れ、スターラーで攪拌しながらNa−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)2.5gを徐々に添加した。添加後、室温で2時間攪拌しコロイド液を調製した。次にコロイド液を70℃に加温し、これにイソプロパノール10ミリリットルに溶解したジフェニルジクロロシラン1.0gを10分かけて添加し、同温度で3時間攪拌を継続した。反応後、得られたスラリーを加圧ろ過器で熱時ろ過した。ろ過物は室温で真空乾燥を行い、シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Nを3.1g得た。
次に内容積300ミリリットルのシュレンク管にシラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分N1.0gとトルエン20ミリリットルを入れ、実施例12の(1)と同様にTIBA処理を行ない、助触媒液N(ビニル化合物重合用助触媒成分N含量20mg/ミリリットル)を調製した。
【0099】
(2)触媒液Nの調製
前項で調製した助触媒液N5.0ミリリットルと実施例14の(1)で調製した錯体スラリーB0.2ミリリットルをそれぞれ採取して混合した後、室温で一時間攪拌を行ない、触媒液Nを得た。
(3)エチレンの重合
実施例14の(2)において、触媒液Mを用いるところ、触媒液Nに変え、その他は実施例14の(2)と全く同様に重合を行った。生成物は全量がポリマーであって、18.4gであった。重合活性は、330kg/gFe/hであり、実施例14に比べ約1/2であった。
【0100】
実施例15
(1)アミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Oおよび助触媒液Oの調製
実施例12の(1)において、Na−モンモリロナイト(豊順洋行社製品、ベンゲル)2.5gおよびベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド[第四級アルキルアンモニウム塩]0.792g(2ミリモル)を用いるところ、Na−モンモリロナイト(クニミネ工業製品、クニピアF)2.5gおよびジメチルアニリン[第三級アルキルアミン]0.242g(2ミリモル)にそれぞれ変えて、その他、実施例12の(1)と全く同様にしてアミン・シラン・層状化合物のビニル化合物重合用助触媒成分Oを調製した。そして同様にして、ビニル化合物重合用助触媒成分Oから助触媒液O(ビニル化合物重合用助触媒成分O含量20mg/ミリリットル)を調製した。
【0101】
(2)触媒液Oの調製
ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−インデニル)ジルコニウムジクロリドのn−ヘプタン溶液(濃度10マイクロモル/ミリリットル)0.1ミリリットルと助触媒液P5.0ミリリットルを混合した後、室温で1時間攪拌を行ない、触媒液Oを調製した。
(3)プロピレンの重合
70℃に保持した内容積1.6リットルのオートクレーブに、窒素気流下、乾燥トルエン400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.5ミリリットル(Al含量1.0モル/リットル)および触媒液O全量を順次添加した。その後、プロピレンを送入し反応圧を常に0.5MPa・Gに保持した。プロピレン送入開始後30分経過した時点で送入を止め冷却水にて反応液を急冷した。冷却後、脱圧し全量を回収・ろ過、生成物を90℃で8時間乾燥したしたところ、39.4gのポリマーが得られた。重合活性は、870kg/gZr/hであった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のα−オレフィン製造用触媒は、エチレンのオリゴマー化活性が高く、効率的かつ安価にエチレンよりα−オレフィンの製造を行うことができる。また、分子量が10,000以下の末端にビニル基を有する直鎖状のα−オレフィン(オリゴマー)又は分子量が10,000を超えるポリオレフィンを効率的かつ安価に製造することが出来る。オリゴマーは、オレフィン重合のコモノマー(LLDPE用)として、または合成潤滑油、洗剤原料として用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物、(b)アミン化合物、そのブレンステッド酸付加体又は四級アンモニウム塩および(c)有機シラン化合物を接触させて得られるビニル化合物重合用助触媒成分。
【請求項2】
(a)成分が、イオン交換性の珪素含有層状化合物である請求項1記載のビニル化合物重合用助触媒成分。
【請求項3】
(a)成分が、スメクタイト族又は雲母族である請求項1又は2に記載のビニル化合物重合用助触媒成分。
【請求項4】
(b)成分が、第3級アルキルアミンもしくはそのブレンステッド酸付加体、又は第4級アルキルアンモニウム塩である請求項1〜3のいずれかに記載のビニル化合物重合用助触媒成分。
【請求項5】
(b)成分の有機アミン化合物において、総窒素原子数に対する総炭素原子数の割合が8以上である請求項1〜4のいずれかに記載のビニル化合物重合用助触媒成分。
【請求項6】
(c)成分が、下記一般式で表わされるシラン化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のビニル化合物重合用助触媒成分。
26rSiX4-r
(置換基R26は、Siと直接結合する置換基部位の原子が炭素である基、珪素である基または水素であり、置換基Xは、Siと直接結合する置換基部位の原子がハロゲン、酸素である基または窒素である基であって、R26およびXが複数存在するときには、複数のR26またはXは同一でも異なっていてもよい。rは、1〜3の整数である。)
【請求項7】
前記一般式におけるR26がアルキル基、ベンジル基または芳香族基であって、Xがハロゲンまたは酸素を含有する基である請求項1〜6のいずれかに記載のビニル化合物重合用助触媒成分。
【請求項8】
(d)請求項1〜7のいずれかに記載のビニル化合物重合用助触媒成分と(e)周期律表第4〜6族の遷移金属錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体を含有するビニル化合物重合用触媒。
【請求項9】
(d)請求項1〜7のいずれかに記載のビニル化合物重合用助触媒成分と(e)周期律表第4〜6族の遷移金属錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体及び(f)有機アルミニウム化合物を含有するビニル化合物重合用触媒。
【請求項10】
(e)成分が、炭素五員環を含有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物であるか、もしくはヘテロ元素を介して金属と結合する配位子を含有する周期律表第4〜6族の遷移金属錯体又は周期律表第8〜10族の遷移金属錯体である請求項8又は9に記載のビニル化合物重合用触媒。
【請求項11】
(e)成分における遷移金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト及び鉄のいずれかから選ばれる請求項8〜10のいずれかに記載のビニル化合物重合用触媒。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかに記載のビニル化合物重合用触媒の存在下、オレフィン類、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸誘導体及び脂肪酸ビニル類から選ばれる1種以上のビニル化合物を重合させるビニル化合物重合体の製造方法。
【請求項13】
ビニル化合物が、エチレン、プロピレン及びスチレンのいずれかである請求項12記載のビニル化合物重合体の製造方法。
【請求項14】
ビニル化合物の重合に際し、重合溶媒として飽和炭化水素化合物を用いる請求項12又は13に記載のビニル化合物重合体の製造方法。
【請求項15】
ビニル化合物重合体が、数平均分子量10,000以下であり、末端にビニル基を有するオリゴマーである請求項12〜14のいずれかに記載のビニル化合物重合体の製造方法。

【公開番号】特開2011−6711(P2011−6711A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231597(P2010−231597)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【分割の表示】特願2001−523130(P2001−523130)の分割
【原出願日】平成12年9月14日(2000.9.14)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】