説明

選択的なオレフィンオリゴマー化

本発明は、選択率向上アルコール変性剤の存在下でのオレフィンのオリゴマー化方法に関し、そこでは変性剤が、第1の反応において、オレフィンと水の反応により形成され、そのようにして形成されたほぼ無水の変性剤が分離され第2の反応へ通され、そこでオレフィンがその変性剤の存在下でオリゴマー化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、t−ブタノール(TBA)のような選択率向上変性剤が使用される、主に二量体を形成するためのイソブチレンのようなオレフィンの選択的オリゴマー化方法に関し、特に、変性剤が、安全かつ便利な方法でオリゴマー化とは別の反応で形成され、変性剤形成工程が全体のオリゴマー化方法の中に一体化されている、一体化された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性触媒を使用する、プロピレンのようなオレフィンのオリゴマー化は、当該技術分野においては良く知られている。
【0003】
米国特許第3760026号に記載されている様に、珪藻土、シリカ/アルミナ上の冷硫酸、リン酸(時に、Ni、Co、Fe、PtまたはPdで促進される);活性化天然粘土+ZnOのような活性化物質;金属リン酸塩、例えば、鉄(III)およびセリウム等の金属リン酸塩(場合により、キャリヤ、例えば、活性炭素、ボーキサイト、活性炭素単独およびTiCl2等の金属ハロゲン化物と一緒のキャリヤ等に担持されている)、シリカゲル上のケイタングステン酸等のヘテロポリ酸およびリンモリブデン酸、BF33PO4およびBF3HPO3;ジヒドロキシホウフッ化水素酸、HF、およびS、Se、N、P、Mo、Te、W、V、および300℃より下で沸騰するSiのフッ化物またはオキシフッ化物;ならびにジメチルエーテル、HClおよびニトロメタン等の助触媒を伴うAlCl3を含めて、多数の触媒がこの反応に対して知られている。特に好ましい触媒は、スルホン酸型イオン交換樹脂、例えば、アンバーリストA−15、A−35、A−36、ピューロライトCT275等である。米国特許第4100220号は、反応変性剤としてTBA、水、または混合物の使用を例示しかつ教示している。米国特許第4447668号は、溶剤としてのメチルt−ブチルエーテルと一緒にA−15を使用するイソブチレン二量化を記載している。
【0004】
米国特許第5877372号は、スルホン酸樹脂触媒、TBA変性剤およびイソオクタンのような希釈剤を使用するイソブチレン二量化を記載している。TBAのような選択率向上変性剤の使用は、高い二量化選択率を達成するために重要である。二量化反応器への水の添加は、例えば米国特許第4100220号で示唆されており、そこでは水が二量化反応器においてイソブチレンと反応してTBAを形成することを示唆している。また、二量化反応器への水の添加を示唆する米国特許第6613108号も参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二量化反応器への水の添加の結果生じる問題は、水が触媒床全体に均等に分布しにくく、水が部分的に存在しないことで、反応の発熱性により、制御できない暴走二量化を実際に引き起す傾向にあることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、TBAのような変性剤が選択率を向上させる量の存在する下で、イソブチレン等のオレフィンをオリゴマー化する方法が提供され、そこにおいて、変性剤は、方法全体の一部として、オリゴマー反応器とは別の反応器で形成され、オリゴマー反応器への水の導入が実質的に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図面および本明細書で示される方法を参照すると、反応器10は、スルホン酸イオン交換樹脂等の適切な触媒で充填されたオリゴマー化反応器としてふさわしいものである。好ましくは、反応器10に含まれるのと同じ触媒で充填されたさらに小さい反応器20が用意されるが、水和反応器におけるよりももう少し安価な水和触媒、例えばゲル型樹脂等を使用することはもちろん可能である。
【0008】
オレフィン、好ましくはイソブチレンを含む供給原料流は、ライン1を経て反応器20へ供給され、水は、ライン3を経て反応器20へ供給される。最も有効な操作では、十分な水が固体触媒の全体の床を覆うのに添加され、これによって、オレフィンが、部分的暴走反応をもたらす可能性のある水の不存在において触媒床と接触する可能性を回避する。冷却ループが用意され、これによって、水性流がライン4を経て取り出され、冷却され、反応熱を除去するために反応器へ戻される。
【0009】
TBAのようなアルコール二量化選択率向上変性剤の形成を伴う、水と、ライン1を経て供給されたオレフィンとの反応にとって有効な反応条件が反応器20で維持される。直鎖C4オレフィンとイソブチレンのようなオレフィン混合物を含めたイソブチレン以外のオレフィンが、反応して変性剤組成物を形成することができることは理解されよう。
【0010】
本質的に無水である変性剤含有生成物流は、反応器20から、ライン2を経て反応器10へ通され、反応熱を除去するために熱交換器8で冷却された、反応器10からの再循環流と混合される。ライン2を経て供給される変性剤の量は、オリゴマー化反応器10のオレフィンに関して所望の変性剤の量を与えるのに十分な水準に維持される。
【0011】
全部のオレフィン供給原料を、図面で示されるように反応器20を通して反応器10へ通すことは可能であり、または反応器20の必要なサイズを減らすために、供給原料のオレフィンを分割して、一部だけを反応器20に通すこともできる。
【0012】
反応器10では、供給原料オレフィンの所望の選択的オリゴマー化を行うために条件が調節される。反応器10からの反応流出液はライン7を経て通過して、反応器10へ戻る前に熱交換器8で冷却される再循環流とライン7を経て二量体回収(示されない)へ進行する生成物流とに分割される。蒸留等の通常の回収手段が生成物二量体をその他の材料から分離するために使用され、その他の材料の幾つかは再生利用することができる。
【実施例】
【0013】
実施例1
TBAの脱水から得られるような高純度イソブチレン供給原料を、この実施例のオレフィン供給原料として使用する。オレフィン流をライン1を経て、A−15イオン交換樹脂で充填された反応器20へ供給する。水を、ライン3を経て、反応器20の反応熱を除去するために使用される冷却器9へライン4を経て循環する流れに添加する。反応器20の温度は、約60℃に維持され、一般的には、40〜100℃、好ましくは、60〜80℃が特に有用である。
【0014】
反応器20では、TAB生成物へ添加した全ての水のほぼ完全な転換が生じ、本質的に無水の有機相である反応流出液がライン2を経て進み、ライン5の再循環流と一緒になり、一緒になった流れは、ライン6を経て二量化反応器10へ進む。オリゴマー化反応器10は、同様に、A−15スルホン酸樹脂で充填され、反応器10での条件は、約80〜100℃の反応温度であった。反応器10で、イソブチレンは、反応器20で形成されたTBAの存在下で選択的に二量化され、高選択率でジイソブチレンを形成する。反応器10からの流出液は、ライン5を経て反応器10へ戻る、冷却器8を通って循環される部分およびライン7を経て回収される全流出液に分割される。
【0015】
以下の表Iは、反応系の種々のポイントでの流量を示し、流量は、種々の成分の1時間当たりのポンドで示された。
【0016】
【表1】


【0017】
実施例2
この実施例では、実施例1で使用した高純度イソブチレン供給原料に代えて、オレフィン供給原料は混合C4精製流である。反応器10および20の温度は実施例1と同じであり、同じ触媒を使用する。得られた結果は以下の表IIで示される。
【0018】
【表2】


【0019】
反応器10および20で使用される反応条件は一般的に公知である。一般的には、公知のオリゴマー化および水和触媒および条件が各工程で使用することができる。好適な条件としては、0〜200℃、好ましくは10〜100℃の範囲の広い温度、および液相を維持するのに十分な圧力、例えば、50psigより上、例えば、50〜500psigの使用が挙げられる。
【0020】
公知の触媒が各工程で使用でき、好ましくは、同じ触媒が反応工程のそれぞれで使用される。米国特許第3760026号が例示している。アンバーリストA−15、A−35、A−36、ピューロライトCT275、ダウェックス50等のスルホン酸型イオン交換樹脂の使用が特に好ましい。
【0021】
本発明の特徴は、選択的オレフィンオリゴマー化における選択率向上変性剤としてのTBA等のアルコールの使用であり、この変性剤が別に形成され、それによってオリゴマー化反応器での水の存在および反応器全体を通しての変性剤の不均一分布に随伴する付随的問題が回避される。このために、水和反応器20は、反応器20から二量化反応器10へ進行する流が本質的に無水である様に操作される。従来技術では好ましいとされる方法とは違って、反応器10から水が本質的に排除されることが重要な特徴である。水和反応器20の操作では、水性相および有機相の両方が形成され、反応器中には、相の間に分布した変性剤と一緒に、有機相および水性相との間の界面が存在する。オレフィンおよび変性剤を含む有機相がライン2を経て分離されて二量化反応器へ送られ、一方、水性相は、反応発熱を除去するための冷却器9を通って循環されるように操作が実施される。反応器20での流量および温度は、二量化の目的のためにライン2におけるストリーム中において十分な変性剤を与え、同時にストリームが本質的に無水、即ち、約1重量%未満の水を含むように従来の技術的手法で制御される。
【0022】
種々のその他の公知の二量化の手法、例えば、米国特許第5877372号に記載されている様な希釈剤の使用等を採用することができる。
【0023】
本発明の顕著な特徴は、オリゴマー化過程への水の導入の回避であり、それによって二量体生成物のより安全かつ均一な選択的製造がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の特に好ましい実施態様の代表図である。
【符号の説明】
【0025】
1、2、3、4、5、6、7 ライン
8、9 熱交換器(冷却器)
10 二量化反応器
20 水和反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択率向上変性剤の存在下における、オレフィンの二量体への選択的オリゴマー化方法であって、その改良が、第1の反応においてオレフィンと水とを反応させて前記変性剤を製造する工程、実質的に無水の生成物変性剤を分離する工程および分離された変性剤の存在下でオレフィンをオリゴマー化して二量体を形成する工程を含む方法。
【請求項2】
選択率向上変性剤の存在下における、イソブチレンのジイソブチレンへの選択的オリゴマー化方法であって、その改良が、第1の反応においてイソブチレンと水とを反応させて前記変性剤を製造する工程、実質的に無水の生成物変性剤を分離する工程および分離された変性剤の存在下でイソブチレンをオリゴマー化してジイソブチレンを形成する工程を含む方法。
【請求項3】
前記変性剤がTBAである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選択率向上変性剤の混合物の存在下における、イソブチレンのジイソブチレンへの選択的オリゴマー化方法であって、その改良が、アルコールを形成するために、第1の反応において混合C4オレフィンを含む炭化水素混合物と水とを反応させて前記変性剤を製造する工程、実質的に無水のアルコールを分離する工程およびアルコールの存在下で前記混合C4オレフィンをオリゴマー化してジイソブチレンを選択的に形成する工程を含む方法。
【請求項5】
スルホン酸イオン交換樹脂が両方の反応で使用される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−511473(P2009−511473A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534532(P2008−534532)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/033056
【国際公開番号】WO2007/044137
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(505341095)ライオンデル ケミカル テクノロジー、 エル.ピー. (61)
【氏名又は名称原語表記】LYONDELL CHEMICAL TECHNOLOGY, L.P.
【Fターム(参考)】