説明

選択的に光を抑制する色彩調整眼用レンズ

眼用システムが提供される。前記システムは、波長範囲で光を吸光する染料でドープされた眼用材料と、前記染料による光の吸光により引き起こされる色彩の不均衡を修正する層と、を含んでいる。前記染料は、狭い青色領域のような害を及ぼすスペクトル領域の光を吸光することができる。前記色彩調整層は、前記システムを利用するとき、中間色を有することを利用者に可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼用システムに関している。より具体的には、本発明は、外観的に魅力のある製品を提示する同時に、青色光波長の阻止を実現する眼用システムに関している。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2006年3月20日に出願された米国出願第11/378,317号の一部継続出願であり、2006年6月12日に出願された米国仮出願第60/812,628号の利益を主張し、夫々はその全体を参照することでここに組み込まれている。
【0003】
現在の研究は、およそ400nm−500nm(ナノメートルまたは10−9メートル)の波長を有する短波長の可視光線(青色光)が、AMD(加齢性黄斑変性症)の寄与原因でありうるという仮定を強く支持している。青色光吸収の最も高いレベルは、430ナノメートルの領域周辺、400nm−460nmで生じると信じられている。研究はさらに、青色光が、遺伝性、タバコの煙、及び過度のアルコール消費、といったAMDに対する他の原因因子を悪化させることを示唆している。
【0004】
光は波状に進む電磁放射で構成されている。電磁スペクトルは電波、ミリメートル波、赤外線、可視光線、紫外線(UVAとUVB)、及びX線とガンマ線を含んでいる。人間の網膜は電磁スペクトルの可視光部にだけ反応する。可視光スペクトルは、およそ700nmの最も長い可視光波長、及びおよそ400nmの最も短いものを含む。青色光波長がおよそ400nmから500nmの範囲に入る。紫外線バンドに対して、UVBの波長は290nmから320nmであり、及びUVAの波長は320nmから400nmである。
【0005】
人間の網膜は多層膜を含んでいる。目に入射するあらゆる光に最初に曝される部分から最も深い部分の順番でリストされたこれらの層は、以下を含む。
1)神経線維層
2)神経節細胞
3)内網状層
4)双極、及び水平細胞
5)外網状層
6)光受容体(桿状体と円錐体)
7)網膜色素上皮(RPE)
8)ブルッフ膜
9)脈絡膜
【0006】
光が目の光受容体細胞(桿状体と円錐体)によって吸収されるとき、それらが回復するまで前記細胞は色あせ、感受性がなくなる。この回復過程は代謝過程であり、「視覚サイクル」と呼ばれる。青色光の吸収は時期尚早にこのプロセスを反転させることを示している。この早過ぎる反転現象は酸化的損傷のリスクを増やし、及び網膜内にリポフスチン色素の蓄積を導くと考えられている。この蓄積は、網膜色素上皮(RPE)層で起こる。過度なリポフスチンの量に起因して、ドルーゼと呼ばれる細胞外物質の凝集体がRPE層で形成されると考えられている。ドルーゼは、RPE層が適切な栄養を感光体に供給することを妨害、または妨げ、これらの細胞の損傷または死を導く。さらにこのプロセスを複雑にするように、リポフスチンが高い量で青色光を吸収するとき、毒作用を示すようになり、RPE細胞のさらなる損傷及び/または死を引き起こす現象が現れる。リポフスチンの成分A2Eは、RPE細胞の短波長の検出感度に対して少なくとも部分的に関与していると信じられている。A2Eは、青色光によって最大に励起されることが示されている。そのような励起の結果となる光化学的事象は細胞死を導きうる。これは、例えば、非特許文献1を参照することができる。
【0007】
照明及び視力ケア産業は、UVA及びUVB放射に露呈される人間の視覚に対する規格を有している。驚くべきことに、このような規格は青色光に関しては実施されていない。例えば、今日利用可能な通常の蛍光灯において、ガラスエンベロープは主として紫外線を阻止するが、青色光はほとんどの減衰なしで伝達される。場合によって、前記エンベロープはスペクトルの青色領域内で、強化された透過を有するように工夫されている。
【0008】
ある程度の青色遮光を提供する眼用システムが知られている。しかしながら、このようなシステムに関連する不利点がある。例えば、青色遮光によりレンズ内で作り出される黄色または琥珀色の色合いのために、それらは容姿的に魅力的でない傾向となる。より具体的には、青色遮光に対する1つの共通的な技術は、BPIフィルタービジョン450またはBPIダイヤモンドダイ500のような青色遮光の色合いを有するようにレンズを色合い付け、または染めることを含んでいる。前記色合い付けは、例えば、青色遮光染料溶液を含む加熱されたティントポット(tint pot)で所定の期間にわたりレンズを浸すことによって達成されうる。一般的に、前記染料溶液は黄色、または琥珀色の色を有しており、それによってレンズに黄色、または琥珀色の色合いを与える。多くの人々にとって、この黄色、または琥珀色の色合いの外観は、容姿的に、望ましくないかもしれない。さらに、前記色合いは、レンズ使用者の正常な色知覚を妨げることがあり、例えば、それは交通信号または標識の色度を正確に認知することを困難にしている。
【0009】
従来の青色遮光フィルターの黄変効果を補うための取り組みがなされてきた。例えば、黄変効果を補うために、青色遮光レンズが、青色、赤色、または緑色の染料のような追加の染料で処理されていた。前記処理は、追加の染料が元の青色遮光染料と混合させる。しかしながら、この技術は青色光遮断レンズにおいて黄色を減らす一方で、前記染料の混合は、より多くの青色光スペクトルを通過させ、青色遮光の有効性を減少させうる。さらに、これら従来の技術は、青色光波長以外の光の波長の全体的な透過を所望せず減少させる。この所望しない減少は、レンズ使用者に対して次々に視力の減少をもたらす。
【0010】
前述の内容を考慮すると、眼用システムに対する必要性が存在する。それは、青色光波長の選択的な阻止と同時に、可視光線の80%を越える伝搬と、着用者によって身につけられるとき、前記眼用システムを見る人にとってはほとんど中間色と受け取られることである。加えて、このようなシステムが着用者の色覚を害さないこと、及びさらに、システムの背面から着用者の目の中への反射が、着用者に不快とならないレベルであることは重要である。この必要性は、黄斑変性(産業化した世界で失明の主な原因)及び他の網膜疾患に対する可能な寄与因子の一つとして青色光を挙げているデータとしてますます存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,984,038号明細書
【特許文献2】米国特許第7,066,596号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Janet R. Sparrow et al.,“Blue light‐Absorbing intraocular lens and retinal pigment epithelium protection in vitro,” J.Cataract Refract. Surg.2004,vol.30,pp.873‐78.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は眼用システムに関している。より具体的には、本発明は、外観的に魅力のある製品を提示する同時に、青色光波長の阻止を実現する眼用システムに関している。
【0014】
眼用システムは、可視光の80%かそれ以上の透過率を提供し、選択的に青色光の波長を妨げ、着用者の適切な色覚能力を可能にし、及びそのようなレンズまたはレンズシステムを着用した着用者を見る観測者にとってはほとんど中間色の外観を提供することが出来るように提供されている。前記システムは、所望の効果を提供するために様々な光学的コーティング、フィルム、材料、及び吸収染料を利用しうる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態は、容姿的に魅力的な製品と、利用者に対して標準的であるか、または条件にあった色知覚と、良好な視力のための透過光の高いレベルと、を提供すると同時に、効果的に青色遮光を行う眼用システムに関する。可視光の80%かそれ以上の平均透過率を提供し、青色光の波長を選択的に抑制し(「青色遮光」)、着用者の適切な色覚性能を可能にし、及び、そのようなレンズまたはレンズシステムを身につけている着用者を見ている観察者に対してほとんど中間色の外観を提供することのできる眼用システムが提供される。ここで用いられるような、システムの「平均透過率」は、可視スペクトルのような波長の範囲において平均の透過率を示す。システムはまた、前記システムの「発光性透過率」を特徴としてもよく、これは、波長範囲で平均値を参照し、それぞれの波長に対する目の敏感さに従って重みをかけられる。ここで述べられるシステムは、望ましい効果を産み出すために、種々の光学被覆、フィルム、材料、及び吸収染料を用いてもよい。
【0016】
より具体的には、本発明の実施形態は、色彩調整と組み合わせて効果的な青色遮光を提供してもよい。ここに用いられるような「色彩調整」または「色彩調整化」は、青色遮光の有効性を減らすことなく容姿的に受容できる結果を産み出すように、黄色または琥珀色、または青色遮光の他の望まれない効果が、減らされるか、相殺されるか、中和されるか、またはさもなければ埋め合わせられることを意味している。例えば、400nm‐460nm近くの波長が遮光されるか強度が減らされる。特に、例えば、420‐440nm近くの波長が遮光されるか強度が減らされる。さらに、遮光されない波長の透過率は高いレベル、例えば少なくとも80%で残っている。さらに、外部観測者に対して、眼用システムは透明、またはほとんど透明に見える。システムの利用者に対して、色知覚は標準的であるか、または受容可能でありうる。
【0017】
ここで用いられるような「眼用システム」は例えば、眼鏡、サングラス、コンタクトレンズ、内部眼球レンズ、角膜インレイ(inlays)、角膜オンレイ(onlay)に用いられる処方または非処方の眼用レンズを含み、及び、さらなる詳細がここで述べられる所望の機能性を提供するために、他の要素と処理されるか、加工されるか、結合されてもよい。ここで用いられるように、「眼用材料」は、調整レンズのように眼用システムを造りあげるために共通に使われる。他の材料が様々な眼用システムに対して使われ、及び知られているけれども、ここで例となる眼用材料は、ガラス、CR‐39のようなプラスチック、Trivex、及びポリカーボネート材料を含んでいる。
【0018】
眼用システムは、色彩調整要素の後方に青色遮光要素を含んでいてもよい。青色遮光要素、または色彩調整要素のどちらかが、レンズのような眼用要素となるか、その一部を形成してもよい。後部の青色遮光要素、及び前部の色彩調整要素は、眼用レンズの表面または複数表面の上に、または隣接して、または近くで、はっきりと区別できる層である。色彩調整要素は、容姿的に受け入れられる外観を生み出すために、後部の青色遮光要素の黄色、または琥珀色の色あいを減らすか、または中和してもよい。例えば、外部観測者に対して、眼用システムは透明、またはほとんど透明に見える。システムの利用者に対して、色知覚は標準的であるか受け入れられる。さらに、青色遮光及び色彩調整の色合いが混合されないので、青色光スペクトルの波長は遮光されるか、または強度が減少され、及び遮光されない波長に対して眼用システム内の入射光の透過強度は少なくとも85%となる。
【0019】
前に議論したように、青色遮光に対する技術は知られている。青色光波長を阻止する周知技術は、吸光、反射、干渉、またはそれらの組み合わせを含む。以前に検討したことだが、1つの技術に従って、レンズは、BPIフィルタービジョン450またはBPIダイヤモンドダイ500のような、青色遮光の色合いを適当な割合または濃度で、色付け/染色されうる。前記色付けは、例えば、所定の期間にわたって、青色遮光染料溶液を含む加熱されたティントポット内へレンズを浸すことによって達成されうる。もう1つの技術に従って、フィルターが青色遮光のために用いられる。前記フィルターは、例えば、青色光波長の吸光、及び/または反射、及び/または干渉を示す有機または無機化合物を含みうる。前記フィルターは有機及び/または無機物質の複数の薄い層または被覆を備えることができる。各層は、それぞれが個々に、または他の層と組み合わせて、青色光波長を有する光の吸光、反射、または干渉のような特性を有しうる。ルゲートノッチフィルター(Rugate notch filter)は青色遮光フィルターの一つの例である。ルゲートフィルターは、反射率が高低値の間で変動する無機誘電体の薄い単層フィルムである。異なる屈折率(例えばSiOとTiO)の2つの材料の相互堆積によって製造されたルゲートフィルターは、波長遮光に対して明白に定義されたストップバンドを有し、前記バンドの外側でほとんど減衰がないことで知られている。前記フィルターの構造パラメータ(振動周期、屈折率調整、屈折率振動の数)はフィルターの性能パラメータ(ストップバンドの中心、ストップバンドの幅、バンド内部の透過率)を決定する。ルゲートフィルターは、例えば特許文献1及び特許文献2においてその全体を参照することでより詳細に開示されている。青色遮光に対するもう一つの技術は、多層誘電体スタックの利用である。多層誘電体スタックは、反射率の高い物質と低い物質の離散的な層を堆積することで製造される。ルゲートフィルターと同様に、個々の層の厚さ、個々の層の反射率、及び層の繰り返しの数、のような設計パラメータは多層誘電体スタックの性能パラメータを決定する。
【0020】
外部観測者によって見られるとき、前記眼用システムが全体として容姿的に受け入れることのできる外観を有しているように、色彩調整は、例えば青色の色付け/染色の適切な割合または濃度、または赤色及び緑色の色付け/染色の適切な組み合わせ、を持たせることを備えうる。例えば、眼用システムは全体として透明、またはほとんど透明に見える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】後方の青色遮光要素及び前方の色彩調整要素を含む眼用システムの例を示している。
【図1B】後方の青色遮光要素及び前方の色彩調整要素を含む眼用システムの例を示している。
【図2】眼用システムを形成するためにダイレジストを用いる例を示している。
【図3】透明なまたはほとんど透明な眼用レンズ内に積層された青色遮光要素及び色彩調整要素を有する例となるシステムを図解している。
【図4】インモールドコーティングを利用して形成された例となる眼用システムを図示している。
【図5】二つの眼用要素の結合を図示している。
【図6】反射防止膜を用いた例となる眼用システムを図示している。
【図7A】青色遮光要素、色彩調整要素、及び眼用要素の様々な例となる組み合わせを図示している。
【図7B】青色遮光要素、色彩調整要素、及び眼用要素の様々な例となる組み合わせを図示している。
【図7C】青色遮光要素、色彩調整要素、及び眼用要素の様々な例となる組み合わせを図示している。
【図8A】多機能性青色遮光及び色彩調整要素を含む眼用システムの例を示している。
【図8B】多機能性青色遮光及び色彩調整要素を含む眼用システムの例を示している。
【図9】様々なCIE座標に相当する観測した色の参照を示している。
【図10】Gentext E465吸収染料の透過率を示している。
【図11】Gentext E465吸収染料の吸光度を示している。
【図12】430nm範囲の吸収に適した染料濃度を有するポリカーボネート基板の透過率を示している。
【図13】反射防止膜を有するポリカーボネート基板の波長に応じた透過率を示している。
【図14】反射防止膜を有するポリカーボネート基板のカラープロット。
【図15】被覆されないポリカーボネート基板、及び両表面上に反射防止膜を有するポリカーボネート基板の波長に応じた透過率。
【図16】ポリカーボネート基板上のTiO層106nmのスペクトル透過率。
【図17】ポリカーボネート基板上のTiO層106nmのカラープロット。
【図18】ポリカーボネート基板上のTiO層134nmのスペクトル透過率。
【図19】ポリカーボネート基板上のTiO層134nmのカラープロット。
【図20】青色吸収染料を有する基板の色彩調整に適した修正AR被覆のスペクトル透過率。
【図21】青色吸収染料を有する基板の色彩調整に適した修正AR被覆のカラープロット。
【図22】青色吸収染料を有する基板のスペクトル透過率。
【図23】青色吸収染料を有する基板のカラープロット。
【図24】青色吸収染料及び後部のAR被覆を有する基板のスペクトル透過率。
【図25】青色吸収染料及び後部のAR被覆を有する基板のカラープロット。
【図26】前後の表面上に青色光吸収染料及びAR被覆を有する基板のスペクトル透過率。
【図27】前後の表面上に青色光吸収染料及びAR被覆を有する基板のカラープロット。
【図28】青色光吸収染料及び色彩調整AR被覆を有する基板のスペクトル透過率。
【図29】青色光吸収染料及び色彩調整AR被覆を有する基板のカラープロット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aは後部の青色遮光要素101、及び前部の色彩調整要素102を備えた眼用システムを示している。各要素は凹状の後部側面、または表面110、115、及び凸状の前部側面、または表面120、125を有している。システム100において、後部の青色遮光要素101は、単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材(optical pre−form)のような眼用要素であるか、それを含みうる。単焦点レンズ、ウェハ、光学的母材は、青色遮光を行なうために色付けされるか、または染色されうる。前部の色彩調整要素102は表面外観層(surface cast layer)を備えており、周知の技術によって単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材に付けられる。例えば、表面外観層は、可視または紫外光、またはその二つの組み合わせを利用して単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材に添えられるか、または密着させられる。
【0023】
表面外観層は、単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材の凸側に形成されうる。青色遮光を行なうために単焦点レンズ、ウェハ、または光学的母材が色付け、または染色されているので、それは容姿的に望ましくない黄色か、または琥珀色の色を有しうる。従って、表面外観層は、例えば、青色の色付け/染色の適切な割合、または赤色及び緑色の色付け/染色の適切な組み合わせで色付けされうる。
【0024】
表面外観層は、青色遮光にするためにすでに処理された単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材に付けられた後で、色彩調整添加物で処理されてもよい。例えば、凸部表面上に表面外観層を有する青色遮光単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材は、溶液内に色彩調整染料の適切な割合及び濃度を有する加熱されたティントポットで浸漬されうる。前記表面外観層は、前記溶液から色彩調整染料を吸収する。青色遮光単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材があらゆる色彩調整染料を吸収することを阻止するために、その凹状表面が、ダイレジスト、例えばテープ、または蝋、または他の被服で覆われるか、または密封されうる。これは、単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材101の凹状表面上にダイレジスト201を有する眼用システム100を示す図2において図解されている。単焦点レンズ、ウェハ、または光学的母材の端は、容姿的に適合された色となることを可能にするために、被覆されないままとすることができる。これは厚いエッジを有する負の焦点レンズに対して重要となりうる。
【0025】
図1Bは、前部の色彩調整要素104が、単焦点または多焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材のような眼用要素であるか、またはそれを含みうるもう1つの眼用システム150を示している。後部の青色遮光要素103は表面外観層であってもよい。この組み合わせを作るために、前記組み合わせが青色遮光染料溶液を含む加熱されたティントポットに浸漬されるとき、青色遮光染料を吸収するのを妨げるために、色彩調整単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材の凸部表面が上記のようにダイレジストで覆われてもよい。一方、露出された表面外観層は青色遮光染料を吸収する。
【0026】
表面外観層は、単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材よりむしろ多焦点と組み合わせて使用してもよいことが理解されるべきである。加えて、表面外観層は、単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材に力を加えて多焦点力を含ませるために使われることができ、それによって、単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材にラインか、またはプログレッシブな型の付加を有する多焦点のレンズに転換する。もちろん、表面外観層は単焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材に力をわずか、または全然加えないよう設計されることもできる。
【0027】
図3は、眼用要素内に機能的に積層されている青色遮光と色彩調整を示している。より具体的には、眼用レンズ300において、後部領域で別の透明な、またはほとんど透明な眼用要素301の内部への色合いの浸透の深さに対応している部分303は、青色遮光でありうる。さらに、前面または前部領域で別の透明、またはほとんど透明な眼用要素301の内部への色合いの浸透の深さに対応している部分302は色彩調整でありうる。図3において図示されたシステムは、以下のように生産される。眼用要素301は、例えば、最初は透明であるか、またはほとんど透明な単焦点または多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母体でありうる。例えば前に述べられたように、ダイレジストでマスクまたは被覆することによって正面の凸部表面が非吸収性とされる一方で、前記透明、またはほとんど透明な単焦点または多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母体は青色遮光染料によって色付けされうる。結果として、透明な、またはほとんど透明な単焦点または多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母材301の後部の凹部表面から始まり、内部に展開し、及び青色遮光機能性を有している部分303は色あいの浸透によって作られてもよい。それから、前部の凸部表面の非吸収被覆が取り除かれてもよい。それから、非吸収被覆が凹部の表面に塗布されてもよく、単焦点または多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母材の凸部表面及び周辺端部が色彩調整のために(例えば、加熱されたティントポット内の浸漬によって)色付けされてもよい。色彩調整染料は、前部の凸部表面から始まり、内部に展開し、前の被覆に起因して色付けされていない状態のままであった周辺端部及び部分302によって吸収されるだろう。前述の工程を逆転させることができる。すなわち、残った部分が色彩調整のために色付けされる一方で、凹部表面が最初にマスクされうる。それから、被覆を取り除くことができ、マスキングによって色付けされないままの凹部領域での深さまたは厚さを、青色遮光のために色付けすることができる。
【0028】
今、図4を参照すると、眼用システム400がインモールド被覆を利用して形成されうる。より具体的には、適切な青色遮光の色合い、染料または他の添加物で染色/色付けされている単焦点または多焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材のような眼用要素401は、表面外観を経由して、色付けされたインモールド被覆403を用いて色彩調整されうる。適切な高さ及び/または色彩調整染料の混合を備えるインモールド被覆403を、凸部表面のモールドに塗布してもよい(すなわち、図示されていないが、被覆403を眼用要素401の凸部表面に塗布するためのモールド)。無色のモノマー402が、被覆403と眼用要素401の間に満たされ、そして硬化される。モノマー402を硬化するプロセスは、色彩調整インモールド被覆を眼用要素401の凸部表面に移動させる。その結果は、色彩調整の表面被覆を有する青色遮光眼用システムとなる。前記インモールド被覆は、例えば、反射防止被覆であるか、または従来のハードコーティングである。
【0029】
今、図5を参照すると、眼用システム500が2つの眼用要素、一方は青色遮光、そして他方は色彩調整、を備えうる。例えば、第1眼用要素501は、後方の単焦点または凹部表面の多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母材であり、青色遮光の望ましい度合いを達成するために適切な青色遮光染料で染色/色付けされうる。第2眼用要素503は、前方の単焦点または凸部表面の多焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材であり、例えばUV光または可視光硬化粘着物質502を用いて、後方の単焦点または凹部表面の多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母材に結合されるか取り付けられうる。前記前方の単焦点または凸部表面の多焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材は、後方の単焦点または凹部表面の多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母材に結合される前、または後に色彩調整とされうる。後者の場合、前記前方の単焦点または凸部表面の多焦点レンズ、ウェハまたは光学的母材は、上述した技術によって色彩調整とされうる。例えば、前記後方の単焦点または凹部表面の多焦点のレンズ、ウェハまたは光学的母材は、色彩調整染料を吸収するのを避けるためにダイレジストでマスクまたは被覆される。それから、結合した後方及び前方の部分は、色彩調整染料の適切な溶液を含んでいる加熱されたティントポットに共に置かれ、前方の部分が色彩調整染料を吸収することを可能にしている。
【0030】
上述した実施形態のシステムのいずれも、一つ以上の反射防止(AR)要素と結合されてもよい。これは、図1A及び1Bにおいて示される眼用レンズ100及び150に対して、例として図6で示されている。図6において、第1のAR要素601、例えば被覆は、後部の青色遮光要素101の凹部表面に塗布されており、第2の要素602が色彩調整要素102の凸部表面に塗布されている。同様に、第1のAR要素601が後部の青色遮光要素103の凹部表面に塗布されており、第2のAR要素602が色彩調整要素104の凸部表面に塗布されている。
【0031】
図7A−7Cは青色遮光要素と色彩調整要素を含むさらなる例となるシステムを示している。図7Aにおいて、眼用システム700は、透明なまたはほとんど透明な眼用レンズ702の前部の表面上に、または隣接しており、隣り合っているがはっきりと区別できる被覆または層として形成される青色遮光要素703、及び色彩調整要素704を備えている。青色遮光要素703は色彩調整要素704の後方にある。透明またはほとんど透明な眼用レンズの後部表面の上にまたは隣接して、AR被服または他の層701が形成されうる。他のAR被覆または層705が色彩調整層704の前部表面の上に、または隣接して形成されうる。
【0032】
図7Bにおいて、青色遮光要素703と色彩調整要素704は、透明かまたはほとんど透明な眼用レンズ702の後部表面の上に、または隣接して配置されている。再び、青色遮光要素703は色彩調整要素704に後方にある。AR要素701は、青色遮光要素703の後部表面の上に、または隣接して形成されうる。もう1つのAR要素705は、透明またはほとんど透明な眼用レンズ702の前部の表面の上に、または隣接して形成されうる。
【0033】
図7Cにおいて、青色遮光要素703と色彩調整要素704は、それぞれ透明な眼用レンズ702の後部及び前部表面の上に、または隣接して配置されている。再び、青色遮光要素703は色彩調整要素704の後方にある。AR要素701は、青色遮光要素703の後部表面の上に、または隣接して形成され、もう1つのAR要素705は、色彩調整要素704の前部表面の上に、または隣接して形成されうる。
【0034】
図8Aと8Bは、青色光波長を遮光して、色彩調整を実行する両方の機能が単一要素803で結合されうる眼用システム800を示している。例えば、結合された機能要素は青色光波長を遮光して、同様にいくらか緑色及び赤色の波長を反射し、それによって青色を中和して、レンズ内で主要な色の外観を排除している。結合された機能要素803は、透明な眼用レンズ802の後部または前部のどちらかの表面の上に、または隣接して配置されうる。眼用レンズ800はさらに、透明な眼用レンズ802の後部または前部のどちらかの表面の上に、または隣接してAR要素801を含みうる。
【0035】
色彩調整要素の有効性を定量化するために、眼用材料の基板よって反射及び/または透過された光を観測することは有用である。前記観測された光は、観測された光の色を示すためのCIE座標によって特徴づけられる。これらの座標を、入射する光のCIE座標と比較することによって、前記光の色が反射/透過に起因してどれほどシフトされたかを決定することが可能である。白色光はCIE座標(0.33、0.33)を持つと定義される。それによって、観察された光のCIEが(0.33、0.33)により近いと、観察者は「より白色」であると見る。レンズによって実施された色のシフトまたは調整を特徴づけるために、(0.33、0.33)白色光がレンズに向けられ、反射及び透過光のCIEが観測されうる。透過光が約(0.33、0,33)のCIEを有する場合、色のシフトはなく、レンズを通して観測された物体が自然な外観を有している、すなわち、レンズなしで観察された物体と比較しても、色はシフトされないだろう。同様に、反射光が約(0.33、0.33)のCIEを有する場合、レンズは自然に美しい外観を有しているだろう。すなわち、それはレンズまたは眼用システムの利用者を見ている観察者に色付けされたと思われないだろう。このようにして、可能な限り(0.33、0,33)に近づけることが透過及び反射した光に対して望まれる。
【0036】
図9は、さまざまなCIE座標に対応する観察された色を示すCIEプロットを示している。参照点900は座標(0.33、0.33)を示している。プロットの中央領域は一般的に「白」として指定されるにもかかわらず、この領域でCIE座標を有しているいくらかの光は、観測者にわずかに色付けされたことがわかる。例えば、(0.4、0.4)のCIE座標を有している光は、観察者に黄色であるように見えるだろう。このようにして、眼用システム内でカラーニュートラルな外観を達成するためには、システムによって透過及び/または反射された(0.33、0.33)の光(すなわち、白色光)に対して、透過/反射の後で可能な限り(0.33、0.33)に近いCIE座標を有することが望ましい。ラベル表示された領域は明快さのために取り除かれるにもかかわらず、図9内で示されたCIEプロットは、さまざまなシステムで観察したカラーシフトを示すために、参照としてここで使用されるだろう。
【0037】
特定の光透過率と吸光特性を有するレンズを生産するために、基板材料内へ染料を射出成型する注入によって、吸収染料は眼用レンズの基板材料内に含まれうる。これらの染料材料は、前記染料の基本的なピーク波長で、またはポルフィリン材料内で一般的に見つけられるソレーバンドの存在によってより短い共鳴波長で、吸光することができる。他の材料が、様々な眼用システムに対して用いられ、及び知られているにもかかわらず、例となる眼用材料は、様々なガラス、及び登録商標CR−39、TRIVEX(登録商標)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコン、及びフルオロポリマー、のようなポリマーを含んでいる。
【0038】
例のみの手段として、Gentexの染料材料E465の透過率と吸光度が図10‐11で示される。吸光度(A)は式A=log10(1/T)によって透過率(T)と関連付けられる。この場合、透過率は0から1(0<T<1)の間にある。しばしば透過率はパーセンテージで表現される。すなわち、0%<T<100%である。E465染料は465未満の波長を遮光、及び高い光学密度を有する波長(OD>4)を遮光するために通常提供される。類似の製品が他の波長を遮光するために利用できる。例えば、GentexからのE420は420nmを下まわる波長を遮光する。他の例となる染料は、青色波長で吸収できるプロピリン、プロピレン、及び類似の染料を含んでいる。
【0039】
より短い波長の吸光度は、染料濃度の減少によって減らされうる。この、及び他の染料材料は、430nmの領域で〜50%の透過率を達成することができる。図12は、430nm範囲内の吸光に対して適切な染料濃度を有し、及び420nm−440nmの範囲で若干の吸収を有するポリカーボネート基板の透過率を示している。これは染料の濃度を減らすこと、及びポリカーボネート基板の効力を含ませることによって達成される。この位置で後部表面は、反射防止で被覆されていない。
【0040】
染料の濃度は眼用システムの外観とカラーシフトにも影響を与えうる。濃度を減らすことによって、さまざまな度合いのカラーシフトを有するシステムが得られうる。ここで用いられる「カラーシフト」は、参照光のCIE座標が眼用システムの透過及び/または反射の後で変化する量を参照している。白色光(例えば、日光、白熱光、蛍光灯)として一般的に受ける光の様々なタイプの違いに起因して、システムによって引き起こるカラーシフトでシステムを特徴づけることもまた有用である。それゆえ、光がシステムによって、透過及び/または反射されるとき、入射する光のCIE座標がシフトされる量に基づいてシステムを特徴づけることは有用である。例えば、(0.33、0.33)のCIE座標を有する光が、透過の後で(0.30、0.30)のCIEを有する光となるシステムは、(−.03、−.03)、またはより一般に(±0.03、±0.03)のカラーシフトを引き起こすものとして述べられうる。このようにして、システムに起因するカラーシフトは、「自然の」光、及び観測した物体をシステムの着用者に対してどのように見せるかを示している。以下でさらに述べられるように、(±0.05、±0.05)未満から(±0.02、±0.02)までのカラーシフトを引き起こすシステムが達成される。
【0041】
眼用システムにおける短波長の透過率の減少は、A2Eの励起のような、目の中で起こる光電効果に起因する細胞死を減らすのに有用である。430±30nmで入射する光を約50%まで減らすことは細胞死をおよそ80%減らすことができることが示されている。例えば、非特許文献1を参照する。開示内容はその全体を参照することによって組み込まれる。430−460nmの範囲の光のような青色光の量をわずか5%まで減らすことは、同様に細胞死及び/または変性を減らし、それ故、加齢性黄斑変性症のような状態の悪影響を避ける、または減らす。
【0042】
吸収染料は、光の望ましくない波長を遮光するために用いられるにもかかわらず、前記染料は副作用としてレンズ内に色合い付けを引き起こしうる。例えば、多くの青色遮光眼用レンズは、しばしば望ましくなく、及び/または見て美しくない黄色の彩色を有している。この彩色を埋め合わせるために、色彩調整被覆が、内部に吸収染料を含んでいる基板の一表面または両表面に適用されうる。
【0043】
(干渉フィルターである)反射防止(AR)被覆は、商用の眼用被覆産業において十分確立されている。前記被覆は一般的に少数の層、しばしば10未満であり、一般的に、ポリカーボネートの表面からの反射を1%未満まで減らすために用いられる。このようなポリカーボネートの表面の上の被覆の例は図13で示されている。この被覆のカラープロットは図14に示されており、色が非常に中間色であることが観測される。全体の反射率は0.21%であることが観測される。反射光は(0.234、0.075)のCIE座標を有することが観測され;透過光は(0.334、0.336)のCIE座標を有していた。
【0044】
AR被覆は、高い透過率を達成するために、レンズまたは他の眼用装置の両表面に適用される。このような構成は図15に示されている。より黒い線1510はAR被覆ポリカーボネートであり、より細い線1520は被覆されないポリカーボネート基板である。このAR被覆は全透過光の10%の増加を提供する。ポリカーボネート基板内の吸光に起因する若干の光の自然な損失がある。この例のために用いられた特定のポリカーボネート基板は、約3%の透過率損失を有している。眼用産業におけるAR被覆は、レンズの透過率を増加させるために一般的に両表面に適用される。
【0045】
本発明によるシステムにおいて、一般的に430nmの領域における青色波長光の同時に起こる吸光と、増加した透過率を可能にするため、AR被覆または他の色彩調整フィルムは吸収染料と結合されうる。前に述べられたように、430nmの領域だけの光の除去は、いくらか未処理の色外観を有するレンズをもたらす。中間色の透過を達成するためにスペクトル的に光を調整することは、AR被覆の少なくとも1つを、全体的に光の透過色を調節するために修正されうることである。本発明による眼用システムにおいて、この調節は、以下のレンズ構造を作るために、レンズの前方表面で実行されうる
【0046】
(利用者の目から最も遠い)空気/前部の凸部レンズ被覆/吸光眼用レンズ基板/後部の凹部反射防止被覆/(利用者の目に最も近い)空気。
【0047】
このような構成において、前部の被覆は、従来のレンズ内で一般的に実行される反射防止機能に加えて、基板内での吸光に起因する色外観を埋め合わせるためにスペクトル調整を提供しうる。それ故、前記レンズは透過及び反射光の両者に対して適切な色彩調整を提供しうる。透過光の場合、色彩調整は適切な色覚を可能にし、反射光の場合、色彩調整は適切なレンズの美観を提供しうる。
【0048】
ある場合において、色彩調整フィルムは他の眼用材料の2つの間に配置されうる。例えば、フィルター、ARフィルム、または他のフィルムは眼用材料の内部に配置されうる。例えば、以下の構成が使用されうる。
【0049】
(利用者の目から最も遠い)空気/眼用材料/フィルム/眼用材料/(利用者の目に最も近い)空気。
【0050】
前記色彩調整フィルムは、レンズの外部の、及び/または内部の表面に適用されたハードコートのような被覆であってもよい。他の構成が可能である。例えば、図3を参照すると、眼用システムは、青色吸収染料がドープされた眼用材料301、及び一つ以上の色彩調整層302、303を含みうる。もう一つの構成において、内部層301は、青色吸収染料でドープされた眼用材料302、303で囲まれた色彩調整層でありうる。AR被覆のような、追加の層及び/または被覆は、システムの一つ以上の表面上に配置されうる。類似の材料、及び構成が、例えば図4−8Bについて述べられたシステムにおいてどのように用いられるかを理解できるだろう。
【0051】
このようにして、吸収染料を有するレンズの全体的なスペクトル応答を微調整するために、AR被覆のような光学フィルム及び/または被覆が利用されうる。可視スペクトルにわたる透過率変動はよく知られており、光学被覆における厚さと層の数の関数として変化する。本発明において一つ以上の層は、必要とされるスペクトル特性の調整を提供するために利用されうる。
【0052】
例となるシステムにおいて、色彩変化がTiOの単層(一般的なAR被覆材料)によって提供される。図16は、106nmのTiOの厚い単層のスペクトル透過率を示している。この同様の層のカラープロットは図17に示されている。透過光に対して示されるCIEカラー座標(x、y)1710は、(0.331、0.345)である。反射光は(0.353、0.251)のCIE座標1720有しており、淡紫色−ピンクをもたらす。
【0053】
図18及び19でそれぞれ示される134nmの層に対する透過スペクトルとカラープロットで示されるように、TiO層の厚さを変えることは、透過光の色を変化させる。このシステムにおいて、透過光は(0.362、0.368)のCIE座標1910で示し、及び反射光は(0.209、0.229)のCIE座標1920を有した。様々なAR被覆の透過率の特性と予測または評価は従来技術で知られている。例えば、AR材料の周知の厚さで形成されたAR被覆の透過率効果は、様々なコンピュータプログラムを用いて計算及び予期されうる。例となる、限定されないプログラムは、シンフィルムセンター(Thin Film Center)社から入手可能なエッセンシャルマクロードシンフィルムソフトウェア(Essential Macleod Thin Films Software)、ソフトウェアスペクトル(Software Spectra)社から入手可能なTFCalc、及びFTGソフトウェアアッソシエイトから入手可能なFilmStarオプティカルシンフィルムソフトウェアを含む。他の方法はAR被覆または他の類似の被覆、またはフィルムの性質を予測するために使用されうる。
【0054】
本発明によるシステムにおいて、青色吸収染料は、青色遮光、色彩調整システムを提供するために被覆または他のフィルムと結合されうる。前記被覆は透過及び/または反射光の色を補正するために、修正される前方の表面上でAR被覆であってもよい。例となるAR被覆の透過率とカラープロットは、それぞれ、図20と21に示されている。図22と23は、AR被覆無しで青色吸収染料を有しているポリカーボネート基板に対して、それぞれ透過率とカラープロットを示している。染色された基板は、420−440nmの領域で若干の吸光を含みながら、430nm領域で、非常に強く吸光する。染色された基板は、図20−21で図解されるように、システムの全体的な透過率を増やすために適切なAR被覆と結合されうる。後部にAR被覆を有している染色された基板に対する透過率とカラープロットは、それぞれ、図24と25で示されている。
【0055】
AR被覆は、眼用システムの前部にも適用され(すなわち、前記システムの着用者の目からの最も遠い表面)、透過率とカラープロットは、それぞれ図26と27に示される。システムが高い透過率を示し、透過光が比較的中間色ではあるが、反射光は(0.249、0.090)のCIEを有している。それ故、青色吸収染料の効果を完全に色彩調整するために、前方のAR被覆を修正して、中間色の構成を作り出すために必要な色彩調整を達成させる。この構成の透過率とカラープロットは、それぞれ図28と29に示されている。この構成において、透過、及び反射光の両方とも、色の中性を達成するために最適化されうる。内側の反射光に対して、約6%であることが好まれうる。反射のレベルはシステムの着用者を悩ませるはずであり、それは可視光の異なる波長を吸収するレンズ基板内に追加の異なる吸収染料を加える方法によって、前記反射はさらに減らされる。しかしながら、この構成の設計は、顕著な性能を達成し、及びここで述べられたような青色遮光、色彩調整された眼用システムに対する必要性を満足させる。全体の透過率は90%を越え、透過及び反射した色の両方が色の中間色である白色点に非常に近い。図29で示されるように、反射光は(0.334、0.334)のCIE有しており、透過光は(0.341、0.345)のCIEを有しており、カラーシフトはわずか、または全く示していない。
【0056】
いくつかの構成において、前部の修正された反射防止被覆を、抑制されるべき青色光波長の100%を遮光するよう設計することができる。しかしながら、これは着用者に対して約9%から10%の後方反射をもたらしうる。この反射性のレベルは、着用者にいらだちの種となりうる。このようにして、前方の修正された反射防止被覆を有するレンズ基板の中に吸収染料を混ぜることによって、着用者にとって十分に受け入れられるレベルまでの反射の減少と共に、望ましい効果が達成されうる。一つ以上のAR被覆を含むシステムの着用者によって観測された前記反射光は、8%かそれ以下に、または好ましくは3%かそれ以下に減少されうる。
【0057】
前部及び後部のAR被覆の組み合わせは、誘電体スタックとして参照され、様々な材料と厚さは、眼用システムの透過及び反射特性をさらに修正するために利用されうる。例えば、前部のAR被覆及び/または後部のAR被覆は、特定の色彩調整効果を達成するためにそれぞれ異なった厚さ及び/または材料で作られる。ある場合には、誘電体スタックを作り出すために使われる材料は、反射防止被覆を作るために従来使われる材料でなくてもよい。すなわち、色彩調整被覆は、反射防止機能を実行することなく基板内の青色吸収染料によって起こされるカラーシフトを修正しうる。
【0058】
前に述べられたように、フィルターは青色遮光のためのもう1つの技術である。それ故、述べられた青色遮光要素のいずれも、青色遮光フィルターであるか、または青色遮光フィルター含むか、または青色遮光フィルターと結合されうる。このようなフィルターはルゲートフィルター(rugate filter)、干渉フィルター、バンドパスフィルター、バンドブロックフィルター、ノッチフィルターまたは2色性フィルター(dichroic filter)を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の実施形態において、上記の開示された青色遮光技術の1つ以上は、他の青色遮光技術と関連して使用されうる。例のみの方法によって、レンズ要素は、効果的に青色光を遮光するために染色/色付け及びルゲートノッチフィルター(rugate notch filter)を利用しうる。
【0060】
400−460nmにおいて、またはその近くにおいて青色光波長の遮光を実施するために、上記の開示された構造及び技術のいずれも、本発明による眼用システムにおいて使用されうる。例えば、実施形態において遮光された青色光の波長は、前もって決定された範囲以内となりうる。実施形態において、前記範囲は430nm±30nmとなりうる。他の実施形態において、前記範囲は430nm±20nmとなりうる。また、他の実施形態において、前記範囲は430nm±10nmとなりうる。実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の90%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の80%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の70%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の60%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の50%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の40%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の30%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の20%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の10%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の5%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の1%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の0%に制限しうる。規定されていなければ、眼用システムによる上記指定された範囲内の波長で電磁スペクトルの減衰は、少なくとも10%;または少なくとも20%;または少なくとも30%;または少なくとも40%;または少なくとも50%;または少なくとも60%;または少なくとも70%;または少なくとも80%;または少なくとも90%;または少なくとも95%;または少なくとも99%;または実質的に100%となりうる。
【0061】
ある場合において、400nm−460nm領域のような青色スペクトルの相対的に小さい部分をフィルターすることは特に望ましいものとなりうる。例えば、非常に多くの青色スペクトルの阻止することは、暗所視及び日周期を妨げうることがわかっている。従来の青色遮光眼用レンズは、広範囲の青色スペクトルの非常に大きな量を一般的に遮光し、それは着用者の「生体時計」に悪い影響を与え、及び他の悪影響を有する。このようにして、ここに述べられたような相対的に狭い範囲の青色スペクトルを遮光することが望まれうる。相対的に小さい範囲で比較的に少ない量の光をフィルターしうる例となるシステムは、400nm−460nm、410nm−450nm、及び420nm−440nmの波長を有する光の5−50%、5−20%、及び5−10%を遮光または吸光するシステムを含んでいる。
【0062】
青色光の波長が、上記のように選択的に遮光されると同時に、可視電磁スペクトルの他の部分の少なくとも80%、または少なくとも85%、及び他の実施形態において少なくとも90−95%、は眼用システムによって透過されうる。規定がなければ、青色光スペクトルの外、例えば約430nmの範囲以外の波長での電磁スペクトルの眼用システムによる衰弱は、20%かそれ以下、15%かそれ以下、10%かそれ以下、他の実施形態において、5%かそれ以下となりうる。
【0063】
さらに、本発明の実施形態は、700nmより大きい波長を有する赤外線の他に、紫外線、UVA及びUVBスペクトルバンドも、もさらに遮光しうる。
【0064】
上で開示された眼用システムのいずれも、メガネ、サングラス、ゴーグルまたはコンタクトレンズのような外部から着用されるメガネ類を含むメガネ類の製品の中に組み込まれうる。そのようなメガネ類において、システムの青色遮光要素が、色彩調整要素の後部にあるので、前記メガネ類が着用されるとき、青色遮光要素は常に色彩調整要素よりも、より目に近くなるだろう。眼用システムは、外科的に移植可能な眼球内レンズのような製造品目でも使用されうる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態が具体的にここで例証され、及び/または記述された。しかしながら、本発明の修正及び変更が、上述の教示により、及び発明の精神と所望の範囲から外れることなく添付の特許請求の範囲内で保証されていることは理解されるだろう。
【符号の説明】
【0066】
100,150,400,500,700,800 眼用システム
101,103,703 青色遮光要素
102,104,704 色彩調整要素
110,115 凹状の後部側面、または表面
120,125 凸状の前部側面、または表面
201 ダイレジスト
300,702,802 眼用レンズ
301,401 眼用要素
302,303 部分
402 モノマー
403 被覆
501 第1の眼用要素
502 UVまたは可視光硬化粘着物質
503 第2の眼用要素
601 第1のAR要素
602 第2のAR要素
701,705,801 AR要素
803 単一要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用材料と、波長範囲で光の少なくとも5%を吸光する染料と、を備えている第1の層と、
前記第1の層の上に配置されたフィルムと、を備えている眼用システムであって、
ここで、前記フィルムは、前記染料による光の吸光がもたらす色彩の不均衡を修正し、
前記システムは、可視スペクトルにわたって少なくとも80%の平均透過率を有している眼用システム。
【請求項2】
前記フィルムの上に配置された眼用材料の第2の層をさらに備えており、
前記フィルムは前記第1の層と前記第2の層の間に配置されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記波長範囲は、400nm‐460nmである請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記波長範囲は、420nm‐440nmである請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記染料は、400nm‐460nmの波長を有する光の5%から50%を吸光する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記染料は、400nm‐460nmの波長を有する光の5%から20%を吸光する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
白色光は、前記レンズを通して透過されるとき、(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIEを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
白色光は、前記レンズを通して透過されるとき、(0.33±0.02,0.33±0.02)のCIEを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の層は、前記眼用基板の外側表面上に配置された反射防止被覆である請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムの表面上に配置された反射防止被覆を、前記システムの着用者の目に最も近くに備えている請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムの着用者によって観測された前記反射光は8%未満である請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムの着用者によって観測された前記反射光は3%未満である請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記染料はペリレンである請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記染料はポルフィリンである請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
400nm‐460nmの波長を有する光の少なくとも5%を吸光する眼用システムであって、前記システムは可視スペクトルにわたって少なくとも80%の平均透過率を有し、前記システムを通して透過された光に対して多くても(±0.05,±0.05)のカラーシフトを引き起こすシステム。
【請求項16】
前記システムは可視スペクトルにわたって少なくとも90%の平均透過率を有している請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムは400nm‐460nmの波長を有する光の5%‐50%を吸光する請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは多くても(±0.02,±0.02)のカラーシフトを引き起こす請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
眼用デバイスを製造する方法であって、
400nm‐460nmの波長を有する光の少なくとも5%を吸光する染料を有する眼用材料をドープする段階と、
第1の層の中に眼用材料をモールドする段階と、
前記第1の層の上にフィルムを堆積する段階と、を備えており、
ここで、前記フィルムは前記染料による光の吸光を起因とする色彩の不均衡を修正する方法。
【請求項20】
前記波長の範囲は420nm‐440nmである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記染料は400nm‐460nmの波長を有する光の5%‐50%を吸光する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記染料は400nm‐460nmの波長を有する光の5%‐20%を吸光する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
白色光は、前記デバイスを通して透過されるとき、(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIEを有する請求項19に記載の方法。
【請求項24】
白色光は、前記デバイスを通して透過されるとき、(0.33±0.02,0.33±0.02)のCIEを有する請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記フィルムは反射防止被覆である請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記フィルム上に眼用材料の第2の層を堆積する段階をさらに含み、ここで、前記フィルムは前記第1の層と前記第2の層の間に配置される請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2009−540393(P2009−540393A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515603(P2009−515603)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/070995
【国際公開番号】WO2007/146933
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508282890)ハイ・パフォーマンス・オプティクス・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】