説明

選択された非病原性微生物による天然ポリサッカライドの加工、並びにその作製方法及び使用方法

本発明は、バイオリアクターシステム内で、事前にプロバイオティクス細菌とともにインキュベートされた1又は複数の天然ポリサッカライドから製造される健康補助サプリメント組成物、並びにその作製方法及び使用方法を含み、前記細菌がポリサッカライドを加工し、その結果得られた加工ポリサッカライドがこの栄養サプリメントにおいて提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にプロバイオティクス生物の分野、より詳細には、プロバイオティクス生物によって処理及び加工された健康補助サプリメントを送達するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の背景をプロバイオティクス生物との関連で記載する。
【0003】
プロバイオティクス生物は、健康に多くのプラスの影響を及ぼすことができる。多くの場合、プロバイオティクス生物は、消化管部分に進入してコロニーを形成するように提供される。プロバイオティクスは、消化管で既にコロニーを形成している局所生物と競合する。これらの局所生物は、他の微生物によるコロニー形成を阻害し、ある場合には、健康な消化細菌叢の発達に有害な場合がある。現在、多数のプロバイオティクス生物が利用可能であり、望ましい有益な腸内細菌叢の確立を試みるために摂取される。しかしながら、局所生物との競合を試みるために摂取されるプロバイオティクス培養物の有効性は、生物が標的部位に到達し、局所生物との競合に打ち勝ち、安定したコロニー形成を確立し、既存の生物に対抗して栄養素を競合する能力によって制限されることが多い。望ましくない消化生物に関する問題は、それらが多くの場合抗生物質に対して次第に耐性を示すようになり、腸粘膜で十分に確立されるようになり、局所的環境に適合する機会を有し、効果的に栄養素を競合し、消化管から外に輸送されないということである。
【0004】
プロバイオティクスのコロニー形成問題への取組みを試みる1つの発明は、プロバイオティクスヨーグルト食品調製用の粉末に関して、Schmittらに付与された米国特許第7,172,777号明細書に教示されている。手短に言えば、Schmittは、あらかじめ指定された割合の生菌プロバイオティクス乳酸菌、及び腸内での再吸収過程を強化するための熱生産性脂肪分解再吸収促進剤、特にコショウ抽出物、並びに腸管の毛細管拡張を達成するための毛細管拡張剤、特にニコチン酸を有するプロバイオティクス培養物を含有するプロバイオティクスヨーグルト食品調製用の粉末を教示している。
【0005】
さらに別の発明は、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(bifidobacterium bifidum)、ラクトバチルス・サリバリウス(lactobacillus salivarius)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(bifidobacterium infantis)、及びビフィドバクテリウム・ロンガム(bifidobacterium longum)を含む有益なプロバイオティクス微生物叢と、フラクトオリゴサッカライドと、L−グルタミンと、N−アセチルグルコサミンとの混合物を含む、体内の腸管に有益な細菌を再確立するための食品サプリメント及び物質として有用なプロバイオティクス製剤に関して、Watsonらに付与された米国特許第6,468,525号明細書に教示されている。
【0006】
さらに別の発明は、過敏性腸症候群に伴う症状を緩和するための健康補助サプリメント及びプロバイオティクスとして使用するための方法に関して、Perryに付与された米国特許第6,203,797号明細書に教示されている。教示された健康補助サプリメントは、凍結乾燥されたアロエ、フラクトオリゴサッカライド、及びダリアイヌリン分泌混合液を含み、ビタミンB6(ピリドキシン)マンガン及びL−グルタミンを含んでいてもよいプロバイオティクスであり、過敏性腸症候群の症状緩和用である。特に過敏性腸症候群の症状を緩和するための追加的な代替的実施形態は、基本製剤にブロメライン及びパパインを含む。また特定のプロバイオティクス機能に関しては、下記の友好的な細菌:ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・プランタルム(lactobacillus plantarum)、及びビフィドバクテリウム・ビフィダムを基本製剤に添加することができた。
【0007】
Brownらに付与された米国特許第6,060,050号明細書では、食料製品に添加してそれらの栄養的価値を増強するためのプロバイオティクス組成物が教示されている。この組成物は、ビフィドバクテリウムなどの1又は複数のプロバイオティクス微生物、及び微生物を大腸又は胃腸管の他の領域に輸送するための担体を含む。この担体は、加工又は未加工の難消化性デンプン、特に高アミロースデンプンであり、大腸又は胃腸管の他の領域で微生物の増殖又は保存培地として機能する。
【0008】
米国特許出願第20070059296号明細書では、15〜20重量%の粉乳、25〜30重量%のコーンスターチ、8〜15重量%の加工デンプン(カプセル)、10〜15重量%のエチルセルロース、5〜15重量%の細菌培養液、及び10〜15重量%のタルクを含む耐酸性腸溶コーティングを有するプロバイオティクス組成物が教示されている。このプロバイオティクス組成物は、マイクロカプセル化され、腸内での耐酸性、プロバイオティクスの生存率、抗菌特性、安定性、防湿特性、及び湿潤環境における凝結を防止するプロバイオティクス組成物の移動度を向上させるために、及び家畜飼料に応用される添加剤として使用するために耐酸性腸溶コーティングでコーティングされた複数のマイクロカプセルを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,172,777号明細書
【特許文献2】米国特許第6,468,525号明細書
【特許文献3】米国特許第6,203,797号明細書
【特許文献4】米国特許第6,060,050号明細書
【特許文献5】米国特許出願第20070059296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
種々の形態のプロバイオティクス生物を種々の送達方法及び種々の量で送達することにより、消化細菌叢を再生成する試みが数多くなされているにもかかわらず、生物学的に利用可能な栄養素とともに生物を食事栄養補助とすることは、依然として必要とされている。消化細菌叢に変化がない場合及び/又は好ましい消化細菌叢を再構築している間に、宿主により消費された食品からこれらの共生微生物が産生する栄養素が、依然として必要とされていることを本発明者は認識していた。共生消化管微生物は、未使用エネルギー基質の発酵、免疫系の活性化、非共生又は有害な種の増殖防止、宿主のためのビタミン及び栄養素前駆物質の産生(ビオチン及びビタミンKを含む)、及び特定のホルモン又はホルモン前駆物質の産生を含む多数の有利な機能を宿主に供給する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一般的に、天然ポリサッカライドを、健康補助サプリメント又は食品として有用性を有する有用産物へと生物学的に加工する微生物種を使用するための新規な方法及び組成物に関する。本発明は、選択プロバイオティクス細菌と天然ポリサッカライドをバイオリアクターシステム内で混合し、体外で細菌にポリサッカライドを加工させることを含む。その後、バイオリアクターの産物を使用して、食品又は健康補助サプリメントを調製する。本発明の別の実施形態では、選択された天然ポリサッカライド及び選択非病原性(プロバイオティクス)微生物種の剤形を混合して、必要なプロバイオティクス栄養素及び共生生物を同時送達する間に栄養補助を提供する。ポリサッカライドを非病原性微生物種で他の有益な産物に加工することは、これらの物質をヒトGI管に同時投与することにより、ヒト胃腸管の領域内で達成することができる。
【0012】
選択ポリサッカライド成分をこのように微生物加工することで産生される新規な産物は、以下を含むヒト健康に有用な効果を示すと予想される:(1)粘膜関連リンパ細網組織(MALT,mucosal-associated lymphoreticular tissues)との相互作用によるGI管及び組織的免疫機能の向上;(2)(a)GI管消化及び栄養吸収効率の向上;(b)ヒトGI管内の望ましくない微生物種の低減;及び(c)導入されたプロバイオティクス微生物及びポリサッカライド産物と、ヒトGI管内の種々の制御因子(つまりホルモン受容体)との相互作用による、体重管理及び肥満の軽減;並びに/又は(3)コレステロール低減などの血中脂質パラメーターの向上及びトリグリセリドレベルの減少。
【0013】
一態様では、本発明は、バイオリアクターシステム内でプロバイオティクス細菌とともに事前にインキュベートされた1又は複数の天然ポリサッカライドから製造されるサプリメントを含む健康補助サプリメントであり、前記細菌がポリサッカライドを加工し、その結果得られた加工ポリサッカライドがこの栄養サプリメントにおいて提供される。一実施形態では、バイオリアクターから得られる加工ポリサッカライドは、食品又は健康補助サプリメントに適合しており、例えば単一剤形に適合している。本発明で使用するためのポリサッカライドは、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの少なくとも1つを含んでよい。一実施形態では、ポリサッカライド及び生存微生物細胞は、単一剤形で別々に提供される。別の実施形態では、ポリサッカライド及び生存微生物細胞は、バイオリアクターでインキュベートされる。ポリサッカライド及び生存微生物細胞は、徐放性形態でも提供することができる。ポリサッカライドの例には、ヘテロポリサッカライド、ホモポリサッカライド、又はその両方が含まれる。健康補助サプリメントの1つの例では、ポリサッカライドは微生物細胞から単離され、単離されたポリサッカライドは、散剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、錠剤、発泡錠剤、液剤、又はガム剤(gummy)から選択される剤形とされる。
【0014】
別の態様では、本発明は、1又は複数の天然ポリサッカライドと、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、アセトバクター属(Acetobacter)、カンジダ属(Candida)、クルベロマイセス属(Kluveromyces)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、トルラ属(Torula)、トルラスポラ属(Torulaspora)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)、バクテリオイデス属(Bacterioides)、バチルス属(Bacillus)、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、及びペディオコッカス属(Pediococcus)の少なくとも1つの生存微生物細胞とを含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤である。ポリサッカライドは、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの少なくとも1つであってよい。一実施形態では、ポリサッカライド及び生存微生物細胞は、単一剤形で別々に提供される。別の実施形態では、ポリサッカライド及び生存微生物細胞は、バイオリアクターでインキュベートされる。さらに別の実施形態では、ポリサッカライド及び生存微生物細胞は、徐放性形態で提供される。
【0015】
別の態様では、本発明は、バイオリアクター内での非病原性プロバイオティクス微生物種による、選択された天然ポリサッカライドの加工からの抽出物を含む健康補助サプリメントである。さらに別の態様では、本発明は、プロバイオティクス細菌と1又は複数の天然ポリサッカライドを、バイオリアクターシステム内で、細菌による天然ポリサッカライドの加工を刺激して加工ポリサッカライドを作製する条件下で混合し、天然ポリサッカライドの少なくとも一部が細菌により加工された後で健康補助サプリメントを調製することにより、健康補助サプリメントを作製する方法を含む。一実施形態では、細菌はポリサッカライドを加工し、その結果得られた加工ポリサッカライドは、単一用量の栄養サプリメントへと製造される。一実施形態では、この方法は、加工ポリサッカライドを天然ポリサッカライド及び細菌から単離するステップと、加工ポリサッカライドを含む剤形を調製するステップとをさらに含む。別の実施形態では、この方法は、加工ポリサッカライド、天然ポリサッカライド、及び細菌を含む剤形を調製するステップをさらに含む。別の実施形態では、この方法は、加工ポリサッカライドが、散剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、錠剤、発泡錠剤、液剤、又はガム剤から選択される剤形であることをさらに含む。別の実施形態では、加工ポリサッカライドは細菌から単離され、加工ポリサッカライドは、散剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、錠剤、発泡錠剤、液剤、又はガム剤から選択される剤形とされる。
【0016】
別の態様では、本発明は、アロエベラ内葉ゲルを生物学的に利用可能な産物に加工するプロバイオティクス細菌と、バイオリアクター又は発酵槽システム内でインキュベートされた加工アロエベラ内葉ゲルを含む健康補助サプリメント又は食料製品である。一実施形態では、プロバイオティクス細菌には、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1つの細菌が含まれる。
【0017】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、これから添付の図面と共に本発明の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】5,000、10,000、及び800,000のポリマルトトリオースMW標準物質のHPLC滞留時間を表す図であり、y軸はMWであり、x軸は単位が分の滞留時間である。
【図2】4名の被験者のヒト結腸細菌で72時間インキュベーションした後のカラマツアラビノガラクタン(LAC,Larch arabinogalactan)最終産物を示す図である。
【図3】4名の被験者のヒト結腸細菌で72時間インキュベーションした後のアロエベラゲルポリサッカライド(AVP,Aloe vera gel polysaccharide)最終産物を示す図である。
【図4】4名の被験者のヒト結腸細菌で72時間インキュベーションした後の混合サッカライドサプリメント(MSS,mixed saccharide supplement)最終産物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の種々の実施形態の作製及び使用について下記で詳細に論じるが、本発明は、多種多様な特定の状況で実施できる多数の適用可能な発明の概念を提供することが認識されるべきである。本明細書中で論じた特定の実施形態は、本発明を作製及び使用するための特定の方法の単なる例示であり、本発明の範囲を限定しない。
【0020】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を下記で定義する。本明細書中で定義される用語は、本発明の関連分野における当業者により一般的に理解されるような意味を有する。本明細書において、単数の用語は、単数の実体のみを指すことを意図しないが、ある特定の例が例示に使用できる一般的な種類を含む。本明細書中の用語を使用して本発明の特定の実施形態を説明するが、それらを使用しても、特許請求の範囲における説明以外は、本発明を限定しない。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「栄養上有効な量」という用語は、哺乳動物において有益な栄養上の効果又は応答を提供する量を定義するために使用される。例えば、健康補助サプリメントに対する栄養上の応答は、哺乳動物によって異なるため、選択プロバイオティクス細菌を有する天然ポリサッカライドの栄養上有効な量は、それぞれ異なることが理解されるべきである。本発明は、不活性化プロバイオティクス細菌及び天然ポリサッカライドと混合されている、プロバイオティクス細菌から分離された(少なくとも部分的にプロバイオティクス細菌から単離された)プロバイオティクス細菌により加工された天然ポリサッカライドとプロバイオティクス細菌との両方を含む。
【0022】
当業者であれば、特定の個体が、プロバイオティクス細菌により事前に加工された天然ポリサッカライドである混合製剤の1又は複数から恩恵を受けることを認識するであろう(例えば、正常な消化細菌叢を有する個体、付加的なプロバイオティクス栄養補助を必要としていない個体、及びプロバイオティクス細菌を回避している個体も)。同様に、選択プロバイオティクス細菌を有する天然ポリサッカライドの欠如は、生理学的機能及び細胞機能に影響を与えることが知られている。
【0023】
本明細書中で開示された、選択プロバイオティクス細菌を有する栄養上有効な量の天然ポリサッカライドは、例えばこれらの栄養サプリメントで食事を維持又は増強しようと努力するヒトの食事において、これらの重要な栄養素レベルを維持及び/又は上昇させる役目を果たす。したがって、ある哺乳動物は、規定量中に存在する選択プロバイオティクス細菌を有する天然ポリサッカライドのある特定のプロファイルを必要とする場合があるが、別の哺乳動物は、異なる規定量中に存在するビタミン及びミネラルの同じ特定のプロファイルを必要とする場合がある。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「サッカライド」、「ポリサッカライド」、「天然ポリサッカライド」、「グリコーゲン補給食品」、又は「グリコーゲン栄養素」という用語は、炭水化物、ポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、又はモノサッカライドを指し、天然供給源から取得することができる分岐状か又は直鎖状であり、誘導体化されているか又は誘導体化されておらず、複合型か又は単純型であり、間質細胞液に遊離し、細胞間情報伝達において活性である場合がある種々の種類の情報伝達分子及びシグナル分子(つまり、サイトカイン、増殖因子など)の生合成に必要であるか、又は細胞膜の高度に特異的な分子活性の位置(受容体部位、イオン輸送チャネル、及び抗原識別など)を含む分子立体配置を構成する。
【0025】
本発明の天然サッカライドは、自然界では、モノサッカライド、オリゴサッカライド、及び/又はポリサッカライドとして見出すことができる。したがって、本発明の組成物は、それらのモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマー形態のサッカライドを含有することができる。天然ポリサッカライド及びそれらの使用に関する公知な天然供給源のリストは、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願第2003072770号明細書、関連サッカライド、及びサッカライド供給源を参照されたい。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の活性作用物質は、調節放出又は遅延放出形態での送達用に調製することができる。例えば、作用物質が酸感受性である場合、作用物質は、放出前に腸管に達するように腸溶コーティングして送達される。本明細書中で使用される場合、「調節放出」、「持続放出」、及び「放出制御」という用語は、本発明の製剤を使用して、本明細書中では約60分から約2時間、約4時間、約6時間、又は約8時間以上であると定義されるような、長期間にわたる栄養上有効な量の栄養素の送達を達成するための1又は複数の放出プロファイルを記述する。調節放出は、約60分後、及び約2時間後、約4時間後、約6時間後、又は8時間後でさえ、栄養素の80〜90パーセント(%)を超える放出として機能的に定義することもできる。動物はいくつかの活性物質をまったく吸収できないため、取り込みできるかどうかには問わずに、使用者が天然ビタミン又は天然ミネラルを利用可能になることにより、放出を評価することもできる。当業者であれば、本明細書に開示の通り、コーティング材料の選択及び/又はコーティング厚に依存して、小腸及び大腸の両方への、小腸のみへの、又は大腸のみへの送達を達成するように、種々の調節放出剤形を容易に設計することができる。
【0027】
長鎖ポリサッカライドに行うことができる修飾の例には、例えば、長鎖ポリサッカライドのサッカライドの種類又は組成を変更すること、サッカライドの側鎖を化学的に(有機的に又は化学的に)修飾すること(例えば、アセチル化)、長鎖ポリサッカライドを加水分解すること、長鎖ポリサッカライドのサイズを調節すること、より長い長鎖ポリサッカライドを重合すること、より短い及びより長い長鎖ポリサッカライドの組合せを選択すること、例えばエレクトロポレーション、FPLC、HPLC、サイズ排除、サイズ排除クロマトグラフィー、及び析出などにより長鎖ポリサッカライドを分離することが含まれる。持続放出製剤は、調節放出変更がなかった場合に達成されたはずである位置からより遠位にある下部腸管の一般的に予測可能なある位置で放出が達成されるように、調製及び送達することができる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「炭水化物」という用語は、その定義が炭水化物化学分野の当業者に周知である「サッカライド」、「ポリサッカライド」、「オリゴサッカライド」、及び「糖」という用語と同義的に使用される。本発明の組成物は、少なくとも2つ以上の必須サッカライドを含むように意図されているが、サッカライドは、モノサッカライド、オリゴサッカライド、及び/又はポリサッカライドの形態であってよいことに留意すべきであり、例えば、トラガカントガム及びグアーガムを含有する組成物は、ガラクツロン酸、シアル酸、マンノース、及びガラクトースを含有していると見なされる。したがって、所与の健康補助サプリメントの特定のガム量を制御することにより、健康補助サプリメントにおけるそれぞれのサッカライド量を制御することができる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「単離された」という用語は、種々の他の成分を取り除くために分画にかけられ、その発現された生物活性を実質的に保持する有機分子又は類似分子の一群を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この意味は、組成物の活性型栄養素が、組成物中の全分子の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%以上を構成する組成物を指す。ある場合には、活性型栄養素は、その活性に影響を与えずにその通常の細胞環境からうまく取り出すことができない。実際、本発明は、バイオリアクター内でのプロバイオティクス微生物によるポリサッカライドの天然加工を利用して、最高品質及び最高量の活性栄養化合物を送達する。しかしながら、ある場合には、加工又は「単離」のレベル、化合物の有効性及び総費用、並びに環境への影響の間でバランスが達成される。当業者であれば、化合物の有効性を最大限にすると同時に、信頼できる環境世話人であることが可能であることを認識するであろう。植物、例えば野生植物の場合には、地域文化及び地域社会とのバランスも維持して、本発明で使用するために単離される栄養化合物を含む植物の栽培の影響を最小限にしなければならない。
【0030】
本発明を使用して、天然ポリサッカライド及びプロバイオティクス細菌の有用な剤形を作製するための技術及び組成物は、以下の参考文献の1又は複数に記載されており、関連部分は参照により本明細書に組み込まれる:Ansel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 2nd Edition (1976);Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. (Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985);Advances in Pharmaceutical Sciences (David Ganderton, Trevor Jones, Eds., 1992);Advances in Pharmaceutical Sciences Vol 7. (David Ganderton, Trevor Jones, James McGinity, Eds., 1995);Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms (Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Series 36 (James McGinity, Ed., 1989);Pharmaceutical Particulate Carriers: Therapeutic Applications: Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol 61 (Alain Rolland, Ed., 1993); Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract (Ellis Horwood Books in the Biological Sciences. Series in Pharmaceutical Technology;J. G. Hardy, S. S. Davis, Clive G. Wilson, Eds.);Modern Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol 40 (Gilbert S. Banker, Christopher T. Rhodes, Eds.)など。
【0031】
例えば、本発明の組成物は、錠剤に含まれていてもよい。錠剤は、例えば好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、着香料、流動誘発剤(flow-inducing agent)、ガム質剤(gummy agent)、そしゃく剤(chewing agent)、及び/又は溶解剤を含有していてもよい。例えば、経口投与は、錠剤、ジェルキャップ剤、カプレット剤、又はカプセル剤の投与単位形態であってもよく、活性薬物成分は、ラクトース、ゼラチン、寒天、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、及びそれらの混合物などのような無毒な薬学的に許容される不活性担体と混合されている。本発明での使用に好適な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコース又はベータラクトース)、コーン甘味料、天然ガム及び合成ガム(例えば、アラビアガム、トラガント、又はアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、並びにワックスなどが含まれる。本発明で使用するための潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸二カルシウム、及びそれらの混合物などが含まれ得る。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、及びそれらの混合物などが含まれ得る。
【0032】
本発明の健康補助サプリメントに含まれるポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、又はモノサッカライドは、潅木、樹木、草木、酵母、真菌、カビ、ガム、樹脂、デンプン及びセルロース誘導体、並びに天然ムチン供給源などの、多種多様な天然及び合成供給源から入手可能である。本発明で使用するためのポリサッカライドの天然供給源のいくつかの非限定的な例には、(a)アラビアガム、カラヤ、トラガント、又はガティを含有する潅木又は樹木滲出液;(b)寒天、アルギン、又はカラギナンを含む海産物ガム;(c)グアー、イナゴマメ、又はオオバコを含む種子ガム;(d)ペクチン又はアセチル化ポリマンノースを含有する植物抽出物;(e)カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、酸化セルロースなどのデンプン及びセルロース誘導体;並びにデキストラン及びキサンタンを含有する微生物ガムが含まれる。しかしながら、本発明の組成物は、それぞれのサッカライドがそこから取得される供給源により制限を受けるとは意図されていないことが認識されるべきである。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「植物由来」「植物粉末」、「植物抽出物」、及び「ハーブ抽出物」という用語は、植物組織で産生され、本発明のプロバイオティクス微生物により加工することができるポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、又はモノサッカライドの天然供給源を指すために同義的に使用される。本発明の一部を形成するポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、又はモノサッカライドの天然供給源のための天然供給源は、例えば、水を取り除くことにより(例えば、果汁及び/又は果肉から抽出する)、1又は複数の成分を化学的に、機械的に、熱により、サイズにより抽出することにより、又はそうでなければ、極性溶媒、無極性溶媒、無機質溶媒、石油溶媒、又は他の溶媒を使用して成分を分離することにより、典型的にはその天然状態から、ある程度の有益な健康又は治療活性を示す植物の少なくとも一部を単離する。植物由来の活性作用物質の単離は、活性作用物質の性質、例えば、水溶性、不溶性、及び混和性など、分解に対する感受性(例えば、熱、pH、酸素、光などによる変性)に依存する。植物抽出物には、植物又はハーブの大部分の液体を取り除き、生物学的に利用可能な固形物に濃縮した乾燥植物材料も含まれる。ほとんどのハーブ作用物質は、特に濃縮されると有毒な場合があるが、「疾患を治療及び健康を増進するための民間療法薬」として、茶剤及び湿布剤にそれらのより伝統的な様式で使用される場合、一般的には安全である。
【0034】
プロバイオティクスは、ラクトバチルス種、ビフィドバクテリウム種、及び酵母を含む生菌の非病原性及び非毒素産生微生物種であり、胃腸(GI,gastrointestinal)管微生物叢の天然成分であるか、又は特定の食品又は健康補助サプリメントで栄養補助することによりGI管微生物叢の集団に導入することができる。プロバイオティクスは、摂取すると、腸の微生物叢のバランスを改善することにより宿主生物に有益な影響を与える。いくつかの最近の研究によると、ある生菌微生物は、他の健康上の利益だけでなく免疫調節性及び抗発癌性の効果を示し得ることが示唆されている。GI管のいくつかの微生物叢は、発酵などの過程により、特定の食品物質の消化も完了させる。腸の微生物叢は、免疫系の成熟に、正常な腸形態の発達に、且つ慢性の免疫学的に平衡状態にある炎症応答を維持するために重要である。微生物叢は、腸粘膜の障壁機能を強化して、病原体の結合及びアレルゲン物質の進入を防止する。現在、標的プロバイオティクスに関する科学的研究が非常に活発であり、そこでは特定の健康増強効果について選択される、十分に特徴付けられた細菌が使用されている。現在、ビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属の種々の種、並びにラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、及びサッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)が、医師用卓上参考書(PDR,Physician's Desk Reference)でプロバイオティクスとして認められている。
【0035】
散剤。プロバイオティクス加工ポリサッカライドは、散剤形態で提供することができる。散剤形態は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌又はその一部も含むことができる。多くの場合、散剤形態は、その外見、食感を向上させ、さらに散剤の保存を支援する1又は複数の担体、賦形剤、湿潤性作用物質、流動性作用物質、香味料、及び着色剤なども含むことができる。
【0036】
カプセル剤。カプセル剤は、標準的なツーピース硬質ゼラチンカプセルを、1〜1000ミリグラムのプロバイオティクス加工ポリサッカライドで各々充填ことにより調製することができる。カプセル剤は、賦形剤、及び担体など、例えば0.5〜150ミリグラムのラクトース、0.1〜500ミリグラムのセルロース、及び0.1〜60ミリグラムのステアリン酸マグネシウムで充填することができる。カプセル剤は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌も含むことができる。
【0037】
軟質ゼラチンカプセル剤。プロバイオティクス加工ポリサッカライドの混合物を、大豆油、綿実油、又はオリーブオイルなどのような可消化油に溶解する。容量型ポンプ(positive displacement pump)を使用することにより、プロバイオティクス加工ポリサッカライドをゼラチンに注入し、例えば100〜500ミリグラムのプロバイオティクス加工ポリサッカライドを含有する軟質ゼラチンカプセル剤を形成する。前記軟質ゲルカプセル剤を洗浄及び乾燥する。軟質ゲルカプセル剤は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌も含むことができる。
【0038】
錠剤。錠剤は、投与単位が、100〜500ミリグラムのプロバイオティクス加工ポリサッカライド、0.2ミリグラムのコロイド状二酸化ケイ素、5ミリグラムのステアリン酸マグネシウム、50〜275ミリグラムの微結晶性セルロース、11ミリグラムのデンプン、及び98.8ミリグラムのラクトースを有するように、従来の手順により調製する。風味を増すか又は吸収を遅らせるために、適切なコーティングを施すことができる。錠剤は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌も含むことができる。
【0039】
発泡錠剤を提供するためには、例えば適正量のクエン酸モノナトリウム及び重炭酸ナトリウムを共に混合し、次いで水の非存在下でローラー圧縮して、その後粉砕されて顆粒になるフレークを形成する。その後、顆粒は、プロバイオティクス加工ポリサッカライド、薬物及び/又はその塩、従来のビーディング剤(beading agent)又は充填剤と混合され、甘味料、香味料、及び潤滑剤と混合されていてもよい。発泡錠剤は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌も含むことができる。
【0040】
懸濁剤。経口投与用の水性懸濁剤は、各5mlが、100mgの細かく分割されたプロバイオティクス加工ポリサッカライド、200mgのカルボキシルメチルセルロースナトリウム、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液、U.S.P.、及び0.025mlのバニリンを含むように調製する。懸濁剤は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌も含むことができる。
【0041】
ミニ錠剤の場合は、プロバイオティクス加工ポリサッカライドを、6〜12Kpの範囲の硬度に圧縮する。最終錠剤の硬度は、顆粒の調製に使用される線形ローラー圧縮強度(linear roller compaction strength)により影響を受け、それは、例えば炭酸水素モノナトリウム及び炭酸水素ナトリウムの粒径により影響を受ける。より小さな粒径の場合は、約15〜20KN/cmの線形ローラー圧縮強度を使用することができる。
【0042】
ガム状摂取物の場合、本発明は、例えば、関連部分が参照により本明細書中に組み込まれる、Yangらに付与された米国特許第5,928,664号明細書の教示と組み合わせることができる。手短に言えば、ゼラチン及びグリセリンの水溶液を、最初の水溶液の水分含量のある程度を除去するのに十分な時間及び十分な温度に加熱することにより調製されたグリセリル化ゼラチンマトリックスと混合されたプロバイオティクス加工ポリサッカライドを含むガム状剤送達系に本発明が混合される、摂取可能なガム状剤送達系が教示されている。本明細書中で教示されているプロバイオティクス加工ポリサッカライドは、せん断形成マトリックス担体(shearform matrix carrier)から送達することができる。植物性製剤が「ガム状の稠性」を提供するためには、本発明は、例えば、関連部分が参照により本明細書中に組み込まれる、Grazelaらに付与された米国特許第6,586,032号明細書に教示された組成物及び方法を使用することができる。手短に言えば、ジェランガム及びカラギナンを使用する無ゼラチンのガム状糖剤であり、無ゼラチンのガム状糖剤に固くて弾力性のあるゼラチン様の食感を提供する。ガム状摂取物は、本明細書中で開示されているようなプロバイオティクス細菌も含むことができる。
【0043】
バクテリオイデス・テタイオタオミクロン(Bacterioides thetaiotaomicron)などのある種のGI管微生物叢は、ヒトが産生する通常の消化酵素では分解できないベータ結合植物繊維などの物質の消化を助け得る酵素を産生することも知られている。バクテリオイデス・テタイオタオミクロンは、明らかにベータ−グルコシルヒドロラーゼ(beta-glucosylhydrolase)酵素の産生することによりこれを達成する。これらの酵素及び他の物質の産生は、特定のポリサッカライド基質への曝露により誘導されると考えられる。これらの酵素のいくつかは、細胞外に分泌されることが報告されることに留意すべきである。いくつかの最近の研究により、宿主分子のフコシル化の誘導、血管形成の刺激、及び腸の先天性免疫応答の誘導に関する、バクテリオイデス・テタイオタオミクロンの役割も明らかになっている。別のバクテロイデス属の種、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)は、マウスの発生免疫系の細胞性及び物理的成熟を指図する細菌性ポリサッカライド(PSA,polysaccharide)を産生することが近年示された。バクテリオイデス種は、なかでも、最も初期にコロニーを形成し、最も数的に顕著な腸微生物叢であるので、このことは有意義である。具体的に言うと、バクテロイデス・フラジリスは、哺乳類の下部胃腸管にコロニーを形成する、遍在性で重要なグラム陰性嫌気性菌である。
【0044】
バクテリオイデス・テタイオタオミクロンなどの細菌種により細胞外ベータ−グルコシルヒドロラーゼ酵素が放出されると、その結果として、ベータ結合ポリサッカライドが、より小さなポリサッカライド、オリゴサッカライド、並びに単純モノサッカライド及びジサッカライド糖に分解される場合がある。実際、バクテリオイデス・テタイオタオミクロンが、小型、中型、及び長鎖ポリサッカライドを含有するカラマツアラビノガラクタンを使用した連続培養で増殖する能力は実証されている。その後、これらの酵素消化産物は、他の微生物による吸収及び使用に利用可能であるか、又は腸を介して人体に吸収することができる。腸内細菌及び乳酸産生細菌などのある種の微生物種によるポリサッカライドの細胞内発酵は広範に研究されているが、バクテリオイデス・テタイオタオミクロンなどの細菌によるヒトGI管内の細胞外酵素消化の実際の生物学的意義は、広範に探究されていないことが明らかである。
【0045】
乳酸菌、エンテロコッカス(Enteroccus)は、生態学的に用途が広く、広範囲の温度及びpH条件に耐えることができる。この細菌は、ヒト小腸及び大腸にコロニーを形成する。本研究において3つすべてのIPと最も良好に競合できた2つの細菌種、E.フェカリス(E. faecalis)及びE.フェシウム(E. faecium)は、よく知られているプロバイオティクスである。ヒトプロバイオティクス栄養補助研究により、両種は免疫系を刺激できることが報告されている。E.フェシウムは、血清コレステロールを減少させ、炎症応答に関与する細胞受容体の発現を低減させることも示されている。
【0046】
プレバイオティクス(prebiotics)は、ある種のGI管微生物の増殖又は活性を刺激する食品成分である。市販のプレバイオティクスは、一般的には、嫌気性発酵代謝を介して、ビフィドバクテリウム及びラクトバチルス種などのある種の有益な乳酸菌により選択的に使用される植物起原の不消化ポリサッカライドである。いくつかの一般的に使用されるプロバイオティクスには、イヌリン、フラクトオリゴサッカライド(FOS,fructooligosaccharides)、及びキクイモが含まれる。
【実施例1】
【0047】
選択ポリサッカライド基質で増殖が増強されたプロバイオティクス培養物の選択
ヒトGI管内に存在する異なる種及び菌株の細菌は、異なるポリサッカライド基質を使用する能力を有する。例えば、ビフィドバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、ルミノコッカス属、コプロコッカス属、ユーバクテリウム属、及びフゾバクテリウム属の22の異なる種に由来する154の菌株に関する研究では、それらの菌株が21の異なる複合炭水化物を発酵させる能力について調査した。一般的な食品ポリサッカライドデンプン(アミロース)及びアミロペクチンは、この調査では、ほとんど細菌株により発酵された。調査された22種のうちの7種の少なくともいくつかの菌株は、アミロース及び/又はアミロペクチンを利用することができた。D−ガラクトサミン、デキストラン、カラヤガム、フコイダン、アルギン酸塩、カラゲナン、硫酸コンドロイチン、ヒアルロン酸塩、ヘパリン、オボムコイド、及びウシ顎下ムチンなどの他のポリサッカライドは、試験された菌株のいずれによっても発酵されなかった。この調査に含まれていた他のポロサッカライド、グルコサミン、フコース、キシラン、カラマツアラビノガラクタン、グアーガム、イナゴマメガム、アラビアガム、ガティガム、トラガカントガム、ペクチン、ポリガラクツロ酸塩、及びラミナリンは、特定の細菌株により選択的に発酵されたが、他の細菌株では発酵されなかった。この研究により、発酵による選択ポリサッカライドの選択的加工について、ヒトGI管由来の細菌株を選択することが可能であることが示される。
【0048】
発酵野菜、ヨーグルト、ケフィア、イメール(ymer)、バターミルク、及びラバン(laban)などの培養食品では、種々の微生物を使用してヒト摂取用の食品が生成される。
【0049】
多種多様な細菌種及び酵母種が、これらの食料製品の生産で安全に使用されている。ヒト用食品に安全に使用されてきた長い歴史をもつこれらの微生物は、精製された長鎖ポリサッカライド化合物を、より短鎖のポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドなどの生物学的に活性なより小さな化合物に加工するそれらの微生物の能力についてスクリーニングするための優れた候補である。そのような加工は、天然ポリサッカライドとこれらの微生物の1又は複数を、両成分がヒト又は他の動物に同時に経口投与される形態に混合することにより、いずれのインビボでも生じるように操作することができる。この第1の実施例では、微生物によるポリサッカライドの加工は、GI管を通って通過する間に起こる。或いは、微生物及びポリサッカライドを、制御された物理的条件下(つまり、栄養素、温度、水素イオン濃度、酸化/還元電位、酸素利用率、水分活性、塩濃度など)で、機械的発酵システム中で混合し、所望の最終産物(つまり、より短鎖のポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドの許容される比率)が産生されるまでインキュベートしてもよい。
【0050】
種々の細菌及び酵母の安定した混合培養物であるケフィア粒に見出される典型的な微生物には、以下のものが含まれる:
・ ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophillus)
・ ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)
・ ラクトバチルス・カゼイ(Lb. casei)
・ ラクトバチルス・ラクティス(Lb. lactis)
・ ラクトバチルス・プランタルム(Lb. plantarum)
・ ラクトバチルス・パラカゼイ(Lb. paracasei)
・ ラクトバチルス・セロビオスス(Lb. cellobiosus)
・ ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lb. delbrueckii)
・ ラクトバチルス・フルクティヴォランス(Lb. fructivorans)
・ ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lb. helveticus)
・ ラクトバチルス・ヒルガード(Lb. hilgardii)
・ ラクトバチルス・ケフィリ(Lb. kefiri)
・ ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス(Lb. kefiranofaciens)
・ ラクトバチルス・ケフィルグラナム(Lb. kefirgranum)
・ ラクトバチルス・パラケフィア(Lb. parakefir)
・ ラクトコッカス・ラクチス
・ ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)
・ ストレプトコッカス・サーモフィリス(S. thermophilis)
・ ストレプトコッカス・ラクティス(S. lactis)
・ エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)
・ ロイコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)
・ ロイコノストック・メゼンテロイデス(Leuc. mesenteroides)
・ アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)
・ アセトバクター・ラセンス(A. rasens)
・ カンジダ・ケフィア(Candida kefir)
・ カンジダ・シュードトロピカリス(C. pseudotropicalis)
・ カンジダ・ランセンス(C. rancens)
・ カンジダ・テナース(C. tenuis)
・ クルベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)
・ クルベロマイセス・マルキシアヌス(K. marxianus)
・ クルベロマイセス・ブルガリカス(K. bulgaricus)
・ クルベロマイセス・フラジリス(K. fragilis)
・ サッカロマイセス・ケフィア(Saccharomyces kefir)
・ サッカロマイセス・セルビシエ(S. cervisiae)
・ サッカロマイセス・ラクティス(S. lactis)
・ サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(S. carlsbergensis)
・ サッカロマイセス・ユニスポラス(S. unisporus)
・ サッカロマイセス・ルキシー(S. rouxii)
・ トルラ・ケフィア(Torula kefir)
・ トルラスポラ・デルブリュッキ(Torulaspora delbrueckii)
・ デバリオマイセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)
・ チゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)
【0051】
野菜及び乳製品の発酵に使用されるいくつかの典型的な細菌には、以下のものが含まれる:
・ ラクトバチルス・アシドフィルス
・ ラクトバチルス・ブルガリカス(L. bulgaricus)
・ ラクトバチルス・プランタルム(L. plantarum)
・ ラクトバチルス・ラクティス(L. lactis)
・ ラクトバチルス・デルブリュッキ(L. delbrueckii)
・ ラクトバチルス・ライヒマニ(L. leichmannii)
・ ラクトバチルス・サリバリウス(L. salivarius)
・ ラクトバチルス・カレット(L. caret)
・ ラクトバチルス・ペントアセチクス(L. pentoaceticus)
・ ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)
・ ラクトバチルス・ブフネリ(L. buchneri)
・ ラクトバチルス・セロビオサス(L. cellobiosus)
・ ラクトバチルス・コンフサス(L. confusus)
・ ラクトバチルス・コプロフィラス(L. coprophilus)
・ ラクトバチルス・ファーメンタツム(L. fermentatum)
・ ラクトバチルス・サンフランシスコ(L. sanfrancisco)
・ ラクトバチルス・サーモフィラス(L. thermophilus)
・ ラクトバチルス・ババリカス(L. bavaricus)
・ ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)
・ ラクトバチルス・コリニフォルミス(L. coryniformis)
・ ラクトバチルス・カルバータス(L. curvatus)
・ ラクトバチルス・プランタルム(L. plantarum)
・ ラクトバチルス・サケ(L. sake)
・ ロイコノストック・デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)
・ ロイコノストック・メゼンテロイデス(Leu. mesenteroides)
・ ロイコノストック・パラメゼンテロイデス(Leu. paramesenteroides)
・ エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
・ エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)
・ ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)
・ ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)
・ ペディオコッカス・ペントカクス(Pediococcus pentocacus)
【実施例2】
【0052】
プロバイオティクス生物の増殖及びポリサッカライド利用を増強するための追加的作用物質
ポリサッカライド以外に、有益な細菌の増殖を促進するか又は競合する細菌の増殖を阻害する追加的作用物質を包含させることは、インビボ又はインビトロのいずれかで有益であり得る。これらの追加的な物質の例には、以下のものが含まれ得る:
(1)グラム陰性細菌の増殖を阻害するが、ラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属などのグラム陽性細菌に対してはそれほど影響を与えない選択的抗生物質
(2)グラム陽性細菌の増殖を阻害するが、バクテリオイデス種などのグラム陰性細菌に対してはそれほど影響を与えない選択的抗生物質
(3)有益な細菌の増殖を刺激するために動物飼料に使用される亜れき青状腐食質物質などのプロバイオティクス細菌の増殖を刺激する物質
(4)それらの変化が、有益なプロバイオティクス微生物の増殖に好ましいように増殖系のpH条件を変更する、無機酸又は有機酸及び無機塩基又は有機塩基などの物質
(5)バクテリオイデス属、ラクトバチルス属、及びビフィドバクテリウム属などの有益な嫌気性微生物の増殖に好ましいように増殖系の酸化還元条件を変更する水素化物イオン及び/又は化学的還元電位を有する他の化学薬品などの物質。
【実施例3】
【0053】
プロバイオティクスを用いて又はプロバイオティクスを用いないで、プロバイオティクス加工ポリサッカライドを選択及び作製するための組成物及び方法
バクテリオイデス・テタイオタオミクロン
天然ポリサッカライド(複数可)及びバクテリオイデス・テタイオタオミクロンの生存細胞を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
天然ポリサッカライド(複数可)及びバクテリオイデス・テタイオタオミクロンの生存細胞、並びにグラム陰性の嫌気性菌の増殖を刺激する選択成長促進剤を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、バクテリオイデス・テタイオタオミクロンを使用して細菌修飾ポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドを産生するための方法
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、バクテリオイデス・テタイオタオミクロンを使用して免疫学的活性を有する細菌修飾ポリサッカライド及びオリゴサッカライドを産生するための方法
【0054】
バクテリオイデス・フラジリス
天然ポリサッカライド(複数可)及びバクテリオイデス・フラジリスの生存細胞を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
天然ポリサッカライド(複数可)及びバクテリオイデス・フラジリスの生存細胞、並びにグラム陰性の嫌気性菌の増殖を刺激する選択成長促進剤を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、バクテリオイデス・フラジリスを使用して細菌修飾ポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドを産生する方法
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、バクテリオイデス・フラジリスを使用して免疫学的活性を有する細菌修飾ポリサッカライド及びオリゴサッカライドを産生するための方法
【0055】
ビフィドバクテリウム・ロンガム
天然ポリサッカライド(複数可)及びビフィドバクテリウム・ロンガムの生存細胞を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
天然ポリサッカライド(複数可)及びビフィドバクテリウム・ロンガムの生存細胞、並びに嫌気性菌の増殖を刺激する選択成長促進剤を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、ビフィドバクテリウム・ロンガムを使用して細菌修飾ポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドを産生するための方法
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、ビフィドバクテリウム・ロンガムを使用して免疫学的活性を有する細菌修飾ポリサッカライド及びオリゴサッカライドを産生するための方法
【0056】
エンテロコッカス・フェシウム
天然ポリサッカライド(複数可)及びエンテロコッカス・フェシウムの生存細胞を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
天然ポリサッカライド(複数可)及びエンテロコッカス・フェシウムの生存細胞、並びにグラム陰性の嫌気性菌の増殖を刺激する選択成長促進剤を含むプロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、エンテロコッカス・フェシウムを使用して細菌修飾ポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドを産生するための方法
閉鎖バイオリアクターシステム内で天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、エンテロコッカス・フェシウムを使用して免疫学的活性を有する細菌修飾ポリサッカライド及びオリゴサッカライドを産生するための方法
【0057】
種々のプロバイオティクス細菌
ポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライド産生用のグルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガム、並びにそれらの組合せの群から選択されるポリサッカライドを利用する能力を有するラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の群から、特定の非病原性の食品加工微生物を選択すること
グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの群から選択される1又は複数のポリサッカライドと、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の群から選択される非病原性微生物種の生存細胞を組み合わせて、プロバイオティクス健康補助サプリメント又は食品を産生すること
閉鎖バイオリアクターシステム内で、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの群から選択される天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の群から選択される非病原性微生物種を使用して、部分的に分解されたポリサッカライド、オリゴサッカライド、ジサッカライド、及びモノサッカライドを産生するための方法
閉鎖バイオリアクターシステム内で、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの群から選択される天然由来ポリサッカライドの酵素分解を達成するために、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の群から選択される非病原性微生物種を使用して、免疫学的活性を有する部分的に分解されたポリサッカライド及びオリゴサッカライドを産生するための方法
【0058】
人類史上昔からよく知られているいくつかの薬用植物の有益性は、部分的にはそれらの免疫調節ポリサッカライド(IP,immunomodulatory polysaccharide)含量に起因し得る。例えば、エキネセア・プルプレア(Echinacea purpurea)、チョウセンニンジン(Panax ginseng)、及びウコン(Curcma longa)の免疫調節活性は、部分的にそれらのアラビノガラクタン含量に起因し得る。アロエベラゲルのポリサッカライド、特にアセチル化マンナンも、強力な免疫調節物質である。下記は、本発明の一実施形態の例である。
【0059】
免疫調節ポリサッカライド(IP)は、インビトロで、マクロファージを活性化し、T細胞及びB細胞の増殖を刺激し、補体活性を抑制し、サイトカイン放出を調節し、腸免疫系を刺激することができる。より高い分子量(MW,molecular weight)のポリサッカライドは、より強力な免疫調節効果を示す。下記の経口摂取IPは、癌患者の生存を延長し、生活の質を向上するためのアジュバント療法として使用することができる。複合植物ポリサッカライド(CPP,complex plant polysaccharide)は、摂取されると、典型的には大部分がそのまま腸に進入し、その後、腸の複雑な微生物叢によって様々な大きさに分解され得る。これらの物質は、それにより細菌叢の組成及び密度に影響を与え、モノサッカライド、短鎖脂肪酸、CPP断片、及び代謝産物、並びにガスを生成することができる。その後、これらのCPP分解産物は、GI免疫系に影響を与え、吸収又は排泄され得る。下記に記載されているインビトロでの実証は、免疫系支援用に製剤された混合サッカライド健康補助サプリメント(MSS,mixed-saccharide dietary supplement)及びそのCPP成分の2つ:アラビノガラクタン(LAG,arabinogalactan)及び高分子量アロエベラゲルポリサッカライド(AVP,aloe vera gel polysaccharide)のヒト結腸細菌性利用を例示する。この実証により、エネルギー源として、及びより多くの細菌を製造するための材料として、CPPを最も良好に競合できる結腸細菌が選択された。
【0060】
以下の調製物は、本発明で使用のするための典型的なポリサッカライドである。
【0061】
計量したCPP試料(カラマツアラビノガラクタン);高分子量アロエベラゲルポリサッカライド;混合サッカライド健康補助サプリメント(LAG、AVP、シクンシ科ガティノキ幹ガム(Anogeissus latifolia stem gum)、トラガントガムノキ幹ガム(Astragalus gummifer stem gum)、グルコサミンHCl、及びウンダリス・ピナティフィダ(Undaris pinnatifida)抽出物を含むAdvancedAmbrotose(商標))を、200rpmの回転式振とう器で4時間脱イオン水で完全に混合した。懸濁液は、7.63〜7.9g/Lだった。その後、100mlの各懸濁液を、4℃で20時間6,000〜8,000MWCOチューブで、およそ10L容量のdiHOに対して透析した。20時間の期間中にdiHOを2回取り換えた。透析した試料は、まず0℃で1時間凍結させた後で凍結乾燥した。
【0062】
4名の健康なヒトが、糞便試料を提供した。被験者は、45歳未満で、ファーストフードが全食事の25%未満であり、過去12カ月以内に抗生物質を摂取しておらず、過去5年でGIに関する問題がなく、不規則な排便をしておらず、便秘、胃若しくは腸痙攣、又は下痢にためにOTC薬を使用せず、過去6カ月に食中毒を罹患しておらず、気分不良を危惧しない人を選んだ。糞便試料は、以下の病原体に陰性であることを確認した:クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)、及び大腸菌(E. coli)O157。10グラムの糞便試料を750mlのブレインハートインフュージョンと混合し、ブレンダーを用いて4回の30秒パルスで混合した後、6時間37℃でインキュベーションした。使用に先立ち、1ml等量を20%グリセロールに80℃で保管した。実証の1日目に、1等量を温水中で迅速に解凍し、次いで2mlの嫌気性E培地(0.2重量/体積%のクエン酸、1重量/体積%のKHPO、0.35重量/体積%のNaNHHPO・4HO、及び0.002重量/体積%のMgSO・7HO)に添加し、48時間インキュベートした後で、CPPを含有するE培地に添加した。diHO中で2時間攪拌することによりCPPを懸濁させ、次いで最終組成が1重量/体積%になるように嫌気性E培地に添加した。嫌気性条件下で、20μlの糞便懸濁液を2mlのE培地懸濁液中のCPPに添加し、嫌気性条件下(COガスパック)で3日間37℃でインキュベートしておいた。E培地におけるCPPの効果を評価するために、無CPPのE培地に添加された糞便懸濁液で構成された1つの対照例セットが含まれており、別の対照例セットは、培養条件下で9日間E培地にCPPを有していた。3日間のインキュベーション後(つまり3日目)に、20μlの培養液を2mlの新しいE培地中のCPPに添加した。6日目にこれを再び繰り返した。9日目の終わりに、遠心分離により細菌を収集し、ドライアイス−エタノールスラリーで瞬間凍結した。上清を保存し、HPLC屈折検出により化学的組成を評価した。糞便で接種しなかったという点を除いて、同一の方法で対照例セットを処理した。9日目の細菌を回収し、16s rDNA同定用に処理した。
【0063】
165 rDNA配列決定による細菌同定。9日目に、単離用細菌増殖培地プレートに試料をストリークした。使用した培地は、1)Difco(商標)社製ラクトバチルスMRS寒天、2)NNLP(ナラジクス酸(naladixic acid)、ネオマイシン、塩化リチウム、及び硫酸パラモマイシン(paramomycin sulphate))を有するビフィドバクテリウム(Bifidobaeceria)MRS、3)4%NaClを有するMRS、4)2%胆汁酸塩を有するMRS、及び5)pH5.2のMRSであった。4つの糞便培養物の継代から合計57個の単離物を選択した。製造業者の説明書に従ってBactReadyキット(GenScript社製;ピスカタウエイ、米国ニュージャージー州)を使用して、DNAを単離物から抽出した。精製されたDNAのPCR増幅は、タカラ社製SpeedSTAR HS DNAポリメラーゼ試薬と、16S rDNA増幅用ユニバーサルプライマー、順方向F8-5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'(配列番号:1)及び逆方向R1492-5'GGTTACCTTGTTACGACTT-3'(配列番号:2)とを使用して実施した。PCR増幅条件は、94℃で15分間;94℃で40秒間及び60℃で30秒間の35サイクル;及び72℃で2分間、その後4℃を保持であった。産物の純度は、2μlを2%アガロースE−ゲル上で泳動することにより確認した。単位複製配列は、Alpha Biolabs社が配列決定した。その結果得られた配列をBLAST検索にかけ、最も良好な一致が報告された。製造業者の説明書に従ってキットを使用し、各単離物に対して生化学検査グラム染色を実施した。溶血は、5%ヒツジ血液寒天を含有するDifco(商標)トリプシン大豆寒天プレートでの単離コロニー増殖により決定した。オキシダーゼ産生は、製造業者の説明書に従ってオキシダーゼ試薬を使用することにより決定した。カタラーゼ産生は、単離物が過酸化水素中で泡を産生する能力により決定した。同定は、製造業者の説明書に従ってAPI Strep又はAPI20 Eストリップを使用して確認した。
【0064】
細菌上清の化学分析。上清を室温で解凍し、脱イオン水に添加し、0.2μmポリプロピレンMini UniPrep(商標)フィルターでろ過した後、HPLCで分析した。分子サイズに基づく分離は、BioSep-SEC-S-4000カラムHPLCを使用して評価した。5,000;10,000;及び800,000のポリマルトトリオースMW標準物質を脱イオン水に添加し(約1mg/ml)、HPLCで分析して、より小さなサッカライド(6,000MW未満)がCPP透析により除去されたことを確認し、CPP及び上清のMW物質の除去を可能にした(図1)。図1は、5,000、10,000、及び800,000のポリマルトトリオースMW標準物質のHPLC滞留時間を表す図であり、y軸はMWであり、x軸は単位が分の滞留時間である。
【0065】
結果。細菌。配列解析により、52個のエンテロコッカス属単離物、4個の大腸菌単離物、1個のクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)単離物が得られた。配列解析では、属レベルの全単離物及び種レベルの40個の単離物で、信頼性(93%を超える)が示された。市販のAPI検査ストリップ及び従来の微生物学検査方法を使用した生化学的プロファイリングにより、細菌種及び表現型の特徴のさらなる同定及び確認を取得した。配列同定、グラム染色、オキシダーゼ、及びカタラーゼの結果を使用して、適切なAPI検査ストリップ、エンテロコッカス(Entercocci)用にはAPI 20 Strep、及び腸単離物用にはAPI 20 Eを決定した。その結果得られたストリップの情報をAPIデータベースを使用して評価し、その結果得られた同定を決定した(表I)。
【0066】
下記の表1は、特定のCPP培地で増殖した糞便試料から培養したエンテロコッカス種単離物の生化学的特徴を表す。数値は、各実証の陽性パーセントを表す。
【0067】
【表1】

【0068】
エンテロコッカス属は、エンテロコッカス・フェシウム(46)、エンテロコッカス・フェカリス(2)、エンテロコッカス・デュランス(1)、及びエンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)(2)だった。既に公開されている情報によると、単離されたエンテロコッカス種はすべて、グラム陽性、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性であり、エスクリン加水分解には陽性であった。52個の単離物のうち5個だけが、血液寒天上でベータ溶血性であった。E.フェシウム及びE.デュランスの100%、及びE.フェシウムの50%は、アラビノガラクタン加水分解に必要な酵素であるベータ−ガラクトシダーゼに陽性であった。E.フェシウムの100%、及びE.フェカリスの50%は、アラビノガラクタンの主要なモノサッカライドであるアラビノースを発酵させることができた。E.デュランスは、アラビノースを発酵させることができなかった。
【0069】
大腸菌単離物(4)は、LAGを使用した培養物にのみ見出された。1つのクレブシエラ・ニューモニエ単離物が、AVP培養物から回収された。表2は、大腸菌及びクレブシエラ・ニューモニエ単離物からの代謝プロファイリングの結果を表す。これらの腸内細菌は、カタラーゼ陽性及びオキシダーゼ陰性のグラム陰性バチルス属である。大腸菌単離物は1つだけが、ベータ溶血性であると識別された。
【0070】
下記の表2は、CPP培地で増殖した糞便試料から単離された腸内細菌の生化学的特徴を列挙している。数値は、各々の陽性パーセントを表す。
【0071】
【表2】

【0072】
上清。細菌培養に使用された条件と同一の条件下で9日間インキュベートした対照と比較して、すべての分子量範囲でCPPの顕著な喪失があった。しかしながら、喪失には差異があり、CPP及び糞便試料に依存した。4名の被験者の糞便培養物はすべて、800,000〜およそ12,000MWの範囲でLAGポリマーを同様に十分消費した。しかしながら、12,000MW未満のポリマーは、様々な量で消費された(図2)。図2は、4名の被験者のヒト結腸細菌で72時間インキュベーションした後のカラマツアラビノガラクタン(LAC)最終産物を示す図である。LAG対照(実線)は、結腸細菌を用いないプロトコルに供されていた。y軸はmRIUであり、x軸は単位が分の滞留時間である。
【0073】
およそ1,000,000からおよそ50,000MWのAVPのポリマー成分は、すべての被験者に由来する糞便細菌によってほとんど完全に消費されたが、特に1,000,000MW範囲でいくらかの差異があった。10,000未満のポリマーは、異なる糞便培養物によって非常に異なる様式で消費された(図3)。図3は、4名の被験者のヒト結腸細菌で72時間インキュベーションした後のアロエベラゲルポリサッカライド(AVP)最終産物を示す。AVP対照(実線)は、結腸細菌を用いないプロトコルに供されていた。y軸はmRIUであり、x軸は単位が分の滞留時間である。
【0074】
およそ1,000,000のMSSのポリマー成分は、MSSにより選択された異なる培養物によっては消費されなかったが、800,000〜1,000,000MWのポリマーは、様々な程度に消費された。興味深いことには、3名の被験者では、AVP又はLAGではなくMSSの糞便培養物分解が、対照MSSには見い出されない低分子量ポリマー約1,000MWの蓄積という結果になり、親分子からCPPの小部分を切取るグリコシド酵素の搬出を示唆した(図4)。図4は、4名の対象体者のヒト結腸細菌で72時間インキュベーションした後の混合サッカライドサプリメント(MSS)最終産物を示す。MSS対照(実線)は、結腸細菌を用いないプロトコルに供されていた。
【0075】
考察。ヒト腸微生物相は、500〜1,000種を含むと考えられており、約1.5kgの生物体量に寄与する。インビボのヒトGI管におけるポリサッカライドの細菌性利用は、疑いなく高度に複雑な過程である。ポリマー分解は、この過程に寄与する様々な細菌に由来する酵素との協調的活性である。ここでは、利用可能な炭素源としてCPPのみを含有していた新しい培地で糞便細菌を反復継代する過程により、最も良好にCPPを競合及び使用できる細菌が選択された。これらの糖を効率的に使用できる細菌は、それほど効率的でない他の種より多くの子孫を産生する傾向があるであろう。時間と共に、これらの種は培養物において優占性を示すであろう。これは、エンテロコッカス(Enteroccus)種がLAGを使用することを示す初めての実証である(表1)。
【0076】
LAGは、より低いMW(約10,000)部分(図2、矢印)を分解するそれらの能力に被験者間で差異があったが、すべての被験者で分解が不完全であった。経口アロエベラゲルは腸機能を改善することが示されたが、これは、ヒト結腸細菌によるアロエベラゲルポリサッカライドの使用を例示する最初の実証である。1つの知見は、高分子量(1,000,000を超える)成分を使用するAVPの能力に関して個体間でより大きな差異があるということである(図3、矢印)。溶解度に限りがある非常に大きな分子が消費されていることは、エンテロコッカス種がこれらの大きな分子を使用できることを例示する。大きなCPP円錐花序が内部移行され、その後より小さな成分へと分解されることを含む、いくつかの使用され得る経路が存在する。別の経路は、いくつかの細菌がグリコシダーゼを分泌し、大きな分子のより低分子量成分への分解が導かれることである。最後になるが、使用には、これらの過程の組合せが伴っていてもよい。エンテロコッカス・フェカリスは、21種のグリコシルヒドロラーゼをコードすることが知られている。これは、ヒト結腸細菌がこの混合サッカライド健康補助サプリメント(MSS)を使用することの最初の実証である。E.フェシウムにMSSを摂食させると、上清に比較的小さな(約1,000)ポリマーの大量産生が導かれるということは、特筆すべき例示である(図4、矢印)。MSS対照は5,000を超えているため、より低MW物質の産生は、より大きな分子の分解から発生しなければならない。これは、E.フェシウムにより上清に搬出された酵素による大きな分子の分解、又は細菌自体による小さなポリマーの分泌のいずれかから生じる可能性がある。非常に驚くべきことは、この現象がLAG又はAVPのいずれにも個々には認められないということである。バクテロイデス及びビフィドバクテリウム種は優占的だったが、エンテロコッカス種は、システムの最も低いステージ(the lowest stage of the system)で存在量を増加させた。MSSの他の成分のヒト結腸分解を調査した。他には、U.ピンナーフィダ(U. pinnatifida)由来の精製された繊維(α及びβ結合硫酸化フカン)及び全藻類繊維(α及びβ結合アルギン酸塩)のヒトインビトロ発酵を調査した。精製された硫酸化フカンは分解されなかった。アルギン酸塩の47〜62パーセントは、短鎖フリ酸(fury acid)に完全に代謝された。アルギン酸塩の60%が「非通常性で未知の発酵経路」により分解されると考えられると結論を下した者もいる。
【0077】
エンテロコッカスは、生態学的に用途が広く、広範囲の温度及びpH条件に耐えることができる。この細菌は、ヒト小腸及び大腸にコロニーを形成する。3つのCPPと最も良好に競合できる2つの種、E.フェカリス及びE.フェシウムは、よく知られているプロバイオティクスである。ヒトプロバイオティクス栄養補助研究により、両種は免疫系を刺激できることが報告されている。E.フェシウムサプリメントは、血清コレステロールを減少させ、炎症応答に関与する細胞受容体の発現を低減させることも示されている。腸の培養可能な細菌集団の99.9%超は偏性嫌気性菌であり、GI管に住む細菌の概算で80%は、いかなる条件下でも培養することができない。本発明者らの9日目の培養物に存在する細菌種は、これらのCPPを使用できる比較的数少ない種を代表し、いくつかの種はインビボで容易にCPPを使用することができるが、本明細書で使用された手法などの手法を使用して同定することができない。
【0078】
この実証は、ヒトGI細菌が、アロエベラゲル及び混合サッカライド健康補助サプリメント由来の免疫調節ポリサッカライドを使用することを初めて例示するものである。エンテロコッカス種は、本研究で使用した他の種よりCPPを効率的に使用し、反復継代後の培養物におけるそれらの優占性が導かれた。CPP最終産物のMW解析により、異なる個体から回収された細菌生物群系がCPPを使用する能力には差異があることが示されている。インビボで、被験者は高MWのAVP成分を完全に分解することができ、より低MWの成分の消費は様々であった。結腸細菌にMSSを摂食させると、比較的小さな(約1,000)ポリマーの大量産生が導かれるという現象は、MSSの2つの主要成分であるLAG又はAVPのいずれでも認められていない。より緊密にインビボGI管に近似した系を用いた、これら及び他のCPPに関する研究も、本発明により実施することができる。
【0079】
本明細書で論じた任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物に対して実施することができ、逆もまた同じであることが意図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0080】
本明細書中に記載された特定の実施形態は、例示目的で示されており、本発明を制限しないことが理解されよう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに、種々の実施形態で使用することができる。当業者であれば、単なる定常的な実験作業を使用して、本明細書中に記載された特定の手順に対する多数の等価物を認識するであろうし、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、特許請求の範囲により包含される。
【0081】
本明細書中で言及された公報及び特許出願はすべて、本発明が関する当業者の熟練度を示す。公報及び特許出願はすべて、あたかも個々の公報又は特許出願の各々が参照により組み込まれるのに明確に及び個々に示されたと同じ程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0082】
単数の単語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書中で「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合、「1つ」を意味していてもよいが、「1又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多く」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すと明示的に示されていない限り「及び/又は」を意味するために使用されるか、又は選択肢は相互に排他的であるが、本開示は選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願の全体にわたって、「約」という用語は、ある値が、装置に固有な誤差の変動、その値を決定するために使用される方法、又は研究対象体に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0083】
本明細書及び特許請求の範囲(複数可)中で使用される場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含むの任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する任意の形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含むの任意の形態)、又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有するの任意の形態)という単語は、包括的又は非限定的であり、追加的な説明されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0084】
「又はそれらの組合せ」という用語は、本明細書中で使用される場合、その用語に先行する列挙された項目の順列及び組合せのすべてを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの少なくとも1つ、特定の文脈において順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABの少なくとも1つも含むと意図されている。この例の続きには、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、及びCABABBなどのような、1又は複数の項目又は用語の反復を含有する組合せが明示的に含まれる。当業者であれば、そうではないと文脈から明白でない限り、典型的には、いかなる組合せでも項目又は用語の数には制限がないと理解するであろう。
【0085】
本明細書中で開示及び請求された組成物及び/又は方法のすべては、本開示に照らして過度の実験作業をせずに作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は好ましい実施形態の観点から記載されているが、当業者であれば、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱せずに、本明細書中に記載された組成物及び/又は方法、並びに方法のステップ又はステップの順序に変異を適用できることは明白であろう。当業者に明白であるそのような類似の代用及び改変はすべて、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、及び概念内にあると見なされる。
【0086】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクターシステム内で、事前にプロバイオティクス細菌とともにインキュベートされた1又は複数の天然ポリサッカライドから製造されるサプリメントを含む健康補助サプリメントであって、前記細菌が前記ポリサッカライドを加工し、その結果得られた加工ポリサッカライドが前記栄養サプリメントにおいて提供されるサプリメント。
【請求項2】
バイオリアクターからの加工ポリサッカライドが、食品又は健康補助サプリメントに適合されている、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項3】
加工ポリサッカライドが単一剤形に適合されている、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項4】
ポリサッカライドが、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項5】
ポリサッカライドが、アロエベラ由来のアセチル化マンナンを含む、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項6】
ポリサッカライド及びプロバイオティクス細菌が、単一剤形で別々に提供される、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項7】
ポリサッカライド及びプロバイオティクス細菌が、バイオリアクター内でインキュベートされる、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項8】
ポリサッカライド及びプロバイオティクス細菌が、徐放性形態で提供される、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項9】
ポリサッカライドが、ヘテロポリサッカライド、ホモポリサッカライド、又はその両方である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項10】
ポリサッカライドが、微生物細胞から単離され、単離されたポリサッカライドが、散剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、錠剤、発泡錠剤、液剤、又はガム剤から選択される剤形である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項11】
1又は複数の天然ポリサッカライドと、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の少なくとも1つの生存微生物細胞とを含む、プロバイオティクス食品又は健康補助サプリメント製剤。
【請求項12】
ポリサッカライドが、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
ポリサッカライドが、アロエベラ由来のアセチル化マンナンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項14】
ポリサッカライド及び生存微生物細胞が、単一剤形で別々に提供される、請求項11に記載の製剤。
【請求項15】
ポリサッカライド及び生存微生物細胞が、バイオリアクター内でインキュベートされる、請求項11に記載の製剤。
【請求項16】
ポリサッカライド及び生存微生物細胞が、徐放性形態で提供される、請求項11に記載の製剤。
【請求項17】
ポリサッカライドが、ヘテロポリサッカライド、ホモポリサッカライド、又はその両方である、請求項11に記載の製剤。
【請求項18】
天然ポリサッカライド及び非病原性プロバイオティクス微生物種を含む単一剤形の健康補助サプリメント。
【請求項19】
天然ポリサッカライド及び非病原性プロバイオティクス微生物種が、同時にヒト胃腸管へ提供される、請求項18に記載の健康補助サプリメント。
【請求項20】
非病原性プロバイオティクス微生物種による天然ポリサッカライドの加工が、ヒト胃腸管の領域内で達成される、請求項18に記載の健康補助サプリメント。
【請求項21】
微生物細胞が、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の少なくとも1つを含む、請求項18に記載の健康補助サプリメント。
【請求項22】
ポリサッカライドが、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の健康補助サプリメント。
【請求項23】
ポリサッカライドが、アロエベラ由来のアセチル化マンナンを含む、請求項18に記載の健康補助サプリメント。
【請求項24】
バイオリアクターにおける、非病原性プロバイオティクス微生物種による選択天然ポリサッカライドの加工からの抽出物を含む健康補助サプリメント。
【請求項25】
健康補助サプリメントを作製するための方法であって、
プロバイオティクス細菌と1又は複数の天然ポリサッカライドとを、バイオリアクターシステム内で、前記細菌による前記天然ポリサッカライドの加工を刺激する条件下で混合して加工ポリサッカライドを作製するステップと、
前記天然ポリサッカライドの少なくとも一部が前記細菌により加工された後で健康補助サプリメントを調製するステップと
を含む方法。
【請求項26】
細菌がポリサッカライドを加工し、その結果得られた加工ポリサッカライドが単一用量の栄養サプリメントへと製造される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
天然ポリサッカライド及び細菌から加工ポリサッカライドを単離するステップと、
前記加工ポリサッカライドを含む剤形を調製するステップと
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
加工ポリサッカライド、天然ポリサッカライド、及び細菌を含む剤形を調製するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
加工ポリサッカライドが、散剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、錠剤、発泡錠剤、液剤、又はガム剤から選択される剤形であることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
微生物が、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属の少なくとも1つを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
天然ポリサッカライドが、グルコマンナン、アロエグルコマンナン、コンニャクグルコマンナン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、カラマツアラビノガラクタン、藻類ポリサッカライド、フコイダン、真菌ポリサッカライド、真菌グルコマンナン、トラガカントガム、ガティガム、キサンタンガム、グアーガム、及びアカシアガムの少なくとも1つを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
天然ポリサッカライドが、アロエベラ由来のアセチル化マンナンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
加工ポリサッカライドが細菌から単離され、前記加工ポリサッカライドが、散剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、錠剤、発泡錠剤、液剤、又はガム剤から選択される剤形である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
バイオリアクター又は発酵槽システム内で、プロバイオティクス細菌とともにインキュベートされる加工アロエベラ内葉ゲルであって、前記細菌により生物学的に利用可能な産物に加工されるアロエベラ内葉ゲルを含む、健康補助サプリメント又は食料製品。
【請求項35】
プロバイオティクス細菌が、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、アセトバクター属、カンジダ属、クルベロマイセス属、サッカロマイセス属、トルラ属、トルラスポラ属、デバリオマイセス属、チゴサッカロマイセス属、バクテリオイデス属、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、ルミノコッカス属、及びペディオコッカス属から選択される少なくとも1つの細菌を含む、請求項34に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−526539(P2010−526539A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507710(P2010−507710)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/063329
【国際公開番号】WO2008/141240
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(506066906)マナテック、インク. (3)
【Fターム(参考)】