説明

選択的イソシアネート二量化のための新規触媒

本発明は、スルホンアミドアニオンのイソシアネート用二量化触媒としての使用、および、本発明の該触媒を用いてイソシアネートオリゴマーを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート用二量化触媒としてのスルホンアミド塩の使用、並びに本発明の触媒を用いるイソシアネートオリゴマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジイソシアネートモノマーは、その揮発性および毒性から、これをポリウレタン塗料系における架橋剤としてとして使用できないため、より高い分子量の誘導体、例えばウレットジオン、イソシアヌレート、ビウレット、ウレタンまたはアロファネートをベースとする誘導体を用いるのが一般的な方法である。このようなポリイソシアネートの概説およびいかにしてそれを製造するかは、例えば J. Prakt. Chem./Chem. Ztg. 1994年、第336巻、第185〜200頁に示されている。耐光性ペイントおよび塗料の分野では、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートをベースとするポリイソシアネートを用いるのが通例である。
【0003】
ウレットジオン、イソシアヌレートまたはイミノオキサジアジンジオンを形成するためのイソシアネートのオリゴマー化(通常は二量化または三量化)は、一般に低分子量のC〜C30の二官能性イソシアネートの変性用に実用上十分に確立された、古くから知られる方法である。しかしながら、特にイソシアネート二量化にとって、高い活性と選択性を有し、かつ工業規模での使用に適当な使用可能な触媒は、これまで極少なかった。
【0004】
従来技術の工業上適切な二量化方法の、およびそこで用いられる触媒または触媒系の概説は、J. Prak. Chem. 第336巻(1994年)、第185〜200頁に示されている。その中で報告された触媒の不利点は、それが、不十分な触媒活性であったり、二量化に対する選択性が乏しい場合があることである。そのため、特に工業的使用のための新規で改善された系の必要性が存在する。
【0005】
欧州特許出願公開第45 995号(EP-A 45 995)は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(三量体含量<2重量%)を選択的に二量化するための触媒としての特別なペルアルキル化アミノホスフィンの使用を記載する。しかしながら、これらの化合物の実質的な欠点は、高い潜在的発癌性を有し広範な工業的使用が禁止されているホスホルアミド(例えばヘキサメチルホスホルアミド(HMPA))に対する、その酸化感受性である。
【0006】
欧州特許出願公開第317 744号(EP-A 317 744)は、4−ジメチルアミノピリジン類、例えば4−ジメチルアミノピリジン(4DMAP)での触媒反応による線状(シクロ)脂肪族ウレットジオンの製造方法を記載する。この方法も、実質的にイソシアヌレート基の含まない線状IPDIウレットジオンを与える。
【0007】
EP-A 45 995およびEP-A 317 744の触媒は、いずれも穏やかな触媒活性しか示さず、そのNCO基がもっぱら第2級炭素原子(例えば4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン)に結合しているイソシアネートに対して不活性である。
【0008】
改良された触媒活性は、国際公開第02/92658号(WO 02/92658)に記載されたアゾレートアニオンに示され、特に脂環式ジイソシアネートが高選択性を有する二量体ウレットジオンに転化されている。
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第45 995号
【特許文献2】欧州特許出願公開第317 744号
【特許文献3】国際公開第02/92658号
【非特許文献1】J. Prakt. Chem./Chem. Ztg. 1994年、第336巻、第185〜200頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、高い選択性に加えて、際立って向上した触媒活性をも示し、工業規模で使用し得る新規な二量化用触媒を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、式(I):
【化1】

〔式中、
は、場合により置換された、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族の、場合によりヘテロ原子を含有する基であり、
Hetは、チアゾリル、ベンズチアゾリル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−ピリジルおよび4−ピリジルからなる群から選択される基であって、場合により置換されていてよく、
Ion(+)は、有機または無機カチオンである。〕
に示されるスルホンアミド塩の、イソシアネートを二量化するための触媒としての使用によって達成される。
よって、本発明は、一般式(I)に示されるスルホンアミドアニオンの、イソシアネート二量化のための使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
用いられる好適な触媒は、一般式(II):
【化2】

〔式中、
は、24個までの炭素原子、および場合により酸素、硫黄および窒素からなる群からの3個までのヘテロ原子を有し、場合によりさらに置換されていてよい、飽和または不飽和の脂肪族基または脂環式基であり、
およびRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアニド、ニトロおよびジアルキルアミノ、並びに場合により置換されたアルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシ基からなる群から選択される、同じまたは異なる基であり、
Ion(+)は、例えばLi、NaおよびKなどのアルカリ金属カチオン、例えばMg2+およびCa2+などのアルカリ土類金属カチオン、または一般式(III):
【化3】

(式中、
Eは、窒素またはリンであり、
、RおよびRは、互いに独立して、水素、若しくは、24個の炭素原子および場合により酸素、硫黄および窒素からなる群からの3個までのヘテロ原子を有する、同じまたは異なる、飽和または不飽和の、場合により置換基を有する脂肪族基または脂環式基であり(これらの基は、場合によりハロゲン原子またはヒドロキシル基により置換されていてよい)、
は、基R、RおよびRの定義に相当するか、または式(IV):
【化4】

(式中、
Xは、二価の、場合により置換された、C−C12の脂肪族基、脂環式基、芳香脂肪族基または芳香族基であり、
、R、RおよびEは上記定義のとおりである。)の基である)
のアンモニウムあるいはホスホニウムイオンである。〕
に示される化合物である。
【0013】
特に好適に用いられる本発明の触媒は、式V:
【化5】

〔式中、
は、場合により酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含有してよく、場合によりハロゲン、ニトロ、シアニド、ジアルキルアミノ、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシからなる群から選択される置換基を含有してよい、C〜C18の脂肪族基または脂環式基であり、
Ion(+)は、一般式(IV):
(式中、
Eは窒素またはリンであり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、18個までの炭素原子を有する、飽和の脂肪族基あるいは脂環式基または場合により置換された芳香族基あるいは芳香脂肪族基である。)
に示されるアルカリ金属カチオンまたは一価アンモニウムあるいはホスホニウムカチオンである。〕
の化合物である。
【0014】
本発明はさらに、イソシアネートオリゴマーの製造方法であって、
a)平均NCO官能価≧1を有する1種またはそれ以上の有機化合物を、
b)式(I)の1種またはそれ以上のスルホンアミド塩を含んでなる触媒、および
c)任意に溶媒
の存在下でオリゴマー化する方法を提供する。
【0015】
本発明の方法において、当業者に既知であって平均NCO官能価≧1、好ましくは≧2を有する全ての脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネートを、単独で若しくは互いの任意の所望の混合物として、成分a)に挿入することが可能であり、それらがホスゲン法またはホスゲンフリー法のいずれによって調製されたかは重要でない。
【0016】
3〜30個、好ましくは4〜20個の炭素原子の炭素骨格(マイナス存在するNCO基)を有する、上記した種類の脂肪族、脂環式および/または芳香脂肪族イソシアネートを使用することが好ましい。
【0017】
特に好適な成分a)の化合物は、例えば、ビス(イソシアナトアルキル)エーテル、ビス−およびトリス−(イソシアナトアルキル)ベンゼン、−トルエン、および−キシレン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート(例えば一般に2,4,4および2,2,4異性体の混合物としてのトリメチル−HDI(TMDI))、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート)、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、ドデカントリイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)または3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)のような、脂肪族的および/または脂環式的に結合したNCO基を有する上記種類に相当する。
【0018】
とりわけ好適な成分a)の化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチル−HDI(TMDI)、2−メチルペンタン1,5−ジイソシアネート(MPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)および/または2,4’−および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)またはこれらのイソシアネートの混合物である。
【0019】
適切な場合には、具体的事例において、単官能性イソシアネートを比例的に使用することも同様に可能である。
【0020】
本発明の方法において、触媒b)の量は、成分a)の量に基づき0.01〜10mol%、好ましくは0.05〜5mol%、より好ましくは0.1〜3mol%であり、ここでmol%の数字は用いる成分a)のイソシアネートの全物質量(mol)を指す。
【0021】
本発明の方法の触媒b)として、もっぱら式(I)のスルホンアミド塩を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の方法において、触媒b)は、溶解せずに化合物自体として、または溶液の形態で使用できる。後者の場合、触媒を分子あるいはイオン解離で溶解する間に、化学反応によってスルホンアミドアニオン組成および/または分子構造を変化させないよう、溶媒を選択すべきである。同時に、溶媒はNCO作用に対して不活性でなければならないか、またはイソシアネートと反応して尿素、ビウレット、ウレタンまたはアロファネート基の形成のみを伴い得る。
【0023】
触媒b)を溶液として使用する場合、例えば、メタノール、エタノール、1−および2−プロパノール、異性体ブタノール、2−エチルヘキサノール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、1,3−および1,4−ブタンジオールまたは1−メトキシ−2−プロパノールのような、平均OH官能価≧1および1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルコールを用いることが好ましい。
【0024】
本発明のある好適な態様では、触媒b)を溶液の形態で使用する。
本発明の方法において、適切な場合には、成分c)として溶媒を使用することも可能であるが、場合により用いる触媒溶媒のほかに、さらなる溶媒を成分c)として用いないことが好ましい。
【0025】
本発明の方法は、好適には、0〜100℃、より好ましくは20〜100℃の温度で行われる。
当然のことながら、必要であれば、該方法を加圧下または減圧下で行うこともできる
【0026】
本発明の方法は、連続的または回分式のいずれでも行い得る。連続的方法は、例えば、管型反応器中での、若しくは、タンクカスケードによる調製を包含するが、回分式方法は、例えば、一槽中あるいは一フラスコ中での方法である。
【0027】
本発明のある好適な態様では、NCOオリゴマー化を当初に存在した全NCO基量に基づき10〜60mol%の転化率になし、オリゴマー化反応を停止し、例えば、場合により減圧下での蒸留によって未反応イソシアネートを分離し、オリゴマー化イソシアネートを樹脂の形態で得る。
【0028】
オリゴマー化反応を停止するための適当な方法は、原則として、当業者に既知のあらゆる方法を包含する(J. Prakt. Chem./Chem. Ztg. 1994年、第336巻、第185〜190頁)。それらの方法には、例えば、適切な場合には吸着性キャリア材料を活用した抽出または濾過により、熱処理および/または酸または酸誘導体、例えば塩化ベンゾイル、塩化フタロイル、亜ホスフィン酸、亜ホスホン酸あるいは亜リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸あるいはリン酸または上記リン酸の酸性エステルを添加することによる触媒系の不活性化による触媒の除去が含まれる。好適な停止剤は、モノアルキルあるいはジアルキルホスフェート、例えば(ジ)ブチルホスフェート、(ジ)オクチルホスフェートあるいは(ジ)トリヘキシルホスフェート、硫酸あるいはその酸性エステル、またはスルホン酸、例えば、好ましくはメタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸、並びにスルホン酸のアシルエステル、例えば好ましくはp−トルエン酸メチルエステルである。
【0029】
反応を停止させるのに要する触媒毒量は、活性触媒量に左右される。一般的に言えば、当初使用した触媒量に基づき50〜150mol%の停止剤を用いる;使用した触媒量に基づき等モル量の停止剤を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の方法により得られるポリイソシアネートは、例えば薄膜蒸留、抽出、結晶化および/または分子蒸留のような最先端の慣用法によって、単離および精製することができる。それらは、無色または僅かにだけ着色した液体または固体として得られる。
【0031】
イソシアネートオリゴマー化のための本発明の触媒の特別な利点は、ウレットジオン構造形成のためのその高い選択性である;これに関しそれらは高活性である。とりわけ脂環式イソシアネートの場合、本発明の触媒はさらに、NCO二量体を形成する傾向を示し、それはイオン触媒にとって高い。
【0032】
本発明に従って製造されるポリイソシアネートは、例えば発泡あるいは非発泡プラスチックまたはポリウレタンペイントのようなポリマーの調製のための、とりわけ例えば木、プラスチック、革、金属、紙、コンクリート、組積造、セラミックおよび繊維製品のような材料へ適用するための、一成分および二成分ポリウレタンペイント、被覆物、接着剤およびアジュバントを調製するための、様々な潜在的用途を有する出発物質に相当する。
【実施例】
【0033】
転化の百分率は、転化されたイソシアネート量を用いた全イソシアネート量で割り、100を掛けることによって計算する。他の全ての百分率の数字は、特に明記がなければ、重量による百分率と理解されるものとする。
【0034】
用いた略語:
DMSO:ジメチルスルホキシド
i−PrOH:イソプロパノール
n−Bu:n−ブチル−
Hex:n−ヘキシル−
【0035】
DIN規格53995(機器:LICO 200、Dr. Lange GmbH、ベルリン、ドイツ)に準じて、色数を測定した。
【0036】
実施例および比較例に記載された樹脂のNCO含有量は、DIN53185に準じて、滴定によって決定した。
【0037】
ポリイソシアネート樹脂の動的粘度は、粘度計VT550、コーン/プレート測定セットアップPK100、Haake(カールスルーエ、ドイツ)製を用いて、23℃で決定した。異なる剪断速度での測定により、前記本発明のポリイソシアネート混合物のレオロジーは、比較生成物のものと同様、理想的ニュートン液体のレオロジーに相当することが裏付けられた。従って、剪断速度を記載することは不要である。
【0038】
調整した粗生成物を、H−NMR分光法(DPX400、Bruker(カールスルーエ、ドイツ)製)により、400MHzのH共振周波数で調べた。ppmスケール用に用いたリファレンスは、内部標準としてのテトラメチルシランであった。
【0039】
イソシアネート転化率を決定するため、調製した反応混合物20〜40mgをクロロホルム3ml中へ溶解し、ゲル透過クロマトグラフィー(カラムMZ-Gel Sdplus 500A 5μm、MZ-Analysentechnik、マインツ、ドイツ)によって分析した。測定溶液の希釈が高水準のため、触媒を失活させる必要はなかった。NCO転化率または樹脂収率は、検出されたイソシアネートモノマー量から計算できる。
【0040】
次いで、用いた触媒の選択性の決定は、あり得る構造タイプ1〜3を分析することにより行った。
【化6】

【0041】
反応混合物30μlをIR分光法(分光計:Arid-Zone(登録商標)、Bomem(ケベック、カナダ)製、スキャン総数10、分解能2cm−1)で、KBrプレート間での測定に付することにより、これを行った。1760cm−1(構造タイプ1)、1690cm−1(構造タイプ2)および1780cm−1(構造タイプ3)での振動は、構造タイプ1〜3の形成を実証するために用い得る。一構造タイプだけより多くが形成した場合、定量的評価のために13C−NMR測定を行い、生成物量はシグナル積分を経て計算した。
【0042】
13C−NMR分析のために、触媒を失活させ更なる反応を阻害するよう、各反応混合物0.5mlをジ-n-ブチルホスフェートの化学量論量(用いた触媒量に基づく)と混合した。重水素化クロロホルムを添加して、約50重量%樹脂濃度とした。Bruker(カールスルーエ、ドイツ)製DPX400で、100MHzの13C共振周波数で、測定を行った。ppmスケール用に用いたリファレンスは、内部標準としてのテトラメチルシランであった。対象とする化合物の化学シフト用データは、文献(Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1986年、第141巻、第173〜183頁およびそこに引用された参考資料を参照)から採取し、および/または、モデル物質を測定に付すことにより得る。
【0043】
触媒調製

実施例1:n-ブチル-N-4-ピリジルスルホンアミドの調製
4-アミノピリジン51.0g(0.542mol)およびトリエチルアミン75.0ml(54.8g、0.542mol)を、50℃でTHF540mlに溶解した。50℃でまた、n−ブタンスルホニルクロリド(84.9g、0.542mol)70.3mlを、1時間にわたってこの溶液へ滴加した。50℃で19時間の撹拌後、反応混合物を塩化メチレン500mlで希釈し、1NのNaOH500mlで2回抽出した。水相を濃HClでpH6〜7に調節した後、塩化メチレン500mlで抽出した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸留により塩化メチレンを除去した。得られた粗生成物30gをアセトニトリルから再結晶化した。これによりクリーン生成物19.0gが得られた。化合物の構造をNMR−分光法によって確認した。
【0044】
実施例2:メチル-N-4-ピリジルスルホンアミドの調製
4-アミノピリジン9.9g(104.8mmol)およびトリエチルアミン14.5ml(10.6g、104.8mmol)を、室温でジメチルホルムアミド72mlに溶解した。室温で同様に、メタンスルホニルクロリド8.1ml(12.0g、104.8mmol)を、1時間にわたってこの溶液へ滴加した。発熱反応は、氷浴冷却によって温度を維持すべきことを意味する。室温で20時間の撹拌後、溶媒を真空で蒸留除去した。残渣を塩化メチレン100ml中および1NのNaOH150ml中に取り込んだ。有機相を分離除去した。水相を濃HClで注意深くpH4〜5に調節した後、EtOH100mlおよび塩化メチレン100mlと混合した。有機相を分離除去した後、水相を更に3回EtOH100mlおよび塩化メチレン100mlと混合した。集めた有機相を溶媒から遊離させ、残った粗生成物をアセトニトリルから再結晶化した。これにより生成物3.2gが得られた。化合物の構造をNMR−分光法によって確認した。
【0045】
実施例3:n-プロピル-N-4-ピリジルスルホンアミドの調製
4-アミノピリジン47.6g(0.506mol)およびトリエチルアミン70.0ml(51.1g、0.506mol)を、50℃でTHF500mlに溶解した。50℃で同様に、n-プロパンスルホニルクロリド57.3ml(72.2g、0.506mol)を、1時間にわたってこの溶液へ滴加した。50℃で19時間の撹拌後、反応混合物を塩化メチレン500mlで希釈し、1NのNaOH500mlで1回抽出した。水相を濃HClでpH5〜6に調節し、エタノール100mlを添加した後、混合物を塩化メチレン200mlで5回抽出した。これらの有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥した後、蒸留により塩化メチレンを除去した。得られた粗生成物74gをアセトニトリルから再結晶化した。これによりクリーン生成物20.8gが得られた。化合物の構造をNMR−分光法によって確認した。
【0046】
実施例4:スルホンアミド塩の調製
対象となるスルホンアミド4.7mmolのメタノール8mlの溶液を、30%強度のNaメトキシドのメタノール溶液0.9ml(4.7mmol)に室温で滴加した後、室温で1時間撹拌した。次に、4.7mmolのアンモニウム塩またはホスホニウム塩を添加し、再び室温で1時間撹拌を続けた。次いで、沈殿したNaClを濾過により除去し、濾液を真空で溶媒から遊離させ、こうして得た残渣を真空で乾燥した。

実施例4iについては、10倍バッチを実施した。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例5〜7:本発明によるオリゴマー化反応

概要説明
表1〜3に示した純触媒量を、セプタムシール付きガラス容器へ秤取した。次に各容器を2回真空排気し、アルゴンで充填した。次いで、シリンジを用いて、セプタムから指示量のジイソシアネートを添加した。
【0049】
触媒を溶液として用いた際(実施例5b、c、d、e、6i、6jおよび7h)、セプタムシール付き反応容器を2回真空排気し、アルゴンで充填した。シリンジを用いて各ジイソシアネート5mlをこのように準備した容器中へ導入し、その後、前記溶媒中の触媒の対応量を、撹拌しながら添加した。
【0050】
次いで、得られた反応混合物を表1〜3に示した条件下、油浴中または撹拌された加熱ブロック中(例えば Variomag 反応ブロックタイプ48.2/RM、H&P Labortechnik GmbH、オーベルシュライスハイム、ドイツ)で反応させた。
分析は、上記に示したように実施した。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
比較例1〜3
HDI、IPDIおよびH12−MDIの反応は、下記文献の触媒:
-ベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物、EP-A 0 010 589を参照(使用した物質は、40%強度メタノール溶液として、Triton(登録商標)Bの商品名でAldrichから販売されている製品である)、
-トリ-n-ブチルホスフィン、DE-A 16 70 720を参照(触媒:Cytop(登録商標)340、Cytec、不希釈)、および
-4-ジメチルアミノピリジン、DE-A 37 39 549を参照(触媒:4-DMAP、Aldrich、不希釈)
を用い、上記の概要説明に従って行った。
これらの本発明によらない触媒を用いて得られた結果を下表に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
上記からわかるように、塩様構造のテトラアルキルアンモニウム水酸化物は極めて活性であるが、生成物混合物中に低いウレットジオン分率しか産生しない。共有結合で構成された2つの触媒は生成物混合物中に高いウレットジオン分率を産生するが、その活性が低いため、高い触媒濃度を用いるときですら、特に脂環式ジイソシアネートIPDIおよびH12MDIの場合には、転化率は非常に低い。
【0059】
比較実験の触媒とは対照的に、本発明による触媒は、IPDIの反応に関する結果と比較することにより示されるように、より高い活性を備えた非常に選択性を有する二量化触媒である。H12MDIにとって、比較実験触媒の4-ジメチルアミノピリジンおよびトリ-n-ブチルアミンは確かに二量化にとって選択性を有するが、活性が非常に低い。本発明の触媒は、二量化に対する等しく高い或いは更に高い選択性と共に、高活性であることにおいて著しい効果を有する。
【0060】
実施例8:方法例
A)本発明
イソホロンジイソシアネート(IPDI)1000g(4.50mol)を、容器中へ30℃で、乾燥窒素と共に導入した。次いで、撹拌しながら、実施例4iの触媒15g(0.022mol)を、実験室注入ポンプ(KDS 100、KD Scientific、ボストン、米国)によって3時間の反応時間にわたり連続的に添加した。前記条件下で、オリゴマー化反応は明確な発熱を示さずに進んだ。触媒添加の終了後、反応混合物を10分間撹拌し、その後、ジブチルホスフェート5g(0.024mol)の添加により触媒を失活させた。オリゴマー化度24.6%に相当する、28.5%のNCO含有量を有する透明な無色反応混合物が得られた。次いで、反応混合物を、薄膜蒸発器によって160℃の温度および0.3mbarの圧力で、過剰のジイソシアネートから遊離させた。このような方法で、遊離NCO含有量17.5%、IPDIモノマー含有量0.4%、200000mPas(23℃)より大きい粘度、および塩化メチレン中10%強度溶液で測定された色数(APHA)12を有する、ほぼ無色のウレットジオンポリイソシアネートが得られた。13C−NMRおよびIR分光法によると、生成物はもっぱらウレットジオン基を含有していた。イソシアヌレート構造は検出できなかった。
【0061】
B)比較(EP-A 317 744による)
イソホロンジイソシアネート(IPDI)1000g(4.50mol)を、室温で触媒としての4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)20g(0.164mol)と、乾燥窒素下で撹拌しながら混合した。20時間後、オリゴマー化度22.6%に相当する、28.7%のNCO含有量を有する淡黄色の反応混合物を、あらかじめ触媒毒を添加することなく、160℃の温度および0.3mbarの圧力で薄膜蒸発器を用いて揮発性成分から遊離させた。これにより遊離NCO基含有量17.6%、IPDIモノマー含有量0.4%および塩化メチレン中10%強度溶液で測定された色数(APHA)62を有する高粘度の淡黄色のウレットジオンポリイソシアネートが得られた。その13C−NMRスペクトルおよびIRスペクトルによると、生成物はイソシアヌレート構造を含んでいなかった。
【0062】
上記比較は、EP-A 317 744による触媒と比較して、本発明の触媒がより高い活性であることを実証するものである。かなり低い触媒濃度にもかかわらず、IPDIの純粋な(線状)ウレットジオンポリイソシアネートをはるかに短時間内に調製できることに加え、それは際立って改善された色合いを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中、
は、場合により置換された、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族の、場合によりヘテロ原子を含有する基であり、
Hetは、チアゾリル、ベンズチアゾリル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−ピリジルおよび4−ピリジルからなる群から選択される基であって、場合により置換されていてよく、
Ion(+)は、有機または無機カチオンである。〕
に示されるスルホンアミド塩の、イソシアネートを二量化するための使用。
【請求項2】
請求項1に記載のスルホンアミド塩の、イソシアネートを二量化するための使用であって、
は、場合により酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含有してよく、場合によりハロゲン、ニトロ、シアニド、ジアルキルアミノ、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシからなる群から選択される置換基を含有してよい、C〜C18の脂肪族基または脂環式基であり、
Hetは、4−ピリジルであり、
Ion(+)は、一般式(IV):
【化2】

〔式中、
Eは窒素またはリンであり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、C〜C18の、飽和の脂肪族基あるいは脂環式基または場合により置換された芳香族基あるいは芳香脂肪族基である。〕
に示されるアルカリ金属カチオンまたは一価アンモニウムあるいはホスホニウムカチオンである
ことを特徴とする使用。
【請求項3】
イソシアネートの二量化方法であって、
a)平均NCO官能価≧1を有する1種またはそれ以上の有機化合物を、
b)請求項1または2に記載の1種またはそれ以上のスルホンアミド塩を含んでなる触媒、および
c)任意に溶媒
の存在下で二量化する方法。
【請求項4】
全NCO基の10〜60mol%が転化されるまで20〜100℃の温度でNCOオリゴマー化を行い、次いで、触媒毒の添加により二量化反応を停止し、未反応のイソシアネートモノマーを蒸留によって分離することを特徴とする、請求項3に記載のイソシアネートの二量化方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法によって得ることのできるポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイソシアネート組成物から得ることのできる被覆物、接着物(Verklebungen)または成形物。
【請求項7】
請求項6に記載の被覆物で被覆された基材。

【公表番号】特表2007−501690(P2007−501690A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522279(P2006−522279)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008343
【国際公開番号】WO2005/016984
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】