説明

選択的なガス透過性を調節した包装フィルム及び食品包装袋内での食味調整方法

【課題】生鮮食品、加工食品の包装袋においては袋内の食品の呼吸による二酸化炭素、添加した酵素などが発生し、食品の品質を損なうため、これらのガスあるいは水分を袋外へ除去する必要がある。
【解決手段】合成樹脂フィルムの所要位置を押圧あるいは延伸により厚さ5μm〜70μmの薄膜状となし、内容物により発生した二酸化炭素、水分等のガスにより、当該薄膜部が他の部分より薄膜であることから当該薄膜部が延伸、膨張し、この際、より薄くなった当該薄膜部からガス、水分が抜け出る構造の食品包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は青果、野菜、漬け物あるいは加工食品等の包装袋に関するものである。
【0002】
さらには内容物の経時保存に際し、内容物本体より発生する二酸化炭素、水分等を調整して排出し、内容物の品質を保持するために用いられる包装袋である。
【背景技術】
【0003】
生鮮食品、加工食品等にあっては出荷、販売中に経時変化を生じ、食品の品質を損ねるのである。
【0004】
また、販売期間を想定して賞味変化により成熟した調味を想定して製造するのである。
【0005】
この際、大半の青果物にあっては食品の呼吸により二酸化炭素が生成されるのであるが、密封を要する食品形態にあっては包装袋が膨張するため賞味期限を短く設定しなければならないのである。
【先行技術の開示】
【0006】
特開2006−124015号広報にあっては20〜200μmのフィルムに開口面積1mm以下の微細孔を設け、酸素透過を図るのである。
【0007】
特開2006−158254号広報にあっては厚みが10〜2000μmの高分子フィルムにより構成された袋に一個以上の微孔を設けるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術の特開2006−124015あるいは特開2006−158254に見られるように発生するガス、水分の透過には微孔あるいは微細孔を設けるのが通例である。
【0009】
これらの技術では、水分、ソース、調味液などの溶液を含む場合、内容物の滲み、吐露が発生し問題となっていた。
【課題を解決しようとするための手段】
【0010】
本発明では、あらかじめ包装フィルムに微孔あるいは微細孔を設けることなく、ガスの発生状況に応じて自発的にガスが薄膜部から滲みでる構造となすのである。
【0011】
このため、請求項1では、合成樹脂フィルムの所要位置を押圧により厚さ5μm〜70μmの薄膜状となし、内容物により発生した二酸化炭素、水分等のガスにより、当該薄膜部が他の部分より薄膜であることから当該薄膜部が延伸、膨張し、この際、より薄くなった当該薄膜部からガス、水分が抜け出るのである。薄膜部はガス圧によりさらに薄くなり透過性を高めるのであるが、内容物に合わせ当初より例えば、5μmレベル程度に薄く構成することにより、ガス圧の高まりを待つまでもなく、経時的透過を設計する事が出来るのである。
【0012】
また、請求項2では包装形態の製作上不必要な延伸が起こりうる形状にあっては包装袋を作る包袋行程において、成形中の包装袋に押圧、延伸を加え薄膜部を作り込むのである。
【0013】
あるいは、請求項3に開示するように請求項1あるいは請求項2により実施された包装袋内部に食品を入れ、これを通常の密封袋に納めた後、当該密封袋にアルコールあるいは香味料を追加して封入し、当該密封袋内で気化したアルコールあるいは不活性ガス、香味成分が本発明実施品内部の食品に移行し、食品の調味を行うのである。
【0014】
あるいは、ガス、水分除去の本発明実施品包装袋を内袋としてこの中にアルコール系の素材を入れ、これと食品を外袋に納め、外袋内部において内袋から透過するガス、水分を食品に接触させ食味を加えるのである。
【0015】
ポリプロピレン、ポリエチレン、PET等々の合成樹脂フィルムの押圧、延伸にあっては同時に加熱を行うことにより薄膜部の成形を行うことは有用であり、プレスによる押圧、延伸も効果的である。
【0016】
本発明にあっては、あらかじめ想定したガス、水分などの透過量、透過時期を薄膜部の厚み、面積で調整出来るのである。
【0017】
また、本発明によるガス透過は、異なる樹脂との包装形態を構成する場合に容器の蓋部分、あるいはシール素材として用いれば、食品保持に有効な密封蓋として作用するのである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、あらかじめ設定した薄膜部厚みを段階的に構成することにより食品固有のガス透過を経時的に行うので、賞味を損なうことなく保存出来るのである。
【0019】
本発明では、ガス、水分の気化に応じて薄膜部がそれらの透過を行うのであり、あらかじめ微孔、微細孔を設けていないので、水溶性内容物の漏れ、滲みを防止するのである。
【0020】
漬け物、キムチ等の発酵食品にあっては食品の保存中にも発酵が進行するため、塩分、保存料の量などを勘案して薄膜部厚みを段階的に構成するのである。このため、発酵速度を調整することができ、食味を図り、賞味期間を延ばすことが出来るのである。
【0021】
また、野菜、果物等の青果食品にあっては薄膜部の厚みを段階的な任意な厚みに構成すると、内部の酸素ガスの調整を行いながら、不必要な水分は水蒸気として外へ逃がすことができるのである。水がいたずらして鮮度が落ちることを防ぐのである。
【0022】
あるいは請求項1あるいは請求項2の薄膜部を有する小袋に入ったドーナツなどは、アルコール素材のものを通常の外袋に入れて同梱してやれば、アルコールのガスが小袋の中に透過し、食味の調整ができるのである。
【0023】
二酸化炭素、酸素など透過率の異なるガス、香味成分などにあっては各成分に適応した薄膜厚みを設定することで選択的な特定成分の透過を促進することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂フィルム1の所用位置を押圧あるいは延伸により厚さ5μm〜70μmの段階的な薄膜状となすのである。
【0025】
この際、押圧あるいは延伸により構成された薄膜部2には何らの微孔が構成されず密封可能な素材となすのである。
【0026】
あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、PETなどの合成樹脂フィルム1により包装袋を作るのである。この包袋製造過程において、所用箇所に押圧あるいは延伸により薄膜部2を設けるのである。
【0027】
このフィルムにより構成された包装袋内に充填された内容物により発生した二酸化炭素、酸素、水分等のガスにより、当該薄膜部が他の部分より薄膜であることから当該薄膜部が延伸、膨張するのである。
【0028】
この際、より薄くなった当該薄膜部から内容物により発生したガス、水分が、任意の厚みを構成された薄膜に浸透して、選択して排出されるのである。
【0029】
なお、薄膜部形成のための押圧、延伸の手段としては回転ギア歯様の押圧あるいはプレスによる押圧、延伸が有用である。この際、樹脂フィルムに加熱を与え可塑性を利用することもある。また、押圧側の押さえ歯にハイス鋼を、受け側に通常の硬度の鉄材を用いるなど、押さえと受けに硬度の差を設けることは薄膜設計上、有用である。
【0030】
表面から押圧を加えるにあたり、押圧金型面にわずかな曲面を構成し、受け部にフラットな平板を用いると段階的な薄膜を形成出来るが、この押圧金型曲面に呼応した受け面を用いると均一な薄膜が期待できるのである。
【0031】
薄膜部の形状は、ガス、水分の透過量、時間を勘案し決定される。すなわち薄膜を薄く、さらに面積を大きく設定するとこれらの透過率も高くなるのである。
【0032】
本発明では、フィルム面に一切の微孔等を設けないため、旧来のポーラス加工に見られた水溶性の内容物の漏洩がなく、経時変化に伴う二酸化炭素、水蒸気に呼応した不要ガスの透過、排出が行われ食品の品質保持が可能となるのである。
【0033】
また、梱包中の食品に経時的にアルコール、不活性ガス、香味成分等の付与を行え、調味と共に品質保持が行えるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1における薄膜部の形成実施例である。
【図2】押圧により薄膜を形成する行程の拡大参考図である。
【図3】請求項2における包袋成型時に押圧を加え、薄膜をなす参考図である。図中素材フィルムは送りローラーにより二つ折りにされ、ヒートシールにより袋の形状をなしている。
【図4】薄膜部の形状とガス、水分の透過を説明する参考図である。図中(図A)は垂直に押圧された薄膜部である。(図B)は食品を内蔵した本発明の包装袋断面である。材料フィルム状態で薄膜部が形成され、後工程の包袋形成過程で包袋内部側に押圧部が設けられている。(図C)は食品の呼吸により発生したあるいは蒸発した水分が包袋を膨らませ、薄膜部を拡げている状況である。これらのガス、水分はさらに薄くなった薄膜部から浸透し、外部に放出されるのである。ガス、水分等の透過量、透過時間は薄膜の厚さ、面積により設定される。
【図5】図中(図D)及び(図E)は本発明における二酸化炭素、水分等の透過を説明する参考模式図である。(図D)は、薄膜部を段階的に薄く構成した例を示し、図E)は薄膜部を均等な薄さに構成した例を示す。
【図6】本図では、請求項3に示す内袋14内部に食品を封入して外袋15にはアルコール、不活性ガス、香味料を当該内袋14と共に密封してある。経時変化により膨張して当該内袋14の薄膜部を透過したアルコール、不活性ガス、香味料が当該内袋14内で食品13に移行する説明図である。外袋15は、ヒートシールにより密封となっている。
【図7】請求項3に示す内袋14と通常の密封素材の外袋15よりなる二重構造の包装袋内において、本発明実施品の内袋14内より透過したアルコール、香味料が外袋15内で食品13に移行する説明図である。外袋15は、ヒートシールにより密封となっている。
【符号の説明】
1 ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等の包装資材フィルム
2 薄膜部
2’ 膨張した薄膜部
3 フィルムロール
4 押圧、延伸の押さえ部
5 押さえ部受け
6 送りローラ
7 ヒートシール部
8 回転方向
9 フィルム送り出し方向
10 生鮮食品
11 発生したガス、水蒸気
11’ 透過して排出されたガス、水蒸気
12 アルコール系の添加物あるいは香味料
13 ドーナツ
14 請求項1あるいは請求項2の実施品にして、図中内袋
15 通常の密封袋にして図中外袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム1の所用位置を押圧あるいは延伸により厚さ5μm〜70μmの薄膜状となし、この際、押圧あるいは延伸により構成された薄膜部2には何らの微孔が構成されない事を特徴とし、このフィルムにより構成された包装袋内に充填された内容物により発生した二酸化炭素、水分等のガスにより、当該薄膜部2が他の部分より薄膜であることから当該薄膜部2が延伸、膨張し、この際、より肉厚が薄くなった当該薄膜部2から内容物により発生したガス、水分を、任意の薄膜厚みと面積を構成する事により、選択して透過される事を特徴としたガス透過性を有する包装フィルム。
【請求項2】
PP、PE、PET樹脂等の素材により構成された成形中の包装袋に外部より押圧、延伸などを行い、部分的に任意の厚みの薄膜部2を構成し、当該包装袋内部に充填した野菜、漬け物、生鮮物から発生する二酸化炭素、水分などが経時的に増大することにより、当該薄膜部2を内圧により膨張せしめ、極薄となった部分から順次透過されることを特徴とした包装袋において、目的とするガスあるいは水分の透過量を想定して、あらかじめ必要量の押圧、必要面積の延伸を行い、この設定により選択的ガス透過機能を持たせた包装袋。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2の袋を内袋14としてこれに食品を封入し、この内袋14を、通常の密封フィルムの外袋15内部に入れ、しかる後、当該密封フィルムの外袋15にアルコール、不活性ガス、香味料を封入し、経時変化により内袋14内に入れた食品に当該外袋15内のアルコール、不活性ガス、香味などが、外袋15が密封されているため、内袋14の薄膜部2を介して当該内袋14の内部に浸透、透過して内袋14内部の食品に移行し、食味を調整する食品包装袋内での食味調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−98772(P2011−98772A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268061(P2009−268061)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(597069062)
【出願人】(509324908)株式会社双進 (2)
【Fターム(参考)】