説明

遷移金属超微粒子からなるクロスカップリング用触媒およびそれを用いたクロスカップリング法

【課題】配位子、保護剤又はポリマー等の構成要素を含まない、遷移金属および配位性有機溶媒からなる遷移金属超微粒子を用いることによって、クロスカップリング反応において触媒上の金属表面を効率的且つ最大限に利用でき、従来の触媒に比べて触媒活性が飛躍的に向上したクロスカップリング反応用触媒、および当該触媒を用いたクロスカップリング反応を提供する。
【解決手段】第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する遷移金属超微粒子を含む、クロスカップリング反応用触媒。更に、該クロスカップリング反応用触媒を用いるクロスカップリング反応。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属超微粒子からなるクロスカップリング用触媒およびそれを用いたクロスカップリング法に関する。具体的には、第8族から第11族遷移金属から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する遷移金属超微粒子を含むクロスカップリング用触媒、およびそれを用いた高触媒活性なクロスカップリング法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック、医薬品、農薬等において、現代社会において大量の化学物質が消費されており、これらの物質を製造するために触媒を用いた新規製造法を開発することは、効率的な資源・エネルギーの利用並びに地球環境保全という観点から極めて重要である。
【0003】
とりわけ、炭素−炭素結合生成を伴う異種分子間のクロスカップリング反応は最も重要な触媒反応プロセスとして種々の有機化合物の合成に用いられている。
【0004】
しかしながら、触媒的クロスカップリング反応は学術的には著しい発展を遂げているとはいえ、触媒である貴金属を相当量用いる必要があるため、その多くは工業化には至っていないのが現状である。このため、希少金属資源の有効利用の観点からも、ごく微量の金属触媒を用いた長寿命且つ高活性な触媒反応プロセスの開発が強く望まれている。
【0005】
近年、金属単体の微粒子化(ナノ粒子化)によって金属の表面露出原子の割合を向上させることにより触媒活性を向上させようとする試みがなされている。しかしながら、通常それら金属粒子は溶液中で互いに凝集し、バルク化するため、触媒本来の活性が損なわれている。
【0006】
金属粒子のバルク化の防止によるナノサイズ化のための従来技術としては、配位子(例えば、ピンサー型リン配位子)による安定化(非特許文献1および2)、デンドリマー等の高分子化合物による保護(非特許文献3−5)、ポリマー担持(非特許文献6−10)、またはイオン性保護剤による保護(非特許文献11−12)等が報告されている。しかしながら、そのように従来の金属微粒子は、その合成の過程で配位子または保護剤を使用したり、あるいはポリマー等に担持する等の安定化が必要であった。
【0007】
最近、金属塩化物等をジメチルホルムアミド(DMF)中で還元することにより、約2nm以下のナノサイズを有する金、白金、パラジウム等のナノ粒子蛍光体を簡便に且つ大量に合成することができることが報告されている(特許文献1、並びに非特許文献13−14を参照)。これらナノ粒子の製造は上述のような配位子または保護剤の使用、あるいはポリマー等への担持の必要がなく、また得られるナノ粒子は安定で粒子径が揃っている。更に、当該ナノ粒子は予想外に、別途の表面処理を施すことなく各種媒体への分散性が高く、媒体中で均一に分散して存在可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2009−154932
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】K. TakenakaおよびY. Uozumi著, Adv. Synth. Catal., 2004, 346, 1693-1696
【非特許文献2】C. RocaboyおよびJ.A. Gladyszら著, Organic Letters, 2002, Vol.4. No.12, 1993-1996
【非特許文献3】E.H. RahimおよびJ.B. Christensenら著, Nano Letters, 2001, Vol.1, No.9, 499-501
【非特許文献4】K. YamamotoおよびA. Sonoiら著, Nature Chemistry, 1, 397-402 (2009)
【非特許文献5】K.R. GopidasおよびM.A. Foxら著, Nano Letters, 2003, Vol.3, No.12, 1757-1760
【非特許文献6】Z. ZhangおよびZ. Wang著, J. Org. Chem., 2006, 71, 7485-7487
【非特許文献7】T. MizugakiおよびK. Kanedaら著, Chemistry Letters., Vol. 38, No. 11 (2009), 1118-1119
【非特許文献8】G. WeiおよびM. Zhangら著, J. Phys. Chem. C 2008, Vol. 112, No. 29, 10827-10832
【非特許文献9】K. OkamotoおよびS. Kobayashiら著, J. Am. Chem. Soc., 2005, Vol. 127, No. 7, 2125-2135
【非特許文献10】Z. YinghuraiおよびR.A. Kemp.ら著, Adv. Synth. Catal., 2007, 349, 1917-1922
【非特許文献11】Z. Zhang, Z. WangおよびM-M. Zhou著, J. Org. Chem., 2006, 71, 4339-4342
【非特許文献12】G. ZhangおよびY. Kuangら著, Green Chem., 2009, 11, 1428-1432
【非特許文献13】H. Kawasakiら著, Chem. Commun 46, 3759 (2010)
【非特許文献14】H. Kawasakiら著, Langmuir 26, 5926 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のパラジウム錯体をはじめとした触媒的クロスカップリング反応においては、以下にあげる問題点が挙げられ、工業化プロセスとしての観点からは多くの改善すべき課題が残っている。i)使用する触媒量が比較的多い(学術的には1〜5mol%の触媒量で行われている報告例が多い);ii)金属触媒の失活を防ぐため、リン化合物等からなる配位子を用い安定化させている;iii)金属触媒の凝集による触媒失活を防ぐため、保護剤で安定化、あるいはシリカ、有機ポリマー等に金属を担持させなければいけない。
【0011】
本発明は、配位子、保護剤又はポリマー等の構成要素を含まない、遷移金属および配位性有機溶媒からなる遷移金属超微粒子を用いることによって、クロスカップリング反応において触媒上の金属表面を効率的且つ最大限に利用でき、従来の触媒に比べて触媒活性が飛躍的に向上したクロスカップリング反応用触媒、および当該触媒を用いたクロスカップリング反応を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が鋭意研究した結果、特願2009−154932で得られたナノ粒子をクロスカップリング反応に用いたところ、本発明の遷移金属超微粒子触媒は配位子および保護剤を含まない金属種を用いることができることによって、クロスカップリング反応において触媒上の金属表面を効率的且つ最大限に利用でき、従来の反応系と比べて触媒活性を飛躍的に向上させることが可能となることを見出した。特に、反応基質としてハロアレーンと電子吸引性基を有するオレフィンとを用いる溝呂木−ヘック(Heck)反応、およびハロアレーンと有機ボロン酸とを用いる鈴木−宮浦反応を行ったところ、これらのクロスカップリング反応が良好な収率および高い触媒回転数で効率良く進行することを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
[1] 第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する遷移金属超微粒子を含む、クロスカップリング反応用触媒。
【0014】
[2] 式:A−X
(式中、
Aは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、または無置換もしくは置換のアルケニル基であり;そして、
Xは、ハロゲン、メシレート基、トシレート基、トリフラート基、またはカルボン酸ハロゲン化物基である)
で示される化合物と、
式:B−Y
(式中、
Bは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、無置換もしくは置換のアルケニル基、または無置換もしくは置換のアルキニル基であり;
Yは、水素、アリール基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、B(OR)、ZnX、AlR、SnR、MgX、またはSiRであり、ここで、XおよびXはハロゲンであり、そしてR、R、RおよびRは各々独立して水素またはアルキルである)
で示される化合物とを反応させることにより、
式:A−B
(式中、AおよびBは前掲する通りである)
で示される生成物を得るクロスカップリング反応用である、[1]記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0015】
[3] 式:A−X
(式中、
Aは、無置換もしくは置換のアリール基または無置換もしくは置換のヘテロアリール基であり;そして、
Xは、ハロゲン、メシレート基、トシレート基、またはトリフラート基である)
で示される化合物と、
式:B−Y
(式中、
Bは、無置換もしくは置換のアルケニル基または無置換もしくは置換のアリール基であり;
Yは、アルコキシカルボニル基またはB(OR)であり、そしてRは水素である)
で示される化合物とを反応させることにより、
式:A−B
(式中、AおよびBは前掲する通りである)
で示される生成物を得るクロスカップリング反応用である、[1]または[2]のいずれか記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0016】
[4] 遷移金属が第10族遷移金属である、[1]乃至[3]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0017】
[5] 遷移金属がパラジウムである、[1]乃至[4]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0018】
[6] 配位性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、およびヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)からなる群から選ばれるアミド系溶媒である、[1]乃至[5]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0019】
[7] 配位性有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)である、[1]乃至[6]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0020】
[8] 遷移金属超微粒子の平均粒子径が2nm以下である、[1]乃至[7]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0021】
[9] 遷移金属超微粒子が蛍光体である、[1]乃至[8]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0022】
[10] ターンオーバー数(TON)が1.0×10以上を示す、[1]乃至[9]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【0023】
[11] 第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属の塩化物を配位性有機溶媒中で加熱還流することによって調製する、[1]乃至[10]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒の製造法。
【0024】
[12] マイクロ波を照射しながら前記加熱還流を行う、[11]記載の製造法。
【0025】
[13] 前記加熱還流後の反応溶液を適宜溶媒留去し、次いで配位性有機溶媒で希釈して所望の濃度にまで調製する、[11]または[12]のいずれか記載の製造法。
【0026】
[14] DMF、NMPおよびTHFからなる群から選ばれる配位性有機溶媒を用いて希釈する、[13]記載の製造法。
【0027】
[15] 式:A−X
(式中、
Aは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、または無置換もしくは置換のアルケニル基であり;そして、
Xは、ハロゲン、メシレート基、トシレート基、トリフラート基、またはカルボン酸ハロゲン化物基である)
で示される化合物と、
式:B−Y
(式中、
Bは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、無置換もしくは置換のアルケニル基、または無置換もしくは置換のアルキニル基であり;
Yは、水素、アリール基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、B(OR)、ZnX、AlR、SnR、MgX、またはSiRであり、ここで、XおよびXはハロゲンであり、そしてR、R、RおよびRは各々独立して水素またはアルキルである)
で示される化合物とを、第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する遷移金属超微粒子を含む触媒の存在下で反応させることにより、式:A−B
(式中、AおよびBは前掲する通りである)
で示される生成物を得ることを含む、クロスカップリング反応。
【0028】
[16] 適宜塩基の存在下で行なう、[15]記載のクロスカップリング反応。
【0029】
[17] 反応溶媒が、配位性有機溶媒の単独または水との混合物である、[15]または[16]のいずれか記載のクロスカップリング反応。
【0030】
[18] 触媒の使用量が、A−Xで示される化合物の配合量基準で10−1〜10−7モル%である、[15]乃至[17]のいずれか1項記載のクロスカップリング反応。
【発明の効果】
【0031】
本発明の遷移金属超微粒子は、触媒上の金属表面を効率的且つ最大限に利用でき、従来のクロスカップリング反応系と比べて触媒活性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】パラジウム超微粒子(A)および白金超微粒子(B)の各TEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
(定義)
以下に、本明細書および特許請求の範囲中で使用する用語の定義を示す。特に断らなければ、本明細書中の基または用語について示す最初の定義を、個別にまたは別の基の一部として本明細書中の基または用語に適用する。
【0034】
用語「第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属」とは、第8族遷移金属(例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os))、第9族遷移金属(例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir))、第10族遷移金属(例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt))、および第11族遷移金属(例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au))からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属を意味する。第10族遷移金属が好ましく、白金、パラジウムがより好ましく、パラジウムが特に好ましい。
【0035】
用語「配位性有機溶媒」とは、遷移金属と配位することが可能な有機溶媒を意味し、例えば、アミド系溶媒、アミン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、もしくはスルホキシド系溶媒、またはそれらの2種以上の混合溶媒を含む。具体的には例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のカルボン酸アミド系、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等のリン酸アミド系を含むアミド系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミン等のアミン系溶媒;イソプロパノール、プロピレングリコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ニトロメタン等のニトロ系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を挙げられる。DMF、N−メチルホルムアミド、DMA、N−メチルアセトアミド、DMI、NMP、HMPAからなる群から選ばれるアミド系溶媒が好ましく、DMFが特に好ましい。
【0036】
用語「遷移金属超微粒子」とは、上記第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する溶媒保護化物であって、その平均粒子径がナノサイズの粒子を意味する。ここで、溶媒保護化物とは、それら配位性溶媒で保護された化合物を意味する。また、本願明細書中、「超微粒子」は「ナノ粒子」または「NCs」とも呼称される。
【0037】
平均粒子径は0.5〜4nm程度であって、2nm以下が好ましく、1.5nm程度がより好ましい。かかる粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の像の解析により確認する。例えば、パラジウム超微粒子および白金超微粒子の各TEMの像を示す(図1)。図1より、パラジウム超微粒子および白金超微粒子はそれぞれ平均粒子径が約1.5nmである。また、特願2009−154932に記載する通りパラジウム、白金以外の遷移金属超微粒子についても蛍光特性を示すことから、平均粒子径は2nm以下である。また、かかる蛍光特性と2nm以下の平均粒子径との相関関係については、以下の多数の文献中に記載されている:
1. S. Empedocles, M. Baewndi著, Acc. Chem. Res, 1999, 32, 389-396.
2. M. A. El-Sayed著, Acc. Chem. Res, 2001, 34, 257-264.
3. S. Link, M. A. El-Sayed著, Int. Rev. Phys. Chem. 200, 19, 409-453.
4. S. Link, A. Beeby, S. FitzGerald, M. A. El-Sayed, T. G. Schaaff, R. L.
Whetten著, J. Phys. Chem. B, 2002, 106, 3410-3415,
5. S. Chen, R. S. Ingram, M. J. Hostetler, J. J. Pietron, R. W. Murrey, T. G. Schaaff, J. T. Khoury, M. M. Alvarez, R. L. Whetten著, Science, 1998, 280, 2098-2101.
【0038】
用語「クロスカップリング反応」とは、異なる2種の化合物の間で選択的に結合する反応を意味する。特に、本発明で意図するクロスカップリング反応とは、遷移金属化合物が触媒的に作用する、下式:
【化1】

で示される反応を意味する。具体的には、有機ハロゲン化物等と末端アルケン等との反応(溝呂木・ヘック反応)、有機ハロゲン化物等と有機亜鉛化合物との反応(根岸カップリング反応)、有機ハロゲン化物等と有機スズ化合物との反応(右田・小杉・スティルカップリング)、有機ハロゲン化物等と末端アルキン等との反応(薗頭カップリング)、有機ハロゲン化物等と有機ホウ素化合物との反応(鈴木・宮浦カップリング)、有機ハロゲン化物と有機アミン化合物との反応(ブッフバルト・ハートウィッグ反応)、有機ハロゲン化物等と有機マグネシウム化合物との反応(熊田・玉尾・コリューカップリング)、有機ハロゲン化物と有機ケイ素化合物との反応(檜山カップリング)等を意図する。特に、溝呂木・ヘック反応および鈴木・宮浦カップリングを意図する。
【0039】
用語「式:A−Xで示される化合物」とは、上記クロスカップリング反応において求電子剤として作用する反応基質の一方を意味する。ここで、基Aは、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を有する基であり、具体的には、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、および無置換もしくは置換のアルケニル基を含む。無置換もしくは置換のアリール基または無置換もしくは置換のヘテロアリール基が好ましい。また、X基は有機化学分野において脱離基として知られる基を意味する。具体的には、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)、メシレート基(OMs)、トシレート基(OTs)、またはカルボン酸ハロゲン化物基(例えば、カルボン酸臭化物(C(=O)Br、カルボン酸ヨウ化物(C(=O)I))を挙げられる。ハロゲンが好ましく、ブロモまたはヨードがより好ましく、ヨードが特に好ましい。
【0040】
用語「式:B−Yで示される化合物」とは、上記クロスカップリング反応において求核剤として作用する反応基質の一方を意味する。ここで、基Bは、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を有する基であり、具体的には、無置換もしくは置換のアリール、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、無置換もしくは置換のアルケニル基、および無置換もしくは置換のアルキニル基を含む。無置換もしくは置換のアルケニル基または無置換もしくは置換のアリール基が好ましい。また、Y基は、水素、アリール基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、B(OR)、ZnX、AlR、SnR、MgX、またはSiRであり、ここで、XおよびXはハロゲン(クロロ、ブロモ、ヨードが好ましく、ブロモ、ヨードがより好ましい)であり、そしてR、R、RおよびRは各々独立して水素またはアルキル(炭素数が1〜6のアルキルが好ましく、メチル、エチル、t−ブチルがより好ましい)である。アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル)、またはB(OR)(Rは水素である)が好ましい。
【0041】
用語「無置換もしくは置換のアリール基」とは、適宜1〜5個の置換基を有する芳香族性炭素環式を意味する。縮合環様式で結合した多環式基(例えば、二環式基)をも本定義に含む。具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の単環式アリール基;フェナントリジニル基、6−クロマニル基、5−イソインドリル基等の二環式アリール基等が挙げられる。フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。
【0042】
ここで、置換基としては、かかるクロスカップリング反応の進行を妨げない基であればよく、有機化学分野において知られる電子供与性基(例えば、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基)または電子吸引性基(例えば、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基)のいずれであってもよいが、電子供与性基が好ましい。例えば、アルキル基(例えば、炭素数が1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基))、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基)、アミノ基(例えば、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、カルボキシ基、シアノ基を含む。アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【0043】
用語「無置換もしくは置換のヘテロアリール基」とは、適宜1〜5個の置換基を有する、少なくとも1つの環内に、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を有する、芳香族性の環式基を意味する。縮合環様式で結合した多環式基(例えば、二環式基)をも本定義に含む。具体例としては、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、オキサジアゾリル基、2−オキサアゼピニル基、アゼピニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基などの単環式へテロアリール基;および、ベンゾチアゾリル基、ベンゾキサゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、キノリニル基、キノリニル−N−オキシド基、イソキノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾピラニル基、インドリジニル基、シンノリニル基、キノキサリニル基、インダゾリル基、ピロロピリジル基、フロピリジニル基(例えば、フロ[2,3−c]ピリジニル基、フロ[3,1−b]ピリジニル基、またはフロ[2,3−b]ピリジニル基)、ベンジイソチアゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾジアジニル基、ベンゾチオピラニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、プリニル基、ピリドピリジル基、キナゾリニル基、チエノフリル基、チエノピリジル基、チエノチエニル基などの二環式ヘテロアリール基等の二環式アリール基等が挙げられる。ピリジル基が好ましい。置換基としては、上記の「無置換もしくは置換のアリール基」において定義するのと同様に、かかるクロスカップリング反応の進行を妨げない基であればよく、具体例は上述の通りである。
【0044】
用語「無置換もしくは置換のアルケニル基」とは、適宜1〜5個の置換基を有する、2〜12個の炭素原子および少なくとも1個の二重結合を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素基を意味する。具体例としては、エテニル基(ビニル基)、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1,3−ジペンテニル基、シクロヘキセニル基等を挙げられる。エテニル基が好ましい。置換基としては、上記の「無置換もしくは置換のアリール基」において定義するのと同様に、かかるクロスカップリング反応の進行を妨げない基であればよく、具体例は上述の通りである。
【0045】
用語「無置換もしくは置換のアルキニル基」とは、適宜1〜3個の置換基を有する、2〜6個の炭素原子および1個の三重結合を有する、直鎖または分枝の炭化水素基を意味する。アセチレンの一端の炭素上の水素が水素以外の基で置換された末端アルキニル基が好ましい。具体例としては、1−プロピニル、1−ブチニル、3,3−ジメチル−1−ブチニル等を挙げられる。1−プロピニルが好ましい。置換基としては、上記の「無置換もしくは置換のアリール基」において定義するのと同様に、かかるクロスカップリング反応の進行を妨げない基であればよく、具体例は上述の通りである。
【0046】
用語「アルコキシカルボニル基」とは、炭素数が1〜12個、好ましくは炭素数が1〜8個、より好ましくは炭素数が1〜6個のアルキル基を含むアルコキシカルボニル基を意味する。具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル(n−ブトキシカルボニル、イソ−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル)、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等を挙げられる。メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルが好ましい。
【0047】
本発明の反応を以下に詳しく説明する。
【化2】

【0048】
(触媒の調製)
本発明のクロスカップリング反応用触媒は上記反応式1に示す通りに調製する。具体的には、まず特願2009−154932中の記載と同様に、第8族−第11族遷移金属化合物の原料を配位性有機溶媒中で加熱還流することによって反応させ、反応溶液を得る。マイクロ波を照射しながら加熱還流することが好ましい。この反応は、空気雰囲気下で行うことができる。また、反応温度は、通常使用する配位性有機溶媒の沸点近くで行う。更に、反応時間は、使用する溶媒、反応温度などの反応条件に依存して変わり得るが、数時間〜数日間で完結し、通常約4時間〜約1日間で完結し、約6時間が好ましい。
【0049】
第8族−第11族遷移金属化合物の原料としては、各遷移金属の無機化合物(例えば、塩化物、硫酸化物、硝酸化物)であってよく、具体的には、Pdの場合にはPdCl、[Pd(NH)]Clなど;Ptの場合にはHPtCl、[Pt(NH)]Cl等;Feの場合にはFeCl、Fe(SO)等;Auの場合には、HAuCl、Na[Au(CN)]等;Cuの場合には、CuCl、CuSO等;Agの場合には、AgNO、[Ag(NH)]NO等を挙げられる。塩化物が好ましい。これらは、市販されているか、または当該有機金属化学の分野において知られる方法、或いはこれらに準じた方法により製造することができる。
【0050】
次に、得られた反応溶液を、配位性有機溶媒で希釈して所望の濃度へ調整して遷移金属超微粒子触媒を得ることができる。ここで、反応溶媒と希釈溶媒とが相違する場合には、反応溶媒を留去し、その後に希釈を行う。例えば、1mMの反応溶液を得て、これを希釈して10μM、100nM、10nM、1nMの濃度にまで調製することができる。
【0051】
(クロスカップリング反応)
クロスカップリング反応は、上記反応式2に示す通り一般に触媒的クロスカップリング反応として知られる手順に準じて行う。具体的には、式:A−Xで示される化合物(1)と、式:B−Yで示される化合物(2)とを、上記で得られた遷移金属超微粒子触媒の存在下で反応させる。ここで、クロスカップリング反応のタイプによっては、塩基の存在下で行う。塩基としては、有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)または無機塩基(例えば、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム))、炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)、炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム))を挙げられる。
【0052】
反応基質である、式:A−Xで示される化合物(1)と、式:B−Yで示される化合物(2)はいずれも市販されているか、または当該有機化学の分野において知られる方法、或いはこれらに準じた方法により製造することができる。
【0053】
クロスカップリング反応の反応溶媒は、配位性有機溶媒の単独または水との混合物を使用することができる。水との混合物を使用する場合には、反応溶媒総量中の配位性有機溶媒の比率が5容量%以上、20容量%以上、好ましくは50容量%以上である。配位性反応溶媒としては、DMF、NMPおよびTHFが好ましく、特に溝呂木・ヘック反応の場合にはDMFが、鈴木・宮浦カップリングの場合にはNMPが好ましい。
【0054】
反応基質である化合物(1)と化合物(2)の配合量比率は、化合物(2)の量が化合物(1)の配合量基準で等量または過剰量で使用する。例えば、化合物(2)を、1.0〜3.0当量、1.0〜2.0当量、好ましくは1.2〜1.5当量で使用する。
【0055】
本発明の遷移金属超微粒子触媒の使用量は、反応基質である化合物(1)の配合量基準で10−1〜10−7モル%、10−2〜10−7モル%、好ましくは10−3〜10−7モル%で使用することができる。特に、溝呂木・ヘック反応の場合には10−5〜10−7モル%で、鈴木・宮浦カップリングの場合には10−3モル%で使用することができる。
【0056】
触媒活性は、触媒化学分野においてよく用いられる触媒回転数(TON)を用いて表すことができる。本発明の触媒は、10〜10の次数のTONを示す。例えば、鈴木・宮浦カップリングの場合には、10の次数、すなわち最大で万単位のTONを、溝呂木・ヘック反応の場合には10〜10の次数、すなわち最大で億単位のTONを示し得る。
【0057】
本発明のカップリング反応は、低温(例えば、−70℃以下)から高温(例えば、100℃以上)で行なうことができ、通常室温〜使用する反応溶媒の沸点であり、80〜140が好ましく、100℃〜140℃がより好ましい。
【0058】
本発明の反応は、不活性気体の雰囲気下で行なうことが好ましく、具体的には窒素、アルゴン、ヘリウムの雰囲気下で行なう。
【0059】
本発明の反応は、常圧から加圧容器(例えば、プレッシャーチューブなどの市販のステンレス加圧容器)中での加圧条件下で行なうことができ、通常常圧で行なう。
【0060】
本発明の反応時間は、使用する溶媒、反応温度などの反応条件に依存して変わり得るが、数時間〜数日間で完結し、通常3時間〜2日間で完結し、5時間〜15時間が好ましい。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。遷移金属超微粒子およびクロスカップリング反応の生成物の確認は、各種分光学的分析の解析により行なった。具体的には、一次元および二次元のプロトンおよび炭素13核磁気共鳴スペクトル(H NMR、13C NMR、質量スペクトル(MS)、赤外線吸収スペクトル(IR)、蛍光スペクトル、透過型電子顕微鏡(TEM)の解析により行った。核磁気共鳴スペクトルには、テトラメチルシランを内部標準として用いた。反応収率は、シリカゲルガスクロマトグラフィー(GC)を用いて定量した。
【0062】
実施例中に用いた以下の略号を説明する。
Meはメチル基を、Etはエチル基を、t−Buはt−ブチル基を、Cyをシクロヘキシル基を意味する。
【0063】
[参考例]
[遷移金属超微粒子の合成]
1.パラジウム超微粒子の調製
本発明において使用する遷移金属超微粒子は、特願2009−154932の記載と同様に調製した。具体的には、三口フラスコに回転子を入れ、DMFで共洗いしたのちに、DMF (15 mL)を入れ、空気雰囲気下、140℃で6分間、三口フラスコを予備加熱した。その後、0.1 Mの塩化パラジウム水溶液を150 μL加え、140℃、6時間加熱環流し合成を行った。パラジウム超微粒子溶液は、1 mMの溶液 (1 mM Pd超微粒子(ナノ粒子)(NCs)/DMF)として得られ、紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトル、TEMを用いて分析し、約1.5 nmの粒子の生成を確認した(図1(A))。
【0064】
2.白金超微粒子の調製
上記パラジウム超微粒子と同様に、調製した。具体的には、三口フラスコに回転子を入れ、DMFで共洗いしたのちに、DMF (15 mL)を入れ、空気雰囲気下、140℃で6分間、三口フラスコを予備加熱した。その後、0.1 Mの塩化白金酸水溶液を75 μL加え、140℃、6時間加熱環流し合成を行った。白金超微粒子溶液は、1 mMの溶液 (1 mM Pt NCs/DMF)として得られ、紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトル、TEMを用いて分析し、約1.5 nmの粒子の生成を確認した(図1(B))。
【0065】
[実施例]
[触媒の調製]
生成したパラジウム超微粒子溶液(Pd NCs/DMF)の1 mM溶液をDMFで100倍に希釈し、10 μM Pd NCs/DMFの溶液を調製した。さらに、10 μMのPd NCs/DMFの溶液をDMFで100倍に希釈し、100 nMの溶液を調製した。同様な操作で、10 nM、1 nMのPd NCs/DMF溶液を調製し、反応に用いた。
【0066】
同様に、1 mMのPd NCs/DMF溶液のDMF (15 mL)をエバポレーターにより留去したのち、NMP (15 mL)を加え、再分散させた。得られた1 mM Pd NCs/NMP溶液をNMPで100倍に希釈し、10 μMのPd NCs/NMP溶液を調製した。同様の操作で、1 μM、100 nM、10 nM、1 nMのPd NCs/NMP溶液を調製した。
【0067】
更に、1 mMのPd NCs/DMF溶液のDMF (15 mL)をエバポレーターにより留去したのち、THF(15 mL)を加え、再分散させた。得られた1 mM Pd NCs/THF溶液をTHFで100倍に希釈し、10 μMのPd NCs/THF溶液を調製した。同様の操作で、1 μM、100 nM、10 nM、1 nMのPd NCs/THF溶液を調製した。
【0068】
[クロスカップリング反応]
(溝呂木・ヘック反応)
【実施例1】
【0069】
【化3】


プレッシャーチューブに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと、上記[触媒の調製]で合成した1 mMのPd NCs/DMF (1 mL)を加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;定量的、触媒回転数;>1,000回。
【実施例2】
【0070】
【化4】

まず、生成したパラジウムナノ粒子溶液(Pd NCs/DMF)の1 mM溶液を100 μL取り、DMF 10 mL中に加えて100倍に希釈し、10 μM Pd NCs/DMFの溶液を調製した。その10μM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;定量的、触媒回転数;>100,000回。
【実施例3】
【0071】
【化5】

まず、上記[実施例2]で調製したパラジウムナノ粒子溶液(Pd NCs/DMF)の10 μM溶液を100 μL取り、DMF 10 mL中に加えて100倍に希釈し、100 nM Pd NCs/DMFの溶液を調製した。その100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;>99% 、触媒回転数;>10,000,000回。
【実施例4】
【0072】
【化6】

1 mMのPd NCs/DMF溶液のDMF (15 mL)をエバポレーターにより留去したのち、NMP (15 mL)を加え、再分散させた。得られた1 mM Pd NCs/NMP溶液を100 μL取り、NMP 10 mLで100倍に希釈し、10 μMのPd NCs/NMP溶液を調製した。同様の操作で、10 μM Pd NCs/NMP溶液を100 μL取り、NMP 10 mLで100倍に希釈し、100 nMのPd NCs/NMP溶液を調製した。その100 nM Pd NCs/NMPの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてNMP (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;30% 、触媒回転数;3,040,000回。
【実施例5】
【0073】
【化7】

まず、[実施例3]で調製したパラジウムナノ粒子溶液(Pd NCs/DMF)の100 nM溶液を100 μL取り、DMF 10 mL中に加えて100倍に希釈し、1 nM Pd NCs/DMFの溶液を調製した。その1 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;60% 、触媒回転数;598,000,000回。
【実施例6】
【0074】
【化8】

プレッシャーチューブに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと[触媒の調製]で合成した1 mMのPd NCs/DMF (1 mL)を加えた。その後、ブロモベンゼン (1 mmol, 157 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;23%、触媒回転数;231回。
【実施例7】
【0075】
【化9】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、4-ヨードトルエン (1 mmol, 218 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;47% 、触媒回転数;4,740,000回。
【実施例8】
【0076】
【化10】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、4-ヨードベンゾトリフルオリド (1 mmol, 272 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;41% 、触媒回転数;4,090,000回。
【実施例9】
【0077】
【化11】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、4-ヨードアニソール (1 mmol, 234 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;20% 、触媒回転数;2,010,000回。
【実施例10】
【0078】
【化12】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、1-ヨードナフタレン (1 mmol, 254 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;68% 、触媒回転数;6,760,000回。
【実施例11】
【0079】
【化13】

[実施例2]で調製した10 μM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、5-ヨード-2-フルアルデヒド (1 mmol, 222 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;14% 、触媒回転数;14,200回。
【実施例12】
【0080】
【化14】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、2-ヨードチオフェン (1 mmol, 210 mg)、アクリル酸エチル (1.2 mmol, 120 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;11% 、触媒回転数;1,090,000回。
【実施例13】
【0081】
【化15】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸シクロヘキシル (1.2 mmol, 185 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;27% 、触媒回転数;2,740,000回。
【実施例14】
【0082】
【化16】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、アクリル酸-t-ブチル (1.2 mmol, 154 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;5% 、触媒回転数;530,000回。
【実施例15】
【0083】
【化17】

[実施例3]で調製した100 nM Pd NCs/DMFの溶液 1 mLをアルゴン雰囲気のもと回転子を入れたプレッシャーチューブに加えた。その後、ヨードベンゼン (1 mmol, 204 mg)、メチルビニルケトン (1.2 mmol, 84 mg)、トリエチルアミン (1 mmol, 101 mg)、溶媒としてDMF (1 mL)を加え、140℃、15時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。ヘック型生成物の収率;12% 、触媒回転数;1,240,000回。
【0084】
(鈴木-宮浦クロスカップリング反応)
【実施例16】
【0085】
【化18】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol,109 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、上記[触媒の調製]で調製した1 mMのPd NCs/DMF (1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 86%, 触媒回転数 (TON): 430回。
【実施例17】
【0086】
【化19】

まず、生成したパラジウムナノ粒子溶液(Pd NCs/DMF)の1 mM溶液を100 μL取り、DMF 10 mL中に加えて100倍に希釈し、10 μM Pd NCs/DMFの溶液を調製した。次に、枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol,109 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、10 μM Pd NCs/DMFの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 41%, 触媒回転数 (TON): 20,400回。
【実施例18】
【0087】
【化20】

まず、1 mMのPd NCs/DMF溶液のDMF (15 mL)をエバポレーターにより留去したのち、NMP (15 mL)を加え、再分散させた。得られた1 mM Pd NCs/NMP溶液を100 μL取り、NMP 10 mLで100倍に希釈し、10 μMのPd NCs/NMP溶液を調製した。次に、枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol, 109 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 82%, 触媒回転数 (TON): 40,600回。
【実施例19】
【0088】
【化21】

まず、1 mMのPd NCs/DMF溶液のDMF (15 mL)をエバポレーターにより留去したのち、THF (15 mL)を加え、再分散させた。得られた1 mM Pd NCs/THF溶液を100 μL取り、THF 10 mLで100倍に希釈し、10 μMのPd NCs/THF溶液を調製した。溶けなかった粒子は、フィルターによりろ過した。次に、枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol, 109 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、10 μM Pd NCs/THFの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 56%, 触媒回転数 (TON): 28,100回。
【実施例20】
【0089】
【化22】

まず、生成したパラジウムナノ粒子溶液(Pd NCs/DMF)の1 mM溶液を10 μL取り、DMF 10 mL中に加えて100倍に希釈し、1 μM Pd NCs/DMFの溶液を調製した。次に、枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol, 109 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、1 μM Pd NCs/DMFの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 11%, 触媒回転数 (TON): 53,500回。
【実施例21】
【0090】
【化23】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ブロモトルエン (0.5 mmol, 86 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 43%, 触媒回転数 (TON): 24,000回。
【実施例22】
【0091】
【化24】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードアニソール (0.5 mmol, 117 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 98%, 触媒回転数 (TON): 49,200回。
【実施例23】
【0092】
【化25】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもとフェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、4-ヨードベンゾトリフルオリド (0.5 mmol, 136 mg)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 61%, 触媒回転数 (TON): 33,700回。
【実施例24】
【0093】
【化26】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもとフェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、4-ヨードナフタレン (0.5 mmol, 127 mg)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 98%, 触媒回転数 (TON): 50,400回。
【実施例25】
【0094】
【化27】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもとフェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、2-ヨードチオフェン (0.5 mmol, 105 mg)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 63%, 触媒回転数 (TON): 33,700回。
【実施例26】
【0095】
【化28】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと5-ヨード-2-フルアルデヒド (0.5 mmol, 111 mg)、フェニルボロン酸 (0.75 mmol, 91 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 54%, 触媒回転数 (TON):27,100回。
【実施例27】
【0096】
【化29】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol,109 mg)、4-クロロフェニルボロン酸 (0.75 mmol, 117 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 37%, 触媒回転数 (TON): 18,700回。
【実施例28】
【0097】
【化30】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol,109 mg)、m-ニトロフェニルボロン酸 (0.75 mmol, 125 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 27%, 触媒回転数 (TON): 13,200回。
【実施例29】
【0098】
【化31】

枝付きシュレンクに回転子を入れ、アルゴン雰囲気のもと4-ヨードトルエン (0.5 mmol,109 mg)、p-メトキシフェニルボロン酸 (0.75 mmol, 114 mg)、炭酸カリウム (0.5 mmol, 69 mg)を加えた後に、[実施例18]で調製した10 μM Pd NCs/NMPの溶液(1 mL)、H2O (1 mL)を加え、100 ℃、5時間反応を行った。定量は、GCを用い、内部基準法(基準物質はトリデカンである)で行った。カップリング生成物の収率: 56%, 触媒回転数 (TON): 27,900回。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の遷移金属超微粒子は触媒的クロスカップリング反応において極めて高い触媒活性を有することにより、希少金属資源の非常に効率的な利用が実現することができ、またクロスカップリング反応の生成物は、医薬品の合成中間体等としても有用であり、工業的に利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する遷移金属超微粒子を含む、クロスカップリング反応用触媒。
【請求項2】
式:A−X
(式中、
Aは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、または無置換もしくは置換のアルケニル基であり;そして、
Xは、ハロゲン、メシレート基、トシレート基、トリフラート基、またはカルボン酸ハロゲン化物基である)
で示される化合物と、
式:B−Y
(式中、
Bは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、無置換もしくは置換のアルケニル基、または無置換もしくは置換のアルキニル基であり;
Yは、水素、アリール基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、B(OR)、ZnX、AlR、SnR、MgX、またはSiRであり、ここで、XおよびXはハロゲンであり、そしてR、R、RおよびRは各々独立して水素またはアルキルである)
で示される化合物とを反応させることにより、
式:A−B
(式中、AおよびBは前掲する通りである)
で示される生成物を得るクロスカップリング反応用である、請求項1記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項3】
式:A−X
(式中、
Aは、無置換もしくは置換のアリール基または無置換もしくは置換のヘテロアリール基であり;そして、
Xは、ハロゲン、メシレート基、トシレート基、またはトリフラート基である)
で示される化合物と、
式:B−Y
(式中、
Bは、無置換もしくは置換のアルケニル基または無置換もしくは置換のアリール基であり;
Yは、アルコキシカルボニル基またはB(OR)であり、そしてRは水素である)
で示される化合物とを反応させることにより、
式:A−B
(式中、AおよびBは前掲する通りである)
で示される生成物を得るクロスカップリング反応用である、請求項1または2のいずれか記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項4】
遷移金属が第10族遷移金属である、請求項1乃至3のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項5】
遷移金属がパラジウムである、請求項1乃至4のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項6】
配位性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、およびヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)からなる群から選ばれるアミド系溶媒である、請求項1乃至5のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項7】
配位性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)である、請求項1乃至6のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項8】
遷移金属超微粒子の平均粒子径が2nm以下である、請求項1乃至7のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒。
【請求項9】
第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属の塩化物を配位性有機溶媒中で加熱還流することによって調製する、請求項1乃至8のいずれか1項記載のクロスカップリング反応用触媒の製造法。
【請求項10】
マイクロ波を照射しながら前記加熱還流を行う、請求項9記載の製造法。
【請求項11】
式:A−X
(式中、
Aは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、無置換もしくは置換のアルケニル基、または無置換もしくは置換のアルキニル基であり;そして、
Xは、ハロゲン、メシレート基、トシレート基、トリフラート基、またはカルボン酸ハロゲン化物基である)
で示される化合物と、
式:B−Y
(式中、
Bは、無置換もしくは置換のアリール基、無置換もしくは置換のヘテロアリール基、または無置換もしくは置換のアルケニル基であり;
Yは、水素、アリール基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ホルミル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、B(OR)、ZnX、AlR、SnR、MgX、またはSiRであり、ここで、XおよびXはハロゲンであり、そしてR、R、RおよびRは各々独立して水素またはアルキルである)
で示される化合物とを、第8族から第11族遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属および配位性有機溶媒を含有する遷移金属超微粒子を含む触媒の存在下で反応させることにより、式:A−B
(式中、AおよびBは前掲する通りである)
で示される生成物を得ることを含む、クロスカップリング反応。
【請求項12】
適宜塩基の存在下で行なう、請求項11記載のクロスカップリング反応。
【請求項13】
反応溶媒が、配位性有機溶媒の単独または水との混合物である、請求項11または12のいずれか記載のクロスカップリング反応。
【請求項14】
触媒の使用量が、A−Xで示される化合物の配合量基準で10−1〜10−7モル%である、請求項11乃至13のいずれか1項記載のクロスカップリング反応。

【図1】
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【公開番号】特開2012−593(P2012−593A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139638(P2010−139638)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.社団法人 日本化学会発行、日本化学会第90春季年会 2010年、講演予稿集IV、2010年3月12日発行 2.日本化学会第90春季年会、社団法人 日本化学会会長 岩澤 康裕、平成22年3月26日−29日開催
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】